JP3781904B2 - トリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばね - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばねに関するるものである。
【０００２】
【従来の技術】
液体を噴霧，噴射，噴泡等させる合成樹脂製のトリガー式液体噴出器は既に周知である。
このトリガー式液体噴出器は、通常、側面形状が逆Ｌ字状の噴出器本体の先端にノズルを設け、その噴出器本体の前部からトリガーを前後動可能に垂設し、その噴出器本体の内部に該トリガーで作動される往復ポンプを内蔵し、該往復ポンプにはトリガー共々復帰動させる復帰用の金属製コイルスプリングを内装し、かつ、その噴出器本体の外側にカバーを被着している。また、その噴出器本体の下端に装着筒と吸い上げパイプとを備えて、該装着筒により液体を収容した容器体の口頸部へと装着するとともに、吸い上げパイプをその容器体内へと挿入させるようにしている。しかして、トリガーを操作して往復ポンプを作動させることにより、容器体内の液体を吸い上げてはノズルから噴霧，噴射，噴泡等、適宜に噴出させる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
近時、廃棄物の増大に伴って廃棄物を資源として再活用することが求められてきており、往復ポンプにおける復帰用のスプリングも合成樹脂製とすることが試みられ、実用化されつつある。
本発明は、その一環として、上記往復ポンプにおける復帰用のスプリングを、簡便かつ強力な合成樹脂製の板ばねとするものである。合成樹脂製の板ばねは既に多種のものが提案されているが、バネ定数を各部一定とすると、固定部近傍に内部応力が集中し、設計時の設定使用回数を上まわると、疲労折損の可能性が生ずるし、内部応力の概ね均一な分散を図るため、バネ常数を連続的変化させると、必要とされるバネ弾性が得られないとか、あるいは不必要に大きな作動力を要する等の問題がある。
このため本発明は、主板ばねの弾性変形軌跡を、一定の接線を共有し、連続的に縮径される円弧軌跡とすることにより内部応力の集中を防ぎ、原形への復帰時のバネ弾性の不足を準定荷重ばねの反発弾性で補いうるようにし、その操作の感触をソフトで腰の強いものにしようとすると共に、復帰ばねの組み付け、固定を容易かつ確実なものとすることを課題としている。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
上記目的のため、請求項１の発明は、側面形状が逆Ｌ字状の噴出器本体の先端にノズルを設け、その噴出器本体の前部からトリガーを前後動可能に垂設し、その噴出器本体の内部に該トリガーで作動される往復ポンプを内蔵して成るトリガー式液体噴出器において、上記噴出器本体の上面に付設した水平基板の前部両側から往復ポンプ内のプランジャ復動用のばね片が一体に垂設され、該ばね片は、プランジャに対し、ノズル側たる外側に位置し、縦断面が略円弧状の主板ばねとプランジャ側に位置し、縦断面が略定荷重板ばねを構成する副板ばねとが上下で一体に結合されており、主板ばねの弾性変形軌跡は、前記水平基板の頂壁面内に接線を有する円弧軌跡に概ね合致させられているという構成とした。
【０００５】
請求項２の発明では、左右のばね片の水平基板と噴出器本体の上面との間の結合を、前後に設けた受座と嵌合固定手段とによる結合とすると共に、ばね片の下端をトリガーのポケットへ係合させるのみでばね片とトリガーとの組み付けが完了するようにし、組立作業の容易化と係合，固定の確実化を図りうる構成とした。
【０００６】
請求項３の発明では、射出筒の前端に嵌着した筒先部材の上面と、射出筒の後部上面とに、ばね片の水平基板の受支固定部分を設けることにより組立作業の容易化と迅速化とを図りうる構成とした。
【０００７】
請求項４の発明では、射出筒の前端に嵌着される筒先部材と水平基板の前部とを一体に成形し連接することにより、組立工程の省略による作業の能率化を図りうる構成とした。
【０００８】
請求項５の発明では、副板ばねと水平基板との連続部に、トリガーの軸承部を形成し、主板ばねと副板ばねとの下端の結合部をトリガーとの係合部とすることにより、ばね片部材の特性を損なうことなく、ばね片とトリガーとを組み付けうる構成とした。
【０００９】
【発明の実施の形態】
