JP3788902B2 - 無線リソース割当方法及び通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、端末又は通信コネクション毎に無線リソースを割り当てる無線リソース割当方法及び通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の音声メディアによる通信コネクションが中心であった無線通信システムにおいては、無線リソースの利用効率の向上を目的とした制御を行う場合、システム側は各端末間の通信品質の公平性を保つように制御していた。これは、システム側が端末に提供すべき通信品質は全て同一と考えることが可能だったからである。しかし、近年、音声のみでなく非音声のデータ通信、動画像及び静止画像のダウンロード等の様々なメディア、いわゆるマルチメディアに対する要求が高まってきており、今後の無線通信システムは、こうしたマルチメディアサービスを提供することが必要不可欠となってくる。
【0003】
これらのマルチメディアサービスをユーザが十分満足するように提供するためには、通信品質と端末毎又は通信コネクション毎にそれぞれ異なる値に設定する必要があると考えられる。例えば音声通信を行う通信コネクションに対しては、多少音質が悪くても、なるべく少ない伝送遅延時間が要求される。一方、データ通信を行う通信コネクションに対しては、伝送遅延時間が大きくなっても良いが、その代わりにデータ誤りのない通信が要求される。従って、システムがマルチメディアサービスを提供する場合、無線リソースを有効に利用した効率的な伝送を行うシステム設計のみならず、扱うメディアの異なる各端末又は各通信コネクションが必要とする通信品質を満足させるための制御が重要になってくる。
【0004】
従来の技術においても、こうしたマルチメディアサービスを提供するシステムが行う制御に関して様々な考案がなされてきたが、端末毎又は通信コネクション毎に必要とする通信品質が異なる場合に、その必要とする通信品質を満足させるための適切な制御を行うことができなかった。これについて、図14及び図15を用いて説明する。
【0005】
図14は、システム側が全ての端末に対し、一元的に必要な通信品質の基準値を決定する場合における、基準値と実際に測定された通信品質との関係を示す図である。ここでは、1つの端末が1つのメディアによる通信コネクションを確立しているものとする。
【0006】
従来技術では、各端末に無線リソースを割り当てる場合、必要な通信品質の基準値より劣化している端末を優先し、通信品質の低い順に割り当てるという制御を行っていた。図14においては、基準値を満足しない(基準値を下回っている)端末は、端末A、C、Dであり、これらの端末は通信品質の低い順、即ち端末D、C、Aの順で無線リソースが割り当てられ、次に基準値を満足する端末Bに無線リソースが割り当てられる。また、必要な通信品質の基準値を設けず、単に通信品質の低い順に無線リソースを割り当てるという技術もある。この場合、無線リソースの割当順序は、上述した場合と同様、端末D、C、A、Bの順になる。
【0007】
しかし、これらの無線リソース割当処理は、各端末が必要とする通信品質が同一の場合には適用可能であるが、各端末が必要とする通信品質がそれぞれ異なる場合には対応できない。例えば、上述した無線リソース割当処理では、端末Aの方が端末Dより通信品質に対する要求が厳しい場合でも、端末Aに対し、端末Dに優先して無線リソースが割り当てられることはない。従って、各端末が必要とする通信品質がそれぞれ異なる場合には、各端末は必要とする通信品質をシステム側に要求し、システム側は各端末が必要とする通信品質(以下「要求品質」と称する)に基づいて無線リソースを割り当てる必要がある。
【0008】
図15は、各端末が個別に必要な通信品質を要求する場合における、要求品質と実際に測定された通信品質との関係を示す図である。マルチメディア通信のシステムでは、各端末は、図15に示すようにそれぞれ異なる通信品質を有するものと考えられる。このような場合、上述した従来の無線リソース割当処理では、端末D、C、A、Bの順で無線リソースが割り当てられ、要求品質を満足する端末Aが、要求品質を満足しない端末Bよりも優先されてしまう。また、端末Cと端末Dとを比較した場合、端末Cの方が要求品質からのずれが大きいため、端末Cが優先されるべきであるが、従来の無線リソース割当処理では、端末Dが優先されてしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
