JP3788029B2 - レーザダイオード駆動回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LD(レーザダイオード)駆動回路に関し、特に、光ファイバ通信に用いられ、高速化、低電圧化、低消費電力化、及び低コスト化に適したレーザダイオード駆動回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は従来のレーザダイオード駆動回路(以下、「LD駆動回路」という)の一例を示す。直流電源1にはトランジスタ2のコレクタと、LD3のアノードが接続されている。LD3のカソードにはトランジスタ4のコレクタが接続され、このトランジスタ4とトランジスタ2の各エミッタは共通接続されている。この接続部とグランド間には、トランジスタ5と抵抗6が直列接続されている。トランジスタ2のベースは信号入力端子7に接続され、トランジスタ4のベースは反転入力端子8に接続されている。トランジスタ5のベースとグランド間には可変電圧源9が接続されている。また、トランジスタ4のコレクタにはトランジスタ10のコレクタが接続され、そのエミッタとグランド間には抵抗11が接続されている。更に、トランジスタ10のベースとグランド間には可変電圧源12が接続されている。
【0003】
図6において、トランジスタ2と4は、電流スイッチ部を形成している。また、トランジスタ5、抵抗6、及び可変電圧源9からなる回路は定電流源を形成し、トランジスタ10、抵抗11、及び可変電圧源12からなる回路は定電流源を形成している。信号入力端子7と反転入力端子8に所定周期の矩形波信号を入力することにより、トランジスタ2,4が交互に動作し、LD3の通電がON/OFF制御され、通電時に光信号を発生する。その光強度は、トランジスタ5、抵抗6、可変電圧源9からなる定電流源によって調整される。また、LD3を高速にON/OFFするためには、LDの閾値電流程度のバイアス電流を流しておく必要がある。そこで、トランジスタ10、抵抗11、可変電圧源12からなる定電流源を駆動し、LD3に一定のバイアス電流が常時流れるようにしている。このように、図6のLD駆動回路によれば、信号入力端子7と反転信号入力8の印加レベルに応じて、光信号を発生させることができる。
【0004】
更に、LD駆動回路の高速化を図った例として、特開平8−186310号公報に示されるものがあり、差動型のスイッチング回路を構成する2個のトランジスタの一方のコレクタ側に定電流回路を挿入し、この定電流回路によりLDを駆動している。
また、特開平6−244483号公報においては、差動型のスイッチング回路を構成する2個のトランジスタの一方のコレクタ側に定電流回路を挿入し、この定電流回路とグランド間にLDを接続する構成にしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のLD駆動回路によると、波長600〜900nmの所謂短波長帯LDの動作電圧Vfは1.8〜2.0Vであり、一般のシリコン系ダイオードの順方向電圧(約0.7V)よりかなり大きい。したがって、このLDを用いた場合、図6の回路で必要な電源電圧Vcc1 (直流電源1の出力値)は、トランジスタ(バイポーラ)4,5の飽和を考慮して、トランジスタ4,5のコレクタ〜エミッタ間電圧Vceがべース〜エミッタ間電圧Vbe≒0.8Vを越える値にしようとすれば、下記の式(1)に示される値が必要になる(但し、抵抗6は0オームとする)。
【0006】
Vcc1 ≧Vce+Vce+Vf・・・(1)
つまり、電源電圧Vcc1 は、Vcc1 =0.8+0.8+2.0=3.6V以上が必要になり、3.0〜3.3V程度の電圧によってLD3を駆動することができないという問題がある。この問題は、特開平8−186310号公報及び特開平6−244483号公報に示された駆動回路においても考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、低電圧でも高速動作が可能なLD駆動回路を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため正電源で駆動されるPECLまたは負電源で駆動されるECL構成の出力インターフェース回路部と、前記出力インターフェース回路部の出力端子に接続された抵抗と、前記抵抗と電源間に接続されたレーザダイオードと、前記レーザダイオードに流れる電流を制御する定電流源と、を備えることを特徴とするレーザダイオード駆動回路を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を基に説明する。
