JP3822771B2 - 流量計測方法および流量計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は流量計測方法および流量計測装置に係り、特に間欠的に流体の流量または流速の測定を行って得た値を積算する流量計測方法およびそれを実行する流量計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波計測方式のガスメータのような、いわゆる推量式のガスメータにおいては一般に、ガスの流量を間欠的に計測し、その計測値を積算して、ガス流量積算値すなわちガス使用量の積算値を得ている。
【0003】
ところが、ガスの流れに脈動が生じると、そのときに計測されるガス流量値に誤差が生じる場合がある。例えば、ガスの元管を共有している近隣の2つの家庭のうち一方の家庭で脈動の発生しやすいガスヒートポンプのようなガス消費器具を用いるとともに、他方の家庭でもガスを使用しているといった状況下では、その脈動の発生しやすいガス消費器具を用いている家庭のガスメータは言うまでもなく、他方の家庭の配管中のガス流にも脈動が発生し、このような脈動に起因して、ガスメータによるガス流量の計測値に誤差が生じる(含まれる)場合があり、延いてはガス流量積算値に大きな誤差が生じる場合がある。
【0004】
すなわち、ガス流量を間欠的に計測するタイミングと脈動の位相とが予期せずほぼ同期した場合などには、例えば脈動の最大値寄りの値が周期的に計測されてしまうというように、正確な流量値とは異なる誤差を含んだ計測値が毎回同じように計測され、それが次々に積算されて行くと、最終的に大きな誤差を含んだガス流量積算値となる場合がある。
【0005】
そのような脈動に起因した誤差の発生(混入)を防ぐためには、ガスの脈動を解消するための装置などを装着することも提案されているが、その装置を付設することで全体的な構成が繁雑なものとなり、またそのための製造コストや部品コストがさらに加わるので、ガスメータ全体がさらに高コスト化するという問題もある。
【0006】
そこで、従来のガスメータあるいはそれに用いられるガス流量計測方法では、ガスの脈動に起因した圧力変動を検出し、その圧力変動に基づいて、そのとき発生している脈動の周期や位相を把握して、その脈動の周期あるいは位相に対して同周期あるいは同位相でガス流量またはガス流速を間欠的に計測するという手法が、例えば特開平10−197303号公報などによって提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際には、ガス流中に発生する脈動の計測自体にも誤差が生じたり、あるいは脈動の周期自体が必ずしも一定ではなく時々刻々と変化することもあるので、そのような脈動の周期や位相に対して完全に同周期あるいは同位相でガス流量の計測を行うことは困難であり、その結果、誤差を含むガス流量値すなわち脈動の中心値からずれたガス流量値を周期的に計測してしまい、それが次々に積算されて行き、最終的には大きな誤差を含んだガス流量積算値となるという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、流体に脈動が発生した場合でも、流体流量値あるいはさらにそれを積算して得られる流体流量積算値を正確に計測することができる流量計測方法および流量計測装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による流量計測方法は、上流側から下流側へと流れる流体の流量または流速の値を一度の計測期間当りに所定の頻度で間欠的に計測することを複数回繰り返し、一度の計測期間ごとに得られた値を積算する流量計測方法において、計測期間の開始位相を所定の規則性に基づいて変化させることを特徴とするものである。
【0010】
なお、前記の流体に生じる脈動の周期または位相を計測し、各計測期間の開始タイミングの周期または位相が脈動の周期または位相とは異なるものとなるように、その計測期間の開始位相を所定の規則性に基づいて変化させるようにすることは好ましい態様である。
【0011】
また、前記の流体の脈動の周期または位相を、その流体の圧力値に基づいて所定の頻度よりも高い頻度で繰り返して計測することは好ましい態様である。
【0012】
本発明による流量計測装置は、上流側から下流側へと流れるガスの流量または流速の値を一度の計測期間当りに所定の頻度で間欠的に計測することを複数回繰り返し、その一度の計測期間ごとに得られた値を積算して流体の積算流量値を得るものにおいて、計測期間の開始位相を所定の規則性に基づいて変化させる開始位相制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
なお、前記の流体に生じる脈動の周期または位相を計測する脈動計測手段をさらに備えると共に、開始位相制御手段が、計測期間の開始タイミングの周期または位相を前記脈動の周期または位相とは異なるものとなるように変化させることは好ましい態様である。
【0014】
また、前記の脈動計測手段が、ガスの脈動の周期または位相の計測をその流体の圧力値に基づいて所定の頻度よりも高い頻度で行うようにすることは好ましい態様である。
【0015】
