JP3781988B2 - 電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LSI等の、半導体デバイスの不良原因を調査するために使用する電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法に関するものであり、特に、非常に小さな観察領域を有する電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、微細化が進む半導体プロセスにおいて、半導体デバイスの不良部分を特定するために、電子顕微鏡を用いて、試料を観察および分析する技術が重要になってきている。例えば、透過型電子顕微鏡で試料を観察する場合には、試料を薄片化する必要がある。
【0003】
上記の電子顕微鏡観察用の試料の製造方法としては、特許公報第2754301号に述べられている方法が挙げられる。以下に、電子顕微鏡観察用の試料の製造方法について説明する。
【0004】
まず、図4(a)に示すように、高速回転外周刃加工装置(図中には外周刃2のみを示している;ダイシング装置)を用いて、試料10から観察する特定の領域を含んだ試料11を切り出す(第1工程)。このとき、試料11の切り出し幅iは、電子顕微鏡に装着可能な寸法に設定される。また、ダイシング装置の刃2の厚さが切りしろ幅jとなる。
【0005】
次に、試料11と残りの試料12・13とを熱溶解性のワックスが塗布されている加工用ステージ(図示せず)に載置する。そして、加工用ステージを加熱してワックスを溶かし、試料11と試料12および試料13との微小な隙間に、ワックスを回り込ませることにより、試料11、試料12および13を固定する(第2工程)。
【0006】
上記試料11、試料12および13を固定する際、図4(b)に示すように、試料11と試料12および試料13との隙間j’は、切りしろ幅j(図4(a)参照)よりも狭くする。上記隙間j’を切りしろ幅jよりも狭くすることで、以後、試料11の加工を行う際、試料11が傾かないようにしっかりと固定することができる。
【0007】
次に、図4(b)に示すように、試料11の長手方向に対する断面が凸状になるように、試料11の表層部のみを薄く加工する。具体的には、断面凸状の凸部が、幅kで深さlになるように試料11の表層部を切削する(第3工程)。
【0008】
次に、図4(c)に示すように、試料11を電子顕微鏡での観察が可能な大きさになるように、ダイシング装置を用いて、第1工程で行った切断の方向に対して直角な方向で切断する(第4工程)。
【0009】
次に、図4(d)に示すように、収束イオンビーム14を試料11の長手方向に走査させ、観察が必要な特定部分の厚さが幅mになるようにさらに薄くする。(第5工程)。具体的には、断面が凸状になった試料11の凸部の断面が、さらに凸状となるようにエッチングすることにより、観察が必要である特定部分の厚さを薄くすることができる。
【0010】
このようにして製造された試料11を用いて、図4(e)に示すように、電子顕微鏡で観察が必要な特定部分に電子線15を透過させることによって観察を行う。
【0011】
以上のように、第1〜第5工程により、電子顕微鏡観察用の試料が製造される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許公報第2754301号の方法では、試料を固定する際にワックスを必要としている。すなわち、ダイシング装置を用いて電子顕微鏡観察用の試料片を試料から切断する際、観察する部分を含んだ試料片がダイシング装置の刃による加工中に飛散して破断しないようにワックス等のサポート材で試料片を固定する必要がある。上記サポート材としては、試料から試料片を取り除いた残りの試料や、ワックス等が挙げられる。
【0013】
通常、試料片を固定するために使用するワックスは、熱溶解性である。このため、試料を固定させるためには、ワックスに熱を加えて溶かし、試料の周囲にワックスを回り込ませなければならない。また、ダイシング装置の刃による加工が終了した後、試料片をサポート材(試料の周囲にある残りの試料)から分離するためには、再び熱を加えてワックスを溶かさなければならない。
【0014】
上記試料片の固定に使用される熱溶解性のワックスの溶融温度は、一般的には150℃程度である。一方、例えば、CCD(電荷結合素子)デバイスに用いられるカラーフィルタや、アクリル樹脂で作成されているレンズは、135℃以上で変質や軟化を引き起こす。従って、上記のような熱に弱い試料から試料片を、従来の製造方法で製造することは困難であるという問題点が生じる。
