JP3815169B2 - 微細構造光ファイバ用母材及び微細構造光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の長手方向に延びる中空部を有する微細構造光ファイバの製造方法とその製造に使用する微細構造光ファイバ用母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、光ファイバのガラス中に長手方向に平行して延びる多数の微細な中空部を有する光ファイバが、通常の充実したガラス構造の光ファイバよりもコア領域とクラッド領域との比屈折率差を大きくし得る光ファイバとして注目されている。SCIENCE VOL285 3 SEPTEMBER 1999 1537頁〜1539頁「Single−Mode Photonic Band Gap Guidance of Light in Air」、あるいは特開平10−95628号公報に記載された微細構造の光ファイバはそれらの一例である。
【0003】
図5は、特開平10−95628号公報に記載された微細構造光ファイバの一例を示す光ファイバ内部の横断面図である。なお、図5で描かれた同心円状の破線はコア領域、内部クラッド領域、外部クラッド領域の境界を示す。また、図5において、11はコア領域、12は内部クラッド領域、13は外部クラッド領域、14は内部クラッドボイド、15は外部クラッドボイドである。
【0004】
また、この光ファイバは次のようにして製造される。外径0.718mmのシリカロッドの周囲に、外径0.718mm、内径0.615mmのシリカ管を6本並べて、更にその周囲を外径0.718mm、内径0.508mmのシリカ管で少なくとも4層に囲んで、それらシリカロッドとシリカ管からなる束を作り、その束をオーバクラッド管で覆って、両端を閉じてプリフォームとする。そのプリフォームを線引き機にかけて、その片方の端部を加熱溶融して線引きすることによって、コア領域11の外径が1.017μm、内部クラッドボイド14の内径が0.833μm、外部クラッドボイド15の内径が0.688μm、光ファイバ外径125μmの光ファイバを得ることが出来る。
【0005】
また、図5では、内部クラッドボイド14の内径と外部クラッドボイド15の内径が異なる例を示したが、内部クラッド領域12と外部クラッド領域13との区別をつけず、両者の中空部の内径を同じにすることもある。なお、線引きの作業中、各シリカ管の両端を封止してシリカ管の孔内の空気を閉じ込め、プリフォームのオーバクラッド管内部の空気は外に排出することによって、内径の大きい方のシリカ管の孔が比較的大きい内径の内部クラッドボイド14に、内径の小さい方のシリカ管の孔が比較的小さい内径の外部クラッドボイド15になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した光ファイバの製造方法では、外径0.718mmのシリカロッドの周囲に外径0.717mmのシリカ管を5層以上にわたって少なくとも計94本のシリカ管を平行に配列してシリカロッドとシリカ管からなる束を構成することになる。同じ外径のシリカロッド及びシリカ管を密接して配列する場合、幾何学的には各シリカ管の中心がそれぞれ正三角形の頂点に位置するようにハニカム状に精密に配列させることが可能であるが、実際にシリカロッドとシリカ管からなる束を幾何学的に精密に中心対称となるように同心円の円周上に配置するのは難しい。
【0007】
特開平10−95628号公報では、まず内径の小さい方のシリカ管だけの束を作って、中心部のシリカ管7本をシリカロッドと内径の大きい方のシリカ管6本に置き換えるといった方法でシリカロッドと2種類のシリカ管からなる束を作っているようであるが、シリカロッド及びシリカ管には長手方向及びシリカ管毎の外径変動があるため、各層のシリカ管の配列が幾何学的に中心の周りに等間隔で精密に配列されるとは限らない。各層の位置も精密に円周上に位置するとは限らない。また、中心であるはずのシリカロッドの中心が幾何学的な中心からずれることもある。また、このようなシリカロッド及びシリカ管の配置のずれは、シリカ管の集合体の長手方向にもばらつくことがある。
【0008】
そして、シリカロッドの中心からのずれ及びその周りのシリカ管の配列のずれは、光ファイバとなった時のコア領域の大きさ及び位置のずれ、並びにその周囲の内部クラッドボイドの位置及び相互間隔のずれ、となって現れる。このコア領域及び内部クラッドボイド等の中空部の位置のずれは、光ファイバの伝送特性の設計値からのずれとなって偏波依存性その他の特性に影響をもたらす。特に、コア領域及びそれに近いところは外部クラッド領域よりも光のエネルギーが集中する部分であるため、そこでの位置のずれによる伝送特性への影響は大きい。