図面は、請求項１，請求項２，請求項３および請求項５の各発明を併せ適用したトリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばねに係る実施の形態を示している。
図において、１は側面形状が逆Ｌ字状の噴出器本体、２は該噴出器本体の先端に設けた噴霧，噴射，噴泡に切り換え得るノズル、３は噴出器本体の前部から前後動可能に垂設したトリガー、４は該トリガーでプランジャ５が作動される噴出器本体内蔵の往復ポンプ、６は噴出器本体の上面ないしトリガーの外側に装着した合成樹脂製の復帰ばねで、トリガーおよび往復ポンプのプランジャを前方へと付勢している。７は噴出器本体の下端に回転自在に装着した内ねじ螺筒の装着筒、８は該装着筒の内側で噴出器本体の下端から垂設した吸い上げパイプ、９は噴出器本体の外側に被着したカバーであり、これらは合成樹脂による成形部材から成るものである。
【００１０】
噴出器本体１は、合成樹脂成形の便宜上から上部の射出筒１０の前端に筒先部材１１を嵌着し、該筒先部材の先端に上記ノズル２を装着している。
噴出器本体１の上面の前部と後部すなわち上記筒先部材１１の上面と上記射出筒１０の後部上面に、合成樹脂製板ばねから成る上記復帰ばね６の水平基板１２を受ける受座１３，１４を形成しており、前部の受座１３を上記筒先部材１１の上面に一体に付設した小幅の水平片１５から形成し、後部の受座１４をその水平片１５の幅より広い間隔で平行する２条の前後方向の突条１６から形成している。
【００１１】
復帰ばね６は、合成樹脂製板ばねに属するものであり、上記前後の受座１３，１４に架設する水平基板１２を設けて、該水平基板の前部と後部を各々前後の受座１３，１４へと着座させ、そして水平基板１２は、頂壁１７の両縁からリブ１８，１９を垂設したものとして、前端部を前部の受座１３すなわち小幅の水平片１５に対応する小幅に、それ以外を後部の受座１４すなわち２条の突条１６間に対応する広幅に形成して、その頂壁１７の前部と後部をそれぞれ上記水平片１５と２条の突条１６に載置させると共に、両側のリブ１８，１９をそれぞれの水平片１５と２条の突条１６の外側へ嵌合させている。また、水平基板１２の後部では、頂壁１７の下面にて上記両縁のリブ１９の内側に更に２条のリブ２０を並設してそれぞれ上記２条の突条１６の内側へ嵌合させている。
【００１２】
前後の受座１３，１４と水平基板１２との間には、それぞれ嵌合固定手段２１，２２を講じており、前部の嵌合固定手段２１は、水平基板前端部両縁のリブ１８の前部内縁にそれぞれ係合爪２３を設けて、両係合爪２３を上記水平片１５の両縁へ抱着係合させ、かつ、水平基板頂壁１７の前部に第１の窓孔２４を穿設すると共に、その水平片１５の上面適所に第１の係止爪２５を突設して、該第１の係止爪２５をその第１の窓孔２４の前縁に係合させて成る。また、後部の嵌合固定手段２２は、その後部の受座１４の後端にて噴出器本体１すなわち上記射出筒１０の上面から前方へ抑止片２６を突設して、該抑止片２６により水平基板頂壁１７の後端部を押え、かつ該抑止片２６に第２の窓孔２７を穿設すると共に、水平基板頂壁１７の後端部の上面適所に第２の係止爪２８を突設して、該第２の係止爪２８をその第２の窓孔２７の前縁に係合させているが、かかる係合構造に限定されるものではない。
【００１３】
水平基板１２の前部両側からは、左右一対の合成樹脂製のばね片２９を垂設してそれぞれ下端３０をトリガー３の両側面中途部に設けた上向きのポケット３１へ機械的に上方から出入摺動自在に嵌挿連繋させており、左右一対のばね片２９は、それぞれノズル側たる前位置に配した主板ばね３２とプランジャ側たる後位置に配した副板ばね３３から形成し、下端３０で一つにしている。また、両副板ばね３３の水平基板との連続部たる基端部には、後方に面して開口するＣ字状の凹部を形成することで左右一対の軸受３４を設けており、該軸受にトリガー３の二叉状の両上端部３５をこれらに突設させた片持部３６にて枢着することで前後動可能に垂設している。
【００１４】
しかして、復帰ばね６の水平基板１２を噴出器本体１上面の前部と後部すなわち筒先部材１１の上面と射出筒１０の後部上面に組み付けるときは、まず復帰ばね６の水平基板１２の後部を、その噴出器本体１の前方やや斜め上から後部の嵌合固定手段２２たる抑止片２６の下へ差し込んで、水平基板頂壁１７後端部の第２の係止爪２８をその抑止片２６の第２の窓孔２７の前縁へ係合させると共に、射出筒１０上面の後部の受座１４すなわち２条の突条１６へと着座させ、次いで、その水平基板１２を押し下げて、水平基板１２の前部を、筒先部材１１上面の前部の受座１３すなわち水平片１５に着座させると同時に、前部の嵌合固定手段２１たる水平基板前端部両縁のリブ１８の各係合爪２３をその水平片１５の両縁へ抱着係合させ、かつ、水平基板頂壁１７前部の第１の窓孔２４の前縁をその水平片１５上面の第１の係止爪２５へと係合させる。
