JP3800901B2 - 車線追従走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両を、車両前方の車線に追従して走行させるようにした車線追従走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の車線追従走行制御装置としては、例えば特開平9−221053号公報に記載されたものが知られている。この公報に記載の車両用操舵装置では、CCDカメラによって車両前方走路を撮像し、この撮像画像から道路白線を抽出することによって、前方の車線状態を検出すると共に、自車両の走行位置を検出している。そして、自車両が道路白線に沿って追従走行するように、必要な操舵トルクを算出し、これに基づいてモータを駆動することによって、操舵系に操舵補助力を付与し、これによって、自車両は車線に追従して走行するようになっている。
【0003】
このような、車線追従走行制御装置においては、道路白線に精度よく追従させるに十分な操舵トルクを発生する必要があると同時に、運転者自らの意思において、進路変更等を行う場合に、その妨げにならないように、操舵トルクが過大とならないよう抑制する必要があり、そのトルクの大きさは適切な値に設定されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の車線追従走行制御装置においては、平滑な路面上を走行している場合には、予め設定された操舵トルクの大きさによって精度良く道路白線に追従走行することができる。しかしながら、轍等の不整がある路面上を走行する場合には、路面からの外乱によって進路を乱されるため、正しく追従走行を行うことができない恐れがある。特に、図7に示すように、大型車等によって作られた轍がある路面上を乗用車で走行する場合には、乗用車のトレッドと轍の間隔とが異なることから、進路を乱されることになる。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、轍等の不整のある路面上を走行する場合であっても、的確に車線に追従走行することの可能な車線追従走行制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車線追従走行制御装置は、自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を、轍による外乱入力を打ち消す方向に補正する補正手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
この請求項1に係る発明では、自車両前方道路の車線状態及び自車両の走行状態が検出され、これらに基づいて自車両を車線に追従させるために必要な操舵制御量が検出され、この操舵制御量に応じた操舵補助力が操舵系に付与されて操舵が行われ、自車両は車線に追従して走行する。
このとき、自車両走行路面の轍状態が検出され、この轍状態に応じて、轍による外乱入力を打ち消す方向に前記操舵制御量の補正が行われる。
【0010】
したがって、走行路面に轍がある場合には路面からの外乱により操舵が良好に行われずに、正しく追従走行を行うことができなくなる可能性があるが、轍を検出したときにはその轍状態に応じて、轍による車線追従の乱れ分を抑制するように轍による外乱入力を打ち消す方向に操舵制御量を補正することによって、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し、轍状態に関わらず良好に車線追従を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る車線追従走行制御装置は、自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を補正する補正手段と、を備え、前記轍状態検出手段は、車両の操舵制御状態を検出する操舵制御状態検出手段と、車両の振動状態を検出する振動状態検出手段と、を有し、前記補正手段は、操舵制御状態検出手段で検出した操舵制御状態及び前記振動状態検出手段で検出した振動状態の変動周期が同一であるとき前記操舵制御状態及び前記振動状態の変動幅に応じて前記操舵制御量を増加させるようになっていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る車線追従走行制御装置は、前記操舵制御量検出手段は、実舵角を検出する実舵角検出手段を備え、前記車線状態と前記自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させ得る目標舵角を算出してこの目標舵角と前記実舵角検出手段で検出した実舵角とに基づいて前記操舵制御量を検出し、前記操舵制御状態検出手段は、前記目標舵角と前記実舵角との偏差を検出するようになっていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る車線追従走行制御装置は、前記操舵制御状態検出手段は、前記操舵補助力発生手段で発生する操舵補助力を検出するようになっていることを特徴としている。
また、本発明の請求項5に係る車線追従走行制御装置は、前記振動状態検出手段は、車体のロール振動を検出するようになっていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項6に係る車線追従走行制御装置は、前記振動状態検出手段は、車輪の上下振動の左右逆相成分を検出するようになっていることを特徴としている。
また、本発明の請求項7に係る車線追従走行制御装置は、前記振動状態検出手段は、車体の上下加速度を検出する上下加速度検出手段と、車体及び車輪間の相対速度を検出する相対速度検出手段とを備え、前記上下加速度検出手段で検出した上下加速度の積分値と前記相対速度検出手段で検出した相対速度とから車輪の上下振動状態を推定するようになっていることを特徴している。
【0015】
また、本発明の請求項8に係る車線追従走行制御装置は、前記振動状態検出手段は、車体の左右振動を検出するようになっていることを特徴としている。
この請求項2から請求項8に係る発明では、自車両前方道路の車線状態及び自車両の走行状態が検出され、これらに基づいて自車両を車線に追従させるために必要な操舵制御量が検出され、この操舵制御量に応じた操舵補助力が操舵系に付与されて操舵が行われ、自車両は車線に追従して走行する。
このとき、自車両走行路面の轍状態が検出され、この轍状態に応じて前記操舵制御量の補正が行われる。
したがって、走行路面に轍がある場合には路面からの外乱により操舵が良好に行われずに、正しく追従走行を行うことができなくなる可能性があるが、例えば轍を検出したときにはその轍状態に応じて操舵制御量を大きくする方向に補正することによって、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことが可能となる。
また、このとき、轍状態検出手段によって車両の操舵制御状態及び車両の振動状態が検出される。この車両の操舵制御状態として、例えば自車両を車線に追従走行させるために必要な目標舵角と実舵角検出手段で検出した実舵角との偏差、又は、操舵補助力発生手段で発生する操舵補助力が検出される。
また、前記車両の振動状態として、車体のロール振動、或いは例えば車体の上下加速度と車体及び車輪間の相対速度とをもとに算出する等して検出した車輪の上下振動の左右逆相成分、或いは車体の左右振動が検出される。
【0016】
このとき、車両が轍路面を走行しているときには轍による外乱を受けるため、車両には外乱周期に応じた振動が発生すると共に外乱周期に応じて操舵制御状態が変動する。したがって、これら操舵制御状態及び振動状態の変動周期が一致するときには轍路面を走行しているとみなすことができ、このときには、操舵制御量の補正を行い、外乱の影響を抑制するように操舵制御量を増加させることによって、外乱の影響により車両が不安定となることが抑制されることになる。
【0017】
また、本発明の請求項9に係る車線追従走行制御装置は、前記補正手段は、前記操舵制御状態検出手段で検出した操舵制御状態又は前記振動状態検出手段で検出した振動状態の変動の振幅が増加するほど、前記操舵制御量の補正幅を増加させるようになっていることを特徴としている。
この請求項9に係る発明では、補正手段では、操舵制御量の補正を行う際に、前記操舵制御状態又は前記振動状態の変動の振幅が増加するほど、つまり、轍による影響が大きいほど操舵制御量の補正幅を増加させるようにしているから、轍の程度に応じて操舵制御量の補正が行われることになる。
【0018】
また、本発明の請求項10に係る車線追従走行制御装置は、前記補正手段は、前記操舵制御量を増加方向に補正する状態が所定時間継続したときには、前記操舵制御量の増加方向への補正を行わないようになっていることを特徴としている。
この請求項10に係る発明では、補正手段では、操舵制御量を増加方向に補正する状態が所定時間継続したときには、操舵制御量の増加方向への補正が行われず、車線状態検出手段で検出した車線状態と自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき算出された自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を発生するように制御が行われる。
【0019】
