JP3809817B2 - 誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサおよび通信装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、誘電体ブロックと導電性カバーを備えた誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサおよびそれらを備えた通信装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
略直方体形状の誘電体ブロックの内部に、内面に内導体を形成した共振器用孔を、互いに平行に配列し、外面に外導体を形成してなる誘電体フィルタがマイクロ波帯用のフィルタとして用いられている。
【０００３】
このような誘電体フィルタにおいては、誘電体ブロックの開放面から外部への電磁波の不要輻射または外部との不要結合の問題を解消するために、誘電体ブロックの開放面を覆うように導電性カバーが設けられている（例えば特許文献１）。
【０００４】
【特許文献１】
特開平９−１６７９０２号公報
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来の導電性カバーを設けた誘電体フィルタにおいては、その導電性カバーが、平面状金属板を１ヵ所で単に略直角に折り曲げ加工しただけのものであった。そのため、誘電体フィルタの製造中に、または完成した誘電体フィルタを電子機器の回路基板へ実装する際に、さらにその実装工程の後に、何らかの外力を受けて、導電性カバーが変形するおそれがあった。もし導電性カバーの折り曲げ角度が鋭角になるように変形すると、誘電体ブロックの開放面とそれに対向する導電性カバーの面との間隔が変化して、フィルタとしての電気的特性が変化してしまう。また導電性カバーの折り曲げ角度が鈍角になって、誘電体ブロックの開放面とそれに対向する導電性カバーとの間隔が広がると、一般に電磁界シールドの効果が低くなってしまう。
【０００６】
また、従来の導電性カバーを設けた誘電体フィルタにおいては、誘電体ブロックの開放面に形成した結合用電極で共振器間の結合、または所定の共振器と外部との結合が行われる。その際、隣接する共振器間で結合が生じ易いので、結合させたくない共振器同士は、その間隔を広げる必要がある。このことが、誘電体フィルタの小型化を阻む一因となっていた。
【０００７】
そこで、この発明の目的は、導電性カバーの変形を抑えるとともに、導電性カバーを取りつけた状態で所定の共振器間の不要結合を防止した誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサおよびそれらを備えた通信装置を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
この発明の誘電体フィルタは、略直方体形状の誘電体ブロックの内部に、該誘電体ブロックの第１面からそれに対向する第２面にかけてのびる、それぞれの内面に内導体を形成した共振器用孔を、互いに平行に配列するとともに、誘電体ブロックの第１面を開放面として誘電体ブロックの外面に外導体を形成してなる誘電体フィルタ本体と、誘電体ブロックの開放面を覆う導電性カバーとから構成するが、その導電性カバーは、共振器用孔ののびる方向と該共振器用孔の配列方向に共に平行な、誘電体ブロックの外導体に接する面と、当該面から折り曲げ部で折り曲げられた、前記開放面に平行な面とを有し、折り曲げ部の所定個所に内側へ突出する非開口の変形部を備えるとともに、該変形部は前記開放面に接する形状をなし、該変形部が前記複数の共振器用孔のうち所定の隣接する２つの共振器用孔の間で、誘電体ブロックの開放面に接していることを特徴としている。
【０００９】
この折り曲げ部で内側へ突出する変形部を所定箇所に備えたことにより、導電性カバーの折り曲げ部の強度が向上するとともに、隣接する２つの共振器の開放部間に導電性カバーの変形部を介在させることにより、その２つの共振器間の不要結合が抑えられる。
【００１１】
