JP3798834B2 - 重金属含有飛灰の固化処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重金属含有飛灰の固化処理方法に関し、特に都市ゴミ焼却飛灰など、鉛の溶出量が多い重金属含有飛灰の固化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の大量生産、大量消費、大量廃棄という社会構造に伴い、一般ゴミや産業廃棄物の発生量が増大している。
このような一般ゴミや産業廃棄物等の都市ゴミを、焼却場で焼却すると、燃焼排ガスに同伴して灰が飛散する。この灰は、バグフィルタや電気集塵機等により捕捉され、埋め立て等の最終処分が成されている。
【0003】
ところで、こうして得られる飛灰中には、都市ゴミ中の揮発性金属化合物に由来する重金属、例えば鉛、カドミウム、水銀等の重金属が含有されており、この飛灰の埋め立てに当たっては、飛灰中の重金属の溶出を防止する処置を施す必要がある。
【0004】
従来、このような飛灰の重金属溶出防止方法としては、溶融、セメント固化、薬剤処理、酸抽出などが提案されており、セメント(無機)系固化材による固化処理方法についても、種々提案されている。
【0005】
例えば、特開平5−305280号公報には、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸質物質を飛灰に加え、飛灰中に含まれる重金属やアルカリ土類金属を不溶化して無害化する技術が開示されている。
また、特開平6−198273号公報には、活性アルミナによる飛灰の化学組成に応じた処理方法が開示されている。
さらに、鉛などの重金属イオンの溶出量は、pHの影響が大きいことが知られているため、特開平3−109984号公報、特開平4−358582号公報、特開平5−185054号公報、特開平7−155725号公報等には、硫酸アルミニウム等のpH低減材により飛灰のpHを調整して無害化、固化する処理方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらここで、都市ゴミの焼却飛灰などの重金属含有飛灰は、中性飛灰、アルカリ飛灰などのいくつかの種類に分類可能で、各々異なった化学組成やpH値を有している。
従って、この都市ゴミ焼却飛灰などの重金属含有飛灰を効果的に固化処理するには、上記化学組成やpH値を考慮した飛灰の種類に応じた処理方法が必要であるが、上述したこれまでに開示されている技術は、各々特定の飛灰に対して効果的な処理方法を開示したに過ぎず、部分的であり、またその効果も十分なものではなかった。
【0007】
例えば、上記特開平5−305280号公報に記載されたケイ酸ナトリウム等のケイ酸質物質による固化処理方法は、飛灰中のカルシウムとケイ酸質物質とが反応して生成する水和物により重金属の溶出が防止されるものであるため、当然にカルシウムの含有量が少ない飛灰に対しては効果が小さい。
また、特開平6−198273号公報には、飛灰の化学組成に応じた処理方法が開示されているが、飛灰のpHを考慮していないために、この方法が常に効果的とはいえず、例えば、この方法を中性飛灰に適用した場合には、活性アルミナとして例示されているC3 A、C12A7 等は飛灰のpH値を上昇させる作用があるため、鉛イオン等の溶出量を十分には低減できない。
さらに、特開平3−109984号公報、特開平4−358582号公報及び特開平5−185054号公報には、高アルカリ性飛灰の処理方法について示されており、pH低減材を使用することによる効果は示されているが、飛灰の化学組成が考慮されていないため、飛灰の発生或いは集塵工程中において苛性ソーダで処理された飛灰、或いは中性飛灰などに対しては効果が十分ではない。
また、特開平7−155725号公報には、中性飛灰の処理方法について示されているが、この方法はアルカリ性飛灰には適用できない。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記都市ゴミの焼却飛灰など、特に鉛の溶出量が多い重金属含有飛灰に対し、その種類に応じた重金属含有飛灰の固化処理方法について鋭意研究した結果、
(1) 重金属含有飛灰を、該重金属含有飛灰中のカルシウム量と、該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHに基づいて分類し、該分類された重金属含有飛灰の種類に応じて、固化処理材の種類を変えて処理すればよいこと、また、
(2) 特定のアーウィン系セメントは、都市ゴミ焼却飛灰など、特に鉛の溶出量が多い重金属含有飛灰の固化処理材として有効であること、