これまで述べてきたように、従来の無線リソース割当処理は、単に通信品質の低い順に割り当てる、又は、システム側が有する固定的且つ一元的な基準値以下に劣化する端末を優先するとともに通信品質の低い順に割り当てるものであった。これら何れの場合も、全ての端末又は全ての通信コネクションが同一の通信品質を必要とする場合にのみ有効な割当処理である。しかし、マルチメディアを対象とした通信システムでは、端末毎又は通信コネクション毎に異なる通信品質が要求されるため、従来のような割当順序で無線リソースを割り当てると、無線リソースに十分な空きがない場合、要求品質を満足しない端末又は通信コネクションが増加してしまう。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、その目的は、要求品質を満たす端末又は通信コネクションを増加させることが可能な無線リソース割当方法及び通信装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる無線リソース割当方法は、必要とする通信品質が端末又は通信コネクション毎に異なる通信システムにおける無線リソース割当方法であって、通信品質が必要とする通信品質より劣化した端末又は通信コネクションからなる第1のグループと、通信品質が必要とする通信品質より良好な端末又は通信コネクションからなる第2のグループとを抽出し、前記第1のグループの端末又は通信コネクションに対し、前記第2のグループの端末又は通信コネクションに優先して無線リソースを割り当ててもよい。
【0012】
このような無線リソース割当方法では、従来のように、端末や通信コネクションが必要とする通信品質(要求品質)を考慮せずに測定された通信品質のみに基づいて無線リソースを割り当てるのではなく、測定された通信品質が要求品質より劣化した端末又は通信コネクションに対して、測定された通信品質が要求品質より良好な端末又は通信コネクションに優先して無線リソースを割り当てることにより、要求品質を満足していない端末又は通信コネクションの通信品質を優先的に改善し、要求品質を満足する端末又は通信コネクションを増加させることができる。なお、無線リソースとは、時分割多重アクセス方式におけるタイムスロット、周波数分割多重アクセス方式における周波数帯域、符号分割多重アクセス方式における拡散コード、基地局あるいは端末の送信電力等を意味する。
【0013】
また、本発明の無線リソース割当方法は、更に、必要とする通信品質を有しない端末又は通信コネクションからなる第3のグループを抽出し、前記第1及び第2のグループの端末又は通信コネクションに対する無線リソースを割り当てた後に、前記第3のグループの端末又は通信コネクションに対する無線リソースを割り当ててもよい。
【0014】
この場合には、要求品質を有する端末又は通信コネクションに対し、優先的に無線リソースを割り当てることにより、要求品質を満足する端末又は通信コネクションを増加させることができる。
【0015】
また、本発明の無線リソース割当方法は、前記第1のグループの端末又は通信コネクションに対し、前記通信品質の低い順、前記必要とする通信品質と前記通信品質との差が大きい順、又は前記必要とする通信品質に対する前記通信品質の劣化の度合いが大きい順で、無線リソースを割り当ててもよい。
【0016】
この場合には、前記と同様、要求品質を満足する端末又は通信コネクションを増加させることができ、併せて、劣化の大きい通信品質を優先的に改善することができる。
【0017】
また、本発明の無線リソース割当方法は、前記第2のグループの端末又は通信コネクションに対し、前記通信品質の低い順、前記必要とする通信品質と前記通信品質との差が小さい順、又は前記必要とする通信品質に対する前記通信品質の良好さの度合いが小さい順で、無線リソースを割り当ててもよい。
【0018】
この場合には、前記と同様、要求品質を満足する端末又は通信コネクションを増加させることができる。更に、要求品質を満足する端末又は通信コネクションにおいて、要求品質と通信品質との差が小さい、あるいは要求品質に対する通信品質の良好さの度合いが小さいということは、今後、実際の通信品質が要求品質より劣化する可能性が高いということであるから、要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質と通信品質との差が小さい順、あるいは要求品質と通信品質の良好さの度合いが小さい順に無線リソースを割り当てることにより、これら端末又は通信コネクションの通信品質が要求品質より劣化する確率を下げることが可能となる。
【0019】
また、本発明にかかる無線リソース割当方法は、端末又は通信コネクションが必要とする通信品質が、許容可能な遅延時間、伝送速度、又はスループットに関する通信品質でもよい。
【0020】
また、請求項6〜10に記載された発明は、請求項1〜5に記載された無線リソース割当方法に適した通信装置である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線リソース割当方法及び通信装置が適用される無線通信システムの基本的な構成を示す図である。
【0022】
図1では、1つの無線基地局1が複数の無線端末10、20、30、40をカバーしている。即ち、複数の無線端末10〜40は全て同一の無線基地局1と通信を行っており、無線基地局1がこれらの無線端末10〜40、又は、無線基地局1と各無線端末10〜40との間の各通信コネクションに対し、時分割多重アクセス方式におけるタイムスロット、周波数分割多重アクセス方式における周波数帯域、符号分割多重アクセス方式における拡散コード、基地局あるいは端末の送信電力等の無線リソースを割り当てる。
【0023】