また、この発明の誘電体デュプレクサは上記構成の誘電体フィルタにおいて、複数の共振器用孔によって単一の誘電体ブロックに送信フィルタと受信フィルタを構成するとともに、送信フィルタと受信フィルタの間に導電性カバーの変形部を配置したことを特徴としている。この構造により送信フィルタと受信フィルタ間の不要結合を防止することができる。
【００１２】
また、この発明の通信装置は、上記構成の誘電体フィルタまたは誘電体デュプレクサを備えて送受信信号の処理を行うことを特徴としている。
【００１３】
【発明の実施の形態】
第１の実施形態に係る誘電体フィルタの構成を図１・図２を参照して説明する。
図１の（Ａ）は誘電体フィルタの分解斜視図、（Ｂ）はその下面図である。誘電体ブロック１は略直方体形状をなし、その第１面Ｓ１からそれに対向する第２面Ｓ２にかけて５つの共振器用孔２ａ〜２ｅを互いに平行に配列している。これらの共振器用孔２ａ〜２ｅの内面には内導体３をそれぞれ形成している。誘電体ブロック１の外面（六面）のうち開放面Ｓ１を除く他の五面には外導体６を形成している。共振器用孔２ａ〜２ｅの内面に形成した内導体は誘電体ブロックの第２面Ｓ２で外導体と導通している。すなわち、この第２面Ｓ２を短絡面としている。誘電体ブロック１の第１面Ｓ１は開放面であり、この面に共振器用孔２ａ〜２ｅの内面の内導体に導通する結合用電極４ａ〜４ｅを形成している。また外部結合用電極５ａ，５ｂをこの開放面Ｓ１から図における下面にかけて形成している。
【００１４】
外部結合用電極５ａは結合用電極４ａ，４ｂとの間にそれぞれ生じる容量によって、共振器用孔２ａ，２ｂによる２つの共振器との間でそれぞれ容量性結合する。同様に外部結合用電極５ｂは結合用電極４ｅとの間に生じる容量によって、共振器用孔２ｅによる共振器との間で容量性結合する。また、共振器用孔２ｂ，２ｃ，２ｄ，２ｅによる４つの共振器は、結合用電極４ｂ−４ｃ間、４ｃ−４ｄ間、４ｄ−４ｅ間に生じる容量によって、それぞれ隣接する共振器間が容量性結合する。
【００１５】
これら５つの共振器のうち共振器用孔２ａによる共振器は、外部結合用電極５ａと接地との間に接続された１段の共振器によるトラップフィルタとして作用する。また、共振器用孔２ｂ〜２ｅによる４つの共振器は、隣接する共振器間がそれぞれ容量性結合した４段の共振器から成るバンドパスフィルタとして作用する。
【００１６】
さて、図１において１１で示す部材が導電性カバーであり、平板状の金属板を所定箇所で略直角に折り曲げ加工し、さらにその折り曲げ部の所定箇所に内側へ突出する変形部１２ａ，１２ｂを形成している。これらの変形部１２ａ，１２ｂは導電性カバー１１の外側から見れば凹みであり、誘電体ブロック内側から見れば突出部である。この導電性カバー１１を誘電体ブロック１の開放面Ｓ１に対して所定間隔をもって対向させるように、誘電体ブロック１の側面（図における上面）に取りつける。
【００１７】
図２は誘電体ブロック１に導電性カバー１１を取りつけた状態での断面図である。（Ａ）は変形部１２ａ部分を通る面での断面図、（Ｂ）は変形部１２ｂを通る面での断面図である。但し、導電性カバー１１部分のみ断面として表している。ここで導電性カバー１１の変形部１２ａが誘電体ブロック１の開放面Ｓ１に当接した状態で導電性カバー１１を誘電体ブロック１に取りつけている。したがって、誘電体ブロックの開放面Ｓ１とそれに対向する導電性カバー１１の面との間隔Ｇは変形部１２ａ，１２ｂの深さ（誘電体ブロック側への突出量）によって定まる。
【００１８】
このように変形部１２ａ，１２ｂを導電性カバー１１の折り曲げ部に設けたことにより、導電性カバー１１の折り曲げ部分の強度（剛性）が高まる。その結果、誘電体フィルタの製造中に、または完成した誘電体フィルタを電子機器の回路基板へ実装する際に、さらにその実装工程の後に、導電性カバー１１の変形を防止することができる。その結果、電磁界シールド機能を確保しつつフィルタとしての電気的特性の安定性を保つことができる。
【００１９】
