JP3807793B2 - 電子レンジ用食品包装体 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は電子レンジ用の食品包装体に関する。さらに詳しくは本発明は電子レンジで加熱した際に包装体内に発生する水蒸気圧が一定の値に達すると、この水蒸気を外部に選択的に放出して包装体全体にわたる破裂を防止することができる電子レンジ用食品包装体に関する。
【0002】
【従来技術】
密封した包装体に食品をいれたまま電子レンジを用いて食品を加熱すると、内容物が温まると共に水蒸気が発生し、食品を密封した包装体が膨張し、ついには包装体が破裂して内容物が飛散することがある。
【0003】
こうした水蒸気による包装体の破裂を防止するために、種々の提案がなされている。例えば包装体に小さな穴を開けて、保存する場合には、この穴をシール部材で塞いでおいて、電子レンジで加熱する場合にはこのシールを剥離して加熱により発生した水蒸気をこの穴から放出させる方法、内部水蒸気圧による引っ張り応力が所定の箇所に集中するように包装体の形状を特殊形状にする方法などがある(例えば、特開昭8-119343号、特開平7-257662号、特開平2-84908号、特開昭63-131926号、特開昭63-218079号および実開平3-60239号などの公報参照)。
【0004】
しかしながら、これらの方法には、本来密封性を要求される包装体に穴を開ける必要があり、容器の気密性が損なわれる虞があり、また、特殊な形状の包装体を製造するための特殊な装置あるいは内部水蒸気圧を所定の箇所に集中させるために特殊なヒートシール装置が必要になるなどの問題があった。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、電子レンジを用いて食品を加熱した際に発生する水蒸気を、容器内の水蒸気圧によって所定のヒートシール部から抜き出るようにした電子レンジ用の食品包装体を提供することを目的としている。
【0006】
さらに詳しくは本発明は、電子レンジを用いて加熱した際に容器内部に発生する水蒸気によって容器が破裂しないように、水蒸気が所定のヒートシール部から自動的に抜け出るようにした食品包装体であって、しかも特殊な装置等を使用することなく容易に製造することができる電子レンジ用の食品包装体を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明の電子レンジ用食品包装体は、周縁部をヒートシールして密封する食品包装体であって、該周縁部のヒートシール部の一部を他の部分よりも低いシール強度を有するようにヒートシールし、該弱ヒートシール部の少なくとも一部に、該弱ヒートシール部の外縁から内部方向に向かってヒートシール幅の1/4〜3/4の幅の非シール部が形成された弱ヒートシール部を有し、該弱ヒートシール部が、フィルム製造時におけるフィルムの流れ方向に略直角に形成されていることを特徴としている。
【0008】
そして、この非シール部は、該弱ヒートシール部の外縁部分の非シール長さが該食品包装体の内部の非シール部の長さよりも長く、かつ該非シール部の容器内方向の先端の形状がV字型あるいは楔型になるように所定の角度に形成されていることが好ましい。
【0009】
このように容器にシール強度の低い部分を設けて、このシール強度を低い部分の外縁からヒートシール幅の1/4〜3/4の幅でヒートシールしない部分(非シール部)を形成することにより、電子レンジ内で加熱されて発生した水蒸気による内圧が、このシール強度の低い部分を内部から剥離し始め、そしてこの容器内部からの剥離が非シール部に到達するとこの部分で容器内部と外部が連通して容器内部の水蒸気がこの連通部分から外部に放出される。殊にこの非シール部の形状を容器周縁部の長さよりも容器内部に近づくにつれてその長さが小さくなり、先端部の形状を所定の角度を有するV字型あるいは楔型に形成することにより、水蒸気を排出する連通穴を水蒸気は通過するが内容物は通過できない大きさにすることができるので、この連通穴からの食品の漏出を最小限にすることができる。
【0010】
【発明の具体的説明】
次に本発明の電子レンジ用食品包装体について具体的に説明する。