図1では、例えば無線端末10は無線基地局1から画像データを受信しており、無線端末20はカメラで撮影した写真のデータを送信している。また、無線端末30はパーソナルコンピュータを用いてデータを送信しており、無線端末40は遠隔地に存在する別の無線端末と音声による通話を行っている。図1の無線通信システムがこのようなマルチメディア通信のシステムの場合であれば、各無線端末10〜40又は各通信コネクションが必要とする通信品質(要求品質)はそれぞれ異なっている。
【0024】
また、無線基地局1は、接続される無線端末数分のバッファ11、21、31、41を備えている。バッファ11には、無線端末10へ送信されるパケットが格納される。同様に、バッファ21〜41には、無線端末20〜40へ送信されるパケットが格納される。一方、各無線端末10〜40は、無線基地局1へ送信されるパケットを格納するバッファ12、22、32、42を備えている。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係る通信装置が適用される無線基地局のブロック図である。ここでは、各無線端末10〜40又は通信コネクションの要求品質は、許容できる遅延時間、伝送速度、スループット等を言う。無線基地局1は、無線リソース割当の優先順序を決定するために、通信品質測定部106において、受信部102や送信部104から送られる情報に基づいて、その時点における各無線端末10〜40又は各通信コネクション毎に通信品質を測定する。
【0026】
通信品質の測定後、無線基地局1は、リソース割当優先順序決定処理部108において、測定された通信品質と、各無線端末10〜40又は各通信コネクションから予め通知されている要求品質とに基づいて、以下に説明する方法により無線リソース割当の優先順序を決定し、リソース割当処理部110において、決定された優先順序に従い、各無線端末10〜40又は各通信コネクション毎に無線リソースを割り当て、データの送受信を行う。
【0027】
図3は、各無線端末又は各通信コネクションの要求品質に基づいた無線リソース割当処理のフローチャートである。リソース割当優先順序決定処理部108は、全ての無線端末10〜40又は通信コネクションに対し、測定された実際の通信品質が要求品質を満足しているか否かを判定する(ステップ301)。
【0028】
この判定処理の後、リソース割当優先順序決定処理部108は、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションに優先して無線リソースを割り当てるように、優先順序を決定する。このため、まず、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションへ優先的に無線リソースを割り当てる処理が行われる(ステップ302)。その後、残りリソースがあるか否かが判定され(ステップ303)、残りリソースがあれば、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションへ無線リソースを割り当てる処理が行われる(ステップ304)。
【0029】
このように要求品質を考慮した無線リソース割当処理が行われることにより、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションは、測定された実際の通信品質が、要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションより良好な場合であっても、優先的に無線リソースが割り当てられることになる。
【0030】
図3のフローチャートに示した要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションへ無線リソースを割り当てる処理(ステップ302)や、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションへ優先的に無線リソースを割り当てる処理(ステップ304)における、無線リソース割当の優先順序の決定方法には様々なものがある。以下、その詳細を図4〜図8のフローチャートにより説明する。
【0031】
図4は、実際の通信品質の低い順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。まず、リソース割当優先順序決定処理部108は、要求品質を満足しない全ての無線端末又は通信コネクションを、実際の通信品質の低い順にソートする(ステップ401)。このソートした順序が無線リソースの割当の優先順序になる。
【0032】
このようにして無線リソース割当の優先順序が決定された後、リソース割当処理部110は、残りリソースがあるか否かを判定し(ステップ402)、残りリソースがあれば、その残りリソースを、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションへ割り当てる処理を行う(ステップ403)。
【0033】
これら残りリソースがあるか否かの判定処理(ステップ402)と無線リソースの割当処理(ステップ403)は、要求品質を満足しない全ての無線端末又は通信コネクションへ無線リソースを割り当てるか、若しくは残りリソースが無くなるまで繰り返される。このように、実際の通信品質の低い順に無線リソースを割り当てることにより、劣化の大きい通信品質を優先的に改善することができる。
【0034】
