JP3784135B2 - 耐湿熱性ポリエステルフィラメントとその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業資材用フィラメント、特に抄紙用カンバス、ベルト布、フィルター等に好適な優れた耐湿熱性を有するポリエステルフィラメントとその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィラメントは、優れた機械的特性を有し、産業資材用フィラメント、特に抄紙用カンバスやベルト布あるいはフィルターとして広く使用されている。
【0003】
しかし、産業資材用フィラメントは、使用される環境が過酷であり、比較的短期間にフィラメントの劣化が起こり、使用できなくなることがある。例えば、ポリエステルフィラメントを用いた抄紙用カンバスは、抄紙プレスゾーン並びにその後の乾燥ゾーン等の工程に使用されるため、高温多湿状態に曝される。そのため、水、熱、水蒸気の影響により、ポリエステルフィラメントが熱及び加水分解劣化を起こし、短期間で使用できなくなることが知られている。
【0004】
水、水蒸気によるポリエステルの加水分解は、水分子のエステル結合部分への攻撃によってこの部分が分解し、カルボキシル基と水酸基が形成され、主鎖の***が起こり、加水分解劣化が進行していく。さらに、これにより形成されたカルボキシル末端基は、ポリエステルの加水分解反応の触媒的な役割を担い、カルボキシル末端基量の増加に伴い、その加水分解が加速され、特に熱が加わると加水分解が促進される。
【0005】
そこで、熱加水分解に対する対応策としてカルボキシル末端基量の少ないポリエステルとすることにより、フィラメントの耐湿熱性を改良する方法が採用されている。例えば、特公平1− 15604号公報や特開平4−289221号公報には、カルボジイミド化合物を添加し、カルボキシル末端基の封鎖を行うことによって、耐湿熱性が改善されたポリエステルフィラメントを得る方法が開示されている。しかし、ポリエステルフィラメント中のカルボキシル末端基量を低減させるだけでは、耐湿熱性能を長期間にわたって持続させることは困難であった。
【0006】
ここで、特開平7−258542号公報には、カルボジイミド化合物を添加し、カルボキシル末端基の封鎖を行うと共に、ポリオレフィン等を含有させたポリエステルフィラメントが提案されている。
しかし、ポリエステルに通常のポリオレフィンを配合すると、相分離を起こしやすく、フィラメントがフィブリル化したり、糸質物性が低下したりするという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フィラメントがフィブリル化することがなく、糸質物性が良好で、かつ、優れた耐湿熱性を長期間にわたって保持するポリエステルフィラメントとその製造法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この課題を解決するもので、その要旨は、次のとおりである。
1.固相重合反応を経て製造されたポリエステルに、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体 0.1〜20重量%及びカルボジイミド化合物 0.3〜2.0 重量%を配合した組成物を溶融紡糸し、延伸して得られたフィラメントであって、相対粘度が1.40以上、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下であることを特徴とするポリエステルフィラメント。
2.次の工程を順次行うことを特徴とする上記第1項に記載のポリエステルフィラメントを製造する方法。
(A) 溶融重合法によって相対粘度が1.25〜1.45のプレポリマーを製造し、その後、固相重合して相対粘度が1.43以上 (ただし、プレポリマーの相対粘度よりも大) のポリエステルを製造する工程、
(B) ポリエステルに、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体 0.1〜20重量%及びカルボジイミド化合物 0.3〜2.0 重量%を配合した組成物を調製して溶融紡糸し、相対粘度が1.40以上で、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下のフィラメントを得る工程、
(C) フィラメントを延伸する工程。