図1は、本発明の電子レンジ用食品包装体のなかで袋状の形態を有する食品包装袋の一例を模式的に示す図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の電子レンジ用食品包装体1は、周縁部の少なくとも2辺がヒートシールにより融着された2枚のフィルムからなる袋状であり、図1には、ヒートシール部17,19,19の3辺が予めヒートシールされ、食品3を充填した後に、必要により脱気されて、食品充填口4がヒートシールされて食品3が密封された長方形状の袋状である電子レンジ用食品包装体が示されている。食品を充填した後、この食品袋1を密封するためのヒートシール部は18で示されている。
【0012】
本発明の電子レンジ用食品包装体1のヒートシール部17,18,19,19はイージーピール性であることが望ましく、かつ非シール部15が形成されるヒートシール部19,19は、他のヒートシール部17,18よりもシール強度が低くされている。本発明において、イージーピールとは、一般的にシール強度が300〜1800g/15mm以下であるヒートシールである。
【0013】
このようなイージーピール性のヒートシール部を形成することができるフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなる単層フィルムで有ってもよいが、ガスバリア性のよりエチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)等を用いた多層フィルムが好適である。このような多層フィルムの例としてはPP/EVOH/PP、PP/kNy/EVA、PP/EVOH/Ny/PE、PP/Ny/EVOH/Ny/EVOH/ION、Ny/EVOH/LLDPE、Ny/EVOH/EVA、EVOH/Ny/PE等を挙げることができる。ここで「PE」はポリエチレン、「PP」はポリプロピレン、「Ny」はナイロン、「KNy」は塩化ビニリデンコートナイロン、「ION」はアイオノマーである。上記例示した多層フィルムの構成で右側に記載された層がシーラント層である。
【0014】
特に本発明では耐熱性およびバリアー性を有する表基剤層と耐熱性および剥離性を有するポリオレフィン系のシーラントフィルムをポリイソシアネート系化合物からなる接着剤を使用して複合した積層フィルムが好ましい。このような積層フィルムはポリオレフィン系のシーラントフィルムがイージーピール性を有しているのでヒートシール面にイージーピール性を持たせることができる。
【0015】
上記のようなフィルムを使用してイージーピール性を有すると共に、ヒートシール強度の高い部分と低い部分を形成するには、例えばヒートシール温度によりシール強度を調整する方法、接着剤を介在させてヒートシールする場合には、使用する接着剤の種類を変える方法などがあるが、イージーピール性を有するヒートシールフィルムを製造する際に形成されるフィルムの流れ方向に平行な辺同士をヒートシールすると、フィルムの流れ方向に直角な辺同士をヒートシールした場合よりもシール強度が高くなる。即ち、仮に正方形の袋を製造した場合であっても、フィルムの流れ方向に対して垂直方向にヒートシールしたときのシール強度と、フィルムの流れ方向に対して平行にヒートシールしたときのシール強度を比較すると、フィルムの流れ方向に対してヒートシールを垂直にしたときのシール強度が低い。また、長方形の袋を製造した場合、フィルムの流れ方向とシール強度との関係は同様であるが、さらに長方形の短い辺よりも長い辺の方に上下に引き剥がそうとする応力が集中しやすくなり、ヒートシール強度も低いので、長辺の方が先に剥離する。
また、コーナー部分は、頂点を有する2辺のヒートシール部に挟まれているので上下に引き剥がそうとする応力は2辺に分散されてしまうので、このコーナー部分が最初に剥離することはない。
【0016】
従って、電子レンジを用いた加熱により発生する水蒸気圧は、フィルムの流れ方向に対して垂直(直角)に形成された長辺で、なおかつヒートシール長さの中央部に最も多大な作用を及ぼすことになる。
【0017】
図1で示すと、この食品包装袋1において、この袋を形成するフィルムを製造した際のフィルムの流れ方向は矢印5で示す方向であり、従ってヒートシール部19,19は、このフィルム流れ方向と直角であり、ヒートシール部17,18はフィルム流れ方向と平行である。