なお、図4では、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションに対して無線リソースを割り当てる場合について説明したが、通信品質の低い順に、要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションに対して無線リソースを割り当てることもできる。
【0035】
図5は、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質と実際の通信品質との差の大きい順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。まず、リソース割当優先順序決定処理部108は、要求品質を満足しない全ての無線端末又は通信コネクションを、要求品質から実際の通信品質を差し引いた値の大きい順にソートする(ステップ501)。このソートした順序が無線リソース割当の優先順序になる。
【0036】
無線リソース割当の優先順序が決定されると、リソース割当処理部110は、残りリソースがあるか否かを判定し(ステップ502)、残りリソースがあれば、その残りリソースを、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションへ割り当てる処理を行う(ステップ503)。このように、要求品質から実際の通信品質を差し引いた値の大きい順に無線リソースを割り当てることにより、劣化の大きい通信品質を優先的に改善することができる。
【0037】
例えば、通信品質が伝送時の遅延時間で表され、無線端末又は通信コネクションの要求品質が許容できる遅延時間で表されるものとする。許容遅延時間が1[msec]である端末Aと、許容遅延時間が3[msec]である端末Bが存在し、測定された実際の遅延時間がそれぞれ3[msec]、4[msec]である場合、図5に示した無線リソース割当方法によれば、遅延時間は端末Bの方が大きいが、許容遅延時間との差は端末Aの方が大きいため、端末Aに優先的に無線リソースが割り当てられる。
【0038】
一方、図6は、要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質と実際の通信品質との差の小さい順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。まず、リソース割当優先順序決定処理部108は、要求品質を満足する全ての無線端末又は通信コネクションを、実際の通信品質から要求品質を差し引いた値の小さい順にソートする(ステップ601)。このソートした順序が無線リソース割当の優先順序になる。
【0039】
要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションにおいて、要求品質と実際の通信品質との差が小さいということは、実際の通信品質が要求品質より劣化する可能性が高いということであるから、要求品質と実際の要求品質と実際の通信品質との差が小さい順に無線リソースを割り当てることにより、通信品質が要求品質より劣化する確率を下げることができる。
【0040】
図7は、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質に対する実際の通信品質の劣化の度合いの大きい順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。まず、リソース割当優先順序決定処理部108は、要求品質を満足しない全ての無線端末又は通信コネクションを、要求品質から実際の通信品質を差し引いた値を要求品質で除した値の大きい順にソートする(ステップ701)。このソートした順序が無線リソース割当の優先順序になる。
【0041】
無線リソース割当の優先順序が決定されると、リソース割当処理部110は、残りリソースがあるか否かを判定し(ステップ702)、残りリソースがあれば、その残りリソースを、要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションへ割り当てる処理を行う(ステップ703)。このように、要求品質から実際の通信品質を差し引いた値を要求品質で除した値の大きい順に無線リソースを割り当てることにより、劣化の大きい通信品質を優先的に改善することができる。
【0042】
例えば、許容遅延時間が1[msec]である端末Aと、許容遅延時間が1000[sec ]である端末Bが存在し、測定された実際の遅延時間がそれぞれ2[msec]、1020[sec ]である場合、図7に示した無線リソース割当方法によれば、要求品質(許容遅延時間)と実際の遅延時間(実際の通信品質)との差は端末Aについては1[msec]、端末Bについては20[sec ]であり、その要求品質に対する割合は端末Aについては100[%]、端末Bについては2[%]であるため、端末Aに優先的に無線リソースが割り当てられる。
【0043】
一方、図8は、要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質に対する実際の通信品質の良好さの度合いの小さい順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。この場合には、リソース割当優先順序決定処理部108は、要求品質を満足する全ての無線端末又は通信コネクションを、実際の通信品質から要求品質を差し引いた値を要求品質で除した値の小さい順にソートする(ステップ801)。このソートした順序が無線リソース割当の優先順序になる。
