JP3797769B2 - 改質熱可塑性樹脂の製造方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物のベースポリマー払出しラインに改質剤含有熱可塑性樹脂を添加するに際して用いられるノズルおよびそれを用いた熱可塑性組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルをはじめとする熱可塑性樹脂はそれぞれ特徴的な、優れた物理的、化学的特性を有するため繊維、フィルムその他成型品として広く使用されている。
【0003】
また、産業上幅広い分野に用いられるゆえに熱可塑性樹脂本来の優れた性能を失わない範囲で単独の熱可塑性樹脂だけでは得られない新規な性質、例えば難燃性、静電性、易染性、深色性、鮮明染色性、耐熱性等の性質を付与して熱可塑性樹脂を改質しようとする要求も高い。これらの要求に応える技術として無機あるいは有機微粒子の他、各々の目的に応じた種々の機能性剤を熱可塑性樹脂にブレンド及び/又は共重合により導入する方法があり、熱可塑性樹脂からなる最終製品の多様化を図る上で、多くの成果をあげてきている。
【0004】
一方、近年、ポリエステルをはじめとする熱可塑性樹脂の重合方法はバッチ方式に代わって連続重合方式に移りつつある。
【0005】
連続重合方式はバッチ重合方式と比較して製品の品質変動が小さく、しかも特定の銘柄を長期間にわたって大量に生産する場合には、コスト的に大幅に有利である。なぜなら、バッチ方式においては製品吐出時の経時的な固有粘度の低下、カラーの悪化といったバッチ内の品質変動および原料の仕込み変動や反応条件変動によるバッチ間の品質変動が存在するので、各バッチで得られた製品をブレンドしバッチ間の品質を均一化することが必要となるからである。しかも、バッチ方式はバッチあたりの能力アップが難しいという問題もある。
【0006】
これに対して連続重合方式では、各工程における運転条件を時刻にかかわらず一定に制御するため品質変動自体も少ないうえ、外乱の変動が起こった場合にはそのような外乱を打ち消すような処置をとることによって重合工程内での製品の品質変動を最小限に抑制することが比較的容易である。また、連続重合方式は、近年の設備技術の進展にあいまって大型化が可能であって、バッチ方式と比較して、その優位性はますます高まっている。
【0007】
しかし、連続重合方式は多品種少量生産に小回りが効かないという欠点がある。特に前述の種々の改質剤を含有する改質ポリエステルを製造する場合には改質剤の種類の変更をする度に、コンタミを防止するため、巨大な連続重合装置全体を洗浄しなければならず、ポリマー屑、洗浄用に原料ほか洗浄用特殊化学品や機会損失も含めて非常にロスが大きい。特に、大型化および多品種化が高度に進む連続重合方式では、この欠点はますます深刻なものとなってきている。
【0008】
一方、静的混合装置を設けて、連続重合装置から払出しラインに払出されたベースポリマーに種々の改質剤を添加混合したり、ビヒクル等の粘性液体に改質剤を分散させる方法も試みられている。しかし、一般に、高粘度の溶融ベースポリマーに直接添加混合するのみでは、ベースポリマーと改質剤とはその粘度がかけ離れていることから改質剤の分散性が悪く、このため繊維やフィルム用としては不十分である。
【0009】
したがって、連続重合方式で製造されたポリマーに種々の改質剤をいかに均一に分散、混合させるかについて各種の試みがなされている。例えば、連続重合方式により得られたベースポリマーの払出しラインに改質剤を添加するため、別途、改質剤含有ポリエステルを調製して添加し、その混合に静的混合装置を用いる方法が提案されている(特公平4−14128号公報)。しかしながら、従来の静的混合装置のみによる混合では、静的混合装置として多数のエレメント数を有するものを使用してもなお、分散むらを解消するには至らないのが実情である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べた従来の問題点に鑑み、本発明が目的とするところは、溶融状態にある熱可塑性樹脂からなるベースポリマー中へ改質剤を添加するに際して、分散性に優れた改質熱可塑性樹脂を均質に製造するための方法とその装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