【0015】
また、上記従来の製造方法では、試料片をサポート材から分離した後、試料片に付着しているワックスを、洗浄用の溶剤で取り去る必要がある。従って、上記従来の製造方法では、溶剤に弱い試料から試料片を製造することは困難であるという問題点も生じる。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、熱や溶剤に弱い試料から電子顕微鏡観察用の試料片を容易に製造することができる電子顕微鏡観察用の試料の製造方法を提供するものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法(本製造方法)は、上記の課題を解決するために、電子顕微鏡観察が必要な観察領域を有する試料から電子顕微鏡観察用の試料片を製造する電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法であって、上記観察領域の周囲に第一の溝を切削加工によって形成する工程と、上記第一の溝で囲まれた部分の上側表面を切削加工によって整形する整形工程と、上記整形工程の後に、上記第一の溝の溝幅を広げる工程と、上記第一の溝で囲まれた部分を試料から取り離す分離工程とを含み、上記分離工程は、溝幅が拡張された上記第一の溝に剛体を挿入して、上記剛体と第一の溝とが当接している部分を押す工程を含むことを特徴としている。
【0018】
本製造方法では、観察領域の周囲に溝を形成した後、溝に囲まれた部分を取り離すことにより試料片を製造している。つまり、例えば、高速回転外周刃加工装置(ダイシング装置)を用いて、試料を切削加工(溝の形成)する際には、試料片は、試料から取り離されていない。
【0019】
従って、従来のようにワックス等で試料片を固定する必要がない。つまり、ワックスを加熱して試料片を固定する必要がないので、熱に弱い試料から試料片を容易に製造することができる。さらに、ワックスを用いて固定する必要がないので、ワックスを取り除くために溶剤を使用する必要もない。これにより、溶剤に弱い試料から試料片を容易に製造することができる。
【0020】
また、既存の装置で試料片を製造することができ、従来のように試料をワックス等で固定する必要がないので、より簡単に電子顕微鏡観察用の試料片を製造することができる。
【0021】
また、電子顕微鏡の構造上、電子顕微鏡観察用の試料片は微小である。つまり、溝で囲まれた領域は微小であるため、例えば、静的に力を加えることにより、溝に囲まれた領域を取り離すことができる。
【0022】
本製造方法は、上記の課題を解決するために、さらに、高速回転外周刃加工装置を用いて上記切削加工を行う構成であってもよい。
【0023】
高速回転外周刃加工装置(ダイシング装置)は、高速かつ高精度で切削加工を行うことができるので、微細な切削加工が必要とされる溝の形成を、的確かつ短時間で行うことができる。
【0024】
また、上記第一の溝は、互いに平行な溝であり、上記第一の溝に交わるように、互いに平行な第二の溝を形成する工程を含む構成であってもよい。
【0025】
上記の構成によれば、ダイシング装置を用いて、第一の溝および第二の溝を形成している。ダイシング装置は、その構造上、直線の溝を簡単に作ることができるので、より簡単に溝を形成することができる。
【0026】
本製造方法は、上記の課題を解決するために、さらに、上記分離工程は、上記溝に剛体を挿入して、剛体と溝とが当接している部分を溝で囲まれた部分側に押すことで、試料から取り離す構成であってもよい。
【0027】
上記の構成によれば、剛体の、溝と当接している部分を溝で囲まれた部分側(試料片側)に押すことによって試料片を試料から取り離すので、試料片の分離を静的に行うことができる。よって、分離の際に、試料片が飛散するというような不具合を防止することができる。
【0028】
本製造方法は、上記の問題を解決するために、上記剛体を挿入する前に上記第一の溝の幅を拡張する工程を行うものである。
【0029】
上記の構成によれば、剛体の大きさに応じて溝幅を変えることができるので、例えば、剛体に力を加えることに都合のよい溝幅に設定することが可能である。
【0030】
本製造方法は、上記の課題を解決するために、さらに、上記溝で囲まれた部分をエッチング加工によって薄片化するエッチング工程を含む構成であってもよい。
【0031】
