JP3787100B2 - こんにゃくスポンジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌・防カビ性に優れるこんにゃくスポンジに関する。
【0002】
【従来の技術】
板状のこんにゃくは、冬季に屋外で凍結、融解を繰り返すことによって、スポンジ様になることが古くから知られ、北関東をはじめとする各地で保存食として伝承されてきた。
また、このこんにゃくスポンジが、一部の地方で産毛取りとして使用されていたことも、広く知られているところである。
近年になって、乳児のほか、敏感肌の女性や乾皮症の老人などにも、肌にやさしい洗浄具として使用されるようになってきた。
しかしながら、こんにゃくスポンジは、使用時に水分を大量に含み、使用後の自然乾燥に長時間を要し、このため、カビやバクテリアが短時間で増殖し、スポンジが変色することや、微生物の増殖が大なる場合には強度低下により、破れが生じるという不具合があった。
【0003】
上記のような不具合を改善するために、天然物であるキトサンやヒノキチオールなどや、無機性抗菌剤である銀、亜鉛、酸化チタンおよび、それらの担持体など、さらには有機性抗菌剤であるZPT(ジンクピリチオン)やTBZ(チアベンダゾール)等を、スポンジの製造時に練り込んだり、後加工と称してスポンジの製造後に、浸漬、定着したものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の練り込みの手段にあっては、スポンジ製造時に高温のアルカリ処理を行うため、抗菌剤が失活したり、熱水中へ溶出するという不都合が生ずることになる。
また、後加工においても、抗菌剤がこんにゃく(主成分はコンニャクマンナン)と十分に結合しないために、使用時に短時間で溶出するという好ましくない現象が生ずる問題があった。
【0005】
上記のように、従来のこんにゃくスポンジは、抗菌剤や防カビ剤を添加したものであっても、なお、抗菌および防カビ性能が十分に満足できるレベルになく、1ケ月に満たない程度の使用期間で、スポンジ表面に発生したカビが肉眼で確認できるような状態になるという現象が、多々生ずるという実情にあった。
本発明は、斯かる不都合を解消して、良好な抗菌・防カビ性を有するこんにゃくスポンジを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明は、以下の各項から構成する。
(1)こんにゃくスポンジに、抗菌剤のブリードを可能にした5〜100μmの樹脂粒子を、0.1〜10%の乾燥重量比でアクリル系樹脂液およびエポキシ系架橋剤を用いて定着させたことを特徴とするこんにゃくスポンジ。
(2)コンニャクマンナンを水で溶解後、形成されるこんにゃくスポンジにおいて、コンニャクマンナンに対し、抗菌剤のブリードを可能にした5〜100μmの樹脂粒子を担持した繊維を、1〜20%の乾燥重量比で練りこんだことを特徴とするこんにゃくスポンジ。
【0007】
抗菌剤のブリードを可能にした5〜100μmの樹脂粒子の添加量が0.1%を下回る場合、抗菌および防カビ性能が不十分となり、後述のハロー試験において十分な阻止円を得ることができなかった。また、この樹脂粒子の添加量が10%を超えると、こんにゃくスポンジが着色したり、スポンジの製造時にアク(灰汁)を加えた後ゲル化が遅くなるという問題が生じた。
この樹脂粒子は1%ほどスポンジ内に含有しておれば、十分な抗菌および防カビ性能を有していた。
抗菌剤のブリードを可能にした5〜100μmの樹脂粒子の添加量が0.1%で繊維の添加量が1%を下回る場合、樹脂粒子が十分に繊維に定着することができず、その結果として抗菌および防カビ性能が不十分となった。また、繊維の添加量が20%を超えると、こんにゃくスポンジの使用時の感触が低下するという問題が生じた。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に使用される、抗菌剤のブリードを可能にした5〜100μmの樹脂粒子としては、特に限定されないが、メタクリル酸メチル共重合物と石油系炭化水素と二酸化ケイ素およびジンクピリチオン(ZPT)との混合物が挙げられ、市販品としては、コスモパールAB−5(根上工業(株)製)等が挙げられる。
【0009】
なお、樹脂粒子の素材として前記のもののほか、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂またはシリコーン系樹脂なども本発明に使用することができる。
また、ブリードアウトする成分としてZPTのほか、抗菌防カビ剤として広く知られている、TBZ、BCM、トリクロサン、塩酸クロルヘキシジンや各種の抗生物質なども本発明に使用することができる。
【0010】
この樹脂粒子にはブリード調整剤が含まれており、こんにゃくスポンジの使用時に抗菌剤が徐々にブリードアウトされる。また、毎日使用しても2〜3か月間以上、安定してブリードアウトするという持続性があり、石けんなどを使用しても耐久性に富んでいる。さらに、スポンジを再使用する場合でも、すぐにブリードアウトが始まるという特長を有している。
樹脂粒子は5〜100μmの微細な球体形状をしている。このためスポンジに均一に分散しやすく、肌を洗浄する場合にすべりやすく違和感を与えることがない。5μm以下の粒子が多くなると、ブリードアウトの持続性が低下するという問題が生じるようになる。また100μm以上の粒子が多くなると、スポンジ内での分散が不均一になったり、肌を洗浄する場合に違和感が生じたりするようになる。
【0011】