【0018】
ヒートシール部19,19は、同じヒートシール条件でヒートシールすると、ヒートシール部17,18よりもシール強度が低くなる。例えば、イージーピール性を有する変性ポリオレフィンを最内層とするフィルムを150℃の温度で2kg/cm2の圧力の付与下に1秒間加熱する条件でヒートシールすると、ヒートシール部(MD/MD)19 , 19のシール強度は、ヒートシール部(TD/TD)17 , 18のシール強度よりも、通常は20〜400g/15mm低い値を示す。以下、本発明では図1に付番17,18で示すヒートシール部(T D/ T D)を「強ヒートシール部」、付番19で示すヒートシール部( M D/ M D)を「弱ヒートシール部」と記載することもある。
【0019】
例えば、バリアーナイロンとイージーピール用特殊ポリオレフィンとからなる積層体を用いてシール強度(180゜剥離強度)を測定すると次表1に示すような傾向を現わす。
【0020】
【表1】
【0021】
上記表1に示した例からも明らかなように、TD/TDのシール強度がより高く、MD/MDのシール強度がより低い値を示す。本発明では、主としてこのTD/TDのシール強度と、MD/MDのシール強度との差、即ち上記表1に示した例におけるシール強度の差115g/15mmを利用して、選択的な水蒸気圧抜きを行っているのである。
【0022】
さらに、図1に示すような食品包装袋において、ヒートシール幅を同一にしたときの弱ヒートシール部19の中心部(MD/MD)および強ヒートシール部17(底部(TD/TD))のシール強度(180゜剥離強度)の例を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
上表から明らかなように、本発明の電子レンジ用包装体では、側縁部である弱ヒートシール部の中心部のシール強度が、底部の強ヒートシール部の中心部よりも低い。
本発明の電子レンジ用食品包装体には、上記のような弱ヒートシール部に、ヒートシールしていない部分、即ち非シール部15が形成されている。図1および図2には山型の非シール部が形成された長方形の包装袋が示されている。
【0025】
そして、この弱ヒートシール部15の幅D1は、通常は0.5〜2.0cm、好ましくは0.8〜1.0cmであり、本発明における非シール部15の幅D2またはD3は、この弱ヒートシール部の外縁から内部方向に向かってこのヒートシール幅D1の1/4〜3/4の幅、好ましくは1/3〜2/3の幅になるように形成されている。図2において、非シール部15の幅D2は、弱ヒートシール部19の幅D1の3/4である態様が示されており、非シール部15の幅D3は、弱ヒートシール部19の幅D1の1/3である態様が示されている。このように弱ヒートシール部19の幅に対する非シール部15の幅を上記の範囲内にすることにより、保存中における内容物である食品が漏出することがなく、かつ電子レンジによる加熱によって弱ヒートシール部19が容器内に発生する水蒸気による内圧によって剥離して非シール部15との間に連通孔を確実に形成することができる。
【0026】
また、この非シール部15の形状は、弱ヒートシール部19の外縁部分の非ヒートシール長さL1が食品包装体1の内部2の非シール部の長さよりも短く(狭く)、かつ非シール部15の容器内方向の先端が所定の角度をもってV字型あるいは楔型に形成されている。
【0027】
即ち、例えば先端の角度がθ1である非シール部15aについてみると、この楔型の非シール部15aは、外縁部の長さがL2であり、このL2を底辺とし、頂点の角度がθ1である二等辺三角形の形状を有している。また、例えば先端の角度がθ2およびθ2ある非シール部15bおよび15cについてみると、それぞれ楔型をして全体で山型の非シール部15bおよび15cは、外縁部の長さがそれぞれL3およびL4であり、これらL3およびL4を底辺とし、頂点の角度がθ2でθ3である三角形の形状を有している。そして、この付番15a、15bおよび15cが複合した非シール部15は、外縁部の長さがL1であり、この非シール部15の長さL1は、ヒートシール部19の食品包装体1の内部2の方向に向かうに従ってその長さが短くなっている。