電子顕微鏡を用いて試料片を観察するには、試料片の観察領域を薄片化する必要がある。エッチング加工は、微細な加工に好適である。従って、エッチング加工することにより、観察領域の薄片化が容易になる。
【0032】
本製造方法は、上記の課題を解決するために、さらに、上記分離工程の前に、上記第一の溝と上記第二の溝とで囲まれた部分、または上記第一の溝で囲まれた部分を切削加工によって整形する整形工程を行うものである。
【0033】
エッチング加工は、微細な加工を行うことが可能であるが、大面積を加工するには、切削加工に比べ時間がかかるため、不向きである。従って、微細な加工を行う面積を少なくすることが好ましい。上記の構成によれば、上記溝で囲まれた部分を切削加工によって整形しているので、エッチング加工を行う面積を少なくすることができる。従って、試料片の製造時間を短縮することができる。
【0034】
本製造方法は、上記の課題を解決するために、さらに、上記整形工程は、上記第一の溝と上記第二の溝とで囲まれた部分、または上記第一の溝で囲まれた部分を断面略L字状に切削加工する工程である構成であってもよい。
【0035】
上記の構成によれば、囲まれた部分を断面略L字状に切削加工することは、他の断面形状(例えば、凸形状)に比べ、加工が簡単である。従って、整形工程を容易に行うことができ、かつ、短時間で加工することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0037】
以下に、試料が直方体の場合における、試料片の製造方法について説明する。しかし、試料の形状については、特に限定するものではない。
【0038】
また、試料としては、例えば、顕微鏡観察を行う部分が熱や溶剤に弱い試料や、CCDデバイス、CMOSイメージャ等が挙げられる。
【0039】
また、以下の説明で、高さ方向とは、試料を高速回転外周刃加工装置に載置する際、載置面に対して垂直な方向を示す。
【0040】
先ず、図1(a)に示すように、予め電子顕微鏡観察を必要とする観察部分2を含む試料1を、高倍率の光学顕微鏡を装備した高速回転外周刃加工装置(図示せず;ダイシング装置)にセット(載置)する。そして、試料1の所定の方向に第一の溝4a・4bを切削加工により形成する(第1工程)。第一の溝4a・4bに囲まれた部分を凸部3と称する。該凸部3は、観察部分2を含んでおり、凸部3の幅aは、電子顕微鏡に装着可能な寸法に設定されている。また、第一の溝4a・4bの深さは、試料1に一定の切り残し厚さ(試料の底面から溝の底面までの厚さ)bが残るように形成される。
【0041】
上記第一の溝4aと第一の溝4bとは互いに平行になっている。また、上記第一の溝4a・4bの溝幅は、ダイシング装置の刃の厚さであり、特に限定されるものではない。上記ダイシング装置の刃の厚さは、例えば、45μmである。また、試料1の厚さ(高さ方向)b’が700μmである場合、上記第一の溝4a・4bの深さは、例えば、600μmである。上記第一の溝4a・4bの深さとしては、後述する第5工程において、凸部3が試料1から容易に取り離せる深さであればよく、特に限定されるものではない。
【0042】
上記凸部3の幅aは、例えば、90μmである。しかし、上記幅aは、製造される試料片6(図1(e)参照)が、電子顕微鏡の支持台8(図3参照)に載置できれば特に限定されるものではない。また、切り残し厚さbは、例えば、100μmである。しかし、切り残し厚さbは、通常、試料1の厚さb’の15〜50%程度であればよい。
【0043】
また、上記凸部3の幅aおよび切り残し厚さbは、ダイシング装置による切削加工により凸部3が飛んで破壊されない程度に厚い方がより好ましいが、特に限定されるものではなく、電子顕微鏡の支持台8(図3参照)の形状や、凸部3が容易に加工できる厚さを考慮して適宜選択すればよい。しかし、切り残し厚さbは、凸部3を切削加工する際に、試料1が破壊されない(切り残し厚さbの部分で試料1が割れない)程度で、かつ、試料1から取り離された試料片6(図1(e)参照)が取り扱い易い程度の厚さであることが好ましいが、該凸部3が後述する第5工程で試料1から容易に取り離せるようになっていなければならない。この点を考慮して切り残し厚さbを決定すればよい。
【0044】
次に、図1(b)に示すように、凸部3の観察部分2を含んでいる表面(表層部)をダイシング装置を用いて、幅(第一の溝4a・4bを形成した方向に対して直角な方向;直交方向)c、深さ(高さ方向)dで切削加工して、凸部3の直交方向の断面を略L字状にする(第2工程)。
【0045】
