JP3791177B2 - 塩化ビニル系繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、かつら、ヘア・ピース、ブレード、エクステンションヘアー、アクセサリーヘアーなどの頭髪装飾用に用いられる人工毛髪、或いはドールヘアー等の人形用頭髪繊維などとして使用される塩化ビニル系繊維、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系樹脂を紡糸して繊維状にしてなる塩化ビニル系繊維は、その優れた強度、伸度、カール保持性、スタイル性などの故に、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維として、あるいはドールヘアーなどの人形用頭髪繊維として多量に使用されている。
【0003】
従来、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維として、細繊度(断面積が小さく、細い繊維)の繊維を工業的に製造するには、一般的に塩化ビニル系樹脂に対する溶媒を使用する湿式紡糸法、または乾式紡糸法によって、細い繊度の塩化ビニル系繊維を製造する方法が工業的に実施されている。しかしながら、該方法は、溶媒を使用するが故に脱溶媒工程を必要とし、過大な設備投資が必要であり、その設備の維持管理にも多数の人手を必要とするという問題点がある。また、溶媒に対する溶解性を向上するべく、アクリロニトリルなどのコモノマーを共重合する為、繊維の初期着色性に弱点があり、乾燥工程での熱によって黄色味の強い毛髪になり易いという問題点、あるいは繊維のカール保持性が充分でないなどの問題点がある。
【0004】
一方、溶媒を使用しない紡糸方法としては溶融紡糸法が知られているが、この方法によって、人毛に極めて類似した半艶表面(艶の評価については、実施例に評価基準を示した。)、触感の頭髪装飾用などの細繊度の人工毛髪用繊維を得る為には、1ケの断面積が極めて小さいノズル孔(0.5mm2以下)から溶融・流出させ、紡糸ドラフト比を小さくする(Dr比:25以下)のが好ましい。すなわち、逆に大きな断面積のノズル孔から溶融・流出させて、細繊度の塩化ビニル系繊維とすると、必然的に紡糸ドラフト比を大きくする必要があり、溶融紡糸時に未延伸糸が極端に引き伸ばされることになるため、この未延伸糸に延伸・熱処理を施してなる繊維(延伸糸)表面が、平滑になり、光沢が出て、サラサラ触感がなくなるなど頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維としては不十分な繊維となる傾向があった。故に、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維として品質的に優れた繊維を得る為には、できる限り1ケの断面積が小さいノズル孔から溶融・流出させ、紡糸ドラフト比を小さくするのが好ましい。
【0005】
しかしながら、従来は1ケの断面積が極めて小さいノズル孔から流出させる場合には、ノズルにかかる圧力が高くなり、押出機の設計圧力をオーバーしてしまうという問題や、その圧力を定格以下とするべく、押出量を低くすると、溶融紡糸生産性が低下するという問題、あるいは溶融粘度を低くする為に、溶融紡糸温度を高く設定すると、熱分解を発生したり、ロングラン性が劣るような傾向があった。
【0006】
故に、これらの問題を解決するべく、従来から様々な提案がなされているが、十分な解決には至っていない。例えば、特公昭51-2109号公報では、塩素化塩化ビニル樹脂とメチルメタクリレート系樹脂を使用することにより、曳糸性を向上するという提案があるが、比較的大きな断面から小さな断面へと引き伸ばして、細繊度とする為、繊維表面が平滑になり光沢が発生しやすく、人毛に類似した半艶表面からかけ離れるたものになるばかりでなく、サラサラとした触感がなくなり、毛髪用繊維として不十分であった。また、組成物の溶融粘度を低下するべく、カドミウムや鉛を使用したCd-Pb系の熱安定剤、滑剤を使用する方法が工業的に実施されている。しかしこれらの配合剤を使用すると、ノズル圧力の問題や溶融紡糸生産性の問題などは解決できるものの、初期着色が大きく、黄色味の強い毛髪になりやすい。また、これらの配合剤は毒性が高く、製造上問題があるばかりでなく、頭髪装飾用として皮膚に触れる為に安全衛生上の問題がある。また、これらの頭髪装飾用品などが廃棄される場合、一般ゴミに混入して環境を汚染するという問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、従来公知のCd-Pb系の熱安定剤、滑剤を使用しなくても、初期着色性を大幅に改善しつつ、人毛に極めて類似した半艶表面、触感、柔軟性を保持し、また優れた強度、伸度、収縮性を保持した細繊度の塩化ビニル系繊維を提供することにあり、第2の目的は、従来公知の錫系安定剤を使用した塩化ビニル系繊維の品質課題であるプラチック的触感、キラキラ感のある表面性、ゴワゴワとした指巻き触感、熱収縮性などを改善し、安全に、かつ安定的に生産できる細繊度の塩化ビニル系繊維およびその製造方法を提供することにある。さらに第3の目的は、1ヶのノズル断面積が極めて小さいノズル孔から溶融紡糸する際の諸問題点を解決し、ノズル圧力と溶融紡糸生産性を高度にバランスし、さらに、溶融紡糸温度と熱分解・ロングラン性のバランスをレベルアップした細繊度の塩化ビニル系繊維の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、組成物の配合系、ノズル孔断面積、溶融紡糸条件などについて、鋭意研究を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル系混合物にエチレン−酢酸ビニル系樹脂、熱安定剤、および滑剤を特定範囲で配合した場合には、Cd−Pb系の熱安定剤、滑剤等を使用しなくても人毛に極めて類似した半艶表面、触感等を保持し、前記品質問題を解決した細繊度の繊維を溶融紡糸生産性を低下させることなく安定的に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と、(c)滑剤0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなる塩化ビニル系繊維であり、前記熱安定剤(b)は錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、およびゼオライト系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種を用いることができ、また前記滑剤(c)はカドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、およびモンタン酸ワックス系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0010】
また塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることができ、さらに、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることもできる。
