JP3776893B2 - バリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素バリヤ膜等のバリヤ膜が被覆されたプラスチック部材のバリヤ性評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばペットボトルのようなプラスチック容器またはプラスチック容器用のシートなどのプラスチック部材は、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素や水分などの透過、ペット樹脂成分の溶出を防止するために、プラスチック部材表面への膜被覆装置を用いて、その内面または外面にプラズマCVD法によりDLC(Diamond Like Carbon)のような炭素膜やSiOx膜などをコーティングすることが行われている。
【0003】
このようなプラスチック部材表面へのバリヤ膜被覆装置によりバリヤ膜を被覆する際、そのプラスチック部材のバリヤ性の評価を行なうことが重要である。バリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価は、次に挙げるガス透過速度を計測することによって行なわれている。
【0004】
(1)切出しシートによるガス透過速度計測方法
図16は、バリヤ膜被覆シートのガス透過速度を計測するための市販のガス透過速度計測装置を示す概略図である。
【0005】
恒温槽101内には、計測器側フランジ102と取付フランジ103が互いに左右に対峙して配置されている。バリヤ膜被覆ペットボトルの場合、このペットボトルから切出され、炭素バリヤ膜104が被覆された試験片(試験シート)105は、前記計測器側フランジ102と前記取付フランジ103の間にOリング106,107を介して気密に挟持される。前記試験片105は、その炭素バリヤ膜104が前記計測器側フランジ102と対向するように配置されている。前記試験片105の挟持により、前記試験片105と前記計測器側フランジ102の間にガス透過速度計測室(左室)108、前記試験片105と前記取付フランジ103の間に計測ガス導入室(右室)109がそれぞれ形成される。
【0006】
ガス透過速度の計測ガス、例えば酸素ガスの供給系110は、酸素濃度計測器111内の図示しない流量調節系を通して酸素導入用サス管112に接続され、このサス管112は前記取付フランジ103に前記計測ガス導入室(右室)109と連通するように接続されている。湿度のある条件で計測するために、計測ガスまたはキャリヤガスに水蒸気を加えて湿度を一定に保つ図示しない装置が酸素濃度計測器111内に付加されている場合もある。
【0007】
キャリヤガス供給系(純窒素ガス供給系)113は、酸素濃度計測器111内の図示しない流量調節系を通してキャリヤガス導入用サス管114に接続され、このサス管114は前記計測器側フランジ102に前記ガス透過速度計測室(左室)108と連通するように接続されている。
【0008】
酸素排出用サス管115は、一端が前記取付フランジ103に前記計測ガス導入室(右室)109と連通するように接続され、他端が前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して排気ポンプ116に接続されている。
【0009】
キャリヤガス排出用サス管117は、一端が前記計測器側フランジ102に前記ガス透過速度計測室(左室)108と連通するように接続され、他端が前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に接続されている。
【0010】
なお、前記酸素濃度計測器111は制御器118により酸素ガス、キャリヤガスの供給の制御および酸素透過量の算出などがなされる。
【0011】
前述した図16に示すガス透過速度計測装置によるシートの酸素透過速度の計測方法を説明する。
【0012】
ペットボトルから切り出した炭素バリヤ膜104が被覆された試験片(試験シート)105を計測器側フランジ102と前記取付フランジ103の間にOリング106,107を介して気密に挟持し、試験シート105を境にガス透過速度計測室(左室)108および計測ガス導入室(右室)109に分離する。この時、恒温槽101内の温度をバリヤ性計測の標準値である23℃に設定する。
【0013】
酸素ガスの供給系110から酸素を酸素濃度計測器111内の図示しない配管系および酸素導入用サス管112を通して計測ガス導入室(右室)109に連続的に供給し、排気ポンプ116を作動して酸素を酸素排出用サス管115、前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して排出する。その後、キャリヤガス供給系113から純窒素ガスのようなキャリヤガスを酸素濃度計測器111内の図示しない配管系およびキャリヤガス導入用サス管114を通してガス透過速度計測室(左室)108に連続的に供給し、ガス透過速度計測室(左室)108内のガスをキャリヤガス排出用サス管117から前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に流通させる。前記計測ガス導入室(右室)109に供給された酸素は、前記試験シート105を透過して前記ガス透過速度計測室(左室)108内に流入するため、前記キャリヤガスには極微量の酸素が含有される。この酸素の濃度を前記酸素検知器で計測し、この値と供給される純窒素(キャリヤガス)の流量から単位時間あたりの酸素透過量、つまり酸素ガス透過速度を算出する。計測終了後のキャリヤガスは、酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して前記酸素排出用サス管115を流通する排気酸素と混合され、排気ポンプ116から排出する。湿度のある条件で計測する場合には、酸素濃度計測器111内に付加されている図示しない装置により計測ガスまたはキャリヤガスに水蒸気を加え、それらの湿度を一定に保つ。これらのガス供給の制御および酸素透過量の算出等は、制御器118によりなされる。
【0014】
本方式は、ガス透過速度計測室(左室)108と計測ガス導入室(右室)109のガス種が異なるが、圧力がほぼ等しく大気圧程度であるため、等圧法と呼ばれている。
【0015】
このようなバリヤ膜被覆ペットボトルから切出したシートのガス透過速度の計測によりそのバリヤ膜被覆ペットボトルのバリヤ性を評価することが可能になる。
【0016】
(2)ボトルのままでのガス透過速度計測方法
図17は、ペットボトルのままの形で酸素透過速度計測するガス透過速度計測装置を示す概略図である。
【0017】
恒温槽201内には、ボトル装填冶具202が配置されている。このボトル装填冶具202は、上端が開放した容器203と、この容器203の上端開口部にOリング204を介して気密に取り付けられるサス製蓋体205とから構成されている。
【0018】
ガス透過速度の計測ガス、例えば酸素ガスの供給系206は、酸素濃度計測器207内の図示しない流量調節系を通して酸素導入用サス管208に接続され、このサス管208は前記蓋体205を貫通して前記容器203内の低部付近に挿入されている。酸素排出用サス管209は、一端が前記蓋体205を貫通して前記容器203内の上部付近に挿入され、他端が前記酸素濃度計測器207内の図示しない配管系を通して排気ポンプ210に接続されている。なお、前記酸素導入用サス管208および酸素排出用サス管209は、前記蓋体205との貫通部でそれぞれ溶接されて、気密に挿着されている。
【0019】
キャリヤガス供給系(純窒素ガス供給系)211は、前記酸素濃度計測器207内の図示しない流量調節系を通してキャリヤガス導入用サス管212に接続され、このサス管212は前記蓋体205を貫通して前記容器203内に装填されるペットボトル中の底部付近に挿入される。キャリヤガス排出用サス管213は、一端が前記蓋体205を貫通して前記容器203内に装填されるペットボトル中の口部付近に挿入され、他端が前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に接続されている。なお、前記キャリヤガス導入用サス管212およびキャリヤガス排出用サス管213は、前記蓋体205との貫通部でそれぞれ溶接されて、気密に挿着されている。湿度のある条件で計測するために、計測ガスまたはキャリヤガスに水蒸気を加えて湿度を一定に保つ図示しない装置が酸素濃度計測器111内に付加されている場合もある。
【0020】
前記酸素濃度計測器207は制御器214により酸素ガス、キャリヤガスの供給の制御および酸素透過量の算出などがなされる。
【0021】
前述した図17に示すガス透過速度計測装置によるペットボトルの酸素透過速度の計測方法を説明する。
【0022】
まず、ペットボトル214の口部をボトル装填冶具202の蓋体205の内面にその蓋体205を貫通するキャリヤガス導入用サス管212およびキャリヤガス排出用サス管213がそれぞれペットボトル214内に挿入されるように当接させ、その口部を前記蓋体205内面にエポキシ接着剤215で気密に接着する。つづいて、前記蓋体205を容器203の上部開口部にOリング204を挟んで鋲着し、前記ペットボトル214を前記容器203および蓋体205内の空間に気密に収納する。さらに、このボトル装填冶具202およびサス管208,209,212,213の一式を恒温槽201内に設置し、温度をバリヤ性計測の標準値である23℃に設定する。
【0023】
酸素ガスの供給系206から酸素を酸素濃度計測器207内の図示しない配管系および酸素導入用サス管208を通して前記ボトル装填冶具202の容器203に導入し、排気ポンプ210を作動してこの容器203内の酸素を酸素排出用サス管209および酸素濃度計測器207内の図示しない配管系を通して排出する。初期には、大気を排出するために多量に酸素を供給するが、その後は10sccm程度の微量に減らす。
【0024】
