JP3819358B2 - 咬合器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科用の咬合器に関するものであり、特に人間の上下顎の運動を口外で正確に再現することが可能な咬合器に関する。
【0002】
【従来の技術】
咬合器は上顎と下顎の三次元上での配置関係を再現する機器であり、咬合器に取り付けた歯牙模型を用いて、上下顎の位置と下顎運動を口腔外で正確に再現して、歯の診断、治療に利用するものである。
【0003】
人間の下顎は咀嚼や発音や嚥下時には、それぞれ特徴ある運動をする。下顎が機能的に営む運動を機能運動という。下顎運動の運動空間の境界上で行われる運動を境界運動と呼び、境界運動の中には、咀嚼運動、すなわち食物を噛みきり、臼磨するときの下顎の運動も含まれる。
【0004】
前記境界運動は同一の軌道を通る再現性の高い運動であるため、口外でその動きをパンドグラフ(下顎の前方運動と側方運動を水平面と矢状面に連続的な運動経路として記録する口外描記装置のこと)にて採得し、咬合器上に再現させる手法が種々開発されており、従来より人間の顎運動を正確に再現する咬合器の改良研究が行われ、種々の発明がなされている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−316880号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平9−545号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、咬合器は矢状面と水平面との投影された模擬の下顎運動をできるだけ正確に再現できるように、種々改良がなされている。
しかし、咬合器で人間の上顎と下顎の三次元上での複雑な運動を正確に再現することは非常に困難であり、そのために生体親和性の高い補綴物を得ることも難しいことであった。補綴物の性能が劣ると、咬合異常を生じて異常な筋緊張を強いられたり、食べ物の咀嚼が上手く行えないなど、健康に深刻な影響を与えるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は人間の上顎と下顎の三次元上での運動をより正確に再現する咬合器を提供することである。また、本発明の課題は、生体親和性の高い補綴物の作製用の咬合器を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は次の(1)、(2)の解決手段で解決できる。
(1)左右一対の上下位置調整可能な支柱(13、35)と、該一対の支柱(13、35)の頂部付近に両支柱頂部同士を橋渡して接続する基部を備えた上顎弓(4)と、前記一対の支柱(13、35)の基部同士を橋渡して接続する基部を備えた下顎弓(3)と、該下顎弓(3)の先端部に設けられた台座(25)と、上顎弓(4)の先端部に設けられ前記下顎弓(3)の跳ね上げ板(25b)を有する台座(25)上を固定するネジ(24)を有する先端ピン(9)が接触滑走する上顎弓(4)と下顎弓(3)間の距離調整用のロッド(22)を備えた咬合器において、左右一対の上下位置調整可能な支柱(13、35)の頂部付近にそれぞれ互いに向き合う方向に進退自在に設けた顆頭球(1)を先端に設けた顆頭球パーツ(16、17)と、該顆頭球(1)を挟持するための上顎弓(4)基部の鉛直側面に回転自在に取付けられる水平方向に伸びる回転軸(6c)と該回転軸(6c)の回転角度測定用ゲージ(6e)を有する顆路フレーム(6)と、該顆路フレーム(6)の回転量を調整した後で、顆路フレーム(6)を上顎弓(4)に固定するために上顎弓(4)に設けられたノブ(41)と、前記顆路フレーム(6)と共に前記顆頭球(1)を挟持するために、前記顆路フレーム(6)の前記回転軸(6c)に平行して配置される顆路フレーム(6)の取付け面(6a底面)に回転自在に支持されるベネット用パーツ(5)と、下顎弓(3)の基部側に着脱自在に取り付けられ上顎弓(4)基部の底面に当接する伸縮自在の先端部を設けた上顎弓サーポートスティック(40)とを備えた咬合器
【0010】
本発明の前記咬合器では、顆頭球1を先端に設けた顆頭球パーツ16、17は顆頭球1と一体化した内筒パーツ16と該内筒パーツ1を内挿して締め付け可能な拡管形の外筒パーツ17からなり、上部支柱35には、内筒パーツ16を内挿した状態の外筒パーツ17を上部支柱35に取り付けた後に外筒パーツ7を上部支柱35に対して固定・遊嵌自在にするためのネジ式のノブ19と内筒パーツ16を外筒パーツ17内部で外筒パーツ17に対して固定・遊嵌自在にするためのノブ15を備えた構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明の前記咬合器では、ベネット用パーツ5には顆頭球1の位置調整と顆頭球保持を兼ねた軸方向に移動自在の顆頭球当接片7と、該顆頭球当接片7と螺合し、かつベネット用パーツ5の一つのフレーム(ベネットフレーム5b)を貫通して設けられ、顆頭球当接片7の軸方向への移動を行い、かつ顆頭球当接片7の前記軸方向への移動量を調整できる移動量調整部材30、32を設けた構成にしても良い。
【0012】
(2)咬合器の顆頭球を人間の顎関節に近い運動をさせるにあたって、
1)まず、請求項3記載の咬合器の各パーツがXYZ軸からなる三次元座標軸上で配置されている座標位置と前記各パーツ同士の当接の仕方が、それぞれ規定された初期値になっている状態であるゼロ設定を行い、
2)(a)ゼロ設定時の両方の顆頭球(1、1)を結ぶ直線に直交する方向の直線上にある水平方向のX軸方向への平衡側顆頭球(1)のゼロ設定時からの移動量、(b)ゼロ設定時の両方の顆頭球(1、1)を結ぶ直線上にある水平方向のY軸方向への平衡側顆頭球(1)のゼロ設定時からの移動量、(c)支柱(35)の長手方向である鉛直方向にあるZ軸方向へのゼロ設定時からの平衡側顆頭球(1)の移動量、(d)回転軸(6c)を中心とする平衡側フレーム(6)のゼロ設定時からの回転角度及び(e)前記(a)〜(d)における平衡側顆頭球(1)のゼロ設定からの前後方向への移動量を移動量調整部材(30、32)の回転により調整される平衡側顆頭球当接片(7)のゼロ設定からの移動量と平衡側顆路フレーム(6)の回転軸(6c)を中心とするY軸方向に平行な軸を中心軸とする咬合器調整用の平衡側顆頭球(1)の複数の設定回転角度の中の第一の所定角度分の回転角度により決め、平衡側顆頭球(1)がベネット用パーツ(5)の顆頭球滑走用のつの壁面(ベネットフレーム5aと5dの壁面)に無理なく当接するように顆路フレーム(6)の回転軸(6c)を中心とするY軸方向を中心軸とする前記第一の所定角度分の回転角度に平衡側のゲージ(6e)を調整した後に平衡側のノブ(41)を締め付けて固定するとともに顆頭球パーツ(16、17)のY軸方向への前記移動量を調整した後、平衡側のノブ(15)を締め付けて顆頭球(1)の位置を固定し、
3)平衡側のベネット用パーツ(5)の顆頭球滑走用の一つの壁面基準平面(A)に対して前記第一の所定角度分下向きに傾斜するように平衡側顆頭球(1)の顆路フレーム(6)を回転させ、かつ前記基準平面(A)に対する所定の傾斜角度だけ跳ね上げ板(25b)を傾斜させて、移動量調整部材(30)を回転させて顆頭球当接片(7)を押し出し、顆頭球当接片(7)に当接している平衡側の顆頭球(1)を移動させ、
4)前記平衡側顆頭球(1)の移動開始時に、作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の義歯との間で良好な接触状態と先端ピン(9)が跳ね上げ板(25b)に軽く接する状態とが同調するように下顎の義歯の蝋の形態修正を行い、
5)に、平衡側の上下第一小臼歯間の上下歯牙模型の隙間を蝋材埋めて、平衡側の上下第一小臼歯間の上下歯牙模型の間の距離が変わらないようにし、
6)次いで上顎弓サポートスティック(40)を押し上げて上顎弓(4)の底面に接触させて、平衡側ベネット用パーツ(5)と平衡側顆路フレーム(6)の組合せ体が回転軸(6c)を中心とするY軸方向回転軸とする回転時に上顎弓(4)がローリングすることを防止し、
7)その後、平衡側の支柱(35)を上方へ移動できるようにしておいて、平衡側のベネット用パーツ(5)の顆頭球滑走用壁面前記基準平面(A)に対して咬合器調整用の平衡側顆頭球1の複数の設定回転角度の中の第二の所定角度分になるように平衡側のゲージ(6e)により調整した後に平衡側のノブ(41)を締め付けて固定し、平衡側顆頭球(1)と平衡側ベネット用パーツ(5)の顆頭球滑走用壁面(5aと5dの壁面)が接触する位置において平衡側の支柱(35)を固定し、平衡側の跳ね上げ板(25b)を前記第二の所定角度に対応する角度に傾斜させ、先端ピン(9)固定用のネジ(24)を緩めて平衡側の跳ね上げ板(25b)と先端ピン(9)が接触するように移動調整した後、先端ピン(9)固定用のネジ(24)を締め付けて固定し、
