JP3791861B2 - 定着装置及び定着ローラの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、定着装置及び定着ローラの製造方法に関し、詳細には、安価で、かつ、小型で、定着性能の良好な定着装置及び定着ローラの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紙やフィルム等の記録紙上に形成されたトナー画像を定着する方法としては、一般に、加熱・加圧してトナーを溶融して記録紙に定着させる加熱定着方式が用いられているが、この加熱定着方式のなかでも、熱ローラ方式が熱効率が高く、安全性も高いことから最も広く使用されている。
【0003】
この熱ローラ方式は、圧接された2つのローラのうちの少なくとも一方のローラを加熱し、2つのローラの圧接部(ニップ部)に未定着トナーの付着された記録紙を加熱・圧接して、トナーを記録紙に定着させる方式である。これらの2つのローラのうち一方を加熱する場合、加熱する方のローラが定着ローラ、他方のローラが加圧ローラと一般に呼ばれる。従来、この定着ローラの外側表面に、温度センサーが取り付けられており、ニップ部の温度が定着に適した温度に維持されるように、熱源への電力供給量が制御されている。
【0004】
このような加熱定着方式の定着装置においては、軸方向の温度分布をいかに均一にするかが重要な問題である。すなわち、定着装置には、複数のサイズの記録紙が供給されるが、小サイズの記録紙が通過する領域(通紙部領域)では、記録紙(詳細には、記録紙及び記録紙上の未定着トナー)の加熱のために定着ローラの熱が消費され、小サイズの記録紙の通過しない非通紙部領域では、記録紙により定着ローラの熱が奪われない。したがって、定着ローラの熱が蓄熱して、非通紙部領域のニップ部の温度が、所定温度に維持管理される通紙部領域のニップ部の温度よりも高くなるという、いわゆる、端部温度上昇が発生する。その結果、定着装置に、小サイズの記録紙が連続通紙された後、大サイズの記録紙が通紙されると、例えば、A4サイズの記録紙が連続通紙された後、A3サイズの記録紙が通紙されると、大サイズの記録紙に定着ムラやシワが発生したり、未定着トナー像の非通紙部領域に対応した部分のトナーが溶け過ぎて定着ローラに付着し、記録紙の表面を汚すという、いわゆる、ホットオフセット等の問題が生じるという問題があった。
【0005】
また、定着ローラの非通紙部領域の温度が高くなりすぎると、非通紙部領域と通紙部領域で定着ローラに大きな温度差が生じ、高温部と低温部での熱膨張の違いから、定着ローラにゆがみが生じ、定着ローラが劣化するという問題があった。特に、ガラスやセラミックスのパイプ表面に発熱抵抗体を形成した定着ローラ(表面発熱ローラ)は、定着ローラ表面を直接加熱するため、加熱効率がよい点と、定着ローラの小熱容量化ができるため、昇温時間が短縮でき、さらに、未使用時に定着ローラへの通電をオフでき、省エネルギーであるという点で優れた定着方式であるが、この表面発熱ローラ(定着ローラ)の場合には、端部温度上昇による熱膨張の違いから、小サイズの記録紙の通紙部領域と非通紙部領域でローラ径が異なってしまい、記録紙のシワの発生や、さらには、定着ローラが破損してしまうという不具合が発生する。また、この発熱ローラ方式の定着ローラは、フィルムを介した定着装置(一般には、低速機用)に比べ、フィルムのシワや寄りがないことから、中速〜高速機(20CPM以上)の定着装置用にも対応可能であるが、通紙間隔が高速になるほど、非通紙部領域の温度上昇が大きくなることから、端部温度上昇に対する対策がより一層必要である
そこで、従来、例えば、特開平4−5179号公報に記載された定着装置が提案されている。この定着装置は、定着装置の非通紙部を選択的に冷却する冷却手段を設け、定着装置の温度分布を冷却手段により均一にするものである。具体的には、ファンとダクトにより、通紙中にのみ非通紙領域に選択的に風を送り、非通紙部の温度上昇を防止している。
【0006】
また、特開平6−11983号公報に記載された定着装置がある。この定着装置は、紙サイズに応じて放熱部材を定着ローラ端部に当接させて、放熱部材による放熱により端部温度上昇を防止するものである。具体的には、ローラ状の放熱部材を、小サイズ通紙時の非通紙部領域に配置し、非通紙部領域の温度が上昇したときに、放熱部材を定着ローラに当接して、上昇した熱を放熱することにより、定着ローラの軸方向の温度分布を均一にするものである。
【0007】
さらに、特開平5−281877号公報に記載された定着装置がある。この定着装置は、定着ローラ内部に2つ以上の発熱体を設け、紙幅に応じてこれら発熱体を制御するものである。具体的には、定着ローラの軸方向に発熱分布の異なる2つの発熱体を、定着ローラ内部に設け、定着手段の表面温度や記録紙の幅に応じて、発熱体を適宜選択して駆動することによって、端部温度の上昇を防止するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平4−5179号公報に記載された定着装置にあっては、送風手段(ファン)を用いて非通紙部を冷却しているため、送風時の音が大きく、騒音の要因となるだけでなく、ファンとダクトを用いることから定着装置の構成が複雑で、大型化し、コストが高くなるだけでなく、定着装置の適用される複写機、ファクシミリ装置あるいは電子写真式プリンタ等の画像形成装置が大型するという問題があった。
【0009】
