JP3783472B2 - 光反射板、および、この光反射板を用いた照明器具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光反射板、および、この光反射板を用いた照明器具に関し、具体的には、樹脂材料で射出成形された基材を有し、同基材に銀製の高輝性光反射膜が蒸着された光反射板、および、この光反射板を用いた照明器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、照明器具の分野、特にダウンライト、スポットライト及び投光器等においてガラス、プラスチック、金属、セラミック等を所要の形状に成形した基材上に、アンダーコート(一般に塗装膜)を形成した後、その上に高輝性光反射膜(銀あるいは銀合金、アルミニウムなど)を真空蒸着法、イオンプレーティング法あるいはスパッタリング法等により成膜し、更にその上にトップコート(透明有機塗膜あるいはSiO2、Al2O3 、MgF2、TiO2などの透明誘電体薄膜)を施してなる光反射板が開発されている。ガラス、プラスチック基材は、成形方法の工夫により平滑な基材面が得られるため、高輝性光反射膜にアルミニウムを用いる場合は、アンダーコートを形成しない場合もある。
【0003】
銀はアルミニウムよりも6〜8%程度反射特性が優れており、上記の光反射板に用いることにより、アルマイト処理及びアルミニウム蒸着品と比較して10〜50%程度の器具効率アップを図ることができ高効率な照明器具の創出に有効な手段である。特に繰り返し反射の多い器具(例:深型ダウンライト反射板器具)での効果は顕著である。
【0004】
一方、銀は高輝性金属として優れた反射特性及び電気化学性質を有するが、もともと化学的に非常に不安定で、空気中の酸素、水分、亜硫酸ガス、硫化水素、アンモニアガス等と容易に反応して、酸化銀、硫化銀を生成し、表面が褐色あるいは黒色に変色(腐食)するという欠点を持つ。従って銀の変色を防ぎ、本来の特性を維持するためには、腐食性ガスとの接触を無くす必要があった。
【0005】
そこで、現状では、上記構成の光反射板の高輝性光反射膜には殆どアルミニウムが用いられている。特に、近年の高出力コンパクト蛍光灯、白熱灯、メタルハライドランプを使用する照明器具で反射板温度が100℃以上になるようなものに対しては全く使用されていない。これは、器具温度の上昇とランプからの紫外線強度のアップにより、銀が反応し易くなるためである。
【0006】
また、反射板温度が100℃以上になる器具の場合、基材に従来の耐熱プラスチック成形品を用いると樹脂中の残留物(未反応モノマー、プロセスオイル、水分など)がガス化し、銀と反応して変色するケースが多かった。このような変色は、アンダーコートのガスバリヤー特性で多少はカバーできるものの、長期の使用では変色スピードを緩める程度の効果しかなかった。また、変色が発生する部分は、熱と紫外線の相互作用が最も大きいと考えられる反射板上部がほとんどであった。このような理由から、現状では光反射板の温度が100℃以上に上昇する照明器具について、図6に示すごとく、下からプラスチック基材(9)/アンダーコート(5)/高輝性光反射膜(3)/トップコート(1)といった構成のものは存在しないものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、基材に腐食性ガスの発生が極めて少ない熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、熱及び紫外線を発する光源と隣接して長期使用しても、銀製の高輝性光反射膜が変色せず、しかも、耐熱性・耐光性に優れた光反射板、および、この光反射板を用いた照明器具を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る光反射板は、光源(7)に対向設置される面に、銀もしくは銀合金からなる高輝性光反射膜(3)が形成された光反射板において、少なくとも上記光源(7)が設置された位置より上の部分に位置する基材(2)が、低融点金属及び金属粉末、または金属繊維、または金属粉末と金属繊維の混合物を50〜70体積パーセント含有する熱可塑性樹脂組成物によって形成されたものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る光反射板は、上記基材(2)表面の上記光源(7)に対向設置される面に、アンダーコート(5)が形成され、このアンダーコート(5)の上に上記高輝性光反射膜(3)が形成されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