さらに、この非シール部15の先端部分15a、15b、15cは、それぞれθ1、θ2、θ3の角度で形成されている。ここでθ1、θ2、θ3で表される非シール部15の先端の角度は、通常は10度〜160度、好ましくは45度〜140度、特に好ましくは60度〜120度である。このように非シール部15の先端を上記のような角度で形成することにより、容器内の水蒸気圧によって弱ヒートシール部19が食品包装体1の内部2から剥離した際にこの非シール部15との間に形成される連通孔の大きさが必要最低限度の大きさになり、内容物3が漏出せず、かつ食品包装体1の内部2で発生した水蒸気を効率よく放出させることができる。
【0028】
この非シール部15は、図1に示すように、弱ヒートシール部19の長さ方向の中央部近傍に設けることが好ましい。食品包装体1の内部2で発生した水蒸気による圧力は、この部分に集中しやすいからである。
【0029】
また、この非シール部15の長さと弱ヒートシール部19の長さとの割合は任意設定することができるが、弱ヒートシール部19の長さ(一辺の長さ)に対して非シール部15の長さL1が5%以上であることが好ましい。非シール部より開封する場合は、指先で剥離できる長さが好ましく、具体的には1cm以上、より好ましくは2cm以上である。後述の図6に示すような形態の非シール部15を形成する場合には、弱ヒートシール部19全体にわたって非シール部15を形成することもできる。
【0030】
本発明の電子レンジ用食品包装体は、例えば図1に示すように、予め弱ヒートシール部19,19および強ヒートシール部17をヒートシールして袋状にする。この際、ヒートシール部の角部の少なくとも一カ所をヒートシールせずに、リリース部21を形成することが好ましい。このリリース部21は、加熱後に食品を取り出す際にヒートシールさせたフィルムを引き剥がすために利用される。
そのほうが、蒸気の噴き出しもなくより安全に剥がすことができる。
【0031】
こうして3辺がヒートシールされた食品包装袋1に、開口されている食品充填口4から食品を充填し、次いで、必要により脱気しながら、この食品充填口4である辺18をヒートシールする。
【0032】
本発明の電子レンジ用食品包装体は、上記図1に示されるように食品3が収容され食品充填口4がヒートシールされており、この食品3が収容された包装体を電子レンジで加熱すると水蒸気が発生する。
【0033】
そして、この水蒸気により生じた圧力は、食品包装体の内部2から各ヒートシール部17,18,19,19にかかるがヒートシール部17および18は強ヒートシール部であり、強ヒートシール部17および18が剥離することはなく、図3に示すように、弱ヒートシール部19,19を内部2から弓型に剥離する。図3(a)に示すように、包装体1の内部2から水蒸気圧が弱ヒートシール部19にかかり、この弱ヒートシール部19を内部2から剥離する。図3において21は水蒸気圧によって弓型に剥離した弱ヒートシール部である。即ち、密封包装された食品が電子レンジのマイクロ波エネルギーを吸収して発熱されるとともに、食品の温度が上昇して、食品中に含有される水分子の運動が激しくなり、この水分の一部が気化して水蒸気になり、容器内の内圧が高くなる。そして、さらに内部2の水蒸気圧が高くなると、剥離した弱ヒートシール部21がさらに深くなり、ついには弱ヒートシール部19の外縁から内部2方向に向かって楔状に形成された非シール部頂点15aにまで達し、図3(b)に示すように連通孔23aが形成され、この連通孔23aから内部2の水蒸気が排出される。こうして連通孔23aから水蒸気が放出されてもまだ内部水蒸気圧が高いと、さらに弱ヒートシール部の剥離が進み、非シール部15aよりも浅い非シール部頂点15bあるいは15cにまで弱ヒートシール部19の剥離が到達し新たな連通孔23bが形成される。即ち、容器が膨張すると容器を形成するフィルムはシール面に対して垂直に持ち上げられ、シール面を上下に引き剥がそうとする力が加わる。このときシール面が完全にヒートシールされている状態では、シール強度よりもよほど大きな力が加わらないとシール面を剥離することはできない。さらに、完全なヒートシール面が最終的に剥離するときには極めて大きな力が加わるため、こうした状態におけるヒートシールの剥離は爆発的である。