JP3794090B2 - 像担持体ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真技術によって画像を形成するプリンター、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置に用いられる像担持体ユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真技術を用いた画像形成装置は、外周面に感光層を有する感光体と、この感光体の外周面を一様に帯電させる帯電手段と、この帯電手段により一様に帯電させられた外周面を選択的に露光して静電潜像を形成する露光手段と、この露光手段により形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像手段と、この現像手段により現像されたトナー像を用紙等の転写媒体に転写させる転写手段とを有している。
【0003】
感光体としては、外周面に感光層が形成された硬質の感光体ドラムと、表面に感光層が形成された可撓性を有する感光体ベルトとが一般に知られている。
【0004】
また、帯電手段、現像手段、および転写手段としては、それぞれ、前記感光体の表面に接触させるローラ状のものが知られており、そのローラとしては、硬質のものと軟質ゴムからなるものとが知られている。
【0005】
感光体として硬質の感光体ドラムを用い、またこれに接触させるローラとしても硬質のものを用いる場合には、感光体ドラムおよび硬質ローラを高精度に製造するには自ずと限界があり、必ず誤差が生ずるから、両者を均一に接触させることは困難である。両者が均一に接触しないと、局部的に隙間が生じて帯電むら、現像むら、転写むらが生じたり、必要以上に強く圧接されて感光ドラムや硬質ローラに傷がついたりするという問題が生ずる。
【0006】
したがって、感光体とこれに接触させるローラとを両者とも硬質のもので構成するということは通常行なわれておらず、感光体として硬質の感光体ドラムを用いる場合には、ローラを軟質ゴムで構成する、ローラとして硬質のものを用いる場合には、感光体として可撓性を有する感光体ベルトを用いる、ということが行なわれている。
【0007】
しかしながら、感光体に接触させるローラを軟質ゴムで構成した場合には、次のような問題があった(特開平3−33768号)。
【0008】
感光体に接触させる帯電ローラ等をゴムローラで構成する場合には、これに導電性を付与するために、カーボン等の導電性粒子を分散させるということが行なわれるが、カーボン分散度のムラやバラツキでゴム硬度が変化し、ローラ表面における硬度がばらつくために、感光体に対する良好な密着状態が得られなくなるという問題があった。
【0009】
逆に、感光体に対する良好な密着状態を得るべく、カーボンの分散量を小さくすると、導電性にバラツキが生じ、帯電むらの原因になるという問題があった。
【0010】
また、柔軟性を高めるために、配合剤として可塑剤を加えたものを用いると、長期間の使用や使用環境によって、可塑剤が表面に滲み出してくる場合があり、この可塑剤が感光体に付着して感光体中の光導電材料が変性したり、ローラに感光体が張り付いて感光体表面が剥がれてしまうという問題があった。
【0011】
このような問題は、ローラとして硬質のものを用い、感光体として可撓性を有する感光体ベルトを用いることにより解決することができる。
【0012】
しかしながら、感光体として感光体ベルトを用いた場合には、これを支持するために少なくとも2本の支持ローラが必要なために、構造が複雑になるばかりでなく装置が大型化してしまうという問題があった。
【0013】
以上のような問題を全て解決しようとしたものとして、従来、特公平4−69383号(特開昭59−192260号)公報記載の感光体ドラムが知られている。
【0014】
この特公平4−69383号公報記載の感光体ドラムを、図13〜図15に示す。
【0015】
この感光体ドラム1は、回転軸2と、この回転軸2に支持され、かつフリー状態で円筒状をなす弾性変形可能な弾性材料層3と、この弾性材料層3のまわりに装着された外側層4とを有している。外側層4は、弾性変形可能な感光体支持層5と、この支持層5の表面に支持された感光層6とを有している。弾性材料層3は、回転軸2と外側層4との間に、実質的に隙間を形成することなく充填されている。
【0016】
このような感光ドラム1は、弾性変形可能な外側層4と、弾性材料層3とを有しているため、その表面に外力が加えられると、この表面は弾性変形することが可能である。
【0017】
図13において、7は帯電チャージャ、10は現像ローラ、13は転写チャージャである。
【0018】
画像形成時には、感光体ドラム1が図13における時計方向に回転駆動され、帯電チャージャ7によってドラム1の感光層6が所定の極性に帯電される。この帯電部分に光8が照射されることによりドラム1上に静電潜像が形成される。この潜像は、図中矢印方向に回転する現像ローラ10に担持されるトナーにより現像されて可視像化され、転写チャージャ13によって転写紙12に転写される。
【0019】
なお、図13において、14は分離チャージャ、15はクリーニングブレード、16は除電チャージャである。
【0020】
以上のような構成によれば、感光ドラム1の表面が弾性変形可能であるため、現像ローラ10を感光体ドラム1に押し付け、感光ドラム1の表面をその半径方向に弾性変形させることができる。このため、感光ドラム1および現像ローラ10の周面がその中心軸線に対し多少偏心し、あるいはこれらの外径に多少製造上のバラツキがあったり、また、現像ローラ10の少なくとも表面が剛体からできていても、ドラム表面や現像ローラに傷を付けるといった不都合を伴うことなく、現像ローラ10上のトナーを感光体ドラム1に従来よりも確実かつ安定した状態で接触させることができ、現像ローラ10上のトナーと、ドラム1の表面とに大きな間隙ができることによる可視像の画質低下を抑制することができる。
【0021】
すなわち、この感光ドラム1によれば、硬質の現像ローラを用いても、感光ドラムや現像ローラに傷がつくということがなく、また、装置の大型化も防止することができる。
【0022】
なお、この感光ドラムと同様な感光ドラムは、特開昭58−90655号公報にも開示されている。
【0023】
一方、特開昭58−86550号公報には、軽量化および誘導渦電流の発生防止を図る目的で、図16に示すように、電鋳法によって作成した厚さ0.01〜2mmの非磁性金属(Cu,Al,W,Mo等)からなる無端ベルトをドラム基体31とし、このドラム基体31の上に像担持層(光導電性物質層)32を形成し、ドラム基体31の両端を円板状の端板33で鋼鉄製の軸34に固設したドラム状像担持体部材が開示されている。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特公平4−69383号公報記載の感光体ドラム1(図13〜図15参照)は、回転軸2と外側層4との間に、弾性材料層3を、実質的に隙間を形成することなく充填した構成であるため、次のような問題を有している。
【0025】
感光層6は弾性材料層3の上に形成されているため、感光層6は軸線方向に微小な力で変位する。感光層6には、これと圧接する現像ローラ10やクリーニングブレード15等の圧接部材が配設されるため、感光層6の回転軸と圧接部材の軸等が傾いていたり、圧接力が軸方向において不均一であったりすると、感光層6は軸線方向にスラスト力を受け、このスラスト力によって軸線方向に変位することとなる。そして、このスラスト力は変動するため、感光層6に形成された画像も軸線方向に変位することとなり、結果として、軸線方向における画像の位置精度が劣化するという問題がある。特に、多色の色重ねを行なう場合には、色重ね精度の劣化が色相のズレとなって、画像が著しく劣化するという問題がある。
【0026】
また、このような感光体ドラム1を製造する方法としては、
(1)先ず、感光層支持層5上に感光層6を形成した外側層4を作製し、次いで、軸2と外側層4とを所定間隔になるように配置し、軸2と外側層4との空間に、加熱された弾性材料を流し込んで弾性材料層3を形成することにより製造する方法
(2)先ず、軸2と感光体支持層5とを所定間隔になるように配置して軸2と感光体支持層5との空間に、加熱された弾性材料を流し込んで弾性材料層3を形成し、次いで、感光層支持層5上に感光層6を形成することにより製造する方法
(3)外側層4の内径よりも多少大きな外径を有する筒状弾性部材を作製し、この筒状弾性部材を、径方向に圧縮した状態で外側層4内に挿入することによって弾性材料層3を形成することにより製造する方法
が考えられる。
【0027】
