JP3809039B2 - 溶融炉に於ける溶融メタルの水砕方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業廃棄物やごみ焼却施設から排出された焼却灰や飛灰等の溶融処理技術に関するものであり、溶融炉本体の底部レベルから抜き出した溶融メタルを安全且つ確実に細かな粒状のメタルに水砕できるようにした、溶融メタルの水砕方法とその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市ごみ等の焼却炉から排出される焼却灰や飛灰の減容化及び無害化を図るため、焼却灰等の溶融固化処理が注目され、実用に供されている。焼却灰等は溶融固化することにより、その容積が1/2〜1/3に減少するうえ、重金属等の溶出の防止、溶融スラグの再利用、最終埋立処分場の延命等が可能になるからである。
【0003】
前記焼却灰等の溶融固化処理には、アーク溶融炉やプラズマアーク炉、電気抵抗炉等を用い、電気エネルギーにより被溶融物を溶融固化する方法と、表面溶融炉や旋回溶融炉、コークスベッド炉等を用い、燃料の燃焼エネルギーにより被溶融物を溶融固化する方法が多く利用されており、都市ごみ焼却設備に発電設備が併置されている場合には前者の電気エネルギーを用いる方法が、また、発電設備が併置されていない場合には後者の燃焼エネルギーを用いる方法が、夫々多く採用されている。
【0004】
図4は、従前のごみ焼却処理設備に併置した直流アーク放電型黒鉛電極式プラズマ溶融炉の一例を示すものであり、図に於いて、1は焼却灰等の被溶融物Aのコンテナ、2は被溶融物供給装置、3は溶融炉本体、4は黒鉛主電極、5はスタート電極、6は炉底電極、7は炉底冷却ファン、8は直流電源装置、9は不活性ガス供給装置、10は溶融スラグ流出口、11はタップホール、12は燃焼室、13は燃焼空気ファン、13aは助燃バーナ、14は排ガス冷却ファン、15はスラグ水冷槽、16はスラグ搬出コンベア、17はスラグだめ、18はスラグ冷却水の冷却装置である。
【0005】
被溶融物Aはコンテナ1に貯えられ、供給装置2により溶融炉本体3内へ連続的に供給される。溶融炉本体3には、被溶融物Aとの間に一定の距離を設けた黒鉛主電極4(−極)と、炉底に設置された炉底電極6(+極)とが設けられており、両電極4、6間に印加された直流電源装置8(容量約600〜1000KWH/T・被溶融物)の直流電圧(200〜350V)により、電流が流れプラズマアークが発生する。これによって被溶融物Aが1300℃〜1500℃に加熱され、順次溶融スラグBとなる。
【0006】
尚、溶融前の被溶融物Aは導電性が低いため、溶融炉の始動時にはスタート電極5を溶融炉本体3内へ挿入してこれを+極とし、これと主電極4の間へ通電することにより被溶融物Aが溶融するのを待つ。そして、被溶融物が溶融するとその導電性が上昇するため、スタート電極5を炉底電極6へ切り換える。
【0007】
溶融炉本体3の内部は、溶融スラグBや主電極4等の酸化を防止するために還元性雰囲気に保持されており、不活性ガス供給装置9から不活性ガスCが、中空筒状に形成した主電極4及びスタート電極5の中空孔を通して、溶融炉本体3内へ連続的に供給されている。
【0008】
不活性ガスCを主電極4やスタート電極5の中空孔を通して炉本体内へ供給するのは、▲1▼アークの軸方向にプラズマガスを噴射し、アークを拘束することで高密度化する、▲2▼黒鉛主電極4や黒鉛スタート電極5を冷却することで電極の消耗がより少なくなる、等の理由によるものである。
【0009】