ここに、本発明によれば、改質熱可塑性樹脂の製造方法として、(請求項1) ポリエステル(A)の払出しラインの配管中に改質剤を含有させたポリエステル(B)を添加して改質ポリエステルを製造する方法において、ポリエステル(A)の流れの中心部へポリエステル(B)を末広がり状に放射して払出しラインに改質剤を添加することを特徴とする改質熱可塑性樹脂の製造方法、(請求項2) 前記のポリエステル(B)を配管の中心部からポリエステル(A)の向流方向へ放射する請求項1記載の改質熱可塑性樹脂の製造方法、そして、(請求項3) 前記のポリエステル(A)に前記のポリエステル(B)を添加後、両者を静的及び/又は動的に混合する請求項1又は請求項2記載の改質熱可塑性樹脂の製造方法が提供される。
【0012】
また、改質熱可塑性樹脂の製造装置として、(請求項4) ポリエステル(A)の払出しラインの配管中に改質剤を含有させたポリエステル(B)を放射して該改質剤を添加するノズルを設けた製造装置において、該ノズルは払出しライン配管中の略中心部に放射方向に対して末広がり状の放射口形状を有して単一個が配置されているか、又はポリエステル(A)の流れ方向に対する直角断面内に放射方向に対して末広がり状及び/又はストレート状の放射口形状を有して複数個が均等配置されていることを特徴とする改質熱可塑性樹脂の製造装置、(請求項5) 前記のポリエステル(B)の流れ方向に延在させた放射整流部材及び/又は放射整流溝を前記の放射口形状部に設けた請求項4記載の改質熱可塑性樹脂の製造装置、及び(請求項6) 前記のノズルが先細のポリエステル(B)の導入流路を有し、該導入流路が末広がりの放射口形状部に連結する請求項4又は請求項5記載の改質熱可塑性樹脂の製造装置が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、従来の静的混合装置を用いているだけでは高分散または分散むらが必ずしも解消されない点に苦慮し、この現象を考察した。
すなわち、通常重合が終了して払い出された熱可塑性樹脂(ベースポリマー)は非常に高粘度であるため層流状に流れる。このため、他の液体とベースポリマーとを混合しようとすると、層流混合となるので実質的に両者は互いに混合し合うことはほとんどない。
【0014】
このような現象が起こるにもかかわらず、改質剤自体、共重合された改質剤含有熱可塑性樹脂、及び/又はビヒクル等の粘性液状物に分散された改質剤を、連続重合が終了して払出しラインの配管中へ払い出されたベースポリマーに添加ノズルを介して添加するに際して、その添加方法及びその装置に関しては余り関心が払われていなかった。
【0015】
このため、改質剤は、例えば熱可塑性樹脂に混練された状態の組成物という形で、払出し配管の中心部から一条に注入されており、その結果として、ベースポリマーと注入された組成物とはその流束が互いに入れ代わることがないため、注入後、両者を強制的に静的混合しても分配混合効果が十分でないことを本発明者等は突き止めた。なお、この際、故意に添加ノズルの先端を配管の中心からずらし非対称な流束場を形成させると、かえって半径方向に改質剤の分散むらが生じる結果となり、好ましくないことが判った。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において「熱可塑性樹脂(A)」(なお、「ベースポリマー」と称することもある。)とは、重合反応を終了し、ポリマーの払出しラインに送られた溶融状態にある熱可塑性樹脂であって、樹脂種としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等を挙げることができる。なお、ポリエステルを例にとれば、好ましくは繰り返し単位の70モル%以上がエチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなるポリエステル群から選ばれるポリエステルである。
【0017】
ここで、前記ベースポリマーは樹脂の種類に応じて任意の方法で製造することができる。例えばポリエステルを例にとって説明すると、ベースポリエステルは、前記の例示した化合物から常法によって以下に例示した方法によって得ることができる。
【0018】
すなわち、多価カルボン酸と多価ヒドロキシ化合物をエステル化槽へ連続的に仕込み、エステル化反応させ前記のモノマーを得た後、高温、弱減圧下の初期重合槽を経て高温、減圧下の後期重合槽へ連続的に送液し、重縮合させるか、多価カルボン酸のエステル形成性誘導体と多価ヒドロキシ化合物をエステル化反応槽へ連続的に仕込み、エステル交換反応させた後、高温、弱減圧下の初期重合槽を経て高温、減圧下の後期重合槽へ連続的に送流し重縮合させることで製造することができる。