【0009】
また、シリカロッドの周囲にシリカ管を配列させて束を作る作業は手作業で行われるが、シリカロッドとシリカ管の見分けが困難であること、また束を構成するに当たっての中心の見間違い等によって、シリカロッドが中心以外の箇所に間違って配列されることもある。
【0010】
本発明は、クラッド領域での中空部位置のずれを小さくし、かつ中心となるガラス部材の位置を正確に配置することが出来る微細構造光ファイバ用母材及び光ファイバの製造方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の微細構造光ファイバ用母材の製造方法では、まず、円盤部と該円盤部の片方の面にその中心にガラスロッド配置部を有しそれを取り囲むように同心円の円周上に間隔をおいてかつ多層に配列され該円盤部の面に対して直立し互いに平行になるようにして固定された複数の針状部とを有する配列用治具を準備する。そして、該配列用治具のガラスロッド配置部にガラスロッドを直立させて、併せて複数の針状部をそれぞれガラスパイプの孔の片方の端から差し込んで該複数の針状部にて該複数の各ガラスパイプをそれぞれ保持してガラスパイプの束となす。続いて、前記複数のガラスパイプの束上を外周ガラスパイプにて覆って該外周ガラスパイプをガラスパイプの束上に固定し、その後前記配列用治具を抜き去って、前記外周ガラスパイプの両端を圧力調整用開口部付き又は圧力調整用開口部無しのガラス封止部材にて封止して微細構造光ファイバ用母材とする。
【0012】
また、配列用治具を2つ使って、複数のガラスパイプのそれぞれ孔の両端側から2つの配列用治具のそれぞれの針状部を差し込んでそれぞれ複数のガラスパイプを保持してガラスパイプの束を形成することにすれば、ガラスロッド及び複数のガラスパイプの直線性及び相互位置精度をより一層高めることが出来るので、更に長手方向に断面が均一な微細構造光ファイバ用母材を製造することが出来る。
【0013】
また、本発明の微細構造光ファイバの製造方法は、上記微細構造光ファイバ用母材の製造方法にて製造した微細構造光ファイバ用母材を使って、その一端を加熱溶融して線引きすることによって、光ファイバのガラス中に複数の長手方向に延びる中空部が中心のコア領域の周囲に間隔をおいてかつ多層に配列された光ファイバを得るものである。
【0014】
以上の微細構造光ファイバ用母材及び光ファイバの製造方法によれば、予め円盤部と複数の針状部とからなる配列用治具を作るので、円盤部の片方の面に精密に複数の針状部を配置し固定することによって、複数のガラスパイプのそれぞれの位置を設計通りの精密な位置に合わせることが出来る。従って、光ファイバとなった時のコア領域及びクラッド領域の中空部の位置の配置精度を高めることが出来る。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明にかかる微細構造光ファイバ用母材の製造方法を説明する図であって、図1(A)(B)は微細構造光ファイバ用母材の製造に使用する配列用治具の斜視図と正面図、図1(C)は配列用治具にてガラスパイプを保持させ外周ガラスパイプで覆った状態を示す拡大縦断面図、図1(D)は微細構造光ファイバ用母材の縦断面図である。図1において、1は配列用治具、2は円盤部、2aはガラスロッド配置部(凹部)、3は針状部、4はガラスパイプ、4aは孔、5はガラスロッド、6は外周ガラスパイプ、7はガラス封止部材、7aは圧力調整用開口部、8は微細構造光ファイバ用母材である。
【0016】
まず、図1(A)(B)に示す形状の配列用治具1を準備する。配列用治具1は、円盤部2とその円盤部2の片方の面の中心にガラスロッド配置部2aを有し円盤部2に対して直立するように配列し固定された複数の針状部3とからなり、アルミニウム、ステンレススチール等の金属等変形し難い材料で作る。複数の各針状部3は、細長い円柱状物体とし、円盤部2の中心周りの同心円の円周上に間隔をおいてかつ層状に配列する。同一同心円の円周上の針状部3の間隔は一般には等間隔とするが、微細構造光ファイバの種類によっては間隔を変えることもある。また、複数の針状部3は、互いに平行にかつ円盤部2に対して垂直に配置する。また、針状部3のそれぞれの外径は、後述するガラスパイプの内径に合せた寸法とする。なお、針状部3は、ガラスパイプの孔へ針状部を挿抜するときの容易性を考慮して、円盤部2側から先端側に向かってわずかに細くなるような抜き勾配を付けることが望ましい。