従って、凸部3の突起部は、第一の溝4a・4bと平行な方向に形成される。また、凸部3の突起部には、観察部分2が含まれている。上記幅cおよび深さdとしては、例えば、60μmおよび30μmである。
【0046】
次に、図1(c)に示すように、第1工程において形成した第一の溝4a・4bの溝幅を、ダイシング装置を用いて、凸部3の幅が変わらないように広げる(第3工程)。つまり、凸部3側とは、反対側の壁を切削する。このとき、切り残し厚さbは変化させない。
【0047】
具体的には、第一の溝4aを溝幅eに広げ、第一の溝4bを溝幅e’に広げる。溝幅eおよび溝幅e’としては、例えば600μmおよび300μmである。上記溝幅eは、特に限定されるものではないが、後述する第5工程において、鋼製のスペーサ(剛体)が挿入できる程度の幅であればよく、溝幅を広げるために要する時間等を考慮して決定される。また溝幅e’は、後述する第5工程において、第一の溝4aに鋼製のスペーサを挿入して、凸部3を試料1から取り離す際に、凸部3が第一の溝4b側に倒れることができればよく、溝幅を広げために要する時間等を考慮して、第一の溝4bの深さより、約50%以上広くなるようにすればよい。
【0048】
本実施の形態では、第一の溝4a・4bを形成した後、凸部3の表面を切削して、その後、第一の溝4a・4bの溝幅を広げている。つまり、第一の溝4a・4bを2回に分けて形成することにより、試料の表面が剥がれることを防止することができる。
【0049】
次に、図1(d)に示すように、第1工程において形成した第一の溝4a・4bに直交して、凸部3の幅f(第一の溝4a・4bの形成方向の幅)が電子顕微鏡に装着可能な幅になるように、切り残し厚さbで、試料1に第二の溝5a・5bを形成する(第4工程)。上記幅fとしては、例えば、120μmである。
【0050】
次に、図2に示すように、第一の溝4aに図示しない長板状の鋼製のスペーサ(剛体)を挿入して、スペーサを第一の溝4aの底部に当接させ、該スペーサの底部に当接している部分を凸部3の方向へ押す。具体的には、第一の溝4aにスペーサを挿入した後、該スペーサの底部に当接している部分を支点にして、スペーサを凸部3の方向へ倒す。これにより、凸部3は、第一の溝4bの方向に押され、第一の溝4aと第一の溝4bとの底部を結んだ直線(図中破線で示す)を境に切断される。これは、スペーサが凸部3を第一の溝4b側に押すことにより、凸部3にかかる力が第二の溝5a・5bを形成した方向に集中してかかるため、同図の破線を境に凸部3が切断される。このとき、試料1としては、例えば、CCDデバイスやCMOSイメージャ等のものを想定しており、上記方法によって、凸部3を試料1から取り離すことができる。なお、試料1としては、CCDデバイスやCMOSイメージャに限定されるものではなく、上記方法によって、凸部3を試料1から取り離すことができるものであればよい。
【0051】
また、凸部3は、微小であるため、例えば、静的に力を加える(スペーサで押す)ことによって、上記溝で囲まれた凸部3を取り離すことができる。従って、切削加工せずに凸部3を試料1から取り離すことができるので、凸部3が飛散することがない。
【0052】
そして、凸部3が第一の溝4b側に倒れ、試料1から取り離されることによって得られた試料片6を、試料1から取り離す(第5工程)。つまり、凸部3が試料1から取り離されることにより、試料片6が形成される。また、図1(e)に示すように、第5工程により、試料1から取り離された試料片6は、断面が略L字状になっており、試料片6の突起部には、観察部分2が含まれている。
【0053】
次に、図1(f)に示すように、試料1(図示せず)から取り離された試料片6の突起部の上面を収束イオンビーム加工装置(図示せず)により、観察部分2の、実際に電子顕微鏡で観察を行う観察領域7を残し、突起部の上面を断面略凸字状にエッチング(薄片化)する(第6工程)。該断面略凸字状の突起部の厚さhは例えば、0.4μmである。上記第6工程は、既に公知であり、詳細な説明は省略する。
【0054】
このように第1〜第6工程を行うことにより、電子顕微鏡観察用の試料片6が製造される。
【0055】
そして、図3に示すように、第6工程の後、試料片6を、電子顕微鏡のメッシュと呼ばれる支持台8に載置する。そして、該試料片6が載置された支持台8を電子顕微鏡の試料ステージ(図示せず)に載せて観察領域7を観察する。
【0056】
