JP3786355B2 - スピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピンドルモータ、特に、ハブとその中心孔内に嵌合されたシャフトとから構成される回転部材を有するスピンドルモータに関する。本発明は、さらに、前記スピンドルモータが採用された記録ディスク駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク等の記録ディスク駆動装置は、記録ディスクと同心に配置された回転駆動用のスピンドルモータを装置内に有している。このスピンドルモータは、主に、電機子コイルを有する静止部材と、コイルに対向するロータマグネットを有する回転部材と、回転部材を静止部材に回転自在に支持する軸受機構とから構成されている。
【0003】
このようなスピンドルモータの一例として、シャフト回転型のスピンドルモータが知られている。このスピンドルモータでは、回転部材はハブとその中心孔内に一端が嵌合されたシャフトを有しており、静止部材は回転部材のシャフトを内周側に収容する中空円筒状のスリーブを有している。ハブは、概ね、円板形状の部材であり、外周縁に軸線方向に延びる筒状部が形成されている。筒状部の内周側にはステータコイルが設けられ、外周側の鍔部には複数の記録ディスクが固定されている。記録ディスクの固定手段としては、記録ディスクを鍔部端面にクランプするためのクランプ部材と、それをハブに固定するためのねじ部材とから構成されている。このため、回転部材にはねじ部材が螺合するためのねじ孔が形成されていることになる。また、軸受機構としては、スリーブとシャフトとの間に例えば流体動圧軸受が形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
昨今の記録ディスク駆動装置が搭載されるパーソナルコンピュータ等の機器の小型化及び薄型化の傾向並びに記録ディスク駆動装置のディジタルカメラ等小型機器への応用等使用される製品の多様化によって、記録ディスクを回転駆動するスピンドルモータ自体も小型化並びに薄型化することが要求されている。したがって、スピンドルモータにおいては、回転部材であるハブの薄肉化が進んでいる。
【0005】
ハブの薄肉化が進むと、ディスク用クランプを回転部材に固定するためのネジ孔は、ハブに形成することができず、シャフトの端面に形成されるようになっている。そして、ディスク用クランプは、ねじ部材によって中心部分がたわまされることによって、その外周部からたわみ反力を記録ディスクの内周部に与えている。したがって、ハブの外周部は、常に、ディスク用クランプからのクランプ力によって、クランプ部材と反対側に押されている。
【0006】
このようにクランプ力が作用すると、ハブがたわみ変形してしまう。そのため、ハブ/シャフト間の精度(直角度)に狂いが生じRRO(Repeatable Run-Out:繰り返し振れ)が悪化したり、あるいはハブ/シャフト間の締結が外れたりするという問題が生じる。
特に、ハブの薄肉化が進むと、ハブ/シャフトの締結区間が短くなるため、シャフトとハブの締結強度が十分に得られなくなる。そのため、前記問題がより顕著になることが考えられる。
【0007】
以上に述べたシャフトとハブの締結強度低下の問題については、様々な対策が考えられるが、各対策はそれぞれ問題を包含している。例えば、ハブ/シャフトの圧入時の締め代を大きくする方法では、ハブ/シャフトへの負担(締結の残留応力等)が大きくなり、塑性変形が生じることで、かえって回転精度を悪化させる懸念がある。また、クランプ力を小さくする方法では、記録ディスクのズレ,飛散が懸念される。
【0008】