しかし、上記(1)の方法では、外側層4の表面に感光層6が形成された状態で、外側層4の内部に、加熱した弾性材料を流し込むという作業が行なわれることとなるから、熱等によって感光体特性が劣化するという問題がある。また、感光層6の表面に傷が付いたり、異物(弾性材料等の異物)が付着するおそれがある。
【0028】
上記(2)の方法では、弾性材料層3が形成された後に感光層6が形成されることとなるから、感光層塗工時の洗浄液や塗工液によって弾性材料層3の膨潤、溶解、あるいは硬化が生じ、その結果、弾性材料層としての機能が低下するおそれがある。
【0029】
したがって、上記(1)(2)の方法では所望の感光体ドラム1を得ることが極めて困難である。
【0030】
また、上記(3)の方法では、筒状弾性部材が圧縮状態から解放されて外側層4に向け膨張する過程で、不均一に膨張するおそれがある。このため、軸2と外側層4との同軸度が損なわれ、感光体ドラム1が回転した際の振れが非常に大きくなるおそれがある。画像形成装置においては、感光体の周囲に、感光体と当接する帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段等の当接部材が配置されるため、感光体の振れが大きくなると、感光体と当接部材との接触状態が不安定になり、画像ムラが発生するという問題が生じる。
【0031】
一方、前述した特開昭58−86550号公報記載のドラム状像担持体部材(図16参照)において、そのドラム基体31が内方に容易に撓むことができるように構成すれば、このドラム基体31を疑似軟質材として利用することができるようになり、上記特公平4−69383号公報記載の感光体ドラム1(図13〜図15参照)における問題が解決されることが期待できる。
【0032】
しかしながら、このドラム状像担持体部材(図16参照)は、Cu,Al,W,Mo等からなるドラム基体31の両端を円板状の端板33で鋼鉄製の軸34に固設した構造であるから、次のような問題がある。
【0033】
すなわち、軸34に固設された端板33にドラム基体31が固設されており、軸34とドラム基体31とが上記の異種材料で構成されているため、使用環境や輸送環境で温度が変化すると、ドラム状像担持体部材の内部に大きな熱歪が発生する。
【0034】
このため、薄肉円筒状のドラム基体31が歪み、変形して振れが発生し、これによって、現像ローラ等の各プロセス部材との間隔が温度環境によって変動し、確実で安定した接触状態、あるいはギャップ管理が不可能になり、帯電むら、現像不良、転写不良等による画像不良が発生するおそれがある。
【0035】
また、薄肉円筒状のドラム基体31が熱歪で座屈し、破断し、あるいは永久変形してしまうおそれがある。
【0036】
さらに、構成部品の固設部が熱応力で破損してしまうおそれがある。
【0037】
また、ドラム基体31が内方に容易に撓むことができるように構成された場合には、その中央部分をオペレータが誤って押圧してしまうと破損してしまうという問題がある。この種の像担持体は通常、交換部品であるため、その取扱いによって破損するおそれがあると、交換作業が極めて行ない難くなってしまう。
【0038】
本発明は以上のような問題を解決しようとするもので、その第1の目的は、使用環境や輸送環境で温度が変化しても破損等を生じることなく、硬質ローラ等の当接部材との確実で安定した接触状態を得ることが可能であるとともに、製造が簡単な像担持体ユニットを提供することにある。
【0039】
また、第2の目的は、さらに、取扱い性に優れた像担持体ユニットを提供することにある。
【0042】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために請求項1記載の像担持体ユニットは、可撓性を有する薄肉円筒状の像担持体と、この像担持体の内径よりも小さな外径を有し、像担持体の内方に配置された剛性の円筒部材と、この円筒部材上に前記像担持体の両端部を固定する固定部材とを備え、前記像担持体における固定部材との連結部間の軸線方向長さおよび線膨張率がL1およびα1,前記円筒部材における固定部材との連結部間の長さおよび線膨張率がL3およびα3,前記固定部材の前記像担持体および前記円筒部材との連結部間の軸線方向長さがL2,L4、線膨張率がα2,α4であり、
上記軸線方向長さについては、上記連結された像担持体と円筒部材と固定部材とを有する構造体における,上記連結部のうちのある連結点を起点および終点とし,この起点から,当該起点から最も離れた他の連結点へ向かい,この最も離れた連結点から前記終点に向かうに閉ループを考えたときに,前記起点から前記最も離れた連結点に向かう方向を正,前記最も離れた連結点から前記終点に向かう方向を負とし,かつ,
前記像担持体のヤング率をE1,許容応力をσaとしたとき、
n
σa>E1× Σ Li×(1+αi・△T)/L1
i=1
Li:i番目の部材の長さ
αi:i番目の線膨張率
△T:△T=20°C
であることを特徴とする。
【0043】
請求項2記載の像担持体ユニットは、請求項1記載の像担持体ユニットにおいて、前記像担持体は、その内周面と前記円筒部材の外周面との間に、像担持体の許容変形量より小さな間隔を隔てて前記固定部材で支持されていることを特徴とする。
【0044】
請求項3記載の像担持体ユニットは、請求項1,2,3,または4記載の像担持体ユニットにおいて、前記円筒部材および固定部材は、導電性を有していることを特徴とする。
【0045】
【作用効果】
請求項1記載の像担持体ユニットは、可撓性を有する薄肉円筒状の像担持体の両端部が、像担持体の内径よりも小さな外径を有する円筒部材上に固定部材で固定された構成となっているので、像担持体は、固定部材によって固定されていない中央部分が内方に変形可能である。
【0046】
したがって、この像担持体の中央部分は、いわば疑似軟質材として利用することが可能であるため、これに当接される部材が硬質のもの(例えば硬質のローラ)であっても、確実で安定した接触状態を得ることができ、確実に像担持体上に像を形成し、あるいは像を担持させることができる。
【0047】
また、この像担持体ユニットは、像担持体の内方に円筒部材を配置するようにして、像担持体の両端部を固定部材で固定することにより製造することができ、前述した特公平4−69383号公報記載の感光体ドラム1(図13〜図15参照)のように弾性材料層を充填する必要がないから、簡単に製造することが可能である。
【0048】
そして、像担持体の線膨張率と円筒部材の線膨張率とが、略等しく構成されているので、使用環境や輸送環境で温度が変化しても、像担持体ユニットの内部には熱膨張差による熱歪が発生しないか、発生したとしても微小なものとなる。
【0049】
したがって、薄肉円筒状の像担持体の歪み、変形が防止され、振れの発生も防止されるので、現像ローラ等の各プロセス部材との間隔が温度環境によって変動せず、確実で安定した接触状態、あるいはギャップ管理が可能となり、帯電むら、現像不良、転写不良等のない良好な画像を得ることができる。
【0050】
また、像担持体が熱歪で座屈し、破断し、あるいは永久変形してしまうということがなくなり、構成部品の固定部が熱応力で破損してしまうということもなくなるので、機械的信頼性が向上する。
【0051】
すなわち、この請求項1記載の像担持体ユニットによれば、使用環境や輸送環境で温度が変化しても破損等を生じることなく、硬質ローラ等の当接部材との確実で安定した接触状態を得ることが可能であるとともに、製造が簡単であるという効果が得られる。
【0052】
請求項2記載の像担持体ユニットによれば、請求項1記載の像担持体ユニット同様、可撓性を有する薄肉円筒状の像担持体の両端部が、像担持体の内径よりも小さな外径を有する円筒部材上に固定部材で固定された構成となっているので、これに当接される部材が硬質のもの(例えば硬質のローラ)であっても、確実で安定した接触状態を得ることができ、確実に像担持体上に像を形成し、あるいは像を担持させることができ、また、簡単に製造することが可能である。
【0053】
そして、像担持体と円筒部材とが、同種の材料で構成されているので、使用環境や輸送環境で温度が変化しても、像担持体ユニットの内部には熱膨張差による熱歪が発生しないか、発生したとしても微小なものとなる。
【0054】
したがって、薄肉円筒状の像担持体の歪み、変形が防止され、振れの発生も防止されるので、現像ローラ等の各プロセス部材との間隔が温度環境によって変動せず、確実で安定した接触状態、あるいはギャップ管理が可能となり、帯電むら、現像不良、転写不良等のない良好な画像を得ることができる。
【0055】
また、像担持体が熱歪で座屈し、破断し、あるいは永久変形してしまうということがなくなり、構成部品の固定部が熱応力で破損してしまうということもなくなるので、機械的信頼性が向上する。
【0056】