また、前記の流量計測装置において、流体に対して超音波を伝搬させて、該超音波の伝搬時間に基づいて前記流体の流量または流速を計測する超音波流量計測手段を備えたものとすることは望ましい態様である。すなわち本発明は、特に超音波計測方式の流量計測装置において好適なものである。しかしこれのみには限定されず、間欠的に流体の流量を計測する方式の流量計測装置であれば、その他にもフルイディック方式あるいは圧力差計測方式などのようないわゆる推量式の種々の流量計測装置にも適用可能であることは言うまでもない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態に係るガスメータの主要部の構成の概要を示す図である。このガスメータは、導通路1を上流側から下流側へと流れるガスに対して、一度の計測期間当りに所定の頻度で超音波を間欠的に伝搬させる超音波送/受信機器2a,2bおよび発振制御回路2cと、その超音波の伝搬時間に基づいてガス流速vを計測するガス流速演算回路3と、その一度の計測期間ごとに得られたガス流量値を積算するガス流量値積算回路4とを備えたガスメータであって、さらに、計測期間Tどうしの間ごとに時間間隔Tdを設け、かつ複数の時間間隔Tdの長さを、図示しない情報記録装置などに格納されている予め定められた規則性に基づいて変化させる開始位相制御回路5とを備えている。
【0018】
超音波送/受信機器2a,2bは、発振制御回路2cによって制御されて、一度の計測期間当りに所定の頻度で超音波を間欠的に伝搬させる。この超音波の伝搬は、上流側から下流側へと向かう伝搬と、その逆に下流側から上流側へと向かう伝搬とを、交互に繰り返すように実行される。
【0019】
ガス流速演算回路3は、上記の超音波の伝搬時間に基づいてガス流速vを計測するものである。さらに詳細には、上流側から下流側へと向かう超音波の伝搬時間と、その逆に下流側から上流側へと向かう超音波の伝搬時間との時間差に基づいて、そのときのガス流速vを計測するものである。
【0020】
なお、上記の導通路1、超音波送/受信機器2a,2b、発振制御回路2c、ガス流速演算回路3は、ハードウェアとしては従来の一般的なものと同様のものを用いても構わない。
【0021】
ガス流量値積算回路4は、一度の計測期間ごとに得られたガス流量値qを積算して行き、ガス流量の積算値Qを得る(Q=Σq)ものである。このガス流量値積算回路4のハードウェアおよび機能は、従来の一般的なものと同様のものを用いても構わない。
【0022】
脈動計測回路6は、上記のガス流速vを計測する頻度よりも高い頻度で、圧力センサ7によって検出された圧力値に基づいてガスの脈動の周期Tsまたは位相の計測を行うものである。
【0023】
開始位相制御回路5は、計測期間Tどうしの間ごとに時間間隔Tdを設け、かつ複数の計測期間Tの開始タイミングの周期または位相を、脈動計測回路6によって計測された脈動の周期または位相とは異なるものとなるように、予め定められた所定の規則性に基づいて変化させるものである。
【0024】
この開始位相制御回路5が用いる所定の規則性としては、計測期間Tの開始位相(開始タイミング)を、例えば計測期間Tの0.1倍,0.2倍,0.3倍,…0.9倍のように等差数列的に毎回ずらして行き、0.9倍の次には再び0.1倍に戻って、上記を再度繰り返すようにしてもよく、あるいは計測期間Tの1/6倍,2/6倍,3/6倍…5/6倍,6/6倍のように、計測期間Tの開始タイミングが脈動の位相とは同期しないようにずらしてもよい。またその他にも、1/6倍,5/6倍,6/6倍,2/6倍,5/6倍…のように、ランダムにずらすようにしてもよい。あるいは、計測されたガスの脈動の周期Tsの1/12倍,2/12倍,3/12倍…12/12倍のように、ガスの脈動の周期Tsの周期を基準として用いて、その脈動の周期Tsの1/12倍などを1単位として計測期間Tの開始位相をずらすようにしてもよい。
【0025】
このような開始位相制御回路5による開始タイミングを変化させる手法のさらに詳細な一例についてを図2に基づいて説明する。ここでは、連続する計測期間T1,T2,T3…の開始タイミングすなわち開始位相を、脈動の位相と比べて、それぞれ0,4π/3,2π/3[rad]のようにずらすことを適宜に組み合わせて時間的に配置する場合についてを、一例として挙げる。なお、各計測期間T1,T2,T3の時間的長さは、いずれも一様に5Ts/6と設定されているものとする。また時間的に隣り合う計測期間どうしの間の時間間隔は一様にTs/2と設定されているものとする。
【0026】
図2にも明らかなように、計測期間T1,T2,T3の設定の各場合は、同図(A),(B),(C)に示したように、それぞれ単独ではいずれも正しい平均値にはなっていない。すなわち、t軸よりも上の部分のグラフが囲む面積と下の部分のグラフが囲む面積とが等しくならない。しかし、T1の場合とT2の場合とT3の場合との、全ての場合の値を積算(合計)すると正しい平均値を示す。すなわち、t軸よりも上の部分のグラフが囲む面積と下の部分のグラフが囲む面積とが等しくなることが分かる。このようにして、脈動に起因した誤差を解消して、正しいガス流量積算値を得ることができる。
【0027】