本発明の課題は、ハブの中心孔に締結された回転シャフトの一端の端面にディスク用クランプをたわませるためのねじが螺合するためのねじ孔が形成されたスピンドルモータにおいて、ハブに作用するクランプ力によるハブ/シャフト締結部の不具合を適切に解消することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のスピンドルモータは、静止部材と、ハブと、シャフトと、ステータコイルと、ロータマグネットとを備えている。静止部材は中空円筒状のスリーブを有する。ハブは、中心孔が形成された円板状部と、円板状部の内周縁から軸線方向に突出する筒状部とを有する。シャフトは、スリーブの内周面の半径方向内側に配置された部材であって、一端が筒状部の内周面に嵌合されている。シャフトの一端の端面には、ディスク用クランプをたわませるためのねじ部材が螺合するねじ孔が形成されている。軸受機構は、ハブ及びシャフトを静止部材に対して回転自在に支持するための機構である。ステータコイルは静止部材に固定されている。ロータマグネットは、ステータコイルに対向するようにハブに固定され、ステータコイルと協働して回転磁界を発生する。
【0010】
このスピンドルモータでは、記録ディスク駆動装置において、ねじ部材はシャフトのねじ孔に螺合することで、ディスク用クランプをたわませている。このため、ディスク用クランプは記録ディスクをハブとの間で挟みつけている。
シャフトにねじ孔を形成することで、ハブの円板状部を薄肉化することができるが、その一方でこの構成によってハブに対するクランプ力がハブの外周部を軸線方向片側に押し付けるように作用している。そのため、クランプによってハブはたわみ変形し、ハブがシャフトに対して嵌合部において傾き、嵌合部の軸線方向先端側で締結が外れるという事態が起こりやすいと考えられる。
【0011】
しかし、このスピンドルモータでは、ハブの筒状部がシャフトに締結されることで、ハブ/シャフト間の接触面積を十分に確保することができ、十分なハブ/シャフト締結強度を得ることができる。したがって、クランプ力が作用したときにハブとシャフトの締結が外れにくくなっている。
請求項2記載のスピンドルモータでは、請求項1において、軸受機構は、筒状部の外周面とスリーブのラジアル内周面との間に潤滑流体を保持すると共に、前記潤滑流体に動圧を誘起する動圧発生用溝を設けることで構成された第1ラジアル軸受部を含んでいる。
【0012】
このスピンドルモータでは、第1ラジアル軸受部は、ハブの筒状部の外周面において形成されているため、ラジアル軸受部の径が従来に比べて大きくなっている。このため、ラジアル軸受部において周速が増し、発生する動圧が大きくなる。
また、ハブとシャフトの締結強度を向上させるために締結区間を単に長く設定するだけでは、ハブ/シャフトの締結部の近傍に設けられたラジアル軸受部の寸法が制限されることになり、その結果軸受剛性等必要な回転支持力を確保することが困難になってしまう。それに対してこのスピンドルモータの構成では、第1ラジアル軸受部はハブの筒状部の外周面において形成されているため、十分な軸受剛性を確保することができる。
【0013】
請求項3に記載のスピンドルモータでは、請求項2において、軸受機構は、シャフトの外周面においてハブの筒状部に覆われていない部分とスリーブのラジアル内周面との間に潤滑油を保持すると共に、潤滑流体に動圧を誘起する動圧発生用溝を設けることで構成された第2ラジアル軸受部をさらに含んでいる。
このスピンドルモータでは、第2ラジアル軸受部の径は第1ラジアル軸受部の径より小さく従来と同等であるが、軸受機構全体ではラジアル動圧は大きくなっている。
【0014】
請求項4に記載のスピンドルモータでは、請求項1において、軸受機構は、筒状部の外周面とスリーブの2つのラジアル内周面との間に潤滑流体を保持すると共に、潤滑流体に動圧を誘起する動圧発生用溝を設けることで構成された第1及び第2ラジアル軸受部を含んでいる。
このスピンドルモータでは、第1及び第2ラジアル軸受部は筒状部の外周面に形成されているため、ラジアル軸受部の径が従来に比べて大きくなっている。このため、ラジアル軸受部において周速が増し、発生する動圧が大きくなる。
【0015】
請求項5に記載のスピンドルモータでは、請求項4において、筒状部の外周面において第1及び第2ラジアル軸受を構成する部分の外径は同一であり、スリーブの2つのラジアル内周面の内径は同一である。