8)さらに、前記3)と4)の操作を必要な平衡側顆頭球1の咬合器調整用の平衡側顆頭球1の咬合器調整用の設定回転角度分だけ繰り返しながら作業側及び平衡側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯が小臼歯の下顎の義歯との間での接触状態が先端ピン(9)と跳ね上げ板(25b)との接触が常に同調していることで確認しながら義歯(歯牙模型)の形態修正を行うことを特徴とする請求項記載の咬合器を用いる補綴物の作製方法。
【0013】
本明細書で使用する主な用語の定義は以下の通りである。
下顎の前方運動の過程で、下顎頭は下顎窩内で関節結節に向かって前進し、この結節の形態に沿う関節円板を介して下降する。このとき下顎頭が示す運動経路を矢状目に投影したものを、矢状頭前方顆路という。矢状頭前方顆路と水平基準面とがなす角度は、矢状頭前方顆路傾斜角と呼ばれ、その平均は有歯顎では41度、無歯顎では29度であるといわれている。また、側方運動中に非作業側の下顎が示す運動を矢状面に投影したものを、矢状側方顆路と呼ぶ。
【0014】
また、矢状面とは、頭蓋骨の矢状縫合と平行で身体を左右に分かつ垂直な面であり、水平面と前頭面とに直角に交わる面である。さらに、ベネット角とは、非作業側の運動路の方向が正中矢状面となす角度を水平側方顆路角といわれる。これをベネット角とも言い、作業側の下顎頭の回転様の外側運動をベネット運動と呼び、側方運動時に非作業側の下顎頭が、水平面で正中矢状面となす角度でもある。
【0015】
前記作業側とは、側方運動時に下顎が移動する側のことであり、咀嚼運動中に食物が作業側歯列上に集められて粉砕されるために、このように呼ばれている。また、側方運動とは、一方の下顎頭が顎関節窩内で回転し、他方の下顎頭が前下内方へ移動することによって発生する下顎全体の回転運動をいう。この側方運動中に下顎が移動する側を作業側と呼び、その反対側を非作業側又は平衡側と呼ぶ。側方運動は下顎の作業側へのわずかな移動を伴う不均整な旋回運動である。側方運動中、作業側の下顎頭は回転しながらわずかに外側に移動する、この外方運動をベネット運動と呼ぶ。
【0016】
また、咬頭嵌合位とは上下歯列の相対する咬頭と斜面が最大面積で接触し、咬頭が密接に嵌合し安定した状態のことであり、最大咬頭嵌合位とは上下の歯牙が最大面積で接触して、きっちりとかみ合っている状態をいう。
【0017】
正中線とは頭蓋骨に引っ付いている上顎骨の正中線を意味しており、左右上顎骨の癒合部である口蓋正中縫線の直線部の延長線をいう。
【0018】
以上の専門用語の解説は主に保母須弥也編著「咬合学事典」株式会社書林(昭和58年発行)によった。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
本実施の形態の咬合器の鳥瞰図を図1に示し、前方からの鳥瞰図を図2に示す。咬合器は補綴物作製用の下顎の歯形を支持する下顎弓3と補綴物作製用の上顎の歯形を支持する上顎弓4とからなり、下顎弓3と上顎弓4とは下顎弓3の後方の両端に固定された、一対の基部支柱13R、13Lと上顎弓4の前方に伸縮自在のロッド22と、該ロッド22の下端に固定された先端ピン9で上下間隔が維持される。なお下顎弓3の先端部にはインサイザルテーブル25と先端ピン(インサイザルピン)9が設けられている。インサイザルテーブル25にはインサイザルピン9の先端が当接する規定位置設定板25aとその両側に該規定位置設定板25a端部を中心に傾斜自在の跳ね上げ板25bが設けられている。一対の基部支柱13R、13Lの頂部には上下方向に昇降自在に設けられた上部支柱35R、35Lが設けられている。上部支柱35R、35Lの上下方向位置調整後の固定はノブ34R、34Lで行われる。
【0020】
左右の上部支柱35R、35Lの前後方向をX軸とし、上部支柱35R、35Lへの後述の顆頭球1の設置位置を結び前記X軸に直交する仮想線をY軸とし、上部支柱35R、35Lの長手方向(鉛直方向)をZ軸とする。
【0021】
一対の上部支柱35R、35Lは上顎弓4の基部とベネット用パーツ5と顆路フレーム6および顆頭球1、内筒パーツ16、外筒パーツ17を介して橋渡しされる。
上顎弓4の基部の鉛直方向側面にベネット用パーツ5と顆路フレーム6が配置されている。
【0022】
また、図3に示すように上部支柱35R、35L側に取り付けられた顆頭球1(人間の下顎頭に相当する)は、該顆頭球1を先端に固定して上部支柱35R、35Lを水平方向に貫通して支持する内筒パーツ16と一体物であり、該内筒パーツ16は外筒パーツ17の内部に貫通して設けられ、該外筒パーツ17はノブ15で締め付けることにより内筒パーツ16と固着される。
【0023】
外筒パーツ17には、その長手方向に切欠き17aが設けられており、ノブ15の締め付けで、その切欠き17a部分が変形して、外筒パーツ17により内筒パーツ16が強固に締め付けられて顆頭球1の位置が固定される。
【0024】
ベネット用パーツ5R、5L(以下単にベネット用パーツ5と記すことがある)と顆路フレーム6R、6L(以下単に顆路フレーム6と記すことがある)の組合わせ体(ベネット用パーツ5と顆路フレーム6の組み合わせ体を顆路ハウジングパーツと記すことがある)を図4、図5及び図6に示す。図4は顆路ハウジングパーツを咬合器の前面から見た組み立て手順を示す分解図であり、図5は顆路ハウジングパーツを咬合器の側面から見た組み立て手順を示す分解図(図5(a))と矢印A方向からの矢視図(図5(b))であり、図6は顆路ハウジングパーツの底面図である。
【0025】
ベネット用パーツ5は、図5に示す側面視略コ字状の上面側の長手ベネットフレーム5aと小ネジ30と大ネジ32設置部側の後側ベネットフレーム5b、底面側ベネットフレーム5c及び側面側の付属ベネットフレーム5dを備えている。顆頭球1は前記ベネットフレーム5a、5c、5dの内壁面に同時に当接する大きさに設計されている。これらの内壁面は顆頭球1が接しながら動くので、滑走面と呼ぶことがある。
【0026】
顆路フレーム6はベネット用パーツ5を回転自在に支持し、ベネットフレーム5aの上面に接する底面を有する顆路フレーム本体6aと該顆路フレーム本体6aと直交する向きに設けられた側面フレーム6bと、該側面フレーム6bに設けられた上顎弓4の鉛直側面に設けられる係合穴(図示せず)に回転自在に挿入される回転軸6cと該側面フレーム6b上に設けられた顆路フレーム6の回転角度を測定するゲージ6eからなる。
また、顆路フレーム6の回転量を調整した後で、顆路フレーム6を上顎弓4に固定するために上顎弓4に設けられたノブ41を設けている。
【0027】
ベネット用パーツ5の長手ベネットフレーム5aの上面部に突設されたネジ部5eを顆路フレーム本体6aの中央部を貫通する穴6gに該顆路フレーム本体6aの裏面側から挿入してベネットフレーム用ネジ6dでネジ部5eを締め付け自在とすることで、ベネット用パーツ5は顆路フレーム6に対して回転自在に取り付けられる。また、ベネット用パーツ5の後側ベネットフレーム5bには二重ネジ(小ネジ30と大ネジ32)で進退自在に顆頭球押圧用ネジ8を貫入している。顆頭球押圧用ネジ8の先端に顆頭球当接片7が設けられているので、ネジ8を二重ネジ30、32に螺合して該顆頭球当接片7を規定位置に保持するように調整することができる。
【0028】
また、図4〜図6に示すように顆路フレーム6にバネフレーム12が取り付けられる。バネフレーム12は、その基部に設けた穴12a(図4)に回転自在のスリーブ18を挿入し、該スリーブ18内にボルト21を挿入して、該ボルト21を顆路フレーム本体6aの裏面に固定する。またスリーブ18の外周にはバネ20を巻き付けでいるので、バネフレーム12はスリーブ18のまわりに矢印A方向(図6)に付勢される。
【0029】
顆頭球当接片7は顆頭球押圧用ネジ8の先端に設けられ、該顆頭球押圧用ネジ8がベネット用パーツ5の後側ベネットフレーム5bの内側からにねじ込まれるので、顆頭球当接片7がベネット用パーツ5内で上部支柱35に取り付けられた顆頭球1に当接させることができる(顆頭球当接片7と顆頭球押圧用ネジ8は一体物にしても良い)。また、バネフレーム12の先端部には図4に示すように折曲部12bがあり、該折曲部12bと前記顆頭球当接片7で顆頭球1を挟み込むように挟持することで、顆頭球1はベネットフレーム5a、5c、5dの三方に壁面に押しつけられて安定的にベネット用パーツ5と顆路フレーム6間に保持される(図5、図6)。
【0030】
また、顆頭球1が顆頭球当接片7とバネフレーム12とベネットフレーム5a、5c、5dの壁面の間に保持されるので左右の頂部支柱35R、35Lの間に上顎弓4の基部が橋渡しされる。
こうして、顆頭球当接片7とバネフレーム12の間に挟持された顆頭球1を中心に上顎弓4が回転軸6cを中心とするY軸方向を中心に回自在になる。
ベネットフレーム5の壁面5a、5c、5dが形成する空間部内に顆頭球当接片7進退自在に配置され、図5に示すように外周面にネジ山が設けられた円筒状の顆頭球押圧用ネジ8をベネットフレーム5bに取り付けた後に顆頭球当接片7は円筒状の顆頭球押圧用ネジ8の先端にネジ止めされる。また顆頭球押圧用ネジ8を内部に挿入し、外周面にネジ山設けた中空軸ネジ32aを備えた大ネジ32と、前記中空軸ネジ32aを貫通して大ネジ32より突出するネジ部材8の先端部を螺合する内周面に雌ネジ(図示せず)を設けた前進用小ネジ30を備えている。