すなわち、この請求項2記載の像担持体ユニットによれば、使用環境や輸送環境で温度が変化しても破損等を生じることなく、硬質ローラ等の当接部材との確実で安定した接触状態を得ることが可能であるとともに、製造が簡単であるという効果が得られる。
【0057】
請求項3記載の像担持体ユニットによれば、請求項1記載の像担持体ユニット同様、可撓性を有する薄肉円筒状の像担持体の両端部が、像担持体の内径よりも小さな外径を有する円筒部材上に固定部材で固定された構成となっているので、これに当接される部材が硬質のもの(例えば硬質のローラ)であっても、確実で安定した接触状態を得ることができ、確実に像担持体上に像を形成し、あるいは像を担持させることができ、また、簡単に製造することが可能である。
【0058】
そして、前記像担持体における固定部材との連結部間の軸線方向長さおよび線膨張率がL1およびα1,前記円筒部材における固定部材との連結部間の長さおよび線膨張率がL3およびα3,前記固定部材の前記像担持体および前記円筒部材との連結部間の軸線方向長さがL2,L4、線膨張率がα2,α4であり、
前記像担持体のヤング率をE1,許容応力をσaとしたとき、
Li:i番目の部材の長さ
αi:i番目の線膨張率
△T:温度差
となるように構成されているので、使用環境や輸送環境で温度が変化しても、像担持体ユニットの内部には、その軸線方向における熱歪が発生しないか、発生したとしても許容応力以下のものとなる。
【0059】
したがって、薄肉円筒状の像担持体の大きな歪み、永久変形が防止され、振れの発生も防止されるので、現像ローラ等の各プロセス部材との間隔が温度環境によって大きく変動せず、確実で安定した接触状態、あるいはギャップ管理が可能となり、帯電むら、現像不良、転写不良等のない良好な画像を得ることができる。
【0060】
また、像担持体が熱歪で座屈し、あるいは破断してしまうということがなくなり、構成部品の固定部が熱応力で破損してしまうということもなくなるので、機械的信頼性が向上する。
【0061】
すなわち、この請求項3記載の像担持体ユニットによれば、使用環境や輸送環境で温度が変化しても破損等を生じることなく、硬質ローラ等の当接部材との確実で安定した接触状態を得ることが可能であるとともに、製造が簡単であるという効果が得られる。
【0062】
請求項4記載の像担持体ユニットによれば、請求項1,2,または3記載の像担持体ユニットにおいて、前記像担持体は、その内周面と前記円筒部材の外周面との間に、像担持体の許容変形量より小さな間隔を隔てて前記固定部材で支持されているので、例えば像担持体ユニットの交換作業時等にオペレータが誤って像担持体の中央部を強く押圧したとしても、像担持体は破損にいたる前に円筒部材によって支持されることとなるため破損しない。したがって、この像担持体ユニットは、前述した特開昭58−86550号公報に開示されたドラム状像担持体部材(図16参照)に比べて取扱い性に優れている。
【0063】
しかも、像担持体を強く押圧してもこれが破損しないから、当接部材を強く当接させることができる。
【0064】
すなわち、この請求項4記載の像担持体ユニットによれば、使用環境や輸送環境で温度が変化しても破損等を生じることなく、硬質ローラ等の当接部材との確実で安定した接触状態を得ることが可能であるとともに、製造が簡単でしかも取扱い性に優れているという効果が得られる。
【0065】
請求項5記載の像担持体ユニットによれば、請求項1,2,3,または4記載の像担持体ユニットにおいて、前記円筒部材および固定部材は、導電性を有しているので、画像形成に必要な像担持体に対する電気的導通をこれら円筒部材および固定部材を通じて得ることができる。したがって、別途導通手段を設ける必要がなくなる。
【0066】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0067】
<第1の実施の形態>
図1は本発明に係る像担持体ユニットの第1の実施の形態を用いた画像形成装置の要部を示す模式図、図2は図1におけるII−II断面図で、主として像担持体ユニットを示す図である。
【0068】
これらの図において、100は像担持体ユニットであり、この実施の形態においては、電子写真方式の画像形成装置に用いられる感光体ユニットとして構成してある。
【0069】
この感光体ユニット100は、図示しない適宜の駆動手段によって図1の矢印方向(時計方向)に回転駆動されるようになっている。
【0070】
感光体ユニット100は、像担持体110と、この像担持体110の両端部111,111を支持する一対の支持部材120,120と、像担持体110の内方に配置された円筒部材140とを備えている。
【0071】
像担持体110は、可撓性を有する薄肉円筒状に形成されており、可撓性を有する基材の表面(外周面)に感光層を形成することにより構成されている。例えば、基材としては、電鋳法にて作製したニッケルシームレス管を用いることができる。感光層は、いわゆるOPC(有機感光体)をディッピング法で形成することができる。このような像担持体110の可撓性すなわち柔軟さは、基材の厚みと径とを調整することにより決定することが可能であるから、使用される画像形成装置に応じて適宜設定することが可能である。例えば、基材厚み20〜200μm、基材直径10〜300mmの範囲で、後述する許容変形量δ2が20〜500μm程度となるように適宜設定する。なお、OPCは主として樹脂からなるので、可撓性の面では優れるが、基材との密着性を確保し、レーザー光の干渉対策を施すために、基材とOPCとの間に下引き層を形成することが望ましい。下引き層としては、酸化亜鉛、酸化チタン等のレーザー光を吸収可能な粒子をナイロン樹脂等の樹脂に分散させた層が好適である。
【0072】
支持部材120は、像担持体110の端縁部111aよりも多少中央側に位置しており、固定部材としての固着部材121と、スペーサ130とを備えている。
【0073】
固着部材121は、それ自体の熱膨張を無視し得る短い長さで、像担持体110と円筒部材140とを、その両端部付近で支持し、連結している。ここで、図2に示すように、像担持体110における固着部材121との連結部間の軸線方向長さをL1、円筒部材140における固着部材121との連結部間の長さをL3とすると、L1=L3となる。
【0074】
したがって、感光体ユニット100をとりまく温度が変化して温度差が発生した場合でも、後述するように、像担持体110と円筒部材140とを、その線膨張率を略等しく構成し、あるいは同種の材料で構成することによって、L1,L3の長さの変化を略同じとし、像担持体110に生じる歪や変形を小さくし、良好な機械精度を保持することができる。
【0075】
上記固着部材121,スペーサ130は円筒部材140の外周面に円環状に配置され、円筒部材140と像担持体110との間に介装されている。
【0076】
この実施の形態において、固着部材121は導電性接着剤、例えば、エポキシ系、シアノ系、アクリル系の樹脂接着剤に導電性粒子を分散させた導電性接着剤で構成されている。なお、導電性粒子としては、金属(銀、アルミ等)、カーボン等を用いることができる。
【0077】
図3は主としてスペーサ130の一例を示す模式図で、図(a1)は像担持体110が装着される前の状態を示す正断面図、図(a2)は図(a1)の部分左側面図、図(a3)は作用説明図、図(b1)は像担持体110が装着された後の状態を示す正断面図、図(b2)は図(b1)の部分左側面図、図(c)は像担持体110が装着された後の状態を示す左側面である。
【0078】
これらの図に示すように、この実施の形態におけるスペーサ130は、円筒部材140の外周面145に固着される薄リング状の基部131と、この基部131の外周面に突設された弾性部としての弾性突起132とを備えている。基部131は、例えば金属または合成樹脂で構成され、弾性突起132は、例えばシリコンゴムで構成されている。弾性突起132は、図(c)に示すように、基部131の円周方向に等間隔で複数(図では12個)設けられている。図(a2)に示すように、基部131の外径Rfは像担持体110の内径Raよりも小さく設定されており、像担持体110が装着される前の弾性突起132の先端を結んだ円の半径(像担持体110の中心から弾性突起132の先端までの距離)Reは像担持体110の内径Raよりも大きく設定されている。なお、基部131の厚さは100μm程度、弾性突起132の高さは、図(b1)(b2)に示すように像担持体110が装着された状態で同じく100μm程度である。弾性突起132は、例えば、シリコン系ゴム塗料を基部131の表面に印刷することにより形成することが可能である。
【0079】
像担持体110は、これを円筒部材140にかぶせた後(円筒部材140を像担持体110に挿入した後)、その両端部111と円筒部材140の外周面との間に接着剤121を注入することによって円筒部材140上に固着される。
【0080】