本発明では、強ヒートシール部と弱ヒートシール部を形成し、弱ヒートシール部に非シール部を形成しているので、容器内の圧力はヒートシール部の長さ方向の中央部に集中し、かつヒートシール面を上下方向(垂直方向)に押し上げるように作用する。本発明の包装体のヒートシール部には、強ヒートシール部と弱ヒートシール部とが形成されており、内圧は弱ヒートシール部を剥離するように作用する。そして、この弱ヒートシール部には非シール部が形成されているので、弱ヒートシール部に生じた弓型の剥離部は、非シール部と連通する。そして、本発明の非シール部は先端が所定の角度を有するV字型あるいは楔型に形成されているので、連通孔の大きさは最小限度の大きさになる。
【0034】
このようにして食品包装体1の内部2で発生した水蒸気は、弱ヒートシール部19に形成された非シール部15から選択的に排出されるので、電子レンジによる加熱によって包装体内部の水蒸気圧が高くなりすぎて包装体を破裂させることがない。さらに、水蒸気を排出する連通孔は、非シール部15の先端が鋭角に形成されていることから、必要最小限度の大きさになり、内容物である食品が、この連通孔から漏出することはほとんどない。
【0035】
しかも、本発明の電子レンジ用食品包装体は、ヒートシール装置の加熱部に非シール部の形態に対応した凹部を設けるなど、従来から使用されているヒートシール装置にわずかな改良を加えるだけで製造することができる。
【0036】
本発明の電子レンジ用食品包装体は、上記詳述したような袋状の食品包装体に限られるものではなく、例えば図4および図5に示すように、深い凹部を有し、縁部にヒートシール性のフィルムを熱圧着した形態の電子レンジ用食品包装体31あるいは41であってもよい。図4には矩形の容器31の例が示されており、図5には有底円筒状の容器41の例が示されている。図4および図5において、付番2は容器内部であり、付番17は強ヒートシール部であり、付番19は弱ヒートシール部であり、付番15は非シール部である。そして、図4および図5において、この非シール部15は、図2に示した非シール部15と同様に形成されている。なお、図4および図5に示すような立体的な容器において、シール強度を調整するには、図1の袋状の食品包装体で説明したように、例えばヒートシール温度の調整、接着剤の選択等の方法を利用することもできる。
【0037】
本発明の電子レンジ用食品包装体1に形成される非シール部15の形態は、種々に改変することができる。
図6の(a)、(b)、(c)および(d)には、非シール部15の他の形態の例が示されている。図6の(a)には、弱ヒートシール部19に先端が鋭角に形成された楔状の非シール部15が連続して鋸刃型に形成された例が示されている。また、図6の(b)には、逆台形状の非シール部の逆台形の長辺のほぼ中央部が所定の角度を有する楔型に形成された突出部15dが形成された非シール部15の例が示されている。図6の(c)には、半円形状の非シール部の頂部に所定の角度を有する楔型に形成された突出部15eが形成された非シール部15の例が示されている。図6の(d)には、弱ヒートシール部の外側と連通した円形の非シール部の頂部に所定の角度を有する楔型に形成された突出部15eが形成された非シール部15の例が示されている。なお、図6の(a)、(b)、(c)および(d)において、付番19は弱ヒートシール部であり、付番2は電子レンジ用食品包装体1の内部である。また、それぞれの図の右側の矢印は、この食品包装体を形成するフィルムを製造する際のフィルムの流れ方向を表している。
【0038】
また、本発明の電子レンジ用食品包装体は、前記詳述したように四角形あるいは円形に限られるものではなく、図7に示すように、三角形、六角形の他、五角形、さらに七角形以上の多角形であってもよい。図7(a)は三角形の電子レンジ用食品包装体1が示されており、矢印で示したフィルム流れ方向に直角なヒートシール部19が弱ヒートシール部になり、このフィルム流れ方向に対して斜めに形成されたヒートシール部(TD/TD)は、上記表1からも明らかなように弱ヒートシール部19よりも高いシール強度を有している。従ってこの斜めのヒートシール部が強ヒートシール部17である。そして、この三角形の電子レンジ用食品包装体では、弱ヒートシール部19に周縁部から内部2に向かって非シール部15が形成されている。なお、食品充填口は、通常は、斜めに形成された強ヒートシール部17,17のいずれか一方である。