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂は塩化ビニル単独樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、および酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹脂からなる群の内から選択される少なくとも1種の樹脂であり、かつ塩素化塩化ビニル系樹脂は、重合度350〜1100の原料塩化ビニル樹脂を用いて、塩素含有量60〜70重量%にしたものを用いることが好ましい。
【0011】
一方、本発明の製造方法は、塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と、(c)滑剤0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸して塩化ビニル系繊維とするものである。
【0012】
前記熱安定剤(b)は錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、およびゼオライト系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種を用いることができ、また、前記滑剤(c)はカドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、およびモンタン酸ワックス系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0013】
また塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸して塩化ビニル系繊維とすることができ、さらに、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸して塩化ビニル系繊維とすることもできる。
【0014】
本発明の製造方法は、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流出せしめることができる。
また、前記溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流出せしめ、300デニール以下の未延伸糸を製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱処理を施して、100デニール以下の繊維とすることもできる。
【0015】
さらに、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物をノズル圧力500Kg/cm2以下、樹脂温度195℃以下で、ノズル孔から溶融・流出せしめると同時に、紡糸ドラフト比を25以下の条件下で、未延伸糸を引取る方法も用いることができ、溶融紡糸のダイ先端部に使用するノズルに存在するノズル孔が、50〜300ケであり、該ノズル孔が、円状、楕円状、長方形状、または正方形状に配列され、隣接するノズル孔の中心間(異形断面形状にあっては、該断面の重心間)の距離が、少なくとも、0.8mm以上となる様に配列されているノズルを用いることもできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する塩化ビニル系樹脂とは、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、または従来公知の各種の共重合樹脂であり、特に限定されるものではない。該共重合樹脂としては、従来公知の共重合樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類との共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシル共重合樹脂などの塩化ビニルとアクリル酸エステル類との共重合樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合樹脂、塩化ビニル−プロピレン共重合樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類との共重合樹脂、塩化ビニル−アクリロニトル共重合樹脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹脂などを使用するのが良い。該共重合樹脂に於いて、コモノマーの含有量は特に限定されず、成形加工性、糸特性などの要求品質に応じて決めることができる。特に好ましくは、コモノマーの含有量は、2〜30%である。
【0017】
本発明に使用する塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度は、450〜1800であることが望ましい。450未満であると、繊維の特性、特に熱収縮率、カール保持性、艶状態などが劣る傾向があり好ましくない。逆に、1800を越えると、溶融粘度が高くなる為、ノズル圧力が高くなり、安全な製造が困難になる。
これら成形加工性と繊維特性とのバランスから、塩化ビニル単独樹脂を使用する場合は、粘度平均重合度が650〜1450の領域が特に好ましく、共重合樹脂を使用する場合は、コモノマーの含有量にも依存するが、粘度平均重合度は、1000〜1700の領域が特に好ましい。
【0018】
また本発明に使用する塩化ビニル系樹脂は、乳化重合、塊状重合または懸濁重合などによって製造したものを使用できるが、繊維の初期着色性などを勘案して、懸濁重合によって製造したものを使用するのが好ましい。
本発明に使用する塩素化塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニル系樹脂を原料とし、これに塩素を付加反応せしめ、塩素含有量を58〜72重量%、好ましくは60〜70重量%に高めたものを使用するのが好ましいが、主たる目的として、繊維の熱収縮率を低下せしめる為に使用することができる。また該塩素化塩化ビニル系樹脂は、粘度平均重合度(原料塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度)が300〜1100であることが好ましい。該粘度平均重合度が300未満であると、繊維の熱収縮率を低下せしめる効果が小さくなるので収縮率のやや高い繊維となる。逆に、該粘度平均重合度が1100を越えると、溶融粘度が高くなり、紡糸時のノズル圧力が高くなるため、安全操業が困難になるばかりでなく、溶融紡糸時の糸の破断(糸切れ)の頻度が著しくなり、安定操業が困難になる傾向がある。より好ましくは、粘度平均重合度は、350〜1100のものが良く、特には500〜900のものが良い。また、前記塩素含有量については、58重量%未満であると繊維の熱収縮率を低下せしめる効果が小さくなり、逆に72重量%を越えると、溶融粘度が高くなって安定操業が困難となる傾向があり好ましくない。
【0019】
該塩素化塩化ビニル系樹脂の原料となる塩化ビニル系樹脂は、前述の塩化ビニル系樹脂と同様であるが、塩化ビニル単独樹脂またはエチレン−塩化ビニル共重合樹脂を原料として使用している場合が、特に好ましい。