【0044】
要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションにおいて、要求品質に対する実際の通信品質の良好さの度合いが小さいということは、実際の通信品質が要求品質より劣化する可能性が高いということであるから、要求品質と実際の要求品質と実際の通信品質との差が小さい順に無線リソースを割り当てることにより、通信品質が要求品質より劣化する確率を下げることができる。
【0045】
ところで、1つの無線基地局1が複数の無線端末10〜40をカバーする場合、全ての無線端末又は通信コネクションが要求品質を有するとは限らず、要求品質を有しない無線端末も存在する場合があると考えられる。このような場合における無線リソース割当処理のフローチャートを図9に示す。
【0046】
この場合には、まず要求品質を有する無線端末又は通信コネクションに優先的に無線リソースが割り当てられ(ステップ901)、次に残りリソースがあるか否かの判定(ステップ902)が行われ、残りリソースがある場合には、その残りリソースが要求品質を有しない無線端末又は通信コネクションに割り当てられる(ステップ902)。この場合、図3〜図8に示した無線リソース割当処理は、要求品質を有する無線端末又は通信コネクションに無線リソースに対してのみ行われる。
【0047】
なお、図3〜図9に示した無線リソース割当処理は、何れの場合も、全ての無線端末又は通信コネクションに無線リソースが割り当てられるか、その時点で使用可能な全ての無線リソースが無線端末又は通信コネクションに割り当てられた時点で終了する。
【0048】
上述した無線リソース割当処理において、要求品質とは、許容遅延時間、伝送速度、スループット等であったが、以下においては、要求品質が許容遅延時間である場合とスループットである場合とについて具体的に説明する。
【0049】
要求品質が許容遅延時間である場合、実際の遅延時間は送信側におけるバッファにより測定する。なお、ここでは遅延時間として主に無線リンク部分(無線基地局と無線端末との間)における伝送遅延時間を対象に説明する。通信品質は遅延時間が大きくなるほど劣化する。従って、図3においては、実際の遅延時間が許容時間よりも大きい無線端末又は通信コネクションは、要求品質を満たしていないことになる。また、図4においては、実際の遅延時間の大きい順に無線リソース割当の優先順序が決定されることになる。図5〜図8においては、要求品質と実際の通信品質との差を、許容遅延時間と実際の遅延時間との差の絶対値と置き換えて処理を行えばよい。
【0050】
即ち、ある無線端末又は通信コネクションの許容遅延時間をDth、観測区間Tの間の平均の実際の遅延時間をDとすると、D>Dthである場合、要求品質を満足しないことになる。この場合、図4の処理では実際の遅延時間Dの大きい順に無線リソースが割り当てられる。また、図5の処理では|D−Dth|の大きい順に無線リソースが割り当てられ、図7の処理では|D−Dth|/Dthの大きい順に無線リソースが割り当てられる。一方、D<Dthである場合、要求品質を満足することになる。この場合、図4の処理では実際の遅延時間Dの大きい順に無線リソースが割り当てられる。また、図6の処理では|D−Dth|の小さい順に無線リソースが割り当てられ、図8の処理では|D−Dth|/Dthの小さい順に無線リソースが割り当てられる。
【0051】
また、要求品質がスループットである場合、実際のスループットは受信側において正しく受信することのできた情報量をカウントすることにより算出する必要がある。なお、スループットは無線端末又は通信コネクション毎に算出する。ここでスループットの算出方法について式を用いて説明する。計算式に用いる記号を、スループットの観測区間T[sec ]、観測区間Tの間に正しく受信することのできた情報量Ic[bits]、ある無線端末又は通信コネクションの要求するスループットSth[bps ]、観測区間Tにおける実際のスループットS[bps ]とする。
【0052】
まず、ある無線端末又は通信コネクションの要求するスループットSthについては、ある無線端末がT[sec ]の間にI[bits]の情報を伝送したい場合には、
Sth=I/T
となる。即ち、無線端末又は通信コネクションは、観測区間Tの間の平均の情報伝送速度をスループットとして要求することになる。一方、実際のスループットは
S=Ic/T
となる。実際には、単位時間あたり若しくは観測区間Tの間に正しく受信することができたパケット数として算出される。通信品質はスループットが小さくなるほど劣化する。従って、図3においては、実際のスループットが要求するスループットを下回る無線端末又は通信コネクションは、要求品質を満たしていないことになる。また、図4においては、実際のスループットの小さい順に無線リソース割当の優先順序が決定されることになる。図5〜図8では、要求品質と実際の通信品質との差を、要求するスループットと実際のスループットとの差の絶対値と置き換えて処理を行えばよい。