3.固相重合反応を経て製造されたポリエステル75重量%以上、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体 0.1〜20重量%、ポリオレフィン 0.1〜20重量%及びカルボジイミド化合物 0.3〜2.0 重量%からなる組成物を溶融紡糸し、延伸して得られたフィラメントであって、相対粘度が1.40以上、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下であることを特徴とするポリエステルフィラメント。
4.次の工程を順次行うことを特徴とする上記第3項に記載のポリエステルフィラメントを製造する方法。
(a) 溶融重合法によって相対粘度が1.25〜1.45のプレポリマーを製造し、その後、固相重合して相対粘度が1.43以上 (ただし、プレポリマーの相対粘度よりも大) のポリエステルを製造する工程、
(b) ポリエステル75重量%以上、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体 0.1〜20重量%、ポリオレフィン 0.1〜20重量%及びカルボジイミド化合物 0.3〜2.0 重量%からなる組成物を調製して溶融紡糸し、相対粘度が1.40以上で、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下のフィラメントを得る工程、
(c) フィラメントを延伸する工程。
【0009】
なお、本発明における相対粘度、カルボキシル末端基量及びカルボジイミド化合物含有量は、次の方法で測定して得られる値である。
(イ) 相対粘度
フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし、濃度 0.5g/dl、温度20℃の条件でウベローデ型粘度計を用いて測定する。
(ロ) カルボキシル末端基量
ポリエステルをベンジルアルコールに溶解し、 0.1規定の水酸化カリウムメタノール溶液で滴定して求める。
(ハ) カルボジイミド化合物含有量
フィラメントをヘキサフロロイソプロパノールとトリクロロメタンとの等容量混合溶媒に溶解し、トリクロロメタンで希釈した後、アセトニトリルを添加してポリマー分を沈殿させ、濾過した溶液について液体クロマトグラフ法で定量して求める。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明において、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好適であるが、PETを主体とし、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、 2,6−ナフタレンジカルボン酸、 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、 1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、 1,4−シクロヘキサンジオール、 1,4−シクロヘキサンジメタノール等が少量共重合されたものを用いることもできる。
【0012】
本発明を実施するに際しては、まず、通常の溶融重合法によって相対粘度が1.25〜1.45のプレポリマーを得る。次いで、このプレポリマーのペレットを固相状態で減圧下又は不活性ガス流通下に加熱して固相重合反応を行い、所定の相対粘度とカルボキシル末端基量のポリエステルとする。プレポリマーの相対粘度が適当でないと、トータルの重合時間が著しく長くなったり、固相重合後のポリエステルのカルボキシル末端基量を所定の範囲のものとすることができなかったりするので、プレポリマーの相対粘度を上記の範囲とすることが望ましい。
【0013】
固相重合後のポリエステルは、相対粘度が1.43以上(ただし、プレポリマーの相対粘度よりも大)のものであることが必要である。この条件が満たされないと製糸性が悪化したり、糸質性能が不十分なものとなったりすると共に、溶融紡糸して得られるフィラメントの相対粘度を1.40以上にすることが困難である。フィラメントの相対粘度が1.40未満になると摩耗による劣化に対する耐性が悪化し、耐摩耗性が劣ったものとなり、実用に供することができない。
【0014】
なお、固相重合により相対粘度がプレポリマーよりも0.10〜0.40程度高くなるように固相重合の条件を選定することが好ましい。この固相重合によりポリエステルのカルボキシル末端基量が減少すると共に、オリゴマー等の不純物が除去される。
【0015】
また、固相重合後のポリエステルは、カルボキシル末端基量が20.0eq/t以下のものであることが好ましい。この条件が満たされないと溶融紡糸して得られるフィラメントのカルボキシル末端基量を十分低減させることが困難であり、仮に、カルボキシル末端基量を低減させる末端基封鎖剤としてのカルボジイミド化合物を多量に添加することにより、カルボキシル末端基量を低減させることができるとしても、カルボジイミド化合物を多量に添加すると製糸性の悪化等の問題をひき起こす。