このスピンドルモータでは、2つのラジアル軸受部の同軸度が向上している。
請求項6に記載のスピンドルモータでは、請求項1〜5のいずれかにおいて、軸受機構は、シャフトのスラスト面とスリーブのスラスト面との間に潤滑流体を保持すると共に、潤滑流体に動圧を誘起する動圧発生用溝を設けることで構成されたスラスト軸受部をさらに含んでいる。
【0016】
このスピンドルモータでは、スラスト軸受部によってスラスト動圧を得ることができる。
請求項7に記載の記録ディスク駆動装置は、ハウジングと、ハウジングの内部に固定された請求項1〜6のいずれかに記載の前記スピンドルモータと、ハブの円板状部に固定された情報を記録できる円板状記録媒体と、記録媒体の所要の位置に情報を書込又は読み出すための情報アクセス手段とを備えている。
【0017】
この記録ディスク駆動装置では、前述のシャフトとハブの締結強度が向上したスピンドルモータ備えていることによって、記録媒体を安定して回転させることができる。
請求項8に記載の記録ディスク駆動装置は、請求項7において、シャフトのねじ孔に螺合するねじ部材と、ねじ部材によってたわまされ記録媒体をハブにクランプするディスク用クランプとをさらに備えている。
【0018】
この記録ディスク駆動装置では、前述のシャフトとハブの締結強度が向上したスピンドルモータ備えていることによって、記録媒体を安定して回転させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
1.第1実施形態
(1)スピンドルモータ全体の構成
図1は本発明の一実施形態としてのスピンドルモータ1の概略構成を模式的に示す縦断面図である。このスピンドルモータ1は記録ディスク駆動用スピンドルモータであり、ハードディスク等の記録ディスク駆動装置の一部を構成している。
【0020】
なお、図1に示すO−Oがスピンドルモータ1の回転軸線である。また、本実施形態の説明では便宜上図1の上下方向を「軸線上下方向」とするが、スピンドルモータ1の実際の取付状態における方向を限定するものではない。
図1において、このスピンドルモータ1は、主に、静止部材2と、回転部材3と、回転部材3を静止部材2に回転自在に支持するための軸受機構4とを備えている。スピンドルモータ1は、さらに、静止部材2に固定されたステータ6と、回転部材3に固定されたロータマグネット7を備えており、両部材によって、回転部材3に対して回転力を与えるための磁気回路部が構成されている。
【0021】
(2)静止部材
静止部材2は、ブラケット10と、このブラケット10の中央開口内に固定されたスリーブ11とから構成されている。より詳細には、ブラケット10の中央開口縁には軸線方向上側に延びる筒部10aが形成されており、その内周面にスリーブ11の外周面が嵌合されている。また、ステータ6は筒部10aの外周面に固定されている。
【0022】
スリーブ11は、中空円筒状の部材であり、その略中央部には、軸線方向に貫通する貫通孔51が形成されている。スリーブ11の貫通孔51の内周面は、軸線方向上側から下側に向かって以下の順番で並んだ、第1ラジアル内周面53、第2ラジアル内周面54及び下部内周面55を有している。第1及び第2ラジアル内周面53,54は、軸受機構4の各ラジアル軸受部を構成している(後述)。スリーブ11の貫通孔51の下端は、スラストカバー12によって閉じられている。
【0023】
(3)回転部材
回転部材3は、軸受機構4を介してスリーブ11に回転自在に支持された部材であって、外周部に記録ディスク83が載置されるロータハブ14と、ロータハブ14の内周側に位置し、軸受機構4を介してスリーブ11に軸支されるシャフト15とを備えている。
【0024】
ロータハブ14は、概ね円板状の部材であり、静止部材2やステータ6の上方に近接して配置されている。さらに詳細には、ロータハブ14は、主に、円板状部31と、円板状部31の外周縁から軸線方向下側に延びる筒状部32と、円板状部31の内周縁から軸線方向下側に延びる筒状部33とから構成されている。筒状部32,33はともに円筒状である。