の知見を得、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、重金属含有飛灰を、該重金属含有飛灰中のカルシウム量と、該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHに基づいて分類し、該分類された重金属含有飛灰の種類に応じて、
a)ケイ酸質物質、或いは
b)アーウィン系セメント、或いは
c)アーウィン系セメント及びpH低減材
のいずれかの固化処理材を使い分けて使用する重金属含有飛灰の固化処理方法であって、 上記重金属含有飛灰のカルシウム量とpHに基づく分類が、
(1) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が30重量%を越えるもの、
(2) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25〜30重量%のもの、
(3) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5未満のもの、
(4) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5〜12.5のもの、
(5) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが12.5を越えるもの、
の5種類であり、
上記 (1) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記a)の固化処理材を、上記 (2) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記a)或いはb)の固化処理材を、上記 (3) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記b)の固化処理材を、上記 (4) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記b)或いはc)の固化処理材を、上記 (5) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記c)の固化処理材を各々使用する重金属含有飛灰の固化処理方法とした。
【0010】
ここで、上記重金属含有飛灰のカルシウム量とpHに基づく分類は、
▲1▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が30重量%を越えるもの、
▲2▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25〜30重量%のもの、
▲3▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5未満のもの、
▲4▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5〜12.5のもの、
▲5▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが12.5を越えるもの、
の5種類とし、
上記▲1▼に分類された重金属含有飛灰に対しては上記a)の固化処理材を、上記▲2▼に分類された重金属含有飛灰に対しては上記a)或いはb)の固化処理材を、上記▲3▼に分類された重金属含有飛灰に対しては上記b)の固化処理材を、上記▲4▼に分類された重金属含有飛灰に対しては上記b)或いはc)の固化処理材を、上記▲5▼に分類された重金属含有飛灰に対しては上記c)の固化処理材を各々使用することが好ましい。
【0011】
また、上記重金属含有飛灰の固化処理方法中、ケイ酸質物質を重金属含有飛灰に使用する場合においては、ケイ酸質物質を重金属含有飛灰に対して5〜50重量%添加する、或いは重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値と、ケイ酸質物質中のケイ素量を二酸化けい素の量に換算した値との重量比が、CaO/SiO2 =1.5〜15.0となるようにケイ酸質物質を重金属含有飛灰に添加することが好ましい。
【0012】