また、導電性カバー１１に設けた２つの変形部のうち１２ａは断面が矩形であり、誘電体ブロック１の開放面Ｓ１のＣａで示す箇所（図１（Ａ））に接する。このことにより共振器用孔２ａ，２ｂによる２つの共振器間の結合（結合用電極２ａ，２ｂ間の容量による容量性結合）を抑制するように作用する。一方、断面が直角三角形状の変形部１２ｂは、Ｃｂで示す誘電体ブロック１の稜線部の一部に接するだけであるので、共振器用孔２ｄ，２ｅによる２つの共振器間の結合を妨げない。このことにより上記トラップ共振器とバンドパスフィルタの初段または終段の共振器との不要な結合が無くなり、トラップフィルタとバンドパスフィルタの本来の特性をそれぞれ発現させることができる。
【００２０】
次に、第２の実施形態に係る誘電体デュプレクサの構成を図３および図４を参照して説明する。
図３の（Ａ）は誘電体デュプレクサの分解斜視図、（Ｂ）はその下面図である。誘電体ブロック１は全体に略直方体形状を成し、第１面Ｓ１からそれに対向する第２面Ｓ２にかけて延びる７つの共振器用孔２ａ〜２ｇを設けている。これらの共振器用孔２ａ〜２ｇの内面には内導体をそれぞれ形成している。誘電体ブロック１の外面（六面）のうち開放面Ｓ１を除く他の五面には外導体６を形成している。共振器用孔２ａ〜２ｇの内面に形成した内導体は誘電体ブロック１の第２面Ｓ２で外導体と導通していている。すなわち、この第２面Ｓ２を短絡面としている。誘電体ブロック１の第１面Ｓ１は開放面であり、この面に共振器用孔２ａ〜２ｇの内面の内導体に導通する結合用電極４ａ〜４ｇを形成している。また外部結合用電極５ａ，５ｂ，５ｃをこの開放面Ｓ１から図における下面にかけて形成している。
【００２１】
外部結合用電極５ａは結合用電極４ａ，４ｂとの間に生じる容量によって、共振器用孔２ａ，２ｂによる２つの共振器との間でそれぞれ容量性結合する。また、外部結合用電極５ｃは結合用電極４ｆ，４ｇとの間に生じる容量によって、共振器用孔２ｆ，２ｇによる共振器との間でそれぞれ容量性結合する。同様に、外部結合用電極５ｂは結合用電極４ｄ，４ｅとの間に生じる容量によって、共振器用孔２ｄ，２ｅによる共振器との間でそれぞれ容量性結合する。また、共振器用孔２ｂ，２ｃ，２ｄによる３つの共振器は、結合用電極４ｂ−４ｃ間、４ｃ−４ｄ間に生じる容量によって、それぞれ隣接する共振器間が容量性結合する。同様に、共振器用孔２ｅ，２ｆによる２つの共振器は、結合用電極４ｅ−４ｆ間に生じる容量によって容量性結合する。
【００２２】
これら７つの共振器のうち共振器用孔２ａによる共振器は、外部結合用電極５ａと接地との間に接続された１段の共振器によるトラップフィルタとして作用する。同様に、共振器用孔２ｇによる共振器は、外部結合用電極５ｃと接地との間に接続された１段の共振器によるトラップフィルタとして作用する。また、共振器用孔２ｂ〜２ｄによる３つの共振器は、隣接する共振器間がそれぞれ容量性結合した３段の共振器から成るバンドパスフィルタとして作用する。同様に、共振器用孔２ｅ，２ｆによる２つの共振器は、共振器間が容量性結合した２段の共振器から成るバンドパスフィルタとして作用する。
【００２３】
ここで、外部結合用電極５ａは受信信号出力端子（ＲＸ）、５ｃは送信信号入力端子（ＴＸ）として用い、５ｂはアンテナ端子（ＡＮＴ）として用いる。したがって、共振器用孔２ｂ，２ｃ，２ｄによるバンドパスフィルタは受信帯域を通過させる受信フィルタとして作用する。共振器用孔２ａによるトラップフィルタは、送信帯域を減衰させる。また、共振器用孔２ｅ，２ｆによるバンドパスフィルタは送信帯域を通過させる送信フィルタとして作用する。共振器用孔２ｇによるトラップフィルタは受信信号周波数帯域を減衰させるトラップ共振器として作用する。
【００２４】
導電性カバー１１に設けた変形部１２ａ，１２ｂ，１２ｃは誘電体ブロック１の開放面Ｓ１のＣａ，Ｃｂ，Ｃｃで示す位置に当接する。したがって変形部１２ａは共振器用孔２ａ，２ｂによる２つの共振器間の不要結合を阻止し、変形部１２ｂは共振器用孔２ｄ，２ｅによる２つの共振器間の不要結合を阻止し、変形部１２ｃは共振器用孔２ｆ，２ｇによる２つの共振器間の不要結合を阻止する。このようにしてバンドパスフィルタとトラップフィルタ間の不要結合を阻止するとともに送信フィルタと受信フィルタ間の不要結合も阻止する。
【００２５】
なお、図３に示した例では、導電性カバー１１にすべて断面矩形状の変形部１２ａ，１２ｂ，１２ｃを設けたが、図４に示すように、これらは必要に応じて断面三角形状としてもよい。