【0016】
溶融紡糸して得られるフィラメントは、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下のものであることが必要である。フィラメントのカルボキシル末端基量がこれより多いと、長期間の湿熱処理により糸質低下が顕著となり、目標とする耐湿熱性能が発現されない。
【0017】
本発明においては、このような固相重合を経て製造されたポリエステルを溶融紡糸する際に、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体(EMGという)又はEMGとポリオレフィン、及びカルボジイミド化合物(CDIという)を配合する。
【0018】
EMGとしては、ポリエチレンの主鎖中にメタクリル酸グリシジル成分が1〜35モル%共重合されたものが好ましく用いられるが、その特性が損なわれない範囲で、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸エステル等が共重合されたものを使用することもできる。
【0019】
EMGは、ポリエステルの末端基と反応するメタクリル酸グリシジル成分を含有するため、ポリエステルとの相溶性に優れ、フィラメントをフィブリル化させることなく、ポリエステルの耐湿熱性向上に寄与する。
【0020】
EMGにおけるメタクリル酸グリシジル成分の含有量があまり少ないとポリエステルとの相溶性が不十分となり、逆に多すぎるとポリエステルとの反応が進行しすぎる結果、溶融粘度の上昇が顕著となり、製糸性が悪化する。
【0021】
EMGの添加量は、ポリエステル組成物の 0.1〜20重量%とすることが必要である。この添加量が 0.1重量%未満であると耐湿熱性が不十分となり、20重量%を超えるとポリエステル組成物の溶融粘度が上昇し、製糸性が悪化する。
【0022】
また、EMGと共にポリオレフィン(ホモポリマー)を添加すると、EMGにより相溶性が改良されるため、ポリオレフィンのみを添加した場合に発現するフィラメントのフィブリル化が抑制され、糸質物性を向上させることが可能となる。また、EMGのみを比較的多量に添加すると、溶融粘度が上昇して紡糸時の操業性が低下することがあるが、ポリオレフィンを併用すると溶融粘度の上昇が抑制され、操業性が向上する。
【0023】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン等のホモポリマーが用いられる。これらのうち、特に好ましいものはポリエチレンであり、ポリエチレンは、ポリエチレン成分を含有するEMGとの相溶性が特に良好である。
【0024】
ポリオレフィンを添加する場合、その添加量は、 0.1〜20重量%とすることが必要である。この添加量が 0.1重量%未満であるとポリオレフィンを添加する効果が反映されにくく、20重量%を超えるとポリエステルとの混和性が低くなる結果、糸質物性が低下する。
【0025】
EMGとポリオレフィンとを併せて添加する場合、それらの添加量を、前記の範囲で、ポリエステルの割合が75重量%以上となるように選定することが必要である。ポリエステルの割合が75重量%未満であると、十分な糸質物性を有するフィラメントを得ることが困難である。
【0026】
CDIの具体例としては、N,N′−ビス(2,6−ジメチルフェニル)カルボジイミド、N,N′−ビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド、N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N′−ビス(2−イソプロピルフェニル)カルボジイミド等が挙げられる。この中で、耐熱性、工業レベルでの使用が可能であるため、N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドが最も好ましい。
【0027】
CDIの添加量は、 0.3〜2.0 重量%とすることが必要であり、この条件が満たされないと目標性能が発現されない。すなわち、この添加量が 0.3重量%未満であるとカルボキシル末端基の封鎖が不十分となり、耐湿熱性能が満足されず、 2.0重量%を超えると製糸性が悪化する。なお、CDIの添加量は、溶融紡糸して得られるフィラメントのカルボキシル末端基量が10.0eq/t以下となり、活性状態のCDIが20〜18000ppm程度残存する量とすることが必要である。活性状態とは、カルボキシ基や水分子と反応可能な状態のことをいい、この含有量が 20ppm未満であるとCDIの効果が発現され難く、18000ppmを超えるようにすることはCDIの添加量の上限が 2.0重量%であることから困難である。
