JP3798206B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用シートに関し、詳しくは、光沢及びインク吸収性が高く、更に印字後の保存性(耐光性及び耐ガス性)に優れたインクジェット記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット方式によるプリンターは、多色化が容易なことや印字騒音が低いこと等から近年急速に普及した。この方式では記録用シートに向けてインク液滴をノズルから高速で射出するものであり、該記録シートは優れた印字性はもちろん、印字後の画像の変色が少ないことが要求される。
【0003】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0004】
例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0005】
また、特公平3−56552号、特開平2−188287号、同平10−81064号、同平10−119423号、同平10−175365号、同平10−193776号、同10−203006号、同10−217601号、同平11−20300号、同平11−20306号、同平11−34481号公報等公報には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いることが開示されている。この気相法シリカは、一次粒子の平均粒径が数nm〜数十nmの超微粒子であり、高い光沢が得られるという特徴がある。近年、フォトライクの記録シートが要望される中、益々光沢性が重要視されてきており、ポリオレフィン樹脂被覆紙(紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたもの)やポリエステルフィルム等の耐水性支持体上に気相法シリカを主体とするインク受容層が塗設された記録材料が提案されている。
【0006】
従来から一般的に用いられてきた紙支持体は、それ自体がインク吸収層としての役割を有していたが、前述したポリオレフィン樹脂被覆紙等の耐水性支持体は、紙支持体と違ってインクを吸収することができないため、支持体上に設けられたインク受容層のインク吸収性が重要であり、インク受容層の空隙容量を高める必要がある。従って、無機微粒子の含有量を多くし、更に、空隙率を高めるために無機微粒子に対するバインダーの比率を低減する必要があった。
【0007】
上述したような無機固体微粒子で形成された空隙層を有するインク受容層からなる記録シートは、印字性を高めるための有効な手段の一つではあるが、印字された記録シートの画像が保存中に光や空気中の微量ガスによって変色し、画質が著しく低下する欠点があった。特に、無機微粒子に対するバインダー量を低減することによって、更に保存性が低下することが判明した。
【0008】
光による退色を防止あるいは低下させるために、特開昭57−74192号、同57−74193号、特開平1−95091号等では紫外線吸収剤や酸化防止剤等をオイル分散としてインク受容層に含有させることが提案されている。しかし、効果を得るためには紫外線吸収剤や酸化防止剤等は使用量が多く必要であり、更に分散に使用するオイルが印字をくすませ、画質を低下させる欠点があり、また耐ガス性には不十分であった。
【0009】
また、特開昭60−72785号、同62−261476号、特開平3−13376号、同10−193776号等には水溶性の紫外線吸収剤や酸化防止剤等の退色防止剤をインク受容層に含有させて画像の安定化を改善する試みがなされているが画像の安定性改良については未だ十分なものとは言えず、耐ガス性も不十分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、印字後の画像保存性に優れたインクジェット記録用シートを提供することにある。特に、インク吸収性及び光沢が高く、かつ画像保存性に優れたインクジェット記録シートを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、支持体上に合成シリカを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用シートにおいて、該インク受容層が少なくとも1種類の下記化2で表されるα,β−不飽和カルボン酸又はその塩を含有することを特徴とするインクジェット記録用シートによって達成された。
【0012】
【化2】
式中R1、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環を表し、更にR1とR3は互いに連結してヘテロ環を形成してもよい。但し、R1、R2及びR3が同時に水素原子となることはない。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる化2で表されるα,β−不飽和カルボン酸について説明する。式中R1、R2及びR3のアルキル基としては、例えばメチル、 エチル、プロピル、ブチル等であり、アルケニル基としては、例えばアリル等があり、アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル等があり、ヘテロ環としては、例えばインドール、ピロール、イミダゾール、フラン、ピリジン等挙げられる。R1とR3が互いに連結して形成されるヘテロ環としては、例えば、インドール、ピロール、イミダゾール、フラン、ピリジン等があり、これらのヘテロ環はベンゼン環や他のヘテロ環と縮合していてもよい。以下に具体例を示す。
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
【0024】
【化13】
【0025】
【化14】
【0026】
【化15】
【0027】
特に、耐ガス性に効果ある化2のα,β−不飽和カルボン酸として、下記一般式化16が挙げられる。
【0028】
【化16】