【００２６】
また、図１に示した例では共振器用孔２ａ〜２ｅのすべてを内径一定のストレート孔としたが、開放端側と短絡端側とで内径を異ならせた所謂ステップ孔としてもよい。または、ストレート孔とステップ孔を組み合わせてもよい。
【００２７】
次に、第３の実施形態に係る通信装置の構成を図５を参照して説明する。図５においてＡＮＴは送受信アンテナ、ＤＰＸはデュプレクサ、ＢＰＦａ，ＢＰＦｂはそれぞれ帯域通過フィルタ、ＡＭＰａ，ＡＭＰｂはそれぞれ増幅回路、ＭＩＸａ，ＭＩＸｂはそれぞれミキサ、ＯＳＣはオシレータ、ＳＹＮは周波数シンセサイザである。
【００２８】
ＭＩＸａは送信中間周波信号ＩＦと、ＳＹＮから出力された信号とを混合し、ＢＰＦａはＭＩＸａからの混合出力信号のうち送信周波数帯域のみを通過させ、ＡＭＰａはこれを電力増幅してＤＰＸを介しＡＮＴより送信する。ＡＭＰｂはＤＰＸから取り出した受信信号を増幅する。ＢＰＦｂはＡＭＰｂから出力される受信信号のうち受信周波数帯域のみを通過させる。ＭＩＸｂは、ＳＹＮから出力された周波数信号と受信信号とをミキシングして受信中間周波信号ＩＦを出力する。
【００２９】
図５に示したデュプレクサＤＰＸ部分には、図３に示した構造のデュプレクサを用いる。また帯域通過フィルタＢＰＦａ，ＢＰＦｂ，ＢＰＦｃには図１および図２に示した構造の誘電体フィルタを用いる。。
このように、小型で信頼性の高いフィルタやデュプレクサを用いることにより、高周波回路特性に優れた小型の通信装置を得る。
【００３０】
【発明の効果】
この発明によれば、誘電体ブロックの開放面を覆う導電性カバーは、折り曲げ部の所定個所に内側へ突出する変形部を備えたことにより、導電性カバーの折り曲げ部の強度が向上するとともに、隣接する２つの共振器の開放部間に導電性カバーの変形部を介在させることにより、その２つの共振器間の不要結合が抑えられる。
【００３１】
また、この発明によれば、前記変形部が誘電体ブロックの開放面に接する形状を成し、変形部が複数の共振器用孔のうち所定の隣接する２つの共振器用孔の間で誘電体ブロックの開放面に接するように構成することにより、隣接する２つの共振器間の不要結合が、開放部間を導電性カバーの変形部で確実に抑えられる。
【００３２】
また、この発明によれば、複数の共振器用孔によって単一の誘電体ブロックに送信フィルタと受信フィルタを構成した誘電体デュプレクサにおいて、送信フィルタと受信フィルタの間に導電性カバーの変形部を配置したことにより、送信フィルタと受信フィルタ間の不要結合が防止でき、その分、送信フィルタ部と受信フィルタ部を近接配置して全体に小型化できる。
【００３３】
また、この発明によれば、小型で高信頼性の誘電体フィルタまたは誘電体デュプレクサを備えたことにより、小型で通信性能に優れた通信装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１の実施形態に係る誘電体フィルタの分解斜視図および下面図
【図２】同誘電体フィルタの主要部の断面図
【図３】第２の実施形態に係る誘電体デュプレクサの分解斜視図および下面図
【図４】別の形状を備えた導電性カバーの斜視図
【図５】第３の実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
１−誘電体ブロック
２−共振器孔
３−内導体
４−結合用電極
５−外部結合用電極
６−外導体
１１−導電性カバー
１２−変形部
Ｃ−当接部
Ｓ１−第１面（開放面）
Ｓ２−第２面
【発明の属する技術分野】
この発明は、誘電体ブロックと導電性カバーを備えた誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサおよびそれらを備えた通信装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
略直方体形状の誘電体ブロックの内部に、内面に内導体を形成した共振器用孔を、互いに平行に配列し、外面に外導体を形成してなる誘電体フィルタがマイクロ波帯用のフィルタとして用いられている。
【０００３】