【0031】
大ネジ32は左に回転させることにより顆頭球1に対して顆頭球当接片7を所定量後退させる場合に用い、小ネジ30は右に回転させることにより顆頭球1に対して顆頭球当接片7を所定量前進させる場合に用いる。これら大ネジ32の前進と小ネジ30の後退は前記大ネジ32の中空軸ネジ32aの外周面のネジと小ネジ30の内周面雌ネジのネジ山の向きで決めることができる。
【0032】
本実施の形態の咬合器では、前述のように小ネジ30を右回転させて顆頭球当接片7に当接する顆頭球1を前方に押し出すことができる。また大ネジ32を左回転させることで顆頭球1を後退させることができる。また、顆頭球1はバネ20により付勢されるバネフレーム12により常時後方(小ネジ30と大ネジ32側)へ付勢されている。すなわち、大ネジ32と小ネジ30をそれぞれ左右方向にそれぞれ360°回転させることにより、顆頭球当接片7を1mmだけ、それぞれ前進移動及び後退移動させることができる。顆頭球当接片7を1mm移動させることによりバネフレーム12で付勢された顆頭球1がそれぞれ前進移動及び後退移動する。長手ベネットフレーム5aには顆頭球当接片7の移動距離を計測するゲージ5fが設けられている(図5)。
【0033】
また、大ネジ32を右に目一杯回転させた後、そのまま指で保持しておき、小ネジ30を左回転させて締め付けると後述の「ゼロ設定」位置に顆頭球1を保持できる。
【0034】
顆路フレーム本体6aの係合穴6gに挿入される長手ベネットフレーム5aに設けられたネジ部5eを回転軸として顆路フレーム本体6aの周りにベネット用パーツ5は回転可能になる。図7のベネット用パーツ5と顆路フレーム6の組み立て体(顆路ハウジングパーツ)を下方から見た図に示すように、小ネジ30を右回転させて顆頭球当接片7を前進させる場合には、図7(a)の初期位置からベネットフレーム5aは側方(ベネット角として)内方(咬合器の中心に向かう方)にX軸に対して0°〜35°の範囲で角度を変更でき(図7(a)と図7(b))、同様に側方外方(咬合器の中心から離れる方)に向けてX軸に対して0°〜45°まで角度を変更できる(図7(a)と図7(c))。これらのX軸に対する角度変更は顆路フレーム6のゲージ6f(図1)で測定できる。
【0035】
また、顆頭球当接片7を前進させる場合と後退させる場合のいずれの場合にも、上顎弓4の鉛直方向の側面の係合穴に回転自在に挿入される顆路フレーム6の回転軸6cを中心軸として顆路ハウジングパーツ5,6をY軸を回転軸として他のどのパーツにも干渉せずに下方へ90°まで回転可能であり、同様に上方へ90°まで回転可能である。すなわち360度回転可能となっている。上顎弓4の鉛直方向の側面に接する顆路フレーム6の側面フレーム6bには回転軸6cを回転中心とする回転角度用ゲージ6eが設けられている。
【0036】
本実施の形態の咬合器では、こうして顆頭球1は後方へ5mm、前方へ23mmの範囲で移動出来、また上方へ15mm、側方(Y軸方向)へ5mm移動できる。
【0037】
また、このように顆頭球1の空間上の位置を決められた範囲内で任意に設定でき、またその任意に設定した位置はゲージ5f、6e、6f及び小ネジ30と大ネジ32の回転量で測定できるので、「ゼロ設定」位置に復帰が容易にでき、再現性高い義歯の作製及び、義歯の修理などが非常に能率的に行える。
【0038】
さらに、上記した上顎弓4とベネット用パーツ5と顆路フレーム6からなる顆頭球1の支持構造体と、後述する上顎弓サポートスティック40により、顆頭球1の運動時の任意の位置からの運動時の角度の変更が上顎弓4のローリング無しに可能となる。その結果、後述の顎運動検査装置よりのデータに基づいた顎関節の動きと同調した犬歯誘導路及び他歯の誘導路を与えることが可能となり、違和感の無いスムーズな顎運動ができ、顎関節等に対して負担をかけない補綴物を作製することが可能となった。
【0039】
また、上顎弓4の先端部4aの外側面は鉛直方向内側に緩く曲がった形状をしており、この形状はガイド部材23の上顎弓4に接する側面と同一曲面を持っている。ロッド22を上下調整する同じく緩く鉛直方向に曲がったガイド部材23と上下調整した後のロッド22を固定するネジ24が設けられ、ロッド22の下端に先端にインサイザルガイドテーブル25に当接する先端ピン9が接続されている。
【0040】
先端ピン9のインサイザルガイドテーブル25に当接する場合のロッド22の長さを調整することで上顎弓4の空間上に配置位置を決めることができ、またロッド22は直立しているが、ガイド部材23の上顎弓先端部4aの外側面に接する側面は顆頭球1の中心点を中心とした半径を持つ円弧の一部となっているためにこのロッド22の高さを変更しても先端ピン9の先端は規定位置設定板25aとの前後方向(X軸方向)の位置関係は常に一定である。
【0041】
ロッド22が上顎弓4の先端部に設けられたガイド部材23の側面に設けられたゲージ23aにより、先端ピン(インサイザルピン)9の先端部が規定位置設定板25aへ当接する高さ位置を調整して、適切な高さ位置でネジ24をガイド部材23に締め付けて決める。
【0042】
インサイザルテーブル25は中央の規定位置設定板25aと該規定位置設定板25aを挟んで、その両側に鏡面対象に跳ね上げ板25bL、25bRが設けられる。
【0043】
図8、図9に跳ね上げ板25bL、25bRの傾斜角度に、ある規定された平面(上顎弓4のなす平面と平行な平面)に対して設定された顆路角(B:ゲージ6eで読む角度)に対応するようにTNMシステム(後述する)により算出された角度(E)が設定されているとき、任意の咬合点(例えば、上顎模型の犬歯と下顎模型の対応する歯の噛み合わせ点)(C1)における前記平面(上顎弓4のなす平面と平行な平面)に対する咬合誘導路角(D)がある設定された平面(上顎弓4のなす平面と平行な平面)に対して設定された顆路角(B)と同等の角度であるとき(通常は、咬合誘導路角(D)は、ある設定された平面(上顎弓4のなす平面と平行な平面)に対して設定された顆路角(B)と同等の角度を与える。)、TNMシステム(後述する)により算出された角度(E)を跳ね上げ板25bL、25bRの傾斜角度(I)(跳ね上げ板25bR、25bLに付してある目盛り25bfにより読み取ります)に代入して使用するその方法として平衡側の顆路フレーム6R又は6Lに顆路角(B)を設定できるように、ゲージ6eにより調整した後に、平衡側の方の跳ね上げ板25bR又は25bLが角度(E)の傾斜角度をなすように調整し、平衡側のベネット用パーツ5をゲージ5fにより側方(ベネット角として)内方(咬合器の中心に向かう方)にX軸に対して約8〜9°回転させる。これは作業側顆頭球1の中心点を中心とし、ある距離を隔てた平衡側顆頭球1が動く際に、ベネットフレーム5dの内側の面が、X軸に平行位置にあると平衡側顆頭球1とベネットフレーム5dが干渉してスムーズに動けないために、ベネットフレーム5dをX軸に対して約8〜9°内方(咬合器の中心に向かう方)へ回転させるものである。平衡側顆頭1R又は1Lの運動を妨げないようにして作業側顆頭球1又は1を上下、前後、左右に固定し、回転運動のみに規制し、平衡側顆頭球1R又は1Lを咬合器に対して前下内方に滑走運動させることにより、任意の咬合点(C1)は、前記平面(上顎弓4のなす平面)に対して規定された顆路角(B)と同じ角度に咬合誘導路角度(D)を持つ運動軌跡(C2点)を描くことが可能となる。なお平衡側顆頭球1R又は1Lが座標点(C1’)から顆路角(B)だけ下向きに傾斜して移動した時の座標点(C2’)を図8と図9には示している。図8及び図9では左側の顆頭球1Lを作業側としている。
【0044】
また、作業側顆頭球1L(簡単にするため顆頭球1Lを作業側顆頭球とする)が後方および側方偏位する場合は、その偏位の角度および距離を大ネジ32Lおよび長手ベネットフレーム5aLに設けたゲージ5fL、顆路フレーム6Lの側面フレーム6bLにあるゲージ6eLにより「その偏位位置を設定するが」、このとき作業側のノブ15Lを緩めて作業側顆頭球1Lがベネットフレーム5Lの側面側の付属ベネットフレーム5dLに無理なく当接するように内筒パーツ16Lを調整した後に、作業側のノブ15Lを締め付けて内筒パーツ16Lを固定する。その後、作業側顆頭球1Lを上下、前後、左右に固定し、回転運動のみができるように規制し、前記のように調整された平衡側顆頭球1Lを咬合器に対して前下内方に運動させることにより、任意の咬合点(C1)を、前記平面(A)に対して規定された顆路角(B)と同じ角度の咬合誘導路角度(D)を持つ運動軌跡を描かせることが可能になる。このように跳ね上げ板25bR又は25bLは任意の咬合点(C1)の運動時の、ある規定された平面(A)に対しての咬合誘導路角度(D)を規定された顆路角(B)のもとに規制する場合に使用する。
【0045】
上記構成から成る咬合器の作動の説明をする。
(1)「ゼロ設定」
