JP3798968B2 - 回転電機の固定子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、スロット幅よりスロットの開口幅が狭く形成された鉄心のスロット内に、コイルが占積率よく装着された回転電機の固定子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネのため効率の良いモータが市場から求められており、一般に鉄心のスロット内に装着されるコイルの密度、すなわち占積率を向上させることでモータの効率の向上が図られている。
そして、上記のようなコイルの占積率を向上させるために、図示はしないが例えば特開平10−271733号公報では、予めスロット外でスロットの断面に応じた断面の束に整列巻きされたコイルを、その形状を保持した状態でスロットの幅と同じ幅の開口側から半径方向に挿入して装着することが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の回転電機の固定子は以上のように、予めスロット外でスロットの断面に応じた断面の束に整列巻きされたコイルを、その形状を保持した状態でスロットの幅と同じ幅の開口側から半径方向に挿入して装着することにより、コイルの占積率の向上が図られている。
しかしながら、スロットの開口部の幅が大きいと、空隙部における磁気抵抗が増大し、誘導電動機等では励磁電流の増大、永久磁石式電動機では有効磁束の減少を招き、さらに、磁気的な凹、凸が大きくなることからスロット高調波が増大して、回転子、固定子に発生する高調波損失が増大し、さらに加えて、サーボモータ等においてはコギングの増大につながり、位置決め時の制御性が低下する等、種々の問題点が生じる。
【0004】
このため、磁極テイース部の先端を周方向両側に突出させることにより、スロットの開口部の幅をスロットの幅より狭くした鉄心を用いることになるが、この場合、上記のように予めスロット外でスロットの断面に応じた断面の束に整列巻きされたコイルを、そのままスロットの開口部側から半径方向に挿入させることができなくなるため、コイルの占積率を高めてモータの効率を向上させることが困難になるという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、スロットの開口部の幅がスロットの幅より狭く形成された鉄心においても、コイルの占積率を高めモータの効率を向上させることが可能な回転電機の固定子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1に係る回転電機の固定子の製造方法は、 巻回し、内周面に所定の間隔を介して形成されるスロットの幅よりスロットの開口部の幅が狭く形成された鉄心の少なくとも対応する一対のスロットにそれぞれ装着される第1および第2の辺部を整列巻きして両スロット内に嵌挿可能な厚さに、第1および第2の辺部の各一端側に連なる第3の辺部を第1および第2の辺部の延在方向にずらして、積層方向の厚さがスロットの開口部の幅より小さな厚さにそれぞれ積層して複数のコイル組合体を形成する工程と、
コイル組合体の姿勢を、コイル挿入方向に移動すると共に所定の状態でコイル組合体との係合を解くことができるコイル保持部材で保持する工程と、
各コイル組合体を鉄心の一端側から接近させて第3の辺部を両スロットの開口部を通過させるとともに、鉄心の一端側から他端側に移動させることにより第1および第2の辺部を両スロット内に導きそれぞれ装着する工程とを包含するものである。
【0007】
又、この発明の請求項2に係る回転電機の固定子の製造方法は、請求項1において、線材の少なくともスロットにそれぞれ装着される第1および第2の辺部に位置する部位の積層方向に隣接する当接面同士を偏平状に成形して整列巻きするようにしたものである。
【0008】
又、この発明の請求項3に係る回転電機の固定子の製造方法は、請求項1又は請求項2において、各コイル組合体の第3の辺部を成形して出っ張りを抑制する工程を包含したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における回転電機の固定子の構成を示し、(A)は正面断面図、(B)は部分詳細図、図2は図1におけるコイル組合体の構成を示す斜視図、図3は図2におけるコイル組合体が鉄心に装着された状態を示す正面図、図4は図3におけるコイル組合体の鉄心への装着手順を示し、(A)は装着前の斜視図、(B)は装着後の斜視図、図5ないし図13は図1における回転電機の固定子の製造の各工程を示す図である。