【0025】
筒状部32の内周面には接着等の手段によってロータマグネット7が固定されている。ロータマグネット7は、ステータ6に半径方向に微小間隙をもって対向して配置され、ステータ6と協働して回転磁界を発生する。つまり、ステータ6のコイルに通電することにより、ステータ6とロータマグネット7との電磁相互作用により、回転部材3にトルクが作用する。
【0026】
筒状部32の先端部には外周側に延びる鍔部34が形成されている。この鍔部34は、後述するディスク用クランプ88からのクランプ力を受けるための軸線方向上側端面35を有している。
(4)ハブとシャフトの締結構造
ハブ14とシャフト15は、シャフト15の上端がハブ14の中心孔すなわちその内周面に嵌合することで互いに締結されている。より具体的には、図2に示すように、シャフト15の上側部41の外周面42が筒状部33の内周面38に圧入されている。なお、両周面間には締結強度向上のため接着剤が供給されていてもよい。
【0027】
シャフト15の上側部41の先端外周側には、段差部43が形成されている。段差部43は、軸線方向上側端面44と、外周面45とを有し、このため段差部43が形成された部分は、半径方向の肉厚が他の部分により短い筒状部分となっている。ハブ14の内周縁の軸線方向上側部分には、段差部43に対応して内周側突出部36が形成されている。突出部36は段差部43に当接しており、これによりハブ14とシャフト15との軸線方向位置決めがなされ、さらにシャフト15がハブ14に対して軸線方向上側に抜け出るのが防止されている。
【0028】
以上に述べた締結構造をさらに詳細に説明すると、筒状部33とは、円板状部31の軸線方向下側端面より突出した部分であり、その内周面全てがシャフト15の外周面42と密着している。
以上に述べた締結構造において、ハブ14の筒状部33に対してシャフト15が嵌合しているため、従来に比べて締結区間・接触面積が大きくなり、締結強度が向上している。また、ハブ14の筒状部33はシャフト15の肉厚の大きな部分(上側部41)に締結されているため、段差部43が形成された薄肉部分に締結されていた従来例に比べて、締め代を大きくすることができる。つまり、ハブ14とシャフト15の締結強度をさらに向上させることができる。
【0029】
このように、ハブ14とシャフト15の締結強度が向上するため、半径方向の衝撃がハブ14に加えられた場合でも、ハブ/シャフト間の精度(直角度)に狂いが生じにくい。
(5)軸受機構
軸受機構4は、回転部材3を静止部材2に対して、より具体的には、ハブ14及びシャフト15をスリーブ11に対して潤滑流体を介して回転自在に支持するための動圧流体軸受機構である。軸受機構4は、第1及び第2ラジアル軸受部21,22と、第1及び第2スラスト軸受部23,24とを有している。以下、スリーブ11,ハブ14及びシャフト15の構造に触れながら、各軸受部21〜24の構造を説明していく。
【0030】
▲1▼ラジアル軸受部
スリーブ11の第1ラジアル内周面53は、図2に示すように、筒状部33の外周面37との間に潤滑流体8が保持されるラジアル微小間隙を確保するように対向している。第1ラジアル内周面53には、潤滑流体8中に動圧を発生するためのヘリングボーン状動圧発生用溝が形成されている。このように、スリーブ11の第1ラジアル内周面53と、筒状部33の外周面37と、その間の潤滑流体8とによって、第1ラジアル軸受部21が構成されている。
【0031】
スリーブ11の第2ラジアル内周面54は、第1ラジアル内周面53より小径であり、シャフト15の外周面42の軸線方向下側部分(ハブ14の筒状部33に覆われていない部分)との間に潤滑流体8が保持されるラジアル微小間隙を確保するように対向している。第2ラジアル内周面54には、潤滑流体8中に動圧を発生するためのヘリングボーン状動圧発生用溝が形成されている。このように、スリーブ11の第2ラジアル内周面54と、シャフト15の外周面42と、その間の潤滑流体8とによって、第2ラジアル軸受部22が構成されている。