ゼロ設定とは上顎弓4と下顎弓3のX軸に対する小ネジ30を左廻りに締め切った状態で且つ、大ネジ32を右廻りに締め切った状態になっており、左右の各顆頭球1が顆頭球当接片7およびベネットフレーム5a、5b、5cの各壁面と接触し、先端ピン9とインサイザルガイドテーブル25の規定位置設定板25aの規定位置が合致し、上顎弓4の先端の高さ基準設定時の標準位置設定線4fがガイド部材23の標準位置ライン23bと合致し、先端ピン9の先端がインサイザルガイドテーブル25の規定位置設定板25aの上面に当接している状態をゼロ設定という。すなわち、咬合器を使用するに当たって、咬合器の各パーツがXYZ軸からなる三次元座標軸上で配置位置が規定された初期値になっており、前記各パーツ同士の当接の仕方が、規定された初期値になっている状態をゼロ設定という。
【0046】
このようなゼロ設定をする意義を次に説明する。
咬合器上において技工士が補綴物を作製する際に、先ず初めに最大咬頭嵌合位(上下の歯牙が最大面積で接触して、きっちりとかみ合っている状態)において患者の歯牙模型を取り付け、その後に、支台歯(歯科医により削合形成された歯牙を型取った模型(歯牙模型の中に取り込まれて存在する作製しようとする歯牙の部分を支台歯と言う。)で、これから補綴物を作製しようとする歯の模型)に蝋を築盛したり、削合したりしながら形態修正作業をするが、その際にゼロ設定を崩さざるを得ない状況が発生することもある。
なお、歯牙模型とは、口腔内の型を採得した後に、通常石膏を流し込んだ模型をいい、補綴物とは前記の模型を基に作製した患者の歯冠製作物の歯型をいう。
【0047】
そして、蝋を用いて側方ガイドの形成など、歯冠形態の作製が完了した後に、最後に、もう一度最大咬頭嵌合位にて咬合接触の確認をするが、この時に容易に、かつ正確にゼロ設定位置に咬合器を戻した後に上下顎歯牙模型を配置できないと、作製中の歯牙の咬頭嵌合位での歯牙接触が他歯牙の最大咬頭嵌合位での咬合接触位(上下歯牙の接触のこと)と同じく作製されていることが確認できないこととなり、不確実な咬合接触のまま最終補綴物を作製してしまうことになりかねない。
【0048】
このように、ゼロ設定が、容易に且つ正確に再現できることは、補綴物の歯冠形態の作製上で非常に大切なことである。
また、最大咬頭嵌合位における他歯(小臼歯、大臼歯)との咬合の高低差は12μm以内に作製しなければならないが、このような要求を満足させるためには、前記ゼロ設定が誤差無く設定できなければならない。
【0049】
(2)「顆頭球1のY軸方向移動」
1)例えば、下顎弓3自体を上顎弓4に対して前方に向かって右側(図1の矢印A方向)に真横に移動させる際には、左右の内筒パーツ16と外筒パーツ17(なお、内筒16L、Rと外筒17L,RとでL,Rの区別がされていない理由は、この2つが1つのパーツとなっているようにするためである。)が当接され、かつ左右の内筒パーツ16と外筒パーツ17がスライドしないようにノブ15にて締め付けられている事を確認した後に前記ゼロ設定をし、右側の顆頭球1R下顎弓3の上部支柱35Rに対して動かないように外筒パーツ17Rを締め付けているノブ19Rを緩めて、外筒17Rと右側の顆頭球1Rが移動できるようにし、左側の顆頭球1Lと一体の内筒パーツ16Lを挿入した切欠き17aLとネジ部17bLを備えた外筒17Lのネジ部17bLが螺合する上部支柱35Lの側面のノブ15を緩めて外筒パーツ17Lの切欠き17aLを拡げ、内筒パーツ16Lが可動できるようにした後に、下顎弓3自体を上顎弓4に対して前方に向かって右側(図1の矢印A方向)に所定量移動させた後にノブ19Rを締め付けて右側の顆頭球1Rを下顎弓3の上部支柱35Rに対して固定し、右側の顆頭球1Rと左側の顆頭球1Lが各々左右のベネットフレーム5a、5c、5dの各壁面に当接するように再びノブ15Lを締め付けて外筒パーツ17Lと内筒パーツ16Lを固定する。
2)のとき、左右顆頭球1L、1R間の距離が動かないように、左右の支柱13L、13Rはトーションバー2で連結しておく。
【0050】
トーションバー2があるため、上顎弓4を左右の顆頭球1、1を中心に上側に開くように回転させる動作で顆路ハウジングパーツ5、6がトーションバー2で受け止められるので、上下顎弓3、4への上下の顎模型の取付け、取り外し作業が容易になる。
【0051】
従来の咬合器では顆頭球1自体をY軸方向に移動させるのではなく、顆頭球1を取り囲む壁面を備えた本発明のベネット用パーツ5に相当する保護枠における顆頭球1に当接する位置規制部材に取り付けられたネジを調整するなどの方法で顆頭球1に当接する位置規制部材を動かして間接的に顆頭球1を移動させていた。このため左右一対の顆頭球1の保護枠の位置規制部材を移動するためのネジとして共に右ネジを通常用いるが、右ネジであるとネジを締め付ける際に左側の位置規制部材が緩んでしまい、下顎弓3と上顎弓4にガタつきが頻繁に発生してしまう。
本実施の形態では顆頭球1そのものをY軸方向に移動させるので、前記従来技術のように下顎弓3と上顎弓4ががたつき始めることはない。
【0052】
(3)「顆頭球1の前後方向への移動」
従来の咬合器顆頭球1を前後に移動させるために顆頭球1の保護枠の後方にソケットを差し込んで顆頭球1を前後移動させたり、顆頭球1の保護枠の後方にネジを埋め込んで、そのネジを廻して前後移動させる方法があった。
【0053】
しかし、前者においては任意の位置(1/10mm単位の規制能力)にソケットを停止させることができず、後者においては、ネジの回転で容易に且つ正確に元の位置に戻すことができず、顆頭球1を移動させた後に、技工操作上において最大咬頭嵌合位の再現(ゼロ設定)をすることが困難であった。
【0054】
これらの従来の咬合器の欠点を解決するために本実施の形態では、図4〜図6に示すように顆頭球1を前下方よりバネフレーム12とバネ20により後方へ押し付けておき、前述のように大ネジ32を左回転に廻すことにより、顆頭球1を後方移動させることができるようにして、小ネジ30を右回転に回すことにより前方移動させることができるように作製し、かつ、顆路フレーム6とベネット用パーツ5を回転軸6cを中心とするY軸方向を回転軸として360度回転させる事が可能なように顆頭球押圧ネジ8および大ネジ32に中空軸ネジ32aを設けている。
【0055】
さらに、前述のようにベネット用パーツ5と顆路フレーム6を前方傾斜させる時に回転軸6cを中心とするY軸方向を回転軸として下方へ、又は上方へベネット用パーツ5のフレーム5a〜5dの滑走面が水平位置(0°)から90°まで可変でき、ベネットフレーム5は図7に示すよう側方(ベネット角として)へ内方(咬合器の中心に向かう方)に対して35°まで可変でき、同様に外方(咬合器の中心から離れる方)に対して45°まで可変できる。
【0056】
顆頭球1の後方への偏位が可能になったので、次のような患者の補綴物を正確に作製できる。
通常は顎関節の側方運動時に作業側顆頭は動かないが、後方に動く人もいる。前記通常時は動かない作業側顆頭の最大咬頭嵌合位(ICP)を基準に平衡側顆頭を運動させて作業側の、例えば犬歯を補正をするが、前記作業側顆頭は後方偏位する場合には、作業側顆頭を後方位置に移動させ、その後、平衡側顆頭を正常時の後述する式(1)、(2)で例示される方法で作業側の、例えば犬歯を補正する。このとき、顆頭球1が後方移動することができる本実施の形態の咬合器で始めて、補正作業が可能になる。
【0057】
(4)「平衡側の顆路フレーム6R(右側を平衡側とする)の角度を緩斜面に変更」
図10(a)に示すように位置(a)から(b)(図12参照)へ移動するときの角度(上顎弓4のなす平面に対して例えば52度)になるように顆路フレーム6Rの側面フレーム6bRにあるゲージ6eRを設定し、顆頭球1Rを小ネジ30Rを右回転させて長手ベネットフレーム5aRと側面側の付属ベネットフレーム5dRに接触させながら任意の位置まで前方移動させた後に、位置(b)から位置(c)(図12参照)へ移動するときの角度(上顎弓4のなす平面に対して例えば39度)になるように顆路フレーム6Rの側面フレーム6bRにあるゲージ6eRを設定し、位置(a)から位置(b)へ移動するときの角度より緩傾斜面に変更しようとすると、図10(b)に示すようにしている滑走点が離開して隙間Sが生じてしまうこととなるが、現実には長手ベネットフレーム5aの底面(滑走面)と顆頭球1の上面の該底面に当接してしまい、従来の咬合器の動きでは上顎弓4の前方から咬合器を見た際の傾斜において上顎弓4の右側が左側より低くなる傾斜となる、結果として右下がりとなって上顎弓4の右側における上下歯牙模型間の距離が口腔内の実際の動きに対して小さくなり、実際の顆路角よりも緩斜面な状態に犬歯誘導路および他歯(小臼歯、大臼歯など)誘導路角を作製してしまうこととなる。
【0058】
このため顎運動時において、顎関節に対して過度の負担を負わせてしまうことになる。
これを防止するには、図10(c)及び図11の咬合器の要部側面図(図11(a))と背面図(図11(b))に示すように顆頭球1Rを任意の位置まで前方移動させた後に、上顎弓4と任意の位置まで前方移動させた顆頭球1Rの上下位置関係を前方移動前と変えないようにするために上顎弓4が前方から咬合器を見て(正面視)左右方向に傾かないようにする上顎弓サポートスティック40を咬合器に取り付けた。
【0059】