本発明に於いては、塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂の使用比率は、(塩化ビニル/塩素化塩化ビニル)=(100〜60重量%/0〜40重量%)の塩化ビニル系混合物とすることが好ましい。前記塩化ビニルが60重量%未満であると塩素化塩化ビニル系樹脂が過剰となるため、溶融粘度が高くなり、溶融紡糸時のノズル圧力が高くなって、安全操業が困難になる傾向があり好ましくない。尚、塩化ビニル系樹脂の比率が高い場合には、熱収縮率の高い繊維になる傾向があり、目的に応じて、使用比率は適宜調整して用いることができる。
【0020】
本発明に於いては、主たる目的として、繊維の柔軟性を高め、柔らかで、しなやかで、かつ、サラサラとした触感の繊維とする為に、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(以下、EVA系樹脂と略記する。)を1〜35重量部添加配合して使用するのが好ましく、触感などの点においては3〜35重量部がさらに好ましい。また該樹脂は、副次的には、該組成物のゲル化・溶融性を調節し、均一で適度な溶融状態を醸し出し、適度なノズル圧力を可能とする効果がある。
【0021】
前記EVA系樹脂の使用量が1重量部未満となると、繊維柔軟性改良効果が希薄になるばかりでなく、ゲル化・溶融性調節機能が低下し、ノズル圧力が上昇したりする傾向がある。逆に35重量部を越えると、組成物のゲル化・溶融性調節機能が低下し、不均一なゲル化・溶融状態になるため、未延伸糸内に「ブツ」状物(未溶融粒子、または、剪断応力によって崩壊しなかった粒子)が多くなって溶融紡糸時あるいは延伸・熱処理時の糸切れ頻度が多くなる傾向があり好ましくない。
【0022】
本発明でいうEVA系樹脂とは、従来公知の酢酸ビニル含有量が20〜65重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、さらに極性基としてカルボニル基を導入してなるエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂からなるEVA樹脂またはこれらのEVA樹脂に塩化ビニルをグラフト重合してなるEVA−塩化ビニルグラフトポリマー樹脂を意味する。EVA−塩化ビニルグラフトポリマー樹脂は、水性媒体中で塩化ビニルを懸濁重合または乳化重合する際、EVA樹脂を重合系に添加して重合を進めることによって容易に得られる。該樹脂は、溶媒による分別により、EVA樹脂成分、ポリ塩化ビニル樹脂成分、およびEVA樹脂成分に塩化ビニルが化学的に結合してなるEVA−塩化ビニルグラフトポリマー成分の混合物である。
【0023】
本発明に使用するEVA樹脂の酢酸ビニル含有量は、20〜65重量%のものを使用するのが好ましい。酢酸ビニル含有量が20重量%未満あるいは65重量%を越えると組成物系との相溶性が低下し、組成物のゲル化・溶融性調節機能が低下し、不均一なゲル化・溶融状態になり、未延伸糸内に「ブツ」状物が多くなって、溶融紡糸時あるいは延伸・熱処理時の糸切れ頻度が多くなる傾向があり好ましくない。また、酢酸ビニル含有量が20重量%未満であると、繊維柔軟性改良効果が不十分となり、逆に、酢酸ビニル含有量が65重量%を越えると、均一混合しなかった組成物中のEVA樹脂成分が溶融紡糸時に溶解し、 加熱筒あるいはノズル先端部からメルトダウンして、未延伸糸を得ることが困難となるなどの問題がある。
【0024】
また、該樹脂の分子量の目安となるメルトインデックス(MI:gr/10分)は、1〜260程度の範囲が望ましい。該メルトインデックスが1未満であるとEVA樹脂成分の溶融粘度が高くなり、溶融紡糸時のノズル圧力が高くなる傾向がある。また逆にメルトインデックスが260を越えると、該樹脂の粘度が低下し、塩化ビニル系混合物成分の溶融が不十分となり、均一溶融が不十分となって未延伸糸内に「ブツ」状として残存し易くなるため、紡糸時の糸切れ頻度が多くなりやすく好ましくない。
【0025】
本発明に使用できるEVA−塩化ビニルグラフトポリマー樹脂は、EVA成分含有量が3〜45重量%の範囲のものが特に好ましい。該含有量が3重量%未満であると、繊維柔軟性改良効果が不十分となり、逆に45重量%を越えると、組成物のゲル化・溶融性調節機能が低下し、不均一なゲル化・溶融状態になるため、未延伸糸内に「ブツ」状物が多くなって、溶融紡糸時あるいは延伸・熱処理時の糸切れ頻度が多くなる傾向がある。
【0026】
本発明に使用する熱安定剤は従来公知のものが使用できるが、中でも錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライト系熱安定剤から選択される1種または2種以上の熱安定剤を0.2〜5.0重量部使用するのが好ましい。該熱安定剤は、成形時の熱分解、ロングラン性、繊維の色調を改良する為に使用するもので、特に好ましくは、紡糸時のノズル周囲に発生するスケール(以下、ノズル目脂と略記する。)発生量の比較的少ない錫系熱安定剤が良く、中でもメルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安定剤から1種または2種以上を使用するのが良い。例えば、ジメチルスズメルカプト、ジブチルスズメルカプト、ジオクチルスズメルカプトなどのメルカプト錫系熱安定剤、ジメチルスズマレエート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマーなどのマレエート錫系熱安定剤、ジメチルスズラウレート、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートなどのラウレート錫系熱安定剤が例示される。
【0027】
繊維の初期着色を抑制し、顔料を含まないナチュラル組成物の白色度を高める為には、メルカプト錫系熱安定剤を塩化ビニル系混合物100重量部に対して、少なくとも0.1〜1.4重量部使用し、他の熱安定剤と併用して合計が、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部の範囲とするのが特に好ましい。該熱安定剤の使用量は、0.2〜5.0重量部であるが、0.2重量部未満となると、成形時の熱分解防止効果が低下する傾向がある。逆に、5.0重量部を越えると、紡糸時のノズル目脂発生が多くなり、紡糸時の流出変動発生が大となりやすく、好ましくない。
【0028】
本発明に使用する滑剤は、カドミウムや鉛を含有しない従来公知のものを用いることができるが、特に金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤から選択される1種または2種以上を塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部使用するのが好ましい。該滑剤は、組成物の溶融状態、ならびに組成物と金属面との接着状態を制御する為に使用するもので、繊維の表面状態、触感、糸切れ頻度、ノズル目脂発生頻度、ノズル圧力などに大きく影響する。
【0029】