【0019】
本発明において、ベースポリマーには予め何らかの改質剤、例えば、艶消剤である二酸化チタンや易滑剤としてのコロイダルシリカ、湿式シリカ、乾式シリカなどの酸化珪素、炭酸カルシウム、カオリナイト、タルク、アルミナ、ゼオライト、グラファイト等の粒子が添加されていてもかまわないが、改質剤の含有量としては0〜0.5%の範囲の少量であることが望ましい。0.5%を越えるとベースポリエステルを製造する連続重合工程の内部でスケール等の異物や添加剤の凝集を生成しやすくこれがベースポリマーに混入し品質を低下させるからである。またコストメリットが小さくなる点でも望ましくない。
【0020】
本発明における「改質剤を含有する熱可塑性樹脂(B)」(なお、単に「改質剤含有熱可塑性樹脂」と称することもある。)とは、前述のベースポリマー自身またはベースポリマーとは異なる重合装置で重合されたポリマーに公知の各種改質剤を添加したポリマーあるいは改質効果を有する機能性の第3成分を共重合した熱可塑性樹脂等を総称する。改質剤としては、前記の二酸化チタン、酸化珪素、炭酸カルシウム、カオリナイト、タルク、アルミナ、ゼオライト、グラファイト等の無機粒子、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート共重合架橋体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン樹脂、架橋シリコーン樹脂等の有機粒子を例示することができる。また、これらの粒子は、例えば特開平7−247119号公報、特開平4−7336号公報などで提案されている様に、粒子の表面を粒子内部の組成とは異なる化合物で被覆していても、シランカップリング剤及び/又はチタンカップリング剤などで処理されていても一向にかまわない。なかでも、酸化珪素、二酸化チタン、アルミナ、ポリスチレン、架橋シリコーン樹脂の粒子、あるいはこれらの粒子の表面を他の化合物で被覆した粒子が好ましい。
【0021】
さらに、機能性改質剤としては、例えば難燃剤としてリン化合物等、静電剤として脂肪酸エステル金属塩等、易染剤としてポリエチレングリコール等、鮮明染色剤として例えばポリエステルでは5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはそのエステル、耐熱剤として正燐酸、亜燐酸等を挙げることができる。
【0022】
なお、ベースポリマー中に含有される改質剤と改質剤含有熱可塑性樹脂に含有される改質剤は同一であっても複数の異なる改質剤であってもよい。
【0023】
本発明においては、前述した改質剤は、ベースポリマーと同一種の熱可塑性樹脂または異なる重合方法で製造された熱可塑性樹脂に予め分散もしくは共重合させておいてから添加されるか、あるいはビヒクルに分散させて添加される。ここで、ビヒクルは市販の可塑剤を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂としてポリエステルを挙げれば、ポリエステルセバケート系、ポリエステルアジペート系、ポリエステルフタレート系等のの可塑剤が市販されており、これらを好適に用いることができる。
【0024】
なお、熱可塑性樹脂又はビヒクルへ改質剤を共重合/分散する方法は公知の方法で行うことができる。例えば、共重合系改質剤の場合には、あらかじめバッチ式反応器で所望の組成のポリマーを重合することにより調製しておいてもよいし、分散系の場合には、一旦チップ化したベースポリマーを混練機内に供給して再溶融し、改質剤を高濃度に添加して混練する、いわゆるマスターバッチ方式のほかに、連続重合の払出しラインよりベースポリマーの一部をサイドストリームへ抜き出し、1軸混練押出し機または2軸混練押出し機等へ導入し、改質剤を練り込むことによって調製することもできる。さらに改質剤をビヒクルに分散させる場合には、系の粘度に応じて例えばニーダー、スーパーミキサー等市販の混練装置を好ましく用いることができる。
【0025】
つぎに、本発明の方法を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)〜(c)は、本発明の改質熱可塑性樹脂を製造するための方法を説明するための概略製造工程図であって、図(a)〜(c)のそれぞれは本発明の製造方法の異なった実施態様を例示したものである。
【0026】