上顎弓サポートスティック40は下顎弓3の基部の背面側の側面に左右の二カ所設けられた設置部の何れかに着脱自在に取り付けられるが、実際には前下方移動させる側(平衡側)に取り付ける。上顎弓サポートスティック40の把持部40aは回転することで、先端部40bを昇降させて上顎弓4と当接させることができる。
【0060】
顆路ハウジングパーツ5,6の前記傾斜角度を緩斜面に変更したとき、長手ベネットフレーム5aL又は5aRの底面(滑走面)と顆頭球1L又1Rの上面の滑走点が離開するが、上顎弓サポートスティック40の把持部40aは回転することで、先端部40bを昇降させ上顎弓4と当接させた後に、ノブ34R又は34Lを緩め、上部支柱35R又は35Lを上方へ押し上げて、長手ベネットフレーム5aRまたは5aLの底面(滑走面)と顆頭球1Rまたは1Lの上面の滑走点が接触するようにした後に、ノブ34R又は34Lを締め付けて上部支柱35R又は35Lと下部支柱13R又は13Lとを固定する。
【0061】
人間が右の上下歯牙でものを咬んでいるときは左側、左の上下歯牙でものを咬んでいるときは右側、すなわち咬んでいる側と反対側の上下顎臼歯咬頭の間に隙間ができる。これを臼歯離開というが、顎運動(咀嚼、嚥下、発音運動)時の水平側方咬合圧から歯牙を守るため生理的には必要不可欠のものとされている。そして咬む側の上下歯牙を作業側、その反対側の臼歯離開がある側の上下歯牙を非作業側(平衡側)という。
【0062】
上述のように、人間が上下歯牙で食物を咬んでいる側を作業側といい、作業側の顆頭に対応する顆頭球(咬合器を側方運動させる時に原点となる、原則として回転運動をし、滑走運動はしないとされる顆頭球)1L又は1Rからできるだけ離れた位置で、平衡側顆頭に対応する顆頭球(咬合器を側方移動させるときに大きく移動する顆頭球)1R又は1Lにできるだけ近い位置に上顎弓サポートスティック40を取り付ける事により安定的に平衡側顆頭に対応する顆頭球1R又は1Lを下方から支持することができる。
【0063】
このように犬歯誘導路および他歯誘導路を作製する事により、顎運動検査装置機(GAMMA社のCADIAXシステム)およびTNMシステム(後述する)よりのデーターに基づいた顎関節の動きと同調した犬歯誘導路及び他歯の誘導路を与えることが可能となる。
【0064】
(5)「前下方へ顆頭球が移動した場合の矢状前方顆路傾斜角の設定」
咀嚼運動時の顆頭は前下方へ移動しながら元の位置に戻る複雑な運動をする。そのために、咬合器の前下方へ顆頭球を移動させる際の上顎弓4と下顎弓3の動きが人間の上顎と下顎の咀嚼運動をできるだけ忠実に再現できるものであることが望ましい。
【0065】
咀嚼運動中の矢状前方顆路傾斜角は前述のよう有歯顎では約33°であるといわれているが、その矢状前方顆路傾斜角は人種間で異なり、また同一人種でも個人差がある。
【0066】
従って生体親和性の高い補綴物を作製するために、図12に本実施の形態の咬合器で始めて可能になった顆頭球1の運動時の任意の位置からの矢状前方顆路傾斜角を変更した場合の角度を示す。図12に示すように矢状前方顆路傾斜角を52°(請求項4の第一の所定角度分の回転角度)から39°(請求項4の第一の所定角度分の回転角度)、39°から22°に変更するには次のような手順で行う。このとき図12に示すように前記各角度はそれぞれある規定された上顎弓(4)と平行な平面(A)に対して傾斜角度52°、39°、20°を設定する
【0067】
以上説明した構成からなる咬合器を用いて、以下に説明する顎運動検査装置(GAMMA社製のCADIAX COMPACT)により周知の方法でデータを得てこのデータに基づきTNMシステム(後述する)により顎関節の動きと同調した犬歯誘導路及び他歯(大小臼歯など)の誘導路を与えることが可能となる。なお、ある規定された基準平面(A)に対する平衡側顆頭の滑走角度と犬歯の嵌合誘導路角が同調することにより顎運動に犬歯の咬合が同調して、顎関節及び犬歯の両方に負担が掛からないことになる。
【0068】
(6)「右側(A方向)と反対方向への側方運動時の場合の咬合器調整方法」
1)「ゼロ設定」を行い、作業側顆頭球1Lが側方運動時に偏位しない場合は「ゼロ設定」の状態のまま行うが、作業側顆頭球1Lが後方および側方偏位する場合は、その偏位の角度および距離を大ネジ32Lおよび長手ベネットフレーム5aの側面にあるゲージ5fL、顆路フレーム6Lの側面フレーム6bLにあるゲージ6eLに入れるが、この時に作業側のノブ15Lを緩めて作業側顆頭球1Lがベネット用パーツ5Lの側面側の付属ベネットフレーム5dLに無理なく当接するように内筒パーツ16Lを調整して作業側のノブ15Lを締め付けて内筒パーツ16Lを固定する。その後、平衡側(側)の顆路ハウジングパーツ(ベネット用パーツ5Rと顆路フレーム6Rの組み合わせ体)の顆頭球滑走面(ベネットフレーム5aRの壁面)を上顎弓4のなす平面に対して位置(a)から位置(b)へ移動するときの角度(上顎弓4のなす平面に対して例えば52度)下向きに傾斜させる。そしてTNM(Try&No Miss)システムにより算出された数値を跳ね上げ板25bRに代入し、小ネジ30Rを回転させて顆頭球当接片7Rを押し出し、図12の点に顆頭球1Rを移動させて行く。
【0069】
この平衡側顆頭球1Rの移動時に、作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の咬合する任意の義歯と接触していることをチェックする。
【0070】
もし、この時に作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の義歯と接触しない場合は、生体親和性の無い義歯が得られてしまうので、蝋を用いて作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の咬合する任意の義歯と接触するように形態修正を行う。
【0071】
また、作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の咬合する任意の義歯と強く接触して、先端ピン9が跳ね上げ板25bRに対して浮き上がり、隙間が発生する場合は歯牙模型を削合調整し、作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の義歯と接触する状態が良好になるように調整して先端ピン(インサイザルピン)9が跳ね上げ板25bRに軽く接して同調するように調整する。本明細書では、前記作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の義歯が良好な接触状態である場合に先端ピン9が跳ね上げ板25bに軽く接する状態を前記義歯間の接触状態と先端ピン9と跳ね上げ板25bの接触状態が「同調する」ということにする。
【0072】
2)図12のゼロ設定位置(a点)からb点まで小ネジ30Rを右回転させて、顆頭球1Rをαmm前進されている間において作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の咬合する任意の義歯と接触して、先端ピン9と跳ね上げ板25bRとの接触は、常に同調しているように、蝋材を用いて義歯(歯牙模型)の形態修正を行う。
【0073】
3)次いで、平衡側の上下第一小臼歯間の上下歯牙模型の隙間を蝋材などで埋めて、平衡側の上下第一小臼歯間の上下歯牙模型の間の距離が変わらないようにする。これは次のステップである4)の作業時に上顎弓4が回転軸6cを中心とするY軸方向を回転軸に回転し、ローリングしないようにするためである。
【0074】
4)次いで上顎弓サポートスティック40の把持部40aを正回転させて先端部40bを押し上げて上顎弓4の底面に接触させて、顆路フレーム6とベネット用パーツ5の回転軸6cを中心とするY軸方向を回転軸とする回転時に上顎弓4がローリングすることを防止する。これら3)および4)のステップは人間の上顎の動きにローリング(ヨーイングともいう)が無いので、咬合器でも上顎弓4がローリングしないようにするためである。
【0075】
5)次いで平衡側のノブ34Rを緩めて上部支柱35Rが上方へ移動できるようにする。
【0076】
6)次に図12の位置(点から上顎弓4のなす平面に対して位置(b)から位置(c)へ移動するときの角度(上顎弓4のなす平面に対して例えば39度)になるように平衡側の顆路ハウジングパーツ(ベネット用パーツ5Rと顆路フレーム6Rの組み合わせ体)を下向きに傾斜させ、平衡側の上部支柱35Rを上方へ押し上げて、長手ベネットフレーム5aRの底面(滑走面)と顆頭球1Rの上面の滑走点を接触させる。その後にノブ34Rを締め付けて上部支柱35Rと下部支柱13Rを固定する。
【0077】
ベネットフレーム5aRの底面(滑走面)と顆頭球1Rの間に隙間ができると、顆頭球1Rに支持された状態のまま、上下顎弓3、4を動かすことができなくなるので、人間の上下顎の動きを再現できなくなる。そこで前述のように、ノブ34Rをゆるめて上部支柱35Rの昇降を行い、長手ベネットフレーム5aRの底面(滑走面)と顆頭球1Rを当接させ、その後、ノブ34Rを締め付けて上部支柱35Rを基部支柱13Rに固定させる。またこの時の小ネジ30Rはαmm前進されている状態で、且つ顆頭球片7Rと顆頭球1Rは当接している状態にある。
