JP3823489B2 - 感熱応答材料用高分子組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱刺激に対して可逆的相転移を示す熱可逆性の高分子材料に関する。さらに詳しくは、メカノケミカル材料、温度センサー、分離膜、吸着剤、薬物放出剤、吸水剤、保水剤、遮光体、ディスプレイ、玩具などに利用されうる感熱応答材料用高分子組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ある種の化合物は、溶液状態においてある温度以下では均一に溶解した状態にあるが、ある温度以上では組成の異なる2相に相分離を起こすことが知られている。たとえばトリエチルアミンの40%水溶液は、18.5℃以下では均一に溶解しているが、該温度以上では2相に分離する。このような相転移現象は可逆であり、温度を相転移温度以下にすると再び均一な溶液を形成する。
【0003】
高分子化合物にも、その溶液が相転移現象を示すものがある。このような高分子化合物を一般に熱可逆性高分子化合物と総称している。さらにこのような高分子化合物を架橋し、ゲル化させることにより、相転移温度以下で膨潤し、相転移温度以上で媒体を放出して急激に体積収縮するような物質を作ることができる。このような物質は感温性薬物放出剤や、温度センサー等の材料としての応用が期待され、現在、活発な研究が行われている。
【0004】
このような相転移現象を示す高分子化合物としては、ポリメチルビニルエーテル、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルオキサゾリジノンなどの化合物が知られている。しかしこれらの化合物は重合やゲルの作成が困難だったり、ゲルの性能が不十分であるなどの理由から、応用研究はほとんど行われていない。
【0005】
一方、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)に代表されるポリアクリルアミドの誘導体も、相転移現象を示すことが知られている。ポリ(N−アルキルアクリルアミド)は重合性もよく、また架橋剤の存在下に重合を行うことにより容易にゲルが調製できる。しかしモノマーであるN−アルキルアクリルアミドは、臭気が強いうえに神経毒性を有しているため、応用範囲が限られるという問題点があった。また、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)はその転移温度の制御範囲が狭いという欠点を有している。たとえば、N−イソプロピルアクリルアミドの単独重合体は32℃に転移温度を示すが、共重合によって転移温度を変化させてもその範囲は高々±10℃の範囲であり、また応答性が鈍くなる。
【0006】
近年、ポリ(N−ビニルイソブチルアミド)に代表されるポリ(N−ビニルアルキル酸アミド)、およびその共重合体がこのような相転移現象を示すことが見いだされた。
例えば特開平7−62038号公報には、ポリ(N−ビニルイソブチルアミド)が相転移を示すことが開示されている。
【0007】
また、特開平7−82320号公報には、N−ビニルイソブチルアミド−ビニルアミン塩酸塩共重合体(94.5:5.5(モル比))が相転移を示すことが開示されている。しかし、該物質は、一旦ポリビニルアミンを合成してから、高分子反応によってアルキル化を行って合成するため、副反応の存在などにより反応条件が制限されたり、不純物を取り除く工程が必要となるなどの不都合を生じやすい。また、相転移挙動が鋭敏ではないという欠点も有している。
【0008】
さらに、特開平8−143631号公報には、N−ビニルイソブチルアミド−N−ビニルアセトアミド共重合体が相転移を示すことが開示されている。該化合物は、N−ビニルアセトアミドユニットの比率が増えるに従い、相転移温度が高くなり、相転移温度を広い範囲で制御することが可能である。しかし該化合物は、昇温過程と降温過程で相転移温度が最大8℃も異なっており、いわゆる過冷却現象を示しており、しかも相転移現象が鋭敏であるとは言いがたい。
【0009】
さらに近年、ポリ(N−ビニルアセトアミド)に、疎水性部分を導入した、N−ビニルアセトアミド−酢酸ビニル共重合体が相転移現象を示すことが見いだされた(高分子学会予稿集、45(8),1962(1996))。該化合物は、その共重合組成によって広い範囲で相転移温度を制御することが可能であり、またその転移挙動も鋭敏である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