この際、スペーサ130は、次のように作用する。
【0081】
像担持体110を図(a1)に矢印X1で示すように円筒部材140にかぶせる(円筒部材140を像担持体110に挿入する)過程で、スペーサ130の先端は像担持体110の内面と接触して矢印X1方向に押され、図(a3)に示すように一時的に矢印X1方向に変形する。
【0082】
その後、円筒部材140が像担持体110に完全に挿入され、矢印X1方向に作用する外力がなくなると、スペーサ130は、それ自身の弾性力(復原力)によって像担持体110を図(b1)に示すように矢印X2方向に多少押し戻しつつ同図に示すように押しつぶされた状態となり、それ自身の弾性によって内方から像担持体110を支持することとなる。
【0083】
ここで、弾性突起132は、図(c)に示すように、基部131の円周方向に等間隔で複数設けられているので、弾性突起132の弾性力(復原力)fcが像担持体110に対してほぼ均一に作用することとなり、結果として、図(b2)に示すように、像担持体110は、円筒部材140との間隔Sがほぼ均一となる状態(すなわちほぼ真円状態)で円筒部材140上に装着されることとなる。このような状態で像担持体110の両端部111と円筒部材140の外周面との間に接着剤121(図2参照)が注入されて像担持体110が円筒部材140上に固着される。
【0084】
円筒部材140の外周面145と像担持体110の内周面113との間の間隔Sは、像担持体110の許容変形量、すなわち像担持体110を内方に変形させたときに破壊にいたる変形量δ2(図2参照)よりも小さく設定されている。
【0085】
図2に示すように、円筒部材140は、その両端部141,141が、それぞれ円板状の側板142,143に固定されている。円筒部材140および側板142,143は、極めて変形しにくい金属あるいは合成樹脂等の高剛性材で構成されている。合成樹脂で構成する場合には、これにアルミニウム、ニッケル、銅等の金属を蒸着し、あるいはメッキ等で導電層を形成するか、または、樹脂中に、カーボン等の導電材を入れて導電性を付与する。
【0086】
円筒部材140と側板142,143との固定は適宜の手段、例えば接着、圧入、圧着等によって行なうことができる。側板142,143には、軸142a,143aが一体的に設けられており、一方の軸143aには歯車144が固定されている。
【0087】
以上のような像担持体ユニット100は、次の(1)(2)のいずれかによって構成する。
【0088】
(1)像担持体110の線膨張率と円筒部材140の線膨張率とが、略等しくなるように構成する。
【0089】
例えば、像担持体110の基材をニッケルシームレス管(線膨張率は12.8×10-6/゜C〜13.4×10-6/゜Cである)とした場合には、筒状部材140をガラス繊維または雲母等の無機質(ミネラル)入りのPET(ポリエチレンテレフタレート)で構成する。ガラス含有率を55%(重量比)とすることによって、線膨張率を11.0×10-6/゜C〜14.0×10-6/゜Cとすることができる。
【0090】
(2)像担持体110と円筒部材140とを同種の材料で構成する。
【0091】
例えば、像担持体110の基材をニッケルシームレス管とした場合には、筒状部材140をニッケルあるいはステンレスで構成する。
【0092】
次に、画像形成装置の一例について説明すると、以上のような像担持体ユニット100は、例えば図2に示すように、軸142a,143aが装置のフレームFに回転可能に支持される。146,146はベアリングである。歯車144とベアリング146との間には、ガタつき防止のための圧縮バネ147が設けられている。
【0093】
このようにして、感光体ユニット100はフレームFに回転可能に支持されており、図示しない適宜の駆動手段によって図1矢印方向(時計方向)に回転駆動される。
【0094】
図1に示すように、感光体ユニット100の回りには、その回転方向に沿って、帯電手段210、露光手段220、現像手段230、転写手段240、クリーニング手段250、および除電手段260が配置されている。
【0095】
帯電手段210は、像担持体110の外周面に当接して回転する、硬質の高抵抗樹脂ローラ、または、表面に高抵抗層をもつ金属ローラで構成されており、感光体ユニット100の像担持体110の外周面を一様に帯電させるようになっている。
【0096】
露光手段220は、レーザー光Lで像担持体110の外周面を走査することにより、像担持体110上に静電潜像を形成するようになっている。
【0097】
現像手段230は、像担持体110の外周面に当接して回転し、像担持体110の外周面にトナーを付着させてトナー像を形成する硬質の現像ローラ231と、この現像ローラ231に供給されるトナーが収容されたトナー貯留室232とを備えている。現像ローラ231は、表面を粗面化した金属ローラ、または、硬質の樹脂ローラで構成されている。
【0098】
転写手段240は、硬質の高抵抗樹脂ローラ、または、表面に高抵抗層をもつ金属ローラで構成されており、像担持体110上のトナー像を転写媒体(用紙等の記録媒体あるいは中間転写ベルト)Tに転写させるようになっている。
【0099】
クリーニング手段250は、像担持体110の外周面に当接し、転写手段240によりトナー像が転写された後に像担持体110の外周面に残存している残留トナーを掻き落として除去するクリーニング部材としてのクリーニングブレード251と、このブレード251によって掻き落とされたトナーを回収するトナー回収室252とを有している。
【0100】
除電手段260は除電ランプで構成されており、像担持体110の表面に一様に光を照射することにより、その表面の除電を行なうようになっている。
【0101】
以上のような各手段のうち、帯電ローラ210、および転写ローラ240は、いずれも、像担持体110と接触して像担持体110の内周面113が円筒部材140の外周面145と当接するまで像担持体110を内方に撓ませ、かつ像担持体110の周速と同一の周速度で回転するようになっている。このように帯電位置および転写位置においては、像担持体110の内周面113と円筒部材140の外周面145とが接触するから、両者間の摩擦係数は、できるだけ小さくしておくことが望ましい。帯電ローラ210は、図1に示すようにモータ212で(直接または歯車等を介して)駆動されて像担持体110の周速と同一の周速度で回転し、転写ローラ240は、像担持体110との接触により(転写媒体Tがある場合には転写媒体Tを介した接触により)、像担持体110に従動して像担持体110の周速と同一の周速度で回転するようになっている。なお、帯電ローラ210は、その軸211が図示しない一対の軸受部材で回転可能に支持され、かつ図示しない公知の付勢手段(例えばバネ)で円筒部材140に向けて付勢されている。転写ローラ240の支持構造および付勢構造も同様である。
【0102】
現像ローラ231は、像担持体110の内周面113が円筒部材140の外周面145に当接しないように像担持体110を内方に撓ませて像担持体110に接触している。ローラ当接部位における像担持体110の内側に撓んだ内周面113と円筒部材140の外周面145との間隙をS1で示してある。現像ローラ231の軸233は、一対の軸受部材234,234で回転可能に支持されており、この軸受部材234が、像担持体110の両側において円筒部材140の外周面145に回転可能に当接していることによって、現像ローラ231と円筒部材140との間隔が規制されている。なお、現像ローラ231は、その軸233が図示しない付勢手段により円筒部材140に向けて付勢されている。また、現像ローラ231は、軸233が図示しない駆動手段で駆動されることにより、回転駆動されるようになっている。現像ローラ231の回転速度は、その周速が像担持体110の周速と同一となるようにしても良いし、異なるように(通常は増速)しても良い。
【0103】
クリーニング手段250のクリーニングブレード251は、像担持体110の内周面113が円筒部材140の外周面145に当接するまで像担持体110を押圧してその外周面のトナーを除去するようになっている。このクリーニング位置においては、像担持体110の内周面113と円筒部材140の外周面145とが接触するから、両者間の摩擦係数は、できるだけ小さくしておくことが望ましい。
【0104】
以上のような画像形成装置による画像形成動作は次の通りである。
【0105】
図示しない駆動手段によって感光体ユニット100が回転駆動され、これによって像担持体110も回転駆動される。
【0106】
その過程において、像担持体110は、先ず除電手段260によって除電された後、帯電手段210によって一様に帯電させられる。
【0107】
次いで、露光手段220によりレーザー光Lが照射されることで像担持体110上に静電潜像が形成され、この静電潜像は現像手段230で現像されてトナー像となる。
