JP3822958B2 - 熱交換器の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば車両用空調装置に用いられる熱交換器の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、タンク壁に形成されたチューブ挿入用穴に扁平チューブを挿入するタイプの熱交換器はよく知られている。また、タンクからの流体(たとえば、冷媒)の洩れ防止等の観点から、上記挿入用穴の周縁にバーリング加工を施し、該バーリング加工により形成されたバール部と扁平チューブの外周面とを接合(ろう付け)することによりタンク壁と扁平チューブとの接合面積を大きくして、両者の接合性を確保する方法も既に知られている。
【0003】
しかし、一回のプレス加工によりバール部と挿入用穴を形成しようとすると、とくに、チューブ挿入用穴の両端部におけるバール部の曲率半径が小さいことから、バール部のその部分に割れが生じるおそれがある。また、該方法においては、挿入穴の周縁にバール部が略均一な高さに形成されるため、チューブを挿入しずらいことがある等の問題もある。
【0004】
また、タンク壁にチューブ挿入穴よりも一まわり小さな下孔(長穴)を設けた後に、プレス加工を施しバール部とチューブ挿入穴とを形成するようにすれば、バール部の割れはある程度防止できるものの形成されるバール部全体が低くなるため、タンク壁とチューブとの十分な接合面積が確保できなくなる。また、ろう付け時におけるタンクとチューブとの正しい位置関係が損なわれるおそれもある。なお、この対策として、チューブをバール部の先端部からタンク内へ突出させ、該チューブの先端を拡管する方法(実開平5−17385号公報)も提案されているが、該提案においては、チューブの先端をタンク内部に大きく突出させなければならないため、タンク内における流路抵抗が増加するおそれがある。また、熱交換器が、ラジエータのように内部に水を流通させる熱交換器である場合には、耐食性層が形成されていないチューブの先端の外面が水と接触し腐食するおそれもある。さらに、該提案においては、チューブ拡管工程が必要になるため作業工数が増加する。
【0005】
また、実公昭63−50628号公報においては、バール部をテーパ状に形成し、該バール部の端部をチューブの外面に合わせた端面に形成し、該面とチューブ外面とをろう付けする提案がなされているが、該提案においてはタンク壁構成部材の肉厚程度の接合面積しか得られず、タンク壁とチューブとの良好な接合性を確保できなくなるおそれがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、流体の洩れ等のおそれのない高品質の熱交換器を容易に、しかも低コストで得ることのできる熱交換器の製造方法を提供することにあり、とくに扁平チューブとタンクのチューブ挿入用穴との良好な接合状態を得ることのできる熱交換器の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の熱交換器の製造方法は、複数の扁平チューブを、タンク壁に形成した、前記扁平チューブの形状に対応する長穴形状を有するチューブ挿入用穴に挿入した後タンク壁に接合する熱交換器の製造方法において、前記チューブ挿入用穴の形成を
(イ)前記タンク壁に、一つのチューブ挿入用穴に関して該穴の両端部に相当する位置に、それぞれ前記扁平チューブの厚みよりも小さい径の下孔を穿設し、
(ロ)前記両下孔間部位を打ち抜いて前記チューブ挿入用穴を形成すると同時に該チューブ挿入用穴周縁にバーリング加工を施し、かつ、該バーリング加工により形成される前記チューブ挿入用穴周縁部のバール部を該穴の両端部における高さが中央部における高さよりも低くなるように形成する、
ことにより行うことを特徴とする方法からなる。
【0008】
上記バール部の高さの高い部分には、挿入される扁平チューブの上下平坦部を、上記バール部の高さの低い部分には、扁平チューブの幅方向両端部の半円状部を対応させることが望ましい。上記のような対応関係とすることにより、タンク壁とチューブとの接合面積を十分に大きく確保しつつ、タンク壁のチューブ挿入穴への挿入作業の容易化を図ることができる。
【0009】
上記扁平チューブは、バール部を有するチューブ挿入用穴に挿入した後に、バール部の内面すなわちタンク壁にろう付けし接合することができる。
【0010】
上記のような熱交換器の製造方法においては、まずはじめに、タンク壁の一つのチューブ挿入用穴に関して、該穴の両端部(穴長手方向両端部)に相当する位置に、それぞれ、扁平チューブの厚みよりも小さい径の下孔を穿設する。次に、両下孔間を打ち抜いてチューブ挿入用穴を形成すると同時に、該挿入用穴の周縁にバーリング加工が施される。該挿入用穴の両端部に相当する位置には上記下孔が予め穿設されているため、チューブ挿入用穴の両端部にバール部が形成される際には、該両端部の肉が上記下孔の穿設により前もってぬすまれているので、チューブ挿入用穴の両端部に形成されるバール部の高さは、中央部における高さよりも低くなる。このように、形成されるバール部の高さに、部位に応じて適切に高低差をつけることにより、全体として大きな接合面積が確保されつつ、チューブ挿入が容易化される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の熱交換器の製造方法の望ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1ないし図5は、本発明の一実施態様に係る熱交換器の製造方法により製造される熱交換器を示している。図において、1は熱交換器を示している。熱交換器1はタンク2とタンク3とを有しており、タンク2、3は複数の扁平チューブ6により連通されている。また、扁平チューブ6間には、フィン7が配設されている。