さらに、上記重金属含有飛灰の固化処理方法中、アーウィン系セメントを重金属含有飛灰に使用する場合においては、アーウィン系セメントを重金属含有飛灰に対して5重量%以上添加することが好ましく、また、上記重金属含有飛灰の固化処理方法中、アーウィン系セメント及びpH低減材を重金属含有飛灰に使用する場合においては、アーウィン系セメントを重金属含有飛灰に対して5重量%以上、pH低減材を重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水からなる混練物のpHが8〜12となる量を添加することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記したようにアーウィン系セメント単味、或いはアーウィン系セメントとpH低減材との組み合わせからなる重金属含有飛灰の固化処理材を使用することとした。
【0014】
ここで、上記アーウィン系セメントとpH低減材との組み合わせからなる重金属含有飛灰の固化処理材は、アーウィン系セメントとpH低減材との重量比が、10:1〜1:1であることが好ましい。
【0015】
また、本発明でいう上記アーウィン系セメントとは、アーウィンを20重量%以上含むセメント組成物をいい、中でもアーウィンを40〜65重量%、石こうを2〜20重量%含有し、残部がダイカルシウムシリケートを主体としたものであることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、上記した本発明にかかる重金属含有飛灰の固化処理方法を詳細に説明する。
【0017】
先ず、都市ゴミ焼却飛灰など、特に鉛の溶出量が多い重金属含有飛灰の成分分析(カルシウム量の測定)は、「JIS M 8853(アルミノけい酸質セラミックス原料の分析方法)」に準じて行っても良いし、又は、蛍光X線分析装置等の分析装置を用いて行っても良い。
また、重金属含有飛灰の懸濁水溶液の調整には、蒸留水、イオン交換水等を使用し、得られた重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHの測定方法としては、例えば、「環境庁告示13号法」に準じた測定方法が挙げられる。
上記重金属含有飛灰の成分分析及びpHの測定は、重金属含有飛灰を固化処理するたび毎に行うのが最も好ましいが、ロット毎、或いは定期的に行うこととしても良い。
【0018】
次に、測定を行った上記重金属含有飛灰を、該重金属含有飛灰中のカルシウム量とpHに基づいて分類する。
その分類は、
▲1▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が30重量%を越えるもの、
▲2▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25〜30重量%のもの、
▲3▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5未満のもの、
▲4▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5〜12.5のもの、
▲5▼ 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが12.5を越えるもの、
の5種類とする。
【0019】
上記▲1▼に分類された重金属含有飛灰、即ち酸化カルシウムを30重量%以上含有する重金属含有飛灰に対しては、ケイ酸質物質及び混練水を添加し、カルシウムシリケート系の水和物を生成させて重金属の溶出を防止する。
ここで、重金属含有飛灰に添加する上記ケイ酸質物質としては、ケイ酸ナトリウム、シリカフューム、ケイ酸アルミニウム、酸性白土等が挙げられる。また、混練水としては、水道水、河川水、湖沼水、地下水等を使用する。
【0020】
重金属含有飛灰にケイ酸質物質を添加して固化処理する場合においては、ケイ酸質物質は重金属含有飛灰に対して5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%添加するか、或いは重金属含有飛灰中の酸化カルシウムとケイ酸質物質中の二酸化ケイ素との比が、重量比でCaO/SiO2 =1.5〜15.0、好ましくはCaO/SiO2 =2.0〜8.0となるようにケイ酸質物質を添加する。
これは、ケイ酸質物質の添加量が5重量%未満である場合、或いは重金属含有飛灰中の酸化カルシウムとケイ酸質物質中の二酸化ケイ素との重量比が15.0を越えてしまう場合には、カルシウムシリケート系水和物の生成量が少なく、重金属の溶出量が多くなるため好ましくない。また、ケイ酸質物質の添加量が50重量%を越える場合、或いは重金属含有飛灰中の酸化カルシウムとケイ酸質物質中の二酸化ケイ素との重量比が1.5未満である場合には、未反応のケイ酸質物質が多量に残存し、正常に固化せず、重金属の溶出量が多くなるため好ましくない。
【0021】
また、上記ケイ酸質物質と共に添加する混練水の量は、重金属含有飛灰とケイ酸質物質との合計量100重量部に対し、15〜60重量%添加するのが好ましい。