このような誘電体フィルタにおいては、誘電体ブロックの開放面から外部への電磁波の不要輻射または外部との不要結合の問題を解消するために、誘電体ブロックの開放面を覆うように導電性カバーが設けられている（例えば特許文献１）。
【０００４】
【特許文献１】
特開平９−１６７９０２号公報
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来の導電性カバーを設けた誘電体フィルタにおいては、その導電性カバーが、平面状金属板を１ヵ所で単に略直角に折り曲げ加工しただけのものであった。そのため、誘電体フィルタの製造中に、または完成した誘電体フィルタを電子機器の回路基板へ実装する際に、さらにその実装工程の後に、何らかの外力を受けて、導電性カバーが変形するおそれがあった。もし導電性カバーの折り曲げ角度が鋭角になるように変形すると、誘電体ブロックの開放面とそれに対向する導電性カバーの面との間隔が変化して、フィルタとしての電気的特性が変化してしまう。また導電性カバーの折り曲げ角度が鈍角になって、誘電体ブロックの開放面とそれに対向する導電性カバーとの間隔が広がると、一般に電磁界シールドの効果が低くなってしまう。
【０００６】
また、従来の導電性カバーを設けた誘電体フィルタにおいては、誘電体ブロックの開放面に形成した結合用電極で共振器間の結合、または所定の共振器と外部との結合が行われる。その際、隣接する共振器間で結合が生じ易いので、結合させたくない共振器同士は、その間隔を広げる必要がある。このことが、誘電体フィルタの小型化を阻む一因となっていた。
【０００７】
そこで、この発明の目的は、導電性カバーの変形を抑えるとともに、導電性カバーを取りつけた状態で所定の共振器間の不要結合を防止した誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサおよびそれらを備えた通信装置を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
この発明の誘電体フィルタは、略直方体形状の誘電体ブロックの内部に、該誘電体ブロックの第１面からそれに対向する第２面にかけてのびる、それぞれの内面に内導体を形成した共振器用孔を、互いに平行に配列するとともに、誘電体ブロックの第１面を開放面として誘電体ブロックの外面に外導体を形成してなる誘電体フィルタ本体と、誘電体ブロックの開放面を覆う導電性カバーとから構成するが、その導電性カバーは、共振器用孔ののびる方向と該共振器用孔の配列方向に共に平行な、誘電体ブロックの外導体に接する面と、当該面から折り曲げ部で折り曲げられた、前記開放面に平行な面とを有し、折り曲げ部の所定個所に内側へ突出する非開口の変形部を備えるとともに、該変形部は前記開放面に接する形状をなし、該変形部が前記複数の共振器用孔のうち所定の隣接する２つの共振器用孔の間で、誘電体ブロックの開放面に接していることを特徴としている。
【０００９】
この折り曲げ部で内側へ突出する変形部を所定箇所に備えたことにより、導電性カバーの折り曲げ部の強度が向上するとともに、隣接する２つの共振器の開放部間に導電性カバーの変形部を介在させることにより、その２つの共振器間の不要結合が抑えられる。
【００１１】
また、この発明の誘電体デュプレクサは上記構成の誘電体フィルタにおいて、複数の共振器用孔によって単一の誘電体ブロックに送信フィルタと受信フィルタを構成するとともに、送信フィルタと受信フィルタの間に導電性カバーの変形部を配置したことを特徴としている。この構造により送信フィルタと受信フィルタ間の不要結合を防止することができる。
【００１２】
また、この発明の通信装置は、上記構成の誘電体フィルタまたは誘電体デュプレクサを備えて送受信信号の処理を行うことを特徴としている。
【００１３】
【発明の実施の形態】
第１の実施形態に係る誘電体フィルタの構成を図１・図２を参照して説明する。