また、熱可逆性高分子化合物を感熱応答材料、たとえば、メカノケミカル材料、温度センサー、分離膜、吸着剤、薬物放出剤などに利用するためには、そのままでも良いが、さまざまな官能基を導入することによる更なる機能化が必須であり、容易に機能化できる新しい熱可逆性高分子化合物の開発が望まれていた。
【0011】
ところで、このポリ(N−ビニルアルキル酸アミド)は、この機能化などのため、加水分解によって一級ポリアミンであるポリビニルアミンユニットを有する高分子材料に誘導することが可能である。しかし、たとえば、ポリ(N−ビニルアセトアミド)ユニットや、ポリ(N−ビニルイソブチルアミド)ユニットを持つ熱可逆性高分子は、加水分解に対して比較的安定であり、通常、90℃以上のような高い反応温度を必要とする。しかも、このN−ビニルアセトアミドやN−ビニルイソブチルアミドから誘導された熱可逆性高分子化合物は、このような高温条件下では水に溶解しなくなるため、加水分解反応条件はさらに厳しくなり、反応時間も長くなる。従って、これらの高分子化合物の場合は、加水分解反応において、N−ビニルアセトアミドユニット以外の共重合ユニットや、主鎖構造も同時に分解を受けることなどの高分子の劣化が避けがたい。たとえば、N−ビニルアセトアミド−酢酸ビニル共重合体を、部分加水分解してポリビニルアミンユニットを導入しようとすると、酢酸ビニルユニットの加水分解が進行し、所望のポリビニルアミンユニットが導入できないばかりか、熱可逆性まで失われてしまうという問題がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、上記の問題点を解決する手段を見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、主たる構成ユニットがN−ビニルホルムアミドユニットと酢酸ビニルユニットである熱可逆性高分子化合物を含むことを特徴とする、感熱応答材料用高分子組成物に関するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に関して詳細に説明する。
本発明において、熱刺激に対する可逆的相転移とは、連続均一相を形成している水溶液が、ある温度以上で相分離現象を示し、その変化が該温度を境に可逆的であることをいう。相転移温度は昇温過程と降温過程では後者の方が通常数℃低い値を示す。これは降温過程での相転移が厳密な平衡を保ちながら行うことができず、通常の操作では過冷却になるためである。しかしこのような過程を複数のサイクル繰り返しても再現性を示すので、この相転移は可逆的であると結論できる。
【0014】
ところで、ポリ(N−ビニルホルムアミド)自体は、このような相転移現象を示さない。これは、ポリ(N−ビニルホルムアミド)の親水性が強すぎ、相転移温度が水の沸点である100℃以上になっているためであると推定される。実際、ポリ(N−ビニルホルムアミド)よりはるかに疎水性の強いポリ(N−ビニルイソブチルアミド)は室温付近で相転移現象を示すことが知られている。しかし親水性の強すぎる高分子に、共重合などにより疎水性を付与しても、相転移現象を示さない。たとえば、ポリビニルアルコール−ポリ酢酸ビニル共重合体は、その組成により、水に対して溶解するが、相転移は示さないか、あるいは相転移を示す以前に、まったく水に溶解しないかのいずれかである。
【0015】
ところが、本発明者らは、従来、熱可逆性高分子化合物として知られている構成ユニットとしてのN−ビニルアルキル酸アミドに変えて、驚くべきことにきわめて親水性の強いポリマーである、ポリ(N−ビニルホルムアミド)に疎水性ビニルモノマーを組み合わせることにより、適切な疎水性を付与し、熱可逆性高分子化合物が得られることを見出した。また、該疎水性を適切に制御することにより、任意の相転移温度が得られることを見出したものである。
【0016】
本発明においていうN−ビニルホルムアミドユニットは、下記構造式(1)
【0017】
【化1】
を指す。この構造を熱可逆性高分子化合物に導入する方法としては、N−ビニルホルムアミドと、疎水性ビニルモノマーとで共重合を行わせてもよく、また、疎水性ビニルモノマーユニットからなる高分子材料へのブロック共重合ないしはグラフト共重合によってもよい。また、下記構造式(2)のユニットを有し、
【0018】
【化2】