軸受３４へのトリガー３の枢着およびばね片下端３０のポケット３１への係合は、その後に行えばよい。
なお、組み付けの手順はこれに限るものではなく、それらが前後してもよいことは勿論である。
【００１５】
このように組み付けられた復帰ばね６の水平基板１２は、トリガー３が引かれることにより両ばね片２９から後方および上方へ大きな力を受けることとなるが、噴出器本体１の上面に安定かつ強力に定着されて、両ばね片２９の反力板として機能し、両ばね片２９に適確かつ強力に弾発力を発揮させる。したがって、両ばね片２９には、合成樹脂製ではあってもトリガー３および往復ポンプ４のプランジャ５に対し前方へと適正に弾発付勢させることができる。そして、両ばね片２９をそれぞれ主板ばね３２と副板ばね３３としているので、これらの主板ばね３２と副板ばね３３には、トリガー３を引くことで図１５に示す大きな曲げの弾性変形を生じ、それぞれに曲げ応力（圧縮応力・引張応力）が作用すると共に、副板ばね３３において中間の折り返し部分を含む広い範囲に曲げ応力（点々部分の引張応力と圧縮応力）が作用することとなる。従って、主板ばね３２には、副板ばね３３からねばり強く腰の強い弾力を生じさせることができ、副板ばね３３には、変形量の多いソフトな反発弾力を生じさせることができる。
【００１６】
プランジャ５に対し、ノズル２側たる外側に位置する主板ばね３２は、縦断面が略円弧状とされ、トリガー３の往復動による回動軌跡たる弾性変形軌跡は、図２，図３，図４および図１５に示されるごとく、主板ばね３２の外側面が連続している水平基板１２の頂壁１７面内に接線Ｘを有する円弧軌跡Ｙ，Ｚに概ね合致させられ、その間を往復弾性変形させられており、このため、弾性変形時に主板ばね３２内に発生する内部応力は、主板ばね３２の全体に略均等に分散され、内部応力が局部的に集中することがない。
【００１７】
プランジャ５側に位置する副板ばね３３は縦断面が略定荷重板ばねを構成する形状とされている。図示例の副板ばね３３は、主板ばね３２の上下両端に連続する部分の間に、１個の逆Ｓ字状屈曲部が形成されており、図示例の構造では、往動時たる液体噴出時の主板ばね３２の弾性変形により、中央に位置する逆Ｕ字状屈曲部の屈曲度合が徐々に変化しても、副板ばね３３の両端から主板ばね３２側に伝達される荷重すなわち押圧弾性は、副板ばね３３の弾性変形の当初から終期に至る間において概ね均一に維持される。
【００１８】
また副板ばね３３の弾性変形は、屈曲度合の連続的変化となるので、曲げ応力すなわち内部応力は、逆Ｕ字状屈曲部の変曲点両側を含む部分に分散され、局部的に集中することがなく、トリガー３の復動時には屈曲度合が徐々に元の状態に戻るが、その間の主板ばね３２の上下端に伝達される荷重すなわち押圧弾性は、概ね均一に維持されるのでトリガー３の往動時，復動時のそれぞれにおいて、左右一対のばね片２９がプランジャ５に作用する弾力は、作動初期から作動終了の間概ね一定に保持される。
【００１９】
図示実施例の副板ばね３３は、略定荷重板ばねとして、Ｓ字状蛇行ばね、矩形蛇行ばね等が好ましいが、特にその形状には限定がないことは勿論である。
【００２０】
既述のカバー９は、図１および図２に示されるごとく、その内面に形成された係合突起５０，５１を、図１，図２および図３に示されるごとく、装着筒７へ嵌着されている噴出器本体１の基部５２と頂部５３とに形成された係合突起５４，５５に係合させると共に、図２に示されるごとく、カバー９の両側内面に形成された係合横構５６，５７に、噴出器本体１の両外側に形成された係合突条５８，５９を係合させることにより強固に取り付けられる。
【００２１】
トリガー３は、図１，図３および図４に示されるごとく、プランジャ５側に向け横架形成された突起６０が、ばね片２９の弾力により、常時プランジャ５の先端の当接凹窩６１に係合することにより、プランジャ５に往復動を生起させている。
【００２２】
請求項４の発明は、図示を省略したが、図４に示される筒先部材１１と水平基板１２の前部とが一体に連結成形したものであり、請求項２，請求項３の各発明における筒先部材１１の上面と水平基板１２の前部との係合工程を省略したものである。
【００２３】
【発明の効果】