に係る光反射板は、上記高輝性光反射膜(3)が形成されている面の裏面側で上記基材(2)の下に、同基材(2)を形成している熱可塑性樹脂組成物とは異なり、上記熱可塑性樹脂組成物よりも、衝撃強度の高い樹脂基材(4)が積層されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に係る光反射板は、上記高輝性光反射膜(3)の上に透明樹脂のトップコート(1)が形成されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5に係る照明器具は、請求項1ないし請求項4何れか記載の光反射板(8)を用いて、照明具本体(6)内に光源(7)とともに配設してなることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に係る図面に基づいて詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る光反射板の構成を示した断面図である。図2は、本発明の他の一実施形態に係る光反射板の構成を示した断面図である。図3は、本発明のさらに他の一実施形態に係る光反射板の構成を示した断面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る光反射板を用いた照明器具を示した、(a)断面図、(b)一部破断した斜視図、(c)下面図、(d)斜視図である。図5は、本発明の他の一実施形態に係る光反射板を用いた照明器具を示した斜視図である。
【0015】
本発明の光反射板は、図1ないし図5に示すごとく、光源(7)に対向設置される面に、銀もしくは銀合金からなる高輝性光反射膜(3)が形成された光反射板において、少なくとも上記光源(7)が設置された位置より上の部分に位置する基材(2)が、低融点金属及び金属粉末、または金属繊維、または金属粉末と金属繊維の混合物を50〜70体積パーセント含有する熱可塑性樹脂組成物によって形成されたものである。
【0016】
本発明の光反射板に用いる基材は、少なくとも熱可塑性樹脂、金属粉末または金属繊維、または金属粉末と金属繊維の混合物、低融点金属の3材料を予め溶融混練した熱可塑性樹脂組成物で形成される。
【0017】
ここで述べる熱可塑性樹脂は、PPS、PPA、PI、PAI、PEEK、PEI、PES、PSF、PAR、PPO、PBT、PET、PC、PA66、PA6、PP、PE、ABS等があり、所要の形状に成形可能で、且つ銀膜との密着性が良好な光源からの熱ストレスに耐え得る熱可塑性樹脂であれば、特に限定しない。
【0018】
金属粉末または金属繊維、または金属粉末と金属繊維の混合物の材質としては、銅(Cu)、ニッケ ル(Ni)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)等の単一金属から成るもの、あるいはそれらの合金から成るものあるが、特に限定されるものではない。
【0019】
低融点金属の材質は、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)等の単一金属から 成るもの、あるいはそれらの合金から成り、且つ環境付加の大きい鉛(Pb)を含まない鉛フリーハンダから成る場合もあるが、特に限定されるものではない。
【0020】
上記のような材質で構成された熱可塑性樹脂組成物が成形時に可塑化される際、構成材の一つである低融点金属がその可塑化温度にて溶融する。この溶融した低融点金属を、同時点で溶融状態にある熱可塑性樹脂中に細かく分散させる補助剤として金属粉末または金属繊維(またはそれらの混合物)が機能する。このようにして低融点金属が熱可塑性樹脂中に細かく、且つ、むらなく分散した溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を成形することで、低融点金属が熱可塑性樹脂中に細かく、且つ、むらなく分散した成形体を得ることができる。
【0021】
熱可塑性樹脂への低融点金属及び金属粉末または金属繊維、または金属粉末と金属繊維の混合物などの混合量は、熱可塑性樹脂組成物を得るために上記構成材料を混錬した時点での溶融熱可塑性樹脂組成物の成形性によって任意に選択することが可能である。
【0022】
但し、本発明の目的を達成するために必要な腐食性ガスの発生が極めて少ない熱可塑性樹脂組成物を得るためには、金属成分(低融点金属及び金属粉末または金属繊維)の熱可塑性樹脂組成物中に占める体積率が大きければ大きいほど効果的なわけであるから、成形性を考慮し、低融点金属が熱可塑性樹脂中に細かく且つむらなく分散した熱可塑性樹脂組成物が得られる範囲で、できるだけ金属成分の体積率を大きくすることが望ましいといえる。