(式中、Zはヘテロ環を形成するのに必要な原子群を表し、該ヘテロ環はベンゼン環あるいはヘテロ環と縮合していてもよい。また、Zで表されるヘテロ環は置換基を有していてもよい。R4は化2のR2と同義である。nは0または1である。)
【0029】
以下に、化16の具体例を挙げる。
【0030】
【化17】
【0031】
【化18】
【0032】
【化19】
【0033】
【化20】
【0034】
【化21】
【0035】
【化22】
【0036】
【化23】
【0037】
【化24】
【0038】
【化25】
【0039】
【化26】
【0040】
【化27】
【0041】
【化28】
【0042】
【化29】
【0043】
【化30】
【0044】
【化31】
【0045】
【化32】
【0046】
【化33】
【0047】
【化34】
【0048】
【化35】
【0049】
【化36】
【0050】
本発明に用いられる化2で表されるα,β−不飽和カルボン酸又はその塩はカルボン酸を除く部分の炭素数が10以下のものが好ましく、8以下のものが更に好ましい。
【0051】
本発明に用いられる化2で表されるα,β−不飽和カルボン酸又はその塩は1種だけを用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
上記化2で表されるα,β−不飽和カルボン酸又はその塩の使用量は、概ね記録シート1m2当たり50mg〜2g、好ましくは100mg〜1gである。
【0053】
該化合物はインク受容層を塗布する際にその塗液またはこれに隣接する層の塗液中に添加して、インク受容層を形成すると同時に該化合物を含有させるのが好ましい。塗液中への添加は水溶液としてでもオイル分散としてでもできるが、前述のようにオイルは印字をくすませ、画質を悪化させるので水溶液又は含水アルコール溶液として添加するのが好ましい。
【0054】
本発明のα,β−不飽和カルボン酸又はその塩を含有するインク受容層は、一般に無機固体微粒子によって皮膜中に形成される空隙にインクを吸収させるものであり、高いインク吸収容量を発現させるためには高い空隙容量を達成する必要がある。
【0055】
これを達成するためには塗布膜厚を増大させるのが単位面積当たりのインク吸収容量を高めるのに効果的ではあるが、製造コストの増大や、皮膜の単位面積当たりの固形分増加によるカール、皮膜の脆弱性等記録シートの物性が低下する。
【0056】
このために、出来るだけ効率よく空隙容量を高めるために必要最小量のバインダーを使用して、乾燥膜厚を極力低減することが好ましい。言い換えれば親水性バインダーに対する無機固体微粒子の割合を増加させることである。したがって無機固体微粒子に対して30重量%以下の親水性バインダー量が好ましく、10〜30重量%が特に好ましい。
【0057】
バインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、インクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0058】
本発明に用いられる無機固体微粒子としては、合成シリカ微粒子であるが、本発明で最も好ましく用いられるのは一次粒子の平均粒径が50nm以下の気相法シリカである。特に好ましくは、一次粒子の平均粒径が15nm以下の気相法シリカであり、より好ましくは3〜10nmの気相法シリカである。
【0059】
合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、▲1▼ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または▲2▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、▲3▼シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数ミクロンから10ミクロン位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には▲4▼シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。
【0060】
本発明に好ましく用いられる気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル株式会社からアエロジル、トクヤマ株式会社からQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0061】
本発明のインク受容層において、上記固体微粒子は5〜50g/m2程度、好 ましくは8〜30g/m2程度、より好ましくは10〜27g/m2の範囲で含有させる。またインク受容層の皮膜としての特 性を維持するためにバインダーを有していることが好ましい。
【0062】
好ましい親水性バインダーは前述の如く完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0063】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80以上の部分または完全ケン化したもので、皮膜形成性及び皮膜脆弱性を改良する観点から平均重合度200〜5000、好ましくは500〜4000のものが用いられる。
【0064】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0065】
また、他の親水性バインダーも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20重量%以下であることが好ましい。
【0066】
これらのバインダーの使用量としては固体微粒子の固形分に対して、30重量%以下、好ましくは10〜30重量%の範囲である。
【0067】