ここで、比較例として、図3に示したように、計測期間T1,T2…が一様に脈動の周期Tsの5/6倍となっており、かつ複数の計測期間Tどうしの間の時間間隔Td1,Td2…が一様にTs/2となっている場合についてを考えると、T1におけるガス流速vの計測値は、脈動の平均値すなわち正しい値よりも小となり、T2におけるそれは大となって、それら全体で1サイクルが構成されるが、その1サイクルの全体で計測された値を積算しても、脈動の平均値すなわち正しい計測値とはならない。
【0028】
なお、上記実施の形態では、超音波方式のガス流則計測手段を用いる場合の一例についてを述べたが、この他にも、種々のいわゆる推量式のガス流量計測手段などを用いてもよいことは言うまでもない。
【0029】
また、上記実施の形態では、ガス流量を計測するガスメータに本発明の流量計測方法を適用した場合について述べたが、本発明の適用はこれのみには限定されず、例えば水や揮発油系液体燃料のような液体の流量を計測する計測装置など種々の流量計測装置にも適用可能である。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、連続する計測期間どうしの間ごとに時間間隔を設け、かつその開始位相を所定の規則性に基づいて変化させることにより、脈動の周期あるいは位相がどのように変化しても、その脈動に起因して計測値に混入する誤差を複数の計測期間に亙って積算した際にそれらの誤差が過不足を互いに相補って、脈動が生じなかった場合に計測される流体の流量値と同様の正確な積算値を得ることができる。しかもそのように開始位相を所定の規則性に基づいて変化させることは、少ない消費電力量で実行することが可能であることから、流量計測装置の駆動電力の低消費電力化を達成できるという利点もある。
【0031】
また、流体の脈動の周期または位相と同期しないように、連続する計測期間の開始タイミングの周期または位相を積極的に毎回変化させることにより、脈動の周期あるいは位相がどのように変化しても、その脈動に起因して計測値に混入する誤差を複数の計測期間に亙って積算した際にそれらの誤差が過不足を互いに相補って、脈動が生じなかった場合に計測される流体の流量値と同様の正確な積算値を得ることができる。
【0032】
また、流体に生じる脈動の周期または位相を計測する脈動計測手段を備えた流量計測装置においては、低消費電力による計測が可能な圧力センサを用いるなどして、流体の脈動の周期または位相の計測を流体の圧力値に基づいて所定の頻度よりも高い頻度で繰り返すことによって、より低い消費電力量で脈動に関する頻繁な情報を得ることができるので、上記のような低消費電力化の達成にさらに寄与することができ、しかも脈動の周期や位相の正確な把握が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るガスメータの主要部の構成の概要を示す図である。
【図2】開始位相制御回路による時間間隔Tdの長さを変化させる手法のさらに詳細な一例についてを示す図である。
【図3】比較例として従来の計測方法による計測結果の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1・・・ 導通路、2a,2b・・・ 超音波送/受信機器、2c・・・ 発振制御回路、3・・・ ガス流速演算回路、4・・・ ガス流量値積算回路、5・・・ 開始位相制御回路、6・・・ 脈動計測回路、7・・・ 圧力センサ
Claims (7)
- 上流側から下流側へと流れる流体の流量または流速の値を一度の計測期間当たりに所定の頻度で間欠的に計測することを複数回繰り返し、前記一度の計測期間ごとに得られた値を積算する流速計測方法において、
前記計測期間の開始位相を所定の規則性に基づいて変化させる
ことを特徴とする流速計測方法。 - 前記流体に生じる脈動の周期または位相を計測し、前記計測期間の開始タイミングの周期または位相が前記脈動の周期または位相とは異なるものとなるように、前記計測期間の開始位相を所定の規則性に基づいて変化させる
ことを特徴とする請求項1記載の流速計測方法。 - 前記流体に生じる脈動の周期または位相を、該流体の圧力値に基づいて前記所定の頻度よりも高い頻度で繰り返して計測する
ことを特徴とする請求項1記載の流速計測方法。 - 上流側から下流側へと流れる流体の流量または流速の値を一度の計測期間当たりに所定の頻度で間欠的に計測することを複数回繰り返し、前記一度の計測期間ごとに得られた値を積算し前記流体の積算流量値を得る流量計測装置において、
前記計測期間の開始位相を所定の規則性に基づいて変化させる開始位相制御手段を備えた
ことを特徴とする流量計測装置。 - 前記流体に生じる脈動の周期または位相を計測する脈動計測手段をさらに備えると共に、
前記開始位相制御手段が前記計測期間の開始タイミングの周期または位相を前記脈動の周期または位相とは異なるものとなるように変化させる
ことを特徴とする請求項4記載の流速計測装置。 - 前記脈動計測手段が、前記流体の脈動の周期または位相の計測を該流体の圧力値に基づいて前記所定の頻度よりも高い頻度で行う
ことを特徴とする請求項4または5記載の流速計測装置。 - 前記流体に対して超音波を伝播させて、該超音波の伝播時間に基づいて前記流体の流量または流速を計測する超音波流量計測手段を備えた
ことを特徴とする請求項4及至6いずれか1項に記載の流速計測装置。
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