比較的サラサラとした触感を得る為には、金属石鹸系滑剤を使用するのが好ましい。また特に、衛生上の観点から、カドミウム、鉛以外の金属石鹸が良い。例えば、Na,Mg,Al,Ca,Baなどのステアレート、ラウレート、パルミテート、オレエートなどの金属石鹸が例示される。また、ノズル目脂発生頻度を低減し、ノズル圧力を低く抑える為には、ポリエチレン系滑剤を使用するのが好ましく、従来公知のポリエチレン系滑剤を使用できるが、特に好ましくは、平均分子量が1500〜4000であり、密度が0.91〜0.97の非酸化タイプまたはごくわずかに極性を附加したタイプのポリエチレン系滑剤が特に好ましい。該ポリエチレン系滑剤は0.2〜1.3重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。
【0030】
本発明に於いては、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤は、主として組成物の溶融状態を制御する為に使用するのが好ましい。高級脂肪酸系滑剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、またはこれらの混合物などが例示される。ペンタエリスリトール系滑剤としては、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと高級脂肪酸とのモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、またはこれらの混合物などが例示される。高級アルコール系滑剤としては、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどが例示される。さらに、モンタン酸ワックス系滑剤としては、モンタン酸とステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールとのエステル類が例示される。
【0031】
該滑剤系の特に好ましい使用量の領域は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤であれば0.5〜3.0重量部、ポリエチレン系滑剤であれば0.2〜1.8重量部、ペンタエリスリトール系滑剤であれば0.2〜1.0重量部併用するのが特に好ましい。
本発明に於ける塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)EVA系樹脂を1〜35重量部と(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と(c)滑剤0.2〜5.0重量部を配合してなるものの他、塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)EVA系樹脂を1〜35重量部と(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安定剤から選択される1種または2種以上の熱安定剤を0.2〜5.0重量部、と(c)カドミウム、鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることができる。
【0032】
前記樹脂組成物は、糸切れの発生が少なく、安定した製造ができ、品質とのバランスがとれる点で好ましい。
また、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、(a)EVA系樹脂を1〜35重量部と(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安定剤から選択 される1種または2種以上の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と(c)カドミウム、鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物も用いることができる。
【0033】
前記樹脂組成物は、繊維の熱収縮率がやや高くなる傾向にあるが、製造は、より安定する利点があり、収縮率が高いものを好む用途には好ましい。
本発明に於いては、目的に応じて、塩化ビニル系組成物に使用される公知の配合剤、例えば、加工助剤、強化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤、難燃剤、顔料などを使用することができる。また、場合によっては、発泡剤、架橋剤、粘着性付与剤、親水性付与剤、導電性付与剤、香料など特殊な配合剤を適宜使用することも可能である。
【0034】
前記加工助剤としては、例えば、メチルメタクリレートを主成分とするアクリル系加工助剤、または熱可塑性ポリエステルを主成分とするポリエステル系加工助剤などが挙げられる。該加工助剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜12重量部程度が好ましい。また、これらの加工助剤は単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0035】
本発明に使用する充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、クレーなどが挙げられる。該充填剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部程度が好ましい。また、これらの充填剤は単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0036】
本発明に使用する可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸系可塑剤、オクチルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤、オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤などを使用できる。該可塑剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部程度が好ましい。また、これらの可塑剤は単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0037】
本発明に使用する塩化ビニル系樹脂組成物は、従来公知の混合機、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダーなどを使用して混合してなるパウダーコンパウンド、またはこれを溶融混合してなるペレットコンパウンドとして使用することができる。該パウダーコンパウンドの製造は、従来公知の通常の条件で製造でき、ホットブレンドでもコールドブレンドでも良い。特に好ましくは、組成物中の揮発分を減少する為に、ブレンド時のカット温度を105〜155℃迄上げてなるホットブレンドを使用するのが良い。該ペレットコンパウンドは、通常の塩化ビニル系ペレットコンパウンドの製造と同様にして製造できる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機、同方向2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押出機、ロール混練り機などの混練り機を使用してペレットコンパウンドとすることができる。該ペレットコンパウンドを製造する際の条件は、特に限定はされないが、樹脂温度を185℃以下になる様に設定することが好ましい。また、該ペレットコンパウンド中に混入し得る掃除用具の金属片などの異物を取り除く為に、目開きの細かいステンレスメッシュなどを混練り機内に設置したり、コールドカットの際に混入し得る「切り粉」などを除去する手段を採用したり、ホットカットを行なうなどの方法は自在に可能であるが、特に好ましくは、「切り粉」混入の少ないホットカット法を使用するのが良い。