該図において、1は最終重合槽、2は定量供給ポンプ、3は払出しライン、4は熱可塑性樹脂(B)の投入口、5は二軸混練押出し機、6はノズル、7は静的混合装置、8は熱可塑性樹脂(A)の取出しライン、9は動的混合装置、そして、10はベント口をそれぞれ示す。
【0027】
以上のようにして構成される改質熱可塑性樹脂の製造工程において、一方で、連続重合により得られたベースポリマー(熱可塑性樹脂(A))は最終重合槽1から定量供給ポンプによって払出しライン3へ払い出される。他方、改質剤含有熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂(B))は、二軸混練押出し機5によって十分に混練された状態で払出しライン3へ添加される。この際、ベースポリマー流の中心部へ改質剤含有熱可塑性樹脂を末広がり状に放射して払出しライン3に改質剤を添加する必要がある。ここで、改質剤含有熱可塑性樹脂を払出しライン3に改質剤を添加するために、ノズル6が使用されている。なお、このノズル6の形状及び構造に関しては、その詳細を後述する。
【0028】
このようにして、ベースポリマーと改質剤含有熱可塑性樹脂とを添加混合するに際して、ノズル6をベースポリマー流に対して向流かつ払出し配管の中心部に配置することが好ましい。なぜならば、ベースポリマーの払出し配管に対してノズル6の配置が中心部に位置していないと、添加注入される改質剤含有熱可塑性樹脂が均一に混合されず分散むらを起こす原因となるからである。また、ノズル6から改質剤含有熱可塑性樹脂をベースポリマーに対して向流に添加してベースポリマー流を乱すことによって、並流の場合と比較すると、両者の混合を効率良く行うことができるからである。
【0029】
このようにノズル6を介して改質剤含有熱可塑性樹脂が添加されたベースポリマーは、さらに、静的混練装置7及び/又は動的混合装置9によって、静的及び/又は動的に混合させること好ましく、このような混合を進めることによって、改質剤をベースポリマー中へ極めて均一に分散させることができる。その際、すでに改質剤含有熱可塑性樹脂中で改質剤は、ある程度分散されているので、混合においてさほどの剪断力を必要とせず、このために静的混練装置7を通して分散を進めるのは有利な方法である。なお、静的混合及び/又は動的混合には、公知の静的混練装置及び/又は動的混合装置を適宜用いることができる。例えば、前者の静的混合装置の例としては、ノリタケカンパニー社のケニックス型スタティックミキサー、スルーザー社のスタティックミキシングエレメント、東レ株式会社製のハイミキサー等を挙げることができる。また、後者の動的混合装置の例としては、一軸混練押出し機、二軸混練押出し機、又は撹拌翼付き完全混合槽等を挙げることができる。なお、一軸又は二軸の混練押出し機を用いる場合は、固有粘度の低下を抑制するためベント付きのタイプが好適に使用される。さらには、静的混合装置と動的混合装置を併用してもよいことは、言うまでもない。
【0030】
本発明において、ベースポリマーの払出しライン3に改質剤含有熱可塑性樹脂を添加するに際しては、図1(b)に示すように、払出しライン3からベースポリマーの一部を取出し、該ポリマーを二軸混練押出し機5へ取出しライン3を介して還流させてもよい。なお、図1(c)はベント口10を有する二軸混練押出し機9を動的混合装置として使用した例を示している。
【0031】
つぎに、本発明の改質熱可塑性樹脂の製造装置について、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の装置は、図1(a)〜(c)に示したベースポリマー(熱可塑性樹脂(A))の払出しライン3の配管中に改質剤を含有させた改質剤含有熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂(B))を放射して該改質剤を添加するノズル6を設けた装置である。ここで、該ノズル6の詳細について、図2及び3を用いて説明する。
【0032】
該図において11は導入流路であって、改質剤含有熱可塑性樹脂の流れ方向に沿って、ストレート形状あるいは次第に先細となる形状を有している。また、12は改質剤含有熱可塑性樹脂の放射方向に対して末広がり状の形状を有する放射口部であって、13は改質剤含有熱可塑性樹脂の流れ方向に延在させた放射整流部材である。
【0033】