【0010】
図において、1は円筒状を有する鉄心で、内周面に所定の間隔を介して突出し先端が両側に出っ張った複数の磁極テイース部1aが形成されており、これら各磁極テイース部1a間には、開口部の幅ω1がその幅ω2より狭いスロット1bがそれぞれ形成されている。2は線材3が矩形状に巻回されたコイル組合体で、所定のスロット1bとこれからn個離れた位置のスロット1bに装着される第1および第2の辺部2a、2bは整列巻きされてスロット1b内に嵌挿可能な厚さに積層され、これら第1および第2の辺部2a、2bの一端側に連なる第3の辺部2cは、各線材3が第1および第2の辺部2a、2bの延在方向にずれて、積層方向の厚さtが鉄心1のスロット1bの開口部の幅ω1より小さく積層され、第1および第2の辺部2a、2bの他端側に連なる第4の辺部2dは、鉄心1の形状に沿った弧状に積層されている。そして、このコイル組合体3が、n個ずつ離れた一対のスロット1b内に、第1および第2の辺部2a、2bが装着されコイル4が構成されている。
【0011】
次に、上記のように構成される実施の形態1における回転電機の固定子の製造方法を図に基づいて説明する。
まず、図2に示すように線材3を矩形状に巻回し、スロット1bに装着される第1および第2の辺部2a、2bは、整列巻きとして、スロット1b内に嵌挿可能な厚さに積層し、第1および第2の辺部2a、2bの一端側に連なる第3の辺部2cは、各線材3を第1および第2の辺部2a、2bの延在方向にずらして一列に積層し、第1および第2の辺部2a、2bの他端側に連なる第4の辺部2dは、鉄心1の形状に沿った弧状に積層することにより複数のコイル組合体2を形成する。
【0012】
次に、図5に示すようにコイル組合体2の第1および第2の辺部2a、2bの両端近傍を、一対のコイル保持部材5、6で保持してコイル挿入治具7の上方に位置させる。そして、図6に示すようにワイヤガイドブレード7aに沿って下降させストリッパ7bで受けることによりコイル挿入治具7に保持させる。次いで、図7に示すようにコイル挿入治具7を鉄心1の下方に、そのワイヤガイドブレード7aの先端が鉄心1の内側と対応するように位置させ、図8に示すようにコイル挿入治具7を上昇させることにより、ワイヤガイドブレード7aを鉄心1の内周面に沿って移動させ内側を貫通させる。なお、この時、鉄心1とコイル組合体2との関係は図4(A)に示すような状態になっている。
【0013】
次に、図9に示すようにワイヤガイドブレード7aはそのままの状態で、ストリッパ7bを上昇させることによりコイル組合体2をワイヤガイドブレード7aに沿って上方に移動させ、鉄心1の下部に配置されコイル組合体2をスロット1b内に導くコイル案内部材8により、まず第3の辺部2cをスロット1bの開口部を図4(A)中矢印で示す方向に通過させ、さらにコイル組合体2を上方に移動させることにより、図10に示すように第3の辺部2cに連なる第1および第2の辺部2a、2bをスロット1b内に導き、両辺部2a、2bの全領域がスロット1b内に嵌挿される位置で、ストリッパ7bの上昇を停止させることにより、鉄心1とコイル組合体2との関係を図4(B)に示す状態とする。なお、コイル保持部材5は図9に示す状態で、又、コイル保持部材5およびコイル案内部材8は図10に示す状態で、それぞれコイル組合体2との係合を解いて図中矢印で示すように外側へ移動して待機する。
【0014】
次に、図11に示すような成形部材9を上方に配置し、図示はしないがワイヤガイドブレード7aをストリッパ7bの上面より下方に待避させた後、図12に示すように成形部材9を下降させ第3の辺部2cを上方から押しつぶすことにより、図13に示すように第3の辺部2cを第4の辺部2dと同様の形状に成形する。
以下、上記と同様の動作を繰り返すことにより、所定の数のコイル組合体2をn個ずつ離れた一対のスロット1b内に順次挿入し、全てのスロット1b内にコイル組合体2が装着されてコイル4が構成され、鉄心1と共に回転電機の固定子10が完成する。
【0015】