【0053】
即ち、S<Sthである場合、要求品質を満足しないことになる。この場合、図4の処理では実際のスループットSの小さい順に無線リソースが割り当てられる。また、図5の処理では|Sth−S|の大きい順に無線リソースが割り当てられ、図7の処理では|Sth−S|/Sthの大きい順に無線リソースが割り当てられる。一方、S>Sthである場合、要求品質を満足することになる。この場合、図4の処理では実際のスループットSの小さい順に無線リソースが割り当てられる。また、図6の処理では|Sth−S|の小さい順に無線リソースが割り当てられ、図8の処理では|Sth−S|/Sthの小さい順に無線リソースが割り当てられる。
【0054】
続いて、要求品質が許容遅延時間又はスループットである場合における、無線リソース割り当ての際の優先順序決定処理について、それぞれ具体的な実施例を挙げて説明する。
【0055】
図10は、要求品質が許容遅延時間である場合において、端末A〜Hについて、許容遅延時間Dth、実際の遅延時間Dを示す。なお、実際の遅延時間Dと許容遅延時間Dthとの差の絶対値|D−Dth|、及び、許容遅延時間Dthに対する、実際の遅延時間Dと許容遅延時間Dthとの差の絶対値|D−Dth|の割合|D−Dth|/Dthも示してある。
【0056】
図10より、端末B、C、D、G(図11の白抜き部)がD>Dthとなっており、要求品質を満足していない。従って図3の無線リソース割当方法により、これらの端末B、C、D、Gについて、端末A、E、F、Hに優先して無線リソースが割り当てられる。要求品質を満足しない端末B、C、D、Gについては、図4の割当方法によれば、遅延時間Dの大きい順、即ち端末C、B、G、Dの順に無線リソースが割り当てられる。また、図5の割当方法によれば、実際の遅延時間Dと許容遅延時間Dthとの差の絶対値|D−Dth|の大きい順、即ち端末B、C、G、Dの順に無線リソースが割り当てられ、図7の割当方法によれば、許容遅延時間Dthに対する、実際の遅延時間Dと許容遅延時間Dthとの差の絶対値|D−Dth|の割合|D−Dth|/Dthの大きい順、即ち端末D、B、G、Cの順に無線リソースが割り当てられる。
【0057】
これら要求品質を満足しない端末B、C、D、Gに無線リソースが割り当てられた後、残りの端末即ち要求品質を満足する端末A、E、F、H(図11の影部)に無線リソースが割り当てられる。端末A、E、F、Hについては、図4の割当方法によれば、実際の遅延時間Dの大きい順、即ち端末F、A、H、Eの順に無線リソースが割り当てられる。また、図6の割当方法によれば、実際の遅延時間Dと許容遅延時間Dthとの差の絶対値|D−Dth|の小さい順、即ち端末H、E、A、Fの順に無線リソースが割り当てられ、図8の割当方法によれば、許容遅延時間Dthに対する、実際の遅延時間Dと許容遅延時間Dthとの差の絶対値|D−Dth|の割合|D−Dth|/Dthの小さい順、即ち端末H、E、A、Fの順に無線リソースが割り当てられる。
【0058】
従って、全ての端末A〜Hについては、図4の割当方法を用いた場合には、端末C、B、G、D、F、A、H、Eの順に無線リソースが割り当てられる。また、図5及び図6の割当方法を用いた場合には、端末B、C、G、D、H、E、A、Fの順に無線リソースが割り当てられ、図7及び図8の割当方法を用いた場合には、端末D、B、G、C、H、E、A、Fの順に無線リソースが割り当てられ、優先度をつける基準により優先順序は異なる。なお、図10において、例えば端末Cは、データ通信を行っているものと考えられ、遅延時間に対する要求が非常に緩い。一方、端末Dは遅延時間に対する要求が厳しい。遅延時間を考慮した場合、無線リソースの割り当ては、端末Cより遅延時間に対する要求の厳しい端末D等を優先させた方が良く、実際の遅延時間だけでなく、実際の通信品質と要求品質とのずれ等を考慮するのがより望ましいと考えられる。
【0059】
一方、図12は、要求品質がスループットである場合において、端末A〜Hについて、要求するスループットSth、実際のスループットSを示す。なお、要求するスループットSthと実際のスループットSとの差の絶対値|Sth−S|、要求するスループットSthに対する、要求するスループットSthと実際のスループットSとの差の絶対値|Sth−S|の割合|Sth−S|/Sthも示してある。
【0060】
図12より、端末A、B、C、F、H(図13の白抜き部)がS<Sthとなっており、要求品質を満足していない。従って図3の無線リソース割当方法により、これらの端末A、B、C、F、Hについて、端末D、E、Gに優先して無線リソースが割り当てられる。要求品質を満足しない端末A、B、C、F、Hについては、図4の割当方法によれば、実際のスループットSの小さい順、即ち端末H、C、A、B、Fの順に無線リソースが割り当てられる。また、図5の割当方法によれば、要求するスループットSthと実際のスループットSとの差の絶対値|Sth−S|の大きい順、即ち端末F、B、A、H、Cの順に無線リソースが割り当てられ、図7の割当方法によれば、要求するスループットSthと実際のスループットSとの差の絶対値|Sth−S|の割合|Sth−S|/Sthの大きい順、即ち端末H、B、F、A、Cの順に無線リソースが割り当てられる。