以上のような構造を有するノズル6において、該ノズル6の導入流路11から改質剤含有熱可塑性樹脂が注入され、末広がり状の形状を有する放射口部から図1に示す払出しライン3へ末広がり状に放射される。このとき、導入流路11の先端形状を先細にすることは、改質剤含有熱可塑性樹脂の注入圧を先細の度合を変えることにより容易に制御できるので望ましく、この先細形状は注入量、注入粘度、注入剤等の条件に応じて適宜最適な形状を選択すればよい。また、流路径又は流路長に関しても、払出しライン3のサイズ等の製造条件に応じて任意に最適な値を選択することができる。
【0034】
ここで、前記の導入流路11を出た改質剤含有ポリマーは、末広がりの形状を有する放射口12部へ誘導される。なお、末広がり状形状を有する放射口12の頂角は30°〜180°の範囲にあることが望ましい。もし、30°未満であると直接ポリマーの払出しライン3へ放射添加する場合に注入剤の放射分散が十分でなくなるので好ましくない。一方180°を越えると導入流路11を導通してきたポリマーが放射口12の壁面に添って流れることができなり、払出しライン3へ注入する改質剤含有熱可塑性樹脂の制御が難しくなる。
【0035】
なお、前記の放射口12には、導入流路11を流れてきた添加剤含有熱可塑性樹脂の流れが安定となるように放射整流部材13を設けるか、あるいは添加剤含有熱可塑性樹脂の流れに対して垂直方向に断面をとった場合に、星状、花びら状等の溝が設けられていることが好ましい。
【0036】
また、放射整流部材13に関しては、図2及び図3に示すように放射口12で添加剤含有熱可塑性樹脂が数筋に分割されるように流路を流れ方向に沿って複数条(図2の例では4条、図3の例では8条)に分割されていることが必要が好ましい。条の本数は少なくとも2本以上であり、各条間は同一距離とし均等に配置することが必要である。均等でないと混合むらを起こす原因となる。なお、条数をあまり増やすと各筋への分配量が少なくなり改質剤含有熱可塑性樹脂が均等に分配しなくなるので、好ましくは放射状に4〜8本の条を配するのがよい。条の深さおよび幅は、中央流管から流れてきた改質剤含有熱可塑性樹脂が分岐する長さであれば特に制限はない。また、条の形状は特に制限されるものではなく、半円型または半楕円型でもよいし、角型でもよい。しかし、デッドスペースを解消するため、半円型または半楕円型が望ましい。
【0037】
なお、図1には、図2及び図3に例示したノズルを払出しライン3中に一つだけ設けた例を示してあるが、払出しライン3中のポリマー流れ方向に対する直角断面内で複数個のノズルを該直角断面内に均等に分配配置することができることは、言うまでもない。このとき、設けるノズルの数は、3個以上とすることが改質剤の分散を良くする上で好ましく、配置は払出しライン3配管を円形断面配管とした場合には、配管中心に対して描いた同心円上に等配することが好ましい。つまり、該直角断面内に均等に改質剤が注入することが肝要である。この場合、複数のノズルから前記の直角断面内に改質剤含有熱可塑性樹脂が分散して注入されるため、ノズルの放射口形状は、単一に設けたノズルの場合のように、必ずしも末広がり状とする必要はなく、ストレート状であってもよい。
【0038】
なお、本発明におけるノズルは、本発明の実施例におけるように、連続重合によって得られた熱可塑性樹脂の払出しラインに改質剤含有熱可塑性樹脂を添加するに際して用いられるほかにも、熱可塑性樹脂チップを再溶融製膜または再溶融紡糸する場合にベースポリマー溶融後の導管中に液性改質剤及び/又は改質剤含有熱可塑性樹脂を添加する場合にも使用することが可能である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の実施例において、図4(a)〜(c)に示すようなノズル6’を比較例として使用した。また、例中の「部」は、重量部である。さらに、本発明における種々の物性値および特性は、以下の如くして測定されたものであって、その定義に関しても以下の通りである。
【0040】
(1)固有粘度
1,1,2,2−テトラクロルエタン40部とフェノール60部の混合溶媒中35℃にて測定する。
【0041】
(2)製品樹脂チップ中の改質剤の分散性
ポリエステル中の粒子の添加量を0.3重量%になるように、必要ならチタンを含まないポリエステルで希釈した後、小型1軸スクリュータイプ押出機で押出したポリエステルをエポキシ樹脂に包埋してミクロトームで切断して、切断面を走査型電子顕微鏡で観察する(倍率 5000〜10000倍)。30組の互いに隣接する2つの粒子または改質剤について、その粒子間の直線距離を測定し、平均値、標準偏差、変動係数を求めて、次の様な判定をする。