その後、キャリヤガス供給系211から純窒素ガスのようなキャリヤガスを酸素濃度計測器207内の図示しない配管系およびキャリヤガス導入用サス管212を通してペットボトル215内に供給し、このペットボトル215内のガスをキャリヤガス排出用サス管213を通して前記酸素濃度計測器207の図示しない酸素検知器に流通させる。初期には大気を排出するため多量に純窒素(キャリヤガス)を供給するが、その後は10sccm程度の微量に減らし、図示しない酸素検知器に流通させる。ペットボトル215の外部に供給された酸素が矢印217で示すようにそのペットボトル215のバリヤ膜および樹脂を透過してそのペットボトル内に流入するため、前記キャリヤガスに極微量の酸素が含まれる。この酸素の濃度を前記酸素検知器で計測し、この値と、供給している純窒素の流量から単位時間あたりの酸素透過量を算出する。計測終了後のキャリヤガスは、酸素濃度計測器207内の図示しない配管系を通して前記酸素排出用サス管209を流通する排気酸素と混合され、排気ポンプ210から排出する。湿度のある条件で計測する場合には、酸素濃度計測器111内に付加されている図示しない装置により計測ガスまたはキャリヤガスに水蒸気を加え、それらの湿度を一定に保つ。これらのガス供給の制御および酸素透過量の算出等は、制御器214によりなされる。
【0025】
このようなバリヤ膜被覆ペットボトルのガス透過速度の計測によりそのペットボトルのバリヤ性を評価することが可能になる。
【0026】
しかしながら、前記(1)の切出しシートのガス透過速度計測、前記(2)のペットボトルのままでのガス透過速度計測によるバリヤ性の評価方法では、以下のような問題を有する。
【0027】
ペットボトルの基材は、通常、400μm〜1000μmの厚さを有するため、酸素透過速度の計測で3日以上、炭酸ガス透過速度の計測で2週間程度かかる。その結果、ペットボトルのバリヤ性の評価に長い時間を費やし、その評価によるバリヤ膜の成膜条件の制御、調節等の操作の迅速化を妨げる。
【0028】
例えばペットボトルのままでの酸素透過速度の計測における経過時間と1パッケージあたりの酸素透過速度の関係を図18に示す。図18から明らかなように、酸素透過速度が最終値に安定するには7日(168時間)程度かかっている。短時間(3日:72時間)で酸素透過速度を求める場合、その計測値は最終値の酸素透過速度の8割程度であるため、あくまでも目安としのみ利用できるに留まる。精度の高い最終値を求めるには、通常7日〜10日、場合によっては15日程度必要である。このように長い計測時間を要するのは、ペットボトルの基材が400μm〜1000μmと厚いことから、酸素ガス溶解量の前記基材表裏方向の分布が安定するのに費やす時間が長くなることに起因する。特に、ペットボトルそのままで酸素透過速度を計測する場合、口部および肩部での基材の厚さが厚く、その領域の占有割合が大きくなると、酸素透過速度が定常状態になるのにさらに費やされ、結果としてより長い計測時間が必要になる。
【0029】
また、このような問題の他に、前記ペットボトルを切出して試験片で計測する場合、その試験片はペットボトルの形状により曲がって、平面状にできないことが多い。計測装置は、平面シートを想定して設計されているため、計測部に装着できず、酸素透過量を計測できない場合がある。さらに、切出した試験片を平面にできる場合であっても、面積を小さくする必要がある。その結果、ガス透過面積が小さくなって、ガス透過量が少なくなるために、ガス透過速度の計測精度が低下、結果としてバリヤ性の評価の信頼性を下げる。
【0030】
一方、ペットボトルのままでのガス透過速度の計測方法では、前述したようにペットボトルの口部をボトル装填冶具の蓋体に接着剤を用いて気密に接着する必要があるため、計測の準備および後始末に手間と時間がかかり、本計測での長時間化と相俟ってその評価によるバリヤ膜の成膜条件の制御、調節等の操作の迅速化をより一層妨げる。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、バリヤ膜被覆プラスチック容器またはバリヤ膜被覆プラスチックシートからなるバリヤ膜被覆プラスチック部材おいて、酸素のようなガスの透過速度がそのプラスチック部材の性状にそれほど支配されず、バリヤ膜の性状にほぼ支配されることを着目し、プラスチック部材のバリヤ膜の成膜時にそのバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを取付け、バリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測することによって、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材に近似したガス透過速度を短時間で計測することをでき、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性を迅速に評価し得る方法を見出し、本発明を完成した。
【0032】
また、本発明者らは、プラスチック部材のバリヤ膜の成膜時にそのバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、バリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測し、このガス透過速度を予め求めたバリヤ膜被覆プラスチック部材のガス透過速度とバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度の相関関係(例えば検量線)に照合させることによって、前記ダミーフィルムの短時間でのガス透過速度の計測および計測結果の検量線等への照合により、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性を迅速かつより高精度で評価し得る方法を見出し、本発明を完成した。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法は、プラスチック容器またはプラスチックシートからなるプラスチック部材のバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを取付け、前記プラスチック部材を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する工程と、
前記プラスチック部材のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0034】
本発明に係る別のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法は、プラスチック容器またはプラスチックシートからなるプラスチック部材のバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを取付け、前記各プラスチック部材を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する工程と、
前記プラスチック部材のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する工程と、
予め求めたバリヤ膜被覆プラスチック部材のガス透過速度とバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度との相関に基づいて前記計測されたバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度からバリヤ膜被覆プラスチック部材のガス透過速度を求める工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法を説明する。
【0036】
<第1実施形態>
この第1実施形態は、プラスチック部材としてプラスチック容器(例えばペットボトル)のバリヤ性の評価方法を説明する。
【0037】
(第1工程)
プラスチック容器のバリヤ膜被覆面にこの容器の肉厚より薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、このプラスチック容器をバリヤ膜成膜装置に設置し、前記プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する。
【0038】
前記プラスチック容器としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)から作られたボトル、いわゆるペットボトル等を用いることができる。
【0039】
前記プラスチック容器のバリヤ膜被覆面としては、その容器の使用形態によって内面、外面がある。
【0040】
前記ダミーフィルムは、ガス拡散定数が高く、耐熱温度が高く、かつガスバリヤ性がバリヤ膜のそれと比較して十分小さい材質であることが好ましい。特に、ダミーフィルムのガスバリヤ性がバリヤ膜のそれと比較して大きい材質を選ぶと、ガス透過速度の計測においてダミーフィルムのバリヤ性が支配的になって、バリヤ膜によるバリヤ性の評価に影響を与える虞がある。このようなダミーフィルムの材質は、プラスチック容器と同材質にすることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミドを挙げることができる。
【0041】
前記ダミーフィルムは、厚さが10μm以上、容器の肉厚の1/4以下(例えば容器の肉厚が800μmの場合、200μm以下)、より好ましくは10μm以上、100μm以下にすることが好ましい。ダミーフィルムの厚さを10μm未満にすると、プラスチック容器へのセッティングが困難になる虞がある。
【0042】
前記ダミーフィルムは、円形または四角形等の多角形状のものを用いることができる。特に、このダミーフィルムは後述する等圧法によるガス透過速度の計測に適用することから円形であることが好ましい。この円形のダミーフィルムは直径10cm前後の寸法を有することが好ましい。
【0043】
前記ダミーフィルムのセッティングは、例えば容器内面に適用する場合、1)ダミーフィルムに静電気を与え、このダミーフィルムを丸めて容器の口部から挿入し、その容器内面に静電気で密着させる方法、2)ダミーフィルムの片面に接着剤を塗布し、このダミーフィルムを丸めて容器の口部から挿入し、その容器内面に接着させる方法、3)ダミーフィルムを丸めて容器の口部から挿入し、接着シートを用いてダミーフィルムを容器内面に密着させる方法等を採用することができる。
【0044】
このようなセッティング方法において、容器内面にダミーフィルムを密着させることが好ましい。容器内面とダミーフィルムの間に隙間が存在すると、例えばバリヤ膜をプラズマCVDにより成膜する場合、隙間に発生する寄生容量によりダミーフィルム表面の電圧発生状態が容器内面のそれと異なる。また、ダミーフィルムから容器への熱伝達も変化する。その結果、ダミーフィルム上に成膜されたバリヤ膜が容器内面のそれと異なる性状になり、バリヤ被覆プラスチック容器のバリヤ性評価の信頼度が低下する虞がある。前述したように容器内面にダミーフィルムを密着させることにより、このような問題を回避できる。