【0108】
このトナー像は、転写ローラ240と像担持体110との間に供給される転写媒体Tに転写ローラ240によって転写される。
【0109】
この際、完全に転写されることなく像担持体110の表面に残留したトナーは、クリーニング手段250のクリーニングブレード251によって掻き落とされる。
【0110】
その後、像担持体110は、再び除電手段260によって除電され、次の画像形成がなされる。
【0111】
以上のような像担持体ユニット100によれば、次のような作用効果が得られる。
【0112】
(a)像担持体110は、可撓性を有する薄肉円筒状であり、その両端部111が一対の支持部材120,120によって支持された構成となっているので、像担持体110は、支持部材120によって支持されていない中央部分114が内方に変形可能である。
【0113】
したがって、この像担持体110の中央部分114は、いわば疑似軟質材として利用することが可能であるため、これに当接される帯電手段等が硬質ローラであっても、確実で安定した接触状態を得ることができ、確実に像担持体110上に像を形成し、あるいは像を担持させることができる。
【0114】
この点について、図4〜図7を参照して詳しく説明する。
【0115】
図4は、像担持体110に対して硬質ローラ200を軽く当接させた状態を示している。なお、説明を分かりやすくするために、完全に円柱形とはなっていない硬質ローラの例として、逆クラウン形状のローラ200を用いている。
【0116】
像担持体110は、その両端部111が前述した一対の支持部材120,120によって支持されているが、図の煩雑を避けるために図示していない。
【0117】
図4に示すように、硬質ローラ200を軽く当接させただけでは、その両端201,201のみが像担持体110に接触するだけであり、中央部202は接触しない。したがって、このような状態では、良好な帯電状態、現像状態、転写状態等は得られない。
【0118】
図5は、硬質ローラ200を、図4に示した状態からさらに像担持体110に向けて、硬質ローラのクラウン量δ3(図4参照)よりも大きな量δ4だけ押圧した場合の像担持体110の変形状態を有限要素法にて解析し、像担持体の変形量を倍率50倍にして示したワイヤーフレームの斜視図である。像担持体110は軸対称変形するので、図の煩雑を避けるために半分だけ示してある。
【0119】
図6は、図5における矢印X方向からみた図である。図7は図6におけるa断面、b断面、c断面、およびd断面における像担持体110の外周面を図5における矢印Z方向から見て重ね合わせて示した図で、図中実線aはa断面、破線bはb断面、一点鎖線cはc断面、二点鎖線dはd断面における像担持体110の外周面をそれぞれ示している。
【0120】
図5〜図7から明らかなように、クラウン量δ3の硬質ローラ200を像担持体110に向けて、クラウン量δ3よりも大きな量δ4で押圧すると、その押圧部(いわゆるニップ部)Nにおいて、像担持体110は硬質ローラ200の形状に忠実に沿って変形し、ニップ部N全域に亙って硬質ローラ200に確実に接触することとなる。
【0121】
これは、像担持体110が可撓性を有する薄肉円筒状であることによる作用である。薄肉円筒状である像担持体110は、軸方向に直交する平面方向に非常に大きな可撓性を有しており、逆クラウン形状の硬質ローラ表面に追従するようにして軸方向に連続的に変形形状を変えて行く。薄肉円筒の軸方向にも金属の弾性範囲内で極微小な変形は発生するが、軸方向の剛性は直交する断面方向の剛性に比べて非常に高く、可撓性にはあまり大きく貢献しない。したがって、像担持体の変形は、軸に直交する断面方向の可撓性によるところが非常に大きい。これは薄肉円筒特有の変形モードであり、この変形を利用して像担持体を変形させることにより、硬質なローラの凹凸に追従させ、安定した接触を確保することができる。
【0122】
図6および図7を参照し、像担持体の変形状態について、より詳しく説明すると、図6におけるa部(像担持体の両端部分(支持部材120で支持されている部分))では、図7に実線aで示すように、像担持体110は基本的に真円状態に保持されている。
【0123】
b部(ローラ200の端部直近)では、図7に破線bで示すように、最大変形量であるδ4だけ内方に変形しているが、円周方向におけるb点(ニップ部)近くのb1点では大きく外側に膨らむように変形している。
【0124】
d部はローラ200の中央部であり、像担持体はδ4−δ3だけ変形しているが、円周方向におけるd点近くのd1点では外側に膨らむように変形している。逆に、このd1点から多少離れたd2点では内側にやや凹むように変形している。
【0125】
b部からd部に至る部分ではb部における変形状態からd部における変形状態へと連続的に変化して行く。その一例としてc部での変形状態を一点鎖線cで示す。c1点はd1点よりもb1点寄りで膨らんでおり、c2点の凹み量はd2点の凹み量よりも小さい。
【0126】
以上からも明らかなように、薄肉円筒状である像担持体110は、軸方向に直交する平面方向に非常に大きな可撓性を有していて、逆クラウン形状の硬質ローラの表面に追従するようにして軸方向に連続的に変形形状を変えて行く。
【0127】
なお、以上の説明では、説明を分かりやすくするために、完全には円柱形とはなっていない硬質ローラの例として、逆クラウン形状のローラ200を用いて説明したが、多少の凹凸のあるローラは逆クラウン形状のローラを複数本連続させたものと同等であり、また多少のテーパがついたローラは逆クラウン形状(またはクラウン形状)のローラの一部と同等であるから、像担持体110は、完全には円柱形とはなっていない硬質ローラ(製造誤差程度の凹凸やテーパを有するローラ)に対しても良好に確実かつ安定した状態で接触することとなる。
【0128】
上述した画像形成装置では、帯電手段210、転写手段240が、像担持体110と接触して像担持体110の内周面113が円筒部材140の外周面145と当接するまで像担持体110を内方に撓ませる硬質ローラで構成されているので、帯電位置および転写位置においては、像担持体110とこれら硬質ローラ210,240とを確実かつ安定した状態で接触させることができ、確実に像担持体110を帯電させ、あるいは像を転写させることができる。
【0129】
硬質ローラが、像担持体110と接触してその内周面113が円筒部材140の外周面145と当接するまで像担持体110を内方に撓ませると、像担持体110は、硬質ローラと円筒部材140との間に挟まれた状態となる。このような状態においては、像担持体110が硬質ローラに対して適度な圧接力で良好に確実かつ安定した状態で接触することとなる。
【0130】
(b) この像担持体ユニット100は、像担持体110の内方に円筒部材140を配置するようにして、像担持体110の両端部111を一対の支持部材120で支持することにより製造することができ、前述した特公平4−69383号公報記載の感光体ドラム1(図13〜図15参照)のように弾性材料層を充填する必要がないから、簡単に製造することが可能である。
【0131】
(c) 像担持体ユニット100は、上記(1)(2)のいずれかの構成となっているので、使用環境や輸送環境で温度が変化しても、像担持体ユニット100の内部には熱膨張差による熱歪が発生しないか、発生したとしても微小なものとなる。
【0132】
したがって、薄肉円筒状の像担持体110の歪み、変形が防止され、振れの発生も防止されるので、現像ローラ231等の各プロセス部材との間隔が温度環境によって変動せず、確実で安定した接触状態、あるいはギャップ管理が可能となり、帯電むら、現像不良、転写不良等のない良好な画像を得ることができる。
【0133】
また、像担持体110が熱歪で座屈し、破断し、あるいは永久変形してしまうということがなくなり、構成部品の固定部が熱応力で破損してしまうということもなくなるので、機械的信頼性が向上する。
【0134】
(d) 支持部材120は、像担持体110をその内方から弾性的かつ均一に支持する弾性部を有するスペーサ130と、このスペーサ130で支持された像担持体110と円筒部材140とを固着する固着部材121とを備えているから、特開昭58−86550号のドラム状像担持体部材(図16)に比べて製造が容易であると共に、スペーサ130で支持された像担持体110は円筒部材140に対してその間隔Sが円周方向において等間隔すなわちほぼ真円状態で支持された状態で固着部材121で固着されることとなる。したがって、像担持体110の軸線方向への変位や振れが極めて少ない安定した回転状態が得られることとなる。
【0135】