【0078】
なお、ベネット用パーツ5Rを39度下向きに傾斜させたとき、上顎弓4が顆頭球1Rを最下点として正面視で上がりに傾斜し、かつ上顎弓4の先端部が上方に傾くので、その傾きに合わせてTNMシステム(後述する)より算出された所定の水平に対する傾斜角度だけ跳ね上げ板25bRを傾斜させた後に、ネジ24を緩めてインサイザルピン22の先端ピン9に当接させた後にネジ24を締め付けておく(前記52°用から39°用に跳ね上げ板25bの傾斜角度を変更すると、跳ね上げ板25bRと先端ピン9には隙間ができてしまうので、ネジ24を緩めてインサイザルピン22の先端ピン9と当接させて締め付ける。)
これは跳ね上げ板25bRの跳ね上げ傾斜角度に対して平衡側顆頭球1Rが前下方に移動した際、咬合器の上顎弓4ローリングとしてしまうのを補正し、且つ作業側の咬合点(例えば上顎模型の犬歯と下顎模型の咬合する歯の接触する点)の回転軸6cを中心とするY軸方向回転軸上の作業側顆頭球1Lの中心からの距離における補正及び前記咬合点のX軸上の作業側顆頭球1Lの中心からの距離における補正を行う。
【0079】
7)この咬合器の設定の後に、小ネジ30Rをさらに右回転させて顆頭球1Rをb点からc点までβmm前進させている間において作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の咬合する任意の義歯が軽く接触状態を維持するように蝋材を用いて義歯(歯牙模型)の形態修正を行う。前記作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の義歯(歯牙模型)の接触状態は先端ピン9と跳ね上げ板25bRとの接触が常に同調していることで確認できる。
【0080】
8)次いで、平衡側の上下第一小臼歯間の上下歯牙模型の隙間を蝋材などで埋めて、平衡側の上下第一小臼歯間の上下歯牙模型の間の距離が変わらないようにする。これは9)の作業時に上顎弓4が回転軸6cを中心とするY軸方向を回転軸に回転し、ローリング(ヨーイング)しないようにするためである。
【0081】
9)次いで上顎弓サポートスティック40の把持部40aを正回転させて先端部40bを押し上げて上顎弓4の底面に接触させて、顆路フレーム6とベネット用パーツ回転軸6cを中心とするY軸方向を回転軸とする回転時に上顎弓4がローリング(ヨーイング)することを防止する。これら8)および9)は人間の上顎の動きにローリング(ヨーイング)が無いので、咬合器でも上顎弓4がローリングしないようにするためである。
【0082】
10)次いで平衡側のノブ34Rを緩めて上部支柱35Rが上方へ移動できるようにする。
【0083】
11)次ぎに図12の位置(c)から上顎弓4のなす平面に対して位置(c)から位置(d)へ移動するときの角度(上顎弓4のなす平面に対して例えば20度)になるように平衡側(右側)の顆路ハウジングパーツ(ベネット用パーツ5Rと顆路フレーム6Rの組み合わせ体下向きに傾斜させ、平衡側の上部支柱35Rを上方へ押し上げて、長手ベネットフレーム5aRの底面(滑走面)と顆頭球1Rの上面の滑走点が接触するようにした後にノブ34Rを締め付けて上部支柱35Rと下部支柱13Rを固定する。
【0084】
この事は、ベネットフレーム5aRの底面(滑走面)と顆頭球1Rの間に隙間ができると、顆頭球1Rに支持された上下顎弓3、4の動きが得られなくなるので、人間の上下顎の動きを再現できなくなる。そこでノブ34Rをゆるめて上部支柱35Rの昇降を行い、長手ベネットフレーム5aRの底面(滑走面)と顆頭球1Rを当接させ、その後、ノブ34Rを締め付けて上部支柱35Rを基部支柱13Rに固定させる。また、このときの小ネジ30Rはゼロ設定位置より合計としてα+βmm前進されている状態で、且つ顆頭球片7Rと顆頭球1Rは当接されている状態である。
12) なお、ベネット用パーツ5Rを20度下向きに傾斜させたとき、上顎弓4が正面視で左上がりに傾斜し、かつ上顎弓4の先端部が上方に傾くので、その傾きに合わせてTNMシステム(後述する)より算出された所定の水平に対する傾斜角度だけ跳ね上げ板25bRを傾斜させた後に、ネジ24を緩めてインサイザルピン22の先端ピン9に当接させた後にネジ24を締め付けておく(前記39°用から20°用に跳ね上げ板25bの傾斜角度を変更すると、跳ね上げ板25bRと先端ピン9には隙間ができてしまうので、ネジ24を緩めてインサイザルピン22の先端ピン9と当接させて締め付ける。)
これは跳ね上げ板25bRの跳ね上げ傾斜角度に対して平衡側顆頭球1Rが前下方に移 動した際に、咬合器の上顎弓4がローリングとしてしまうのを補正し、且つ作業側の咬合点(例えば上顎模型の犬歯と下顎模型の咬合する歯の接触する点)の回転軸6cを中心とするY軸方向の作業側顆頭球1Lの中心からの距離における補正及び前記咬合点の X 軸上の作業側顆頭球1Lの中心からの距離における補正を行う。
【0085】
)この咬合器の設定の後に、小ネジ30Rをさらに右回転させて顆頭球1Rをc点からd点までγmm前進させている間において作業側の上顎の義歯の犬歯もしくは犬歯および小臼歯と下顎の義歯との接触と、先端ピン9と跳ね上げ板25bRとの接触が常に同調しているように、蝋材を用いて義歯(歯牙模型)の形態修正を行う。
【0086】
人によっては、さらに顆路ハウジングパーツを顆頭球滑走面を水平面に対して所定角度下向きに傾斜させて、上下顎の接触性のチェックをする場合も有る。
【0087】
(7)「患者の咬合状態の改善」
以上の本実施の形態の咬合器を用いての概略の補綴物の作製方法をより詳細に、患者の顎関節に異常のないケースもしくは顎関節の機能異常が改善された後に咬合状態を再構築するケースを例に説明する。
【0088】
記のケースでは、欠損した歯の補正、又は歯への歯冠装着などの後の後に補綴物を正常に機能させるために行う。
この場合の考え方は、顎運動検査装置により、患者の実際の顎運動時の顆頭の動きを、三次元的にデータとして取得しておき、本咬合器上に装着した上顎模型と下顎模型を用いて患者の顎運動を再現させながら、最終的には患者の上下歯牙が最大咬頭嵌合位(以下、ICPということがある)で正常に咬合するような補綴物を作製する。
【0089】
(S1)まず、患者の補綴(ほてつ)物を作製するための上下顎の模型を採得する。
【0090】
(S2)そして、補綴物を作成するために前記患者の上顎自体(上下顎模型ではない)に対してワックスを介して平板に設置して平面を採取する。この平面としてはカンペル平面を用いる。カンペル平面とは鼻聴道線で、側方からみた場合に耳珠の任意の点と鼻翼の下点を結んだ線と、正面から見た時に、左右の瞳心を結ぶ線と平行な面をもつ平面のことを言い、この平面が咬合平面と平行になると言われている。
以上の準備を終えた後、前記顎運動検査装置(商品名:CADIAX COMPACT)を用いて、患者の顎運動の解析を行う。
【0091】
(S3)顎の前後運動時、左側側方運動、右側側方運動、開閉口運動時の下記データを採取する。患者が前記顎運動検査装置を装着して、顎を前後、左右側側方及び開閉口の各運動と連動する部材の先端の運動軌跡を電気的に記録することで患者の顎運動の生の計測データを得ることができる。
【0092】
前記計測データは顆頭の矢状顆路角(XZ平面での角度θ(図13))、顆頭のY軸上の座標位置、顆頭のベネット角(XY平面での角度)、左右側方運動時の作業側顆頭の後方への偏位する角度(矢状顆路角及びベネット角度)などである。
【0093】
(S4)患者の歯牙接触の最大咬頭嵌合位置(ICP)が得られるようにセットした上下顎模型の上下歯牙間にできる立体的な間隔に相当する型をシリコン材を用いて鋳型を作製する。
【0094】
(S5)次に、患者に顎運動検査時に顎運動検査装置の基準平面設定部材(アッパーボウ)のみを装着して該基準平面設定部材に対して平行になるように平面板を用いて顎運動検査時の基準平面のデータを得る(計測したXY平面(XY軸のなす平面)に平行な面を採得することで三次元上の計測データーを正確に咬合器に反映させることができる)。
【0095】
(S6)以上の操作で得た患者の顎運動検査時の基準平面と上顎弓が平行になり、上顎模型の正中線が咬合器の正中と平行である咬合器の位置に上顎模型を装着する。
【0096】
(S7)上顎模型に対して前記(S4)で得られたシリコン材を介して下顎模型がICP(最大咬頭嵌合位)になるように下顎模型を咬合器に装着する。
【0097】
(S8)上顎模型と下顎模型の固定化を解除して、下顎模型が咬合器における下顎弓上で自由に動けるようにしたのち、上顎模型の咬合面にカンペル平面を採得したワックス(S2)を介して載せて、下顎模型を外して、咬合器付着用咬合平面板(図示せず)を取り付けてカンペル平面と同一の平面になるように調整した後に、上下調製して予定する上顎中切歯の長さと咬合器付着用咬合平面板の上面における上顎中切歯作製予定部位の高さが揃うようにする