特級:変動係数が0.05未満である。
1級:変動係数が0.05〜0.1である。
2級:変動係数が0.1〜0.2である。
3級:変動係数が0.2以上である。
なお、特級および1級のみが実用に供せられる。
【0042】
(3)ポリエステル中の粗大粒子
ポリマー50mgを2枚のカバーグラス間にはさんで280℃で溶融プレスし、急冷したのち、位相差顕微鏡を用いて観察し、画像解析装置ルーゼックス500で顕微鏡像内の最大長が5.0μm以上の粒子数をカウントし、次の様な判定をする。
特級:5.0μmをこえる粒子が全く見当らない。
1級:5.0μmをこえる粒子数が5個/mm2未満である。
2級:5.0μmをこえる粒子数が5〜10個/mm2である。
3級:5.0μmをこえる粒子数が10個/mm2を超える。
なお、特級および1級のみが実用に供せられる。
【0043】
(4)製品樹脂の濾過圧力上昇速度
直接紡糸側のポリマーラインに小型1軸スクリュータイプ押出機の溶融ポリマー出側にポリマー定量供給装置を取り付け、更にその出側に内径64mmφの2400メッシュ金網フイルターを2枚重ねて装着し、溶融ポリマーの温度を290℃一定にコントロールして、毎分33.3gの速度でポリマーを10時間連続して濾過する。この時のフイルター入側の圧力上昇値の平均値をもって、濾過圧力上昇速度とする。
特級:濾過圧力上昇速度が、毎時5kg/cm2以下である。
1級:濾過圧力上昇速度が、毎時5〜10kg/cm2である。
2級:濾過圧力上昇速度が、毎時10〜20kg/cm2である。
3級:濾過圧力上昇速度が、毎時20kg/cm2以上である。
なお、特級および1級のみが実用に供せられる。
【0044】
[実施例1]
テレフタル酸およびエチレングリコールを原料としてエステル化反応をおよび所定の重縮合反応を経た固有粘度0.65の改質剤を含まないポリエチレンテレフタレートをベースポリマーとして、図1(a)に示した払出しラインに900kg/hで供給した。ベースポリマーの温度は285℃に保った。別に、2軸混練押出し機へベースチップおよび酸化チタンを供給し、酸化チタンを25%含有するポリエチレンテレフタレートMB(固有粘度0.54)を調製した。2軸混練押出し機はニーディングディスク構成でスクリュー回転を400rpmに設定した。これを図1に示したノズルを通じて100kg/hで添加した。なお、MBの品質については表1に示した。その後ノリタケカンパニー社製のケニックス型スタティックミキサー(20エレメント)を通して分配混合した。500kg/hを直接紡糸工程へ供し、残りを直接紡糸に供した。チップ化したチップ中の粒子の分散性、粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0045】
[実施例2]
実施例1においてベースポリマーを975kg/h払い出した後、図1(b)に示すように払出しラインよりサイドストリームを75kg/hで取出しラインを介して抜き出し、ベント付き2軸混練押出し機に供給した。2軸混練押出し機はニーディングディスク構成でスクリュー回転を400rpmに設定し、25kg/hでチタン粉体を供給した。このようにしてチタン顔料25%の組成物を改質剤含有熱可塑性樹脂(B)として調製し、これを285℃に保ち、図2のノズルを通して払出しラインのベースポリマーに添加した。そのほかは実施例1と同様とした。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0046】
[実施例3]
実施例2において、ベースポリマーを25kgで抜き出し、ベント付き2軸混練押出し機へ供給し、ここへ酸化チタン粉体を25kg/hで供給し、混練を行い、この組成物をノズルを通じて払出しラインのベースポリマーに添加するほかは実施例2と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0047】
[実施例4]
実施例1において酸化チタン含有MBの添加量を11kgとしたほかは実施例1と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0048】
[実施例5]
実施例2においてサイドストリームを12kg/hで取出しラインを介して抜き出し、ベント付き2軸混練押出し機へ酸化チタン粉体を3kg/hで添加するほかは、実施例3と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0049】