【0061】
これら要求品質を満足しない端末A、B、C、F、Hに無線リソースが割り当てられた後、残りの端末即ち要求品質を満足する端末D、E、G(図13の影部)に無線リソースが割り当てられる。端末D、E、Gについては、図4の割当方法によれば、実際のスループットSの小さい順、即ち端末D、E、Gの順に無線リソースが割り当てられる。また、図6の割当方法によれば、要求するスループットSthと実際のスループットSとの差の絶対値|Sth−S|の小さい順、即ち端末E、D、Gの順に無線リソースが割り当てられ、図8の割当方法によれば、要求するスループットSthと実際のスループットSとの差の絶対値|Sth−S|の割合|Sth−S|/Sthの小さい順、即ち端末G、E、Dの順に無線リソースが割り当てられる。
【0062】
従って、全ての端末A〜Hについては、図4の割当方法を用いた場合には、端末H、C、A、B、F、D、E、Gの順に無線リソースが割り当てられる。また、図5及び図6の割当方法を用いた場合には、端末F、B、A、H、C、E、D、Gの順に無線リソースが割り当てられ、図7及び図8の割当方法を用いた場合には、端末H、B、F、A、C、G、E、Dの順に無線リソースが割り当てられ、要求品質が許容遅延時間の場合と同様、優先度をつける基準により優先順序は異なる。
【0063】
上述した、無線リソース割当の優先順序を決定する処理は、1フレーム毎あるいは数フレーム毎の処理となる。処理の周期が短いほどシステム特性は良くなると考えられるが、処理が煩雑になるので、システム設計の際に最適な処理の間隔を決めるようにすればよい。但し、無線基地局にカバーする全ての無線端末からの信号が到着するには、1フレーム分の時間が必要であるため、最低でも1フレーム分の周期が必要である。
【0064】
従来の無線通信システムでは、各端末又は各通信コネクションに対し、提供すべき通信品質はほぼ同一であったため、端末間又は通信コネクション間の公平性及び無線リソースの利用効率のみを考慮すれば十分であった。しかし、図1に代表されるようなマルチメディア無線通信システムでは、サービスを提供する際に端末毎又は通信コネクション毎に異なる要求品質を満足させる必要がある。この場合、厳格に通信品質を要求する端末又は通信コネクションもあれば、通信品質にはこだわらない端末又は通信コネクションもあることが考えられる。このようなシステムにおいて、上述した実施形態では、個々の端末又は通信コネクションの要求品質に基づいて、無線リソースを割り当てる際の優先順序を決定することにより、要求品質を満足する端末又は通信コネクションの数を増加させることができる。
【発明の効果】
上述の如く、本願発明は、要求品質が端末又は通信コネクション毎に異なる場合に、個々の要求品質に基づいて無線リソースを割り当てる際の優先順序を決定することにより、要求品質を満足する端末又は通信コネクションの数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線リソース割当方法及び通信装置が適用される無線通信システムの基本的な構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る通信装置が適用される無線基地局のブロック図である。
【図3】各無線端末又は各通信コネクションの要求品質に基づいた無線リソース割当処理のフローチャートである。
【図4】実際の通信品質の低い順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。
【図5】要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質と実際の通信品質との差の大きい順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。
【図6】要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質と実際の通信品質との差の小さい順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。
【図7】要求品質を満足しない無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質に対する実際の通信品質の劣化の度合いの大きい順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。
【図8】要求品質を満足する無線端末又は通信コネクションに対し、要求品質に対する実際の通信品質の良好さの度合いの小さい順に無線リソースを割り当てる処理のフローチャートである。
【図9】要求品質を有する無線端末又は通信コネクションと、要求品質を有しない無線端末又は通信コネクションとが混在する場合における無線リソース割当処理のフローチャートである。
【図10】要求品質が許容遅延時間である場合における、端末毎の許容遅延時間及び実際の遅延時間を示す図である。
【図11】図10において、要求品質を満足しない端末と満足する端末とを区別した様子を示す図である。
【図12】要求品質がスループットである場合における、端末毎の要求するスループット及び実際のスループットを示す図である。