請求項１の発明では、ノズル側たる外側に位置する主板ばねが縦断面円弧状であり、その弾性変形軌跡が、水平基板の頂壁面内に接線を有する円弧軌跡に概ね合致させられているので、弾性変形時の内部応力が局部的に集中することがなく、設計時の設定使用回数を上まわっても疲労折損の可能性を著しく低くしうる効果があり、更にはばねの設計の自由度を大きくしうる効果も有している。
【００２４】
また副板ばねは、縦断面が略定荷重板ばねを構成するように構成されているので、弾性変形量の大小に拘らず、その反発弾性が概ね一定となるのでトリガーの操作フィーリングを概ね主板ばねのバネ常数のみで決定できるし、トリガー復動時の主板ばねのバネ弾性の不足を、トリガーの作動ストロークの大小に拘らず、常に概ね一定の副板ばねの反発弾性で補いうる効果を奏し、その結果として、トリガーの操作のフィーリングとトリガーおよび往復ポンプの復帰性能を格段に向上させることができ、従って、単純な金属製コイルスプリングよりもはるかに優れたトリガーの操作フィーリングが得られる効果がある。
【００２５】
請求項２および請求項３の両発明によると、噴出器本体に対する主板ばねと副板ばねとの取付構造を嵩ばることのない強度の大きなものとすることができ、しかもその取付作業を容易なものとしうる効果を奏する。
【００２６】
請求項４の発明によると、トリガー式液体噴出器の組立工程を１工程短縮できる効果があり、請求項５の発明によると、トリガーの取付構造を簡単に取り付けうる強度の大きい構造としうる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】 請求項１ないし請求項３および請求項５の発明に係る実施の形態を示す縦断側面図である。
【図２】 同実施の形態におけるカバーを取り外した側面図である。
【図３】 同実施の形態におけるカバーを分離させた分解斜視図である。
【図４】 同実施の形態における主要３部材の分解側面図である。
【図５】 図４に示す主要３部材のうちの２部材の組立正面図である。
【図６】 図１ＡーＡ線要部の断面図である。
【図７】 図４に示す主要３部材のうちの一の部材の側面図である。
【図８】 同部材の正面図である。
【図９】 同部材の背面図である。
【図１０】 同部材の平面図である。
【図１１】 同部材の底面図である。
【図１２】 同部材の中央縦断側面図である。
【図１３】 図４に示す主要３部材のうちの他の一の部材の正面図である。
【図１４】 同部材の平面図である。
【図１５】 ばね片の動作状態を示す説明側面図である。
【符号の説明】
１ 噴出器本体
２ ノズル
３ トリガー
４ 往復ポンプ
５ プランジャ
６ 復帰ばね
７ 装着筒
８ 吸い上げパイプ
９ カバー
１０ 射出筒
１１ 筒先部材
１２ 水平基板
１３，１４ 受座
１５ 水平片
１６ 突条
１７ 頂壁
１８，１９，２０ リブ
２１，２２ 嵌合固定手段
２３ 係合爪
２４ 第１の窓孔
２５ 第１の係止爪
２６ 抑止片
２７ 第２の窓孔
２８ 第２の係止爪
２９ ばね片
３０ 下端
３１ ポケット
３２ 主板ばね
３３ 副板ばね
３４ 軸受
３５ 上端部
３６ 片持軸
Ｘ 接線
Ｙ，Ｚ 円弧軌跡
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばねに関するるものである。
【０００２】
【従来の技術】
液体を噴霧，噴射，噴泡等させる合成樹脂製のトリガー式液体噴出器は既に周知である。
このトリガー式液体噴出器は、通常、側面形状が逆Ｌ字状の噴出器本体の先端にノズルを設け、その噴出器本体の前部からトリガーを前後動可能に垂設し、その噴出器本体の内部に該トリガーで作動される往復ポンプを内蔵し、該往復ポンプにはトリガー共々復帰動させる復帰用の金属製コイルスプリングを内装し、かつ、その噴出器本体の外側にカバーを被着している。また、その噴出器本体の下端に装着筒と吸い上げパイプとを備えて、該装着筒により液体を収容した容器体の口頸部へと装着するとともに、吸い上げパイプをその容器体内へと挿入させるようにしている。しかして、トリガーを操作して往復ポンプを作動させることにより、容器体内の液体を吸い上げてはノズルから噴霧，噴射，噴泡等、適宜に噴出させる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
近時、廃棄物の増大に伴って廃棄物を資源として再活用することが求められてきており、往復ポンプにおける復帰用のスプリングも合成樹脂製とすることが試みられ、実用化されつつある。