このように上記実施の形態1によれば、線材3が矩形状に巻回され、所定のスロット1bとこれからn個離れた位置のスロット1bに装着される第1および第2の辺部2a、2bを、整列巻きしてスロット1b内に嵌挿可能な厚さに積層し、これら第1および第2の辺部2a、2bの一端側に連なる第3の辺部2cを、各線材3が第1および第2の辺部2a、2bの延在方向にずれるように一列に積層し、第1および第2の辺部2a、2bの他端側に連なる第4の辺部2dを、鉄心1の形状に沿った弧状に形成することにより複数のコイル組合体2を構成し、コイル組合体2の姿勢を保持して鉄心1の一端側から接近させ、第3の辺部2cを両スロット1bの開口部を通過させるとともに、さらに一端側から他端側に移動させることにより、第1および第2の辺部2a、2bを両スロット1b内に導いて装着するようにしているので、開口部の幅がスロット1bの幅より狭く形成された鉄心1においても、第1および第2の辺部2a、2bが整列巻きされたコイル組合体2をスロット1b内に装着することができるため、コイル4の占積率を高めモータの効率を向上させることが可能になる。
【0016】
なお、上記構成では、コイル組合体2の第3の辺部2cを、各線材3が第1および第2の辺部2a、2bの延在方向にずれるように一列に積層しているが、勿論これに限定されるものではなく、要するに図2中tで示す部分をスロット1bの開口部の幅ω1より小さな厚さに積層して、第3の辺部2cが開口部を通過できるようにすれば良く、上記と同様の効果を得ることができる。
又、コイル組合体2の姿勢を両コイル保持部材5、6で保持して、鉄心1に装着するようにしているが、接着等で固定して姿勢を保持するようにしても良く、さらに又、樹脂で固めて姿勢を保持するようにすれば、別にスロット絶縁を施す必要がなく、コストの低減を図ることができる。さらに又、コイル組合体2の第3の辺部2cを、成形部材9により押しつぶして成形することにより小形化が可能になる。
【0017】
実施の形態2.
図14はこの発明の実施の形態2における回転電機の固定子の要部の構成を示す断面図である。
図において、上記実施の形態1におけると同様な部分は同一符号を付して説明を省略する。11は図示はしないが上記実施の形態1におけるコイル組合体2と同様に第1ないし第3の辺部を有するコイル組合体で、第1および第2の辺部11a、11bに位置する部位が、少なくとも積層方向に隣接する当接面同士が偏平状に成形されて整列巻きされている。
【0018】
このように上記実施の形態2によれば、コイル組合体11の第1および第2の辺部11a、11bに位置する部位の少なくとも積層方向に隣接する当接面同士を偏平状に成形して整列巻きするようにしているので、整列が容易となりさらに占積率を高め、モータの効率を向上させることが可能になる。
なお、上記構成では、偏平状に成形する部位を第1および第2の辺部11a、11bとしたが、第1ないし第4の辺部全ての部位を偏平状に成形しても良いことは言うまでもない。又、上記各実施の形態1、2では、1つのスロットに1組のコイル組合体が挿入された場合について説明したが、これに限定されるものではなく、複数個のコイル組合体を積重して挿入するものに適用しても、同様の効果を発揮し得ることは言うまでもない。
【0019】
【発明の効果】
以上のように、この発明の請求項1によれば、矩形状に巻回し、内周面に所定の間隔を介して形成されるスロットの幅よりスロットの開口部の幅が狭く形成された鉄心の少なくとも対応する一対のスロットにそれぞれ装着される第1および第2の辺部を整列巻きして両スロット内に嵌挿可能な厚さに、第1および第2の辺部の各一端側に連なる第3の辺部を第1および第2の辺部の延在方向にずらして、積層方向の厚さがスロットの開口部の幅より小さな厚さにそれぞれ積層して複数のコイル組合体を形成する工程と、
コイル組合体の姿勢を、コイル挿入方向に移動すると共に所定の状態でコイル組合体との係合を解くことができるコイル保持部材で保持する工程と、
各コイル組合体を鉄心の一端側から接近させて第3の辺部を両スロットの開口部を通過させるとともに、鉄心の一端側から他端側に移動させることにより第1および第2の辺部を両スロット内に導きそれぞれ装着する工程とを包含するようにしたので、コイルの占積率を高め効率の向上を図ることが可能な回転電機の固定子の製造方法を提供することができる。
【0020】