図１の（Ａ）は誘電体フィルタの分解斜視図、（Ｂ）はその下面図である。誘電体ブロック１は略直方体形状をなし、その第１面Ｓ１からそれに対向する第２面Ｓ２にかけて５つの共振器用孔２ａ〜２ｅを互いに平行に配列している。これらの共振器用孔２ａ〜２ｅの内面には内導体３をそれぞれ形成している。誘電体ブロック１の外面（六面）のうち開放面Ｓ１を除く他の五面には外導体６を形成している。共振器用孔２ａ〜２ｅの内面に形成した内導体は誘電体ブロックの第２面Ｓ２で外導体と導通している。すなわち、この第２面Ｓ２を短絡面としている。誘電体ブロック１の第１面Ｓ１は開放面であり、この面に共振器用孔２ａ〜２ｅの内面の内導体に導通する結合用電極４ａ〜４ｅを形成している。また外部結合用電極５ａ，５ｂをこの開放面Ｓ１から図における下面にかけて形成している。
【００１４】
外部結合用電極５ａは結合用電極４ａ，４ｂとの間にそれぞれ生じる容量によって、共振器用孔２ａ，２ｂによる２つの共振器との間でそれぞれ容量性結合する。同様に外部結合用電極５ｂは結合用電極４ｅとの間に生じる容量によって、共振器用孔２ｅによる共振器との間で容量性結合する。また、共振器用孔２ｂ，２ｃ，２ｄ，２ｅによる４つの共振器は、結合用電極４ｂ−４ｃ間、４ｃ−４ｄ間、４ｄ−４ｅ間に生じる容量によって、それぞれ隣接する共振器間が容量性結合する。
【００１５】
これら５つの共振器のうち共振器用孔２ａによる共振器は、外部結合用電極５ａと接地との間に接続された１段の共振器によるトラップフィルタとして作用する。また、共振器用孔２ｂ〜２ｅによる４つの共振器は、隣接する共振器間がそれぞれ容量性結合した４段の共振器から成るバンドパスフィルタとして作用する。
【００１６】
さて、図１において１１で示す部材が導電性カバーであり、平板状の金属板を所定箇所で略直角に折り曲げ加工し、さらにその折り曲げ部の所定箇所に内側へ突出する変形部１２ａ，１２ｂを形成している。これらの変形部１２ａ，１２ｂは導電性カバー１１の外側から見れば凹みであり、誘電体ブロック内側から見れば突出部である。この導電性カバー１１を誘電体ブロック１の開放面Ｓ１に対して所定間隔をもって対向させるように、誘電体ブロック１の側面（図における上面）に取りつける。
【００１７】
図２は誘電体ブロック１に導電性カバー１１を取りつけた状態での断面図である。（Ａ）は変形部１２ａ部分を通る面での断面図、（Ｂ）は変形部１２ｂを通る面での断面図である。但し、導電性カバー１１部分のみ断面として表している。ここで導電性カバー１１の変形部１２ａが誘電体ブロック１の開放面Ｓ１に当接した状態で導電性カバー１１を誘電体ブロック１に取りつけている。したがって、誘電体ブロックの開放面Ｓ１とそれに対向する導電性カバー１１の面との間隔Ｇは変形部１２ａ，１２ｂの深さ（誘電体ブロック側への突出量）によって定まる。
【００１８】
このように変形部１２ａ，１２ｂを導電性カバー１１の折り曲げ部に設けたことにより、導電性カバー１１の折り曲げ部分の強度（剛性）が高まる。その結果、誘電体フィルタの製造中に、または完成した誘電体フィルタを電子機器の回路基板へ実装する際に、さらにその実装工程の後に、導電性カバー１１の変形を防止することができる。その結果、電磁界シールド機能を確保しつつフィルタとしての電気的特性の安定性を保つことができる。
【００１９】
また、導電性カバー１１に設けた２つの変形部のうち１２ａは断面が矩形であり、誘電体ブロック１の開放面Ｓ１のＣａで示す箇所（図１（Ａ））に接する。このことにより共振器用孔２ａ，２ｂによる２つの共振器間の結合（結合用電極２ａ，２ｂ間の容量による容量性結合）を抑制するように作用する。一方、断面が直角三角形状の変形部１２ｂは、Ｃｂで示す誘電体ブロック１の稜線部の一部に接するだけであるので、共振器用孔２ｄ，２ｅによる２つの共振器間の結合を妨げない。このことにより上記トラップ共振器とバンドパスフィルタの初段または終段の共振器との不要な結合が無くなり、トラップフィルタとバンドパスフィルタの本来の特性をそれぞれ発現させることができる。
【００２０】
次に、第２の実施形態に係る誘電体デュプレクサの構成を図３および図４を参照して説明する。
図３の（Ａ）は誘電体デュプレクサの分解斜視図、（Ｂ）はその下面図である。誘電体ブロック１は全体に略直方体形状を成し、第１面Ｓ１からそれに対向する第２面Ｓ２にかけて延びる７つの共振器用孔２ａ〜２ｇを設けている。これらの共振器用孔２ａ〜２ｇの内面には内導体をそれぞれ形成している。誘電体ブロック１の外面（六面）のうち開放面Ｓ１を除く他の五面には外導体６を形成している。共振器用孔２ａ〜２ｇの内面に形成した内導体は誘電体ブロック１の第２面Ｓ２で外導体と導通していている。すなわち、この第２面Ｓ２を短絡面としている。誘電体ブロック１の第１面Ｓ１は開放面であり、この面に共振器用孔２ａ〜２ｇの内面の内導体に導通する結合用電極４ａ〜４ｇを形成している。また外部結合用電極５ａ，５ｂ，５ｃをこの開放面Ｓ１から図における下面にかけて形成している。