つまり、路面の轍が非常に深く掘れている場合等、操舵制御量を増加方向へ補正しているのにも係わらず、車両走行状態が安定せずに、操舵制御状態及び振動状態の変動幅が所定時間継続した場合、すなわち、モータ等の操舵補助力発生手段の性能以上の操舵補助力を発生させるように制御が行われている場合には、操舵制御量の増加方向への補正が行われないから、モータ等の操舵補助力発生手段に対して無理に大きな操舵制御量を発生させようと制御することが回避され、モータ等の操舵補助力発生手段或いはモータとステアリングシャフトとの間に設けられたウォームギア,クラッチ等を保護することが可能となる。
【0020】
また、本発明の請求項11に係る車線追従走行制御装置は、自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前記操舵制御量を増加方向に補正する状態が所定時間継続したときには、前記操舵制御量の増加方向への補正を行わないようになっていることを特徴としている。
この請求項11に係る発明では、自車両前方道路の車線状態及び自車両の走行状態が検出され、これらに基づいて自車両を車線に追従させるために必要な操舵制御量が検出され、この操舵制御量に応じた操舵補助力が操舵系に付与されて操舵が行われ、自車両は車線に追従して走行する。
このとき、自車両走行路面の轍状態が検出され、この轍状態に応じて前記操舵制御量の補正が行われる。
したがって、走行路面に轍がある場合には路面からの外乱により操舵が良好に行われずに、正しく追従走行を行うことができなくなる可能性があるが、例えば轍を検出したときにはその轍状態に応じて操舵制御量を大きくする方向に補正することによって、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことが可能となる。
また、このとき、補正手段では、操舵制御量を増加方向に補正する状態が所定時間継続したときには、操舵制御量の増加方向への補正が行われず、車線状態検出手段で検出した車線状態と自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき算出された自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を発生するように制御が行われる。
つまり、路面の轍が非常に深く掘れている場合等、操舵制御量を増加方向へ補正しているのにも関わらず、車両走行状態が安定せずに、操舵制御状態及び振動状態の変動幅が所定時間継続した場合、すなわち、モータ等の操舵補助力発生手段の性能以上の操舵補助力を発生させるように制御が行われている場合には、操舵制御量の増加方向への補正が行われないから、モータ等の操舵補助力発生手段に対して無理に大きな操舵制御量を発生させようと制御することが回避され、モータ等の操舵補助力発生手段或いはモータとステアリングシャフトとの間に設けられたウォームギア、クラッチ等を保護することが可能となる。
また、本発明の請求項12に係る車線追従走行制御装置は、自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を補正する補正手段と、を備え、前記轍状態検出手段は、車体のバウンス及びピッチ方向の振動状態とロール方向の振動状態とを検出し、これら振動状態の周波数特性に基づいて轍状態を検出するようになっていることを特徴としている。
また、本発明の請求項13に係る車線追従走行制御装置は、前記轍状態検出手段は、ばね上共振周波数よりも高い所定の周波数域における車体のロール方向の振動レベルがしきい値を越えるかどうかを判定し、前記補正手段は、前記ロール方向の振動レベルが前記しきい値を越えるとき前記操舵制御量を増加させる方向に補正するようになっていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の請求項14に係る車線追従走行制御装置は、前記轍状態検出手段は、ばね上共振周波数を含む所定の周波数域における車体のバウンス及びピッチ方向の振動レベルがしきい値を越えるかどうかを判定し、前記補正手段は、前記バウンス及びピッチ方向の振動レベルが前記しきい値を越えるとき前記操舵補助力を減少させる方向に補正するようになっていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の請求項15に係る車線追従走行制御装置は、前記補正手段は、ばね上共振周波数を含む所定の周波数域における車体のバウンス及びピッチ方向の振動レベルがしきい値を越え、且つばね上共振周波数よりも高い所定の周波数域における車体のロール方向の振動レベルがしきい値を越えるときには、前記操舵補助力を減少させる方向に補正するようになっていることを特徴としている。
【0023】
この請求項12から請求項15に係る発明では、自車両前方道路の車線状態及び自車両の走行状態が検出され、これらに基づいて自車両を車線に追従させるために必要な操舵制御量が検出され、この操舵制御量に応じた操舵補助力が操舵系に付与されて操舵が行われ、自車両は車線に追従して走行する。
このとき、自車両走行路面の轍状態が検出され、この轍状態に応じて前記操舵制御量の補正が行われる。
したがって、走行路面に轍がある場合には路面からの外乱により操舵が良好に行われずに、正しく追従走行を行うことができなくなる可能性があるが、例えば轍を検出したときにはその轍状態に応じて操舵制御量を大きくする方向に補正することによって、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことが可能となる。
また、このとき、轍状態検出手段によって、車体のバウンス及びピッチ方向の振動状態とロール方向の振動状態とが検出され、これら振動状態の周波数特性に基づいて轍状態が検出され、これに基づいて補正手段での補正が行われる。
ここで、車両の振動特性として、タイヤの横方向の弾性と車両重量、車両のロール慣性等との関係から、ばね上共振周波数とばね下共振周波数の間の周波数域において、振動が発生しやすくなっている。特に轍路面等でタイヤへ横方向の入力が加わった場合にはこの周波数域における振動が強く引き起こされている。
したがって、例えば、ばね上共振周波数よりも高い所定の周波数域における車体のロール方向の振動レベルがしきい値を越えるときには、轍路面であると判定することが可能となる。
また、このとき、ばね上共振周波数を含む所定の周波数域における車体のバウンス及びピッチ方向の振動レベルがしきい値を越えるときには、路面の突起、ねじれ、補修後の路面等といった通常の路面不整が生じているとみなすことができるから、この場合には、操舵補助力を減少させる方向に補正を行うことによって、例えば、車体のバウンス及びピッチ方向の振動レベルが大きく、CCDカメラ等の車線状態検出手段により前方の車線状況を正しく認識することができないような場合には、操舵補助力を減少させることによって、誤った情報に基づく操舵補助力を発生させることが回避される。
【0024】
また、本発明の請求項16に係る車線追従走行制御装置は、自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を補正する補正手段と、を備え、前記轍状態検出手段は、車体の左右方向の振動状態を検出し、ヨー共振周波数よりも高い所定の周波数域における左右方向の振動レベルがしきい値を越えるかどうかを判定し、前記補正手段は前記左右方向の振動レベルがしきい値を越えるときには、前記操舵制御量を増加させる方向に補正するようになっていることを特徴としている。
【0025】
この請求項16の発明では、自車両前方道路の車線状態及び自車両の走行状態が検出され、これらに基づいて自車両を車線に追従させるために必要な操舵制御量が検出され、この操舵制御量に応じた操舵補助力が操舵系に付与されて操舵が行われ、自車両は車線に追従して走行する。
このとき、自車両走行路面の轍状態が検出され、この轍状態に応じて前記操舵制御量の補正が行われる。
したがって、走行路面に轍がある場合には路面からの外乱により操舵が良好に行われずに、正しく追従走行を行うことができなくなる可能性があるが、例えば轍を検出したときにはその轍状態に応じて操舵制御量を大きくする方向に補正することによって、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことが可能となる。
また、このとき、轍状態検出手段によって、車体の左右方向の振動状態が検出され、タイヤへ横方向の入力が加わった場合にその振動が強く引き起こされるヨー共振周波数よりも高い所定周波数域における左右方向の振動レベルがしきい値を越えるとき、つまり、轍路面を走行しているとみなすことの可能なときには、補正手段により操舵制御量を増加させる方向に補正が行われる。
【0026】
さらに、本発明の請求項17に係る車線追従走行制御装置は、前記補正手段は、前記振動レベルが増加するほど、前記操舵制御量の補正幅が増加するように補正を行うようになっていることを特徴としている。
この請求項17に係る発明では、補正手段では、操舵制御量の補正を行う際に、振動レベルが増加するほど操舵制御量の補正幅が増加するようにしているから、前記ロール方向或いは左右方向の振動レベルが増加するほど、つまり、轍による影響が大きいほど操舵制御量の補正幅が増加されるから、轍による影響が大きいほど操舵制御量が増加方向に大きく補正されることになる。また、バウンス及びピッチ方向の振動レベルが増加するほど、つまり、CCDカメラ等の車線状態検出手段による前方の車線状況の精度が低下するほど操舵制御量の補正幅が増加されるから、車線状況の精度が低下するほど操舵制御量が減少方向に大きく補正されることになる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係る車線追従走行制御装置によれば、轍状態検出手段によって自車両走行路面の轍状態を検出し、この轍状態に応じて、この轍による外乱入力を打ち消す方向に操舵制御量を補正するようにしたから、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことができる。