【0032】
以上に述べたように、第1ラジアル軸受部21がハブ14の筒状部33の外周面において形成されているため、第1ラジアル軸受部21の半径r1が第2ラジアル軸受部22の半径r2に比べて大きくなっている。したがって、第1ラジアル軸受部21では、周速が増し、発生する動圧が大きくなる。また、発生する動圧に余裕がある場合は、筒状部・スリーブ間の隙間寸法を大きくすることができるので、加工に対する要求精度が緩和され、歩留まりの改善や、加工コストの削減等、モータの低コスト化に寄与することができる。
【0033】
なお、第2ラジアル軸受部22の半径r2は、シャフト15の外周面42と等しいため、従来と同じ大きさであるが、第1ラジアル軸受部21の半径r1が大きくなっているため、軸受機構4全体ではラジアル動圧は大きくなっている。
また、ハブとシャフトの締結強度を向上させるために締結区間を単に長く設定するだけでは、ラジアル軸受部がハブ/シャフトの締結部の近傍に設けられているため、寸法が制限されることになり、その結果ラジアル軸受部において軸受剛性等必要な回転支持力を確保することが困難になってしまう。それに対してこのスピンドルモータ1の構成では、第1ラジアル軸受部21はハブ14の筒状部33の外周面において形成されているため、締結区間を十分に確保した上で十分な軸受剛性を確保することができる。
【0034】
▲2▼スラスト軸受部
スリーブ11の下部内周面55は、貫通孔51の下端において第1及び第2ラジアル内周面53,54より大径の段部52を形成している。すなわち、段部52は、貫通孔51回りで軸線方向下方を向くスラスト面56と、前述の下部内周面55とを有している。
【0035】
シャフト15の下端には、スラストフランジ46が形成されている。スラストフランジ46は、シャフト15の下端から半径方向外側に突設された円板状の部分であり、段部52内においてスラスト面56に近接して配置されている。スラストフランジ46は、スリーブ11のスラスト面56に対して対向する第1スラスト面47と、その反対側すなわちスラストカバー12のスラスト面12a側を向く第2スラスト面48とを有している。
【0036】
スラストフランジ46の第1スラスト面47及び第2スラスト面48には、それぞれ、シャフト15の回転にともない潤滑流体中に動圧を発生するためのヘリングボーン状動圧発生用溝がそれぞれ形成されている。このように、スリーブ11のスラスト面56とスラストフランジ46の第1スラスト面47とその間の潤滑流体8とによって、第1スラスト軸受部23が形成されている。さらに、スラストフランジ46の第2スラスト面48とスラストカバー12のスラスト面12aとその間の潤滑流体8とによって、第2スラスト軸受部24が構成されている。
【0037】
(6)ハードディスク装置の構成
以上、本発明に従う記録ディスク駆動用スピンドルモータ1の一実施形態について説明したが、本発明に従うこのスピンドルモータ1を備えた記録ディスク駆動装置としてのハードディスク装置を例に説明する。
図5に、一般的なハードディスク装置80の内部構成を模式図として示す。ハウジング81の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状の記録ディスク83が装着された前述のスピンドルモータ1が設置されている。加えてハウジング81の内部には、記録ディスク83に対して情報を読み書きする磁気ヘッド移動機構87が配置され、この磁気ヘッド移動機構87は、記録ディスク上の情報を読み書きするヘッド86、このヘッドを支えるアーム85、およびヘッドおよびアームをディスク上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部84により構成される。
【0038】
(7)クランプ構造