(e) 像担持体110の内方には、剛性の円筒部材140が、その外周面145と像担持体110の内周面113との間に像担持体110の許容変形量δ2より小さな間隔Sを隔てて配置されているから、例えば像担持体ユニット100の交換作業時等にオペレータが誤って像担持体110の中央部を強く押圧したとしても、像担持体110は破損にいたる前に円筒部材140によって支持されることとなるため破損しない。したがって、この像担持体ユニット100は、前述した特開昭58−86550号公報に開示されたドラム状像担持体部材(図16参照)に比べて取扱い性に優れている。
【0136】
(f) 像担持体110を強く押圧してもこれが破損しないから、硬質ローラやクリーニングブレード等の当接部材を強く当接させることができる。
【0137】
(g) スペーサ130は、円筒部材140が像担持体110の内方に配置されたときに、円筒部材140と像担持体110とで圧縮されることにより像担持体110を弾性的に支持する構成であるから、このスペーサ130を円筒部材140(または像担持体110)に予め装着しておくことにより、より一層簡単に像担持体ユニットを製造することができる。
【0138】
(h) スペーサ130が、像担持体110をその内方からその円周方向において複数箇所かつ等間隔で弾性的に支持する構成となっているので、スペーサ130による弾性力が像担持体110の円周方向全体に亙って良好に分散され、像担持体110が円筒部材140に対してより均一に支持されることとなる。
【0139】
(i) 円筒部材140および支持部材120が導電性を有しているので、画像形成に必要な像担持体110に対する電気的導通をこれら円筒部材140および支持部材120を通じて得ることができる。したがって、別途導通手段を設ける必要がなくなる。
【0140】
(j) 支持部材120は、像担持体110の端縁部111aよりも多少中央側に位置しているので、像担持体110が円筒部材140に対してより一層均一に支持されることとなり、より一層振れ精度の向上が図られる。
【0141】
詳しく説明すると、像担持体110を電鋳法で構成した場合、その端縁部111aには、カッティングによるカエリやバリが生じることとなる。仮に、このバリ等を除去することなく、支持部材120で像担持体110の端縁部111aを支持する構成とすると、バリ等による影響で、像担持体110の円筒部材140に対する間隔Sが不均一になってしまうおそれがある。一方、上記バリ等を除去しようとすると、薄肉円筒状である像担持体110に新たな歪を加えたり、いたずらに変形を増やすばかりでなく、非常に工数が掛かるという問題も生じる。
【0142】
これに対し、この実施の形態の像担持体ユニットによれば、支持部材120が像担持体110の端縁部111aよりも多少中央側に位置しているので、像担持体110に上記バリ等があってもその影響を受けることなく、像担持体110を円筒部材140に対して均一に支持することができ、一層振れ精度の向上を図ることができる。
【0143】
(k)上述した画像形成装置においては、硬質ローラである帯電ローラ210,転写ローラ240が、像担持体110の周速と同一の周速度で回転するので、帯電ローラ210,転写ローラ240と像担持体110との接触部すなわち帯電位置および転写位置においては像担持体と各ローラとの間に相対速度差が生じない。したがって、接触部における摩擦が発生せず、これによる振動挙動も生じないため、安定した接触回転が得られることとなり、安定した帯電動作および転写動作が得られることとなる。
【0144】
また、上記振動挙動による像担持体110の破損も生じ難くなり、信頼性が向上する。
【0145】
なお、現像ローラ231の回転速度を、その周速が像担持体110の周速と異なるようにした場合、像担持体110は現像ローラ231との接触部において、現像ローラ231から摩擦力を受けることとなるが、両者の当接は、像担持体110の内周面113と円筒部材140の外周面145との間に間隔S1が形成される程度の当接であるから、像担持体110と現像ローラ231との当接力は小さい。このため、両者間の摩擦力も小さく、したがって、その変動による振動挙動も小さくなり、現像ローラ231と像担持体110とは、比較的安定した状態で接触し、回転することとなる。
【0146】
<第2の実施の形態>
図8は本発明に係る像担持体ユニットの第2の実施の形態の要部を示す模式図で、(a)は円筒部材およびスペーサを示す上半分の側面図、(b)は部分斜視図である。
【0147】
この第2の実施の形態が、前述した第1の実施の形態と異なる点は、スペーサの構造にあり、その他の点に変わりはない。
【0148】
この第2の実施の形態におけるスペーサ133は、円筒部材140の外周面145に固着される薄リング状の基部133aと、この基部133aの外周面に突設された弾性部としての弾性突条133bとを備えており、前述した第1の実施の形態におけるスペーサ130の弾性部がいわば点状の12個の突起132であったのに対し、弾性部が軸線方向に一定の長さを有する24個の弾性突条133bとなっている点でのみ第1の実施の形態と異なっている。
【0149】
弾性部がこのような突条133bであると、像担持体110がより安定した状態で支持されることとなる。
【0150】
また、個数が多いことによって、弾性部の復原力が像担持体110に対して、より一層均一に作用することとなり、結果として、像担持体110と円筒部材140との間隔Sがより一層均一となる。
【0151】
<第3の実施の形態>
図9は本発明に係る像担持体ユニットの第3の実施の形態の要部を示す模式図で、(a)は円筒部材およびスペーサを示す上半分の側面図、(b)は部分斜視図、(c)は図(a)の部分拡大図、(d)は作用説明図である。
【0152】
この第3の実施の形態が、前述した第1の実施の形態と異なる点は、スペーサの構造にあり、その他の点に変わりはない。
【0153】
この第3の実施の形態におけるスペーサ134は、円筒部材140の外周面145に固着される金属テープにエンボス加工を施すことにより、それ自身が弾性部として構成されている。なお、エンボス加工により形成される弾性突条134bの数は24個である。
【0154】
このようなスペーサ134は、図(d)に示すように像担持体110が装着されると、弾性突条134bが押圧された状態となり、それ自身の弾性によって内方から像担持体110を支持することとなる。
【0155】
このようなスペーサ134は、金属テープにエンボス加工を施すことにより簡単に作成することができる。
【0156】
また、スペーサ134によって像担持体110と円筒部材140との導通がとられるので、この実施の形態においては、接着剤121に必ずしも導電性を持たせる必要がなくなる。
【0157】
<第4の実施の形態>
図10は本発明に係る像担持体ユニットの第4の実施の形態の要部を示す模式図で、(a)は円筒部材およびスペーサを示す上半分の部分斜視図、(b)は断面図、(c)は作用説明図である。
【0158】
この第4の実施の形態が、前述した第1の実施の形態と異なる点は、スペーサの構造にあり、その他の点に変わりはない。
【0159】
この第4の実施の形態におけるスペーサ135は、全体として截頭円錐筒形状をなしており、円筒部材140の外周面145に固着される薄リング状の基部135aと、この基部135aから一体的に放射状に形成された弾性部としての24枚の可撓片135bとを備えている。なお、円筒部材140にはスペーサ135の基部135aの固着を確実にするために、円環状の凹部140aを設けることが望ましい。
【0160】
このようなスペーサ135は、像担持体110を図(b)に矢印X1で示すように円筒部材140にかぶせると(円筒部材140を像担持体110に挿入すると)、可撓片135bが矢印Y方向に撓み、それ自身の復原力によって図(c)に示すように内方から像担持体110を支持することとなる。
【0161】
このようなスペーサ135は薄肉金属または合成樹脂を截頭円錐筒形状に成形し、これにスリット135cを形成することにより簡単に作成することができる。
【0162】
また、スペーサ135を金属で作成した場合には、これによって像担持体110と円筒部材140との導通がとられるので、接着剤121に必ずしも導電性を持たせる必要がなくなる。
【0163】
<第5の実施の形態>
図11は本発明に係る像担持体ユニットの第5の実施の形態の要部を示す模式図で、上半分の断面を示した図である。下半分は上半分と対称である。
【0164】
この第5の実施の形態が、前述した第1の実施の形態と異なる点は、像担持体110の両端部111の固定構造にあり、その他の点に変わりはない。
【0165】
この第5の実施の形態において、円筒部材140上に像担持体110の両端部111を固定する固定部材151,152は、それぞれ像担持体110と円筒部材140との間に円環状に設けられており、像担持体110との連結部(例えば接着等による接合部)151a,152aと、円筒部材140との連結部151b,152bとを有している。