【0045】
前記1)、3)のセッティング方法において、ダミーフィルムの厚さが薄く、容器の口部から挿入した際に内部で広がるような腰の強さが弱い場合には、このダミーフィルムを腰のある厚い下地フィルム上に予め貼り付け、この積層フィルムを丸めて挿入し、容器内部で広がって下地フィルム側を容器内面に密着させることが好ましい。この下地フィルムは、容器の形状であってもよいし、平板状でもよい。
【0046】
前記1)、2)の方法によるダミーフィルムのセッティング後におけるプラスチック容器(例えばペットボトル)の状態を図1に具体的に示す。図1中の1はペットボトル、2はこのペットボトル1内面に密着されたダミーフィルムである。
【0047】
前記3)の方法によるダミーフィルムのセッティング後におけるプラスチック容器(例えばペットボトル)の状態を図2に具体的に示す。図2中の1はペットボトル、2はこのペットボトル1内面に密着されたダミーフィルム、3はダミーフィルムをペットボトル1内面に密着させるための接着テープである。
【0048】
また、図3に示すように複数枚、例えば3枚のダミーフィルム2をペットボトル1内面にその高さ方向に沿ってセッティングするなど、各部にセッティングしてもよい。このようにペットボトル1内面の各部にダミーフィルム1をセッティングすれば、ペットボトル1の各部ごとのガス透過性を計測できるため、ペットボトル1のバリヤ性をより細やかに評価することが可能になる。
【0049】
さらに、図4に示すようにダミーフィルム2を角型のペットボトル1内面にセッティングしてもよい。
【0050】
前記バリヤ膜としては、例えば炭素膜を挙げることができる。
【0051】
前記プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムへのバリヤ膜の成膜は、各種のCVD技術が組み込まれた成膜装置を用いて行なうことができる。
【0052】
(第2工程)
前記プラスチック容器のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去る。つづいて、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度、例えば酸素透過速度を計測する。
【0053】
前記ダミーフィルムの等圧法によるガス透過速度の計測は、例えば前述した図15に示す市販のガス透過速度計測装置または後述する図6に示すガス透過速度計測装置を用いて行なうことが可能である。
【0054】
前記ダミーフィルムの等圧法によるガス透過速度の計測は、前記容器を構成するプラスチックのガラス転移温度−30℃以上、ガラス転移温度以下でなされることが好ましい。
【0055】
以上、本発明の第1実施形態によればプラスチック容器のバリヤ膜被覆面にこの容器の肉厚より薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、前記プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜した後、このプラスチック容器のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する。このガス透過速度の計測は、ダミーフィルムの厚さがプラスチック容器の肉厚より薄いため、従来のバリヤ膜被覆プラスチック容器(ペットボトル)から切出したシートのガス透過速度の計測およびバリヤ膜被覆プラスチック容器(ペットボトル)の形態でのガス透過速度の計測に比べて極めて短時間で実行できる。
【0056】
前述したようにバリヤ膜被覆プラスチック容器おいて、酸素のようなガスの透過速度がそのプラスチック容器(容器基材)の性状にそれほど支配されず、バリヤ膜の性状にほぼ支配されることから、前記バリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を短時間で計測できるため、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材に近似したガス透過速度を短時間で計測することをでき、ひいてはバリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性を迅速に評価することができる。
【0057】
これは、以下に説明するガス透過速度の計算モデルから明らかである。
【0058】
(1)ガス透過速度の理論式(非定常状態)
平板状の基材の内外面でガス(例えば酸素)の濃度が異なり、基材内での初期濃度が一様である場合,非定常1次元拡散問題を解くと、基材厚さ方向の位置Xでの流速Fの経時変化は、下記数1の式(1)で表される。
【0059】
【数1】
ここで、
p0 :基材内の被計測ガスの分圧(atm)、
p1:基材内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:基材外側の被計測ガスの分圧(atm)、
L:基材の厚さ(cm)、
P:気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
D:拡散係数(cm2/s)、
S:溶解度係数(P=D×Sの関係がある)。
【0060】
前記気体透過係数P、拡散係数Dは、下記数2の近似式で与えられる。
【0061】
【数2】
ここで、
P:気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
D:拡散係数(cm2/s)、
T:絶対温度(K)、
a〜d:基材の材質で決まる係数。
【0062】
したがって、前記拡散定数Dが大きく、温度Tが高く、基材の厚さLが薄いほど速く定常状態になる。この事実からガス透過速度の計測において、薄いフィルムを用いることによって、速やかに定常状態になる。バリヤ膜被覆フィルムの場合、バリヤ膜が薄いとその内部が定常になる時間は非常に早く、全体が定常になる時間はフィルム自体のガス透過速度が定常になる時間で決まる。
【0063】
(2)定常状態のバリヤ膜被覆プラスチック容器およびバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度
バリヤ膜フリーのプラスチック容器(例えばペットボトル)のガス透過速度FC(cm3(STP)/cm2/s)の定常値は、前記(1)式でt=0とすると、下記数3の(4)式になる。
【0064】
【数3】
ここで、
PC:プラスチック容器の気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LC:プラスチック容器の厚さ(cm)、
p1:プラスチック容器内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:プラスチック容器外側の被計測ガスの分圧(atm)。
【0065】
一方、バリヤ膜フリーのダミーフィルムのガス透過速度FF(cm3(STP)/cm2/s)の定常値は、下記数4の(5)式で表される。
【0066】
【数4】
ここで、
PF:ダミーフィルムの気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LF:ダミーフィルムの厚さ(cm)、
p1:ダミーフィルム内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:ダミーフィルム外側の被計測ガスの分圧(atm)。
【0067】
なお、L/Pはバリヤ性を表す定数であり、一定の圧力下(p2−p1=一定)ではL/Fがバリヤ性を表す定数である。
【0068】
ところで、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度FBC(cm3(STP)/cm2/s)の定常値は、下記数5の(6)式で表される。
【0069】
【数5】
ここで、
PB:バリヤ膜の気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LB:バリヤ膜の厚さ(cm)、
PC:プラスチック容器そのものの気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LC:プラスチック容器そのものの厚さ(cm)、
FB:バリヤ膜のガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
FC:プラスチック容器そのもののガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
p1:バリヤ膜被覆プラスチック容器内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:バリヤ膜被覆プラスチック容器外側の被計測ガスの分圧(atm)。
【0070】
一方、前記バリヤ膜被覆プラスチック容器と同じバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムのガス透過速度FBF(cm3(STP)/cm2/s)の定常値は、下記数6の(7)式で表される。
【0071】
【数6】
ここで、
PB:バリヤ膜の気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LB:バリヤ膜の厚さ(cm)、
PF:ダミーフィルムの気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LF:ダミーフィルムの厚さ(cm)、
FB:バリヤ膜のガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
FF:ダミーフィルムのガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
p1:バリヤ膜被覆ダミーフィルム内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:バリヤ膜被覆ダミーフィルム外側の被計測ガスの分圧(atm)。
【0072】
したがって一定のガス圧条件下で、プラスチック容器そのもののガス透過速度FCとダミーフィルムのガス透過速度FFが分かっていれば、バリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度FBFを計測することによって、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度FBCを推測することができる。
【0073】