疎水性ビニルモノマーも有する高分子化合物の高分子ホルミル化反応によってもよい。
【0019】
N−ビニルホルムアミドを共重合あるいはブロック、グラフト共重合のモノマーとして用いる場合には、重合を妨げない他の不純物を含んでいてもよい。
【0020】
本発明においていう疎水性ビニルモノマーユニットとは、該疎水性ビニルモノマーから誘導されるもので、該モノマーは、少なくとも1個の重合性ビニル基を含み、実質的に水と自由に混和しないモノマーおよびそれらの混合物を指す。このような性質を有する限り、これらのモノマーは、気体であっても液体であっても固体であってもよく、また重合を妨げない他の不純物を含んでいてもよい。このようなモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1−オレフィン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、脂肪酸ビニルエステル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アルキルビニルエーテル、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−ビニルアルキルアミド(アシル基の炭素数が3〜22、好ましくは4〜18)などが例示される。なかでも特に酢酸ビニルは入手しやすく、またN−ビニルホルムアミドとの共重合性も良好で、得られる共重合体の相転移温度制御も容易であるので好ましい。この疎水性ビニルモノマーとして、N−ビニルアルキルアミドのうち、アシル基のアルキル基の部分の長さが短かすぎるものは親水性が強すぎて、相転移を示さない。また、アルキル基が長すぎるものは、合成原料が入手し難く実用的ではない。
【0021】
N−ビニルホルムアミドユニットと疎水性ビニルモノマーユニットの高分子中の量比は、高分子が熱可逆性を示す組成であれば特に制限はなく、通常、N−ビニルホルムアミド/疎水性ビニルモノマー=1/99ないし99/1の範囲で用いられる。ポリマー中のN−ビニルホルムアミドの比率が多すぎる場合には、相転移温度が溶媒である水の沸点を超えるため、相転移を観測することができない。また疎水性ビニルモノマーの比率が多すぎる場合には、逆に相転移温度が水の融点を下回り、相転移を観測できないか、あるいは疎水性が強くなりすぎるため、水に溶解しなくなる。また、疎水性モノマーの種類によって熱可逆性を示す量比の範囲が存在する。たとえば、酢酸ビニルの場合には、N−ビニルホルムアミド/酢酸ビニル=20/80ないし60/40である。
【0022】
このような疎水性モノマーユニットを熱可逆性高分子材料に導入する方法としては、疎水性モノマーを一成分としてN−ビニルホルムアミドとの共重合をおこなってもよく、また、N−ビニルホルムアミドユニットを含む高分子材料へのブロック共重合ないしはグラフト共重合によってもよい。また、別の親水性材料からの高分子反応によってもよい。たとえば、酢酸ビニルユニットならば、ポリビニルアルコールユニットのエステル化によって導入することができる。
【0023】
上記のような高分子化合物を重合によって得る際には、その形式はいかなるものであってもよく、たとえば、塊状重合、沈殿重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、気相重合などの形式が取られうる。中でも反応の制御が容易な溶液重合が好ましい。
【0024】
この溶液重合の際の溶媒は、重合に不活性であり、モノマーを溶解する溶媒であれば特に限定されないが、水、アルコール類、ジメチルフォルムアミドなどが挙げられる。
重合温度、重合時間は、用いる重合開始剤により異なるが、通常−10〜80℃、1時間〜20時間の範囲で行うのが良い。
【0025】
重合の際には、重合開始剤を使用するのがよい。この重合開始剤については何ら制限はないが、N−ビニルホルムアミドの重合において高分子量が得やすいラジカル重合開始剤が好ましい。開始剤の種類としては過酸化物、レドックス触媒、アゾ系触媒いずれを用いてもよい。特に有用な開始剤は、アゾビスイソブチロニトリルや2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩である。この重合開始剤の使用量は、モノマーに対して0.0001〜10モル%の範囲、好ましくは0.01〜1モル%の範囲であるのがよい。
【0026】