前記溶融炉本体3の炉底は、炉底冷却ファン7からの冷風により空冷され、これによって炉底電極6近傍の過度な温度上昇が防止されている。また、溶融炉本体3そのものは高温に耐える耐火材及びそれを覆う断熱材等により構成されており、必要に応じて断熱材の外部に空冷あるいは水冷ジャケットが設けられている。
【0010】
被溶融物Aの溶融によって、内部に存在した揮発成分や発生した一酸化炭素等はガス体Dとなると共に、金属類やガラス、砂等の不燃性成分は、プラズマアーク放電の発生熱を供給されることにより、溶融点(1100〜1250℃)を越える約1300〜1500℃の高温度にまで加熱され、流動性を有する液体状の溶湯となる。
【0011】
炉本体3内に形成された溶湯は、溶融スラグ流出口10より連続的に溢出し、スラグ水冷槽15内へ落下することにより水砕スラグとなり、スラグ搬出コンベア16によってスラグだめ17へ排出される。
また、溶融炉を停止する際には、炉本体3内の溶湯が冷却、固化してしまうのを防止するため、溶湯の底部レベルに取付けられたタップホール11より湯抜きを行い、炉本体3内を空状態にする。
【0012】
発生したガス体Dは、溶融スラグ流出口10の上部より燃焼室12に入り、ここで燃焼空気ファン13から助燃バーナ13aを経て加熱された燃焼用空気が加えられることにより、未燃分が完全に燃焼される。また、完全燃焼をしたガス体Dは、排ガス冷却ファン14からの冷空気によって冷却され、外部へ排出されて行く。
【0013】
而して、電気溶融炉で被溶融物Aを連続的に溶融すると、溶融炉本体3内に形成された溶湯は、比重差によって上方に位置する溶融スラグ層Bと下方に位置する溶融メタル層Mとに分離する。
また、上方の溶融スラグ層Bは溶融スラグ流出口10から連続的に溢出するが、下方の溶融メタル層Mは順次炉底に残留・堆積し、溶融メタル層Mの液面レベルLmが上昇し、層厚さLtが増加する。尚、溶融炉本体3内の溶湯容積はほぼ一定であるため、溶融メタル層Mの液面レベルLmが上昇するに伴なって、上方の溶融スラグ層Bの層厚さStは薄くなって行く。
【0014】
ところで、現実の電気溶融炉に於いては、運転時間が経過して溶融炉本体3内の溶融メタル層Mの層厚さLtが大きくなると、溶融メタル層Mの電気伝導度が大きいために溶湯部の電気抵抗が低下し、アーク長が長くなって熱損失が大きくなる。
また、溶融メタル層Mの液面レベルLmがオーバーフローレベルにまで達すると、溶融スラグに溶融メタルが混入することになり、スラグの品質が変ってスラグの有効利用を図る上で様々な問題が生ずることになる。
【0015】
そのため、溶融炉の運転に於いては、溶融メタル層Mの液面レベルLmが設定値に到達すると、前記溶融炉本体3の炉壁の底面近傍に設けたタップホール11を開孔し、炉底に堆積した溶融メタルを抜き出しするようにしている。
【0016】
一方、前記抜き出した溶融メタルの具体的な回収処理方法としては、▲1▼タップホール11の出口から流出して来た溶融メタルを、タップホール11の下方に設けた内表面に向って水を噴出し、水膜を形成した樋(図示省略)上へ落下させ、水砕により比較的粗い粒状の固化物として、樋の下方から回収する方法、▲2▼湯抜きした溶融メタルをタップホール11の出口からモールドコンベア上や耐火物を内張りしたトロッコ(図示省略)上へ直に積載し、空冷することによりインゴット状の塊として回収する方法、▲3▼溶融炉本体3を傾動させ、溶融スラグ流出口10から溶融メタルをスラグ水槽15内又はモールドコンベア上(図示省略)へ排出する方法等が多く用いられている。
【0017】
しかし、前記▲1▼の方法にあっては、樋の内表面へ向って噴出している水の噴出量が減少したときや、噴出水量が均一でなく水量の少ない部分に溶融メタルが落下したときに、所謂水蒸気爆発を生ずる虞れがあり、危険性が高くて安全性に欠けると云う難点がある。 また、前記▲2▼の方法にあっては、溶融メタルの冷却に時間が掛るうえ、冷却後には所謂インゴットが形成されるため、インゴットの排出の作業性が悪く、利用し難い等の問題がある。