【0028】
また、請求項2に係る車線追従走行制御装置によれば、轍状態検出手段によって自車両走行路面の轍状態を検出し、この轍状態に応じて操舵制御量を補正するようにしたから、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことができる。
このとき、車両の操舵制御状態及び振動状態の変動周期が同一かどうかを判定することにより容易に轍状態を検出することができると共に、轍状態であるときには操舵制御量を増加させるようにしたから、轍による外乱の影響を受けることを抑制することができる。
また、請求項3又は請求項4に係る車線追従走行制御装置によれば、操舵制御状態として、目標舵角と実舵角との偏差又は操舵補助力発生手段で発生する操舵補助力を検出するようにしたから、容易に操舵制御状態を検出することができる。
【0029】
また、請求項5から請求項8に係る車線追従走行制御装置によれば、振動状態として、車体のロール振動、車輪の上下振動の左右逆相成分、或いは車体の左右方向の振動を検出するようにしたから、容易に振動状態を検出することができる。
特に、ステアリング機構に加わる外乱と関係の深いばね下つまり車輪の上下振動の左右逆相成分を検出するようにしたから、より正確の轍路面の判断を行うことができる。
また、このとき、車輪の上下振動を、車体の上下加速度と、車体及び車輪間の相対速度をもとに検出するから、容易に検出することができる。
【0030】
また、請求項9に係る車線追従走行制御装置によれば、操舵制御状態又は振動状態の変動の振幅が増加するほど、操舵制御量の補正幅が増加するように補正を行うようにしたから、轍状態に応じて的確に補正を行うことができる。
また、請求項10に係る車線追従走行制御装置によれば、補正手段では、操舵制御量を増加方向に補正した状態が所定時間継続したときには、操舵制御量の増加方向への補正を行わないようにしたから、操舵補助力発生手段が過負荷状態に維持されることが回避される。
また、請求項11に係る車線追従走行制御装置によれば、轍状態検出手段によって自車両走行路面の轍状態を検出し、この轍状態に応じて操舵制御量を補正するようにしたから、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことができる。
このとき、補正手段では、操舵制御量を増加方向に補正した状態が所定時間継続したときには、操舵制御量の増加方向への補正を行わないようにしたから、操舵補助力発生手段が過負荷状態に維持されることが回避される。
【0031】
また、請求項12から請求項15に係る車線追従走行制御装置によれば、轍状態検出手段によって自車両走行路面の轍状態を検出し、この轍状態に応じて操舵制御量を補正するようにしたから、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことができる。
このとき、轍状態状態検出手段は、車体のバウンス及びピッチ方向の振動状態とロール方向の振動状態との周波数特性に基づいて轍状態を検出するようにしたから、容易に轍状態であるかどうかを検出することができる。
特に、請求項15に係る車線追従走行制御装置によれば、前記補正手段は、ばね上共振周波数を含む所定の周波数域における車体のバウンス及びピッチ方向の振動レベルがしきい値を越え、且つばね上共振周波数よりも高い所定の周波数域における車体のロール方向の振動レベルがしきい値を越えるときには、前記操舵補助力を減少させる方向に補正するようにしたから、うねりや突起のある路面等の不整路面を走行時に轍路面であると誤認識することを回避することができる。
【0032】
また、本発明の請求項16に係る車線追従走行制御装置によれば、轍状態検出手段によって自車両走行路面の轍状態を検出し、この轍状態に応じて操舵制御量を補正するようにしたから、轍による外乱の影響により車両が不安定となることを抑制し良好に車線追従を行うことができる。
また、車体の左右方向の振動状態を検出し、ヨー共振周波数よりも高い所定周波数域における左右方向の振動レベルがしきい値を越えるときには、操舵補助量を増加させる方向に補正を行うようにしたから、轍路面走行時には操舵制御量を増加させて安定した走行を保つことができる。
【0033】
さらに、請求項17に係る車線追従走行制御装置によれば、ロール方向、左右方向の振動レベル、或いはバウンス及びピッチ方向の振動レベルが増加するほど、操舵制御量の補正幅を増加させるようにしたから、轍による影響或いは車線状況の検出精度の低下に応じて、補正制御量を的確に補正することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示す概略構成図であって、図1に示すように、ステアリングホイール1はステアリングシャフト2の上端部に連結され、このステアリングシャフト2の下端部は例えばラックアンドピニオン形式の操向装置4に連結されている。また、前記ステアリングシャフト2にはウォームギヤ6を介してモータ9の回転軸が連結され、モータ9の回転力が、回転軸、電磁クラッチ9a、ウォームギヤ6、ステアリングシャフト2を介して操向装置4に伝達されるようになっている。
【0035】
さらに、ステアリングシャフト2の操向装置4近傍には、舵角センサ10が設けられ、この検出信号はコントローラ20に出力されるようになっている。
また、車両室内には進行方向前方を撮像するCCDカメラ12が設けられ、このCCDカメラ12の画像情報は車線情報処理装置30で処理され、この車線情報処理装置30において車線情報が抽出されてコントローラ20に出力されるようになっている。また、左右前輪のサスペンション上部に相当する車体には、上下加速度センサ14L及び14Rがそれぞれ設けられ、これら上下加速度センサ14L及び14Rの検出信号は前記コントローラ20に出力されるようになっている。
【0036】
前記コントローラ20は、例えばマイクロコンピュータ等で構成され、前記舵角センサ10及び上下加速度センサ14L,14Rの検出信号を、図示しないA/D変換器を介して入力する。そして、図2に示すように、舵角センサ10で検出した実舵角δと、後述の車線情報処理装置30からの横偏差Y、ヨー角偏差ψ、路面曲率ρ等の所定の画像処理情報を入力し、これら画像処理情報と、舵角センサ10からの実舵角δとをもとに、目標舵角算出部21において、自車を車線に追従させるための目標舵角δ* を算出する。この目標舵角δ* と舵角センサ10からの実舵角δとの偏差Δδをもとに、操舵トルク算出部22において、目標舵角δ* と実舵角δとを一致させるために必要とする操舵トルクTを算出する。
【0037】
一方、路面轍状態判断部23では、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号ZGL,ZGRと、操舵トルク算出部22で算出した目標舵角δ* 及び実舵角δとの舵角偏差Δδとに基づいて路面の轍状態を判断し、操舵トルク補正演算部24では、操舵トルク算出部22で算出した操舵トルクTを、路面轍状態判断部23での判断に応じて補正してこれを目標操舵トルクT* とし、この目標操舵トルクT* に応じた制御信号をモータドライバ25に出力する。
【0038】
モータドライバ25では、目標操舵トルクT* を発生し得る駆動電流をモータ9に供給する。
一方、車線情報処理装置30はマイクロコンピュータ等を含んで構成され、CCDカメラの画像情報をもとに車線情報を抽出する公知の方法と同様に処理を行い、CCDカメラ12の画像情報を読み込み、車線抽出処理部32において白線情報、つまり車線情報を抽出する。そして、位置偏差算出部34において、白線情報をもとに、車線中心に対する自車の横方向位置偏差Y及び車線方向に対する自車のヨー角ψ、前方路面の曲率ρを算出する。そして、これら情報からなる画像処理情報を、コントローラ20に出力する。
【0039】
図3は、コントローラ20における、車線追従走向制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
この車線追従走向制御処理は、タイマー割り込みによって一定時間毎に実行される。そして、まず、ステップS1で、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号ZGL、ZGRを図示しないA/D変換器を介して入力する。次いで、ステップS2に移行して、これらの差ΔZG (=ZGL−ZGR)、つまりロール成分Rを算出し、これを所定の記憶領域に格納した後、ステップS3に移行する。
【0040】
このステップS3では、車線情報処理装置30から、車線中心に対する自車の横方向位置偏差Y及び車線方向に対する自車のヨー角方向ψ、前方路面の曲率ρからなる画像処理情報を入力し、次いで、ステップS4に移行して、舵角センサ10で検出した実舵角δを図示しないA/D変換器を介して入力する。
そして、ステップS5に移行し、前記車線情報処理装置30から入力した横方向位置偏差Y、ヨー角偏差ψ、前方路面の曲率ρと、舵角センサ10からの実舵角δとをもとに、車両を車線に追従して走向するために必要な目標舵角θ* を算出する。この目標舵角θ* の算出は、実舵角δに対して、横方向位置偏差Y及びその微分値(dY/dt)、ヨー角偏差ψ、路面曲率ρのそれぞれに比例した量の補正を与える方法により算出する。すなわち、次式(1)に基づいて、目標舵角δ* を算出する。なお、式中のK1〜K4は比例定数である。
【0041】