【図13】図12において、要求品質を満足しない端末と満足する端末とを区別した様子を示す図である。
【図14】従来の、一元的に必要な通信品質の基準値を決定する場合における、基準値と実際に測定された通信品質との関係を示す図である。
【図15】従来の、各端末が個別に必要な通信品質を要求する場合における、要求品質と実際に測定された通信品質との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 無線基地局
10、20、30、40 無線端末
11、12、21、22、31、32、41、42 バッファ
102 受信部
104 送信部
106 通信品質測定部
108 リソース割当優先順序決定処理部
110 リソース割当処理部
Claims (10)
- 必要とする通信品質が端末又は通信コネクション毎に異なる通信システムにおける無線リソース割当方法であって、
前記端末又は通信コネクションの通信品質を測定し、
前記測定した通信品質が、必要とする通信品質より劣化した端末又は通信コネクションからなる第1のグループを抽出し、
前記必要とする通信品質と前記測定した通信品質との差に基づいて、無線リソースを割り当てる優先順位を決定し、
前記第1のグループの端末又は通信コネクションに対し、前記優先順位に基づいて無線リソースを割り当てることを特徴とする無線リソース割当方法。 - 必要とする通信品質が端末又は通信コネクション毎に異なる通信システムにおける無線リソース割当方法であって、
前記端末又は通信コネクションの通信品質を測定し、
前記測定した通信品質が、必要とする通信品質より良好な端末又は通信コネクションからなる第2のグループを抽出し、
前記必要とする通信品質と前記測定した通信品質との差に基づいて、無線リソースを割り当てる優先順位を決定し、
前記第2のグループの端末又は通信コネクションに対し、前記優先順位に基づいて無線リソースを割り当てることを特徴とする無線リソース割当方法。 - 請求項1に記載の無線リソース割当方法であって、
前記必要とする通信品質に対する前記測定した通信品質の劣化の度合いに基づいて、無線リソースを割り当てる優先順位を決定することを特徴とする無線リソース割当方法。 - 請求項2に記載の無線リソース割当方法であって、
前記必要とする通信品質に対する前記測定した通信品質の良好さの度合いに基づいて、無線リソースを割り当てる優先順位を決定することを特徴とする無線リソース割当方法。 - 請求項1乃至4の何れかに記載の無線リソース割当方法であって、
前記必要とする通信品質は、許容可能な遅延時間、伝送速度、又はスループットに関する通信品質であることを特徴とする無線リソース割当方法。 - 必要とする通信品質が端末又は通信コネクション毎に異なる通信システムにおいて、無線リソースを割り当てる通信装置であって、
前記端末又は通信コネクションの通信品質を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した通信品質が、必要とする通信品質より劣化した端末又は通信コネクションからなる第1のグループを抽出する第1の抽出手段と、
前記必要とする通信品質と前記測定手段で測定した通信品質との差に基づいて、無線リソースを割り当てる優先順位を決定する第1の優先順位決定手段と、
前記第1のグループの端末又は通信コネクションに対し、前記優先順位に基づいて無線リソースを割り当てる無線リソース割当手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。 - 必要とする通信品質が端末又は通信コネクション毎に異なる通信システムにおいて、無線リソースを割り当てる通信装置であって、
前記端末又は通信コネクションの通信品質を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した通信品質が、必要とする通信品質より良好な端末又は通信コネクションからなる第2のグループを抽出する第2の抽出手段と、
前記必要とする通信品質と前記測定手段で測定した通信品質との差に基づいて、無線リソースを割り当てる優先順位を決定する第2の優先順位決定手段と、
前記第2のグループの端末又は通信コネクションに対し、前記優先順位に基づいて無線リソースを割り当てる無線リソース割当手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。 - 請求項6に記載の通信装置であって、
前記第1の優先順位決定手段は、前記必要とする通信品質に対する前記測定手段で測定 した通信品質の劣化の度合いに基づいて、無線リソースを割り当てる優先順位を決定することを特徴とする通信装置。 - 請求項7に記載の通信装置であって、
前記第2の優先順位決定手段は、前記必要とする通信品質に対する前記測定手段で測定した通信品質の良好さの度合いに基づいて、無線リソースを割り当てる優先順位を決定することを特徴とする通信装置。 - 請求項6乃至9の何れかに記載の通信装置であって、
前記必要とする通信品質は、許容可能な遅延時間、伝送速度、又はスループットに関する通信品質であることを特徴とする通信装置。
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