更に、前記▲3▼の方法に於いては、溶融メタルの排出と同時に溶融スラグが排出されるため、必要量だけの溶融メタルを効率よく抜き出すことが出来ないうえ、湯抜きした溶融メタルに溶融スラグが混入するため、メタルとしての再利用が困難になると云う問題がある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従前の溶融炉からの抜き出した溶融メタルの回収に於ける上述の如き問題、即ち▲1▼表面へ水を噴出する型式の樋を用いて溶融メタルを水砕する方法は、危険度が高くて安全性に欠けること、▲2▼モールドコンベア等を用いて回収した溶融メタルを冷却する方法は、冷却後のインゴットの取り扱いが困難であり、作業性に欠けること、▲3▼溶融炉本体を傾動させて溶融メタルを抜き出しする方法は、回収した溶融メタルの品質が悪化し、メタルの再利用が困難になること等の問題を解決せんとするものであり、溶融炉本体のタップホールから湯抜きした溶融メタルを水砕処理することにより、高能率で安全に、しかも細かな高品質の粒状固化物として回収できるようにした溶融メタルの水砕方法及び水砕装置を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、焼却残渣を溶融する溶融炉本体内の溶融スラグ層を炉本体の側壁に設けた溶融スラグ排出口から炉本体外へ溢流させると共に、前記溶融スラグ層の溶融メタル層の液面レベルが設定値以上になると、溶融メタルを溶融炉本体の炉底の近傍の側壁に設けた孔を通して外部へ抜き出す構成とした溶融炉に於いて、前記孔から抜き出した溶融メタルを、孔の下方に傾斜状に配設した耐火物張りして成る樋を通して流下させ、流下して来た溶融メタルを樋の下端の下方に設けた固定式の耐火性の溶融メタル溜めに一旦受け入れすると共に、溶融メタル溜め内の溶融メタルを、前記溶融メタル溜めの底面に穿設した総開口面積が前記孔の開口面積よりも少ない複数の小さな排出口から下方の水槽内へ落下させ、更に前記溶融メタル溜めの排出口と水槽内の冷却水面との間に設けた複数の水砕水ノズルから、単位時間当たりに落下させる溶融メタルの重量の20〜30倍の重量の水砕水を前記冷却水内へ落下する直前の溶融メタルに対して垂直方向に5〜10m/秒の速度で噴射すると共に、水槽の冷却水内へ落下した直後の冷却水内の溶融メタルに向けて、別に設けた水砕水ノズルから水砕水を噴射することにより、溶融メタルを細かな粒状の固化物にするようにしたことを発明の基本構成とするものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態の要部を示す説明図であり、図2は図1のA部の拡大図である。
図1に於いて、3は溶融炉本体、4は黒鉛主電極、6は炉底電極、11は炉壁に設けた孔(タップホール)、19は溶融炉本体の支持架台、20は樋、21は水槽、22は第1水砕水ノズル、23は第2水砕水ノズル、Mは溶融メタル層、M1 は溶融メタルであり、溶融炉そのものの基本的な構成は図4に示した従前の溶融炉と実質的に同一のものである。
また、図1に示した本発明の第1実施形態では、溶融炉として電気溶融炉を用いているが、本発明は、電気溶融炉以外の燃料の燃焼エネルギーを用いる型式の溶融炉にも適用されることは勿論である。
【0024】