次いで、ステップS6に移行し、実舵角δと目標舵角δ* との差である舵角偏差Δδを算出する。そして、この舵角偏差Δδを所定の記憶領域に記憶した後、ステップS7に移行し、舵角を目標舵角δ* に一致させるために必要とする操舵トルクTを、次式(2)に基づいて算出する。なお、式中のK5及びK6は比例定数である。
【0042】
T=K5×δ* +K6×δ ……(2)
次いで、ステップS8に移行し、路面轍状態判断処理を実行する。この路面轍状態判断処理は図4に示すように行う。すなわち、所定の記憶領域に格納している、ステップS2の処理で算出した上下加速度のロール成分R及び、ステップS6の処理で算出した舵角偏差Δδとのそれぞれに対して、バンドパスフィルタ処理部51及び52においてバンドパスフィルタ処理を行い、高周波のノイズ成分と極低周波の成分とをそれぞれ除去する。そして、バンドパスフィルタ処理後の各信号について、変動周期比較部53において変動周期を比較する。
【0043】
つまり、図5(a)に示すように、舵角偏差Δδの変動周期Tδを計測すると共に、その振幅Wδを検出し、同様に、図5(b)に示すようにロール成分Rの変動周期TR及びその振幅WRを計測する。
そして、これら変動周期Tδ及びTRを比較し、これらが一致するときには、轍路面を走行していると判断する。そして、変動周期Tδ及びTRに基づいて補正係数αを求める。この補正係数αは、例えば予め設定し所定の記憶領域に格納している、図6に示すような制御マップに基づいて設定し、振幅Wδが大きくなるほどαは大きくなり、また振幅WRが大きくなるほどαが大きくなるように設定する。なお補正係数αは“1”以上であり且つ予め設定した上限値以内の値に設定する。
【0044】
そして、このようにして補正係数αが設定されると、次に、ステップS9に移行し、操舵トルク補正演算を行う。つまり、ステップS8での路面轍状態判断結果設定した補正係数αに基づいて、ステップS7で算出した操舵トルクTを、次式(3)にしたがって補正し、目標操舵トルクT* を算出する。
T* =α×T ……(3)
そして、この目標操舵トルクT* に応じた制御指令をモータドライバ25に出力し、モータドライバ25では、制御指令に応じた駆動電流をモータ9に供給する。
【0045】
ここで、CCDカメラ12及び車線情報処理装置30の車線抽出処理部32が車線状態検出手段に対応し、車線情報処理装置30の位置偏差算出部34が自車両走行状態検出手段に対応し、モータ9が操舵補助力発生手段に対応し、舵角センサ10が実舵角検出手段に対応し、図3のステップS1及びS2の処理が振動状態検出手段に対応し、ステップS4からS6の処理が操舵制御状態検出手段に対応し、ステップS7の処理が操舵制御量検出手段に対応し、ステップS8の処理が轍状態検出手段に対応し、ステップS9の処理が補正手段に対応している。
【0046】
次に、上記第1の実施の形態の動作を説明する。
車線情報処理装置30では、CCDカメラ12で撮像した車両前方の画像情報を入力し、この画像情報をもとに、白線情報を抽出し、その車線中心に対する自車の横方向位置偏差Y及び車線方向に対する自車のヨー角ψ、前方路面の曲率ρを算出する。そして、これら画像処理情報を、コントローラ20に出力する。
【0047】
一方、コントローラ20では、所定周期で車線追従走向制御処理を実行し、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号を読み込みこれらの差からロール成分Rを算出し、これを所定の記憶領域に格納する(ステップS1,S2)。
そして、車線情報処理装置30からの画像処理情報及び舵角センサ10からの実舵角δを読み込み(ステップS3,S4)、これらに基づいて前記(1)式にしたがって、目標舵角δ* を算出する(ステップS5)。
【0048】
そして、実舵角δと目標舵角δ* とから舵角偏差Δδを算出し(ステップS6)、これを所定の記憶領域に格納した後、この舵角偏差Δδをもとに、これを抑制し得る操舵トルクTを算出する(ステップS7)。
そして、予め所定の記憶領域に格納している舵角偏差Δδとロール成分Rとをもとに、前記図5に基づいて轍状態を判定して補正係数αを設定し(ステップS8)、操舵トルクTを補正係数αによって補正して目標操舵トルクT* を算出し(ステップS9)、これに基づいてモータ9を駆動する。なお、このとき、必要に応じてクラッチ9aを制御し、モータ9を駆動するときにはクラッチ9aを接続状態に制御し、モータ9を停止させるときにはクラッチ9aを遮断状態に制御するようになっている。
【0049】
これによって、目標操舵トルクT* に応じたトルクがステアリングシャフト2に伝達され、これによって操向装置4が駆動されて、車両は車線に沿って走行する。
このとき、車両が轍のない路面を走向している場合には、左右の上下加速度センサ14L,14Rで検出される上下加速度ZGL,ZGRは略一致するから、上下加速度のロール成分Rの変動は少なく、また、変動したとしてもロール成分Rの変動周期TRは周期的ではないか、或いは周期的であったとしても、目標舵角δ* と実角度δとの角度偏差Δδの変動周期Tδとはまず一致しないから、ステップS8の路面轍状態判断処理において、轍が生じていないと判定される。よって、補正係数αは“1”に設定され、ステップS7で算出される操舵トルクTが目標操舵トルクT* となり、これに基づいてモータ9が駆動される。
【0050】
したがって、ステアリングシャフト2には、実舵角δを目標舵角δ* に一致させ得るトルクが付与され、これによって、舵角が操舵されて車両は車線に沿って走行するようになる。
この状態から、車両が図7に示すような、この車両よりも大きな大型車等によって作られた轍路面に進入すると、車線に沿って車両を走向させようとしても、路面からの外乱によって左右に進路が変動し、進路の変動と同期して上下方向の路面入力を受けることになる。これと同時に、路面からの外乱を受けることによって舵角も影響を受けるため、追従走向を行うために本来適切な舵角に対して偏差が生じ、外乱周期に応じて舵角も変動することになる。
【0051】
したがって、上下加速度センサ14L,14Rで検出される上下加速度ZGL,ZGRが変化し、何れか一方の車輪にのみ路面からの上下入力が作用することになるから、上下加速度のロール成分Rは図5(b)に示すように、外乱周期に応じて変動する。同様に、路面からの外乱によって車両は車線からずれるため、実舵角δと目標舵角δ* との舵角偏差Δδも外乱周期に応じて変動する。
【0052】
よって、周期TδとTRとがほぼ一致するから、ステップS8の路面轍状態判断処理において、轍が生じていると判定され、このときの、舵角偏差Δδの振幅Wδ及びロール成分Rの振幅WRに基づいて図6の制御マップから補正係数αが設定される。
このとき、補正係数αは“1”以上であり、また、振幅Wδ及びWRが大きいほど、つまり轍による外乱が大きいほど補正係数αは増加するように設定されるから、ステップS9で算出される目標操舵トルクT* は、外乱が大きくなるほど、操舵トルクTよりも大きな値に設定されることになる。
【0053】
したがって、外乱の大きさに応じて、車線情報に基づく操舵トルクTよりも大きなトルクが発生されるから、轍による外乱の影響を抑制し、安定した車線追従走向を行うことができる。
また、このとき、補正係数αの上限値が設定されているから、目標操舵トルクT* が際限なく大きな値に補正されることを回避することができる。
【0054】
なお、上記第1の実施の形態においては、舵角偏差Δδ及びロール成分Rの周期を直接計測して周期の比較を行うようにした場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、両信号の相互相関関数を計算することによって、周期を比較するようにしてもよく、この場合、相関係数が大きくなるにつれて補正係数αを大きくするようにすればよい。
【0055】
また、上記第1の実施の形態においては、左右のばね上加速度を計測し、これに基づきロール成分を検出するようにした場合について説明したが、これに限らず、例えば、図示しない左右車輪のサスペンションに車体及び車輪間の相対変位又は相対速度を計測するセンサを設け、これらセンサの検出信号に基づいてロール方向の振動成分を算出するようにしてもよく、また、車体と路面との間隔を計測する距離センサ等を設け、この検出信号に基づいて算出するようにしてもよい。
【0056】
また、上記第1の実施の形態においては、前輪のサスペンション位置に、加速度センサ14L,14Rを設けた場合について説明したが、これに限らず、後輪のサスペンション位置に設けるようにしてもよく、また、四輪のサスペンション位置において振動を計測しここからロール方向の振動成分を算出するようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図8は、第2の実施の形態における概略構成図であって、図1に示す第1の実施の形態における概略構成図において、相対速度センサ15L,15Rが追加されている。
これら相対速度センサ15L,15Rは、左右の前輪のサスペンションに設けられ、車体及び車輪間の相対速度を計測するようになっていて、これら相対速度センサ15L,15Rの検出信号は、コントローラ20に出力されるようになっている。
【0058】