これは、混練水の添加量が15重量%未満では、重金属含有飛灰、ケイ酸質物質及び混練水の練り混ぜが困難となり好ましくない。また、混練水の添加量が60重量%を越えると、固化体が多孔質となり、重金属の溶出量が多くなるので好ましくない。
【0022】
上記▲2▼に分類された重金属含有飛灰、即ち酸化カルシウムの含有量が25〜30重量%の重金属含有飛灰に対しては、上記ケイ酸質物質及び混練水を添加し、カルシウムシリケート系の水和物を生成させて重金属の溶出を防止するか、或いは下記する特定のアーウィン系セメント及び混練水を添加してエトリンガイトを生成させて重金属の溶出を防止する。
また、上記▲3▼に分類された重金属含有飛灰、即ち酸化カルシウムの含有量が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5未満の重金属含有飛灰に対しては、下記する特定のアーウィン系セメント及び混練水を添加してエトリンガイトを生成させて重金属の溶出を防止する。
【0023】
ここで、重金属含有飛灰にアーウィン系セメントを添加して固化処理する場合においては、該アーウィン系セメントは、アーウィンを40〜65重量%、石こうを2〜20重量%含有し、残部がダイカルシウムシリケートを主体としたものであることが好ましい。
これは、アーウィンの含有量が40重量%未満では、エトリンガイトの生成量が少なく、重金属の溶出量が多くなるため好ましくない。また、アーウィンの含有量が65重量%を越えると、固化体の長期耐久性が弱くなり、固化体にひび割れが発生したり脆くなるので好ましくない。また、石こうの含有量が2重量%未満では、エトリンガイトの生成量が少なく、重金属の溶出量が多くなる。また逆に石こうの含有量が20重量%越えると、固化体が脆弱となり、重金属の溶出量が多くなるため好ましくない。
【0024】
また、上記固化処理材として使用するアーウィン系セメントの粉末度は、ブレーン比表面積で2500〜5000cm2/g が好ましい。
これは、ブレーン比表面積が2500cm2/g 未満のアーウィン系セメントでは、固化体の強度が弱くなり、重金属の溶出量が多くなるので好ましくない。また、ブレーン比表面積が5000cm2/g を越えるアーウィン系セメントは、その製造コストが高くなるので好ましくない。
【0025】
上記アーウィン系セメントは、アーウィンを40〜65重量%、石こうを2〜20重量%含有し、残部がダイカルシウムシリケートを主体としたものであるアーウィンクリンカを粉砕したものを用いても良いし、又はアーウィンを40〜65重量%、石こうを2〜20重量%、残部がダイカルシウムシリケートを主体としたものとなるようにアーウィンクリンカの粉砕物に石こうを加えて調整したアーウィン系セメントを用いても良い。
ここで、アーウィンクリンカに加える上記石こうとしては、無水石こう、半水石こう、二水石こう等の石こうを用いることができる。
【0026】
重金属含有飛灰に上記アーウィン系セメントを添加して固化処理する場合においては、アーウィン系セメントは重金属含有飛灰に対して5重量%以上、好ましくは10〜30重量%添加することが好ましい。
これは、アーウィン系セメントの添加量が5重量%未満では、エトリンガイトの生成量が少なく、重金属の溶出量が多くなるため好ましくない。
【0027】
また、上記アーウィン系セメントと共に重金属含有飛灰に添加する混練水の量は、重金属含有飛灰とアーウィン系セメントとの合計量100重量部に対し、15〜60重量%添加するのが好ましい。
これは、混練水の添加量が15重量%未満では、重金属含有飛灰、アーウィン系セメント及び混練水の練り混ぜが困難となり好ましくない。また、混練水の添加量が60重量%を越えると、固化体が多孔質となり、重金属の溶出量が多くなるので好ましくない。
【0028】
上記▲4▼に分類された重金属含有飛灰、即ち酸化カルシウムの含有量が25重量%未満であり、かつ懸濁水溶液のpHが11.5〜12.5の重金属含有飛灰に対しては、上記特定のアーウィン系セメント単味、或いは上記特定のアーウィン系セメントとpH低減材とを組み合わせた固化処理材と混練水を添加してエトリンガイトを生成させて重金属の溶出を防止する。
また、上記▲5▼に分類された重金属含有飛灰、即ち酸化カルシウムの含有量が25重量%未満であり、かつ懸濁水溶液のpHが12.5を越える重金属含有飛灰に対しては、上記特定のアーウィン系セメントとpH低減材とを組み合わせた固化処理材と混練水を添加してエトリンガイトを生成させて重金属の溶出を防止する。
【0029】