図1を参照して、溶融炉本体3の炉壁の底部近傍には、炉本体3内の溶融メタルを抜き出すための孔(タップホール)11が設けられており、溶融メタル層Mの液面レベルLmが設定値以上になると、孔11が開放され、これを通して溶融メタルM1 が炉本体3の外方へ排出される。尚、前記炉壁に設けた孔11としては、通常公知のタップホールが設けられているが、孔11の構造そのものは溶融メタルM1 の湯抜きをできるものであれば、如何なる構造のものであってもよい。
【0025】
前記樋20は孔11から抜き出した溶融メタルM1 を円滑に下方へ流下させるためのものであり、孔11の下方に適宜の傾斜角度をもって配設・支持されている。
また、当該樋20は、シュート体20aとカバー体20bとから筒状又は箱状に形成されており、シュート体20aの表面は耐火物20cにより内張りされている。
【0026】
前記水槽21は樋20の下方に設けられており、所定量の冷却水21aが貯留されている。
又、冷却水21aの水面WLと樋20の下端との間には適宜の空間距離が設けられており、後述するように、樋20の下端から落下した溶融メタルM1 がこの空間距離を通過する間に、溶融メタルM1 に向けて水砕水が噴出される。
【0027】
前記第1水砕水ノズル22は、水槽21の冷却水水面WLと樋20の下端との間に適宜に支持固定されており、樋20の下端から流下してくる溶融メタルM1 が、冷却水21a内へ落下する直前の空間部に於いて、噴出した水砕水22aが、落下する溶融メタルM1 へその落下方向とほぼ垂直に衝突するように取付けされている。
【0028】
尚、図1に於いては、1個の水砕水ノズル22を水槽21の側壁に設けるようにしているが、水砕水ノズル22の設置数量や設置位置は適宜に選定されるものである。また、図1に於いては、溶融メタルM1 の落下方向とほぼ垂直な方向に水砕水22aを噴出し、溶融メタルM1 へ直接に衝突させるようにしているが、水砕水22aの噴射方向は図1に示した方向に限定されるものではない。
【0029】
前記第2水砕水ノズル23は、樋20の下端から落下して冷却水21の水面WL下へ沈下した直後の溶融メタルM1 に、冷却水21中で水砕水23aを衝突させるように配置されている。即ち、図1の実施形態では、第2水砕水ノズル23は水槽21の側壁に、前記第1水砕水ノズル23と段違い状に設けられており、冷却水水面WLとほぼ平行に水砕水23aを噴出する構成としている。
【0030】
次に、湯抜きした溶融メタルM1 の水砕方法について説明をする。
溶融炉本体3内の溶融メタル層Mの液面レベルLmが設定値を越えると、孔(タップホール)11が開放され、溶融メタルM1 は孔11の開口端より順次流出してくる。流出した溶融メタルM1 は、樋20の耐火物20cが内張りされたシュート体20a上へ落下し、シュート体20aに沿って落下したあと、樋20の下端から水槽21内へ落下する。
【0031】
前記樋20の下端から落下した溶融メタルM1 には、溶融メタルM1 が冷却水21内へ落下する直前の空間に於いて、第1水砕水ノズル22から噴出された水砕水22aが衝突する。
この水砕水22aの衝突により、溶融メタルM1 は冷却水21aの水面WLに近い空間部で冷却・飛散され、細かい粒状体となって冷却水21a内へ落下する。
【0032】
また、前記水砕水22aの衝突により、細かい粒状体に飛散されて冷却水21a内へ落下した直後の溶融メタルM1 には、引き続き第2水砕水ノズル23から噴射した水砕水23aが衝突する。
これにより、冷却水21a内へ落下した直後のまだ溶融状態下にある粒状体は、更に細かく水砕され、より細かな粒状体となって水槽21の底部へ沈降する。
【0033】
尚、水槽21の底部には、図示されてはいないがメタル搬出コンベア等が設けられており、これにより水砕により細粒化された固化物(メタル)が水槽外へ搬出されて行く。
【0034】