すなわち、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度FBCは下記数7に示す(8)式で表される。
【0074】
【数7】
ここで、
FB:バリヤ膜のガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
FF:ダミーフィルムのガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
FC:プラスチック容器そのもののガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)。
【0075】
前記(8)式から、被覆するバリヤ膜のバリヤ性が良好、つまり1/FBが大、プラスチック容器およびダミーフィルムのガス透過速度がいずれも無視できる、つまり1/FC、1/FFとも小である場合、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度はバリヤ膜被覆ダミーフィルムで計測したガス透過速度の値と近似的に等しくなる。
【0076】
したがって、既述したように前記バリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を短時間で計測できることによって、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材に近似したガス透過速度を短時間で計測することをできるため、バリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性を迅速に評価することができる。
【0077】
また、第1実施形態によれば次のような効果を奏する。
【0078】
(1)ガス透過速度の計測対象が平板状のダミーフィルムであるため、既存の装置にそのまま適用して計測できる。その結果、従来のようにバリヤ膜被覆プラスチック容器から試験片を切出したり、またバリヤ膜被覆プラスチック容器のままでガス透過速度を計測する場合のように計測の準備に手間と時間が費やされたり、するのを回避でき、ガス透過速度のトータル的な計測時間を短縮できる。
【0079】
(2)ダミーフィルムとして直径10cm程度のものを用いれば、市販のガス透過速度計測装置の装着部にそのまま適用してガス透過速度を計測できる。
【0080】
(3)例えば10μm以上、プラスチック容器の肉厚の1/4以下の薄いダミーフィルムを用いれば、プラスチック容器の例えば内面にダミーフィルムをセッティングし、バリヤ膜を成膜するプロセスにおいて、前記ダミーフィルムの存在による成膜プロセスへの影響が少なく、実プロセスでプラスチック容器内面に成膜されたバリヤ膜と同等のバリヤ膜をダミーフィルム上に成膜できるため、本方法で計測したバリヤ膜に起因するガス透過速度を実プロセスのプラスチック容器のバリヤ膜に起因するガス透過速度と同等にできる。
【0081】
(4)例えば10μm以上、プラスチック容器の肉厚の1/4以下の薄いダミーフィルムをプラスチック容器のバリヤ膜被覆面に密着させることによって、前記容器のバリヤ膜被覆面にフィルムが存在しない状態と略同一にできるため、前記ダミーフィルム上に実プロセスで前記容器のバリヤ膜被覆面に成膜されるバリヤ膜と略同等のバリヤ膜を形成することができる。
【0082】
(実施例1)
図5は、本実施例1で用いるプラスチック容器(例えばペットボトル)内面への炭素膜形成装置を示す断面図である。
【0083】
上下端にフランジ11a,11bを有する円筒状支持部材12は、円環状基台13上に載置されている。筒状の金属製の外部電極本体14は、前記支持部材12内に配置されている。円板状をなす金属製の外部電極底部材15は、前記外部電極14の底部に着脱可能に取り付けられている。前記外部電極本体14および前記外部電極底部材15により炭素被膜を形成するプラスチック容器(例えばペットボトル)1を設置可能な大きさの空間をもつ有底円筒状の外部電極16が構成されている。なお、前記基台13と前記外部電極底部材15の間には円板状絶縁体17が配置されている。
【0084】
なお、前記外部電極底部材15、前記円板状絶縁体17および前記基台13は図示しないプッシャーにより前記外部電極本体14に対して一体的に上下動し、前記外部電極本体14の底部を開閉する。
【0085】
内部に挿入されるペットボトル1の口部および肩部に対応する円柱および円錐台を組み合わせた形状をなす空洞部18を有する誘電体材料(例えばプラスチックまたはセラミック)からなる円柱状スペーサ19は、前記外部電極16における前記本体14の上部に挿入されている。このスペーサ19は、この上に載置される後述する環状絶縁部材から螺着されたねじ(図示せず)により固定されている。このように円柱状スペーサ19を前記外部電極16における前記本体14の上部に挿入固定することにより、前記外部電極本体14の底部側からペットボトル1を挿入すると、そのペットボトル1の口部および肩部が前記スペーサ19の空洞部18内に、これ以外のペットボトル1部分が前記外部電極16内に収納される。
【0086】
環状絶縁部材20は、前記外部電極16上面にその環状絶縁部材20上面が前記筒状支持部材12の上部フランジ11aと面一になるように載置されている。上下にフランジ21a,21bを有するガス排気管22は、前記支持部材12の上部フランジ11aおよび前記環状絶縁部材20の上面に載置されている。この排気管22は、接地されている。図示しないねじを前記排気管22の下部フランジ21bから前記支持部材12の上部フランジ11aに螺着することにより前記ガス排気管22が前記支持部材12に固定されている。また、図示しないねじを前記排気管22の下部フランジ21bから前記環状絶縁部20を貫通して外部電極16の本体14に螺着することにより前記排気管22が前記環状絶縁部材20および前記外部電極16に固定されると共に、前記環状絶縁部材20が前記外部電極16に対しても固定される。なお、前記排気管22と前記環状絶縁部材20および前記外部電極16との固定は、前記排気管22と前記外部電極16とがねじにより電気的に導通しない取り付け構造になっている。分岐ガス排気管23は、前記ガス排気管22の側壁に連結され、その他端に図示しない真空ポンプのような排気設備が取り付けられている。蓋体24は、前記排気管22の上部フランジ21aに取り付けられている。
【0087】
例えば周波数13.56MHzの高周波電力を出力する高周波電源25は、ケーブル26および給電端子27を通して前記外部電極26の本体24に接続されている。整合器28は、前記高周波電源25と前記給電端子27の間の前記ケーブル26に介装されている。
【0088】
ガス供給管29は、前記蓋体24を貫通し、ガス排気管22を通して前記外部電極16の本体14内におけるペットボトル1の口部に対応する個所に挿入されている。例えばタングステンやステンレス鋼のような耐熱性を有する金属材料により作られる略円柱状をなす内部電極30は、前記外部電極16に挿入されたペットボトル1内の底部付近に配置され、その上端が前記ガス供給管29の下端に着脱自在に取り付けられている。前記内部電極30は、中心軸にガス流路31がくり抜かれていると共に、底部に媒質ガスを吹き出すための絶縁材料からなるガス吹き出し部である例えばプラスチック、セラミックのような絶縁材料からなるガス吹き出し管32が挿着されている。なお、前記内部電極30の径はペットボトル1の口金径以下とする。
【0089】
図6は、本実施例1で用いるバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を計測するためのガス透過速度計測装置を示す概略図である。
【0090】
恒温槽41内には、計測器側フランジ42と取付フランジ43が互いに左右に対峙して配置されている。後述する炭素バリヤ膜が成膜されたダミーフィルム2は、前記計測器側フランジ42と前記取付フランジ43の間にプラスチックまたはゴム製のシール材であるOリング44,45を介して気密に挟持される。前記ダミーフィルム1の挟持により、このダミーフィルム2の左右にガス透過速度計測室(左室)46、計測ガス導入室(右室)47がそれぞれ形成される。
【0091】
ガス透過速度の計測ガス、例えば酸素ガスの供給系48は、酸素濃度計測器49内の図示しない流量調節系を通して酸素導入用サス管50に接続され、このサス管50は前記取付フランジ43に前記計測ガス導入室(右室)47と連通するように接続されている。
【0092】
キャリヤガス供給系(純窒素ガス供給系)51は、酸素濃度計測器49内の図示しない流量調節系を通してキャリヤガス導入用サス管52に接続され、このサス管52は前記計測器側フランジ42に前記ガス透過速度計測室(左室)46と連通するように接続されている。
【0093】
酸素排出用サス管53は、一端が前記取付フランジ43に前記計測ガス導入室(右室)47と連通するように接続され、他端が前記酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して排気ポンプ54に接続されている。
【0094】
キャリヤガス排出用サス管55は、一端が前記計測器側フランジ42に前記ガス透過速度計測室(左室)46と連通するように接続され、他端が前記酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に接続されている。
【0095】
なお、前記酸素濃度計測器49は制御器56により酸素ガス、キャリヤガスの供給の制御および酸素透過量の算出などがなされる。
【0096】
次に、図5に示す炭素膜形成装置を用いて内面にダミーフィルムが密着されたプラスチック容器への炭素膜被覆方法を説明する。
【0097】
まず、前述した図1に示すようにプラスチック容器、例えば口部の径が約70mm、肉厚が400μm、内容積が500mLのペットボトル1を用意した。このペットボトル1内に12cm角で厚さが10μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなるダミーフィルム2を丸めて挿入し、そのペットボトル1内面にダミーフィルム2を例えば接着剤により密着させてセッティングした。前記ダミーフィルム2は、通常、前処理を行う必要がないが、埃などが問題となるときは溶剤や水などで洗浄して乾燥させてもよい。
【0098】