【００２１】
外部結合用電極５ａは結合用電極４ａ，４ｂとの間に生じる容量によって、共振器用孔２ａ，２ｂによる２つの共振器との間でそれぞれ容量性結合する。また、外部結合用電極５ｃは結合用電極４ｆ，４ｇとの間に生じる容量によって、共振器用孔２ｆ，２ｇによる共振器との間でそれぞれ容量性結合する。同様に、外部結合用電極５ｂは結合用電極４ｄ，４ｅとの間に生じる容量によって、共振器用孔２ｄ，２ｅによる共振器との間でそれぞれ容量性結合する。また、共振器用孔２ｂ，２ｃ，２ｄによる３つの共振器は、結合用電極４ｂ−４ｃ間、４ｃ−４ｄ間に生じる容量によって、それぞれ隣接する共振器間が容量性結合する。同様に、共振器用孔２ｅ，２ｆによる２つの共振器は、結合用電極４ｅ−４ｆ間に生じる容量によって容量性結合する。
【００２２】
これら７つの共振器のうち共振器用孔２ａによる共振器は、外部結合用電極５ａと接地との間に接続された１段の共振器によるトラップフィルタとして作用する。同様に、共振器用孔２ｇによる共振器は、外部結合用電極５ｃと接地との間に接続された１段の共振器によるトラップフィルタとして作用する。また、共振器用孔２ｂ〜２ｄによる３つの共振器は、隣接する共振器間がそれぞれ容量性結合した３段の共振器から成るバンドパスフィルタとして作用する。同様に、共振器用孔２ｅ，２ｆによる２つの共振器は、共振器間が容量性結合した２段の共振器から成るバンドパスフィルタとして作用する。
【００２３】
ここで、外部結合用電極５ａは受信信号出力端子（ＲＸ）、５ｃは送信信号入力端子（ＴＸ）として用い、５ｂはアンテナ端子（ＡＮＴ）として用いる。したがって、共振器用孔２ｂ，２ｃ，２ｄによるバンドパスフィルタは受信帯域を通過させる受信フィルタとして作用する。共振器用孔２ａによるトラップフィルタは、送信帯域を減衰させる。また、共振器用孔２ｅ，２ｆによるバンドパスフィルタは送信帯域を通過させる送信フィルタとして作用する。共振器用孔２ｇによるトラップフィルタは受信信号周波数帯域を減衰させるトラップ共振器として作用する。
【００２４】
導電性カバー１１に設けた変形部１２ａ，１２ｂ，１２ｃは誘電体ブロック１の開放面Ｓ１のＣａ，Ｃｂ，Ｃｃで示す位置に当接する。したがって変形部１２ａは共振器用孔２ａ，２ｂによる２つの共振器間の不要結合を阻止し、変形部１２ｂは共振器用孔２ｄ，２ｅによる２つの共振器間の不要結合を阻止し、変形部１２ｃは共振器用孔２ｆ，２ｇによる２つの共振器間の不要結合を阻止する。このようにしてバンドパスフィルタとトラップフィルタ間の不要結合を阻止するとともに送信フィルタと受信フィルタ間の不要結合も阻止する。
【００２５】
なお、図３に示した例では、導電性カバー１１にすべて断面矩形状の変形部１２ａ，１２ｂ，１２ｃを設けたが、図４に示すように、これらは必要に応じて断面三角形状としてもよい。
【００２６】
また、図１に示した例では共振器用孔２ａ〜２ｅのすべてを内径一定のストレート孔としたが、開放端側と短絡端側とで内径を異ならせた所謂ステップ孔としてもよい。または、ストレート孔とステップ孔を組み合わせてもよい。
【００２７】
次に、第３の実施形態に係る通信装置の構成を図５を参照して説明する。図５においてＡＮＴは送受信アンテナ、ＤＰＸはデュプレクサ、ＢＰＦａ，ＢＰＦｂはそれぞれ帯域通過フィルタ、ＡＭＰａ，ＡＭＰｂはそれぞれ増幅回路、ＭＩＸａ，ＭＩＸｂはそれぞれミキサ、ＯＳＣはオシレータ、ＳＹＮは周波数シンセサイザである。
【００２８】
ＭＩＸａは送信中間周波信号ＩＦと、ＳＹＮから出力された信号とを混合し、ＢＰＦａはＭＩＸａからの混合出力信号のうち送信周波数帯域のみを通過させ、ＡＭＰａはこれを電力増幅してＤＰＸを介しＡＮＴより送信する。ＡＭＰｂはＤＰＸから取り出した受信信号を増幅する。ＢＰＦｂはＡＭＰｂから出力される受信信号のうち受信周波数帯域のみを通過させる。ＭＩＸｂは、ＳＹＮから出力された周波数信号と受信信号とをミキシングして受信中間周波信号ＩＦを出力する。