【0166】
そして、像担持体110における固定部材151,152との連結部151a,152a間の軸線方向長さおよび線膨張率がL1およびα1,円筒部材140における固定部材151,152との連結部151b,152b間の長さおよび線膨張率がL3およびα3,固定部材152,151の像担持体110および円筒部材140との連結部間、すなわち152a,152b間、151a,151b間の軸線方向長さがL2,L4、線膨張率がα2,α4であり、
像担持体110のヤング率をE1,許容応力をσaとしたとき、
Li:i番目の部材の長さ
αi:i番目の線膨張率
△T:温度差
n:連結された部材の総数(この場合n=4)
i:連結された部材の順番(この場合iは1からn)
となるように構成してある。なお、具体例については、後述する実施例の欄に記載してある。
【0167】
ここで、先ず、上式に関する定義について図12(a)を参照して説明する。
【0168】
図12(a)(b)は、長さおよび熱膨張率がそれぞれ異なる部材を連結した構造体において発生する熱膨張を説明するための図である。
【0169】
図12において、部材1,2,3,4は、それぞれ、
長さが、L1,L2,L3,L4
熱膨張率が、α1,α2,α3,α4である。
【0170】
なお、ここでの長さは、部材同士の連結部(接合部)間の長さである。
【0171】
ここで熱膨張を考えるとき、長さについては、その正負を次のようにして定義する。
【0172】
先ず、連結した構造体のある連結点を起点および終点とする。図12(a)では、最左端の連結点における部材1側の連結点ア点を起点とし、部材4側の連結点イを終点とする。
【0173】
次に、起点アに対して最も離れた連結点を決める。図12(a)では、最右端に位置するウ点が、起点アに対して最も離れた連結点である。
【0174】
そして、起点ア→点ウ→終点イという時計回りの閉ループを考えたときに、
起点アからウ点に向かう方向を正(図中右方向)、ウ点から終点イに向かう方向を負(図中左方向)とする。
【0175】
すなわち、起点アから、順次連結点を追ってゆくとき、ある連結点に対して次の連結点が有る方向(ある連結点から次の連結点に向かう方向)によって上記のように正負を決定する。
【0176】
したがって、部材1,2,3,4の長さの正負は、L1,L2は+、L3,L4は−となる。
【0177】
次に、上式の意義について図12(b)を参照して説明する。
【0178】
ア点とイ点とを連結した時点(すなわち構造体を作成した時点)から、構造体をとりまく環境温度が変化し、温度差△T(△Tは、温度が上昇した場合を+、低下した場合を−とする)が生じたとする。ここで、仮にア点とイ点とが連結されていないとすると、温度変化によって伸縮した各部材1,2,3,4の長さL1’,L2’,L3’,L4’は、
L1’=L1×(1+α1×△T)
L2’=L2×(1+α2×△T)
L3’=L3×(1+α3×△T)
L4’=L4×(1+α4×△T)
となる。
【0179】
ここで、これらの総和が0でないとすると、図12(b)に示すようにア点とイ点とはずれることとなり、そのずれ量Ltは、
となる。
【0180】
なお、Ltの値が正であれば、図12(b)に示すように、イ点はア点より正側(右側)にずれ、負であれば負側(左側)にずれることとなる。
【0181】
しかしながら、実際には、ア点とイ点とは連結されているから、上記ずれは生じず、その分、構造体内に熱歪ないし熱応力が生じることとなる。
【0182】
この熱歪ないし熱応力は、構造体内の最も弱い部材に対して作用し、その部材の許容応力を越える熱応力が生じると、その部材が破壊し、あるいは永久変形することとなる。
【0183】
この実施の形態では、可撓性を有する薄肉円筒状の像担持体110が最も弱い部材であるから、温度変化があった場合、熱応力は像担持体110に作用することとなる。
【0184】
しかしながら、この実施の形態では、上述したように、像担持体110における固定部材151,152との連結部151a,152a間の軸線方向長さおよび線膨張率がL1およびα1,円筒部材140における固定部材151,152との連結部151b,152b間の長さおよび線膨張率がL3およびα3,固定部材152,151の像担持体110および円筒部材140との連結部間、すなわち152a,152b間、151a,151b間の軸線方向長さがL2,L4、線膨張率がα2,α4であり、
像担持体110のヤング率をE1,許容応力をσaとしたとき、
となるように構成されているので、使用環境や輸送環境で温度が変化し、像担持体ユニットの内部に、その軸線方向における熱歪が発生したとしてもその熱応力は許容応力以下のものとなる。
【0185】
したがって、薄肉円筒状の像担持体110の大きな歪み、永久変形が防止され、振れの発生も防止されるので、現像ローラ等の各プロセス部材との間隔が温度環境によって大きく変動せず、確実で安定した接触状態、あるいはギャップ管理が可能となり、帯電むら、現像不良、転写不良等のない良好な画像を得ることができる。
【0186】
また、像担持体110が熱歪で座屈し、あるいは破断してしまうということがなくなり、構成部品の固定部が熱応力で破損してしまうということもなくなるので、機械的信頼性が向上する。
【0187】
なお、上式におけるσaとしては、永久変形を問題とする場合には比例限度または耐力(0.2%耐力等)を採用し、破壊を問題とする場合には、引っ張り強さを採用する。
【0188】
また、図11に示したこの実施の形態における部材と、図12に示した各部材との対応関係について、念のために説明すると、
像担持体110は、図12の部材1に、
固定部材152は、図12の部材2に、
円筒部材140は、図12の部材3に、
固定部材151は、図12の部材4に、
連結部151aは、図12のア点およびイ点に、
連結部152aは、図12のウ点に、
それぞれ対応している。
【0189】
【実施例】
以下、具体的な実施例について説明する。
【0190】
なお、実施例1〜5は前述した構成(2)の実施例であり、実施例6〜7は前述した構成(1)の実施例であり、実施例8は前述した第5の実施の形態の実施例である。
【0191】
{実施例1}
<像担持体110>
像担持体110の基材は、厚さ50μm、内径85.36mm、長さ400mmのニッケル電鋳管とした。
【0192】
感光層は、上記基材に下引き層を形成し、厚さ20μmのOPC(有機感光層)をディッピングにて形成した。
【0193】
<円筒部材140>
パイプ状の円筒部材として、直径84.91mm、長さ440mm、厚さ2mmのステンレス製中空円筒を用いた。
【0194】
円板状の側板142,143は、ステンレス製の切削部品で構成した。
【0195】
なお、円筒部材140および側板142,143は、その全体を切削加工により成形することもできる。
【0196】
<支持部材120>
スペーサ130は、その基部131として金属テープを用い、この金属テープの外周面に、弾性印刷にて弾性突起132を形成した。
【0197】
固着部材121としては、導電性接着剤を用いた。
【0198】
円筒部材140の外周面145と像担持体110の内周面113との間の間隔Sは0.225mmとした。
【0199】
<硬質ローラ>
硬質ローラは具体的には次のようにして構成することができる。
【0200】
すなわち、硬質のローラ状基体の表面に抵抗層を設けることによって構成する。
【0201】
ローラ状基体としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、銅等の金属を、切削、研磨等で、振れ精度、表面精度を良好に加工する。表面はバフ加工、ポリッシュ加工、スーパーフィニッシュ加工、ダイヤモンド研削、センタレス研磨等で鏡面仕上げを施す。
【0202】
または、合成樹脂例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(NY)、等をローラ状に成形し、これにアルミニウム、ニッケル、銅等の金属を蒸着、メッキ等で導電層を形成するか、または、樹脂中に、カーボン等の導電材を入れ、導電性樹脂として導電性を付与すれば良い。
【0203】
抵抗層は、体積抵抗108〜1014Ωcmの抵抗性樹脂を厚さ2μm〜1mm位に形成し中高抵抗の表面層を形成する。抵抗性樹脂としては、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレン等の薄膜樹脂に、カーボン、アルミニウム、ニッケル等の導電性粒子を分散したものを採用することができる。また、ポリビニールアニリン等の導電性樹脂やイオン導電性樹脂を用いても良い。
【0204】
以上のような硬質ローラは、ローラ状基体が硬質なため、鏡面仕上げが可能であり、これに形成された薄膜の樹脂の表面も極めて平滑である。