ここで、重金属含有飛灰にアーウィン系セメントとpH低減材とを組み合わせた固化処理材を使用する場合においては、アーウィン系セメントは重金属含有飛灰に対して5重量%以上、好ましくは10〜30重量%添加する。また、pH低減材は重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水のからなる混練物のpHが8〜12となる量添加する。
これは、アーウィン系セメントの添加量が5重量%未満では、エトリンガイトの生成量が少なく、重金属の溶出量が多くなるため好ましくない。また、重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水からなる混練物のpHが8未満では、重金属の溶出量が多くなるため好ましくなく、また重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水からなる混練物のpHが12を越えてしまっても、重金属の溶出量、特に鉛の溶出量が多くなるため好ましくない。
なお、アーウィン系セメントと組み合わせて使用する上記pH低減材としては、過リン酸石灰、硫酸バンド等が挙げられる。
【0030】
上記アーウィン系セメントとpH低減材との組み合わせからなる重金属含有飛灰の固化処理材は、アーウィン系セメントとpH低減材の重量比が10:1〜1:1であることが好ましい。
これは、pH低減材1重量部に対してアーウィン系セメントが10重量部を越えると、重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水からなる混練物のpHが12を越え、重金属の溶出量、特に鉛の溶出量が多くなるので好ましくない。また、pH低減材1重量部に対してアーウィン系セメントが1重量部未満では、重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水からなる混練物のpHが8未満となる上、固化材が少なく正常に固化しなくなり、やはり重金属の溶出量が多くなるため好ましくない。
なお、上記重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水からなる混練物のpH測定は、例えば混練物を吸引ろ過して得られたろ液のpHを測定することにより行う。
【0031】
また、重金属含有飛灰にアーウィン系セメントとpH低減材を組み合わせた固化処理材を使用する場合においては、混練水は重金属含有飛灰とアーウィン系セメントとpH低減材との合計量100重量部に対し、15〜60重量%添加するのが好ましい。
これは、混練水の添加量が15重量%未満では、重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水の練り混ぜが困難となり好ましくない。また混練水の添加量が60重量%を越えると、固化体が多孔質となり、重金属の溶出量が多くなるので好ましくない。
【0032】
上述した重金属含有飛灰とケイ酸質物質、或いはアーウィン系セメント、或いはアーウィン系セメントとpH低減材との組み合わせからなる各固化処理材と混練水との混練には、ホバートミキサ、強制練りミキサ、二軸ミキサ、オムニミキサ、アイリッヒミキサ、アッシュルーダー、バイブロニーダー等の各ミキサを使用することができる。
【0033】
また、上記重金属含有飛灰と各固化処理材と混練水とを混練した混練物の成形には、押し出し成形、振動締め固め成形等の各成形方法で行うことができる。
【0034】
さらに、得られた各成形体の養生方法としては、気乾養生、湿空養生、水中養生、加熱促進養生(蒸気養生)等で行うことができ、また、これらの養生方法を併用しても良い。
【0035】
【試験例】
以下、上記した本発明にかかる重金属含有飛灰の固化処理方法の作用・効果を裏付ける試験例につき説明する。
【0036】
−使用材料−
I.使用飛灰
使用した飛灰の酸化カルシウム含有量とpH値を表1に示す。
なお、飛灰の酸化カルシウム含有量は、「JIS M 8853(アルミノけい酸質セラミックス原料の分析方法)」に準じて測定した。また、飛灰のpH値は、「環境庁告示13号法」に準じて調整した溶出水溶液のpHを、ハンナ株式会社製のpHメーターを用いて測定することにより行った。
また、各使用飛灰の鉛、カドミウム及び砒素の含有量を、表1に併記する。
【0037】
【表1】
【0038】
II.使用したケイ酸質物質及びpH低減材
ケイ酸質物質 : 日本化学株式会社製 ケイ酸ソーダ3号
pH低減材 : 日本化学株式会社製 過リン酸石灰
【0039】
III.使用したアーウィン系セメント
アーウィン系セメントは、アーウィンを60重量%、石こうを1重量%、ダイカルシウムシリケートを32重量%、そしてカルシウムアルミノフェライトを7重量%を含有するアーウィンクリンカを、ボールミルで粉砕し、これにフッ酸無水石こう(第一セメント株式会社製)を加えて調整したものを使用した。