以上のように、本実施の形態にかかる電子顕微鏡観察用の試料片6の製造方法(本製造方法)は、電子顕微鏡観察が必要な観察領域7を有する試料1から電子顕微鏡観察用の試料片6を製造する電子顕微鏡観察用の試料片6の製造方法であって、上記観察領域7の周囲に溝を切削加工によって形成する切削工程と、上記溝で囲まれた部分を試料1から取り離す分離工程とを含む構成である。
【0057】
上記の構成によれば、試料片6は、例えば、ダイシング装置の刃による加工の際、試料1から取り離されていないので、従来のようにワックス等で試料片6を固定する必要がない。これにより、試料片6を固定するために熱を加える必要がないので、熱に弱い試料1から試料片6を容易に製造することができる。さらに、ワックスを使用していないので、ワックスを取り除くために溶剤を使用する必要もない。これにより、溶剤に弱い試料1から試料片6を容易に製造することができる。
【0058】
また、既存の装置で試料片6を加工することができ、従来のように試料片6を固定する必要がないので、より簡単に電子顕微鏡観察用の試料片6を製造することができる。
【0059】
また、電子顕微鏡の構造上、電子顕微鏡観察用の試料片は微小である。つまり、溝で囲まれた領域は微小であるため、例えば、静的に力を加えることにより、溝に囲まれた領域を取り離すことができる。
【0060】
本製造方法は、電子顕微鏡に装着可能な大きさで、観察領域7を含む試料片6を島状に残すように、互いに平行な第一の溝4a・4bを形成する工程(第1工程)と、上記島状の試料片6を断面略L字状に切削する工程(第2工程)と、上記第一の溝4a・4bの溝幅e・e’を拡張する工程(第3工程)と、上記第一の溝4a・4bに交わるように、互いに平行な第二の溝5a・5bを形成する工程(第4工程)と、上記溝で囲まれており、かつ、観察領域7を含む部分を、上記試料1から取り離す工程(第5工程)とを含む構成であってもよい。
【0061】
上記第1〜第5工程を行うことにより、試料片6は、試料1の底部から100μm程度の切り残し厚さbを残して切削される。つまり、ダイシング装置を用いて試料1を加工する際、観察領域7を含む試料片6は、試料1から取り離されていない。従って、従来のように熱可溶性のワックス等のサポート材を使用することなく、試料片6を製造することができる。また、試料片6は、試料1から取り離されていないので、試料1をダイシング装置を用いて加工する際、飛散したり、ダイシング装置の刃によって破壊されたりすることがない。
【0062】
また、上記の構成によれば、熱や溶剤に弱い試料の電子顕微鏡観察用の試料片6を比較的簡単な方法によって製造することができる。従って、例えば、熱や溶剤に弱い試料1から試料片6を簡単に製造することができ、特定の観察領域7を精度よく薄片化することができる。これにより、例えば、CCDデバイスに使用されているアクリル樹脂の材質の違いを判別することや、微小異物の観察を行うことができる。
【0063】
また、ダイシング装置による加工方向を何度も変える必要がない。これにより、さらに簡単に電子顕微鏡観察用の試料片6を作成することができる。
【0064】
本製造方法は、さらに、高速回転外周刃加工装置を用いて上記切削加工を行う構成であってもよい。
【0065】
上記の構成によれば、高速回転外周刃加工装置は、高速かつ高精度で切削加工を行うことができるので、微細な切削加工が必要とされる溝の形成を、的確かつ短時間で行うことができる。
【0066】
本製造方法は、さらに、上記切削工程は、互いに平行な第一の溝4a・4bを形成する工程と、上記第一の溝4a・4bに交わるように、互いに平行な第二の溝5a・5bを形成する工程とを含む構成であってもよい。
【0067】
上記の構成によれば、ダイシング装置を用いて、第一の溝4a・4bおよび第二の溝5a・5bを形成している。ダイシング装置は、その構造上、直線の溝を簡単に作ることができるので、より簡単に溝を形成することができる。
【0068】
本製造方法は、さらに、上記分離工程は、上記溝に剛体を挿入して、剛体と溝とが当接している部分を試料片6側に押すことで、試料から取り離す構成であってもよい。
【0069】
上記の構成によれば、剛体の、溝と当接している部分を溝で囲まれた部分側(試料片側)に押すことによって試料片6を試料から取り離すので、試料片6の分離を静的に行うことができる。よって、分離の際に、試料片6が飛散するというような不具合を防止することができる。
【0070】
本製造方法は、さらに、上記剛体を挿入する前に上記溝の幅を拡張する工程を行う構成を含む。
【0071】
上記の構成によれば、剛体の大きさに応じて溝幅を変えることができるので、例えば、剛体に力を加えることに都合のよい溝幅に設定することが可能である。