本発明は、その一環として、上記往復ポンプにおける復帰用のスプリングを、簡便かつ強力な合成樹脂製の板ばねとするものである。合成樹脂製の板ばねは既に多種のものが提案されているが、バネ定数を各部一定とすると、固定部近傍に内部応力が集中し、設計時の設定使用回数を上まわると、疲労折損の可能性が生ずるし、内部応力の概ね均一な分散を図るため、バネ常数を連続的変化させると、必要とされるバネ弾性が得られないとか、あるいは不必要に大きな作動力を要する等の問題がある。
このため本発明は、主板ばねの弾性変形軌跡を、一定の接線を共有し、連続的に縮径される円弧軌跡とすることにより内部応力の集中を防ぎ、原形への復帰時のバネ弾性の不足を準定荷重ばねの反発弾性で補いうるようにし、その操作の感触をソフトで腰の強いものにしようとすると共に、復帰ばねの組み付け、固定を容易かつ確実なものとすることを課題としている。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
上記目的のため、請求項１の発明は、側面形状が逆Ｌ字状の噴出器本体の先端にノズルを設け、その噴出器本体の前部からトリガーを前後動可能に垂設し、その噴出器本体の内部に該トリガーで作動される往復ポンプを内蔵して成るトリガー式液体噴出器において、上記噴出器本体の上面に付設した水平基板の前部両側から往復ポンプ内のプランジャ復動用のばね片が一体に垂設され、該ばね片は、プランジャに対し、ノズル側たる外側に位置し、縦断面が略円弧状の主板ばねとプランジャ側に位置し、縦断面が略定荷重板ばねを構成する副板ばねとが上下で一体に結合されており、主板ばねの弾性変形軌跡は、前記水平基板の頂壁面内に接線を有する円弧軌跡に概ね合致させられているという構成とした。
【０００５】
請求項２の発明では、左右のばね片の水平基板と噴出器本体の上面との間の結合を、前後に設けた受座と嵌合固定手段とによる結合とすると共に、ばね片の下端をトリガーのポケットへ係合させるのみでばね片とトリガーとの組み付けが完了するようにし、組立作業の容易化と係合，固定の確実化を図りうる構成とした。
【０００６】
請求項３の発明では、射出筒の前端に嵌着した筒先部材の上面と、射出筒の後部上面とに、ばね片の水平基板の受支固定部分を設けることにより組立作業の容易化と迅速化とを図りうる構成とした。
【０００７】
請求項４の発明では、射出筒の前端に嵌着される筒先部材と水平基板の前部とを一体に成形し連接することにより、組立工程の省略による作業の能率化を図りうる構成とした。
【０００８】
請求項５の発明では、副板ばねと水平基板との連続部に、トリガーの軸承部を形成し、主板ばねと副板ばねとの下端の結合部をトリガーとの係合部とすることにより、ばね片部材の特性を損なうことなく、ばね片とトリガーとを組み付けうる構成とした。
【０００９】
【発明の実施の形態】
図面は、請求項１，請求項２，請求項３および請求項５の各発明を併せ適用したトリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばねに係る実施の形態を示している。
図において、１は側面形状が逆Ｌ字状の噴出器本体、２は該噴出器本体の先端に設けた噴霧，噴射，噴泡に切り換え得るノズル、３は噴出器本体の前部から前後動可能に垂設したトリガー、４は該トリガーでプランジャ５が作動される噴出器本体内蔵の往復ポンプ、６は噴出器本体の上面ないしトリガーの外側に装着した合成樹脂製の復帰ばねで、トリガーおよび往復ポンプのプランジャを前方へと付勢している。７は噴出器本体の下端に回転自在に装着した内ねじ螺筒の装着筒、８は該装着筒の内側で噴出器本体の下端から垂設した吸い上げパイプ、９は噴出器本体の外側に被着したカバーであり、これらは合成樹脂による成形部材から成るものである。
【００１０】
噴出器本体１は、合成樹脂成形の便宜上から上部の射出筒１０の前端に筒先部材１１を嵌着し、該筒先部材の先端に上記ノズル２を装着している。
噴出器本体１の上面の前部と後部すなわち上記筒先部材１１の上面と上記射出筒１０の後部上面に、合成樹脂製板ばねから成る上記復帰ばね６の水平基板１２を受ける受座１３，１４を形成しており、前部の受座１３を上記筒先部材１１の上面に一体に付設した小幅の水平片１５から形成し、後部の受座１４をその水平片１５の幅より広い間隔で平行する２条の前後方向の突条１６から形成している。
【００１１】