本発明は、上記親水性バインダーとともに架橋剤(硬膜剤)を用いることが好ましい。架橋剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸またはほう酸塩が好ましい。
【0068】
本発明のインク受容層は、カチオン性化合物を含有するのが好ましい。上記化2の化合物とカチオン性化合物を組み合わせて用いることによって、更に保存性が改良される。
【0069】
カチオン性化合物としては、例えばカチオン性ポリマーや水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミイ重合物、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000以上が好ましく、更に5,000〜10万程度が好ましい。
【0070】
これらのカチオン性ポリマーの使用量は気相法シリカに対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%である。
【0071】
本発明に用いられる水溶性金属化合物として、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0072】
本発明において、特に水溶性アルミニウム化合物あるいは周期表4A族元素を含む水溶性化合物が好ましい。水溶性アルミニウム化合物は、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物がある。特に、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましい。
【0073】
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2又は3で示され、例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+、[Al21(OH)60]3+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0074】
[Al2(OH)nCl6-n]m 式1
[Al(OH)3]nAlCl3 式2
Aln(OH)mCl(3n-m) 0<m<3n 式3
【0075】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できるが、pHが不適当に低い物もあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。
【0076】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物は水溶性で有れば特に制限はないがチタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物が好ましい。例えばチタンを含む水溶性化合物としては塩化チタン、硫酸チタンが、ジルコニウムを含む水溶性化合物としては酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が知られている。これらの化合物はpHが不適当に低い物もあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。本発明に於いて、水溶性とは常温常圧下で水に1重量%以上溶解することを目安とする。
【0077】
本発明において、上記水溶性の金属化合物のインク受容層中の含有量は、気相法シリカに対して0.1〜10重量%が好ましく、更に好ましくは1〜5重量%である。
【0078】
上記したカチオン性化合物は2種以上を併用することができる。例えば、カチオン性ポリマーと水溶性金属化合物を併用するのが好ましい。
【0079】
本発明において、気相法シリカを含有するインク受容層の膜面pHが2〜6であることが好ましく、特に3〜5が好ましい。上記した一般式1の化合物とこの膜面pHを組み合わせることによって更に保存性が向上する。インク受容層の膜面pHは、J.TAPPI紙パルプ試験方法N0.49に記載の方法に従って、蒸留水を用い、30秒後に測定した表面pHである。
【0080】
インク受容層のpHは、塗布液の段階で調整するのが好ましが、塗布液のpHと塗布乾燥された状態での膜面pHとは必ずしも一致しないため、塗布液と膜面pHとの関係を予め実験等によって求めておくことが所定の膜面pHにするために必要である。インク受容層塗布液のpHは、酸またはアルカリを適当に組み合わせて行われる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸が用いられ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、または弱アルカリとして、酢酸ナトリウム等の弱酸のアルカリ金属塩が用いられる。
【0081】
更に、皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することが好ましいが、そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01重量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50重量%の範囲で用いることができる。
【0082】
本発明において、インク受容層に界面活性剤を添加することができる。用いられる界面活性剤はアニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系のいずれのタイプでもよく、また低分子のものでも高分子のものでもよい。1種もしくは2種以上界面活性剤をインク受理層塗液中に添加するが、2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用する場合は、アニオン系のものとカチオン系のものとを組み合わせて用いることは好ましくない。界面活性剤の添加量はインク受容層を構成するバインダー100gに対して0.001〜5gが好ましく、より好ましくは0.01〜3gである。