図示しないプッシャーにより外部電極底部材15、円板状絶縁体17および基台13を取り外して外部電極本体14の底部を開放した。つづいて、厚さが10μmのダミーフィルム2が密着されたペットボトル1を開放した外部電極本体14の底部側からそのペットボトル1の口部側から挿入した後、図示しないプッシャーにより外部電極本体14の底部側に外部電極底部材15、円板状絶縁体17および基台13をこの順序で取り付けることによって、図5示すようにペットボトル1の口部から肩部が誘電体材料からなる円柱状スペーサ19の空洞部18内に、前記ペットボトル1の肩部から底部側が前記外部電極16内に収納した。このとき、前記ペットボトル1は排気管12にその口部を通して連通された。
【0099】
次いで、図示しない排気手段により分岐排気管23および排気管22を通して前記排気管22内および前記ペットボトル1内外のガスを排気した。つづいて、媒質ガス(C2H2ガス)をガス供給管29を通して内部電極30のガス流路31に供給し、この内部電極30の底部に挿着した絶縁材料からなるガス吹き出し管32からペットボトル1内に吹き出させた。このC2H2ガスは、さらにペットボトル1の口部に向かって流れていく。つづいて、ガス供給量とガス排気量のバランスをとり、前記ペットボトルB内を所定のガス圧力に設定した。
【0100】
次いで、高周波電源25から例えば周波数13.56MHzの高周波電力をケーブル26、整合器28および給電端子27を通して前記外部電極16の本体14に供給した。このとき、前記内部電極30の周囲にプラズマが生成された。このようなプラズマの生成によって、前記C2H2ガスが前記プラズマで解離されて前記外部電極16およびスペーサ19内のペットボトル1のダミーフィルム2を含む内面に均一厚さで均質な炭素膜(バリヤ膜)がコーティングされた。
【0101】
炭素膜の厚さが所定の膜厚に達した後、前記高周波電源25からの高周波電力の供給を停止し、C2H2ガスの供給の停止、残留ガスの排気を行い、ガスの排気を停止した後、窒素、希ガス、又は空気等を前記ガス供給管29を通して内部電極30のガス流路31およびガス吹き出し管32を通してペットボトル1内に供給し、このペットボトル1内外を大気圧に戻し、内面炭素膜被覆ペットボトルを取り出す。その後、前述した順序に従ってペットボトル1を交換し、次のペットボトルのコーティング作業へ移した。
【0102】
このような炭素膜のコーティングにおいて、その条件を下記のように設定した。
【0103】
<コーティング条件>
・円柱状スペーサ19:ホトベール(商品名、住金セラミックス製)から作った、
・ガス吹き出し管32:径1mm、
・媒質:C2H2ガス、
・媒質のガス流量:124sccm、
・ペットボトル1および排気管22内のガス圧力:0.3Torr、
・外部電極16に供給する高周波電力:13MHz、1600W。
【0104】
次に、前述した図6に示すガス透過速度計測装置を用いて炭素膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度(酸素透過速度)の計測を説明する。
【0105】
前記ペットボトル1から炭素膜被覆ダミーフィルム2を例えばピンセットで取り出し、このダミーフィルム2を計測器側フランジ42と前記取付フランジ43の間にそのフィルム2の炭素膜4が計測器側フランジ42に対向するようにOリング44,45を介して気密に挟持した。この時、ダミーフィルム2を境に前記フランジ42、43間の空間がガス透過速度計測室(左室)46および計測ガス導入室(右室)47に分離する。また、恒温槽41内の温度をバリヤ性計測の標準値である23℃に設定した。
【0106】
次いで、酸素ガスの供給系48から酸素(または空気などのガス透過速度の計測ガス)を酸素濃度計測器49内の図示しない配管系および酸素導入用サス管50を通して計測ガス導入室(右室)47に連続的に供給し、排気ポンプ54を作動して酸素を酸素排出用サス管53、前記酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して排出した。計測初期は、前記ダミーフィルム2を取り付けた際に計測ガス導入室(右室)47および酸素導入用サス管50、酸素排出用サス管53内に残存する大気を排出し、酸素100%にするために酸素ガスの流量を200sccm程度まで増加させた。10分間から30分間程度この操作を行った後、10sccmに供給量を下げて連続的に運転した。
【0107】
一方、キャリヤガス供給系51から純窒素ガスのようなキャリヤガスを酸素濃度計測器49内の図示しない配管系およびキャリヤガス導入用サス管52を通してガス透過速度計測室(左室)46に連続的に供給し、ガス透過速度計測室(左室)46内のガスをキャリヤガス排出用サス管55から前記酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に流通させた。計測初期は、前記右室47側と同様に、ダミーフィルム2を取り付けた際にガス透過速度計測室(左室)46および酸素濃度計測器49までの排気サス管55、導入用サス管52内に残存した大気中の酸素を排出するために、キャリヤガスの流量を200sccm程度まで増加させた。10分間から30分間程度この操作を行った後、10sccmに供給量を下げて連続的に運転した。前記計測ガス導入室(右室)47に供給された酸素は、前記ダミーフィルム2および被覆された炭素膜4を透過して前記ガス透過速度計測室(左室)46内に流入するため、前記キャリヤガスには極微量の酸素が含有される。この酸素の濃度を前記酸素検知器で計測し、この値と供給される純窒素(キャリヤガス)の流量から単位時間あたりの酸素透過量、つまり酸素ガス透過速度を算出した。
【0108】
計測終了後のキャリヤガスは、酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して前記酸素排出用サス管41を流通する排気酸素と混合され、排気ポンプ54から排出した。これらのガス供給の制御および酸素透過量の算出等は、制御器56により行なった。
【0109】
(実施例2、3)
まず、前述した図1に示すようにプラスチック容器、例えば口部の径が約70mm、肉厚が400μm、内容積が500mLのペットボトル1を用意した。このペットボトル1内に12cm角で厚さが50μmおよび200μmのPETからなるダミーフィルム2を丸めてそれぞれ挿入し、各ペットボトル1内面にダミーフィルム2を例えば接着剤によりそれぞれ密着させてセッティングした。
【0110】
次いで、厚さが50μmおよび200μmのダミーフィルム2が内面に密着された前記2つのペットボトルについて、実施例1と同様な方法によりペットボトル1のダミーフィルム2を含む内面に均一厚さで均質な炭素膜(バリヤ膜)をそれぞれコーティングした。さらに、各炭素膜被覆ダミーフィルムについて実施例1と同様な方法により酸素透過速度を算出した。
【0111】
(比較例1)
まず、前述した図1に示すようにプラスチック容器、例えば口部の径が約70mm、肉厚が400μm、内容積が500mLのペットボトル1を用意した。このペットボトル1内に12cm角で厚さが400μm(ペットボトル1の肉厚と同厚さ)のPETからなるダミーフィルム2を丸めて挿入し、そのペットボトル1内面にダミーフィルム2を例えば接着剤により密着させてセッティングした。
【0112】
次いで、厚さが400μmのダミーフィルム2が内面に密着された前記ペットボトルについて、実施例1と同様な方法によりペットボトル1のダミーフィルム2を含む内面に均一厚さで均質な炭素膜(バリヤ膜)をコーティングした。さらに、各炭素膜被覆ダミーフィルムについて実施例1と同様な方法により酸素透過速度を算出した。
【0113】
得られた実施例1〜3および比較例1の炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を図7〜図10にそれぞれ示す。これらの図7〜図10において、横軸は計測開始からの経過時間、縦軸は計測されたガス透過速度をダミーフィルムの計測面積(たとえば50cm2)とペットボトルの面積(たとえば400cm2)の比を用いてペットボトル1パッケージあたりに換算した換算ペットボトル酸素透過速度を示している。また、炭素膜被覆ダミーフィルムの厚さと酸素透過速度の計測において定常状態に達するまでの時間との関係を図11に示す。
【0114】
本実施例1〜3の結果である図7〜図9に示すように定常状態になるまでに要する時間は、ダミーフィルム2の厚さが10μmで0.3時間、ダミーフィルム2の厚さが50μmで2時間、ダミーフィルム2の厚さが200μmで25時間であり、ダミーフィルム2の厚さが400μmの比較例1に比べて圧倒的に短縮されることがわかる。
【0115】
また、図11に示すように定常状態になるまでの経過時間はフィルム厚さの二乗に比例している。これは、前述したガス透過速度の計算モデルで説明したとおり、ダミーフィルムにコーティングした炭素膜(バリヤ膜)のガス透過速度が定常状態になる時間はダミーフィルムのみのガス透過速度が定常状態になる時間で決まり、それはダミーフィルムの厚さの自乗に反比例するためである。
【0116】
また、実施例2、3の結果である図8、図9においては比較例1の結果である図10と同じように一旦ガス透過速度が低くなり、その後徐々に増加するのに対し、厚さ10μmのダミーフィルムを用いた実施例1では図7に示すようにガス透過速度が低くなる時間帯が現れない。これは、ダミーフィルムを取り付けた際にガス透過速度計測室(左室)46および酸素濃度計測器49までのキャリヤガス排気配管55内に残存した大気に含まれていた酸素が系外に排気される前にダミーフィルム2内の酸素量が上昇し終わって定常状態に入っているためと考えられる。このように計測された換算ペットボトル酸素透過速度は、従来の方法でペットボトルをそのまま実測した酸素透過速度と良く一致した。
【0117】
これに対し、ペットボトルの厚さと同等の400μmのダミーフィルムを用いた比較例1の結果を示す図10において、計測の初期はダミーフィルムを取り付けた際にガス透過速度計測室(左室)46および酸素濃度計測器49までのキャリヤガス排気配管55内に残存した大気に含まれていた酸素が計測されるため酸素透過速度が高く算出される。酸素透過速度は、酸素が十分に排気されるまで値は低下する。その後、酸素透過速度は徐々に増加する。
【0118】
また、比較例1の結果を示す図10から定常状態になるまでの必要時間は約70時間で、既述した図18に示したペットボトルのまま計測した場合の約100時間とそれほど変わらない。これはPETからなるダミーフィルムの厚さがペットボトルのPETの厚さとほぼ同等なためである。定常状態になるまでの必要時間に関して、ペットボトルの方が長くなっているのは、ペットボトルの場合、口元や底の部分の厚さが胴部の厚さ(400μm)よりも厚いため、その影響が出ていると考えられる。