【0023】
このような理由から、検討を重ねた結果、本発明の目的を達成するための熱可塑性樹脂への金属成分の混合量は、50〜70体積パーセントの範囲になくてはならないという結論に達した。
【0024】
仮に、熱可塑性樹脂への金属成分の混合量が50体積パーセントよりも少ない場合は、金属成分の熱可塑性樹脂組成物中に占める体積率が減少し、逆に樹脂成分の体積率が増大する。このような組成比であると、反射板基材表面に占める樹脂成分の割合が増大し、反射板が加熱状況下におかれた場合、樹脂成分から発生する揮発ガス量が増大(必然的に基材表面から発生する揮発ガス量が増大)する。揮発ガス量が増大すると、光反射膜である銀とガスの接触が増えるわけであるから、必然的に銀の腐食が促進され、光反射膜の変色に至るわけである。
【0025】
また、熱可塑性樹脂への金属成分の混合量が70体積パーセントよりも多い場合は、金属成分の熱可塑性樹脂組成物中に占める体積率が増大、樹脂成分の体積率が減少し、反射板が加熱状況下におかれた場合、樹脂成分から発生する揮発ガス量は極めて少なくなる。しかしながら、この熱可塑性樹脂組成物を得るために、熱可塑性樹脂と金属成分を混錬する際、低融点金属が凝集を起こしたりして、低融点金属の分散性が極端に低下することと、樹脂成分の体積率の激減により、得られた熱可塑性樹脂組成物が極端に脆くなり、次工程である反射板基材の成形に使用する成形材料(ペレット)として成り立たない(可塑化・充填時の成形性が極端に低下)ということから、この組成比では本発明の目的を達成することができない。このようなことから、熱可塑性樹脂組成物中に占める金属成分の割合は50〜70体積パーセントの範囲になくてはならないものである。
【0026】
上記材料を所要の形状に成形することで樹脂製反射板基材を得る。反射板基材の光反射面(光源に対する面)は、所要の配光が得られるように曲面形状、段形状等に光学設計された形状になっている。
【0027】
成形法としては射出成形法、圧縮成形法、注型法、真空成形法等があるが、上記のような光学設計された形状を精度よく再現でき、加えて生産性の高い射出成形法が望ましい。
【0028】
上述した光反射板の基材(2)が、上述の熱可塑性樹脂組成物のみで形成される場合、その脆さにより、光反射板の形状によっては所要の強度を満足できない可能性がある。そのような場合は、上記熱可塑性樹脂組成物で形成された基材(2)の高輝性光反射膜(3)形成面の裏面に、熱可塑性樹脂組成物よりも衝撃強度の高い樹脂基材(4)を積層形成し、基材(2)の強度を向上させることも可能である。
【0029】
すなわち、図3に示すごとく、上記高輝性光反射膜(3)が形成されている面の裏面側で上記基材(2)の下に、同基材(2)を形成している熱可塑性樹脂組成物とは異なり、上記熱可塑性樹脂組成物よりも、衝撃強度の高い樹脂基材(4)が積層されたものであると、衝撃強度の高い樹脂基材(4)にて基材(2)の強度をより一層確実に向上させることができるものである。
【0030】
ここで用いる熱可塑性樹脂組成物よりも衝撃強度の高い樹脂は、PPS、PPA、PI、PAI、PEEK、PEI、PES、PSF、PAR、PPO、PBT、PET、PC、PA66、PA6、ABS等があるが、所要の形状に成形可能で、光源からの熱ストレスに耐え、且つ成形時に熱可塑性樹脂組成物との接着性が良好な熱可塑性樹脂であれば、特に限定しない。
【0031】
熱可塑性樹脂組成物よりも衝撃強度の高い樹脂基材(4)の成形法としては、熱可塑性樹脂組成物の成形法と同じように、射出成形法、圧縮成形法、注型法、真空成形法等があり、所要の形状を精度よく再現できれば、特に限定されるものではない。
【0032】
但し、部品点数の削減、生産性の向上を考えた場合、熱可塑性樹脂組成物と熱可塑性樹脂 組成物よりも衝撃強度の高い樹脂基材(4)を成形工程で接着し、一体化できる方法が望ましいといえる。
【0033】
一体化して製造する代表的な手法として、インサート成形法がある。インサート成形法は予め任意の形状に成形しておいた成形品Aを、金型キャビティー内の所定の位置に固定した後、金型内の(成形品Aと一体化すべき)成形品Bを形成するための空間に溶融樹脂を充填して一体化を図る成形法であり、成形工程が少なくとも2工程必要となる。一方、成形品Aを予め成形しておかなくても、1成形工程中において、成形品Aと成形品Bを一体化してしまう2色成形法がある。この成形法は同一金型内に成形品Aを形成する樹脂を充填した後、成形品Bを形成する樹脂を充填して一体化を図る方法である。