そして、この第2の実施の形態におけるコントローラ20では、図9に示すように、上下加速度センサ(上下加速度検出手段)14L,14R、相対速度センサ(相対速度検出手段)15L,15R、及び舵角偏差Δδに基づいて轍状態の判断を行うようになっている。すなわち、まず、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号ZGL,ZGRを積分器61において積分処理し、ばね上下速度dZL ,dZR に変換する。そして、このばね上下速度dZL ,dZR と、相対速度センサ15L,15Rの検出信号dSL ,dSR とをもとに、演算器62において、左右の車輪毎にその差、つまり、ばね下速度dZ0L(=dZL −dSL ),dZ0R(=dZR −dSR )を算出する。
【0059】
そして、ロール成分算出部63で、左右のばね下速度dZ0L、dZ0Rの差、つまり、ロール成分R(=dZ0L−dZ0R)を算出する。
一方、目標舵角δ* と実舵角δとの舵角偏差Δδに対して、上記第1の実施の形態と同様に、バンドパスフィルタ64においてバンドパスフィルタ処理を行い、変動周期比較部65において、バンドパスフィルタ処理後の舵角偏差Δδとロール成分Rとをもとに、上記第1の実施の形態と同様に、変動周期の比較を行う。そして、その変動周期が一致するときには轍が発生していると判断し、各信号の振幅に基づいて、前記図6に示す制御マップに基づいて補正係数αを設定する。
【0060】
次に、上記第2の実施の動作を説明する。
図10は、第2の実施の形態において、コントローラ20において実行される車線追従走向制御処理の処理手順を示すフローチャートであって、図3に示す第1の実施の形態における車線追従走向制御処理と同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
【0061】
コントローラ20では、所定周期で車線追従走向制御処理を実行し、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号を読み込み(ステップS1)、さらに、相対速度センサ15L,15Rの検出信号dSL ,dSR を読み込む(ステップS101)。
そして、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号ZGL,ZGRを積分処理して、ばね上下速度dZL ,dZR を算出し、この上下速度dZL ,dZR と、相対速度センサ15L,15Rの検出信号dSL ,dSR との差から、ばね下速度dZ0L(=dZL −dSL ),dZ0R(=dZR −dSR )を算出する(ステップS102)。
【0062】
そして、ばね下速度dZ0L、dZ0Rの差から、ロール成分R(=dZ0L−dZ0R)を算出しこれを所定の記憶領域に格納した後(ステップS103)、車線情報処理装置30で上記第1の実施の形態と同様にして検出した、車線中心に対する自車の横方向位置偏差Y及び車線方向に対する自車のヨー角方向ψ、前方路面の曲率ρからなる画像処理情報、及び舵角センサ10からの実舵角δを読み込む(ステップS3,S4)。そして、これらに基づいて前記(1)式にしたがって、目標舵角δ* を算出する(ステップS5)。
【0063】
そして、実舵角δと目標舵角δ* とから舵角偏差Δδを算出し(ステップS6)、これを所定の記憶領域に格納した後、この舵角偏差Δδをもとに、これを抑制し得る操舵トルクTを前記(2)式に基づいて算出する(ステップS7)。
そして、予め所定の記憶領域に格納している舵角偏差Δδと、ステップS103で算出したロール成分Rとをもとに、前記図5に基づいて轍状態を判定して補正係数αを設定し(ステップS104)、操舵トルクTを補正係数αによって補正して目標操舵トルクT* を算出し(ステップS9)、これに基づいてモータ9を駆動する。
【0064】
したがって、車両が轍路面を走向すると、上下加速度センサ14L,14Rで検出される上下加速度ZGL,ZGR、また、相対速度センサ15L,15Rで算出される相対速度dSL ,dSR は、轍による外乱に同期して変動するから、これらに基づいて算出されるロール成分Rも、図5(a)に示すように外乱周期に応じ変動し、同様に、実舵角δと目標舵角δ* との舵角偏差Δδも図5(a)に示すように外乱周期に応じて変動する。
【0065】
よって、周期TδとTRとがほぼ一致するから、このときの、舵角偏差Δδの振幅Wδ及びロール成分Rの振幅WRに基づいて図6の制御マップから補正係数αが設定され、これに基づいて操舵トルクTが補正されて目標操舵トルクT* が算出される。
このように、上記第2の実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができると共に、第2の実施の形態では、ばね下速度dZ0L、dZ0Rを算出し、つまり、ステアリング機構に加わる外乱とより関係の深いばね下つまり車輪の振動を推定するようにしたから、より高精度に轍路面の判断を行うことができる。
【0066】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
図11は、第3の実施の形態における概略構成図であって、図1に示す第1の実施の形態における概略構成図において、上下加速度センサ14R,14Lに替えて、車体の左右方向の振動を計測する横加速度センサ16が設けられ、この横加速度センサ16の検出信号YG は、コントローラ20に出力されるようになっている。
【0067】
そして、この第3の実施の形態におけるコントローラ20では、図12に示すように、横加速度センサ16の検出信号YG 及び舵角偏差Δδに基づいて轍状態の判断を行うようになっている。すなわち、横加速度センサ16からの横加速度YG に対してバンドパスフィルタ71においてバンドパスフィルタ処理を行い、また、目標舵角δ* と実舵角δとの舵角偏差Δδに対してバンドパスフィルタ72においてバンドパスフィルタ処理を行う。そして、バンドパスフィルタ処理した横加速度YG 及び舵角偏差Δδをもとに、変動周期比較部73において、横加速度YG の変動周期と舵角偏差Δδの変動周期とを上記第1の実施の形態と同様にして比較し、これらが同一周期で変動するときには轍が発生していると判断し、各信号の振幅に基づいて、前記第1の実施の形態と同様に、前記図6に示すような予め設定した図示しない制御マップに基づいて補正係数αを設定する。なお、補正係数αは、上記第1の実施の形態と同様に、“1”以上所定値以下の値であり且つ振幅が大きくなるほど大きくなるように設定される。
【0068】
図13は、コントローラ20において実行される第3の実施の形態における車線追従走向制御処理の処理手順を示すフローチャートであって、前記図3に示す第1の実施の形態における車線追従走向制御処理と同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
コントローラ20では、所定周期で車線追従走向制御処理を実行し、まず、横加速度センサ16からの横加速度YG を読み込み、これを所定の記憶領域に格納し(ステップS201)、さらに、車線情報処理装置30において、上記第1の実施の形態と同様にして検出した画像処理情報及び舵角センサ10からの実舵角δを読み込み(ステップS3,S4)、これらに基づいて前記(1)式にしたがって、目標舵角δ* を算出する(ステップS5)。
【0069】
そして、実舵角δと目標舵角δ* とから舵角偏差Δδを算出しこれを所定の記憶領域に格納した後(ステップS6)、実舵角δと目標舵角δ* とを一致させることの可能な操舵トルクTを前記(2)式に基づいて算出する(ステップS7)。
そして、ステップS201で所定の記憶領域に格納した横加速度YG とステップS6で所定の記憶領域に格納した舵角偏差Δδとをもとに、上記第1の実施の形態と同様にして、これらをバンドパスフィルタ処理した後、それぞれの変動周期及び振幅を求めこれに基づき轍状態を判定して補正係数αを設定し(ステップS202)、ステップS7で算出した操舵トルクTを補正係数αによって補正して目標操舵トルクT* を算出し(ステップS9)、これに基づいてモータ9を駆動する。
【0070】
したがって、車両が轍路面を走向すると、横加速度センサ16で検出される横加速度YG は、轍による外乱に同期して変動するから、横加速度YG は外乱周期に応じて変動し、同様に、実舵角δと目標舵角δ* との舵角偏差Δδも外乱周期に応じて変動する。
よって、横加速度YG 及び舵角偏差Δδの変動周期がほぼ一致するから、このときの、舵角偏差Δδの振幅及び横加速度YG の振幅に基づいて予め設定した図示しない制御マップから補正係数αが設定され、舵角偏差Δδの振幅及び横加速度YG の振幅の振幅が大きいほど補正係数αが大きく設定され操舵トルクTはより大きな値に補正される。
【0071】
したがって、上記第1の実施の形態に示すように路面入力によって生じる上下加速度を計測することに替えて、ステアリング機構に外乱が加わることによって生じる横加速度YG を検出することによって、第3の実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0072】
この第4の実施の形態におけるコントローラ20では、車線追従走向制御処理を、図14のブロック図に示すように行っている。なお、前記図2に示す第1の実施の形態におけるブロック図と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
すなわち、車線情報処理装置30から横偏差Y及びヨー角偏差ψを入力し、これらをもとに、操舵トルク算出部22aにおいて、操舵トルクTを算出する。つまり、車線情報に応じて完全に追従するよう操舵力を発生するのではなく、運転者が車線に沿って走行しようとする運転動作を補助するように、補助的な操舵トルクを発生するようにしている。
【0073】