【0028】
次に、フィラメントの製造法について説明する。
溶融紡糸は、常法によって行うことができるが、ポリエステル組成物の相分離を抑制するため、紡糸ライン中あるいはノズルパック中に静止混合素子を装填して紡糸することが好ましい。
【0029】
また、紡糸温度は 350℃以下、好ましくは 310℃以下とすることが望ましい。紡糸温度が高すぎるとポリエステル及び添加物が熱分解を起こし、円滑な紡糸が困難になると共に、得られるフィラメントが物性の劣ったものとなる。また、ポリエステルの熱分解反応に伴ってカルボキシル末端基が生成し、溶融紡糸時に末端基封鎖剤が多量に消費されてしまい、所望の性能が発揮されない。そして、溶融紡糸に際しては、得られるフィラメントの相対粘度が1.40未満とならないように、紡糸温度や滞留時間を調整することが必要である。
【0030】
紡出されたフィラメントは、 0〜100 ℃、好ましくは20〜90℃の液体又は 0〜100 ℃、好ましくは10〜40℃の空気中で冷却する。冷却温度をあまり低くすると温度管理及び作業性等に困難をきたし、高すぎると冷却不足となり、最終的に得られるフィラメントが糸質物性の劣ったものとなる。
【0031】
次いで、冷却固化したフィラメントは、一旦巻き取った後又は巻き取ることなく延伸される。
延伸は一段又は二段以上の多段で行うことができるが、多段で行うことが好ましい。まず、延伸点の移動を起こさない65〜95℃の液体中又は70〜200 ℃の気体中で 3.0〜6.5 倍の第一段延伸を行い、続いて第一段延伸よりも高温の 150〜300 ℃の液体又は気体中で全延伸倍率が 5.0〜8.0 倍となるように第二段目以降の延伸を行う。この際、全延伸倍率が第一段延伸倍率よりも高くなるように設定する。延伸温度が上記の範囲より低いと加熱不足となり、延伸斑及び糸切れが発生し、一方、延伸温度が高すぎるとフィラメントの融解及び熱劣化が起こり、好ましくない。また、全延伸倍率が 5.0倍未満であると得られるフィラメントの糸質特性、特に直線強度が低くなりやすい。一方、全延伸倍率を 8.0倍より大きくすると繊維内での塑性変形に分子配向が対応できなくなるため、繊維中にミクロボイドが発生し、満足な性能を示すフィラメントが得られない。
【0032】
また、延伸後、 150〜500 ℃の気体中で 1.0〜15.0%の弛緩率で弛緩熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度が 150℃より低いとフィラメントに対する熱処理効果が不十分となりやすく、熱処理時間にも関係するが 500℃より高くすると繊維表面でポリエステルの熱分解反応が起こり、目標とする性能を示すフィラメントが得られない。また、弛緩率を 1.0%未満にすると得られるフィラメントは、熱収縮率の高いものとなり、場合によっては実用に適さなくなり、15.0%を超える弛緩率とすると弛緩熱処理段階で糸のたるみが発生し、操業性が悪いと共に、目標の糸質性能を示さなくなる。
【0033】
【作用】
本発明においては、低カルボキシル末端基量のポリエステルを用い、これにEMG又はEMGとポリオレフィン及びCDIを添加して溶融紡糸するので、低カルボキシル末端基量で、長期にわたり優れた耐湿熱性能を示すフィラメントが得られる。
EMG又はEMGとポリオレフィンとCDIとの相乗効果で、優れた耐湿熱性能と糸質物性を示すと共に、EMGはポリエステルの末端基と化学的に結合するグリシジル基 (及びポリエチレン成分) を有するため、ポリエステル(及びポリオレフィン)との相溶性が良好で、フィラメントがフィブリル化することがない。
【0034】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。
なお、測定及び評価方法は、次のとおりである。
(a) 強伸度
JIS L 1013 に準じて測定した。
(b) 耐湿熱性
フィラメントを 120℃の飽和水蒸気で10日間処理した後の未処理フィラメントに対する強力保持率で評価した。
(c) 耐摩耗性
フィラメントの先端に 0.2g/dの荷重をかけ、直径 0.8mmの金属棒に90度の角度で接触させながら、ストローク長70mm、40回/分の速度の条件で往復摩擦させ、1000回往復摩擦後のフィラメント (金属棒に接触した部分) の状態を目視で観察し、次の2段階で評価した。