また、特開平6−11983号公報に記載された定着装置にあっては、放熱部材を定着ローラの端部に当接させたり、離したりすることにより、非通紙部領域の温度上昇を防止するようになっていたため、放熱部材を定着ローラに圧接させたり、離したりするための駆動機構が必要となり、コストが高くなるとともに、可動部を有しているため、長時間の使用による径時劣化により故障や破損が生じやすいという問題があった。
【0010】
さらに、特開平5−281877号公報に記載された定着装置にあっては、定着ローラ内部に2つ以上の発熱体を設けているため、定着ローラを小径化することが困難であるという問題が生じる。また、熱源を一体化した定着ローラ(ローラ表面あるいは内面に発熱抵抗体を形成した定着ローラ)の場合には、対処できない。さらに、定着ローラ内部にハロゲンヒーターなどの発熱体を設けて定着させる場合、ヒーターの発熱分布を変えても、定着ローラの温度分布はそれと全く同じになるわけではなく、制御が難しいという問題があった。
【0011】
そこで、請求項1記載の発明は、定着ローラの基体の表面と裏面にそれぞれ発熱層を形成し、表面の発熱層と裏面の発熱層のいずれか一方を他方よりも基体の軸方向において長く形成するとともに、いずれか一方あるいは両方の発熱層により基体の軸方向において最大記録紙サイズの記録紙の全幅に対応する幅にわたって基体を加熱し、搬送されてくる記録紙の幅に応じて表面の発熱層と裏面の発熱層を適宜加熱して、当該搬送されてくる記録紙の幅全域にわたって基体を加熱することにより、小サイズの記録紙を連続通紙したときの端部温度の上昇を抑制して、記録紙サイズに関わらず定着ローラの通紙部の温度を均一にし、端部温度の上昇によって発生する定着ローラの破損や紙送り時の紙シワの発生、さらには、小サイズ記録紙の連続通紙直後に大サイズの記録紙を通紙したときに発生する端部での高温オフセットを改善して、信頼性を向上させつつ高画質を実現することができ、また、裏面の発熱層を、その単位面積当たりの発熱量が、表面の発熱層の単位面積当たりの発熱量より大きく設定することにより、表面の発熱層から記録紙に供給される熱量と、裏面の発熱層から記録紙に供給される熱量を簡単かつ容易に等しくし、発熱層に熱量を供給する熱量制御を容易なものとして、より一層安価で、定着性能のより一層良好な定着装置を提供することを目的としている。
【0016】
請求項2記載の発明は、ローラ状のそれぞれ一層ずつの基体の表面の発熱層と裏面の発熱層のうち、いずれか一方の発熱層が他方の発熱層よりも基体の軸方向において長く形成されているとともに、表面の発熱層と裏面の発熱層のいずれかあるいは両方の発熱層により、基体の軸方向において搬送されてくる複数の記録紙サイズの記録紙のうち最大記録紙サイズの記録紙の全幅に対応する幅にわたって基体を加熱する定着ローラの基体の表面と裏面に発熱層を形成した後、当該発熱層の形成された基体を、所定の離型層となる物質の懸濁液中に浸けて、表面の発熱層と裏面の発熱層の表面に離型層を一度に形成することにより、離型層を簡単、かつ、容易に形成して、製造工程を削減しつつ、定着性能の良好な定着ローラを簡単、かつ、安価に製造することのできる定着ローラの製造方法を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の定着装置は、ローラ状の基体に所定の加熱手段が配設された定着ローラと、前記定着ローラと圧接する加圧ローラと、を有し、前記定着ローラと前記加圧ローラとの圧接部にトナー画像の付着された複数の記録紙サイズの記録紙が搬送され、当該記録紙を回転する前記定着ローラと前記加圧ローラにより圧接して搬送しつつ、前記定着ローラの熱により前記記録紙に付着された前記トナー画像を前記記録紙に定着させる定着装置であって、前記定着ローラは、前記加熱手段として、前記基体の表面と裏面にそれぞれ発熱層が形成され、前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層は、一方の前記発熱層が他方の前記発熱層よりも前記基体の軸方向において長く形成されるとともに、いずれか一方あるいは両方の前記発熱層により前記基体の軸方向において最大記録紙サイズの前記記録紙の全幅に対応する幅にわたって前記基体を加熱し、前記搬送されてくる記録紙の幅に応じて前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層を適宜加熱して、当該搬送されてくる記録紙の幅全域にわたって前記基体を加熱し、前記裏面の発熱層は、その単位面積当たりの発熱量が、前記表面の発熱層の単位面積当たりの発熱量より大きく設定されていることにより、上記目的を達成している。
【0018】
上記構成によれば、定着ローラの基体の表面と裏面にそれぞれ発熱層を形成し、表面の発熱層と裏面の発熱層のいずれか一方を他方よりも基体の軸方向において長く形成するとともに、いずれか一方あるいは両方の発熱層により基体の軸方向において最大記録紙サイズの記録紙の全幅に対応する幅にわたって基体を加熱し、搬送されてくる記録紙の幅に応じて表面の発熱層と裏面の発熱層を適宜加熱して、当該搬送されてくる記録紙の幅全域にわたって基体を加熱するので、小サイズの記録紙を連続通紙したときの端部温度の上昇を抑制して、記録紙サイズに関わらず定着ローラの通紙部の温度を均一にすることができ、端部温度の上昇によって発生する定着ローラの破損や紙送り時の紙シワの発生、さらには、小サイズ記録紙の連続通紙直後に大サイズの記録紙を通紙したときに発生する端部での高温オフセットを改善して、信頼性を向上させつつ高画質を実現することができ、また、裏面の発熱層の単位面積当たりの発熱量を、表面の発熱層の単位面積当たりの発熱量より大きく設定しているので、表面の発熱層から記録紙に供給される熱量と、裏面の発熱層から記録紙に供給される熱量を簡単かつ容易に等しくすることができ、発熱層に熱量を供給する熱量制御を容易なものとして、定着装置をより一層安価で、より一層定着性能の良好なものとすることができる。