復帰ばね６は、合成樹脂製板ばねに属するものであり、上記前後の受座１３，１４に架設する水平基板１２を設けて、該水平基板の前部と後部を各々前後の受座１３，１４へと着座させ、そして水平基板１２は、頂壁１７の両縁からリブ１８，１９を垂設したものとして、前端部を前部の受座１３すなわち小幅の水平片１５に対応する小幅に、それ以外を後部の受座１４すなわち２条の突条１６間に対応する広幅に形成して、その頂壁１７の前部と後部をそれぞれ上記水平片１５と２条の突条１６に載置させると共に、両側のリブ１８，１９をそれぞれの水平片１５と２条の突条１６の外側へ嵌合させている。また、水平基板１２の後部では、頂壁１７の下面にて上記両縁のリブ１９の内側に更に２条のリブ２０を並設してそれぞれ上記２条の突条１６の内側へ嵌合させている。
【００１２】
前後の受座１３，１４と水平基板１２との間には、それぞれ嵌合固定手段２１，２２を講じており、前部の嵌合固定手段２１は、水平基板前端部両縁のリブ１８の前部内縁にそれぞれ係合爪２３を設けて、両係合爪２３を上記水平片１５の両縁へ抱着係合させ、かつ、水平基板頂壁１７の前部に第１の窓孔２４を穿設すると共に、その水平片１５の上面適所に第１の係止爪２５を突設して、該第１の係止爪２５をその第１の窓孔２４の前縁に係合させて成る。また、後部の嵌合固定手段２２は、その後部の受座１４の後端にて噴出器本体１すなわち上記射出筒１０の上面から前方へ抑止片２６を突設して、該抑止片２６により水平基板頂壁１７の後端部を押え、かつ該抑止片２６に第２の窓孔２７を穿設すると共に、水平基板頂壁１７の後端部の上面適所に第２の係止爪２８を突設して、該第２の係止爪２８をその第２の窓孔２７の前縁に係合させているが、かかる係合構造に限定されるものではない。
【００１３】
水平基板１２の前部両側からは、左右一対の合成樹脂製のばね片２９を垂設してそれぞれ下端３０をトリガー３の両側面中途部に設けた上向きのポケット３１へ機械的に上方から出入摺動自在に嵌挿連繋させており、左右一対のばね片２９は、それぞれノズル側たる前位置に配した主板ばね３２とプランジャ側たる後位置に配した副板ばね３３から形成し、下端３０で一つにしている。また、両副板ばね３３の水平基板との連続部たる基端部には、後方に面して開口するＣ字状の凹部を形成することで左右一対の軸受３４を設けており、該軸受にトリガー３の二叉状の両上端部３５をこれらに突設させた片持部３６にて枢着することで前後動可能に垂設している。
【００１４】
しかして、復帰ばね６の水平基板１２を噴出器本体１上面の前部と後部すなわち筒先部材１１の上面と射出筒１０の後部上面に組み付けるときは、まず復帰ばね６の水平基板１２の後部を、その噴出器本体１の前方やや斜め上から後部の嵌合固定手段２２たる抑止片２６の下へ差し込んで、水平基板頂壁１７後端部の第２の係止爪２８をその抑止片２６の第２の窓孔２７の前縁へ係合させると共に、射出筒１０上面の後部の受座１４すなわち２条の突条１６へと着座させ、次いで、その水平基板１２を押し下げて、水平基板１２の前部を、筒先部材１１上面の前部の受座１３すなわち水平片１５に着座させると同時に、前部の嵌合固定手段２１たる水平基板前端部両縁のリブ１８の各係合爪２３をその水平片１５の両縁へ抱着係合させ、かつ、水平基板頂壁１７前部の第１の窓孔２４の前縁をその水平片１５上面の第１の係止爪２５へと係合させる。
軸受３４へのトリガー３の枢着およびばね片下端３０のポケット３１への係合は、その後に行えばよい。
なお、組み付けの手順はこれに限るものではなく、それらが前後してもよいことは勿論である。
【００１５】
このように組み付けられた復帰ばね６の水平基板１２は、トリガー３が引かれることにより両ばね片２９から後方および上方へ大きな力を受けることとなるが、噴出器本体１の上面に安定かつ強力に定着されて、両ばね片２９の反力板として機能し、両ばね片２９に適確かつ強力に弾発力を発揮させる。したがって、両ばね片２９には、合成樹脂製ではあってもトリガー３および往復ポンプ４のプランジャ５に対し前方へと適正に弾発付勢させることができる。そして、両ばね片２９をそれぞれ主板ばね３２と副板ばね３３としているので、これらの主板ばね３２と副板ばね３３には、トリガー３を引くことで図１５に示す大きな曲げの弾性変形を生じ、それぞれに曲げ応力（圧縮応力・引張応力）が作用すると共に、副板ばね３３において中間の折り返し部分を含む広い範囲に曲げ応力（点々部分の引張応力と圧縮応力）が作用することとなる。従って、主板ばね３２には、副板ばね３３からねばり強く腰の強い弾力を生じさせることができ、副板ばね３３には、変形量の多いソフトな反発弾力を生じさせることができる。