○:フィラメントの状態に変化が認められない。
×:フィラメントにフィブリル化又は毛羽立ちが認められる。
【0035】
実施例1
PETオリゴマーを常法によって溶融重縮合して、相対粘度1.34、カルボキシル末端基量30.9eq/tのプレポリマーペレットとした後、固相重合反応を行い、相対粘度1.55、カルボキシル末端基量15.8eq/tの固相重合ペレットを得た。
この固相重合ペレットに、EMG: ATOCHEM社製「LOTADER AX−8840」(メタクリル酸グリシジル成分の割合が8モル%のもの) 5.0重量%及びCDI:N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド 1.8重量%を添加して溶融紡糸した。
溶融紡糸は、エクストルーダー型紡糸装置を使用し、紡糸温度 295℃で、孔径 2.0mmの紡糸孔を有する紡糸用口金を使用して行い、紡出糸条を70℃の水浴中で冷却し、未延伸糸を得た。この未延伸糸を90℃の水浴中で延伸倍率3.24倍で第一段延伸を行い、次いで 250℃の熱風雰囲気下で延伸倍率1.67倍の第二段延伸を行い、全延伸倍率を5.40倍とした。引き続いて 400℃の熱風雰囲気下で弛緩率10%で弛緩熱処理を行い、ポリエステルモノフィラメントを得た。
【0036】
実施例2
EMG及びCDIの添加量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルモノフィラメントを得た。
【0037】
実施例3〜5
実施例1と同様なプレポリマーペレットを固相重合して、相対粘度1.45、カルボキシル末端基量17.5eq/tの固相重合ペレットを得た。
この固相重合ペレットに表1に示した量のEMG及びCDIを添加し、実施例1と同様な条件で溶融紡糸した後、第一段延伸倍率を3.32倍、第二段延伸倍率を1.63倍、全延伸倍率を5.40倍として延伸した後、弛緩熱処理してポリエステルモノフイラメントを得た。
【0038】
比較例1〜5
EMG及びCDIの添加量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルモノフィラメントを得た。
【0039】
比較例6
EMG及びCDIの添加量を表1のように変更した以外は実施例3と同様にしてポリエステルモノフィラメントを得た。
【0040】
実施例6
実施例1と同じ固相重合ペレットに表1に示した量のEMG及びCDIを添加し溶融紡糸した。
溶融紡糸は、エクストルーダー型紡糸装置を使用し、紡糸温度 295℃で、孔径 0.4mmの紡糸孔を48個有する紡糸用口金を使用して行い、紡出糸条を20℃の空気で冷却し、未延伸糸を得た。この未延伸糸を90℃に加熱し、第一ローラと 230℃に加熱した第二ローラとの間で延伸倍率6.35倍で延伸し、次いで 170℃に加熱して弛緩率6%の弛緩熱処理を行い、ポリエステルマルチフィラメントを得た。
【0041】
比較例7
CDIを添加しない以外は実施例6と同様にしてポリエステルマルチフィラメントを得た。
【0042】
上記の実施例及び比較例で得られたフィラメントの糸質性能等を表1に示す。なお、表において、COOHはカルボキシル末端基量を表し、フィラメントのCDI含有量は、活性状態で存在するCDIの量を表す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例7
実施例1と同じ固相重合ペレットに、実施例1と同じEMG 5.0重量%、ポリエチレン(PE) 3.0重量%及び実施例1と同じCDI 1.8重量%を添加し、実施例1と同様にして溶融紡糸、延伸、熱処理してポリエステルモノフィラメントを得た。
【0045】
実施例8
EMG、PE及びCDIの添加量を表2のように変更した以外は実施例7と同様にしてポリエステルモノフィラメントを得た。
【0046】
実施例9〜11
実施例3と同じ固相重合ペレットに、表2に示した量のEMG、PE及びCDIを添加し、実施例1と同様な条件で溶融紡糸、延伸、熱処理してポリエステルモノフイラメントを得た。
【0047】
比較例8〜13
EMG、PE及びCDIの添加量を表2のように変更した以外は実施例7と同様にしてポリエステルモノフィラメントを得た。
【0048】
比較例14
EMG、PE及びCDIの添加量を表2のように変更した以外は実施例9と同様にしてポリエステルモノフィラメントを得た。
【0049】
実施例12
実施例6と同じ固相重合ペレットに表2に示した量のEMG、PE及びCDIを添加し、実施例6と同様にして溶融紡糸、延伸、熱処理してポリエステルマルチマルチフィラメントを得た。