【0034】
インサート成形法もしくは2色成形法を用いて2層構成反射板基材を形成する場合の熱可塑性樹脂組成物と熱可塑性樹脂組成物よりも衝撃強度の高い樹脂基材(4)の成形順序は、基本的にはどちらを先に成形しても問題はなく、金型構造、2材料間の接着性等を考慮して任意に設定すればよい。
【0035】
なお、図2に示すごとく、上記基材(2)表面の上記光源(7)に対向設置される面に、アンダーコート(5)が形成され、このアンダーコート(5)の上に上記高輝性光反射膜(3)が形成されてなるものであると、アンダーコート(5)にて基材(2)表面の平滑性をより一層向上させることができるものである。
【0036】
以上のようにして形成された基材成形品の光反射面に、アンダーコート(5)を形成せずに直接銀製の高輝性光反射膜(3)を形成するか、あるいは基材(2)表面の平滑性をさらに向上させたい場合は、アンダーコート(5)を形成してから銀製の高輝性光反射膜(3)を形成することも可能である。
【0037】
アンダーコート(5)を形成する場合の塗料としては、基材との密着性及び濡れ性がよく、銀製の高輝性光反射膜(3)を成膜後に良好な鏡面性と密着性が得られ、且つ、光反射鏡として要求される耐熱性能を満足するものであれば、特に限定する必要はないが、耐熱性があって銀製の高輝性光反射膜(3)と良好な密着性能が得られる塗料として一液もしくは二液性のエポキシ系、エポキシ・メラミン・アクリル系、シリコン変性アクリル系、シリコンアルキッド系、ウレタン系が望ましい。
【0038】
アンダーコート(5)の膜厚は、基材表面の粗さを平滑にし、銀製の高輝性光反射膜(3)との良好な密着性が得られる厚さ5〜20μmの範囲が好ましいものである。
【0039】
アンダーコート形成方法としては、上記塗料を所定のシンナーで濃度調整した後、エアースプレーガンを用いて基材反射面に均一に塗装し焼付ける。均一な塗装膜が得られるならば、上記塗装方法に限定されるものではない。また、焼付条件としては、塗膜中にシンナーの残留がなく、ゲル分率90%以上の硬化が得られる条件であれば何等問題ない。
【0040】
アンダーコート(5)を形成しない場合は、基材成形品上に、もしくはアンダーコート(5)を形成した場合は、同アンダーコート(5)上に銀製の高輝性光反射膜(3)を形成する。
【0041】
銀製の高輝性光反射膜(3)の材質としては、高純度の銀(4N)、あるいは所要の反射特性が得られれば銀と他金属との合金、例えばAg―Mg、Ag―Pd、Ag―Pt、Ag―Rh等の合金でも問題のないものである。
【0042】
銀製の高輝性光反射膜(3)の膜厚は、所要の光学特性が得られるものであれば、なんら限定しないが、1500〜3000Åが好ましい。なぜならば、膜厚が1500Åより薄い場合は、十分な反射特性を得ることが難しく、逆に、3000Åを越えると高輝性光反射膜(3)が白濁し、むしろ反射率が低下する傾向にあるからである。
【0043】
上記銀製の高輝性光反射膜(3)を形成する方法としてのPVD(Pysical Vapor Deposition)には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ビーム法等があるが、所定の膜厚を確保でき、成膜後の銀製の高輝性光反射膜(3)の光学特性を満足できるものであれば、なんら限定する必要はないものである。
【0044】
また、図1ないし図3に示すごとく、上記高輝性光反射膜(3)の上に透明樹脂のトップコート(1)が形成されてなるものであると、透明樹脂のトップコート(1)にて高輝性光反射膜(3)の高輝性を保持させながら、同高輝性光反射膜(3)の変退色、剥離などを抑止することができるものである。
【0045】
以上のようにして形成された銀製の高輝性光反射膜(3)上に、同銀製の高輝性光反射膜(3)の(酸化劣化、紫外線劣化等による)変退色、剥離等を抑止するべくトップコ−ト(1)を形成する。
【0046】
ここで用いられるトップコ−ト(1)の材質としては、熱硬化アクリル系、熱硬化シリコン変性アクリル系、シリコン系等があるが、銀製の高輝性光反射膜(3)との良好な密着性が得られ、所要の光学特性、耐熱性、耐光性が得られる透明塗料であれば何等限定しない。
【0047】
トップコ−ト(1)の膜厚は、所要の光学特性が得られる厚さであれば、特に限定しないが、銀製の高輝性光反射膜(3)との良好な密着性、ガスバリヤー効果及び耐久性が得られる8〜20μmの範囲が望ましい。
【0048】