そして、路面轍状態判断部23aでは、この操舵トルクTと上下加速度センサ14L,14Rで検出した上下加速度ZG L ,ZGRとをもとに、路面轍状態を判断する。そして、この判断結果に応じて、操舵操舵トルク算出部22aで算出した操舵トルクTを操舵トルク補正演算部24において補正し、これを目標操舵トルクT* としてモータドライバ25に出力する。このモータドライバ25では、目標操舵トルクT* を発生し得る駆動電流をモータ9に出力しモータ9を駆動制御する。
【0074】
図15は、第4の実施の形態における車線追従制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートであって、図3に示す第1の実施の形態における車線追従制御処理の処理手順と同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
すなわち、まず、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号ZGL、ZGRを読み込み(ステップS1)、これらの差からロール成分R(=ZGL−ZGR)を算出してこれを所定の記憶領域に格納する(ステップS2)。
【0075】
次いで、車線情報処理装置30から、車線中心に対する自車の横方向位置偏差Y及び車線方向に対する自車のヨー角方向ψからなる偏差情報を読み込み(ステップS301)、これらをもとに制御トルクTを算出しこれを所定の記憶領域に格納する(ステップS302)。この制御トルクTの算出は、横方向位置偏差Y及びヨー角方向ψとに比例した量の補正を与える方法により行う。つまり、次式(4)に基づいて行う。なお、式中のK11及びK12は比例定数である。
【0076】
T=K11×Y+K2×ψ ……(4)
そして、ステップS2で算出したロール成分Rと操舵トルクTとをもとに路面轍状態判断処理を行う(ステップS303)。つまり、上記第1の実施の形態と同様に、所定の記憶領域に格納した制御トルクT及びロール成分Rのそれぞれに対し、バンドパスフィルタ処理をして高周波のノイズ成分及び極低周波の成分とを除去し、その後、それぞれの変動周期及び振幅を検出する。そして、これらの変動周期が一致するときには轍路面を走向していると判定する。そして、前記図6に示すような予め設定した図示しない制御マップに基づいて、制御トルクT及びロール成分Rの振幅に応じた補正係数αを設定する。なお、補正係数αは、上記第1の実施の形態と同様に、“1”以上所定値以下の値であり且つ振幅が大きくなるほど大きくなるように設定される。
【0077】
そして、設定した補正係数αに応じて操舵トルクTを補正し、補正後の操舵トルクを目標操舵トルクT* とし(ステップS9)、これに応じた制御指令をモータ9に出力する(ステップS10)。
したがって、この第4の実施の形態では、車両が轍路面を走行したときには、周期的な外乱を受けるため、車両を車線に追従させるために必要とする操舵トルクTも周期的に変化することになる。一方、車両のロール成分Rは轍路面に応じて変動するから、ロール成分Rの変動周期と操舵トルクTの変動周期とがほぼ一致し、轍路面であると判断されて、操舵トルクT及びロール成分Rの振幅に応じた補正係数αによって、操舵トルクTが大きな値に補正されることになる。
【0078】
したがって、この場合も上記第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
なお、上記第1から第4の実施の形態においては、操舵制御状態検出手段として、実舵角δと目標舵角δ* との舵角偏差Δδを用いるようにした場合、或いは操舵トルクTを用いるようにした場合について説明し、また、車両振動状態検出手段として、ばね上振動を計測する場合、また、ばね下振動を推定する場合、或いは横加速度を用いる場合について説明したが、これらを相互に組み合わせて轍状態を判定することも可能である。
【0079】
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。
この第5の実施の形態における概略構成は、図1に示す第1の実施の形態における概略構成と同様である。そして、第5の実施の形態では、コントローラ20では、図16に示す車線追従走向制御処理を実行するようになっている。なお、図3に示す第1の実施の形態における車線追従走向制御処理と同一処理部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
【0080】
すなわち、この第5の実施の形態においては、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号を読み込み、これらをもとにロール成分Rを算出する(ステップS1,S2)。次いで、ステップS401に移行してバウンスピッチ成分を算出する。このバウンスピッチ成分BPは、上下加速度センサ14L,14Rの検出信号ZGL,ZGRの和(=ZGL+ZGR)から算出する。そしてこれを所定の記憶領域に格納する。
【0081】
そして、車線情報処理装置30からの画像処理情報、舵角センサ10からの検出信号を読み込み(ステップS3,S4)、上記式(1)に基づいて目標舵角δ* を算出した後(ステップS5)、ステップS7に移行して舵角センサ10からの実舵角δと目標舵角δ* とに基づき前記(2)式に基づいて操舵トルクTを算出する。
【0082】
次に、ステップS402に移行して路面轍状態を判断する。この路面轍状態の判断は、ステップS2で算出したロール成分R及びステップS401で算出したバウンスピッチ成分BPに基づき図17に示すように行う。すなわち、所定の記憶領域に格納しているバウンスピッチ成分BPに対し、バンドパスフィルタ81においてバンドパスフィルタ処理を行う。このとき、ばね上共振周波数域(例えば0.5Hz〜2Hz程度)における信号を抽出するようにカットオフ周波数を定める。同様に、ロール成分Rに対して、バンドパスフィルタ82においてバンドパスフィルタ処理を行い、このとき、ばね上共振周波数及びばね下共振周波数の間の周波数域(例えば3Hz〜10Hz程度)における信号を抽出するようにカットオフ周波数を定める。
【0083】
そして、このようにしてバンドパスフィルタ処理を行ったバウンスピッチ成分BP及びロール成分Rそれぞれに対してオーバーオールパワー算出部83,84においてオーバーオールパワーを算出する。つまり、バウンスピッチ成分BPのばね上共振周波数域におけるパワースペクトルの和と、ロール成分Rのばね上共振周波数及びばね下共振周波数の間の周波数域におけるパワースペクトルの和とを算出し、このバウンスピッチ成分BP及びロール成分Rのオーバーオールパワーをもとに振動レベル判断部85において、振動レベルを判断しこれに応じて補正係数αを設定する。
【0084】
この補正係数αの設定は、図18のフローチャートに基づいて行う。すなわち、まず、ステップS501でバウンスピッチ成分BPが予め設定したしきい値BPTHを越えるかどうかを判定し、バウンスピッチ成分BPがしきい値BPTHを越えるときには、ステップS502に移行する。このステップS502では、補正係数αを図19(a)に示す制御マップに基づいて、“1”以下の値に設定する。
【0085】
一方、ステップS501でバウンスピッチ成分BPがしきい値BPTHを越えないときにはステップS503に移行し、ロール成分Rがしきい値RTHを越えるかどうかを判定する。そして、ロール成分Rがしきい値RTHを越えるときにはステップS504に移行し補正係数αを図19(b)の制御マップにしたがって“1”以上の値に設定する。そして、ステップS503の処理でロール成分Rがしきい値RTHを越えないときにはステップS505に移行し補正係数αをα=1に設定する。そして、補正係数αが設定されると処理を終了する。
【0086】
前記制御マップは予め設定したものであって、図19(a)に示すように、バウンスピッチ成分BPが零からしきい値BPTHまでの間は補正係数αは“1”に設定され、バウンスピッチ成分BPがしきい値BPTHからしきい値BPTHよりも大きいしきい値BPTH′までの間はバウンスピッチ成分BPが増加するにつれて補正係数αは小さくなり、バウンスピッチ成分BPがしきい値BPTH′を越えると、補正係数αは零と“1”との間の所定値に維持されるように設定される。また、図19(b)に示すように、ロール成分Rが零からしきい値RTHまでの間は補正係数αは“1”に設定され、ロール成分Rがしきい値RTHからしきい値RTHよりも大きいしきい値RTH′までの間は、ロール成分Rが増加するにつれて補正係数αは小さくなり、ロール成分Rがしきい値RTH′を越えると“1”よりも大きい所定値に設定される。
【0087】
このようにしてステップS402の処理で補正係数αが設定されると、この補正係数αに応じてステップS7の処理で算出した操舵トルクTが補正されて目標操舵トルクT* が算出され(ステップS9)、これに応じた指令信号がモータ9に出力される(ステップS10)。
ここで、車両の振動特性として、タイヤの横方向への弾性と、車両重量、車両のロール慣性との関係から、ばね上共振周波数とばね下共振周波数との間の周波数域において振動が発生しやすく、特に、轍路面等を走行することによってタイヤへ横方向への入力が加わった場合には、この周波数域における振動が強く引き起こされる。したがって、ここでは、この特性に着目し、ロール成分からばね上共振周波数とばね下共振周波数との間の周波数域における振動を、オーバーオールパワーを求めることによって抽出し、これを、タイヤへ横方向への入力が加わった状態、すなわち轍路面を検出するための指標としている。
【0088】