(S8)こうして、以下の式(1)、(2)などで代表される数式を用いるTNMシステムより求められた図12に示すゼロ点位置(a)から位置(b)、位置(b)から位置(c)、位置(c)から位置(d)などの基準平面に対する傾斜角度(θ)と各点間の距離(α、β、γなど)を求め(顎運動検査装置で得たデータに基づきa、b、c、d点の座標点を得ておく)、これに従って咬合器の顆路ハウジングパーツ5、6の位置調整などで顆頭球1の三次元上の配置位置及びインサイザルテーブル25bの傾斜角度、インサイザルピンのインサイザルテーブルとの当接高さの調整などを順次行い予定補綴物の作製を行う。
【0098】
前記計算式の一例を以下に示す。
例えば、位置(a)から位置(b)への運動時には、位置(b)のX値(三次元座標上の点のX軸上の値、以下簡単に対応する座標軸上のX、Y又はZ軸上の点をX、Y又はZ値という)がX値より(+)で、かつ位置(a)のZ値が位置(b)のZ値より(+)の時(図13参照)には式(1)、(2)より作業側顆頭球1Lを固定して平衡側顆頭球1Rを前下方に移動させた時の平衡側顆頭球1Rの傾斜角度θと移動距離αを求めることができる。
傾斜の角度θ度=(+)sin-1{Z/√(X2+Z2-2XZcos90)} (1)
後上方へ(-)αmm=√(X2+Z2-2XZcos90) (2)
なお、座標軸状の位置(a)位置(b)の位置関係により、上記計算式(1)、(2)はそれぞれ異なる。
【0099】
また、得られた平衡側顆頭球1Rの傾斜角度θと移動距離αから咬合点(例えば上顎模型の犬歯と下顎模型の咬合する歯の接触する点)における犬歯誘導路角が、平衡側顆頭球1Rの顆路角と同一になるようにするための跳ね上げ板(インサイザルガイドデーブル)25Rの跳ね上げ角度を計算する。この跳ね上げ角度には平衡側顆頭球1Rが前下方に移動した際の、咬合器の上顎弓4のローリングとしてしまうのを補正するために、平衡側の咬合点のY軸上の作業側顆頭球1Lの中心からの距離における補正及び前記咬合点のX軸上の作業側顆頭球1Lの中心からの距離における補正をすることで行う。
【0100】
さらに詳しく説明すると、図8に示す咬合点C1の座標点が(x1、y1、z1)であるとして、図12に示す基準平面(A)に対する傾斜角度(θ:例52°)で位置(a)から位置(b)点に距離αmmだけ平衡側顆頭球1Rを移動させた場合を考える。
【0101】
例えば、上顎模型の犬歯と下顎模型の他歯との上記咬合点C1(図8)が本来有する咬合誘導傾斜角度θ1に平衡側顆頭球1Rが回転しないと考えるならば、平衡側顆頭球1Rの誘導傾斜角度(前記傾斜角度θ)から咬合点C1の座標点に基づき算出できる。
【0102】
上記咬合誘導傾斜角度θ1を表現するためには、以下の補正値μ°を跳ね上げ板25bRの傾斜角度π°に反映させる必要がある。
【0103】
まず、平衡側顆頭球1Rを傾斜角度θ(=52°)で傾斜させ、かつ前記図12の位置(a)点から位置(b)点に距離αmmだけ移動させる際に、平衡側顆頭球1Rの傾斜角θと同じ角度の咬合点C1の咬合誘導傾斜角度θ1を表現するためには跳ね上げ板25bRを傾斜角度π°で傾斜させなければならない。
【0104】
また、平衡側顆頭球1Rを前記傾斜角度θで傾斜させるときに上顎弓4が下顎弓3に対して非ローリング状態となるように計算上補正した値μ°を加味して、上記咬合点C1からC2に移動させる必要がある。このことは生体の上顎が生体の頭蓋骨に対してローリングすることは無く、その結果として上顎は下顎に対してローリングをする事は無いため、この状態を咬合器上に表現して咬合点C1、C2の座標点を求める必要がある。
【0105】
作業側顆頭球1Lを動かさないで、平衡側顆頭球1Rが位置(点→位置(点に距離αmmだけ移動する際に、平衡側顆頭球1Rの傾斜角θと同じ角度の咬合点C1の咬合誘導傾斜角度θ1を表現するためには跳ね上げ板25bRを傾斜角π°で傾斜させなければならないが、跳ね上げ板25bRを傾斜角π°で傾斜させとき、上顎弓4の先端部のインサイザルピン9がこの傾斜角π°で傾斜した跳ね上げ板25bR上を当接しながら上方へ移動するが、前述のように平衡側顆頭球1Rが位置(a)点→位置(b)点に距離αmmだけ移動する際において、上顎弓4は正面視で左上がりに傾斜し、かつ上顎弓4の先端部が上方に傾くので、上顎弓4はゼロ設定時における基準面に対して傾きを持つ事となってしまう。
【0106】
この傾きを補正してゼロ設定時の上顎弓4の平面と平行にしていかなければ、補綴物を作製する時に CDIAX DATA を使用するには、 CADIAX の計測時の基準面(A)とゼロ設定時の上顎弓4の面のが、常に平行な関係が保たれている必要があるため、上記した上顎弓4の傾きをゼロ設定時の上顎弓4の平面に補正する必要がある。このときに使用する補正値角度を補正値角度μ°という。
【0107】
このように基準面である上顎弓4がローリングして予め定められた水平面である基準面(A)とは異なる面となった状態では、前記基準面(A)に対しての咬合点C1、C2のデータ採取ができないので、補正した傾斜角度μ°を用いて上顎弓4のローリングを非ローリングの状態に補正する。なぜならば生体における上顎はローリングする事は無く、また、データ採取時の基準面(A)もデータ採取時にローリングする事はないため、この状態を咬合器上においても表現させることが必要となるためである。
【0108】
また、平衡側顆頭球1Rが前下方への移動でa点→b点に達する動きに伴い咬合点もC1点→C2点に移動するが、この際に平衡側顆頭球1Rが回転運動を伴いながら移動することがあり、その結果としてC1点→C2点への移動に影響をおよぼす。そのことを加味すると、咬合点C1が平衡側顆頭球1Rと中心として円弧運動することとなり、これらも咬合点C1から咬合点C2への移動の際の咬合誘導傾斜角度θ1を決定する場合には考慮しなければならない。
【0109】
例えば、作業側顆頭1Lは固定しておき、図12に示すように平衡側顆頭1Rが基準平面(A)に対する傾斜角度θ=52°でa点から距離αmmだけ前下方のb点に達した場合に、平衡側顆頭1Rの位置a点(図8のC1’点)から咬合点C1までの長さLは不変であるので、図14に三次元上の平衡側顆頭1Rのa点(C1’点)からb点(C2’点)への移動に対応した時の咬合点C1から咬合点C2に移動する様子を示すと、咬合点C1はその仮想点C1”(1Rが回転運動をしていないと考えたときのC1の1Rがa点→b点に移動したときの)移動点から円弧運動しながら新しい咬合点C2に移動することとなる。また、この長さLを求めるためには咬合点C1のX、Y軸座標点のみでなくZ座標点も必要となる。
【0110】
図14に示す三次元上の平衡側顆頭1Rがa点からb点へ移動する時に、咬合点はC1点からC1”点に移動するが、この平衡側顆頭1Rがa点からb点へ移動する際に平衡側顆頭1Rが回転運動をした時には、咬合点C1は新しい咬合点C2 に移動する。
【0111】
上記より求められた“咬合点C1に与えたい誘導傾斜角度θ1”は図13に示す基準平面Aに対して角度θ3となる。
【0112】
よって、平衡側顆頭1Rがa点→b点に基準面Aに対してθ°(52°)かつαmmで移動する際に平衡側顆頭1Rが回転する時には、咬合点はC1点→C2点に基準面Aに対して角度θ3にて移動することになる。その結果として咬合点C1が角度θ3にて運動するように、インサイザルテーブル25bRの傾斜角度π°に補正値角度μ°を加味して決定し、代入していかなければならない。
【0113】
また、本咬合器は患者の顎関節に異常があるケースもしくは顎関節の機能異常が改善された後に咬合状態を再構築するケースにも使用できる。
【0114】
このように本実施の形態の咬合器によると人間の上下顎の運動を咬合器上で再現することができ、生体親和性の高い補綴物が得られる。
【0115】
【発明の効果】
このように本発明の咬合器によると人間の上下顎の運動を咬合器上で再現することができて生体親和性の高い補綴物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の咬合器の鳥瞰図である。
【図2】 図1の咬合器の前方からの鳥瞰図である。
【図3】 図1の咬合器の顆頭球と一体の内筒パーツと外筒パーツとノブの側面図である。
【図4】 図1の咬合器の顆路ハウジングパーツの前面から見た組立て手順を示す分解図である。
【図5】 図1の咬合器の顆路ハウジングパーツを側面から見た組立て手順を示す分解図(図5(a))と矢印A方向からの矢視図(図5(b))である。
【図6】 図1の咬合器の顆路ハウジングパーツの底面図である。
【図7】 図1の咬合器の顆路ハウジングパーツの底面図であり、図7(a)の初期位置であるY軸に対して90°の位置にある状態図、図7(b)は初期位置からベネットフレームは内方(中心部の方向)にY軸に対して35°の位置にある状態図、図7(c))は外方(咬合器の中心から離れる方向)に向けてY軸に対して45°の位置に有る状態図である。
【図8】 図1の咬合器の顆頭球を前方移動させた後の顆路ハウジングパーツの長手ベネットフレーム滑走面と顆頭球の上面の該底面に当接している滑走点が離開する状態を示す斜視図である。
【図9】 図1の咬合器の顆頭球を前方移動させた後の顆路ハウジングパーツの長手ベネットフレーム滑走面と顆頭球の上面の該底面に当接している滑走点が離開する状態を示す前面図である。