トップコ−ト(1)を形成する塗装法には、スプレーガン等を用いた吹きつけ塗装、ディッピング法等があるが、所要の膜厚を均一に得ることができ、耐熱性、耐光性、密着性、光学特性を満足できるものであれば、特に限定しない。
【0049】
以上のような手段を用いることで、腐食性ガスの発生が極めて少ない熱可塑性樹脂組成物を得ることができ、この熱可塑性樹脂組成物を反射板基材に適用することによって、熱及び紫外線を発する光源(7)と隣接して長期使用しても、銀製の高輝性光反射膜(3)が変色しない、耐熱性・耐光性に優れた銀蒸着反射板とそれを有する照明器具を得ることができる。
【0050】
すなわち、図4の(a)〜(d)および図5に示すごとく、上述のようにして得られた光反射板(8)を用いて、照明具本体(6)内に光源(7)とともに配設してなることで、熱及び紫外線を発する光源(7)と隣接して長期使用しても、銀製の高輝性光反射膜(3)が変色せず、しかも、耐熱性・耐光性に優れた光反射板、および、この光反射板を用いた照明器具とすることができるものである。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を説明する。
【0052】
(実施例1〜6および比較例1〜4)
下記の表1に示したような構成により、実施例1〜6および比較例1〜4のそれぞれで光反射板を形成した。
【0053】
【表1】
【0054】
なお、実施例1〜2においては、図1に示したような構成となっており、実施例3〜5においては、図2に示したような構成となっており、実施例6においては、図3に示したような構成となっているものである。そして、比較例1においては、図2に示したような構成となっているものの、上記表1の通り、基材(2)が、低融点金属及び金属粉末、または金属繊維、または金属粉末と金属繊維の混合物を28体積パーセント含有する熱可塑性樹脂組成物によって形成されたものである。また、比較例2においては、図6に示したような構成から更にアンダーコート(5)を抜いたものであり、比較例3〜4においては、図6に示したような構成となっているものである。
【0055】
次に、得られた光反射板を実施例1〜6および比較例1〜4のそれぞれで実用点灯試験と耐硫化水素ガス試験とで評価を行った。
<評価方法>
(1)実用点灯試験
図5に示したようなコンパクト蛍光灯32W(松下電子工業製:FHT32EXN)を使用した薄型(ランプ横型)ダウンライト器具を用いて、24時間連続点灯(反射板最高温度130℃)、試験期間3ヶ月実施後、日立製自記分光光度計U―4000により、波長λ=555nmの全光線反射率を測定しその反射率の低下で変色度合を下記の通り、◎、○、△、×で判定した。
【0056】
◎・・・・・ 反射率低下3%以内:変色(腐食)は全く認められない。
○・・・・・ 反射率低下3 〜10% 以内:変色(腐食)が若干認められる。
【0057】
△・・・・・ 反射率低下10〜20% 以内:変色(腐食)が認められる。
×・・・・・ 反射率低下20% 以上:著しい変色(腐食)が認められる。
【0058】
(2)耐硫化水素ガス試験(参考試験)
25℃の雰囲気中で、硫化水素ガス濃度20ppmに調整したデシケ−タ内に試料を24時間放置後取り出し、日立製自記分光光度計U―4000により波長λ=555nmの全光線反射率を測定しその反射率の低下で変色度合を下記の通り、◎、○、△、×で判定した。
【0059】
◎・・・・・ 反射率低下3%以内:変色(腐食)は全く認められない。
○・・・・・ 反射率低下3 〜10% 以内:変色(腐食)が若干認められる。
【0060】
△・・・・・ 反射率低下10〜20% 以内:変色(腐食)が認められる。
×・・・・・ 反射率低下20% 以上:著しい変色(腐食)が認められる。
【0061】
上記の評価の結果を下記の表2に実施例1〜6および比較例1〜4のそれぞれについてまとめておいた。
【0062】
【表2】
【0063】
この表2を見ながら、実施例1〜6および比較例1〜4のそれぞれについて比べてみると、実用点灯試験と耐硫化水素ガス試験とのいずれにおいても、実施例1〜6のものは、比較例1〜4のものよりも優れていることがわかり、少なくとも光源(7)が設置された位置より上の部分に位置する基材(2)が、低融点金属及び金属粉末、または金属繊維、または金属粉末と金属繊維の混合物を50〜70体積パーセント含有する熱可塑性樹脂組成物によって形成されたものであると、熱及び紫外線を発する光源と隣接して長期使用しても、銀製の高輝性光反射膜(3)が変色しない、耐熱性及び耐光性に優れた信頼性の高い銀蒸着の光反射板とそれを有する照明器具を得ることができるといえる。しかも、アンダ−コート(5)が特に不要であり、膜厚管理等の品質管理が必要なくなり、品質が向上するものであるといえる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係る光反射板によると、熱及び紫外線を発する光源と隣接して長期使用しても、銀製の高輝性光反射膜(3)が変色しない、耐熱性及び耐光性に優れた信頼性の高い銀蒸着の光反射板とそれを有する照明器具を得ることができる。しかも、アンダ−コート(5)が特に不要であり、膜厚管理等の品質管理が必要なくなり、品質が向上するものであり、工程削減、コストダウンを図ることができる。