【0119】
本発明の実施例1〜3において、前述したガス透過速度の計算モデルで説明したように、コーティングした炭素膜(バリヤ膜)のバリヤ性がダミーフィルム自体やペットボトル自体より高い場合(例えばダミーフィルム自体やペットボトル自体のバリヤ性の5倍程度以上)では、ダミーフィルム自体やペットボトル自体のバリヤ性は全体のバリヤ性に影響しない。そのため、換算の際にダミーフィルムの厚さを考慮する必要はない。したがって、ダミーフィルムの酸素ガス透過速度を計測することによって、このダミ−フィルムをセッティングした炭素膜被覆ペットボトルのガスバリヤ性を迅速に評価することができる。
【0120】
(実施例4)
まず、前述した図4に示すようにプラスチック容器、例えば口部の径が約70mm、肉厚が400μm、内容積が500mLのペットボトル1を用意した。このペットボトル1内に3cm角で厚さが10μmのPETからなる3枚のダミーフィルム2を丸めて順次挿入し、そのペットボトル1内面に3枚のダミーフィルム2をペットボトル1底部側から口部に向かって例えば接着剤によりそれぞれ密着させてセッティングした。
【0121】
次いで、図4に示す3枚のダミーフィルム2が内面に密着された前記ペットボトルについて、実施例1と同様な方法によりペットボトル1の3枚のダミーフィルム2を含む内面に均一厚さで均質な炭素膜(バリヤ膜)をそれぞれコーティングした。さらに、各炭素膜被覆ダミーフィルムについて実施例1と同様な方法により酸素透過速度を算出した。
【0122】
このような実施例4によれば、炭素膜被覆ペットボトルの高さ方向におけるバリヤ性の分布を迅速に評価できる。
【0123】
すなわち、炭素膜被覆ペットボトルにおいて前記成膜方法によってはペットボトル内に炭素膜の厚さ分布を生じることがある。炭素膜被覆ペットボトルの研究開発や品質管理では、そのような炭素膜の厚さ分布、つまりガスバリヤ性の分布を評価する必要がある場合がある。しかしながら、従来法では炭素膜被覆ペットボトルの高さ方向における酸素透過速度を正確に計測することができないか、またはそれらの酸素透過速度が不可能であった。具体的には、従来の切出しシートのガス透過速度計測においてペットボトルの肩部から切り出したシートでは湾曲する。このため、ガス透過速度計測装置では平面シートを想定して設計されているため、湾曲したシートでは計測部に装着できず、酸素透過量を計測できない場合がある。また、従来の炭素膜被覆ペットボトルのままでガス透過速度計測装置で酸素ガス透過量を計測する場合、ペットボトル全体の酸素ガス透過量として計測されるため、局所(例えば肩部)での酸素ガス透過速度の計測が不可能になる。
【0124】
このようなことから、本実施例4ではペットボトル1内面に複数枚、例えば3枚のダミーフィルム2をペットボトル1底部側から口部に向かって例えば接着剤によりそれぞれ密着させてセッティングし、炭素膜の成膜後にペットボトルから取り出した3枚の炭素膜被覆ダミーフィルムの酸素透過速度を計測することによって、従来法では困難であった炭素膜被覆ペットボトルの高さ方向など、各部におけるバリヤ性の分布を迅速に評価できる。
【0125】
<第2実施形態>
この第2実施形態では、プラスチック部材であるプラスチック容器(例えばペットボトル)のバリヤ性の評価方法を説明する。
【0126】
図12は、この第2実施形態で用いられるバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を計測するための改良したガス透過速度計測装置を示す概略図である。なお、図12において前述した図6と同様な部材は同符号を付した説明を省略する。
【0127】
図12に示すガス透過速度計測装置は、取付フランジ43と対向する計測器側フランジ42の面に環状(例えば四角環状)の金属エッジ57を形成した構造を有する。
【0128】
図12に示すガス透過速度計測装置において、バリヤ膜4が被覆されたダミーフィルム2を前記計測器側フランジ42と前記取付フランジ43の間にダミーフィルム2が計測器側フランジ42の金属エッジ57に当接し、炭素膜4が取付フランジ43に対向するようにOリング45を介して気密に挟持する。このような取付形態によれば、金属エッジ57がバリヤ膜4と反対のダミーフィルム1の面に食い込んで高いシール性能を発揮できるため、前述した実施例1と同様な手法で酸素ガス透過速度を計測する際、酸素を含むキャリヤガスの大気へのリークを防止できる。その結果、バリヤ性の高いバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムや、前述した実施例4のようにサイズの小さいバリヤ膜被覆ダミーフィルムを適用しても高い精度で酸素ガス透過速度を計測でき、バリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性を評価できる。
【0129】
すなわち、バリヤ性の高いバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムや、サイズの小さいバリヤ膜被覆ダミーフィルムを前述した図6に示すガス透過速度計測装置に取り付けた場合、ダミーフィルム2をシールしているOリング44において大気のリークまたはガス放出によりガス透過速度が実際より高く計測される不具合が生じる。例えば、ガス透過速度が比較的高い0.06cc/m2/day程度の場合にはダミーフィルムの計測面積が実施例1のように50cm2であれば、ダミーフィルムを透過して酸素検出器に流れる酸素透過量は0.0003cc/dayで、ガスリーク量に換算して4×10-10Pa・m3/s程度である。このような場合には、良質の真空グリースを用いてシールすればリーク量(10-11Pa・m3/s台)が無視できる程度に低減できる。しかしながら、ダミーフィルムの計測面積を例えば5cm2程度に小さくすると、このダミーフィルムを透過する酸素量は0.00003cc/dayとなり、ガスリーク量に換算して0.4×10-10Pa・m3/s程度となって、Oリングによるシールではリークが無視できない量になる。
【0130】
このようなことから、図12に示すように取付フランジ43と対向する計測器側フランジ42の面に環状(例えば四角環状)の金属エッジ57を形成し、計測器側フランジ42とダミーフィルム2の間のガス透過速度計測室(左室)46側のシール性を高めることによって、バリヤ性の高いバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムや、サイズの小さいバリヤ膜被覆ダミーフィルム、つまり透過する酸素のようなガスの量が減少されるダミーフィルムを適用しても、前記シール部でのリーク、ガス放出を防止してガス透過速度を高精度で計測することができる。
【0131】
事実、図12に示すガス透過速度計測装置、5cm2程度の小さい寸法の炭素膜被覆ダミーフィルムを用い、キャリヤガス流量を10sccmから1sccmに減少させた以外、実施例1と同様な方法で酸素ガス透過速度を計測した結果、誤差なく計測できた。
【0132】
(第3実施形態)
この第3実施形態では、プラスチック部材であるプラスチック容器(例えばペットボトル)のバリヤ性の評価方法を説明する。
【0133】
まず、プラスチック容器のバリヤ膜被覆面に前記容器の肉厚より薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、前記各プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する。つづいて、前記プラスチック容器のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する。予め求めたバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度とダミーフィルムのガス透過速度との相関に基づいて計測されたダミーフィルムのガス透過速度からバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度を求めることによりそのプラスチック容器のバリヤ性を評価する。
【0134】
前記バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度とダミーフィルムのガス透過速度との相関を求めるには、プラスチック容器のバリヤ膜被覆面にその容器に肉厚より薄い膜厚の複数枚のダミーフィルムをそれぞれ配置し、前記各プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムに異なる厚さのバリヤ膜をそれぞれ成膜する工程と、前記各プラスチック容器のバリヤ膜被覆面から厚さの異なるバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去り、これらダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度をそれぞれ計測する工程と、前記バリヤ膜が被覆された各プラスチック部材を等圧法によりガス透過速度をそれぞれ計測する工程と、計測された各プラスチック容器のガス透過速度と計測された各ダミーフィルムのガス透過速度からそれらのガス透過速度の相関関係を例えば検量線等として作成する。
【0135】
このような第3実施形態によれば、計測されたバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度からバリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性をより高い精度で評価することができる。
【0136】
すなわち、前述した第1実施形態の実施例1では計測された酸素透過速度をダミーフィルムの面積とペットボトルの面積の比を用いてペットボトル1パッケージあたりに換算した換算ペットボトル酸素透過速度が実際のペットボトルの酸素透過速度とほぼ等しいことを前提にしてバリヤ性を評価した。
【0137】
しかしながら、表面状態が荒れたダミーフィルムや静電気による付着防止用の活剤が使用されているダミーフィルムを用いる場合には、成膜されるバリヤ膜に欠陥ができ、ペットボトル表面に成膜されたバリヤ膜よりバリヤ性が低下することがある。また、ペットボトルに成膜されたバリヤ膜内に厚さ分布がある場合にも前記面積比による換算が実際の値と合わないことがある。
【0138】