図1は本発明に係るLD駆動回路の第1の実施の形態を示す。図1においては、図6に示したものと同一であるものには同一の引用数字を用いたので、以下においては重複する説明を省略する。ここで、トランジスタ2,4により電流スイッチ部が構成され、トランジスタ5、抵抗6、及び可変電圧源9により変調電流制御のための定電流源(第2の定電流源)が構成されている。更に、LD電流発生用定電流源13(第1の定電流源)が、図6のLD3が設けられていた部分に設けられている。LD電流発生用定電流源13は、直流電源1に接続された抵抗14、この抵抗14に接続されたNPN型のトランジスタ15、及び直流電源1とトランジスタ15のベースとの間に設けられた可変電圧源16より成る。更に、トランジスタ15のコレクタとトランジスタ4のコレクタとの接続点とグランド間には、LD3が接続されている。
【0011】
LD電流発生用定電流源13内で電圧降下に関与するのは、抵抗14とトランジスタ15であり、その殆どはトランジスタ15による電圧降下であるため、図6の構成に比べてLD3を除く部分の電圧降下を小さくすることができる。したがって、電源電圧Vcc1 を従来より低くすることが可能になる。
LD電流発生用定電流源13を直流電源1とトランジスタ4との間に設けたことにより、LD3の発光時にはLD3に必要な電流を供給し、LD3の消光時にはLD電流発生用定電流源13に流れる電流の一部がトランジスタ4,2で構成される電流スイッチ部から引き抜かれる。この電流スイッチ部を高速に動作させることにより、LD3の高速変調が可能になる。
【0012】
以上の構成において、信号入力端子7に“1”レベルの信号が入力されると、トランジスタ2がON、トランジスタ4がOFFになるため、トランジスタ4に流れていた電流が止まり、LD電流発生用定電流源13で設定された電流の全てがLD3に流れる結果、LD3は発光し、光信号“1”が出力される。逆に、“0”レベルの信号が信号入力端子7に入力されると、トランジスタ2がOFFになり、トランジスタ4がONする結果、LD3に流れていた電流の内のバイアス電流分を除く他の電流がトランジスタ4に引き取られてLD3は消光し、光信号“0”が出力される。LD3の動作電圧Vfが1.8〜2Vの場合、トランジスタ4,5は共に飽和することなく動作できる。したがって、動作可能な電源電圧Vcc2 は、トランジスタ15が飽和せずに動作できるコレクタ〜エミッタ間電圧がVce≒0.8Vで、抵抗14が0オームであるとすれば、下記の式(2)で示される様に2.8V以上、具体的には、3.0〜3.3Vで動作可能なLD駆動回路が得られる。
【0013】
Vcc2 ≧Vce十Vf・・・(2)
図2は本発明によるLD駆動回路の第2の実施の形態を示す。本実施の形態では、図1の構成にあって、LD3と直列にダイオード17を接続した構成にしている。
LD3として、波長1300〜1550nmのいわゆる長波長帯LDを用いた場合、その順方向電圧Vfは1.2V程度であり、短波長帯LDに比べて小さい。このため、図1の回路では、トランジスタ4または5が飽和し、高速動作ができなくなる。この問題を解決するため、図2に示すようにLD3にダイオード17を接続してレベルシフトし、トランジスタ4のコレクタ電圧が高くなるようにしている。これにより、トランジスタ4または5の飽和が防止され、高速動作が可能になる。
【0014】
また、高速動作が必要な電流スイッチ部のトランジスタにNPN型を使用することにより、低電圧動作時にも動作速度を犠牲にすることがない。更に、トランジスタ、抵抗を用いて回路を構成できるので、モノリシックに集積化が可能である。
図3は本発明によるLD駆動回路の第3の実施の形態を示す。信号入力端子7及び反転入力端子8には、PECL(Pseudo Emitter Coupled Logic)インターフェイス出力用のICであるPECL出力回路18の入力部が接続されている。このPECL出力回路18は、ECL(Emitter Coupled Logic)用であってもよい。PECL出力回路18の反転出力端子18aと直流電源20の間には、抵抗19を介してLD3が接続されている。LD3のカソードにはトランジスタ5のコレクタが接続され、エミッタとグランド間には抵抗6が接続され、ベースとグランド間には可変電圧源9が接続されている。トランジスタ5、抵抗6、及び可変電圧源9により定電流源を構成している。