【0038】
前記塩化ビニル系樹脂組成物を繊維状の未延伸糸にする際には、従来公知の押出機を使用できる。例えば単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機などを使用できるが、特に好ましくは、口径が35〜85mmφ程度の単軸押出機または口径が35〜50mmφ程度のコニカル押出機を使用するのが良い。口径が過大になると、押出量が多くなり、ノズル圧力が過大になったり、未延伸糸の流出速度が早過ぎて、巻取りが困難になる傾向があり好ましくない。
【0039】
本発明に於いては、1ケのノズル孔の断面積が、0.5mm2以下のノズルをダイ先端部に取り付けて溶融紡糸を行なうのが好ましい。該断面積が、0.5mm2を越えるノズルを使用すると、未延伸糸の繊度が太くなり、細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際に延伸倍率を大きくをする必要がある。その為、延伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる。また、繊維の触感がザラザラとしたり、キラキラ感が出たり、あるいはプラスチック的な滑り触感になる傾向があり好まくない。
【0040】
該ノズルに存在するノズル孔の配列、位置関係は、巻取りの容易さに大きく関係する。特に好ましい配列数は、1〜5列であり、これ以上になるとダイ内の溶融物の流動速度差が大きくなり、流出速度分布が拡がり、未延伸糸の「泳ぎ」が大きくなる傾向があり好ましくない。また、該ノズル孔の配列形状は、円状、楕円状、または4角以上の多角形状であることが望ましい。三角形状であると、ダイ内の溶融物の流動速度差が大きくなり、流出速度分布が拡がり、未延伸糸の「泳ぎ」が大きくなる傾向となり好ましくない。さらに、1ケのノズルに存在するノズル孔の数は、50〜300であることが好ましい。ノズル孔の数が少な過ぎると生産性が低下し、逆に多過ぎると、「糸切れ」などのトラブル発生確率が高くなり好ましくない。
本発明に於いては、隣接するノズル孔の中心間(異形断面にあっては、該断面の重心間)の距離が、少なくとも、0.8mm以上となる様に配置するのが好ましい。該距離が、0.8mm未満であると溶融紡糸する際、未延伸糸同志の接触頻度が多くなり、糸切れの原因になり好ましくない。また、該距離が長過ぎるとノズルそのものが大きなものとなって重くなったり、ノズルに配置する孔数が少なくなり加工生産性が低下したりして好ましくない。特に好ましい範囲は、0.8〜3.8mmの範囲である。
【0041】
本発明に於いては、未延伸糸の繊度を300デニール以下にしておくことが好ましい。該未延伸糸の繊度が300デニールを越えると、細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際に延伸倍率を大きくをする必要があるので、延伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる。また、プラスチック的な滑り触感になる傾向がある。また、溶融紡糸の際、ノズル圧力は500Kg/cm2以下で紡糸するのが好ましい。ノズル圧力が500Kg/cm2を越えると、押出機のスラスト部にかかる負荷が過大になり、押出機に不具合を発生し易くなり好ましくない。ノズル圧力は、スクリュー回転数あるいはフィード量を変更して、押出量を制御することでコントロールするのが品質に影響が少なく好ましい。しかしながら、押出量を減少すると生産性が低下する為、このバランスから、480〜300Kg/cm2の範囲が特に好ましい。 ノズル圧力を低下するには、金属面との滑り効果の高い滑剤を使用したり、多量の溶融粘度低下剤、例えば、可塑剤、高分子可塑剤などを使用することが可能であるが、この様な手段によって、ノズル圧力を200Kg/cm2以下にすると組成物のゲル化・溶融状態が極めて不均一になり、糸切れ頻度が多くなり、製造が困難になると共に、艶状態、触感などの品質が不十分な繊維となる傾向がある。故に前記した様な押し出し量の制御による圧力コントロールが好ましい。
【0042】
溶融紡糸の際、ノズル孔から溶融・流出したストランドは、300デニール以下の未延伸糸に引き伸ばされるが、その際のドラフト比は、25以下であることが特に好ましい。該ドラフト比が25を越えると、未延伸糸の時点で表面が過剰に引き伸ばされている為、延伸処理を施した後の細繊度の繊維に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる傾向がある。また、プラスチック的な滑り触感になる傾向がある。また、樹脂温度は195℃以下で紡糸することが好ましい。195℃を越えた温度で紡糸すると繊維の着色傾向が顕著となり、黄色味の強い繊維となりやすく好ましくない。その為、シリンダー温度を150〜185℃程度とし、ダイ温度を160〜190℃程度とすることが特に好ましい。
【0043】
以上の様に、本発明に於いては、溶融紡糸の際、1ケのノズル孔の断面積が、0.5mm2以下のノズルを使用して、かつ、300デニール以下の未延伸糸を製造するのが好ましい。特に、樹脂温度は195℃以下、ドラフト比を25以下、ノズル圧力を500Kg/cm2以下、ノズル孔数は、50〜300とし、ノズル配列形状は、円状、楕円状、または4角以上の多角形状とし、ノズル配列数は1〜5として行なうのが特に優れた方法である。
【0044】
前記溶融紡糸で得られた未延伸糸に公知の方法で延伸処理・熱処理を施して、100デニール以下の細繊度の繊維(延伸糸)とすることができる。頭髪装飾用の繊維としては、25〜100デニールの範囲が特に好ましく、また、人形用頭髪の繊維としては、10〜65デニールの範囲が特に好ましい。
延伸処理条件としては、延伸処理温度70〜150℃の雰囲気下で、延伸倍率は、200〜450%程度延伸することが特に好ましい。延伸処理温度が70℃未満であると繊維の強度が低くなると共に、糸切れを発生し易く、逆に150℃を越えると繊維の触感がプラスチック的な滑り触感になり好ましくない。また、延伸倍率が200%未満であると繊維の強度発現が不十分となり、450%を越えると延伸処理時に、糸切れを発生し易く好ましくない。
【0045】
さらに、延伸処理を施した繊維に熱処理を施して、2〜75%の緩和率で繊維を緩和処理することにより、熱収縮率を低下させることができる。また、繊維表面の凹凸を整えて、人毛に類似した触感、半艶〜七部艶表面とする為にも該緩和処理が好ましい。該緩和率の範囲を外れると人工毛髪用繊維として、あるいは人形用頭髪繊維として、品質が低下する傾向があり好ましくない。該熱処理は、延伸処理と連動して実施することもできるし、切り離して実施することもできるが、条件としては、雰囲気温度80〜150℃で実施することが特に好ましい。また本発明に於いては、従来公知の溶融紡糸に関わる技術、例えば、各種ノズル断面形状に関わる技術、加熱筒に関わる技術、延伸処理に関わる技術、熱処理に関わる技術などは、自在に組み合わせて使用することが可能である。