【0065】
本発明の請求項2に係る光反射板によると、請求項1記載の場合に加えて、このアンダ−コート(5)にて、銀製の高輝性光反射膜(3)の平滑性が向上し、しかも、鏡面性が向上する。
【0066】
本発明の請求項3に係る光反射板によると、請求項1または請求項2記載の場合に加えて、衝撃強度の高い樹脂基材(4)にて基材(2)の強度をより一層確実に向上させることができるものである。そして、基材(2)と樹脂基材(4)との2層構成の双方の樹脂の肉厚の調整によってはコストダウンにつながるものである。また、衝撃強度の高い樹脂側を利用して、他部品との複合化を行った場合、長期使用での強度的な信頼性が高くなる。
【0067】
本発明の請求項4に係る光反射板によると、請求項1ないし請求項3何れか記載の場合に加えて、透明樹脂のトップコート(1)にて高輝性光反射膜(3)の高輝性を保持させながら、同高輝性光反射膜(3)の変退色、剥離などを抑止することができるものである。
【0068】
本発明の請求項5に係る光反射板を用いた照明器具によると、熱及び紫外線を発する光源(7)と隣接して長期使用しても、銀製の高輝性光反射膜(3)が変色せず、しかも、耐熱性・耐光性に優れた光反射板を用いた照明器具にすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る光反射板の構成を示した断面図である。
【図2】本発明の他の一実施形態に係る光反射板の構成を示した断面図である。
【図3】本発明のさらに他の一実施形態に係る光反射板の構成を示した断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る光反射板を用いた照明器具を示した、(a)断面図、(b)一部破断した斜視図、(c)下面図、(d)斜視図である。
【図5】本発明の他の一実施形態に係る光反射板を用いた照明器具を示した斜視図である。
【図6】従来例に係る光反射板の構成を示した断面図である。
【符号の説明】
1 トップコート
2 基材
3 高輝性光反射膜
4 樹脂基材
5 アンダーコート
6 照明具本体
7 光源
8 光反射板
Claims (5)
- 光源に対向設置される面に、銀もしくは銀合金からなる高輝性光反射膜が形成された光反射板において、少なくとも上記光源が設置された位置より上の部分に位置する基材が、低融点金属及び金属粉末、または金属繊維、または金属粉末と金属繊維の混合物を50〜70体積パーセント含有する熱可塑性樹脂組成物によって形成されたものであることを特徴とする光反射板。
- 上記基材表面の上記光源に対向設置される面に、アンダーコートが形成され、このアンダーコートの上に上記高輝性光反射膜が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の光反射板。
- 上記高輝性光反射膜が形成されている面の裏面側で上記基材の下に、同基材を形成している熱可塑性樹脂組成物とは異なり、上記熱可塑性樹脂組成物よりも、衝撃強度の高い樹脂基材が積層されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光反射板。
- 上記高輝性光反射膜の上に透明樹脂のトップコートが形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3何れか記載の光反射板。
- 請求項1ないし請求項4何れか記載の光反射板を用いて、照明具本体内に光源とともに配設してなることを特徴とする照明器具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17926999A JP3783472B2 (ja) | 1999-06-25 | 1999-06-25 | 光反射板、および、この光反射板を用いた照明器具 |
Applications Claiming Priority (1)
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