【0072】
本製造方法は、さらに、上記溝で囲まれた部分をエッチング加工によって薄片化するエッチング工程を含む構成であってもよい。
【0073】
従って、エッチング加工することにより、観察領域7をより微細に加工することができるので、観察領域7の薄片化が容易になる。
【0074】
本製造方法は、さらに、上記分離工程の前に、上記溝で囲まれた部分を切削加工によって整形する整形工程を行う構成を含む。
【0075】
上記の構成によれば、上記溝で囲まれた部分を切削加工によって整形しているので、エッチング加工を行う面積を少なくすることができる。従って、エッチング加工を好適に行うことができるので、試料片6の製造時間を短縮することができる。
【0076】
本製造方法は、さらに、上記整形工程は、溝で囲まれた部分を断面略L字状に切削加工する工程である構成であってもよい。
【0077】
上記の構成によれば、溝で囲まれた部分を断面略L字状に切削加工することは、他の断面形状(例えば、凸形状)に比べ、加工が簡単である。従って、整形工程を容易に行うことができ、かつ、短時間で加工することができる。
【0078】
なお、実施の形態の第2工程において、凸部3を断面略L字状に形成しているが、これは、以後の第6工程で行うエッチングの面積を少なくするためであり、凸部3の断面形状としては、特に限定されるものではない。凸部3の断面形状としては、例えば、断面略凸字状としてもよい。しかし、上記凸部3の断面形状を略L字状に形成する場合は、断面形状を凸字状にする場合に比べ、切削工程を1回で行うことができ、より好ましい。
【0079】
また、上記第5工程において、凸部3を試料1から取り離す方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、凸部3の観察部分2を含む面に対して側面側の全体を金属板で挟み、凸部3を任意の方向に押し倒すことによっても、凸部3を試料1から取り離すことができる。
【0080】
また、第6工程では、試料片6の突起部を断面略凸字状にエッチングしているが、エッチングの形状としては特に限定されるものではなく、例えば、断面略L字状に形成してもよい。しかし、試料片6の突起部を断面略凸字状にエッチングする場合は、試料片6の突起部を断面略L字状に形成する場合に比べて、観察領域7をより厳密に決めることができる。
【0081】
また、高速回転外周刃加工装置(ダイシング装置)としては、特に限定されるものではないが、精密加工をするためには、光学顕微鏡を備えた高速回転外周刃加工装置(特開平4−322442号公報参照)を用いることがより好ましい。
【0082】
また、ダイシング装置の刃の厚さとしては、10μm〜200μm程度であればよく、特に限定されるものではない。
【0083】
また、上記第5工程では、鋼製のスペーサを用いて凸部3を試料1から取り離しているが取り離すものとしては、剛体(試料1よりも硬いもの)であり、溝に挿入できる形状および厚さであれば、特に限定されるものではなく、例えば、カッターナイフの刃等が挙げられる。
【0084】
また、本実施の形態では、試料片6は、第1の溝4a・4bおよび第二の溝5a・5bで囲まれているが、溝の本数については、特に限定されるものではない。例えば、3本の溝で囲まれている試料の表面が三角形の試料片を製造しても何ら問題はない。従って、試料片6の形状としては、特に限定されるものではない。
【0085】
また、本実施の形態にかかる製造方法を用いることによって、熱や溶剤に弱い試料を容易に製造することができる。しかし、試料としては、熱や溶剤に弱い試料に限定されるものではなく、種々の試料を用いることができる。
【0086】
また、本製造方法は、電子顕微鏡観察が必要な試料に対して、光学顕微鏡を装備した高速回転外周刃装置にて前記光学顕微鏡を観察しながら電子顕微鏡に装着可能な大きさに試料を底面まで完全に切断せず、切り残しを残して第1の溝を形成し観察領域を含む試片(試料片)を島状に残すように切削加工する工程と、前記切削加工した試片の断面をL字状に加工する工程と、前記第1の溝の底面の切り残しを維持しながら、第1の溝幅より広い第2の溝を切削加工して形成する工程と、前記第2の溝に直交するように試料の底面まで完全に切断せず、切り残しを残して新たに第3の溝を形成する工程と、前記試片を折り曲げて試料から取り離す工程と、前記紙片の前記L字状の上面をさらに凸字形状に薄片化する工程とを含む構成であってもよい。
【0087】
【発明の効果】