【0039】
さらに、図7(b)に示した六角形の電子レンジ用食品包装体1において、フィルムの流れ方向は矢印で示されており、このフィルムの流れ方向に直交するヒートシール部19が弱ヒートシール部であり、他の辺は強ヒートシール部17である。そして、この弱ヒートシール部19に周縁部から内部2に向かって非シール部15が形成されている。なお、食品充填口は、通常は、斜めに形成された強ヒートシール部17,17,17,17の少なくとも一辺が食品充填口になる。
【0040】
なお、図7(a)および(b)にはリリース部は図示していないが、いずれかの角にリリース部を形成することもできる。
本発明の電子レンジ用食品包装体は、ピラフ、白飯、ハンバーグ、弁当;さつま芋およびじゃが芋などの根菜類、笹かまおよび揚げかま等の水産物および練り食品、卵およびソーセージ等の畜肉加工品、その他調理済み食品全般等、電子レンジで加熱する食品の包装に用いられる他、食品以外であっても、電子レンジを用いて加熱するおしぼり、医薬用温湿布等の包装体としても利用することができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明の電子レンジ用食品包装体によれば、食品等を充填密封して容器ごと電子レンジで加熱することにより発生する水蒸気を選択的にかつ徐々に排出することができるので、電子レンジを用いて加熱しても容器が破裂して内容物が飛散することがない。また、本発明の電子レンジ用食品包装体では、非シール部の先端が所定の角度を有する楔型に形成されているので、水蒸気圧により形成される連通孔の大きさを最低限度にすることができるので、こうして形成された連通孔からの食品の漏出を防止することができる。
【0042】
また、連通孔を形成するまでの間に袋内圧が適度に高められることにより、加圧調理した場合と同様の効果(食品の芯部まで加熱することができる)が得られる。
【0043】
しかも、電子レンジでマイクロ波加熱する前は完全に密封状態にあるので、食品を衛生的に維持保存できる。
さらに、加熱して非シール部から水蒸気が排出された部分は、シールが剥離されているので、この部分からフィルムを剥がすことができ、この剥離した部分は従来の包装体に形成されていたリリース部と同等の作用を有する。
【0044】
【実施例】
次ぎに本発明の電子レンジ用食品包装体について実施例を示して具体的に説明するが本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0045】
【実施例1】
図1に示す食品包装袋に冷凍エビピラフを充填密封した。この食品包装袋は2枚のプラスチックフィルムから形成されており、製袋シール部17、19、19がヒートシールされている。そして、弱ヒートシール部である19,19の中央部に山型の非シール部15,15が形成されている。冷凍エビピラフを食品充填口4から充填した後、この食品充填口をヒートシールした。
【0046】
ヒートシール条件は、次の通りである。
温度=150℃
圧力=2kg/cm2
時間=1秒
ヒートシール幅D1=10mm
山形の高い非シール部の幅D2=5mm
山形の低い非シール部の幅D3=3mm
山形の高い非シール部の頂部の角度θ1=130度
山形の低い非シール部の頂部の角度θ2,θ3=115度
なお、弱ヒートシール部19,19のシール強度は615g/15mmであり、強ヒートシール部17,18のシール強度は730g/15mmであり、両者のシール強度の差は115g/15mmであった。
【0047】
この冷凍エビピラフ(初期温度2℃、充填量270g)が充填された食品包装袋を電子レンジ(TOSHIBA(株)製、ER-240)に入れ、マイクロ波加熱を開始すると、内容物であるエビピラフ中の水分が気化し、加熱開始後、20〜30秒で蒸気が発生し食品包装袋が膨れ始めた。50〜60秒経過後には、エビピラフの温度が70〜80℃に達すると共に、食品包装袋が膨張して、発生した水蒸気圧により食品包装袋を構成するフィルムが、ヒートシール面に対して上下に開こうとしてシール部を上下に引き剥がそうとする力が袋内に生じ、これにより弱ヒートシール部19,19の中央部近傍からシールが剥がれはじめた。