【0083】
本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0084】
本発明に用いられる支持体としては耐水性支持体が好ましい。耐水性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙の両面にポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂被覆紙が挙げられる。本発明に用いられる耐水性支持体の厚みは、約50〜300μm程度が好ましい。
【0085】
本発明において好ましく用いられる樹脂被覆紙を構成する原紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0086】
さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0087】
また、原紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/m2が好ましい。
【0088】
樹脂被覆紙の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂や電子線で硬化する樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0089】
また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0090】
本発明において好ましく用いられる支持体である樹脂被覆紙は、走行する原紙上にポリオレフィン樹脂の場合は、加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、その両面が樹脂により被覆される。また、電子線により硬化する樹脂の場合は、グラビアコーター、ブレードコーターなど一般に用いられるコーターにより樹脂を塗布した後、電子線を照射し、樹脂を硬化させて被覆する。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。支持体のインク受容層が塗布される面(表面)は、その用途に応じて光沢面、マット面などを有し、特に光沢面が優位に用いられる。裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点から樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。また、樹脂被覆層の厚みとしては特に制限はないが、一般に5〜50μmの厚味に表面または表裏両面にコーティングされる。
【0091】
本発明における支持体には帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0092】
本発明において、インク受容層の塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドリップ方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
【0093】
本発明において、インクジェット記録材料には、気相法シリカを含有する層に加え、さらにインク吸収層、インク定着層、中間層、保護層等を設けてもよい。例えば、下層に水溶性ポリマー層を塗設したり、上層に膨潤層を塗設しても良い。
【0094】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、部とは固形分重量部を意味する。
【0095】
実施例1
支持体として、LBKP(50部)とLBSP(50部)のパルプ配合からなる120g/m2の基紙の表面に低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエ チレン(20部)と酸化チタン(10部)からなる樹脂組成物を25g/m2塗 布し、裏面に高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)からなる樹脂組成物を25g/m2塗布してなる樹脂被覆紙を用意した。
【0096】
上記支持体上に、下記組成のインク受容層塗液を調整し、塗布量が固形分で20g/m2となるように塗布し、40℃の風で乾燥してインクジェット記録シー トを作成した。
【0097】
<記録シート1>
【0098】
<記録シート2>
記録シート1の組成に下記の比較化合物化37を3部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0099】
【化37】
【0100】
<記録シート3>
記録シート1の組成に化5の化合物を3部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0101】
<記録シート4>
記録シート1の組成に化7の化合物を3部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0102】
<記録シート5>
記録シート1の組成に化13の化合物を3部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0103】
<記録シート6>
記録シート1の組成に化15の化合物を3部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0104】
得られた各々のインクジェット記録シートについて、インク吸収性、印字後の保存性(耐光性及び耐ガス性)、及び光沢度を評価した。その結果を表1に示す。
【0105】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−770C)を用いて、C,M,Yをそれぞれ100%で印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:全く転写しない。