【００１６】
プランジャ５に対し、ノズル２側たる外側に位置する主板ばね３２は、縦断面が略円弧状とされ、トリガー３の往復動による回動軌跡たる弾性変形軌跡は、図２，図３，図４および図１５に示されるごとく、主板ばね３２の外側面が連続している水平基板１２の頂壁１７面内に接線Ｘを有する円弧軌跡Ｙ，Ｚに概ね合致させられ、その間を往復弾性変形させられており、このため、弾性変形時に主板ばね３２内に発生する内部応力は、主板ばね３２の全体に略均等に分散され、内部応力が局部的に集中することがない。
【００１７】
プランジャ５側に位置する副板ばね３３は縦断面が略定荷重板ばねを構成する形状とされている。図示例の副板ばね３３は、主板ばね３２の上下両端に連続する部分の間に、１個の逆Ｓ字状屈曲部が形成されており、図示例の構造では、往動時たる液体噴出時の主板ばね３２の弾性変形により、中央に位置する逆Ｕ字状屈曲部の屈曲度合が徐々に変化しても、副板ばね３３の両端から主板ばね３２側に伝達される荷重すなわち押圧弾性は、副板ばね３３の弾性変形の当初から終期に至る間において概ね均一に維持される。
【００１８】
また副板ばね３３の弾性変形は、屈曲度合の連続的変化となるので、曲げ応力すなわち内部応力は、逆Ｕ字状屈曲部の変曲点両側を含む部分に分散され、局部的に集中することがなく、トリガー３の復動時には屈曲度合が徐々に元の状態に戻るが、その間の主板ばね３２の上下端に伝達される荷重すなわち押圧弾性は、概ね均一に維持されるのでトリガー３の往動時，復動時のそれぞれにおいて、左右一対のばね片２９がプランジャ５に作用する弾力は、作動初期から作動終了の間概ね一定に保持される。
【００１９】
図示実施例の副板ばね３３は、略定荷重板ばねとして、Ｓ字状蛇行ばね、矩形蛇行ばね等が好ましいが、特にその形状には限定がないことは勿論である。
【００２０】
既述のカバー９は、図１および図２に示されるごとく、その内面に形成された係合突起５０，５１を、図１，図２および図３に示されるごとく、装着筒７へ嵌着されている噴出器本体１の基部５２と頂部５３とに形成された係合突起５４，５５に係合させると共に、図２に示されるごとく、カバー９の両側内面に形成された係合横構５６，５７に、噴出器本体１の両外側に形成された係合突条５８，５９を係合させることにより強固に取り付けられる。
【００２１】
トリガー３は、図１，図３および図４に示されるごとく、プランジャ５側に向け横架形成された突起６０が、ばね片２９の弾力により、常時プランジャ５の先端の当接凹窩６１に係合することにより、プランジャ５に往復動を生起させている。
【００２２】
請求項４の発明は、図示を省略したが、図４に示される筒先部材１１と水平基板１２の前部とが一体に連結成形したものであり、請求項２，請求項３の各発明における筒先部材１１の上面と水平基板１２の前部との係合工程を省略したものである。
【００２３】
【発明の効果】
請求項１の発明では、ノズル側たる外側に位置する主板ばねが縦断面円弧状であり、その弾性変形軌跡が、水平基板の頂壁面内に接線を有する円弧軌跡に概ね合致させられているので、弾性変形時の内部応力が局部的に集中することがなく、設計時の設定使用回数を上まわっても疲労折損の可能性を著しく低くしうる効果があり、更にはばねの設計の自由度を大きくしうる効果も有している。
【００２４】
また副板ばねは、縦断面が略定荷重板ばねを構成するように構成されているので、弾性変形量の大小に拘らず、その反発弾性が概ね一定となるのでトリガーの操作フィーリングを概ね主板ばねのバネ常数のみで決定できるし、トリガー復動時の主板ばねのバネ弾性の不足を、トリガーの作動ストロークの大小に拘らず、常に概ね一定の副板ばねの反発弾性で補いうる効果を奏し、その結果として、トリガーの操作のフィーリングとトリガーおよび往復ポンプの復帰性能を格段に向上させることができ、従って、単純な金属製コイルスプリングよりもはるかに優れたトリガーの操作フィーリングが得られる効果がある。
【００２５】
請求項２および請求項３の両発明によると、噴出器本体に対する主板ばねと副板ばねとの取付構造を嵩ばることのない強度の大きなものとすることができ、しかもその取付作業を容易なものとしうる効果を奏する。
【００２６】