表2に使用したアーウィン系セメントの鉱物組成とブレーン比表面積を示す。
なお、アーウィン系セメントのブレーン比表面積の測定は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じて測定した。
【0040】
【表2】
【0041】
−上記使用材料の配合及び練り混ぜ−
上記使用材料を、表3に示す配合割合で各々ホバートミキサ(ホバート社製)に投入し、2分間練り混ぜて混練物を製造した。
なお、混練物のpH測定は、混練直後の混練物をSIBATA社製のアスピレーターを用いて吸引ろ過して得たろ液のpHを、ハンナ株式会社製のpHメーターを用いて測定することにより行った。
【0042】
【表3】
【0043】
−混練物の成形及び養生−
練り混ぜ後、各々の混練物を使用して、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じて4×4×16cmの供試体を成形し、該供試体を24時間湿空養生(20℃、80%RH)後、脱型し、3日間湿空養生(20℃、80%RH)した。
【0044】
−各供試体の溶出試験−
養生後の各供試体を使用して、「環境庁告示13号法」に準じて溶出水溶液を調整し、「JIS K 0102(排水の分析方法)」に準じて鉛の濃度を測定し、各供試体からの鉛の溶出量を求めた。
なお、一部の供試体については、カドミウム及び砒素の溶出量についても測定した。
その結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
−試験結果−
表4中、試験例1〜3及び試験例16〜18は、酸化カルシウムを30重量%を越える量含有する飛灰Aに対して、ケイ酸質物質であるケイ酸ナトリウムの添加量を種々変えて固化処理した場合の評価をするために行った試験結果である。その結果、本発明で規定する5〜50重量%の添加量及び飛灰中の酸化カルシウムとケイ酸質物質中の二酸化ケイ素との比が重量比でCaO/SiO2 =1.5〜15.0となる添加量の範囲(試験例1〜3)では、無添加の場合(試験例16)と比較して、鉛の溶出量が非常に少なくなっていることが判明する。
また、本発明で規定する範囲よりケイ酸質物質の添加量が少ない場合(試験例17)、或いは多い場合(試験例18)には、鉛の溶出防止効果が十分ではないことが判明する。
なお、カドミウム及び砒素の溶出量についても、本発明で規定する添加量の範囲内にある場合(試験例2)には、埋設判定基準(0.3ppm)以下の溶出量に抑えることができることが判明する。
【0047】
表4中、試験例4、5及び試験例19は、酸化カルシウムを25〜30重量%含有する飛灰Bに対して、ケイ酸質物質或いは特定のアーウィン系セメントのいずれかを使用して固化処理した場合の評価をするために行った試験結果である。
その結果、酸化カルシウムを25〜30重量%含有する飛灰に対しは、ケイ酸質物質或いは特定のアーウィン系セメントのいずれの固化処理材を使用も(試験例4、5)、無添加の場合(試験例19)と比較して、鉛の溶出量が非常に少なくなっていることが判明する。また、カドミウム及び砒素の溶出量についても、埋設判定基準(0.3ppm)以下の溶出量に抑えることができることが判明する。
【0048】
表4中、試験例6〜8及び試験例20〜23は、酸化カルシウムの含有量が25重量%未満であり、かつ飛灰懸濁水溶液のpHが11.5未満である飛灰Cに対して、種々の鉱物組成のアーウィン系セメントを、その添加量を種々変えて固化処理した場合の評価をするために行った試験結果である。
その結果、本発明で規定する5重量%以上の添加量(試験例6〜8)では、無添加の場合(試験例20)と比較して、鉛の溶出量が非常に少なくなっていることが判明する。
また、本発明で規定する範囲より添加量が少ない場合(試験例21)には、鉛の溶出防止効果が十分ではないことが判明する。
さらに、本発明で規定する鉱物組成のアーウィン系セメントA(アーウィンを40〜65重量%、石こうを2〜20重量%含有し、残部がダイカルシウムシリケートを主体としたもの)以外のアーウィン系セメントB及びC(試験例22、23)では、鉛の溶出防止効果が十分ではないことが判明する。
なお、カドミウム及び砒素の溶出量についても、本発明で規定する鉱物組成及び添加量の範囲内にある場合(試験例7)には、埋設判定基準(0.3ppm)以下の溶出量に抑えることができることが判明する。
【0049】