[実施例6]
実施例3において、ベースポリマーを3kgで抜き出し、ベント付き2軸混練押出し機へ供給し、ここへ酸化チタン粉体を3kg/hで供給し、混練を行い、この組成物を改質剤含有熱可塑性樹脂(B)としてノズルを通じて払出しラインのベースポリマーに添加するほかは実施例2と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0050】
[比較例1]
ノズルを図4(a)に示すような形状にしたほかは実施例1と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0051】
[比較例2]
ノズルを図4(b)に示すような形状にしたほかは実施例1と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0052】
[比較例3]
ノズルを図4(c)に示すような形状にしたほかは実施例1と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0053】
[比較例4]
ノズルを図1(b)に示す形状にし、ノリタケカンパニー社製のケニックス型スタティックミキサーを40エレメントにしたほかは実施例1と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0054】
[実施例7]
ノズルを図3に示すような形状にしたほかは実施例1と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0055】
[実施例8]
静的混合装置をスルーザー社製スタティックミキシングエレメントSMX型(エレメント数18)にしたほかは実施例1と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0056】
[実施例9]
静的混合装置に替えて図1(c)に示すように、L/Dが30のベント付き2軸混練機を設置し、スクリュー回転数50rpmで混合したほかは実施例1と同様に行った。チップ化したチップ中の粗大粒子および紡糸時の濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0057】
[実施例10]
バッチ反応釜で、テレフタル酸およびエチレングリコールを原料としてエステル化反応を終了した後、重縮合反応の末期に制電剤として分子量20000のポリエチレングリコール(PEG)を酸成分に対して5%、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)を酸成分に対して0.5%を添加しその後、重縮合を継続し固有粘度0.60の組成物を得た。連続重合方法でテレフタル酸とエチレングリコールを原料としてエステル化反応を終了した後、所定の重縮合反応を経た固有粘度0.65の改質剤を含まないポリエチレンテレフタレートをベースポリマーとして、図1に示した払出しラインに900kg/hで供給した。ベースポリマーの温度は285℃に保った。図2に示したノズルを通じて前記の組成物を100kg/hで添加した。その後ノリタケカンパニー社製のケニックス型スタティックミキサー(20エレメント)を通して分配混合した。500kg/hを直接紡糸工程へ供し、残りを直接紡糸に供した。チップ化したチップ中のポリエレングリコールをオスミン酸染色し透過型電子顕微鏡で観察し、分散を前記の、ポリエステル中の粒子の分散と同様に評価した。また濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0058】
[比較例5]
ノズルを図1(b)に示す形状にしたほかは実施例8と同様に行った。チップ化したチップ中のポリエチレングリコールをオスミン酸染色し透過型電子顕微鏡で観察し、分散を前記の、ポリエステル中の粒子の分散と同様に評価した。また濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0059】
[実施例11]