また、本発明で使用される繊維としては、特に限定されないが、例えば、レーヨン製の、1〜5デニールで、長さが0.1〜1.0mm程度のものが挙げられ、この繊維に塩化ジデシルジメチルアンモニウムの変性エタノール・水溶液を、含浸・乾燥させることによって調製することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこの実施例により制限されるものではない。
【0013】
実施例1
こんにゃくスポンジに後加工として、乾燥重量比で3.0%のコスモパールAB−5(商品名:根上工業(株)製、以下同じ)を、アクリル系樹脂液およびエポキシ系架橋剤を用いて定着させ、0.1%の中性洗剤を用いて、40℃の温水中で50回の手もみ洗いを5回反復した後、洗剤を使わず40℃の温水中で50回の手もみ洗いを3回反復した。
その後、JIS・L・1902に準拠し、アスペルギルスニガー(IFO6341)および大腸菌(E.coli JCM1649)を用いてハロー試験を行った結果、いずれも0.5mm程度の阻止円を得ることができた。また、試験片に水を添加し、一週間後に測定すると2mm以上の阻止円が得られた。
なお、ハロー試験を行ったものと同じスポンジを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、300倍の倍率で表面を観察した。その結果、スポンジのこんにゃく内部に球形の樹脂粒子が含まれていることが、表面の凹凸から確認できた。
【0014】
実施例2
コスモパールAB−5の10gをエタノール20mlに分散させた後、レーヨン製の繊維(3デニールで、長さが0.5mm)10gと水150mlを加えて撹拌し、これに、エポキシ系架橋剤(エチレングリコールジグリシジルエーテル)を4ml添加し撹拌後、60〜70℃で乾燥させたことにより、コスモパールAB−5と繊維の複合体を得た。
この複合体をコンニャクマンナンに対し、乾燥重量比で8%の割合で練り込み、アク(灰汁)を加えて水中で加熱後、凍結した。
解凍・乾燥後、IPC発光分光分析法にて亜鉛を定量した。定量値から換算したところ、5.4%の複合体が定着・残留していた。
このスポンジを0.1%の中性洗剤を用いて、40℃の温水中で100回の手もみ洗いを5回反復した後、洗剤を使わず40℃の温水中で100回の手もみ洗いを3回反復した。
【0015】
上記のこんにゃくスポンジをJIS・L・1902に準拠して、アスペルギルスニガー(IFO6341)および大腸菌(E.coli JCM1649)を用いてハロー試験を行った結果、それぞれ0.5mm程度の阻止円を得ることができた。また、試験片に水を添加し、一週間後に測定すると2mm以上の阻止円が得られた。
なお、上述の方法で得たコスモパールAB−5と繊維の複合体を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、300倍の倍率で観察した。その結果、繊維の表面に球形の樹脂粒子が担持されていることが、確認できた。
また、ハロー試験を行ったものと同じスポンジを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、300倍の倍率で表面を観察した。その結果、スポンジのこんにゃく内部に球形の樹脂粒子を担持した繊維が含まれていることが、表面の凹凸から確認できた。
【0016】
比較例1
こんにゃくマンナンに対し、乾燥重量比で10%のコスモパールAB−5を混練した。
これにて得たこんにゃくスポンジを0.1%の中性洗剤を用いて40℃の温水中で50回の手もみ洗いを5回反復した後、洗剤を使わず40℃の温水中で50回の手もみ洗いを3回反復した。
その後、JIS・L・1902に準拠し、アスペルギルスニガー(IFO6341)および大腸菌(E.coli JCM1649)を用いて、ハロー試験を行った結果、いずれも十分な阻止円を得ることができなかった。
比較例2
乾燥重量比で0.05%のコスモパールAB−5を用い、実施例1と同じ方法でこんにゃくスポンジを作製した。手もみ洗いの条件も実施例1と同様にし、JIS・L・1902に準拠し、アスペルギルスニガー(IFO6341)および大腸菌(E.coli JCM1649)を用いて、ハロー試験を行った結果、いずれも十分な阻止円を得ることができなかった。
【0017】
比較例3
実施例2と同様の方法で、コスモパールAB−5と繊維の複合体を得た。この複合体をコンニャクマンナンに対し、乾燥重量比で0.5%の割合で練り混み、アク(灰汁)を加えて水中で加熱後、凍結した。
このスポンジを0.1%の中性洗剤を用いて、40℃の温水中で50回の手もみ洗いを5回反復した後、洗剤を使わず40℃の温水中で50回の手もみ洗いを3回反復した。
この後、JIS・L・1902に準拠し、アスペルギルスニガー(IFO6341)および大腸菌(E.coli JCM1649)を用いて、ハロー試験を行った結果、いずれも十分な阻止円を得ることができなかった。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、本発明のこんにゃくスポンジによれば、抗菌・防カビ剤が強固に保持されていることにより、スポンジに付着、増殖する菌やカビが長期に亘って抑制される。また、抗菌・防カビ剤のブリードによって、洗浄物表面の殺菌も期待でき、極めて有益である。
Claims (2)
- こんにゃくスポンジに、抗菌剤のブリードを可能にした5〜100μmの樹脂粒子を、0.1〜10%の乾燥重量比でアクリル系樹脂液およびエポキシ系架橋剤を用いて定着させたことを特徴とするこんにゃくスポンジ。
- コンニャクマンナンを水で溶解後、形成されるこんにゃくスポンジにおいて、コンニャクマンナンに対し、抗菌剤のブリードを可能にした5〜100μmの樹脂粒子を担持した繊維を、1〜20%の乾燥重量比で練りこんだことを特徴とするこんにゃくスポンジ。
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