【0017】
また、ガラスパイプが配列される層によって内径が変わる場合があるが、その場合は、ガラスパイプの内径に合わせて針状部の外径を層によって変える。また、針状部3の長さは全て同じとする必要はなく、後述するガラスパイプの差し込みの容易性等を考慮して、配列される層によって長さを変えるようにすることも可能である。例えば中心に近い層の方を長くし、外周に向かって各層毎に短くなるようにしておけば、中心に近い層から順にガラスパイプへの針状部の差し込み作業を行なうことが容易になる。
【0018】
針状部3の寸法の事例と、円盤部2に対する針状部3の配列の事例をあげると次の通りである。ガラスパイプの内径が1.0mmの場合、針状部3の外径は、先端部側で0.95mm程度、円盤部側で0.98mm程度とし、針状部3の長さは30mm〜50mm程度とすることが望ましい。また、針状部3は、円盤部2の片方の面上に、その中心から半径2mm、4mm、6mm、8mm、10mm、12mm、14mmの各円周を層としてその上に、互いに等間隔に、6本、12本、18本、24本、30本、36本、42本をそれぞれ層毎に配置する。また、円盤部2の中心のガラスロッド配置部2aは後述するガラスロッドを保持し易くするため、内径2mm、深さ1mm〜2mm程度の凹部とすることが望ましい。
【0019】
次に配列用治具によるガラスパイプ等の保持について説明する。純粋なシリカガラス等のガラスで出来たガラスパイプ4を針状部の数だけ準備し、併せて純粋なシリカガラス等のガラスで出来たガラスロッド5を1本準備する。先に例示した寸法の配列用治具を使用する場合、ガラスパイプ4は外径が2.0mm、内径が1.0mm、長さが約300mm、ガラスロッド5の外径は2.0mm、長さは約302mmとする。なお、ガラスパイプ4の外径はマイナス公差とする。
【0020】
そして図1(C)に示すように、2つの配列用治具1をその針状部3同士が向き合うように対向して配置し、その間に複数のガラスパイプ4を配置してその孔4aの両端側からそれぞれに各針状部3を差し込む。なお、ガラスパイプの孔に両端側から針状部を同時に差し込むのは難しいので、次のようにすることが望ましい。まず、一方の配列用治具1を針状部3側を上側となるようにして保持し、各針状部3にガラスパイプ4の片端側の孔4aを挿入する。また、円盤部2の中心のガラスロッド配置部2aの凹部にガラスパイプ5を挿入する。それによって、ガラスロッド5及び複数のガラスパイプ4を円盤部2上に直立させる。
【0021】
続いて、他方の配列用治具1を針状部3を下側にしてガラスパイプ4の他端側の上方から降下させ、各針状部3をそれぞれガラスパイプ4の他端側の孔4aに差し込む。この時、上方から降下させる配列用治具1は、各針状部の長さを中心に近い層から周辺に近い層に向かって順次長さを短くしておけば、中心に近い層の針状部から順に差し込まれるので、組立作業が容易である。
【0022】
上記では、ガラスロッド5はガラスロッド配置部2aの凹部に挿入して支持することにしたが、ガラスパイプ4の外径とガラスロッド5の外径が等しい場合は、中心に最も近い第1層のガラスパイプの表面で出来る内接円がガラスロッドの外周円と同じになるので、針状部で保持された第1層のガラスパイプの隙間にガラスロッドを差し込むだけで、ガラスパイプでもってガラスロッドを保持させることも可能である。その場合は、ガラスロッド配置部2aの凹部の形成は不要である。
【0023】
配列用治具1とガラスパイプ4及びガラスロッド5の束の組立が終われば、図1(C)に示すようにガラスパイプ4の束を覆うようにシリカガラス等からなる外周ガラスパイプ6を通してガラスパイプ4の束上に外周ガラスパイプ6を固定する。外周ガラスパイプの内径がガラスパイプの束の外径とほぼ同じである場合は、外周ガラスパイプの孔に配列用治具1とガラスパイプ4及びガラスロッド5の組立体を通すだけでよいが、外周ガラスパイプの内径がガラスパイプの束の外径よりも大きい場合は、外周ガラスパイプの周囲を加熱してコラプスさせ、外周ガラスパイプの内壁面をガラスパイプの束に密着させることが望ましい。
【0024】