【0015】
PECL出力回路18は、出力レベルが“H”レベルのときに約〔Vcc−0.9〕V、“L”レベルのときに約〔Vcc−1.7〕Vである。両者間のレベル差は0.8V{Vcc−1.7−Vcc−(−0.9)=0.8V}であり、この電圧差0.8Vを抵抗19の抵抗値R19で割った値(0.8V/R19)がLD3のスイッチング電流になる。したがって、抵抗値R19を変えれば、LD3のスイッチング電流を調整することができる。
【0016】
ここで、図3の構成の動作について説明する。PECL出力回路18の“H”または“L”レベルとLD3のカソードとの差電圧に応じた電流が、PECL出力回路18からトランジスタ5に流れる。このトランジスタ5に流れる電流分に応じてLD3に流れる電流が変化することから、該電流分はLDスイッチング電流に相当する。LD3の発光に必要な電流は、トランジスタ5を主体とする定電流源により調整される。
【0017】
信号入力端子7にデータ信号の「1」が入力されると、PECL出力回路18の反転出力端子18aには、“L”レベルの〔Vcc−1.7〕Vが出力される。この時、抵抗19に流れる電流は“H”レベルのときよりも小さい。したがって、抵抗19において減少した電流分はトランジスタ5が定電流源であることからLD3に流れ、LD3が発光する(光信号が「1」の状態)。
【0018】
一方、信号入力端子7にデータ信号の「0」が入力されると、反転出力端子18aには“H”レベルの電圧〔Vcc−0.9〕Vが発生する。このとき、抵抗19の両端の電位差が大きく、すなわち抵抗19を流れる電流が大きくなる。したがって、LD3に流れる電流が減少し、LD3は消光する(光信号が「0」の状態)。
【0019】
図4はPECL出力回路18の詳細構成を示す。直流電源1には抵抗22を介してトランジスタ21のコレクタが接続され、同様に、直流電源1には抵抗24を介してトランジスタ23のコレクタが接続されている。トランジスタ21のベースには信号入力端子7が接続され、トランジスタ23のベースには反転入力端子8が接続されている。トランジスタ21,23のエミッタは共通接続され、この共通接続部にトランジスタ25のコレクタが接続されている。トランジスタ25のエミッタは接地され、ベースには直流電源27が接続されている。抵抗22にはトランジスタ28のコレクタとベースが接続され、抵抗24にはトランジスタ29のコレクタとベースが接続され、トランジスタ28,29のエミッタが反転出力端子18aとなる。トランジスタ25、抵抗26、及び直流電源27により定電流源が形成されている。
【0020】
図4のPECL出力回路18では、信号入力端子7に“1”レベルの信号が印加されると、トランジスタ21がON、トランジスタ23がOFF、トランジスタ28がOFF状態になり、LD3に電流が流れ易くなる。逆に、信号入力端子7に“0”レベルの信号が印加されると、トランジスタ21がOFF、トランジスタ23がON、トランジスタ28がON状態になる結果、LD3には電流が流れ難くなる。
【0021】
図4においては、トランジスタ21,23のコレクタには抵抗が挿入されているのみで、LDは挿入されていない。このため、図6の回路のように、3.0〜3.3Vでトランジスタが飽和することはなくなる。また、LD3のドライブは、トランジスタ21,23ではなく、トランジスタ28,29を介して行われる。この場合の電源電圧Vcc2 は、式(2)で示した様に、
Vcc2 ≧Vce十Vf
で表され、Vceを0.8V、Vfを2.0Vとすれば、Vcc2 は2.8V以上で動作させることが可能になる。つまり、3.0〜3.3Vでも、トランジスタ21,23,25を飽和させることなく使用できるようになる。
【0022】
また、PECL出力回路18により抵抗19を介して直接にLD3を駆動しているため、信号のマーク率に無関係にLD3を駆動でき、バースト信号にも対応可能な高速なLD駆動回路を実現できる。更に、スイッチング部はNPNトランジスタと抵抗により構成できるため、モノリシックに集積化することが可能であり、ASIC(Application Specified IC)によるPECL出力回路18に1回路ブロックとして取り込むことが可能になる。
【0023】