記録ディスク83は、図1に示すように、ディスク用クランプ88及びクランプねじ89によってスピンドルモータ1に取り付けられている。記録ディスク83は、軸線方向に並んで配置された3枚の部材であり、内周面がハブ14の筒状部32の外周面に嵌合している。また、最下部の記録ディスク83はハブ14の鍔部34の軸線方向上側端面35に当接しており、各記録ディスク83の内周端間にはスペーサ90がそれぞれ配置されている。
【0039】
ディスク用クランプ88は、例えばステンレスからなる円盤状の板ばね部材であり、自由状態では中央部が軸線方向上側に突出する湾曲形状になっている。ディスク用クランプ88はハブ14の軸線方向上側に近接して配置されている。ディスク用クランプ88の中心部には中心孔88aが形成され、その内周縁は軸線方向上側に開いたテーパ面88bとなっている。また、ディスク用クランプ88の外周縁には、軸線方向下側に延び最上部の記録ディスク83の側面に当接している突出部88cが形成されている。
【0040】
シャフト15の上端面には、軸線方向に延びるようにねじ孔49が形成されている。クランプねじ89はねじ孔49内に螺合しており、頭部89aがディスク用クランプ88のテーパ面88bに相補的に当接している。このように、ディスク用クランプ88は、中央部がクランプねじ89によってシャフト15に対して軸線方向下側に付勢されて平板状になるようにたわみ、ディスク用クランプ88はそのたわみ反力を記録ディスク83に与えている。言い換えると、突出部88cが各記録ディスク83の内周部をハブ14の鍔部34に対して強く押し付けている。
【0041】
以上に述べたようにディスク用クランプ88を固定するクランプねじ89はシャフト15に固定されているため、ハブ14に固定されている場合に比べて、クランプ力はハブ14をたわませて変形させるように働く。具体的には、ハブ14の外周部が軸線方向下側に移動することでハブ14はシャフト15に対して傾き、ハブ14の締結内周面の上部がシャフト15の外周面から離れるように変形するようになっている。しかし、この実施形態では、ハブ14の筒状部33によって両者の締結強度が向上しているため、クランプ力による不具合は生じにくい。具体的には、RROの悪化やハブ/シャフト間の締結外れが生じにくい。
【0042】
2.第2実施形態
この実施形態では、スピンドルモータ1の基本的な構造は前記実施形態と同様である。したがって、ここでは異なる構造の部分のみを説明する。
図3に示すように、ハブ14の内周縁に内周側突出部39を設け、それに対してシャフト15の上側端面を当接させることで、ハブ14とシャフト15の軸線方向位置決めを行っている。
【0043】
この実施形態では、ハブ14の円板状部31の内周面及び筒状部33の内周面の軸線方向上側部分が、シャフト15の上側部41の外周面42に対して締結される締結内周面38Aを形成している。つまり、筒状部33の内周面の下側部分38Bの径はシャフト15の上側部41の外径より大きくなっており、内周面下側部分38Bと外周面42との間に微小な間隙が確保されている。以上に述べたように、筒状部33は、前記実施形態とは異なり、その一部のみがシャフト15の外周面42に密着している。
【0044】
3.第3実施形態
この実施形態では、スピンドルモータ1の基本的な構造は前記実施形態と同様である。したがって、ここでは異なる構造の部分のみを説明する。
図4に示すように、ハブ114の筒状部133の配置をシャフト115の外周面全体を覆うようにしている。この結果、第1ラジアル軸受部121と第2ラジアル軸受部122は、筒状部133の外周面137によって形成されている。
【0045】
以上に述べたように、第1及び第2ラジアル軸受部121,122がハブ114の筒状部133の外周面において形成されているため、シャフト115の外径が従来と同等であるとすると、第1及び第2ラジアル軸受部121,122の半径r1が従来のラジアル軸受部の半径r2に比べて大きくなっている。したがって、第1及び第2ラジアル軸受部121,122では、周速が増し、発生する動圧が大きくなる。また、発生する動圧に余裕がある場合は、筒状部・スリーブ間の隙間寸法を大きくすることができるので、加工に対する要求精度が緩和され、歩留まりの改善や、加工コストの削減等、モータの低コスト化に寄与することができる。