【0205】
また、表面が薄膜の樹脂であるため、硬度のバラツキや導電性のバラツキも少ない。
【0206】
<像担持体の変形状態を有限要素法にて解析するために用いた各部材等>
図5および図7に示した像担持体の変形状態を有限要素法にて解析するために用いた各部材等の諸元は次の通りである。
【0207】
{実施例2}
像担持体110の基材および、円筒部材140を両者ともステンレスで構成した。その他は実施例1と同じである。
【0208】
{実施例3}
像担持体110の基材および、円筒部材140を両者ともポリエチレンテレフタレート(PET)で構成した。像担持体110の基材および円筒部材140には、これにアルミニウム、ニッケル、銅等の金属を蒸着し、あるいはメッキ等で導電層を形成し、または、樹脂中に、カーボン等の導電材を入れて導電性を付与した。
【0209】
その他は実施例1と同じである。
【0210】
{実施例4}
像担持体110の基材、円筒部材140を、アルミ、ジュラルミン、マグナリウムのいずれかで構成した。
【0211】
その他は実施例1と同じである。
【0212】
{実施例5}
像担持体110の基材、円筒部材140を、黄銅、銅、りん青銅のいずれかで構成した。
【0213】
その他は実施例1と同じである。
【0214】
{実施例6}
筒状部材140をガラス繊維含有率55%(重量比)のPET(ポリエチレンテレフタレート)で構成した。円筒部材140には、これにアルミニウム、ニッケル、銅等の金属を蒸着し、あるいはメッキ等で導電層を形成し、または、樹脂中に、カーボン等の導電材を入れて導電性を付与した。
【0215】
その他は実施例1と同じである。
【0216】
{実施例7}
像担持体110の基材をアルミニウム管(線膨張率は23.1×10-6/゜Cである)で構成し、筒状部材140をガラス繊維または雲母等の無機質(ミネラル)入りのPET(ポリエチレンテレフタレート)で構成したる。ガラス含有率を45%(重量比)とすることによって、線膨張率を23.0×10-6/゜Cとした。円筒部材140には、これにアルミニウム、ニッケル、銅等の金属を蒸着し、あるいはメッキ等で導電層を形成し、または、樹脂中に、カーボン等の導電材を入れて導電性を付与した。
【0217】
その他は実施例1と同じである。
【0218】
{実施例8}
像担持体110の基材はニッケル電鋳管で構成し、その長さは、L1=300mmとした。熱膨張率はα1=13.4×10-6/゜C、ヤング率はE1=20000kg/mm2である。許容応力としては0.2%耐力を採用した。すなわち、
σa=50kg/mm2である。
【0219】
左右の固定部材151,152としては、ナイロン610を用い、その長さは、
L2=L4=5mmとした。熱膨張率はα2=α4=90×10-6/゜Cである。
【0220】
円筒部材140は炭素鋼で構成し、その長さは、L3=290mmとした。熱膨張率はα3=10.7×10-6/゜Cである。
【0221】
そして、通常、像担持体ユニット100の組立は室温(およそ20〜25゜C)の環境下で行なわれ、実際に使用される(あるいは輸送中における)環境温度は、通常、0〜45゜C位であるので、温度差としては△T=20゜Cを採用した。
【0222】
以上のような条件で前述したずれ量Ltを計算すると、
Lt=0.00034mmとなる。
【0223】
したがって、像担持体110の熱歪εtは、
εt=Lt/L1=1.13×10-6
熱応力σtは
σt=E1×εt=0.02267kg/mm2
となり、許容応力σa=50kg/mm2でに比べて極めて小さな値となる。
【0224】
したがって、熱膨張による像担持体110の歪、振れ等が増加することなく、組立時の状態が維持され、極めて高精度な像担持体ユニット100が得られる。
【0225】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、本発明は上記の実施の形態または実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【0226】
例えば、
(1)上記実施の形態では像担持体ユニットを感光体ユニットとして説明したが、本発明の像担持体ユニットは、これに限らず、中間転写媒体ユニットとしても構成することができる。この場合、像担持体は薄肉円筒状の中間転写体で構成される。
【0227】
(2)支持部材120は、固定部材としての固着部材121と、スペーサ130とを備えている構成としたが、固定部材だけで構成することもできる。
【0228】
【発明の効果】
請求項1〜3記載のいずれの像担持体ユニットによっても、使用環境や輸送環境で温度が変化しても破損等を生じることなく、硬質ローラ等の当接部材との確実で安定した接触状態を得ることが可能であるとともに、製造が簡単であるという効果が得られる。
【0229】
さらに、請求項2記載の像担持体ユニットによれば、取扱い性に優れているという効果が得られ、請求項3記載の像担持体ユニットによれば、別途導通手段を設ける必要がなくなるという効果が得られる。
【0230】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る像担持体ユニットの第1の実施の形態を用いた画像形成装置の要部を示す模式図。
【図2】図1におけるII−II断面図で、主として像担持体ユニットを示す図。
【図3】主としてスペーサの一例を示す模式図で、図(a1)は像担持体110が装着される前の状態を示す正断面図、図(a2)は図(a1)の部分左側面図、図(a3)は作用説明図、図(b1)は像担持体110が装着された後の状態を示す正断面図、図(b2)は図(b1)の部分左側面図、図(c)は像担持体110が装着された後の状態を示す左側面。
【図4】作用説明図。
【図5】作用説明図。
【図6】作用説明図。
【図7】作用説明図。
【図8】本発明に係る像担持体ユニットの第2の実施の形態の要部を示す模式図で、(a)は円筒部材およびスペーサを示す上半分の側面図、(b)は部分斜視図。
【図9】本発明に係る像担持体ユニットの第3の実施の形態の要部を示す模式図で、(a)は円筒部材およびスペーサを示す上半分の側面図、(b)は部分斜視図、(c)は図(a)の部分拡大図、(d)は作用説明図。
【図10】本発明に係る像担持体ユニットの第4の実施の形態の要部を示す模式図で、(a)は円筒部材およびスペーサを示す上半分の部分斜視図、(b)は断面図、(c)は作用説明図。
【図11】本発明に係る像担持体ユニットの第5の実施の形態の要部を示す模式図で、上半分の断面を示した図。
【図12】(a)(b)は、長さおよび熱膨張率がそれぞれ異なる部材を連結した構造体において発生する熱膨張を説明するための図。
【図13】従来技術の説明図。
【図14】従来技術の説明図。
【図15】従来技術の説明図。
【図16】従来技術の説明図。
【符号の説明】
100 感光体ユニット
110 像担持体
111 両端部
111a 端縁部
113 内周面
120 支持部材
121 固着部材(固定部材)
130 スペーサ
140 円筒部材
145 外周面
151,152 固定部材
Claims (3)
- 可撓性を有する薄肉円筒状の像担持体と、この像担持体の内径よりも小さな外径を有し、像担持体の内方に配置された剛性の円筒部材と、この円筒部材上に前記像担持体の両端部を固定する固定部材とを備え、前記像担持体における固定部材との連結部間の軸線方向長さおよび線膨張率がL1およびα1,前記円筒部材における固定部材との連結部間の長さおよび線膨張率がL3およびα3,前記固定部材の前記像担持体および前記円筒部材との連結部間の軸線方向長さがL2,L4、線膨張率がα2,α4であり、
上記軸線方向長さについては、上記連結された像担持体と円筒部材と固定部材とを有する構造体における,上記連結部のうちのある連結点を起点および終点とし,この起点から,当該起点から最も離れた他の連結点へ向かい,この最も離れた連結点から前記終点に向かうに閉ループを考えたときに,前記起点から前記最も離れた連結点に向かう方向を正,前記最も離れた連結点から前記終点に向かう方向を負とし,かつ,
前記像担持体のヤング率をE1,許容応力をσaとしたとき、
n
σa>E1× Σ Li×(1+αi・△T)/L1
i=1
Li:i番目の部材の長さ
αi:i番目の線膨張率
△T:△T=20°C
であることを特徴とする像担持体ユニット。 - 前記像担持体は、その内周面と前記円筒部材の外周面との間に、像担持体の許容変形量より小さな間隔を隔てて前記固定部材で支持されていることを特徴とする請求項1記載の像担持体ユニット。
- 前記円筒部材および固定部材は、導電性を有していることを特徴とする請求項1または2記載の像担持体ユニット。
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