図5は本発明によるLD駆動回路の第4の実施の形態を示す。本実施の形態では、図1の構成にあって、LD3と直列にダイオード17を接続した構成にしている。
LD3として、波長1300〜1550nmの特性の長波長帯LDを用いた場合、その順方向電圧Vfは1.2V程度であり、短波長帯LDに比べて小さい。このため、図3の回路では、PECL出力回路18が“L”レベルのとき、〔Vcc−1.7〕Vまで下がることはできず、光出力波形の幅歪みや動作速度の遅れを生じさせる恐れがある。この問題を解決するため、図5に示すように、反転出力端子18aとグランドの間に抵抗30を接続し、PECL出力回路18の出力レベルが十分に“L”レベルに達するように、PECL出力回路18の出力電流を増やしている。
【0024】
なお、抵抗30に代えて、定電流源(トランジスタ5、抵抗6、可変電圧源9からなる構成と同一のもの)を用いると、PECL出力回路18の出力が“L”レベルであっても“H”レベルであっても、レベル状態に関係なく一定の電流を流すことができる。加えて、定電流源は、抵抗を用いる場合よりもインピーダンスを高くできるという利点を有している。
【0025】
本発明によるLD駆動回路は、高速ディジタル光通信用ばかりでなく、出力レベルを合わせれば、高周波アナログ光通信用光送信器にも適用可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上より明らかな如く、本発明によれば、レーザダイオードのアノード側から第1の定電流源によりバイアス電流及び駆動電流を供給し、前記第1の定電流源からの電流の一部または全部を電流スイッチ部に通流させるようにしたので、低電圧による高速動作が可能になる。この結果、速度を犠牲にすることなく消費電力を大幅に削減でき、かつ構成の簡略化により低コスト化が可能になる。
【0027】
また、本発明は、PECLまたはECL構成の出力インターフェース回路部を用い、この出力インターフェース回路部の出力端子に抵抗を接続し、この抵抗と電源間にレーザダイオードを接続し、このレーザダイオードに流れる電流を定電流源により制御するようにしたので、低電圧による高速動作が可能になる。特に、ECLまたはPECLロジック回路を用いてLDを駆動するため、ECLまたはPECL出カインタフェイスを持つ各種標準論理ゲートICやASICなどの論理LSIから、電流スイッチ回路等のLD駆動のための専用の回路を用いずに、直接LDを駆動できる様になり、大幅なコスト削減、実装面積の縮小、及び消費電力の削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るLD駆動回路の第1の実施の形態を示す回路図である。
【図2】本発明によるLD駆動回路の第2の実施の形態を示す回路図である。
【図3】本発明によるLD駆動回路の第3の実施の形態を示す回路図である。
【図4】図3のPECL出力回路の詳細構成を示す回路図である。
【図5】本発明によるLD駆動回路の第4の実施の形態を示す回路図である。
【図6】従来のレーザダイオード駆動回路を示す回路図である。
【符号の説明】
1,14,20,27 直流電源
2,4,5,10,15,21,23,28,29 トランジスタ
3 LD(レーザダイオード)
6,11,14,19,22,24,26,30 抵抗
7 信号入力端子
8 反転入力端子
9,12,16 可変電圧源
13 LD電流発生用定電流源
17 ダイオード
18 PECL出力回路
18a 反転出力端子
Claims (3)
- 正電源で駆動されるPECL( Pseudo Emitter Coupled Logic )または負電源で駆動されるECL( Emitter Coupled Logic )構成の出力インターフェース回路部と、
前記出力インターフェース回路部の出力端子に接続された抵抗と、
前記抵抗と電源間に接続されたレーザダイオードと、
前記レーザダイオードに流れる電流を制御する定電流源と、
を備えることを特徴とするレーザダイオード駆動回路。 - 前記出力インターフェース回路部は、その出力端子とグランド間に第2の抵抗が接続されていることを特徴とする請求項1記載のレーザダイオード駆動回路。
- 前記出力インターフェース回路部は、その出力端子とグランド間に定電流源が接続されていることを特徴とする請求項1記載のレーザダイオード駆動回路。
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