【0027】
請求項2記載の発明の定着ローラの製造方法は、ローラ状の基体の表面と裏面にそれぞれ一層ずつの発熱層が形成され、前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層のうち、いずれか一方の前記発熱層が他方の前記発熱層よりも前記基体の軸方向において長く形成されているとともに、前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層のいずれかあるいは両方の前記発熱層により、前記基体の軸方向において搬送されてくる複数の記録紙サイズの記録紙のうち最大記録紙サイズの前記記録紙の全幅に対応する幅にわたって前記基体を加熱する定着ローラの製造方法であって、前記基体の表面と裏面に前記発熱層を形成した後、当該発熱層の形成された前記基体を、所定の離型層となる物質の懸濁液中に浸けて、前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層の表面に前記離型層を一度に形成することにより、上記目的を達成している。
【0028】
上記構成によれば、ローラ状の基体の表面の発熱層と裏面の発熱層のうち、いずれか一方の発熱層が他方の発熱層よりも基体の軸方向において長く形成されているとともに、表面の発熱層と裏面の発熱層のいずれかあるいは両方の発熱層により、基体の軸方向において搬送されてくる複数の記録紙サイズの記録紙のうち最大記録紙サイズの記録紙の全幅に対応する幅にわたって基体を加熱する定着ローラの基体の表面と裏面に発熱層を形成した後、当該発熱層の形成された基体を、所定の離型層となる物質の懸濁液中に浸けて、表面の発熱層と裏面の発熱層の表面に離型層を一度に形成しているので、離型層を簡単、かつ、容易に形成することができ、製造工程を削減しつつ、定着性能の良好な定着ローラを簡単、かつ、安価に製造することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0030】
図1は、本発明の定着装置及び定着ローラの製造方法の第1の実施の形態を示す図である。
【0031】
図1は、本発明の定着装置及び定着ローラの製造方法の第1の実施の形態を適用した定着装置1の要部正面断面図である。
【0032】
図1において、定着装置1は、定着ローラ2と加圧ローラ3が圧接されており、加圧ローラ3は、所定の付勢部材4、例えば、コイルバネあるいは板バネ等により定着ローラ2に圧接されている。したがって、定着ローラ2と加圧ローラ3は、図1中矢印で示すように、所定の加圧力で圧接されている。
【0033】
定着ローラ2は、筒もしくはベルトのような筒状(中空形状)に形成された基板5の表面と裏面(内面)に、それぞれ発熱層6、7が配設されており、発熱層6及び発熱層7の表面には、それぞれ加熱手段としての離型層8、9が配設されている。
【0034】
基体5は、ガラス、セラミックス、樹脂、あるいは、Al、SUS等の金属で形成されており、定着ローラ2の基体5を金属で形成するときには、発熱層6及び発熱層7との間に、これら発熱層6及び発熱層7と基体5との電気的絶縁を行うために、SiO2 あるいはポリイミド等の樹脂材料等による絶縁層を配設する。
【0035】
基体5の表面側の発熱層6は、基体5の軸方向において定着装置1に供給される最大記録紙サイズの記録紙の幅方向全幅にわたって配設されているとともに、基体5の周方向全域にわたって配設されており、基体5の裏面側の発熱層7は、基体5の軸方向に対して発熱層6よりも狭い幅、例えば、所定の小記録紙サイズの記録紙の幅サイズに対応する幅にわたって配設されているとともに、基体5の周方向全域にわたって配設されている。
【0036】
発熱層6及び発熱層7は、セラミックス発熱層、クロム、Ta2 N、RuO2 、あるいは、Ag/Pd等の発熱抵抗を溶射、塗布、印刷等により面状、あるいは、線状に形成されており、通電されることによって発熱する。なお、定着ローラ2の基体5の内部である裏面側の発熱層7は、基体5内部に溶射、塗布、印刷等で形成するのが困難なときには、上記材料により別に作製したコイル状の発熱抵抗を定着ローラ2の基体5に挿入して、接着することにより、形成してもよい。また、発熱層6及び発熱層7は、それぞれその基体5の軸方向の長さの中心位置を、基体5の軸方向の中心位置とほぼ一致させるように配設されている。
【0037】
離型層8、9は、記録紙表面に付着されたトナーとの離型性を向上させるとともに、他の部材と発熱層6、7との接触で発熱層が損傷するのを防ぎ、また、発熱抵抗体を電気的に絶縁する目的で発熱層6及び発熱層7の表面に形成されており、テフロンなどの耐熱樹脂により形成されている。
【0038】
これらの離型層8及び離型層9は、定着ローラ2の表面と裏面に発熱層6及び発熱層7を形成した後、離型層8、9となる液状の耐熱樹脂に定着ローラ2を浸漬して、定着ローラ2の表面の離型層8と裏面の離型層9を一度に形成する。
【0039】
すなわち、通常、定着ローラの離型層は、PTEE(poly tetra fluoro ethylene;ポリテトラフルオロエチレン)の粉体塗装により形成されるが、基体5の裏面に粉体塗装を行うことは、困難である。
【0040】
そこで、本実施の形態では、電気絶縁テープを作る際のように、ディスパージョン加工により基体5の表面の離型層8と裏面の離型層9を1工程で形成している。
【0041】