本発明の電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法(本製造方法)は、以上のように、電子顕微鏡観察が必要な観察領域を有する試料から電子顕微鏡観察用の試料片を製造する電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法であって、上記観察領域の周囲に第一の溝を切削加工に よって形成する工程と、上記第一の溝で囲まれた部分の上側表面を切削加工によって整形する整形工程と、上記整形工程の後に、上記第一の溝の溝幅を広げる工程と、上記第一の溝で囲まれた部分を試料から取り離す分離工程とを含み、上記分離工程は、溝幅が拡張された上記第一の溝に剛体を挿入して、上記剛体と第一の溝とが当接している部分を押す工程を含む構成である。
【0088】
試料片は、切削加工の際、試料から取り離されていないので、従来のようにワックス等で試料片を固定する必要がない。つまり、ワックスを加熱して試料片を固定する必要がないので、熱に弱い試料から試料片を容易に製造することができる。さらに、ワックスを使用していないので、ワックスを取り除くために溶剤を使用する必要もない。これにより、溶剤に弱い試料から試料片を容易に製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態における電子顕微鏡観察用の試料片の製造工程を順に説明する説明図である。
【図2】 突起部を試料から取り離す位置を説明する試料の断面図である。
【図3】 電子顕微鏡のメッシュと呼ばれる支持台に試料片を載せている状態を説明する斜視図である。
【図4】 従来の電子顕微鏡観察用の試料片の製造工程を順に説明する説明図である。
【符号の説明】
1 試料
2 観察部分
3 凸部
4a 第一の溝
4b 第一の溝
5a 第二の溝
5b 第二の溝
6 試料片
7 観察領域
Claims (7)
- 電子顕微鏡観察が必要な観察領域を有する試料から電子顕微鏡観察用の試料片を製造する電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法であって、
上記観察領域の周囲に第一の溝を切削加工によって形成する工程と、
上記第一の溝で囲まれた部分の上側表面を切削加工によって整形する整形工程と、
上記整形工程の後に、上記第一の溝の溝幅を広げる工程と、
上記第一の溝で囲まれた部分を試料から取り離す分離工程とを含み、
上記分離工程は、溝幅が拡張された上記第一の溝に剛体を挿入して、上記剛体と第一の溝とが当接している部分を押す工程を含むことを特徴とする電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法。 - 高速回転外周刃加工装置を用いて上記切削加工を行うことを特徴とする請求項1記載の電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法。
- 上記分離工程は、上記剛体と上記第一の溝とが当接している部分を第一の溝で囲まれた部分側に押すことで、試料から取り離すことを特徴とする請求項1または2に記載の電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法。
- 上記分離工程は、上記観察領域を含む面に対して側面となる面の全体を剛体で挟み、該剛体で挟まれた部分を任意の方向に押し倒すことによって上記試料から取り離すことを特徴とする請求項1または2に記載の電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法。
- 上記第一の溝は、互いに平行な溝であり、
上記第一の溝に交わるように、互いに平行な第二の溝を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法。 - 上記第一の溝と上記第二の溝とで囲まれた部分、または上記第一の溝で囲まれた部分をエッチング加工によって薄片化するエッチング工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法。
- 上記整形工程は、上記第一の溝と上記第二の溝とで囲まれた部分、または上記第一の溝で囲まれた部分を断面略L字状に切削加工する工程であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子顕微鏡観察用の試料片の製造方法。
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