表4中、試験例9、10及び試験例24は、酸化カルシウムの含有量が25重量%未満であり、かつ飛灰懸濁水溶液のpHが11.5〜12.5の飛灰Dに対して、上記特定のアーウィン系セメント単味或いは上記特定のアーウィン系セメントとpH低減材とを組み合わせた固化処理材のいずれかを使用して固化処理した場合の評価をするために行った試験結果である。
その結果、酸化カルシウムの含有量が25重量%未満であり、かつ飛灰懸濁水溶液のpHが11.5〜12.5の飛灰に対しては、特定のアーウィン系セメント単味或いは特定のアーウィン系セメントとpH低減材とを組み合わせた固化処理材のいずれを使用して固化処理しても(試験例9、10)、無添加の場合(試験例24)と比較して鉛の溶出量が非常に少なくなっていることが判明する。また、カドミウム及び砒素の溶出量についても、埋設判定基準(0.3ppm)以下の溶出量に抑えることができることが判明する。
【0050】
表4中、試験例11〜13及び試験例25〜28は、酸化カルシウムの含有量が25重量%未満であり、かつ飛灰懸濁水溶液のpHが12.5を越える飛灰Eに対して、本発明で規定する特定のアーウィン系セメント及びpH低減材である過リン酸石灰の添加量を種々変えて固化処理した場合の評価をするために行った試験結果である。
その結果、本発明で規定する5重量%以上のアーウィン系セメントの添加量、及び飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水からなる混練物のpHが8〜12となる過リン酸石灰の添加量(試験例11〜13)では、無添加の場合(試験例25)と比較して、鉛の溶出量が非常に少なくなっていることが判明する。
また、本発明で規定する範囲よりアーウィン系セメントの添加量が少ない場合(試験例26)には、鉛の溶出防止効果が十分ではないことが判明する。
さらに、本発明で規定する鉱物組成のアーウィン系セメントA(アーウィンを40〜65重量%、石こうを2〜20重量%含有し、残部がダイカルシウムシリケートを主体としたもの)以外のアーウィン系セメントB及びC(試験例27、28)では、鉛の溶出防止効果が十分ではないことが判明する。
なお、カドミウム及び砒素の溶出量についても、本発明で規定する鉱物組成及び添加量の範囲内にある場合(試験例12)には、埋設判定基準(0.3ppm)以下の溶出量に抑えることができることが判明する。
【0051】
表4中、試験例14、15及び試験例29、30は、酸化カルシウムの含有量が25重量%未満であり、かつ飛灰懸濁水溶液のpHが12.5を越える飛灰Eに対して、特定のアーウィン系セメントとpH低減材との組み合わせからなる固化処理材のアーウィン系セメントとpH低減材との配合割合を種々変えたものを添加して固化処理した場合の評価をするために行った試験結果である。
その結果、本発明で規定するアーウィン系セメントとpH低減材との配合が重量比で10:1〜1:1の範囲の固化処理材(試験例13、14)では、鉛の溶出量が非常に少なくなっていることが判明する。
また、pH低減材1重量部に対してアーウィン系セメントが10重量部を越える場合(試験例29)、或いはpH低減材1重量部に対してアーウィン系セメントが1重量部未満である場合(試験例30)には、鉛の溶出量が多くなることが判明する。
【0052】
【発明の効果】
以上、説明した本発明は、重金属含有飛灰を、該重金属含有飛灰中のカルシウム量と、該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHに基づいて分類し、該分類された重金属含有飛灰の種類に応じて、
a)ケイ酸質物質、或いは
b)アーウィン系セメント、或いは
c)アーウィン系セメント及びpH低減材
のいずれかの固化処理材を使い分けて使用する重金属含有飛灰の固化処理方法であって、 上記重金属含有飛灰のカルシウム量とpHに基づく分類が、
(1) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が30重量%を越えるもの、
(2) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25〜30重量%のもの、
(3) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5未満のもの、
(4) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5〜12.5のもの、
(5) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが12.5を越えるもの、
の5種類であり、