請求項４の発明によると、トリガー式液体噴出器の組立工程を１工程短縮できる効果があり、請求項５の発明によると、トリガーの取付構造を簡単に取り付けうる強度の大きい構造としうる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】 請求項１ないし請求項３および請求項５の発明に係る実施の形態を示す縦断側面図である。
【図２】 同実施の形態におけるカバーを取り外した側面図である。
【図３】 同実施の形態におけるカバーを分離させた分解斜視図である。
【図４】 同実施の形態における主要３部材の分解側面図である。
【図５】 図４に示す主要３部材のうちの２部材の組立正面図である。
【図６】 図１ＡーＡ線要部の断面図である。
【図７】 図４に示す主要３部材のうちの一の部材の側面図である。
【図８】 同部材の正面図である。
【図９】 同部材の背面図である。
【図１０】 同部材の平面図である。
【図１１】 同部材の底面図である。
【図１２】 同部材の中央縦断側面図である。
【図１３】 図４に示す主要３部材のうちの他の一の部材の正面図である。
【図１４】 同部材の平面図である。
【図１５】 ばね片の動作状態を示す説明側面図である。
【符号の説明】
１ 噴出器本体
２ ノズル
３ トリガー
４ 往復ポンプ
５ プランジャ
６ 復帰ばね
７ 装着筒
８ 吸い上げパイプ
９ カバー
１０ 射出筒
１１ 筒先部材
１２ 水平基板
１３，１４ 受座
１５ 水平片
１６ 突条
１７ 頂壁
１８，１９，２０ リブ
２１，２２ 嵌合固定手段
２３ 係合爪
２４ 第１の窓孔
２５ 第１の係止爪
２６ 抑止片
２７ 第２の窓孔
２８ 第２の係止爪
２９ ばね片
３０ 下端
３１ ポケット
３２ 主板ばね
３３ 副板ばね
３４ 軸受
３５ 上端部
３６ 片持軸
Ｘ 接線
Ｙ，Ｚ 円弧軌跡
Claims (5)
- 側面形状が逆Ｌ字状の噴出器本体の先端にノズルを設け、その噴出器本体の前部からトリガーを前後動可能に垂設し、その噴出器本体の内部に該トリガーで作動される往復ポンプを内蔵して成るトリガー式液体噴出器において、
上記噴出器本体の上面に付設した水平基板の前部両側から、往復ポンプ内のプランジャ復動用のばね片が一体に垂設され、
該ばね片は、プランジャに対し、ノズル側たる外側に位置し、縦断面が略円弧状の主板ばねと
プランジャ側に位置し、縦断面が略定荷重板ばねを構成する副板ばねとが上下で一体に結合されており、
主板ばねの弾性変形軌跡は、前記水平基板の頂壁面内に接線を有する円弧軌跡に概ね合致させられている
トリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばね。 - 噴出器本体の上面の前部と後部とに水平基板の前部と後部を受ける受座が形成され、水平基板を着座させられているとともに、水平基板と各受座との間に、各々嵌合固定手段が設けられて水平基板が定着させられており、各ばね片の下端がトリガーの両側面中途部に設けられた左右一対のポケットへ係合させられている請求項１記載のトリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばね。
- 上記噴出器本体の上部における、射出筒の前端に筒先部材が嵌着させられており、該筒先部材の上面に前部の受座が、また、射出筒の後部上面に後部の受座がそれぞれ形成されている請求項２記載のトリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばね。
- 噴出器本体の上部における射出筒の前端に筒先部材が嵌着され、該筒先部材と水平基板の前部とが一体に連設されており、前記射出筒の後部上面に水平基板の後部を受ける受座が形成され、水平基板の後部が着座させられているとともに、水平基板の後部と後部の受座との間の嵌合固定手段により、水平基板が定着させられており、各ばね片の下端がトリガーの両側面中途部に設けた左右一対のポケットへ係合させられている請求項１記載のトリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばね。
- 副板ばねと水平基板との連続部にトリガーの軸承部が形成され、主板ばねと副板ばねとの下端の結合部がトリガーとの係合部とされている請求項１，請求項２，請求項３または請求項４記載のトリガー式液体噴出器における合成樹脂製復帰ばね。
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2003
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