バッチ反応釜で、テレフタル酸およびエチレングリコールを原料としてエステル化反応を終了した後、重縮合反応の初期にボイド形成剤としてトリメチルホスフェートと酢酸カルシウムの複合粒子をリン原子換算で5%添加し、重縮合を継続し固有粘度0.60の組成物を得た。連続重合方法でテレフタル酸とエチレングリコールを原料としてエステル化反応を終了した後、所定の重縮合反応を経た固有粘度0.65の改質剤を含まないポリエチレンテレフタレートをベースポリマーとして、図1に示した払出しラインに900kg/hで供給した。ベースポリマーの温度は285℃に保った。図3に示したノズルを通じて前記の組成物を100kg/hで添加した。その後ノリタケカンパニー社製のケニックス型スタティックミキサー(20エレメント)を通して分配混合した。500kg/hを直接紡糸工程へ供し、残りを直接紡糸に供した。チップを20%の水酸化ナトリウム水溶液で1時間リフラックス処理し、繊維表面に形成したボイドを前記のポリエステル中の粒子の分散と同様に評価した。また濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0060】
[比較例6]
ノズルを図1(b)に示す形状にしたほかは実施例9と同様に行った。チップを20%の水酸化ナトリウム水溶液で1時間リフラックス処理し、繊維表面に形成したボイドを前記のポリエステル中の粒子の分散と同様に評価した。また濾過圧力上昇速度を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、熱可塑性樹脂の連続重合により得られたベースポリマーの払出しラインに改質剤含有熱可塑性樹脂を添加する際に、偏心なく均等に分割された筋状に添加することができるノズルが提供された。該ノズルを通して改質剤含有熱可塑性樹脂をベーズポリマーの払出し向きと逆に添加しついで静的及び/又は動的混合装置を導通させることによって極めて分散性が高く、分散むらのない組成物を得ることが可能になる。このように得られた組成物は繊維、フィルムおよび樹脂成型品に成型加工する場合の成型加工性に優れ、また繊維、フィルム、および樹脂成型品としたときの製品品品質にも優れるという極めて顕著な効果を有する。このような良好な工程、品質を連続重合の払出しラインで容易に行うことができ、熱可塑性樹脂の多品種生産を飛躍的に推進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の改質熱可塑性樹脂の製造方法を実施するための概略製造工程である。
【図2】本発明の改質熱可塑性樹脂の製造装置を構成するノズルの実施態様を例示した、(a)正面断面図、(b)側面図である。
【図3】本発明の改質熱可塑性樹脂の製造装置を構成する他のノズルの実施態様を例示した、(a)正面断面図、(b)側面図である。
【図4】3つの改質熱可塑性樹脂の製造装置の比較態様例を示した、払出しラインの改質剤の添加部の正面断面図である。
【符号の説明】
1 最終重合槽
2 定量供給ポンプ
3 払出しライン
4 改質剤投入口
5 二軸混練押出し機
6 ノズル
7 静的混合装置
8 取出しライン
9 ベント付二軸混練押出し機
10 ベント口
Claims (6)
- ポリエステル(A)の払出しラインの配管中に改質剤を含有させたポリエステル(B)を添加して改質ポリエステルを製造する方法において、ポリエステル(A)の流れの中心部へポリエステル(B)を末広がり状に放射して払出しラインに改質剤を添加することを特徴とする改質熱可塑性樹脂の製造方法。
- 前記のポリエステル(B)を配管の中心部からポリエステル(A)の向流方向へ放射する請求項1記載の改質熱可塑性樹脂の製造方法。
- 前記のポリエステル(A)に前記のポリエステル(B)を添加後、両者を静的及び/又は動的に混合する請求項1又は請求項2記載の改質熱可塑性樹脂の製造方法。
- ポリエステル(A)の払出しラインの配管中に改質剤を含有させたポリエステル(B)を放射して該改質剤を添加するノズルを設けた製造装置において、該ノズルは払出しライン配管中の略中心部に放射方向に対して末広がり状の放射口形状を有して単一個が配置されているか、又はポリエステル(A)の流れ方向に対する直角断面内に放射方向に対して末広がり状及び/又はストレート状の放射口形状を有して複数個が均等配置されていることを特徴とする改質熱可塑性樹脂の製造装置。
- 前記のポリエステル(B)の流れ方向に延在させた放射整流部材及び/又は放射整流溝を前記の放射口形状部に設けた請求項4記載の改質熱可塑性樹脂の製造装置。
- 前記のノズルが先細のポリエステル(B)の導入流路を有し、該導入流路が末広がりの放射口形状部に連結する請求項4又は請求項5記載の改質熱可塑性樹脂の製造装置。
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