【0046】
さらに、筒状部133の外周面137とスリーブ111の内周面153は、第1ラジアル軸受部121と第2ラジアル軸受部122を形成する部分がそれぞれ同径であるため、第1ラジアル軸受部121と第2ラジアル軸受部122は同一半径方向位置に配置されている。この結果、第1ラジアル軸受部121と第2ラジアル軸受部122の同軸度が向上している。
【0047】
4.他の実施形態
本発明はかかる上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
具体的には、本発明は、前記実施形態に示された動圧軸受、スピンドルモータ又は記録ディスク駆動装置に限定されるものではない。
【0048】
また、潤滑流体としては、潤滑油以外に空気を用いてもよい。
さらに、動圧軸受のラジアル・スラスト軸受部を構成する動圧発生溝の形状や形成位置は、前記実施形態に限定されない。
【0049】
【発明の効果】
請求項1に記載のスピンドルモータでは、記録ディスク装置において、ねじ部材はシャフトのねじ孔に螺合することで、ディスク用クランプをたわませている。このため、ディスク用クランプは記録ディスクをハブとの間で挟みつけている。
【0050】
シャフトにねじ孔を形成することで、ハブの円板状部を薄肉化することができるが、その一方でこの構成によってハブに対するクランプ力がハブの外周部を軸線方向片側に押し付けるように作用している。そのため、クランプによってハブはたわみ変形し、ハブがシャフトに対して嵌合部において傾き、嵌合部の軸線方向先端側で締結が外れるという事態が起こりやすいと考えられる。
【0051】
しかし、この記録ディスク装置では、ハブの筒状部がシャフトに締結されることで、ハブ/シャフト間の接触面積を十分に確保することができ、十分なハブ/シャフト締結強度を得ることができる。したがって、クランプ力が作用したときにハブとシャフトの締結が外れにくくなっている。
請求項2記載のスピンドルモータでは、請求項1において、第1ラジアル軸受部は、ハブの筒状部の外周面において形成されているため、ラジアル軸受部の径が従来に比べて大きくなっている。このため、ラジアル軸受部において周速が増し、発生する動圧が大きくなる。
【0052】
また、ハブとシャフトの締結強度を向上させるために締結区間を単に長く設定するだけでは、ハブ/シャフトの締結部の近傍に設けられたラジアル軸受部の寸法が制限されることになり、その結果軸受剛性等必要な回転支持力を確保することが困難になってしまう。それに対してこのスピンドルモータの構成では、第1ラジアル軸受部はハブの筒状部の外周面において形成されているため、十分な軸受剛性を確保することができる。
【0053】
請求項3に記載のスピンドルモータでは、請求項2において、第2ラジアル軸受部の径は第1ラジアル軸受部の径より小さく従来と同等であるが、軸受機構全体ではラジアル動圧は大きくなっている。
請求項4に記載のスピンドルモータでは、請求項1において、第1及び第2ラジアル軸受部は筒状部の外周面に形成されているため、ラジアル軸受部の径が従来に比べて大きくなっている。このため、ラジアル軸受部において周速が増し、発生する動圧が大きくなる。
【0054】
請求項5に記載のスピンドルモータでは、請求項4において、筒状部の外周面において第1及び第2ラジアル軸受を構成する部分の外径は同一であり、スリーブの2つのラジアル内周面の内径は同一であるため、2つのラジアル軸受部の同軸度が向上している。
請求項6に記載のスピンドルモータでは、請求項1〜5のいずれかにおいて、軸受機構は、シャフトのスラスト面とスリーブのスラスト面との間にスラスト軸受部をさらに有しているため、スラスト軸受部によってスラスト動圧を発生することができる。
【0055】