×:転写する。
【0106】
<耐光性>
インクジェットプリンター(エプソン社製PM770C)を用いてCYMKのインクで濃度1.0のベタ印字を行い、アトラス社製サンテストCPS光退色試験機にて765W/m2で20時間照射した後、印字部の濃度を測定した。光照射 前後の濃度差△Dを測定し、以下の基準で評価した。
○:CMYKの全てで△D≦0.3のもの。
△:同様に0.3<△D≦0.5のもの。
×:CMYKのいずれかが△D>0.5のもの。
【0107】
<耐ガス性>
上記耐光性試験と同様に印字後、空気中に室温で3ヶ月間曝露した後、印字部の濃度を測定し、画像残存率(曝露後濃度/曝露前の濃度)を求め、CMYK画像の内、最も残存率が低いものを表示した。
【0108】
<光沢度>
JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って測定した。
【0109】
【表1】
【0110】
インク吸収性は、いずれの記録シートも○であり、光沢度はいずれの記録シートも60〜65%と高い光沢を示した。
【0111】
上記結果から明らかなように、インク受容層に一般式化2で表されるα,β−不飽和カルボン酸を含有させることにより、保存性が著しく向上する。
【0112】
実施例2
実施例1と同じ支持体上に、下記組成のインク受容層塗液を調整し、気相法シリカの塗布量が固形分で18g/m2となるように塗布、乾燥してインクジェット記録シー トを作成した。尚、いずれの記録シートもインク受容層の膜面pHが4.2になるように調整した。
【0113】
<記録シート7>
【0114】
<記録シート8>
上記記録シート7のポリビニルアルコールを35部に増量した。
【0115】
<記録シート9>
上記記録シート7のインク受容層に前記化37の化合物を3部加えた。
【0116】
<記録シート10>
上記記録シート7のインク受容層にアスコルビン酸を10ミリモル/m2加えた。
【0117】
<記録シート11>
上記記録シート7のインク受容層に本発明の化合物化11を3部加えた。
【0118】
<記録シート12>
上記記録シート7のインク受容層に本発明の化合物化17を3部加えた。
【0119】
<記録シート13>
上記記録シート7のインク受容層に本発明の化合物化18を3部加えた。
【0120】
<記録シート14>
上記記録シート7のインク受容層に本発明の化合物化34を3部加えた。
【0121】
得られた各々のインクジェット記録シートについて、インク吸収性、印字後の保存性(耐光性及び耐ガス性)、及び光沢度を評価した。その結果を表2に示す。
【0122】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−770C)を用いて、C,M,Yをそれぞれ100%で印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:全く転写しない。
×:転写する。
【0123】
<耐光性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−770C)を用いてCYMKのインクでそれぞれベタ印字を行い、アトラス社製サンテストCPS光退色試験機にて600W/m2で30時間照射した後、印字部の濃度を測定し、画像残存率(照射後濃度/照射前の濃度)を求め、CMYK画像の内、最も残存率が低いものを表示した。
【0124】
<耐ガス性>
上記耐光性試験と同様に印字後、空気中に室温で3ヶ月間曝露した後、印字部の濃度を測定し、画像残存率(曝露後濃度/曝露前の濃度)を求め、CMYK画像の内、最も残存率が低いものを表示した。
【0125】
<光沢度>
JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って測定した。
【0126】
【表2】
【0127】
光沢度は、いずれの記録シートも60〜65%で、高い光沢を示した。
【0128】
上記結果から明らかなように、本発明の化合物を用いることによって、高いインク吸収性を維持しつつ保存性が改良される。即ち、水溶性バインダーであるポリビニルアルコールの量を減じることによってインク吸収性が向上するが、保存性、特に耐ガス性が著しく低下する。本発明は、インク吸収性と保存性が同時に改良され、かつフォトライクな高光沢が得られる。
【0129】
実施例3
実施例2に用いた気相法シリカを平均一次粒径が30nmのものに代える以外は同様に試験した。その結果、インク吸収性及び保存性はほぼ同じ結果が得られたが、光沢度が5〜10%低下した。
【0130】
実施例4
実施例1の本発明の記録シート11〜14に、更にカチオン性化合物として、カチオン性ポリマーであるジアリルアミン塩酸塩−二酸化イオウ共重合物(日東紡(株)製、PAS−92)及び塩基性ポリ水酸化アルミニウム(理研グリーン株製のピュラケムWT)を3部、単独使用または併用して記録シート11A〜14A、11B〜14B及び11C〜14Cを作成し、実施例2と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0131】
【表3】
【0132】
光沢度は、いずれの記録シートも60〜65%で、高い光沢を示した。
【0133】
上記結果から分かるように、本発明の化2の化合物に更にカチオン性化合物として、カチオン性ポリマーあるいは水溶性金属化合物を組み合わせて用いることによって、さらに保存性が向上する。特にカチオン性ポリマーと水溶性金属化合物を併用することによって更に保存性が向上する。
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、高いインク吸収性、高光沢でかつ保存性の改良されたフォトライクなインクジェット記録材料が得られる。
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