したがって、例えば車両が、上下に波打つうねり路面において、轍掘れが生じているような路面を走行した場合、車両にはロール方向の振動が発生すると共に、バウンスピッチ方向の振動も引き起こされる。このようにバウンスピッチ方向の振動が生じている場合、車体に搭載されたCCDカメラ12も同様に振動するため、その画像情報から求められる車線状況の精度は低下することになる。
【0089】
しかしながら、このように、バウンスピッチ方向の振動が大きいときには(ステップS501)、ロール方向の振動が大きい場合でも(ステップS503)、補正係数αは“1”以下の値に設定され(ステップS502)、つまり、車線状況に基づいて算出される操舵トルクTは小さく補正されて目標操舵トルクT* は、操舵トルクTよりも小さくなる。つまり、画像情報から求められる車線状況の信頼性が低いときには操舵補助力を抑制するようにしているから、真に必要とする操舵トルクよりも大きな操舵トルクが作用することを回避することができ、安全性を向上させることができる。また、バウンスピッチ方向の振動が大きいときには、その振動レベルが大きくなるほど、補正係数αを小さく設定し、すなわち、得られる車線状況の信頼性が低くなるほど、操舵補助力をより小さく抑制するようにしているから、操舵補助力を的確に抑制することができる。
【0090】
また、この第5の実施の形態の場合、ロール成分のばね上共振周波数とばね下共振周波数との間の周波数域における振動から轍路面であるかどうかを判定するようにしているため、第1の実施の形態に比較してより簡易な構成で実現することができる。
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。
【0091】
この第6の実施の形態の構成は、前記図11に示す第3の実施の形態の概略構成と同様であって、横加速度センサ16の検出信号に基づいて轍状態を検出するようにしている。図20は、第6の実施の形態における、車線追従制御処理のフローチャートであって、前記図13に示す上記第3の実施の形態における車線追従制御処理の処理手順と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0092】
すなわち、この第6の実施の形態における車線追従制御処理では、ステップS601の処理では、路面轍状態判断を横加速度YG に基づいて行うようになっている。つまり、図21に示すように、横加速度YG に対してバンドパスフィルタ91において、バンドパスフィルタ処理を行って、ヨー共振周波数以上の周波数成分を抽出し、これをもとに、オーバーオールパワー算出部92において、特にタイヤに横方向の入力が加わった場合にその振動が強く引き起こされるヨー共振周波数以上の周波数成分におけるパワースペクトルの和を算出し、これに基づいて振動レベル判断部93において、振動レベルを判定し補正係数αを設定する。
【0093】
この補正係数αの設定は、例えば図19(b)に示すように、オーバーオールパワーが零から第1のしきい値RTHである間は補正係数αは“1”、オーバーオールパワーが第1のしきい値RTHからこれよりも大きい第2のしきい値RTH′である間は、オーバーオールパワーが増加するにつれて補正係数αが増加し、第2のしきい値RTH′を越えると所定値となるように設定する。
【0094】
したがって、この場合、路面から加わる外乱による車体の左右振動を横加速度センサ16で検出し、これに応じて轍路面を走行しているかどうかを検出するようにしているから、轍路面走行しているときに操舵トルクを増加傾向に補正することによって、上記第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
次に、本発明の第7の実施の形態を説明する。
【0095】
この第7の実施の形態は、図22の第7の実施の形態における車線追従走行制御処理のフローチャートに示すように、図3に示す第1の実施の形態における車線追従走行処理のフローチャートにおいて、ステップS701〜S703の処理が追加されている。
すなわち、上下加速度のロール成分R、舵角偏差Δδに基づいて補正係数αを設定した後(ステップS8)、ステップS701に移行し、ステップS8で設定される補正係数αがα>1の状態が所定時間継続したかどうかを判定する(ステップS801)。この判定は、例えばステップS8で設定される補正係数αがα>1となったときに、カウントを開始し、ステップS8で設定される補正係数αがα>1でなくなったときにカウント値をリセットすること等によって継続時間を測定するようにしておき、これに基づいて行う。なお、この所定時間は、路面轍状態を検出し、補正係数αを増加させて操舵トルクTを増加方向に補正したときに、車両走行状態が安定するまでの平均的な値に応じて定められる時間であって、車両特性に応じて決定される値である。
【0096】
そして、補正係数αがα>1の状態が所定時間継続していなければ、そのままステップS9に移行し、上記第1の実施の形態と同様にして、ステップS8で設定した補正係数αに基づいて操舵トルクTの補正を行い、目標操舵トルクT* を算出する。
一方、ステップS701の処理で、補正係数αがα>1の状態が所定時間継続したときにはステップS702に移行し、上下加速度のロール成分R及び舵角偏差Δδの振幅がそれぞれに予め設定したしきい値以上であるかを判定する。このしきい値は、車線追従走行を行った際に通常取り得る値の大きさに応じて定められる値である。
【0097】
そして、ステップS702で、上下加速度のロール成分R及び舵角偏差Δδの振幅がそれぞれしきい値以上であるときには、ステップS703に移行して補正係数α=1に設定した後ステップS9に移行し、この補正係数αに基づいて目標操舵トルクT* を算出する。つまり、操舵トルクTが目標操舵トルクT* として設定され、これに基づいて操舵補助トルクが発生される。
【0098】
一方、ステップS702の処理で、上下加速度のロール成分R、舵角偏差Δδの振幅が共に、しきい値以上でないときには、ステップS702からステップS9に移行し、ステップS8で設定した補正係数αに基づいて操舵トルクTの補正を行い、目標操舵トルクT* を算出する。
したがって、例えば、路面の轍が非常に深く掘れている路面を走行している場合等、ステアリングシャフト2に連結したモータ9で発生可能なトルクでは制御トルクが不足する場合等には、車両走行状態が安定しないから補正係数αがα>1となる状態が継続する。この状態が継続すると、モータ9の性能以上に大きなトルクを発生するように制御が行われることになり、モータ9を始め、ステアリングシャフト2,ウォームギヤ6等に負担がかかることになる。
【0099】
しかしながら、補正係数αがα>1の状態が所定時間継続すると、αはα=1に設定され操舵トルクTの補正は行われないから、性能以上に大きな操舵補助トルクを発生させるように制御が行われることはなく、ステアリングシャフト2に連結されたモータ9やウォームギア6、クラッチ9a等を保護することができる。
【0100】
なお、上記第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができることはいうまでもない。
また、上記実施の形態においては、第1の実施の形態に適用した場合について説明したが、上記第2から第6の実施の形態に適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態における車線追従走行制御装置における処理手順の一例を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態における車線追従走行制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態における路面轍状態判断の処理手順を示すブロック図である。
【図5】路面轍状態判断の説明に供する説明図である。
【図6】補正係数αを設定するための制御マップである。
【図7】第1の実施の形態の動作説明に供する説明図である。
【図8】第2の実施の形態を示す概略構成図である。
【図9】第2の実施の形態における路面轍状態判断の処理手順を示すブロック図である。
【図10】第2の実施の形態における車線追従走行制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施の形態を示す概略構成図である。
【図12】第3の実施の形態における路面轍状態判断の処理手順を示すブロック図である。
【図13】第3の実施の形態における車線追従走行制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】第4の実施の形態における車線追従走行制御装置における処理手順の一例を示すブロック図である。
【図15】第4の実施の形態における車線追従走行制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図16】第5の実施の形態における車線追従走行制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図17】第5の実施の形態における路面轍状態判断の処理手順を示すブロック図である。
【図18】図17の振動レベル判断部85における補正係数の設定手順を示すフローチャートである。
【図19】バウンスピッチ成分のオーバーオールパワーと補正係数α、及びロール成分のオーバーオールパワーと補正係数αとの対応を表す制御マップである。
【図20】第6の実施の形態における車線追従走行制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図21】第6の実施の形態における路面轍状態判断の処理手順を示すブロック図である。