【００２９】
図５に示したデュプレクサＤＰＸ部分には、図３に示した構造のデュプレクサを用いる。また帯域通過フィルタＢＰＦａ，ＢＰＦｂ，ＢＰＦｃには図１および図２に示した構造の誘電体フィルタを用いる。。
このように、小型で信頼性の高いフィルタやデュプレクサを用いることにより、高周波回路特性に優れた小型の通信装置を得る。
【００３０】
【発明の効果】
この発明によれば、誘電体ブロックの開放面を覆う導電性カバーは、折り曲げ部の所定個所に内側へ突出する変形部を備えたことにより、導電性カバーの折り曲げ部の強度が向上するとともに、隣接する２つの共振器の開放部間に導電性カバーの変形部を介在させることにより、その２つの共振器間の不要結合が抑えられる。
【００３１】
また、この発明によれば、前記変形部が誘電体ブロックの開放面に接する形状を成し、変形部が複数の共振器用孔のうち所定の隣接する２つの共振器用孔の間で誘電体ブロックの開放面に接するように構成することにより、隣接する２つの共振器間の不要結合が、開放部間を導電性カバーの変形部で確実に抑えられる。
【００３２】
また、この発明によれば、複数の共振器用孔によって単一の誘電体ブロックに送信フィルタと受信フィルタを構成した誘電体デュプレクサにおいて、送信フィルタと受信フィルタの間に導電性カバーの変形部を配置したことにより、送信フィルタと受信フィルタ間の不要結合が防止でき、その分、送信フィルタ部と受信フィルタ部を近接配置して全体に小型化できる。
【００３３】
また、この発明によれば、小型で高信頼性の誘電体フィルタまたは誘電体デュプレクサを備えたことにより、小型で通信性能に優れた通信装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１の実施形態に係る誘電体フィルタの分解斜視図および下面図
【図２】同誘電体フィルタの主要部の断面図
【図３】第２の実施形態に係る誘電体デュプレクサの分解斜視図および下面図
【図４】別の形状を備えた導電性カバーの斜視図
【図５】第３の実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
１−誘電体ブロック
２−共振器孔
３−内導体
４−結合用電極
５−外部結合用電極
６−外導体
１１−導電性カバー
１２−変形部
Ｃ−当接部
Ｓ１−第１面（開放面）
Ｓ２−第２面
Claims (4)
- 略直方体形状の誘電体ブロックの内部に、該誘電体ブロックの第１面からそれに対向する第２面にかけてのびる、それぞれの内面に内導体を形成した共振器用孔を、互いに平行に配列するとともに、前記誘電体ブロックの第１面を開放面として誘電体ブロックの外面に外導体を形成してなる誘電体フィルタ本体と、前記誘電体ブロックの開放面を覆う導電性カバーとからなる誘電体フィルタにおいて、
前記導電性カバーは、前記共振器用孔ののびる方向に平行で且つ該共振器用孔の配列方向に平行な、前記誘電体ブロックの外導体に接する面と、当該面から折り曲げ部で折り曲げられた、前記開放面に平行な面とを有し、前記折り曲げ部の所定個所に内側へ突出する非開口の変形部を備えるとともに、該変形部は前記開放面に接する形状をなし、該変形部が前記複数の共振器用孔のうち所定の隣接する２つの共振器用孔の間で、前記誘電体ブロックの開放面に接していることを特徴とする誘電体フィルタ。 - 前記変形部の、前記誘電体ブロックの外導体に接する面と前記開放面に平行な面とに対して共に垂直な面での断面形状が矩形である請求項１に記載の誘電体フィルタ。
- 請求項１または２に記載の誘電体フィルタにおいて、複数の共振器用孔によって単一の誘電体ブロックに送信フィルタと受信フィルタを構成するとともに、送信フィルタと受信フィルタの間に前記変形部を配置したことを特徴とする誘電体デュプレクサ。
- 請求項１もしくは２に記載の誘電体フィルタまたは請求項３に記載の誘電体デュプレクサを備えた通信装置。
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