【0050】
比較例15
CDIを添加しない以外は実施例12と同様にしてポリエステルマルチフィラメントを得た。
【0051】
上記の実施例及び比較例で得られたフィラメントの糸質性能等を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、フィラメントがフィブリル化することがなく、糸質物性が良好で、かつ、優れた耐湿熱性能を長期間にわたって保持するポリエステルフィラメントが提供される。
そして、本発明のポリエステルフィラメントは、産業資材用フィラメント、特に抄紙用カンバス、ベルト布、フィルター等の工業用織物用として好適である。
Claims (9)
- 固相重合反応を経て製造されたポリエステルに、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体 0.1〜20重量%及びカルボジイミド化合物 0.3〜2.0 重量%を配合した組成物を溶融紡糸し、延伸して得られたフィラメントであって、相対粘度が1.40以上、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下であることを特徴とするポリエステルフィラメント。
- フィラメント中に活性状態のカルボジイミド化合物を20〜18000ppm含有する請求項1記載のポリエステルフィラメント。
- カルボジイミド化合物がN,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドである請求項1又は2記載のポリエステルフィラメント。
- 次の工程を順次行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のポリエステルフィラメントを製造する方法。
(A) 溶融重合法によって相対粘度が1.25〜1.45のプレポリマーを製造し、その後、固相重合して相対粘度が1.43以上 (ただし、プレポリマーの相対粘度よりも大) のポリエステルを製造する工程、
(B) ポリエステルに、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体 0.1〜20重量%及びカルボジイミド化合物 0.3〜2.0 重量%を配合した組成物を調製して溶融紡糸し、相対粘度が1.40以上で、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下のフィラメントを得る工程、
(C) フィラメントを延伸する工程。 - 固相重合反応を経て製造されたポリエステル75重量%以上、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体 0.1〜20重量%、ポリオレフィン 0.1〜20重量%及びカルボジイミド化合物 0.3〜2.0 重量%からなる組成物を溶融紡糸し、延伸して得られたフィラメントであって、相対粘度が1.40以上、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下であることを特徴とするポリエステルフィラメント。
- フィラメント中に活性状態のカルボジイミド化合物を20〜18000ppm含有する請求項5記載のポリエステルフィラメント。
- カルボジイミド化合物がN,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル) カルボジイミドである請求項5又は6記載のポリエステルフィラメント。
- ポリオレフィンがポリエチレンである請求項5、6又は7記載のポリエステルフィラメント。
- 次の工程を順次行うことを特徴とする請求項5、6、7又は8に記載のポリエステルフィラメントを製造する方法。
(a) 溶融重合法によって相対粘度が1.25〜1.45のプレポリマーを製造し、その後、固相重合して相対粘度が1.43以上 (ただし、プレポリマーの相対粘度よりも大) のポリエステルを製造する工程、
(b) ポリエステル75重量%以上、エチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体 0.1〜20重量%、ポリオレフィン 0.1〜20重量%及びカルボジイミド化合物 0.3〜2.0 重量%からなる組成物を調製して溶融紡糸し、相対粘度が1.40以上で、カルボキシル末端基量が10.0eq/t以下のフィラメントを得る工程、
(c) フィラメントを延伸する工程。
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