加圧ローラ3は、金属ローラにより形成された芯金10と、シリコンゴム等の離型性の良好なゴム層11と、を備えており、上述のように、付勢部材4により定着ローラ2方向に付勢されて定着ローラ2と圧接されることにより、定着ローラ2と加圧ローラ3の間に、記録紙を搬送・加熱するためのニップ部(相互圧接部)が形成される。
【0042】
次に、本実施の形態の作用を説明する。定着装置1は、複写機、ファクシミリ装置あるいは電子写真式プリンタ等の画像形成装置の定着装置として適用され、このような画像形成装置においては、印刷開始により、帯電、露光、現像、転写という電子写真プロセスにより、記録紙の表面にトナー画像を形成し、このトナー画像の形成された記録紙を定着装置1に搬送して、定着装置1で定着させる。このような画像形成装置においては、使用される記録紙が1種類の記録紙サイズの記録紙に限定されておらず、複数の記録紙サイズの記録紙にトナー画像を記録する。したがって、定着装置1にも、複数の記録紙サイズの記録紙が搬送されてくることになる。
【0043】
いま、定着ローラ2の長さより小さいサイズの記録紙(以下、小サイズ記録紙という。)に画像形成装置で連続印字されたとすると、トナー画像の形成された小サイズ記録紙が、定着装置1、すなわち、定着ローラ2と加圧ローラ3とのニップ部に搬送され、定着ローラ2と加圧ローラ3により加熱・加圧されつつ搬送されることにより、小サイズ記録紙上のトナー画像が小サイズ記録紙に定着される。このとき、小サイズ記録紙により定着ローラ2及び加圧ローラ3の熱エネルギーが奪われることになる。
【0044】
ところが、小サイズ記録紙を定着装置1に連続通紙すると、定着ローラ2の小サイズ記録紙が通過する通紙部領域のみの熱エネルギーが奪われ、定着ローラ2の表面の通紙部領域と非通紙部表面に温度差が生じる。同様に、定着ローラ2と接触している加圧ローラ3も記録紙に熱を奪われ、加圧ローラ3表面の通紙部領域と非通紙部領域にも温度差が生じる。
【0045】
ところが、本実施の形態の定着装置1は、定着ローラ2の表面側と裏面側にそれぞれ発熱層6、7を配設するとともに、表面側の発熱層6と裏面側の発熱層7の定着ローラ2の軸方向の長さを異ならせて配設、すなわち、表面側の発熱層6を定着ローラ2の軸方向に定着装置1に供給される記録紙の幅方向全幅にわたって配設し、裏面側の発熱層7を定着ローラ2の軸方向に対して発熱層6よりも狭い幅にわたって配設しており、記録紙の紙幅、例えば、記録紙のサイズ検知の信号や画像形成装置の操作部によりオペレータが選択した紙幅に応じて、通電する発熱層6、7を選択する。すなわち、最大記録紙サイズの記録紙が通紙される場合には、最大記録紙サイズに対応した発熱領域を持った発熱層である表面側の発熱層6に通電し、最大記録紙サイズよりも幅の狭い記録紙が通紙される場合には、幅の狭い方である裏面側の発熱層7に通電する。
【0046】
したがって、記録紙の幅に応じて発熱領域が変化し、定着ローラ2及び加圧ローラ3の端部の温度上昇を、適切に抑制することができる。その結果、記録紙サイズに関わらず定着ローラ2の通紙部の温度を均一にし、端部温度の上昇によって発生する定着ローラ2の破損や紙送り時の紙シワの発生、さらには、小記録紙サイズの記録紙の連続通紙を行った直後に大記録紙サイズの記録紙を通紙したときに発生する端部での高温オフセットを改善して、定着装置1の信頼性を向上させつつ高画質を実現することができる。
【0047】
なお、上記実施の形態においては、発熱層6及び発熱層7を、それぞれその定着ローラ2の軸方向の長さの中心位置が、定着ローラ2の軸方向の中心位置とほぼ一致するように配設されているが、小サイズ記録紙用である基板2の裏面側の発熱層7は、定着ローラ2の軸方向の中心位置に合わせて配設するものに限るものではなく、記録紙が片寄せ方式、すなわち、定着ローラ2の一方側に片寄った状態で搬送されてくるときには、図2に示すように、当該片寄って搬送される記録紙の搬送位置に合わせて、定着ローラ2の一方側に片寄らせた状態で配設されていてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、基体5の表面側に記録紙の最大記録紙サイズに対応した幅サイズ、すなわち、大記録紙サイズ幅の発熱層6を配設し、基体5の裏面側に最大記録紙サイズよりも小さい記録紙サイズの記録紙に対応した幅サイズ、すなわち、小記録紙サイズ幅の発熱層7を配設しているが、これに限るものではなく、例えば、図3に示すように、定着ローラ2の基体5の表面側に小記録紙サイズ幅の発熱層20とその上に離型層21を形成し、基体5の裏面側に最大記録紙サイズの発熱層22とその上に離型層23を配設してもよい。
【0049】
さらに、図3の場合にも、図2の場合と同様に、記録紙が片寄せ方式で搬送されてくるときには、図4に示すように、小記録紙サイズ幅の発熱層20及び剥離層21を、当該片寄って搬送される記録紙の搬送位置に合わせて、定着ローラ2の一方側に片寄らせた状態で配設されていてもよい。
【0050】
なお、図2から図4に示した定着ローラ2においても、その基体5の表面側の離型層8、21と裏面側の離型層9、23を、上記図1の定着ローラ2と同様に、ディスパージョン加工により1工程で形成することができる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、図1に示したように、最大記録紙サイズの発熱層6を基体5の表面側に配設し、小記録紙サイズ幅の発熱層7を基体5の裏面側に配設しているので、定着ローラ2の表面を平滑化することができ、製造工程を削減してコストを低減させつつ、定着性能を向上させることができる。
【0052】