【0012】
タンク2内部は区画板(図示略)により2室に区画されており、一方の室には入口パイプ4が開口され、他方の室には出口パイプ5が開口されている。
【0013】
タンク2、3は、図2に示すようにタンク部材8と座板9とから形成されている。タンク2、3の両端はキャップ10により閉塞されている。タンク2、3のタンク壁を形成する座板9には、図3、図4に示すように扁平チューブ6の形状に対応する長穴形状を有するチューブ挿入用穴11が形成されている。チューブ挿入用穴11の周縁にはバール部12が形成されている。バール部12は、チューブ挿入用穴11の両端部に形成される低いバール部分13と、穴11の中央部に形成される高いバール部分14とからなっている。本実施態様においては、図4に示すようにバール部12内へ挿入される扁平チューブ6の平坦部に高いバール部分14が、扁平チューブ6の幅方向両端部の半円状部に低いバール部分13が対応するようになっている。
【0014】
上記のような熱交換器においては、タンク2、3の座板9の一つのチューブ挿入用穴11および該穴11周縁のバール部12は以下のようにして形成される。まずはじめに、図7、図8に示すように、座板9に形成されるチューブ挿入用穴11の両端部に相当する位置に扁平チューブ6の厚みよりも小さい径の下孔15を穿設する。下孔15は、図7に示すようにパンチ16により簡単に穿設することができる。次に、穿設された下孔15間を専用型17により打ち抜いてチューブ挿入用穴11を形成すると同時に、該穴11周縁にバーリング加工を施しバール部12を形成する。
【0015】
上記バーリング加工により、チューブ挿入用穴11周縁の全体にバール部12が形成されるが、穴11の両端部に相当する位置には予めチューブ6よりも小径の下孔15が穿設されており該部分の肉がぬすまれているので、図9に示すように穴11の両端部には、低いバール部分13が形成され中央部には高いバール部分14が形成される。
【0016】
そして、チューブ6をバール部12を有する穴11に挿入した後、熱交換器1を仮組み(アセンブリ状態)し、ろう付けが行われるようになっている。該ろう付けにより、チューブ6がバール部12、すなわちタンク2、3の壁を形成する座板9に接合される。
【0017】
本実施態様の熱交換器の製造方法においては、座板9に予め下孔15を穿設した後に、チューブ挿入用穴11の形成およびバーリング加工が施されるので、穴11の両端部に形成される低いバール部分13の割れを確実に防止しつつ、穴11の中央部には高いバール部分14を形成することができる。なお、下孔15の穿設に用いるパンチ16、穴11の形成およびバーリング加工に用いられる型17は、ごく簡単な構造であるので、型製作費用等を安価に抑えることができる。
【0018】
また、形成されるバール部12には低いバール部分13が含まれているので、穴11への扁平チューブ6の挿入作業を容易化することができる。また、高いバール部分14の形成により、扁平チューブ6との間の十分な接合面積を確保することができる。したがって、液体の洩れ等のおそれのない高品質の熱交換器を低コストで得ることができる。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の熱交換器の製造方法によるときは、流体の洩れ等のおそれのない高品質の熱交換器を、容易にしかも低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る熱交換器の製造方法により製造される熱交換器の斜視図である。
【図2】図1の熱交換器のタンクの横断面図である。
【図3】図1の熱交換器の座板の部分斜視図である。
【図4】図3の座板のチューブ挿入用穴部の平面図である。
【図5】図3の座板のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図3の座板のVI−VIに沿う断面図である。
【図7】タンクの座板に下孔を穿設する工程を示す工程図である。
【図8】下孔を穿設した座板の平面図である。
【図9】図8の座板にチューブ挿入用穴およびバーリング加工を施す工程の工程図である。
【符号の説明】
1 熱交換器
2、3 タンク
4 入口パイプ
5 出口パイプ
6 扁平チューブ
7 フィン
8 タンク部材
9 座板
10 キャップ
11 チューブ挿入用穴
12 バール部
13 低いバール部
14 高いバール部
15 下孔
16 パンチ
17 専用型
Claims (3)
- 複数の扁平チューブを、タンク壁に形成した、前記扁平チューブの形状に対応する長穴形状を有するチューブ挿入用穴に挿入した後タンク壁に接合する熱交換器の製造方法において、前記チューブ挿入用穴の形成を
(イ)前記タンク壁に、一つのチューブ挿入用穴に関して該穴の両端部に相当する位置に、それぞれ前記扁平チューブの厚みよりも小さい径の下孔を穿設し、
(ロ)前記両下孔間部位を打ち抜いて前記チューブ挿入用穴を形成すると同時に該チューブ挿入用穴周縁にバーリング加工を施し、かつ、該バーリング加工により形成される前記チューブ挿入用穴周縁部のバール部を該穴の両端部における高さが中央部における高さよりも低くなるように形成する、
ことにより行うことを特徴とする熱交換器の製造方法。 - 前記バール部の高さの高い部分が、挿入される扁平チューブの上下平坦部に対応しており、バール部の高さの低い部分が、扁平チューブの幅方向両端部の半円状部に対応している、請求項1の熱交換器の製造方法。
- 扁平チューブを、前記バール部を有する挿入用穴に挿入した後、前記タンク壁にろう付けする、請求項1または2の熱交換器の製造方法。
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