尚、図1の第1実施形態では、第2水砕水ノズル23から水砕水23aを噴出し当該水砕水23aを、冷却水21内へ落下した直後の、第1水砕水ノズル22からの水砕水22aの衝突により粒状化された溶融メタルへ衝突させ、溶融メタルM1 を2段に亘って水砕するようにしているが、前記第2水砕水ノズル23を省略して、第1水砕水ノズル22の作動のみでもって、溶融メタルM1 を水砕することも十分可能である。
【0035】
また、図1及び図2の第1実施形態に於いては、第1水砕水ノズル22及び第2水砕水ノズル23へ供給する各水砕水を管路25及び流量調整弁26を通して別に設けた加圧水源より供給するようにしているが、水槽21内の冷却水21aを水砕水22a、23aとして循環利用することも可能である。
【0036】
更に、前記図1の第1実施形態に於いては、樋20の下方に水槽21を設け、湯抜きした溶融メタルM1 を水槽21内へ落下させるようにしているが、図3に示した第2実施形態のように、樋20の下方に溶融メタル溜め24を設けると共に、溶融メタル溜め24の排出口24aと水槽21との間に第1水砕水ノズル22を設け、当該第1水砕水ノズル22から噴射した水砕水22aを、溶融メタル溜め24の排出口24aから排出し、水槽21に落下する直前の溶融メタルM1 に衝突させ、これによって溶融メタルM1 を水砕することにより、細かな粒状体とすることも可能である。この方式の場合、溶融メタル溜め24の排出口24aの径は、溶融炉本体3に開ける孔11のように大きさの制限はなくて小さくすることができ、また複数備えることが可能てある。
【0037】
【試験例1】
図1に示した水砕装置を用い、且つ第2水砕水ノズルは作動させずに第1水砕水ノズル22のみを作動させ、水砕水22aの噴出による溶融メタルM1 の水砕処理試験を行なった。
溶融メタルM1 1kgに対して約30kgの水砕水22aを5〜10m/secの噴出速度で噴出させ、これを溶融メタルM1 に衝突させたとき、冷却水21a内へ落下する溶融メタルM1 の粒径は、約1〜10mmφの粒状体となり、細かな粒状の固化物として回収することができた。
また、試験の実施中、水蒸気爆発等の異常が生ずることは全くなく、安全に溶融メタルの水砕処理を行なうことができた。
【0038】
【試験例2】
上記図1に示した水砕装置を用い、第1水砕水ノズル22から溶融メタルM1 1kg当り約20kg、5〜10m/secの水砕水22aを噴射すると共に、第2水砕水ノズル23から約20kgの水砕水23aを同速度で噴出させた。尚、水砕水23aは冷却水21aの水面下で放出されているため、その噴出速度は若干低下していると思われるが、噴出された水砕水23aが第1水砕水ノズル22からの水砕水22aにより細粒化された水中の溶融メタルM1 へ衝突するまでの平均距離は、200〜800mmと比較的短かいため、前記水砕水23aの噴出速度の低下は僅かであると想定される。
当該試験例2に於いては、回収した粒状固形物の粒径は1〜5mmφ程度であって、溶融メタルM1 をより細かな粒状固形物に高能率で安全に水砕できることが判明した。
【0039】
尚、前記第1水砕水ノズル22から噴出する水砕水22aの流量及び流速が20kg/kgメタル、5m/sec以下になると、溶融メタルM1 に対する水砕能力が低下し、粒状固化物の平均粒径が15mmφを越えるようになると共に、現実に水蒸気爆発を生ずるようなことは無かったものの、その可能性は高まるように思われる。
【0040】
【発明の効果】