【0046】
【実施例】
次に、実施例をあげて、本発明の詳細な態様を明らかにするが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
尚、表中の組成物表示等は、次のように略記する。
塩化ビニル樹脂:「PVC」、塩素化塩化ビニル系樹脂:「CPVC」、酢酸ビニル:「VAc」、粘度平均重合度:「M」、メルトインデックス:「MI」。また表2、4〜6、8〜9における、組成物での配合剤の数値は、PVCとCPVCの合計=100重量部に対する各配合剤の重量部を表すものである。
【0047】
[実験1〜5(PVC/CPVCの配合比率)]
塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、表2に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しながら、内容物の温度が115℃になる迄、撹拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得た。該パウダーコンパウンドを表1(紡糸条件1)に示す条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。
【0048】
【表1】
【0049】
溶融紡糸実験は、定常状態になってから、スクリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が7.0Kg/Hrsになる様にスクリュー回転数を決定した。ノズル圧力、樹脂温度は、 ダイ圧計、樹脂温度センサーをそれぞれノズル部に設置して測定した。
鉛直方向に、ノズルから溶融・流出したストランドを加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶解し、ノズル直下約3mの位置に設置した引取機にて、未延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延伸糸の繊度が約165〜185デニールになる様に引取速度を調節した。この未延伸糸を製造する段階で、糸切れの発生状況を目視観察し、次の様に評価した。
【0050】
[溶融紡糸時の糸切れ発生状況]
◎:全く糸切れが発生しない。
○:1時間に3回以内発生する。
△:1時間に4〜15回発生する。
また、この未延伸糸の着色状態を目視観察にて、次の様に評価した。
【0051】
[未延伸糸の着色状態]
◎:乳白色で黄色味がない。
○:乳白色であるが、わずかに黄色味がある。
△:かなり強い黄色味がある。
該未延伸糸を延伸・熱処理機に導入し、延伸処理、次いで、熱緩和処理を行い、延伸糸を製造した。この際、熱緩和処理は、25%緩和に固定し、延伸処理は、最終の延伸糸の繊度が、65〜68デニールになる様に延伸倍率を若干調整した。この延伸・熱処理時に発生する糸切れの発生状況を目視観察し、次の様に評価した。
【0052】
[延伸・熱処理時の糸切れ発生状況]
◎:全く糸切れが発生しない。
○:1時間に3回以内発生する。
△:1時間に4〜15回発生する。
また、この延伸糸の表面艶・光沢を目視観察し、次の様に評価した。
【0053】
[延伸糸の艶状態]
◎(半艶状態):表面が平滑で、わずかに鈍い光沢がある。
○(七部艶状態):表面が平滑で、鈍い光沢がある。
●(完全艶消状態):表面がザラザラで、光沢がない。
△(八分艶状態):表面がザラザラで、局部的に光沢があり、キラキラ感がある。
×(艶有状態):表面が平滑で、全面的に光沢があり、輝き感がある。
さらに、この延伸糸を手で触り、その手触り触感を、次の様に評価した。
【0054】
[延伸糸の触感]
◎:表面が平滑で、サラサラとした触感がある。
○:表面が平滑で、かすかに湿った触感があるが、サラサラ感がある。
△(ザラザラ感):表面がザラザラで、ザラザラとした触感がある。
●(プラスチック感):表面が平滑で、プラスチック的触感があり、滑り触感がある。
またさらに、この延伸糸を指に数回巻き付け、その際の反発力、触感、柔軟性を、次の様に評価した。
【0055】
[延伸糸のしなやかさ]
◎:指にやわらかく、しなやかに巻き取ることができる。
○:かすかに反発触感があるが、しなやかに巻き取ることができる。
△:全体的に硬い感触で、かなり強い反発触感がある。
該延伸糸を引張試験、熱収縮試験に供し、強度および熱収縮率を求めた。尚、延伸糸の熱収縮率の測定は、100℃の雰囲気温度で、25分熱収縮させ、計算は、次の様に行なった。
(熱処理前の延伸糸長−熱処理後の延伸糸長)/熱処理前の延伸糸長さ×100=熱収縮率(%)
これらの評価結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実験1〜5の比較から判る様に、塩素化塩化ビニル樹脂の配合比率が、40重量%を越えるとノズル圧力が500Kg/cm2以上になり、押出機の設計圧力を超える状態になり、安全な生産が困難となる。また、スクリュー回転数を低下すると、押出量が低下し、生産性が低下する傾向にある。また、塩素化塩化ビニル樹脂の配合比率が、40重量%を越えると、溶融紡糸時の糸切れが頻繁に発生したり、未延伸糸の着色状態がやや黄色味を呈してくる傾向があり、さらに、延伸糸の艶も消え過ぎになり、触感もザラザラとした触感になり、かつ、繊維のしなやかさが劣る傾向となる。これらの実験から、塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂の配合比率は、前者が100〜60重量%で、後者が0〜40重量%の範囲が最適であることが判る。
【0058】
[実験6〜11(EVA系樹脂の添加効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、EVA系樹脂の添加量を変更して、表4に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しながら、内容物の温度が135℃になる迄、撹拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が70℃になる迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得た。該パウダーコンパウンドを表3(紡糸条件2)に示した紡糸条件,延伸条件,熱緩和処理条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。
【0059】
【表3】
【0060】
溶融紡糸実験は、定常状態になってから、フィード量、スクリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が7.0Kg/Hrsになる様に、フィード量、スクリュー回転数を決定した。ノズル圧力、樹脂温度は、ダイ圧計、樹脂温度センサーをノズル部に設置して測定した。