本発明で使用する熱可逆性高分子材料の分子量は、1000〜50万、好ましくは1万〜30万であるのが良い。
本発明で得られる高分子材料はゲルを形成していても良い。ゲルを形成することによって特異な性質を持つ物質が得られる。すなわち、転移温度以下では自重の数倍から数百倍の水を吸収するが、転移温度以上では急激に収縮してほぼ全ての水を放出するような、感熱応答性のゲルを作成することができる。
【0027】
驚くべきことに、本発明で得られたN−ビニルホルムアミド−酢酸ビニル共重合体ゲルは、N−ビニルホルムアミドの代わりにN−ビニルアセトアミドを用いて得られたゲルに比較しても、3倍もの高い膨潤比変化を示す。このことから、本発明で得られる化合物は感熱応答材料としての実用性に非常に優れていると言える。
【0028】
このようなゲルの作成方法としては種々の方法があるが、一般的には2官能性以上の重合性基をもつ架橋剤の存在下に重合反応を行わせることで達成可能である。架橋剤としてはモノマーと共重合しうるものであればいかなるものであってもよい。例えばN,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ブチレンビス−N−ビニルアセトアミドなどである。この際、該架橋剤の使用量は、通常、モノマーに対して0.1〜10モル%の範囲であるのがよい。
【0029】
ゲルを作成する別の方法としては、共重合体を得たあとで高分子反応によってこれを架橋する方法をとることもできる。その場合はあらかじめ重合性基を有する共重合体を合成し、それをさらに反応させる方法などがある。
このようなゲルを作成する場合、機能化のために種々の添加剤を共存させてもよい。例えば、熱安定剤、無機粒子などをはじめとする性能改良剤や、キレート剤をはじめとする反応性残基を導入することが可能である。
【0030】
また、本発明で言う熱可逆性高分子化合物は、それ単独で感熱応答性材料として用いることができるが、多くの場合、それ以外の化合物との組成物として用いる。たとえば、ポリオレフィンや、ポリスチレンなどの他の高分子化合物とブレンドして、その機能を高めたり、水などの溶媒とともに用いることができる。このような組成物を得る際には、ブレンドや混練などの機械的手段や、表面グラフトなどの化学的手段を用いることができる。
このような性質を利用して温度センサー、薬物放出剤、吸水剤、保水剤、メカノケミカル材料などへの応用が可能である。
【0031】
本発明のN−ビニルホルムアミドユニットと疎水性ビニルモノマーユニットを持つ熱可逆性材料は、相転移温度以下の温和な条件で、N−ビニルホルムアミドユニットを速やかに加水分解し、熱可逆性を保ったままポリビニルアミンユニットを導入することが可能である。さらにこの1級アミンの持つ反応性を利用して別の官能基を導入することも可能である。この反応で生成する不純物は容易に除去することができるため、工業的に有利である。また高分子反応によって合成したものに比べても、相転移挙動が鋭敏となるので好ましい。このように本発明で得られた熱可逆性高分子化合物は、それ自身が熱可逆性という機能を持つばかりか、さらに新しい機能を容易に付与することも可能であり、感熱応答材料の機能化ができ、極めて有用である。
【0032】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1〜3]
(共重合体の合成)
モノマーとして、N−ビニルホルムアミド(NVF)と酢酸ビニル(VAc)を用いて重合を行った。用いたモノマー量は合計24mmolであった。溶媒としてメタノール5ml、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルをモノマーに対して1mol%使用して一緒にガラス管に仕込み、窒素置換した。このガラス管を60℃に加温し、重合を行った。30分後、ガラス管の内容物を大量のジエチルエーテルに沈殿させて反応の停止および重合体の回収を行った。得られた重合体を、溶媒を重水(D2O)、測定温度50℃で、1H−NMR(400MHz)を用いて分析し、組成比を得た。結果を表1に示した。
【0033】
(転移温度の測定)
1重量%濃度の重合体水溶液を調製し、UV/VIS分光光度計(JASC0製品、商品名:V−550)を用いて波長500nmでの透過率を測定した。試料を1℃/分で昇降温し、それに伴う透過率の変化をしらべた。実施例2、3で得られた試料の相転移挙動を図1に示した。また、昇温時、透過率が50%を示す温度を相転移温度として表1に示した。