本発明においては、「焼却残渣を溶融する溶融炉本体内の溶融スラグ層を炉本体の側壁に設けた溶融スラグ排出口から炉本体外へ溢流させると共に、前記溶融スラグ層の溶融メタル層の液面レベルが設定値以上になると、溶融メタルを溶融炉本体の炉底の近傍の側壁に設けた孔を通して外部へ抜き出す構成とした溶融炉に於いて、前記孔から抜き出した溶融メタルを、孔の下方に傾斜状に配設した耐火物張りして成る樋を通して流下させ、流下して来た溶融メタルを樋の下端の下方に設けた固定式の耐火性の溶融メタル溜めに一旦受け入れすると共に、溶融メタル溜め内の溶融メタルを前記溶融メタル溜めの底面に穿設した前記孔の開口面積よりも総開口面積が少ない複数の小さな排出口から下方の水槽内へ落下させ、更に前記溶融メタル溜めの排出口と水槽内の冷却水面との間に設けた複数の水砕水ノズルから、単位時間当たりに落下させる溶融メタルの重量の20〜30倍の重量の水砕水を前記冷却水内へ落下する直前の溶融メタルに対して垂直方向に5〜10m/秒の速度で噴射すると共に、水槽の冷却水内へ落下した直後の冷却水内の溶融メタルに向けて、別に設けた水砕水ノズルから水砕水を噴射することにより、溶融メタルを細かな粒状の固化物にする」構成を採用している。
その結果、比較的低速で且つ少ない流量の水砕水でもって能率よく、しかも水蒸気爆発等を起こすことなく安全に、溶融メタルをより細かな粒径の揃った溶融スラグを殆ど含まない高品質の粒状固形物となるため、その有効利用が図り易くなる。
また、溶融メタルの水冷時間が短縮され、冷却後のメタルの搬出作業も著しく容易となる。
本発明は上述の通り、優れた実用的効用を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態の要部を示す断面概要図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】本発明の第二実施形態の要部を示す断面概要図である。
【図4】従前のごみ焼却処理設備に併置した電気溶融炉の説明図である。
【符号の説明】
Mは溶融メタル層、Lmは溶融メタル層の液面、M1 は溶融メタル、WLは冷却水の水面、3は溶融炉本体、4は黒鉛主電極、6は炉底電極、11はタップホール(孔)、19は支持架台、20は樋、20aはシュート体、20bはカバー体、20cは耐火物、21は水槽、21aは冷却水、22は第1水砕水ノズル、22aは水砕水、23は第2水砕水ノズル、23aは水砕水、24は溶融メタル溜め、24aは排出口、25は管路、26は流量調整弁。
Claims (1)
- 焼却残渣を溶融する溶融炉本体内の溶融スラグ層を炉本体の側壁に設けた溶融スラグ排出口から炉本体外へ溢流させると共に、前記溶融スラグ層の溶融メタル層の液面レベルが設定値以上になると、溶融メタルを溶融炉本体の炉底の近傍の側壁に設けた孔を通して外部へ抜き出す構成とした溶融炉に於いて、前記孔から抜き出した溶融メタルを、孔の下方に傾斜状に配設した耐火物張りして成る樋を通して流下させ、流下して来た溶融メタルを樋の下端の下方に設けた固定式の耐火性の溶融メタル溜めに一旦受け入れすると共に、溶融メタル溜め内の溶融メタルを、前記溶融メタル溜めの底面に穿設した総開口面積が前記孔の開口面積よりも少ない複数の小さな排出口から下方の水槽内へ落下させ、更に前記溶融メタル溜めの排出口と水槽内の冷却水面との間に設けた複数の水砕水ノズルから、単位時間当たりに落下させる溶融メタルの重量の20〜30倍の重量の水砕水を前記冷却水内へ落下する直前の溶融メタルに対して垂直方向に5〜10m/秒の速度で噴射すると共に、水槽の冷却水内へ落下した直後の冷却水内の溶融メタルに向けて、別に設けた水砕水ノズルから水砕水を噴射することにより、溶融メタルを細かな粒状の固化物にするようにしたことを特徴とする溶融炉における溶融メタルの水砕方法。
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