【図10】 図1の咬合器の顆路フレーム6の角度変更時の不具合を説明する図である。
【図11】 図1の咬合器の要部側面図(図11(a))と背面図(図11(b))である。
【図12】 図1の咬合器の顆頭球の運動時の任意の位置からの矢状前方顆路傾斜角を変更した場合の軌跡を示す図である。
【図13】 図12で示す咬合器の顆頭球の傾斜・前進時の顆路ハウジングパーツの傾斜角度と移動距離の算出のための計算式を導き出すための図である。
【図14】 三次元上の平衡側顆頭1Rのa点(C1’点)からb点(C2’点)への移動に対応した咬合点C1から咬合点C2に移動する様子を示す図である。
【符号の説明】
1 顆頭球 2 トーションバー
3 下顎弓 4 上顎弓
5 ベネット用パーツ 5a 長手ベネットレーム
5b 後側ベネットフレーム
5c 底面側ベネットフレーム
5d 側面側の付属ベネットフレーム
5e ネジ部 5f ゲージ
6 顆路フレーム 6a 顆路フレーム本体
6b 側面フレーム 6c 回転軸
6d ノブ 6e ゲージ
6f ベネット用ゲージ 6g 穴
7 顆頭球当接フレーム 7a ネジ
7b 顆頭球当接片 8 顆頭球押圧用ネジ
9 先端ピン 11 規定位置設定板
12 バネフレーム 12a 穴
12b 折曲部 13 基部支柱
15 ノブ 16 内筒パーツ
17 外筒パーツ 17a 切欠き
17b ネジ部 18 スリーブ
19R ノブ 20 バネ
21 ボルト 22 インサイザルピン
23 ガイド部材 23a ゲージ
23b 標準位置ライン
24 ネジ 25 インサイザルテーブル
25a 規定位置設定板 25b 跳ね上げ板
25bf ゲージ
30 小ネジ 32 大ネジ
32a 中空軸ネジ 34 ノブ
35 上部支柱 40 上顎弓サポートスティック
40a 把持部 40b 先端部
41 ノブ

Claims (4)

  1. 左右一対の上下位置調整可能な支柱(13、35)と、該一対の支柱(13、35)の頂部付近に両支柱頂部同士を橋渡して接続する基部を備えた上顎弓(4)と、前記一対の支柱(13、35)の基部同士を橋渡して接続する基部を備えた下顎弓(3)と、該下顎弓(3)の先端部に設けられた台座(25)と、上顎弓(4)の先端部に設けられ前記下顎弓(3)の跳ね上げ板(25b)を有する台座(25)上を固定するネジ(24)を有する先端ピン(9)が接触滑走する上顎弓(4)と下顎弓(3)間の距離調整用のロッド(22)を備えた咬合器において、
    左右一対の上下位置調整可能な支柱(13、35)の頂部付近にそれぞれ互いに向き合う方向に進退自在に設けた顆頭球(1)を先端に設けた顆頭球パーツ(16、17)と、
    該顆頭球(1)を挟持するための上顎弓(4)基部の鉛直側面に回転自在に取付けられる水平方向に伸びる回転軸(6c)と該回転軸(6c)の回転角度測定用ゲージ(6e)を有する顆路フレーム(6)と、
    該顆路フレーム(6)の回転量を調整した後で、顆路フレーム(6)を上顎弓(4)に固定するために上顎弓(4)に設けられたノブ(41)と、
    前記顆路フレーム(6)と共に前記顆頭球(1)を挟持するために、前記顆路フレーム(6)の前記回転軸(6c)に平行して配置される顆路フレーム(6)の取付け面(6a底面)に回転自在に支持されるベネット用パーツ(5)と、
    下顎弓(3)の基部側に着脱自在に取り付けられ上顎弓(4)基部の底面に当接する伸縮自在の先端部を設けた上顎弓サーポートスティック(40)と
    を備えたことを特徴とする咬合器。
  2. 顆頭球(1)を先端に設けた顆頭球パーツ(16、17)は顆頭球(1)と一体化した内筒パーツ(16)と該内筒パーツ(16)を内挿して締め付け可能な拡管形の外筒パーツ(17)からなり、
    上部支柱(35)には、内筒パーツ(16)を内挿した状態の外筒パーツ(17)を上部支柱(35)に取り付けた後に外筒パーツ(17)を上部支柱(35)に対して固定・遊嵌自在にするためのネジ式のノブ(19)と内筒パーツ(16)を外筒パーツ(17)内部で外筒パーツ(17)に対して固定・遊嵌自在にするためのノブ(15)を備えたことを特徴とする請求項1記載の咬合器。
  3. ベネット用パーツ(5)には顆頭球(1)の位置調整と顆頭球保持を兼ねた軸方向に移動自在の顆頭球当接片(7)と、
    該顆頭球当接片(7)と螺合し、かつベネット用パーツ(5)の一つのフレーム(5b)を貫通して設けられ、顆頭球当接片(7)の軸方向への移動を行い、かつ顆頭球当接片(7)の前記軸方向への移動量を調整できる移動量調整部材(30、32)を設けたことを特徴とする請求項1記載の咬合器。
  4. 咬合器の顆頭球を人間の顎関節に近い運動をさせるにあたって、
    1)まず、請求項3記載の咬合器の各パーツがXYZ軸からなる三次元座標軸上で配置されている座標位置と前記各パーツ同士の当接の仕方が、それぞれ規定された初期値になっている状態であるゼロ設定を行い、
    2)(a)ゼロ設定時の両方の顆頭球(1、1)を結ぶ直線に直交する方向の直線上にある水平方向のX軸方向への平衡側顆頭球(1)のゼロ設定時からの移動量、
    (b)ゼロ設定時の両方の顆頭球(1、1)を結ぶ直線上にある水平方向のY軸方向への平衡側顆頭球(1)のゼロ設定時からの移動量
    (c)支柱(35)の長手方向である鉛直方向にあるZ軸方向へのゼロ設定時からの平衡側顆頭球(1)の移動量、
    (d)回転軸(6c)を中心とする平衡側フレーム(6)のゼロ設定時からの回転角度及び
    (e)前記(a)〜(d)における平衡側顆頭球(1)のゼロ設定からの前後方向への移 動量
    を移動量調整部材(30、32)の回転により調整される平衡側顆頭球当接片(7)のゼロ設定からの移動量と平衡側顆路フレーム(6)の回転軸(6c)を中心とするY軸方向に平行な軸を中心軸とする咬合器調整用の平衡側顆頭球(1)の複数の設定回転角度の中の第一の所定角度分の回転角度により決め、
    平衡側顆頭球(1)がベネット用パーツ(5)の顆頭球滑走用のつの壁面(ベネットフレーム5aと5dの壁面)に無理なく当接するように顆路フレーム(6)の回転軸(6c)を中心とするY軸方向を中心軸とする前記第一の所定角度分の回転角度に平衡側のゲージ(6e)を調整した後に平衡側のノブ(41)を締め付けて固定するとともに顆頭球パーツ(16、17)のY軸方向への前記移動量を調整した後、平衡側のノブ(15)を締め付けて顆頭球(1)の位置を固定し、
    3)平衡側のベネット用パーツ(5)の顆頭球滑走用の一つの壁面基準平面(A)に対して前記第一の所定角度分下向きに傾斜するように平衡側顆頭球(1)の顆路フレーム(6)を回転させ、かつ前記基準平面(A)に対する所定の傾斜角度だけ跳ね上げ板(25b)を傾斜させて、移動量調整部材(30)を回転させて顆頭球当接片(7)を押し出し、顆頭球当接片(7)に当接している平衡側の顆頭球(1)を移動させ、
    4)前記平衡側顆頭球(1)の移動開始時に、作業側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯と小臼歯が下顎の義歯との間で良好な接触状態と先端ピン(9)が跳ね上げ板(25b)に軽く接する状態とが同調するように下顎の義歯の蝋の形態修正を行い、
    5)次に、平衡側の上下第一小臼歯間の上下歯牙模型の隙間を蝋材埋めて、平衡側の上下第一小臼歯間の上下歯牙模型の間の距離が変わらないようにし、
    6)次いで上顎弓サポートスティック(40)を押し上げて上顎弓(4)の底面に接触させて、平衡側ベネット用パーツ(5)と平衡側顆路フレーム(6)の組合せ体が回転軸(6c)を中心とするY軸方向回転軸とする回転時に上顎弓(4)がローリングすることを防止し、
    7)その後、平衡側の支柱(35)を上方へ移動できるようにしておいて、平衡側のベネット用パーツ(5)の顆頭球滑走用壁面前記基準平面(A)に対して咬合器調整用の平衡側顆頭球1の複数の設定回転角度の中の第二の所定角度分になるように平衡側のゲージ(6e)により調整した後に平衡側のノブ(41)を締め付けて固定し、平衡側顆頭球(1)と平衡側ベネット用パーツ(5)の顆頭球滑走用壁面(5aと5dの壁面)が接触する位置において平衡側の支柱(35)を固定し、平衡側の跳ね上げ板(25b)を前記第二の所定角度に対応する角度に傾斜させ、先端ピン(9)固定用のネジ(24)を緩めて平衡側の跳ね上げ板(25b)と先端ピン(9)が接触するように移動調整した後、先端ピン(9)固定用のネジ(24)を締め付けて固定し、
    8)さらに、前記3)と4)の操作を必要な平衡側顆頭球1の咬合器調整用の平衡側顆頭球1の咬合器調整用の設定回転角度分だけ繰り返しながら作業側及び平衡側の上顎の義歯の犬歯又は犬歯が小臼歯の下顎の義歯との間での接触状態が先端ピン(9)と跳ね上げ板(25b)との接触が常に同調していることで確認しながら義歯(歯牙模型)の形態修正を行うことを特徴とする請求項記載の咬合器を用いる補綴物の作製方法。
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