表1から明らかなように、共重合体中のN−ビニルホルムアミドユニットが多くなるほど、高い相転移温度を示した。
【0034】
【表1】
【0035】
[実施例4]
(ゲルの合成)
モノマーとしてN−ビニルホルムアミド1.75mmolと酢酸ビニル8.25mmol、架橋剤として、N,N’−ブチレンビス−N−ビニルアセトアミド0.05mmol、溶媒としてメタノール1ml、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルをモノマーに対して1mol%使用して、原料溶液を得た。この溶液を脱酸素後、1mmの間隔を有する2枚のガラス板の間に封入して液膜とした。このまま60℃に2時間加温して重合を行い、ゲル薄膜を得た。
ゲルを純水で洗浄して、未反応モノマーと溶媒を除去後、凍結乾燥して精製した。収率は14%であった。
【0036】
(膨潤比の測定)
この精製乾燥ゲルを20℃水中に保持し、膨潤させた。膨潤ゲルを取り出して重量を測定し、乾燥時の重量との比を膨潤比として求めた。
膨潤ゲルを80℃水中に保持すると、ゲルは感熱収縮した。感熱収縮したゲルを20℃水中に保持すると、再度吸水、膨潤した。12時間おきに保持温度を変えたときの膨潤比の変化を図2に示す。
図2から感熱膨潤−感熱収縮が熱可逆的に起きたことが明らかである。
【0037】
[比較例1]
モノマーとして、N−ビニルホルムアミドの代わりにN−ビニルアセトアミドを用いた以外は実施例4と同様の操作を行って精製乾燥ゲルを得た。収率は30%であった。
実施例4と同様にして膨潤−収縮挙動を測定した。結果を図2に示す。
感熱膨潤−感熱収縮は熱可逆的に起こったが、膨潤比は最大でも実施例4の約3分の1にすぎなかった。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、ポリ(N−ビニルホルムアミド)に、疎水性ビニルモノマーを組み合わせ、適切な疎水性を付与することにより、良好な熱可逆性高分子化合物が得られ、該疎水性を適切に制御することにより、任意の相転移温度が得られる高分子化合物を有する感熱応答材料を見出したものである。
また、該熱可逆性高分子化合物は、それ単独で感熱応答性材料として用いることもできるが、それ以外の化合物との組成物としてもよい。このような性質を利用して温度センサー、薬物放出剤、吸水剤、保水剤、メカノケミカル材料などへの応用が可能である。
また該熱可逆性高分子化合物を含むゲルは、熱変化に対して可逆的に膨潤−収縮させることができ、その膨潤比は非常に高いので、高性能の感熱応答材料を設計することが可能である。
本発明のN−ビニルホルムアミドユニットと疎水性ビニルモノマーユニットを持つ熱可逆性材料は、N−ビニルホルムアミドユニットを速やかに加水分解し、熱可逆性を保ったままポリビニルアミンユニットを導入することが可能であり、さらにこの1級アミンの持つ反応性を利用して別の官能基を導入して、さらに新しい機能を容易に付与することも可能であり、感熱応答材料の更なる機能化ができ、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2及び3の重合体の相転移温度を示すグラフである。
【図2】 実施例4及び比較例1のゲルを、それぞれ12時間おきに20℃と80℃に保持したときの膨潤比の変化を示すグラフである。
Claims (4)
- 主たる構成ユニットが、N−ビニルホルムアミドユニットおよび酢酸ビニルユニットである熱可逆性高分子を含むことを特徴とする感熱応答材料用高分子組成物。
- N−ビニルホルムアミドユニットと酢酸ビニルユニットのモル比が20/80〜60/40である熱可逆性高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の感熱応答材料用高分子組成物。
- 27〜40モル%のN−ビニルホルムアミドユニットと73〜60モル%の酢酸ビニルユニットからなる熱可逆性高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の感熱応答材料用高分子組成物。
- 架橋構造によってゲルを形成している熱可逆性高分子を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の感熱応答材料用高分子組成物。
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