鉛直方向に、ノズルから溶融・流出したストランドを加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶解し、ノズル直下、約3mの位置に設置した引取機にて、未延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延伸糸の繊度が約154〜176デニールになる様に引取速度を調節した。また、その他の紡糸条件などは、実験1〜5に示した方法と同様に行い、評価方法なども実験1〜5に示した方法と全く同様に行なった。これらの評価結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
実験6〜11の比較から判る様に、EVA系樹脂の添加量が1重量部未満になると、延伸糸のしなやかさが不足し、ゴワゴワとした触感の繊維となる。また、熱収縮率もやや高くなる傾向がある。また、 EVA系樹脂の添加量が35重量部を越えると、組成の不均一化(CPVC成分の溶融が不均一となる)が起こり、溶融紡糸時あるいは延伸処理時の糸切れが頻繁になる。さらに、ノズル圧力も高くなる傾向があり、繊維の触感もザラザラとした触感になる。これらの実験から、EVA系樹脂の添加量は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、1〜35重量部の範囲が最適であり、触感などの点では3〜35重量部の範囲がさらに好ましいことが判る。
【0063】
[実験12〜16(熱安定剤の添加・併用効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、熱安定剤の種類・添加量を変更して、表5に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しながら、内容物の温度が135℃になる迄、撹拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得た。尚、EVA系樹脂は、酢酸ビニル含有量25重量%、メルトインデックス5のEVA樹脂に塩化ビニルをグラフト重合し、EVA含量を40%に調節したEVA-塩化ビニルグラフト樹脂を使用した。該パウダーコンパウンドを実験6〜11に示した紡糸条件、延伸条件,熱緩和処理条件と同様の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。また、実験6〜11に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。これらの評価結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
実験12〜16の比較から判る様に、熱安定剤の添加量が適量であれば、未延伸糸の初期着色も良好であるが、ブチル錫マレエートを過剰に使用すると、繊維の熱収縮率が極端に高くなり、品質の不十分な繊維となる。また、ゼオライトの様な無機粉末状の熱安定剤を過剰に使用すると、ゴワゴワとした触感の繊維となるばかりでなく、糸切れが著しくなり、繊維の強度も低下する。これらの実験から、熱安定剤の添加量は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部の範囲が最適であることが判る。
【0066】
[実験17〜21(ノズル断面積の効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、表6に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しながら、内容物の温度が125℃になる迄、撹拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得た。尚、EVA系樹脂は、酢酸ビニル含有量65重量%、メルトインデックス15のEVA樹脂に塩化ビニルをグラフト重合し、EVA含量を25%に調節したEVA-塩化ビニルグラフト樹脂を使用した。該パウダーコンパウンドを実験1〜5に示した紡糸条件、延伸条件,熱緩和処理条件と同様の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。この際、表6に示したノズル孔断面積および孔数のノズルに変更して紡糸実験を行なった。また、押出量は、7.8Kg/Hrsとし、これに合わせて、引取速度、延伸倍率を調節した。さらに、実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果を表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
実験17〜21の比較から判る様に、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下であれば、紡糸する際の各種性能、延伸処理・加熱処理時の性能、繊維の性能が高度にバランスされた状態になる。一方、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2を越えると、延伸糸の艶が出てきて、キラキラした目視感になり、触感もプラスチック的な滑り触感になり、品質的に不十分な繊維となる。また、1ケのノズル孔の断面積が大きくなると、溶融紡糸時のドラフト比が高くなり、延伸時の糸切れ頻度が増加するし、繊維の熱収縮率が高くなる傾向がある。
【0069】
[実験22〜26(未延伸糸の繊度の効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、表8に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しながら、内容物の温度が135℃になる迄、撹拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得た。尚、EVA系樹脂は、酢酸ビニル含有量35重量%、メルトインデックス10のEVA樹脂に塩化ビニルをグラフト重合し、EVA含量を35%に調節したEVA-VCLグラフト樹脂を使用した。該パウダーコンパウンドを表7に示す(ペレット化条件)にて、ペレットコンパウンドとした後、溶融紡糸実験に供した。
【0070】
【表7】
【0071】
該ペレットコンパウンドを実験1〜5に示した紡糸条件,延伸条件,熱緩和処理条件と同様の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。この際、引取速度を変更して、未延伸糸の繊度が表8になる様に設定した。また、実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果を表8に示す。
【0072】
【表8】
【0073】
実験22〜26の比較から判る様に、未延伸糸の繊度が300デニールを越えると、65〜70デニールの延伸糸を得る為には、延伸処理に於いて、過剰に延伸する必要がある。その為、延伸処理を施す際、糸切れ頻度が多くなるばかりでなく、延伸糸の触感が、プラスチック的な滑り触感になり、艶がでてきて品質的に不十分な繊維となる。一方、未延伸糸の繊度が300デニール以下であれば、これらの品質が高度にバランスされ、人毛に極めて類似した人工毛髪用繊維として優れたものを得ることができる。
【0074】
[実験27〜31(延伸糸の繊度の効果)]
塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、表9に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しながら、内容物の温度が115℃になる迄、撹拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得た。尚、EVA系樹脂は、酢酸ビニル含有量35重量%、メルトインデックス10のEVA樹脂に塩化ビニルをグラフト重合し、EVA含量を35%に調節したEVA-VCLグラフト樹脂を使用した。該パウダーコンパウンドを実験1〜5に示した紡糸条件,延伸条件,熱緩和処理条件と同様の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。この際、延伸倍率を変更して、延伸糸の繊度が表9になる様に設定した。また、実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果を表9に示す。
【0075】
【表9】
【0076】
実験27〜31の比較から判る様に、延伸糸の繊度が100デニールを越えると、延伸糸の触感がゴワゴワとした、硬い触感となり、また、しなやかさが劣る為、人工毛髪用繊維として品質的に不十分な繊維となる。一方、延伸糸の繊度を100デニール以下とすれば、これらの品質が高度にバランスされて、人毛に極めて類似した人工毛髪用繊維として優れたものを得ることができる。
【0077】
【発明の効果】
以上のように、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を用いれば、品質に優れ、人毛に極めて類似した七部〜半艶表面でサラサラとした手触り触感を兼ね備えた塩化ビニル繊維を得られ、また、本発明の製造方法を用いれば、目的の塩化ビニル系繊維を、高い紡糸生産性を維持しながら、安全に製造することができる。本発明の塩化ビニル系繊維は、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維として、あるいはドールヘアーなどの人形用頭髪繊維として有用である。
Claims (14)
- 塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と(c)滑剤0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなることを特徴とする塩化ビニル系繊維であって、塩化ビニル系樹脂が塩化ビニル単独樹脂、エチレン - 塩化ビニル共重合樹脂、および酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹脂からなる群の内から選択される少なくとも1種の樹脂であり、かつ塩素化塩化ビニル系樹脂が、重合度350〜1100の原料塩化ビニル樹脂を用いて、塩素含有量60〜70重量%にしたものを使用する塩化ビニル系繊維。
- 熱安定剤(b)が錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、およびゼオライト系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種である請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
- 滑剤(c)がカドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、およびモンタン酸ワックス系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種である請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
- 塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を使用する請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を使用する請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
- 塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と、(c)滑剤0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸する塩化ビニル系繊維の製造方法。
- 熱安定剤(b)が錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、およびゼオライト系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種である請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
- 滑剤(c)がカドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、およびモンタン酸ワックス系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種である請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
- 塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸する請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸する請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
- 塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流出せしめる請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
- 塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流出せしめ、300デニール以下の未延伸糸を製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱処理を施して、100デニール以下の繊維とする請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
- 塩化ビニル系樹脂組成物をノズル圧力500Kg/cm2以下、樹脂温度195℃以下で、ノズル孔から溶融・流出せしめると同時に、紡糸ドラフト比を25以下の条件下で、未延伸糸を引取る請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
- 溶融紡糸のダイ先端部に使用するノズルに存在するノズル孔が、50〜300ケであり、該ノズル孔が、円状、楕円状、長方形状、または正方形状に配列され、隣接するノズル孔の中心間(異形断面形状にあっては、該断面の重心間)の距離が、少なくとも、0.8mm以上となる様に配列されているノズルを使用する請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
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