その後、両側の配列用治具1を引抜いて除去し、外周ガラスパイプ6の両端の開口をシリカガラス等からなるガラス封止部材7で封止する。その時、外周ガラスパイプの内側の圧力を調整するための圧力調整開口部7aをいずれかの端側のガラス封止部材7又はその近傍に設けることがある。以上にようにして、図1(D)に示すように、複数のガラスパイプ4、1本のガラスロッド5、外周ガラスパイプ6及びガラス封止部材7からなる本発明の微細構造光ファイバ用母材8を製造することが出来る。
【0025】
以上は、2つの配列用治具のそれぞれの針状部をガラスパイプの両側の孔に差し込んで両側からガラスパイプを保持する例を示したが、ガラスパイプの長さがあまり長くない場合は、1つの配列用治具の針状部をガラスパイプの片方の孔に差し込んで保持するだけで複数のガラスパイプ及びその中央に配置したガラスロッドを平行に保持することが可能である。この場合は外周ガラスパイプでガラスパイプを覆うに当たっては、外周ガラスパイプをガラスパイプのある側から通すことが出来るので、配列用治具の円盤部が大きくてもそれが外周ガラスパイプの挿通の障害になることがない。従って、外周ガラスパイプの内径をガラスパイプの束の外径に合わせることが容易である。但し、ガラスパイプの長手方向の配列精度を高める上では、2つの配列用治具によってガラスパイプを保持することが好ましい。
【0026】
また、配列用治具1にガラスパイプ4等を組み合わせる前又は後で、少なくともガラスパイプ4の外表面、ガラスロッド5の外表面及び外周ガラスパイプ6の内壁面をふっ酸等によってエッチング処理し、壁面等に付着した不純物を除去することが望ましい。エッチング処理によって、微細構造光ファイバのガラス中に閉じ込められる不純物を少なくすることが出来るので、製造される微細構造光ファイバの伝送損失の低損失化を図ることが出来る。
【0027】
また後述する理由で、ガラス封止部材7による外周ガラスパイプ6の封止に先立って、図4に示すように各ガラスパイプ4の少なくとも片方の端部4dの孔を封止し他方の端部4cの孔は開放したままとする場合と、図示しないが各ガラスパイプ4の両端の孔を開放させたままとしておく場合がある。また、ガラスパイプ4の端部4dの封止はパイプの一部を潰して溶融させるだけで簡単に行なうことが出来る。
【0028】
以上によって製造された本発明の微細構造光ファイバ用母材8を用いて微細構造光ファイバの製造は次の通り行なう。図2は、その線引き工程を説明する図であって、図1と同じ符号は同じものを示す。また、図2において、9はヒータ、10は微細構造光ファイバである。微細構造光ファイバ用母材8を線引き機にかけて、その圧力調整用開口部7aのない側の微細構造光ファイバ用母材8の端部をヒータ9で加熱して溶融させ、そこから例えば外径125μmの微細構造光ファイバ10を線引きする。線引き機は、通常シングルモード光ファイバ等の製造に用いられているものを用いることが出来る。この線引き時の加熱溶融によって、外周ガラスパイプ6、ガラスパイプ4及びガラスロッド5の各ガラス体は溶融されて一体化し、横断面の形状が長手方向に一定した微細構造光ファイバが引出される。
【0029】
また、線引き中、圧力調整用開口部7aから内部の圧力を調整して、外周ガラスパイプ7中のガラスパイプ4の内外の圧力を一定に保てば、ガラスパイプ4の孔4aの内部及び隣接する配列されたガラスパイプ4の外表面で出来る略三角形の空隙部に空気が閉じ込められた状態で線引きされるので、光ファイバのガラス中にそれらの部分が長手方向に延びる中空部となって残った状態で線引きされる。また、それらの中空部の内径は閉じ込められた空気の圧力と溶融ガラスの表面張力との関係で決まるので、所望の内径の中空部が得られるように内部圧力を調整する。また、外周ガラスパイプの内部圧力が大気圧でもよい場合は、ガラス封止部材に圧力調整用開口部を設ける必要はない。
【0030】
また、図4に示すように微細構造光ファイバ用母材8の圧力調整用開口部7aのある方の端部側において各ガラスパイプ4の孔4aを封止しておいて、内部圧力を調整した後、その微細構造光ファイバ用母材4の反対側の端部側を加熱溶融して線引きを開始し、その後圧力調整用開口部から外周円筒部の空洞部が真空に近くなるように減圧する。そうすると、加熱端側のガラスパイプ4の孔4aは線引き開始直後溶融によって塞がれるので、ガラスパイプ4の孔4aには空気が閉じ込められた状態のままで線引きされる。従って、その孔の部分は光ファイバのガラス中に長手方向に延びる中空部となって残る。また、配列されたガラスパイプ4の外表面で出来る略三角形の空隙部にあった空気は圧力調整用開口部から排出されるので、その空隙部はガラスが充填され、中空部は残らない。