【図22】第7の実施の形態における車線追従走行制御処理の処理手順の一例を示すフトーチャートである。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
4 操向装置
9 モータ
9a クラッチ
10 舵角センサ
12 CCDカメラ
14L,14R 上下加速度センサ
15L,15R 相対速度センサ
16 横加速度センサ
20 コントローラ
30 車線情報処理装置
Claims (17)
- 自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、
自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、
前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、
車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、
走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、
当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を、轍による外乱入力を打ち消す方向に補正する補正手段と、を備えることを特徴とする車線追従走行制御装置。 - 自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、
自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、
前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、
車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、
走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、
当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を補正する補正手段と、を備え、
前記轍状態検出手段は、車両の操舵制御状態を検出する操舵制御状態検出手段と、
車両の振動状態を検出する振動状態検出手段と、を有し、
前記補正手段は、操舵制御状態検出手段で検出した操舵制御状態及び前記振動状態検出手段で検出した振動状態の変動周期が同一であるとき前記操舵制御状態及び前記振動状態の変動幅に応じて前記操舵制御量を増加させるようになっていることを特徴とする車線追従走行制御装置。 - 前記操舵制御量検出手段は、実舵角を検出する実舵角検出手段を備え、前記車線状態と前記自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させ得る目標舵角を算出してこの目標舵角と前記実舵角検出手段で検出した実舵角とに基づいて前記操舵制御量を検出し、前記操舵制御状態検出手段は、前記目標舵角と前記実舵角との偏差を検出するようになっていることを特徴とする請求項2記載の車線追従走行制御装置。
- 前記操舵制御状態検出手段は、前記操舵補助力発生手段で発生する操舵補助力を検出するようになっていることを特徴とする請求項2記載の車線追従走行制御装置。
- 前記振動状態検出手段は、車体のロール振動を検出するようになっていることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の車線追従走行制御装置。
- 前記振動状態検出手段は、車輪の上下振動の左右逆相成分を検出するようになっていることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の車線追従走行制御装置。
- 前記振動状態検出手段は、車体の上下加速度を検出する上下加速度検出手段と、車体及び車輪間の相対速度を検出する相対速度検出手段とを備え、
前記上下加速度検出手段で検出した上下加速度の積分値と前記相対速度検出手段で検出した相対速度とから車輪の上下振動状態を推定するようになっていることを特徴とする請求項6記載の車線追従走行制御装置。 - 前記振動状態検出手段は、車体の左右振動を検出するようになっていることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の車線追従走行制御装置。
- 前記補正手段は、前記操舵制御状態検出手段で検出した操舵制御状態又は前記振動状態検出手段で検出した振動状態の変動の振幅が増加するほど、前記操舵制御量の補正幅を増加させるようになっていることを特徴とする請求項2乃至8の何れかに記載の車線追従走行制御装置。
- 前記補正手段は、前記操舵制御量を増加方向に補正する状態が所定時間継続したときには、前記操舵制御量の増加方向への補正を行わないようになっていることを特徴とする請求項2乃至9の何れかに記載の車線追従走行制御装置。
- 自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、
自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、
前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、
車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、
走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、
当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を補正する補正手段と、を備え、
前記補正手段は、前記操舵制御量を増加方向に補正する状態が所定時間継続したときには、前記操舵制御量の増加方向への補正を行わないようになっていることを特徴とする車線追従走行制御装置。 - 自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、
自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、
前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、
車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、
走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、
当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を補正する補正手段と、を備え、
前記轍状態検出手段は、車体のバウンス及びピッチ方向の振動状態とロール方向の振動状態とを検出し、これら振動状態の周波数特性に基づいて轍状態を検出するようになっていることを特徴とする車線追従走行制御装置。 - 前記轍状態検出手段は、ばね上共振周波数よりも高い所定の周波数域における車体のロール方向の振動レベルがしきい値を越えるかどうかを判定し、
前記補正手段は、前記ロール方向の振動レベルが前記しきい値を越えるとき前記操舵制御量を増加させる方向に補正するようになっていることを特徴とする請求項12記載の車線追従走行制御装置。 - 前記轍状態検出手段は、ばね上共振周波数を含む所定の周波数域における車体のバウンス及びピッチ方向の振動レベルがしきい値を越えるかどうかを判定し、
前記補正手段は、前記バウンス及びピッチ方向の振動レベルが前記しきい値を越えるとき前記操舵補助力を減少させる方向に補正するようになっていることを特徴とする請求項12又は13記載の車線追従走行制御装置。 - 前記補正手段は、ばね上共振周波数を含む所定の周波数域における車体のバウンス及びピッチ方向の振動レベルがしきい値を越え、且つばね上共振周波数よりも高い所定の周波数域における車体のロール方向の振動レベルがしきい値を越えるときには、前記操舵補助力を減少させる方向に補正するようになっていることを特徴とする請求項14記載の車線追従走行制御装置。
- 自車両前方道路の車線状態を検出する車線状態検出手段と、
自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出手段と、
前記車線状態検出手段で検出した車線状態と、前記自車両走行状態検出手段で検出した自車両走行状態とに基づき自車両を車線に追従走行させるために必要な操舵制御量を検出する操舵制御量検出手段と、
車両の操舵系に連結され、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量に応じた操舵補助力を前記操舵系に付与する操舵補助力発生手段と、を備えた車線追従走行制御装置において、
走行路面の轍状態を検出する轍状態検出手段と、
当該轍状態検出手段で検出した轍状態に基づいて、前記操舵制御量検出手段で検出した操舵制御量を補正する補正手段と、を備え、
前記轍状態検出手段は、車体の左右方向の振動状態を検出し、ヨー共振周波数よりも高い所定の周波数域における左右方向の振動レベルがしきい値を越えるかどうかを判定し、前記補正手段は前記左右方向の振動レベルがしきい値を越えるときには、前記操舵制御量を増加させる方向に補正するようになっていることを特徴とする車線追従走行制御装置。 - 前記補正手段は、前記振動レベルが増加するほど、前記操舵制御量の補正幅が増加するように補正を行うようになっていることを特徴とする請求項13乃至16の何れかに記載の車線追従走行制御装置。
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