本第3実施形態では、図13に示すように前記面積比を用いずにバリヤ膜被覆ダミーフィルムの酸素透過速度とこのダミ−フィルムが取り付けられたバリヤ膜被覆ペットボトルの実測酸素透過速度とを用いて検量線を作成する。この検量線を用いれば、バリヤ膜被覆ダミーフィルムの計測で得られた酸素透過速度から実際のペットボトルの酸素透過速度を予測することができ、前記のような場合でもバリヤ膜被覆ペットボトルのバリヤ性を迅速に評価することができる。
【0139】
なお、前述した第1実施形態から第3実施形態では酸素および空気のガス透過速度の計測例を示したが、二酸化炭素や水蒸気など他の計測ガスでも同様の手法を用いることができる。また、成膜方法はプラズマCVDであったが、スパッタリングなどの方法でも同様に用いることができる。
【0140】
<第4実施形態>
この第4実施形態では、プラスチック部材としてプラスチックシートのバリヤ性の評価方法を説明する。ここでは、バリヤ膜としてSiOx膜を用いた。
【0141】
まず、プラスチックシートのバリヤ膜被覆面に前記シートの厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、前記プラスチックシートを含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する。つづいて、前記プラスチックシートのバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する。
【0142】
前記ダミーフィルムは、前記第1実施形態で説明したのと同様なものが用いられる。
【0143】
このようなバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度計測結果から、前述した第1実施形態と同様な発明思想に基づきにバリヤ膜被覆プラスチックシートのバリヤ性を評価できる。
【0144】
(実施例5)
まず、図14に示すように50cm角、厚さ300μmのPETシート61に10cm角、厚さ25μmのポリイミドからなるダミーフィルム62を貼り付けた。
【0145】
次いで、図15示すプラズマCVD装置の真空チャンバ71内の上下に対向した平板電極72、73のうちの下部の平板電極(アース電極)73上にダミーフィルム62を貼り付けられたPETシート61を設置した。
【0146】
次いで、真空ポンプ74を作動し、排気管75を通して前記真空チャンバ71内を50mTorrまで真空引きした後、成膜ガスとしてのHMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)と酸素ガスの混合ガスを供給管76を通して前記真空チャンバ71内に流量100sccmで供給し、真空チャンバ71内が100mTorrの圧力になるように排気速度を調整した。つづいて、高周波電源77から周波数2MHz、出力300Wの高周波電力を前記上部平板電極72に供給し放電を発生させることにより、前記ダミーフィルム62を含むPETシート61上面にSiOxを主成分とするバリヤ膜を成膜した。1秒間から10秒間程度の所定の成膜時間の後に、成膜ガス、電力の供給を止めて大気開放し、前記ダミーフィルム62をPETシートとともに取り出した。
【0147】
前記SiOxを主成分とするバリヤ膜の成膜に際し、ダミーフィルムへの熱入力が大きく、PETからなるダミーフィルムを用いた場合、収縮してその後の酸素透過速度の計測に使用できなかった。これに対し、耐熱性の高いポリイミドからなるダミーフィルムでは収縮を生じることなく、バリヤ膜の成膜が可能となった。
【0148】
バリヤ膜被覆ダミーフィルムをシートから取り去り、このダミーフィルムを実施例1と同様に酸素透過速度を計測することにより、バリヤ膜被覆PETシートノバリヤ性を迅速な評価することが可能となった。
【0149】
なお、実施例5においてTEOS(テトラエトキシシラン)などの有機系Si化合物と酸素ガスの混合ガスを成膜ガスとして用いてもよい。
【0150】
前記第1実施形態から第4実施形態では、炭素膜、SiOx膜を例として実施例を示したが、本手法が他のバリヤ膜たとえばAl等の金属薄膜や有機系の薄膜にも本手法が利用できる。
【0151】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法によればバリヤ膜が表面に被覆されたプラスチック容器またはバリヤ膜が表面に被覆されたシートにおけるバリヤ性を迅速に評価でき、ひいてはプラスチック容器またはシートに成膜装置によりバリヤ膜を成膜する際の膜正常性の迅速な見極めや、成膜条件の制御の指標に利用できる等の顕著な効果を奏する。また、バリヤ膜の成膜チャンバを数十台持つようなロータリー式の成膜装置の検収、健全性管理のための各チャンバの性能確認や、製品のサンプリング確認などのために、バリヤ性を頻繁に確認する操作において、本発明のようにバリヤ性評価の迅速化はコスト低減等の利益が絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態で用いるダミーフィルムが内面に取り付けられたペットボトルを示す斜視図。
【図2】 本発明の第1実施形態で用いるダミーフィルムが内面に取り付けられたペットボトルの他の形態を示す斜視図。
【図3】 本発明の第1実施形態で用いるダミーフィルムが内面に取り付けられたペットボトルの他の形態を示す斜視図。
【図4】 本発明の第1実施形態で用いるダミーフィルムが内面に取り付けられた角形ペットボトルを示す斜視図。
【図5】 本発明の実施例1で用いたプラスチック容器(例えばペットボトル)内面への炭素膜形成装置を示す断面図。
【図6】 本発明の実施例1で用いた酸素透過速度計測装置を示す概略図。
【図7】 本発明の実施例1における炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を示す特性図。
【図8】 本発明の実施例2における炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を示す特性図。
【図9】 本発明の実施例3における炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を示す特性図。
【図10】 比較例1における炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を示す特性図。
【図11】 炭素膜被覆ダミーフィルムの厚さと酸素透過速度の計測において定常状態に達するまでの時間との関係を示す特性図。
【図12】 本発明の第2実施形態で用いられるバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を計測するためのガス透過速度計測装置を示す概略図。
【図13】 本発明の第3実施形態におけるバリヤ膜被覆ダミーフィルムの酸素透過速度とバリヤ膜被覆ペットボトルの実測酸素透過速度との関係(検量線)を示す図。
【図14】 本発明の第4実施形態におけるプラスチックシートにダミーフィルムを貼り付けた状態を示す斜視図。
【図15】 本発明の第4実施形態で用いたプラズマCVD装置を示す概略図。
【図16】 バリヤ膜被覆シートのガス透過速度を計測するための市販のガス透過速度計測装置を示す概略図。
【図17】 ペットボトルのままの形で酸素透過速度計測するガス透過速度計測装置を示す概略図。
【図18】 ペットボトルのままでの酸素透過速度の計測における経過時間と1パッケージあたりの酸素透過速度の関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…ペットボトル、2,62…ダミーフィルム、14…外部電極、19…円柱状スペーサ、22…排気管、29…ガス供給管、30…内部電極、41…恒温槽、42…計測器側フランジ、43…取付フランジ、44,45…Oリング、46…ガス透過速度計測室(左室)、47…計測ガス導入室(右室)、48…酸素ガスの供給系、49…酸素濃度計測器、51…キャリヤガス供給系、57…金属エッジ、61…PETシート、71…真空チャンバ、72,73…平板電極、74…真空ポンプ、77…高周波電源。
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素バリヤ膜等のバリヤ膜が被覆されたプラスチック部材のバリヤ性評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばペットボトルのようなプラスチック容器またはプラスチック容器用のシートなどのプラスチック部材は、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素や水分などの透過、ペット樹脂成分の溶出を防止するために、プラスチック部材表面への膜被覆装置を用いて、その内面または外面にプラズマCVD法によりDLC(Diamond Like Carbon)のような炭素膜やSiOx膜などをコーティングすることが行われている。
【0003】
このようなプラスチック部材表面へのバリヤ膜被覆装置によりバリヤ膜を被覆する際、そのプラスチック部材のバリヤ性の評価を行なうことが重要である。バリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価は、次に挙げるガス透過速度を計測することによって行なわれている。
【0004】
(1)切出しシートによるガス透過速度計測方法
図16は、バリヤ膜被覆シートのガス透過速度を計測するための市販のガス透過速度計測装置を示す概略図である。
【0005】
恒温槽101内には、計測器側フランジ102と取付フランジ103が互いに左右に対峙して配置されている。バリヤ膜被覆ペットボトルの場合、このペットボトルから切出され、炭素バリヤ膜104が被覆された試験片(試験シート)105は、前記計測器側フランジ102と前記取付フランジ103の間にOリング106,107を介して気密に挟持される。前記試験片105は、その炭素バリヤ膜104が前記計測器側フランジ102と対向するように配置されている。前記試験片105の挟持により、前記試験片105と前記計測器側フランジ102の間にガス透過速度計測室(左室)108、前記試験片105と前記取付フランジ103の間に計測ガス導入室(右室)109がそれぞれ形成される。
【0006】
ガス透過速度の計測ガス、例えば酸素ガスの供給系110は、酸素濃度計測器111内の図示しない流量調節系を通して酸素導入用サス管112に接続され、このサス管112は前記取付フランジ103に前記計測ガス導入室(右室)109と連通するように接続されている。湿度のある条件で計測するために、計測ガスまたはキャリヤガスに水蒸気を加えて湿度を一定に保つ図示しない装置が酸素濃度計測器111内に付加されている場合もある。