上記 (1) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記a)の固化処理材を、上記 (2) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記a)或いはb)の固化処理材を、上記 (3) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記b)の固化処理材を、上記 (4) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記b)或いはc)の固化処理材を、上記 (5) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記c)の固化処理材を各々使用することに最大の特徴があるものであり、これにより、アルカリ飛灰、中性飛灰などの種々の重金属含有飛灰からの重金属、特に鉛の溶出量を埋立判定基準(0.3ppm)以下の溶出量に抑えた状態で効果的に固化処理することが可能となる。
Claims (5)
- 重金属含有飛灰を、該重金属含有飛灰中のカルシウム量と、該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHに基づいて分類し、該分類された重金属含有飛灰の種類に応じて、
a)ケイ酸質物質、或いは
b)アーウィン系セメント、或いは
c)アーウィン系セメント及びpH低減材
のいずれかの固化処理材を使い分けて使用する重金属含有飛灰の固化処理方法であって、 上記重金属含有飛灰のカルシウム量とpHに基づく分類が、
(1) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が30重量%を越えるもの、
(2) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25〜30重量%のもの、
(3) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5未満のもの、
(4) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが11.5〜12.5のもの、
(5) 該重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値が25重量%未満であり、かつ該重金属含有飛灰懸濁水溶液のpHが12.5を越えるもの、
の5種類であり、
上記 (1) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記a)の固化処理材を、上記 (2) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記a)或いはb)の固化処理材を、上記 (3) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記b)の固化処理材を、上記 (4) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記b)或いはc)の固化処理材を、上記 (5) に分類された重金属含有飛灰に対しては上記c)の固化処理材を各々使用することを特徴とする、重金属含有飛灰の固化処理方法。 - 上記重金属含有飛灰の固化処理方法中、ケイ酸質物質を重金属含有飛灰に使用する場合においては、ケイ酸質物質を重金属含有飛灰に対して5〜50重量%添加することを特徴とする、請求項1記載の重金属含有飛灰の固化処理方法。
- 上記重金属含有飛灰の固化処理方法中、ケイ酸質物質を重金属含有飛灰に使用する場合においては、重金属含有飛灰中のカルシウム量を酸化カルシウムの量に換算した値と、ケイ酸質物質中のケイ素量を二酸化けい素の量に換算した値との重量比が、CaO/SiO2 =1.5〜15.0となるようにケイ酸質物質を重金属含有飛灰に添加することを特徴とする、請求項1記載の重金属含有飛灰の固化処理方法。
- 上記重金属含有飛灰の固化処理方法中、アーウィン系セメントを重金属含有飛灰に使用する場合においては、アーウィン系セメントを重金属含有飛灰に対して5重量%以上添加することを特徴とする、請求項1記載の重金属含有飛灰の固化処理方法。
- 上記重金属含有飛灰の固化処理方法中、アーウィン系セメント及びpH低減材を重金属含有飛灰に使用する場合においては、アーウィン系セメントを重金属含有飛灰に対して5重量%以上、pH低減材を重金属含有飛灰、アーウィン系セメント、pH低減材及び混練水からなる混練物のpHが8〜12となる量を添加することを特徴とする、請求項1記載の重金属含有飛灰の固化処理方法。
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