すなわち、図3及び図4に示したように、小記録紙サイズ幅の発熱層20を基体5の表面側に配設すると、発熱層20の存在する領域と発熱層20の存在しない領域とで段差が生じるため、定着性能を向上させるために、図5に示すように、小記録紙サイズ幅の発熱層20により覆われていない基体5の表面に発熱層20と同じ厚さの所定の部材24を記録紙の最大記録紙サイズ幅まで配設するか、図6に示すように、小記録紙サイズ幅の発熱層20を覆う離型層21を発熱層20で覆われていない基体5の表面部分では、記録紙の最大記録紙サイズ幅まで発熱層20の厚さの分だけ厚く形成する必要がある。
【0053】
ところが、本実施の形態においては、図1に示したように、最大記録紙サイズの発熱層6を基体5の表面側に配設し、その表面に離型層8を配設しているため、図5及び図6に示したような他の部材や離型層21を小記録紙サイズ幅の発熱層20で覆われていない基体5の表面部分に配設する必要がない。その結果、定着ローラ2の製造工程、ひいては、定着装置1の製造工程を削減してコストを低減させつつ、定着性能を向上させることができる。
【0054】
図7は、本発明の定着装置及び定着ローラの製造方法の第2の実施の形態を示す図であり、本実施の形態は、請求項2及び請求項6に対応するものである。
【0055】
なお、本実施の形態は、上記第1の実施の形態と同様の定着装置に適用したものであり、本実施の形態の説明において、上記第1の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0056】
図7において、定着装置30は、定着ローラ31と加圧ローラ(図示略)が圧接されており、定着ローラ31は、その基体5の一方側の端部、図7では左側端部に、定着ローラ31を回転駆動するギア等の駆動部32が取り付けられている。この駆動部32には、図示しないが、駆動部32のギア等に歯合して駆動部32を介して定着ローラ31を回転駆動するギア機構や駆動モータ等の駆動機構が連携されている。したがって、定着ローラ31の熱は、駆動部32を介して駆動機構等に放熱され、駆動部32の取り付けられた基体5側の端部側ほど温度が低下する。
【0057】
定着ローラ31は、筒状の基板5の表面に最大記録紙サイズ幅の発熱層6が配設され、発熱層6上に離型層8が形成されている。また、定着ローラ31は、基体5の裏面に小サイズ幅の発熱層33が配設されており、発熱層33上には、離型層34が形成されている。発熱層33は、基体5の上記駆動部32の取り付けられた側の端部側に片寄らせた状態で基体5に配設されている。また、この定着装置30には、トナー画像の付着された記録紙が駆動部32の設けられた側に片寄った状態で搬送されてくる。
【0058】
定着装置30は、定着ローラ31が、基体32の端部に取り付けられた駆動部32により回転駆動されるが、この駆動部32を介して定着ローラ31の熱が放熱されるため、定着ローラ31は、軸方向において駆動部32の設けられた側の端部ほど温度が低くなり、軸方向の温度分布が不均一になる傾向にある。
【0059】
また、定着装置30には、いずれのサイズの記録紙も駆動部32側に片寄った状態で搬送され、小サイズの記録紙が搬送されてくると、発熱層33を発熱させ、大サイズの記録紙が搬送されてくると、発熱層6を発熱させる。そして、この小記録紙サイズ幅の発熱層33は、駆動部32側に片寄った状態で基体5に配設されているため、基体5の駆動部32側の方が発熱層33と発熱層6で挟まれた部分が大きく、基体5の駆動部32の取り付けられた側を反対側に比較して蓄熱を大きくすることができる。その結果、駆動部32側に片寄った状態で配設された発熱層33により、駆動部32への放熱を補償することができ、定着ローラ31の軸方向の温度分布を均一にすることができる。したがって、基体5の端部温度の上昇によって発生する定着ローラ31の破損や紙送り時の紙シワの発生、さらには、小サイズ記録紙の連続通紙直後に大記録紙サイズの記録紙を通紙したときに発生する基体5の端部での高温オフセットを改善して、定着装置30の信頼性を向上させつつ高画質を実現することができる。
【0060】
なお、図7においては、基体5の表面に最大記録紙サイズの発熱層6を配設し、基体5の裏面に小記録紙サイズ幅の発熱層33を配設しているが、逆に、基体5の表面に小記録紙サイズ幅の発熱層33を配設し、基体5の裏面に最大記録紙サイズの発熱層6を配設してもよい。
【0061】
また、本実施の形態の定着ローラ31においても、基体5の表裏の離型層8、34を、ディスパージョン加工により1工程で形成することができる。
【0062】
図8は、本発明の定着装置及び定着ローラの製造方法の第3の実施の形態を示す図であり、本実施の形態は、請求項4及び請求項6に対応するものである。
【0063】
なお、本実施の形態は、上記第1の実施の形態と同様の定着装置に適用したものであり、本実施の形態の説明においては、上記第1の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0064】
図8において、定着装置40は、定着ローラ41と加圧ローラ(図示略)が圧接されており、定着ローラ41は、その基体5の裏面側に小記録紙サイズ幅に対応した幅の発熱層7が基体5の軸方向中央位置を発熱層7の中央位置と略一致させる状態で配設されている。発熱層7上には、離型層9が配設されている。
【0065】
基体5の表面側には、基体5の裏面側の発熱層7の両端部位置から基体5の軸方向に対して最大記録紙サイズの記録紙の幅に対応する位置まで発熱層42a、42bが形成されており、各発熱層42a、42b上には、それぞれ離型層43a、43bが配設されている。これら基体5の表裏の離型層9及び離型層43a、43bは、上記第1の実施の形態と同様に、ディスパージョン加工により1工程で形成するこができる。