【0048】
加熱後70〜90秒後には、弱ヒートシール部の中央部近傍で始まったヒートシールの剥がれが、弱ヒートシール部19,19の中央部に形成された山型の非シール部の頂点に達して連通孔が形成され、ここから食品包装袋1の内部2の蒸気が排出され、内部2が降圧された。
【0049】
この連通孔は山型の非シール部の3つの頂点に形成され、圧力が徐々に低下するので、爆発的な除圧はなく、静かに除圧された。
【0050】
【実施例2】
図4に示す容器に冷凍白飯を充填密封して実施例1と同様にしてマイクロ波加熱を行った。
【0051】
この容器はプラスチック製トレーと、このトレーの上部開口部の蓋材であるプラスチックフィルムとからなり、トレーの長手方向の縁部が弱ヒートシール部19,19であり、短手方向の縁部が強ヒートシール部17,17である。
【0052】
ヒートシール条件は、次の通りである。
温度=150℃
圧力=2kg/cm2
時間=1秒
ヒートシール幅D1=8mm
山形の高い非シール部の幅D2=5mm
山形の低い非シール部の幅D3=3mm
山形の高い非シール部の頂部の角度θ1=120度
山形の低い非シール部の頂部の角度θ2,θ3=100度
なお、弱ヒートシール部19,19のシール強度は560g/15mmであり、強ヒートシール部17,17のシール強度は720g/15mmであり、両者のシール強度の差は160g/15mmであった。
【0053】
マイクロ波加熱を開始すると、初期温度3℃の白飯350g中の水分が気化し始め、加熱開始後、20〜30秒で水蒸気が発生し、容器の蓋が膨れ始めた。加熱開始後50〜60秒で白飯の温度が70〜80℃に達すると共に、容器の蓋が膨張して、発生した水蒸気圧により蓋材を構成するフィルムが、ヒートシール面に対して上に押し上げられて弱ヒートシール部19,19の中央部近傍からシールが剥がれはじめた。
【0054】
加熱後70〜90秒後には、弱ヒートシール部の中央部近傍で始まったヒートシールの剥がれが、弱ヒートシール部19,19の中央部に形成された山型の非シール部の頂点に達して連通孔が形成され、ここから容器1の内部2の蒸気が排出され、内部2が降圧された。
【0055】
この連通孔は山型の非シール部の3つの頂点に形成され、圧力が徐々に低下するので、爆発的な除圧はなく、静かに除圧された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の電子レンジ用食品包装体の一例を示す説明図である。
【図2】図2は非シール部の一例を示す説明図である。
【図3】図3は水蒸気圧の変化に伴う非シール部の状態の変化を示す説明図である。
【図4】図4は本発明の包装体の他の態様の例を示す斜視図である。
【図5】図5は本発明の包装体の他の態様の例を示す斜視図である。
【図6】図6は非シール部の他の形態の例を示す図である。
【図7】図7は本発明の包装体の他の形態の例を示す図である。
【符号の説明】
1,31,41・・・電子レンジ用食品包装体
2・・・包装体の内部
3・・・充填された食品
4・・・食品充填口
15・・・非シール部
17,18・・・強ヒートシール部
19・・・弱ヒートシール部
21・・・剥離部(リリース部)
Claims (2)
- 周縁部をヒートシールして密封する食品包装体であって、該周縁部のヒートシール部の一部を他の部分よりも低いシール強度を有するようにヒートシールし、該弱ヒートシール部の少なくとも一部に、該弱ヒートシール部の外縁から内部方向に向かってヒートシール幅の1/4〜3/4の幅の非シール部が形成された弱ヒートシール部を有し、該弱ヒートシール部が、フィルム製造時におけるフィルムの流れ方向に略直角に形成されていることを特徴とする電子レンジ用食品包装体。
- 非シール部において、弱ヒートシール部の外縁部分の非シール長さが該食品包装体の内部の非シール部の長さよりも長く、かつ該非シール部の容器内方向の先端の形状がV字型あるいは楔型に形成されていることを特徴とする請求項第1項記載の電子レンジ用食品包装体。
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