又、この発明の請求項2によれば、請求項1において、線材の少なくともスロットにそれぞれ装着される第1および第2の辺部に位置する部位の積層方向に隣接する当接面同士 を偏平状に成形して整列巻きするようにしたので、さらにコイルの占積率を高め効率の向上を図ることが可能な回転電機の固定子の製造方法を提供することができる。
【0021】
又、この発明の請求項3によれば、請求項1又は請求項2において、各コイル組合体の第3の辺部を成形して出っ張りを抑制する工程を包含したので、小形化を図ることが可能な回転電機の固定子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1における回転電機の固定子の構成を示し、(A)は正面断面図、(B)は部分詳細図である。
【図2】 図1におけるコイル組合体の構成を示す斜視図である。
【図3】 図2におけるコイル組合体が鉄心に装着された状態を示す正面図である。
【図4】 図3におけるコイル組合体の鉄心への装着手順を示し、(A)は装着前の斜視図、(B)は装着後の斜視図である。
【図5】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図6】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図7】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図8】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図9】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図10】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図11】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図12】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図13】 図1における回転電機の固定子の製造の一工程を示す図である。
【図14】 この発明の実施の形態2における回転電機の固定子の要部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鉄心、1a 磁極テイース部、1b スロット、2,11 コイル組合体、
2a,11a 第1の辺部、2b,11b 第2の辺部、2c 第3の辺部、
2d 第4の辺部、3 線材、4 コイル、5,6 コイル保持部材、
7 コイル挿入治具、7a ワイヤガイドブレード、7b ストリッパ、
8 コイル案内部材。
Claims (3)
- 巻回し、内周面に所定の間隔を介して形成されるスロットの幅より上記スロットの開口部の幅が狭く形成された鉄心の少なくとも対応する一対の上記スロットにそれぞれ装着される第1および第2の辺部を整列巻きして上記両スロット内に嵌挿可能な厚さに、上記第1および第2の辺部の各一端側に連なる第3の辺部を上記第1および第2の辺部の延在方向にずらして、積層方向の厚さが上記スロットの開口部の幅より小さな厚さにそれぞれ積層して複数のコイル組合体を形成する工程と、
上記コイル組合体の姿勢を、コイル挿入方向に移動すると共に所定の状態で上記コイル組合体との係合を解くことができるコイル保持部材で保持する工程と、
上記各コイル組合体を上記鉄心の一端側から接近させて上記第3の辺部を上記両スロットの開口部を通過させるとともに、上記鉄心の一端側から他端側に移動させることにより第1および第2の辺部を上記両スロット内に導きそれぞれ装着する工程とを包含したことを特徴とする回転電機の固定子の製造方法。 - 線材の少なくともスロットにそれぞれ装着される第1および第2の辺部に位置する部位は、積層方向に隣接する当接面同士を偏平状に成形して整列巻きするようにしていることを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子の製造方法。
- 各コイル組合体の第3の辺部を成形して出っ張りを抑制する工程を包含したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機の固定子の製造方法。
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