【0066】
この定着装置40は、各記録紙サイズの記録紙が、記録紙の幅方向中央部と定着ローラ41の中央部とが略一致する状態で搬送されてくる場合に好適である。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、基体5の裏面の発熱層7を、最大記録紙サイズよりも小さい所定の小記録紙サイズの記録紙の幅に対応する幅にわたって基体5を加熱するのに適した幅に形成し、表面の発熱層42a、42bを、裏面の発熱層7の端部から最大記録紙サイズの記録紙の幅に対応する幅にわたって基体5を加熱するのに適した幅にわたって形成しているので、少ない発熱層7、42a、42bで、各種記録紙サイズの記録紙の幅に対応した幅にわたって基体5を加熱することができ、定着装置40をより一層安価で、定着性能の良好なものとすることができる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、小記録紙サイズ幅の発熱層7を基体5の裏面側に配設し、基体5の表面側に、小記録紙サイズ幅の発熱層7の両端部から最大記録紙サイズの記録紙幅までの幅の発熱層42a、42bを配設しているが、これに限るものではなく、例えば、図9に示すように、定着装置44の定着ローラ45を、基体5の表面側に小記録紙サイズ幅の発熱層7と離型層9を配設し、基体5の裏面側に、小記録紙サイズ幅の発熱層7の両端部から最大記録紙サイズの記録紙幅までの幅の発熱層42a、42bを配設したものとしてもよい。
【0069】
また、図10に示すように、定着装置50の定着ローラ51は、基体5の表面に、基体5の一方側に片寄せした状態で小記録紙サイズ幅の発熱層7と、発熱層7上の離型層9と、を配設し、基体5の裏面に、小記録紙サイズ幅の発熱層7の片寄せされた側と反対側の端部付近から最大記録紙サイズ幅までの発熱層52と、発熱層52上の離型層53と、を配設してもよい。
【0070】
さらに、図11に示すように、定着装置54の定着ローラ55を、図10の定着ローラ51とは逆に、基体5の裏面に、基体5の一方側に片寄せした状態で小記録紙サイズ幅の発熱層7と、発熱層7上の離型層9と、を配設し、基体5の表面に、小記録紙サイズ幅の発熱層7の片寄せされた側と反対側の端部付近から最大記録紙サイズ幅までの発熱層52と、発熱層52上の離型層53と、を配設してもよい。
【0071】
これら図10及び図11の定着装置50、54の定着ローラ51、54は、定着装置50、54に記録紙が小記録紙サイズ幅の発熱層7が片寄せされて配設された側に片寄せされた状態で搬送されてくる場合に好適である。
【0072】
なお、図8から図11に示す定着ローラ40、44、50、54においても、基体5の表裏の離型層8及び離型層43a、43b、53は、上記第1の実施の形態と同様に、ディスパージョン加工により1工程で形成するこができる。
【0073】
また、上記各実施の形態において、基体5の裏面の発熱層7、22、33、42a、42b、52を、基体5の表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52よりも単位面積当たりの発熱量を大きくしてもよい。
【0074】
すなわち、基体5の裏面の発熱層7、22、33、42a、42b、52と基体5の表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52に同一の電力量を供給した場合の基体5の表面の温度変化は、図12に実線で示すように、表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52による基体5の表面の温度上昇の方が、図12に一点鎖線で示す裏面の発熱層7、22、33、42a、42b、52による基体5の表面の温度上昇よりも速く、また、表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52の熱は、その表面に形成された離型層8、9、43a、43b、53を介して直接記録紙に供給されるが、裏面の発熱層7、22、33、42a、42b、52の熱は、基体5と表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52及び表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52の表面に形成された離型層8、9、43a、43b、53を介して記録紙に供給される。そのため、表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52と裏面の発熱層7、22、33、42a、42b、52に同じ電力量を供給しても、基体5の表面の温度上昇速度を同程度にすることが、定着性能を向上させる上で重要である。
【0075】
この場合、表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52と裏面の発熱層7、22、33、42a、42b、52に供給する電力量を制御して、基体5の表面の温度上昇速度を同程度にしてもよいが、通電制御が複雑になる。
【0076】
そこで、表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52と裏面の発熱層7、22、33、42a、42b、52に同じ電力量を供給した際に、基体5の表面の温度上昇が同じになるように、裏面の発熱層7、22、33、42a、42b、52を、表面の発熱層6、7、20、42a、42b、52よりも単位面積当たりの発熱量を大きくすると、電力制御を簡単に、かつ、安価に行うことができ、定着装置1、30、40、44、50、54を安価なものとすることができるとともに、定着性能を向上させることができる。