【0031】
これによって線引きして得られた微細構造光ファイバ10は、図3に示す横断面を有するもので、中心にコア領域10aを有し、それを取り囲むようにそれぞれ長手方向に延びる断面円形の孔からなる中空部10bが横断面同心円の円周上に7層に配列されてクラッド領域10cが形成されており、それらの外側を外周部10dが取り囲んでいる。
【0032】
以上述べた本発明の微細構造光ファイバ用母材の製造方法によれば、配列用治具を使用してその針状部によって各ガラスパイプの位置を固定して保持して複数のガラスパイプを配列した束とするので、ガラスパイプを単に束ねるものに比べて、ガラスパイプの配列精度を向上させることが出来る。またこの微細構造光ファイバ用母材から線引きされた微細構造光ファイバのコア領域及びその周囲の中空部の配列精度を向上させ、製造ばらつきに少ない設計通りの光ファイバを得ることが出来る。
【0033】
因みに、図3に示す微細構造光ファイバにおいて、上述した外径2.0mmのシリカガラスからなるガラスロッドの周囲に外径2.0mm、内径1.0mmのシリカガラスからなるガラスパイプを168本配列させて、外径60mm、内径30mmのシリカガラスからなる外周ガラスパイプで覆った微細構造光ファイバ用母材を使って、図3に示す横断面で外径は125μmの微細構造光ファイバ10を線引きした場合、コア領域10aの外径が2.1μm、各中空部10bの内径が0.53μm、中空部10bの間隔が1.05μmの微細構造光ファイバが得られる。また、その微細構造光ファイバの波長1550nmにおける波長分散は−314ps/km/nm、実効断面積は5.6μm2であることが計算で求められるので、通常のシングルモード光ファイバに比べて大きな波長分散値となり、分散補償ファイバ等の用途に適している。
【0034】
また線引きの前に、空洞部内及びガラスパイプの孔内の空気を塩素ガス等のハロゲン系ガスで置換し、ハロゲン系ガスの圧力調整を行いながら線引きすることにすれば、ガラス中の水分や不純物がハロゲン系ガスと反応して空気とハロゲン系ガスの置換に合わせて追い出されて除去されるので、更に微細構造光ファイバの伝送損失の低減化を図ることが出来る。
【0035】
【発明の効果】
本発明の微細構造光ファイバ用母材の製造方法では、円盤部とその片面に固定した複数の針状部とからなる配列用治具を使って、各ガラスパイプを保持してガラスパイプの束となすことにしたので、円盤部の面に精密に複数の針状部を配置し固定することが可能で、複数のガラスパイプのそれぞれの位置を設計通りの精密な位置に合わせることが出来る。従って、微細構造光ファイバとなった時のコア領域及びコア領域に近い中空部の位置の配置精度を高めることが出来る。
【0036】
また、配列用治具を2つ使って、複数のガラスパイプのそれぞれ孔の両端側から針状部を差し込んで複数のガラスパイプを保持することにすれば、更にガラスロッド及び複数のガラスパイプの直線性及び相互位置精度をより一層高めることが出来るので、長手方向に断面が均一な微細構造光ファイバ用母材を製造することが出来る。
【0037】
また、ガラスロッド、ガラスパイプ、外周ガラスパイプ及びガラス封止部材の材質をシリカガラスとしたものは、線引きその他の加工が容易であり、製造された微細構造光ファイバも低損失で、かつ接続性にも優れている。また、外周ガラスパイプの内壁面、ガラスパイプの外表面をエッチング処理して付着した塵埃を除去すれば、製造される微細構造光ファイバの伝送損失をより小さくすることが出来る。また、微細構造光ファイバ用母材の線引きにおいて内部圧力を制御するに当たって、内部の空気をハロゲン系ガスで置換して線引きすることにすれば、ハロゲン系ガスによって水分、不純物等を反応させて除去することが出来るので、より伝送損失の低下を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる微細構造光ファイバ用母材の製造方法を説明する図であって、(A)(B)は微細構造光ファイバ用母材の製造に使用する配列用治具の斜視図と正面図、(C)は配列用治具にてガラスパイプを保持させ外周ガラスパイプで覆った状態を示す拡大縦断面図、(D)は微細構造光ファイバ用母材の縦断面図である。
【図2】本発明の微細構造光ファイバの線引き工程を説明する図である。
【図3】微細構造光ファイバの一例を示す横断面図である。
【図4】微細構造光ファイバ用母材において、ガラスパイプの端部を封止する例を説明する部分縦断面図である。