請求項7に記載の記録ディスク駆動装置では、前述のシャフトとハブの締結強度が向上したスピンドルモータ備えていることによって、記録媒体を安定して回転させることができる。
請求項8に記載の記録ディスク駆動装置では、前述のシャフトとハブの締結強度が向上したスピンドルモータ備えていることによって、記録媒体を安定して回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としてのスピンドルモータの縦断面概略図。
【図2】ハブとシャフトの締結部及び第1ラジアル軸受部の縦断面概略図であり、図1の部分拡大図。
【図3】第2実施形態におけるハブとシャフトの締結部及び第1ラジアル軸受部の縦断面概略図。
【図4】第3実施形態としてのスピンドルモータの縦断面概略図。
【図5】一般的なハードディスク装置の概略構成図。
【符号の説明】
1 スピンドルモータ
11 スリーブ
14 ハブ
15 シャフト
21 第1ラジアル軸受部
33 筒状部
38 内周面
41 上側部
42 外周面
49 ねじ孔
88 ディスク用クランプ(クランプ部材)
89 ねじ部材
Claims (8)
- 記録ディスク駆動装置に用いられるスピンドルモータであって、
中空円筒状のスリーブを有する静止部材と、
中心孔が形成された円板状部と、前記円板状部の内周縁から軸線方向に突出する筒状部とを有するハブと、
前記スリーブの半径方向内側に配置された部材であって、一端が前記筒状部の内周面に嵌合され、前記一端の端面にはディスク用クランプをたわませるためにねじ部材が螺合するねじ孔が形成されたシャフトと、
前記ハブ及びシャフトを前記静止部材に対して回転自在に支持するための軸受機構と、
前記静止部材に固定されたステータコイルと、
前記ステータコイルに対向するように前記ハブに固定され、前記ステータコイルと協働して回転磁界を発生するためのロータマグネットと、
を備えたスピンドルモータ。 - 前記軸受機構は、前記筒状部の外周面と前記スリーブのラジアル内周面との間に潤滑流体を保持すると共に、前記潤滑流体に動圧を誘起する動圧発生用溝を設けることで構成された第1ラジアル軸受部を含んでいる、請求項1に記載のスピンドルモータ。
- 前記軸受機構は、前記シャフトの外周面において前記ハブの筒状部に覆われていない部分と前記スリーブのラジアル内周面との間に潤滑油を保持すると共に、前記潤滑流体に動圧を誘起する動圧発生用溝を設けることで構成された第2ラジアル軸受部をさらに含んでいる、請求項2に記載のスピンドルモータ。
- 前記軸受機構は、前記筒状部の外周面と前記スリーブの2つのラジアル内周面との間に潤滑流体を保持すると共に、前記潤滑流体に動圧を誘起する動圧発生用溝を設けることで構成された第1及び第2ラジアル軸受部を含んでいる、請求項1に記載のスピンドルモータ。
- 前記筒状部の前記外周面において前記第1及び第2ラジアル軸受部を構成する部分の外径は同一であり、
前記スリーブの前記2つのラジアル内周面の内径は同一である、請求項4に記載のスピンドルモータ。 - 前記軸受機構は、前記シャフトのスラスト面と前記スリーブのスラスト面との間に潤滑流体を保持すると共に、前記潤滑流体に動圧を誘起する動圧発生用溝を設けることで構成されたスラスト軸受部をさらに含んでいる、請求項1〜5のいずれかに記載のスピンドルモータ。
- ハウジングと、
前記ハウジングの内部に固定された、請求項1〜6のいずれかに記載の前記スピンドルモータと、
前記ハブの前記円板状部に固定された、情報を記録できる円板状記録媒体と、前記記録媒体の所要の位置に情報を書込又は読み出すための情報アクセス手段と、
を備えた記録ディスク駆動装置。 - 前記シャフトの前記ねじ孔に螺合するねじ部材と、
前記ねじ部材によってたわまされ、前記記録媒体を前記ハブにクランプするディスク用クランプと、
をさらに備えている、請求項7に記載の記録ディスク駆動装置。
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