【0077】
【実施例】
〈実施例1〉
図1に示した構成で最大記録紙サイズがA3記録紙の定着装置を、以下に示すような条件で作成した。すなわち、基体表面の発熱層として、A3記録紙サイズ相当幅の発熱層を配設し、基体裏面の発熱層として、A4記録紙サイズ相当幅の発熱層を配設した。
【0078】
この定着装置に、以下に示す条件により、A4サイズ幅の記録紙を連続通紙したときの定着ローラの非通紙部の温度上昇を測定した。
【0079】
なお、比較例として、A3記録紙サイズの発熱層のみを配設した定着装置についても測定を行った。
【0080】
上記実験を行った結果、図1の構成で作成した定着装置の定着ローラの温度は、図13に示すような結果を得た。すなわち、通紙部温度は、図13に実線で示すように、180℃で一定しており、非通紙部温度は、100℃から通紙枚数とともに徐々に上昇するが、50枚の連続通紙を行っても、120℃であった。
【0081】
これに対して、比較例においては、図14に示すように、通紙部温度は、図14に実線で示すように、略180℃で一定であるが、非通紙部温度は、図14に破線で示すように、略180℃から徐々に上昇し、50枚連続通紙した段階で、230℃程度にまで上昇した。
【0082】
図13及び図14から分かるように、実施例の定着装置に小サイズ(A4サイズ)の記録紙を連続通紙した場合、比較例の場合に比較して、非通紙部の温度上昇を大幅に抑制することができた。
【0083】
その後、本実施例で、小サイズの記録紙であるA4記録紙を連続通紙した後、それよりも大きなサイズであるA3記録紙を通紙しても、ホットオフセットやシワ等が発生せず、良好な画像が得られた。
【0084】
〈実施例2〉
図7に示した第2の実施の形態の定着装置の定着ローラの構成により、以下に示すような最大記録紙サイズがA3記録紙の定着装置を作成した。すなわち、基体表面の発熱層として、A3記録紙サイズ相当幅の発熱層を配設し、基体裏面の発熱層として、A4記録紙サイズ相当幅の発熱層を駆動部側に片寄せした状態で配設した。そして、以下の条件で、A3記録用紙10枚を片寄せした状態で連続通紙した後、A4記録用紙30枚を片寄せした状態で連続通紙し、定着ローラの温度分布を測定した。
【0085】
なお、比較例として、基板の表面と裏面の2つの発熱層をその中心を基体の軸方向中心に合わせて配設した定着装置を作成して、同様の条件で比較実験を行って、その定着ローラの温度分布も同様に測定した。
【0086】
上記実験を行った結果、定着ローラの温度は、図15に示すような温度分布となった。すなわち、図15に一点鎖線で示す比較例の場合、片寄せ状態で通紙される記録紙の通紙部分でるあ定着ローラの駆動部側に温度低下が発生するが、図15に実線で示す本実施例の場合、通紙部分である定着ローラの駆動部側の温度低下が見られず、定着ローラの軸方向の温度分布は、A4サイズの記録紙の通紙部分において、ほぼ均一な温度となっている。
【0087】
〈実施例3〉
図1に示した定着装置の定着ローラを以下に示す手順により製造した。すなわち、第1工程において、液晶ポリマーを用いて、厚さ1.0mm、直径30mmの円筒状の基体を作成する。
【0088】
第2工程において、上記基体の表面及び裏面にAg/Pdからなる発熱層を塗布する。
【0089】
第3工程において、上記基体の電極部分として、導電性の樹脂材料を塗布する。
【0090】
第4工程において、電極部分を感光性樹脂でマスキングする。
【0091】
第5工程において、PTEEのディスパージョン(樹脂分60wt%の水性コロイド懸濁液)に定着ローラを浸漬し、引き上げて乾燥した後、焼結させて基体の表裏両面の発熱層のそれぞれに離型層を作成する。
【0092】
第6工程において、第5工程を何度か繰り返し行って、基体の表裏両面の離型層を所定の厚みにする。
【0093】
第7工程において、第4工程のマスキング材を除去する。
【0094】
以上の各工程を行うことにより、1工程で基体の表裏両面の発熱層上に同時に離型層を形成することができ、定着ローラを簡単に、かつ、安価に製造することができる。
【0095】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0096】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の定着装置によれば、定着ローラの基体の表面と裏面にそれぞれ発熱層を形成し、表面の発熱層と裏面の発熱層のいずれか一方を他方よりも基体の軸方向において長く形成するとともに、いずれか一方あるいは両方の発熱層により基体の軸方向において最大記録紙サイズの記録紙の全幅に対応する幅にわたって基体を加熱し、搬送されてくる記録紙の幅に応じて表面の発熱層と裏面の発熱層を適宜加熱して、当該搬送されてくる記録紙の幅全域にわたって基体を加熱するので、小サイズの記録紙を連続通紙したときの端部温度の上昇を抑制して、記録紙サイズに関わらず定着ローラの通紙部の温度を均一にすることができ、端部温度の上昇によって発生する定着ローラの破損や紙送り時の紙シワの発生、さらには、小サイズ記録紙の連続通紙直後に大サイズの記録紙を通紙したときに発生する端部での高温オフセットを改善して、信頼性を向上させつつ高画質を実現することができ、また、裏面の発熱層の単位面積当たりの発熱量を、表面の発熱層の単位面積当たりの発熱量より大きく設定しているので、表面の発熱層から記録紙に供給される熱量と、裏面の発熱層から記録紙に供給される熱量を簡単かつ容易に等しくすることができ、発熱層に熱量を供給する熱量制御を容易なものとして、定着装置をより一層安価で、より一層定着性能の良好なものとすることができる。