【図5】従来技術による微細構造光ファイバの一例を示す光ファイバ内部の横断面図である。
【符号の説明】
1:配列用治具
2:円盤部
2a:ガラスロッド配置部(凹部)
3:針状部
4:ガラスパイプ
4a:孔
4c:封止しない端部
4d:封止した端部
5:ガラスロッド
6:外周ガラスパイプ
7:ガラス封止部材
7a:圧力調整用開口部
8:微細構造光ファイバ用母材
9:ヒータ
10:微細構造光ファイバ
10a:コア領域
10b:中空部
10c:クラッド領域
10d:外周部
Claims (9)
- 円盤部と該円盤部の片方の面にその中心にガラスロッド配置部を有しそれを取り囲むように同心円の円周上に間隔をおいてかつ多層に配列され該円盤部の面に対して直立し互いに平行になるようにして固定された複数の針状部とを有する配列用治具を使って、前記ガラスロッド配置部にガラスロッドを直立させて併せて前記複数の針状部をそれぞれガラスパイプの孔の片方の端に差し込んで該複数の針状部にて該複数のガラスパイプをそれぞれ保持してガラスパイプの束となし、続いて前記複数のガラスパイプの束上を外周ガラスパイプにて覆って該外周ガラスパイプをガラスパイプの束上に固定し、その後前記配列用治具を抜き去って、前記外周ガラスパイプの両端を圧力調整用開口部付き又は圧力調整用開口部無しのガラス封止部材にて封止することを特徴とする微細構造光ファイバ用母材の製造方法。
- 円盤部と該円盤部の片方の面にその中心にガラスロッド配置部を有しそれを取り囲むように同心円の円周上に間隔をおいてかつ多層に配列され該円盤部の面に対して直立し互いに平行になるようにして固定された複数の針状部とを有する配列用治具を2つ使って、2つの該配列用治具のそれぞれの針状部側を向き合わせて対向させ、2つのガラスロッド配置部間にわたってガラスロッドを配置し、併せて複数のガラスパイプのそれぞれの孔の両端側から前記複数の針状部をそれぞれ差し込むことによって該複数のガラスパイプをそれぞれ保持してガラスパイプの束となし、続いて前記複数のガラスパイプの束上を外周ガラスパイプにて覆って該外周ガラスパイプをガラスパイプの束上に固定し、その後前記2つの配列用治具を抜き去って、前記外周ガラスパイプの両端を圧力調整用開口部付き又は圧力調整用開口部無しのガラス封止部材にて封止することを特徴とする微細構造光ファイバ用母材の製造方法。
- 前記ガラスパイプ、前記ガラスロッド、前記外周ガラスパイプ及び前記ガラス封止部材は、シリカガラスからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微細構造光ファイバ用母材の製造方法。
- 前記針状部は、円盤部側から先端側に向かって外径が小さくなる抜き勾配を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微細構造光ファイバ用母材の製造方法。
- 前記円盤部のガラスロッド配置部には凹部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微細構造光ファイバ用母材の製造方法。
- 少なくとも、前記複数のガラスパイプの外表面、前記ガラスロッドの外表面及び外周ガラスパイプの内面は、前記微細構造光ファイバ用母材の組立前あるいは組立後にエッチング処理して付着した不純物を除去することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微細構造光ファイバ用母材の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に基づいて製造した微細構造光ファイバ用母材の一端を加熱溶融して線引きすることによって光ファイバのガラス中に複数の長手方向に延びる中空部が中心のコア領域の周囲の円周上に間隔をおいてかつ層状に配列された光ファイバを得ることを特徴とする微細構造光ファイバの製造方法。
- 前記圧力調整用開口部から前記微細構造光ファイバ用母材の外周ガラスパイプ内の内部圧力を調整しながら、前記光ファイバを線引きすることを特徴とする請求項7に記載の微細構造光ファイバの製造方法。
- 前記微細構造光ファイバ用母材の線引きを行なう前に外周ガラスパイプ内の空気をハロゲン系ガスで置換し、該ハロゲン系ガスの内部圧力を調整しながら線引きを行なうことを特徴とする請求項7に記載の微細構造光ファイバの製造方法。
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