【0101】
請求項2記載の発明の定着ローラの製造方法によれば、ローラ状の基体のそれぞれ一層ずつの表面の発熱層と裏面の発熱層のうち、いずれか一方の発熱層が他方の発熱層よりも基体の軸方向において長く形成されているとともに、表面の発熱層と裏面の発熱層のいずれかあるいは両方の発熱層により、基体の軸方向において搬送されてくる複数の記録紙サイズの記録紙のうち最大記録紙サイズの記録紙の全幅に対応する幅にわたって基体を加熱する定着ローラの基体の表面と裏面に発熱層を形成した後、当該発熱層の形成された基体を、所定の離型層となる物質の懸濁液中に浸けて、表面の発熱層と裏面の発熱層の表面に離型層を一度に形成しているので、離型層を簡単、かつ、容易に形成することができ、製造工程を削減しつつ、定着性能の良好な定着ローラを簡単、かつ、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の定着装置及び定着ローラの製造方法の第1の実施の形態を適用した定着装置の要部正面断面図。
【図2】図1の定着装置の定着ローラの発熱層の配設位置を変化させた例の定着ローラの正面断面図。
【図3】図1の定着装置の定着ローラの発熱層の配設位置を変化させた他の例の定着ローラの正面断面図。
【図4】図1の定着装置の定着ローラの発熱層の配設位置を変化させたさらに他の例の定着ローラの正面断面図。
【図5】図3の定着ローラの表面側の発熱層の両端部に発熱層と同じ厚さの他の部材を埋め込んだ例の定着ローラの正面断面図。
【図6】図3の定着ローラの表面側の発熱層の両端部に発熱層と同じ厚さに離型層を埋め込んだ例の定着ローラの正面断面図。
【図7】本発明の定着装置及び定着ローラの製造方法の第2の実施の形態を適用した定着装置の定着ローラの要部正面断面図。
【図8】本発明の定着装置及び定着ローラの製造方法の第3の実施の形態を適用した定着装置の定着ローラの要部正面断面図。
【図9】図8の定着装置の定着ローラの発熱層の配設位置を変化させた例の正面断面図。
【図10】図8の定着装置の定着ローラの変形例の正面断面図。
【図11】図10の定着装置の定着ローラの発熱層の配置位置を変化させた例の正面断面図。
【図12】表面の発熱層と裏面の発熱層の単位面積当たりの発熱量が同じ場合の表面の発熱層と裏面の発熱層による基板表面の温度上昇を比較して示す図。
【図13】実施例1の実験結果の通紙部温度と非通紙部温度を示す図。
【図14】実施例1の比較例の通紙部温度と非通紙部温度を示す図。
【図15】実施例2の実験結果の定着ローラの温度分布と比較例の定着ローラの温度分布を示す図。
【符号の説明】
1、30、40、50、54 定着装置
2、31、41、51、55 定着ローラ
3 加圧ローラ
4 付勢部材
5 基板
6、7、20、22、33、42a、42b、52 発熱層
8、9、21、23、34、43a、43b、53 離型層
10 芯金
11 ゴム層
24 部材
32 駆動部
Claims (2)
- ローラ状の基体に所定の加熱手段が配設された定着ローラと、前記定着ローラと圧接する加圧ローラと、を有し、前記定着ローラと前記加圧ローラとの圧接部にトナー画像の付着された複数の記録紙サイズの記録紙が搬送され、当該記録紙を回転する前記定着ローラと前記加圧ローラにより圧接して搬送しつつ、前記定着ローラの熱により前記記録紙に付着された前記トナー画像を前記記録紙に定着させる定着装置であって、前記定着ローラは、前記加熱手段として、前記基体の表面と裏面にそれぞれ発熱層が形成され、前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層は、一方の前記発熱層が他方の前記発熱層よりも前記基体の軸方向において長く形成されるとともに、いずれか一方あるいは両方の前記発熱層により前記基体の軸方向において最大記録紙サイズの前記記録紙の全幅に対応する幅にわたって前記基体を加熱し、前記搬送されてくる記録紙の幅に応じて前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層を適宜加熱して、当該搬送されてくる記録紙の幅全域にわたって前記基体を加熱し、前記裏面の発熱層は、その単位面積当たりの発熱量が、前記表面の発熱層の単位面積当たりの発熱量より大きく設定されていることを特徴とする定着装置。
- ローラ状の基体の表面と裏面にそれぞれ一層ずつの発熱層が形成され、前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層のうち、いずれか一方の前記発熱層が他方の前記発熱層よりも前記基体の軸方向において長く形成されているとともに、前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層のいずれかあるいは両方の前記発熱層により、前記基体の軸方向において搬送されてくる複数の記録紙サイズの記録紙のうち最大記録紙サイズの前記記録紙の全幅に対応する幅にわたって前記基体を加熱する定着ローラの製造方法であって、前記基体の表面と裏面に前記発熱層を形成した後、当該発熱層の形成された前記基体を、所定の離型層となる物質の懸濁液中に浸けて、前記表面の発熱層と前記裏面の発熱層の表面に前記離型層を一度に形成することを特徴とする定着ローラの製造方法。
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