【0007】
キャリヤガス供給系(純窒素ガス供給系)113は、酸素濃度計測器111内の図示しない流量調節系を通してキャリヤガス導入用サス管114に接続され、このサス管114は前記計測器側フランジ102に前記ガス透過速度計測室(左室)108と連通するように接続されている。
【0008】
酸素排出用サス管115は、一端が前記取付フランジ103に前記計測ガス導入室(右室)109と連通するように接続され、他端が前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して排気ポンプ116に接続されている。
【0009】
キャリヤガス排出用サス管117は、一端が前記計測器側フランジ102に前記ガス透過速度計測室(左室)108と連通するように接続され、他端が前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に接続されている。
【0010】
なお、前記酸素濃度計測器111は制御器118により酸素ガス、キャリヤガスの供給の制御および酸素透過量の算出などがなされる。
【0011】
前述した図16に示すガス透過速度計測装置によるシートの酸素透過速度の計測方法を説明する。
【0012】
ペットボトルから切り出した炭素バリヤ膜104が被覆された試験片(試験シート)105を計測器側フランジ102と前記取付フランジ103の間にOリング106,107を介して気密に挟持し、試験シート105を境にガス透過速度計測室(左室)108および計測ガス導入室(右室)109に分離する。この時、恒温槽101内の温度をバリヤ性計測の標準値である23℃に設定する。
【0013】
酸素ガスの供給系110から酸素を酸素濃度計測器111内の図示しない配管系および酸素導入用サス管112を通して計測ガス導入室(右室)109に連続的に供給し、排気ポンプ116を作動して酸素を酸素排出用サス管115、前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して排出する。その後、キャリヤガス供給系113から純窒素ガスのようなキャリヤガスを酸素濃度計測器111内の図示しない配管系およびキャリヤガス導入用サス管114を通してガス透過速度計測室(左室)108に連続的に供給し、ガス透過速度計測室(左室)108内のガスをキャリヤガス排出用サス管117から前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に流通させる。前記計測ガス導入室(右室)109に供給された酸素は、前記試験シート105を透過して前記ガス透過速度計測室(左室)108内に流入するため、前記キャリヤガスには極微量の酸素が含有される。この酸素の濃度を前記酸素検知器で計測し、この値と供給される純窒素(キャリヤガス)の流量から単位時間あたりの酸素透過量、つまり酸素ガス透過速度を算出する。計測終了後のキャリヤガスは、酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して前記酸素排出用サス管115を流通する排気酸素と混合され、排気ポンプ116から排出する。湿度のある条件で計測する場合には、酸素濃度計測器111内に付加されている図示しない装置により計測ガスまたはキャリヤガスに水蒸気を加え、それらの湿度を一定に保つ。これらのガス供給の制御および酸素透過量の算出等は、制御器118によりなされる。
【0014】
本方式は、ガス透過速度計測室(左室)108と計測ガス導入室(右室)109のガス種が異なるが、圧力がほぼ等しく大気圧程度であるため、等圧法と呼ばれている。
【0015】
このようなバリヤ膜被覆ペットボトルから切出したシートのガス透過速度の計測によりそのバリヤ膜被覆ペットボトルのバリヤ性を評価することが可能になる。
【0016】
(2)ボトルのままでのガス透過速度計測方法
図17は、ペットボトルのままの形で酸素透過速度計測するガス透過速度計測装置を示す概略図である。
【0017】
恒温槽201内には、ボトル装填冶具202が配置されている。このボトル装填冶具202は、上端が開放した容器203と、この容器203の上端開口部にOリング204を介して気密に取り付けられるサス製蓋体205とから構成されている。
【0018】
ガス透過速度の計測ガス、例えば酸素ガスの供給系206は、酸素濃度計測器207内の図示しない流量調節系を通して酸素導入用サス管208に接続され、このサス管208は前記蓋体205を貫通して前記容器203内の低部付近に挿入されている。酸素排出用サス管209は、一端が前記蓋体205を貫通して前記容器203内の上部付近に挿入され、他端が前記酸素濃度計測器207内の図示しない配管系を通して排気ポンプ210に接続されている。なお、前記酸素導入用サス管208および酸素排出用サス管209は、前記蓋体205との貫通部でそれぞれ溶接されて、気密に挿着されている。
【0019】
キャリヤガス供給系(純窒素ガス供給系)211は、前記酸素濃度計測器207内の図示しない流量調節系を通してキャリヤガス導入用サス管212に接続され、このサス管212は前記蓋体205を貫通して前記容器203内に装填されるペットボトル中の底部付近に挿入される。キャリヤガス排出用サス管213は、一端が前記蓋体205を貫通して前記容器203内に装填されるペットボトル中の口部付近に挿入され、他端が前記酸素濃度計測器111内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に接続されている。なお、前記キャリヤガス導入用サス管212およびキャリヤガス排出用サス管213は、前記蓋体205との貫通部でそれぞれ溶接されて、気密に挿着されている。湿度のある条件で計測するために、計測ガスまたはキャリヤガスに水蒸気を加えて湿度を一定に保つ図示しない装置が酸素濃度計測器111内に付加されている場合もある。
【0020】
前記酸素濃度計測器207は制御器214により酸素ガス、キャリヤガスの供給の制御および酸素透過量の算出などがなされる。
【0021】
前述した図17に示すガス透過速度計測装置によるペットボトルの酸素透過速度の計測方法を説明する。
【0022】
まず、ペットボトル214の口部をボトル装填冶具202の蓋体205の内面にその蓋体205を貫通するキャリヤガス導入用サス管212およびキャリヤガス排出用サス管213がそれぞれペットボトル214内に挿入されるように当接させ、その口部を前記蓋体205内面にエポキシ接着剤215で気密に接着する。つづいて、前記蓋体205を容器203の上部開口部にOリング204を挟んで鋲着し、前記ペットボトル214を前記容器203および蓋体205内の空間に気密に収納する。さらに、このボトル装填冶具202およびサス管208,209,212,213の一式を恒温槽201内に設置し、温度をバリヤ性計測の標準値である23℃に設定する。
【0023】
酸素ガスの供給系206から酸素を酸素濃度計測器207内の図示しない配管系および酸素導入用サス管208を通して前記ボトル装填冶具202の容器203に導入し、排気ポンプ210を作動してこの容器203内の酸素を酸素排出用サス管209および酸素濃度計測器207内の図示しない配管系を通して排出する。初期には、大気を排出するために多量に酸素を供給するが、その後は10sccm程度の微量に減らす。
【0024】
その後、キャリヤガス供給系211から純窒素ガスのようなキャリヤガスを酸素濃度計測器207内の図示しない配管系およびキャリヤガス導入用サス管212を通してペットボトル215内に供給し、このペットボトル215内のガスをキャリヤガス排出用サス管213を通して前記酸素濃度計測器207の図示しない酸素検知器に流通させる。初期には大気を排出するため多量に純窒素(キャリヤガス)を供給するが、その後は10sccm程度の微量に減らし、図示しない酸素検知器に流通させる。ペットボトル215の外部に供給された酸素が矢印217で示すようにそのペットボトル215のバリヤ膜および樹脂を透過してそのペットボトル内に流入するため、前記キャリヤガスに極微量の酸素が含まれる。この酸素の濃度を前記酸素検知器で計測し、この値と、供給している純窒素の流量から単位時間あたりの酸素透過量を算出する。計測終了後のキャリヤガスは、酸素濃度計測器207内の図示しない配管系を通して前記酸素排出用サス管209を流通する排気酸素と混合され、排気ポンプ210から排出する。湿度のある条件で計測する場合には、酸素濃度計測器111内に付加されている図示しない装置により計測ガスまたはキャリヤガスに水蒸気を加え、それらの湿度を一定に保つ。これらのガス供給の制御および酸素透過量の算出等は、制御器214によりなされる。
【0025】
このようなバリヤ膜被覆ペットボトルのガス透過速度の計測によりそのペットボトルのバリヤ性を評価することが可能になる。
【0026】
しかしながら、前記(1)の切出しシートのガス透過速度計測、前記(2)のペットボトルのままでのガス透過速度計測によるバリヤ性の評価方法では、以下のような問題を有する。
【0027】
ペットボトルの基材は、通常、400μm〜1000μmの厚さを有するため、酸素透過速度の計測で3日以上、炭酸ガス透過速度の計測で2週間程度かかる。その結果、ペットボトルのバリヤ性の評価に長い時間を費やし、その評価によるバリヤ膜の成膜条件の制御、調節等の操作の迅速化を妨げる。
【0028】
例えばペットボトルのままでの酸素透過速度の計測における経過時間と1パッケージあたりの酸素透過速度の関係を図18に示す。図18から明らかなように、酸素透過速度が最終値に安定するには7日(168時間)程度かかっている。短時間(3日:72時間)で酸素透過速度を求める場合、その計測値は最終値の酸素透過速度の8割程度であるため、あくまでも目安としのみ利用できるに留まる。精度の高い最終値を求めるには、通常7日〜10日、場合によっては15日程度必要である。このように長い計測時間を要するのは、ペットボトルの基材が400μm〜1000μmと厚いことから、酸素ガス溶解量の前記基材表裏方向の分布が安定するのに費やす時間が長くなることに起因する。特に、ペットボトルそのままで酸素透過速度を計測する場合、口部および肩部での基材の厚さが厚く、その領域の占有割合が大きくなると、酸素透過速度が定常状態になるのにさらに費やされ、結果としてより長い計測時間が必要になる。
【0029】
また、このような問題の他に、前記ペットボトルを切出して試験片で計測する場合、その試験片はペットボトルの形状により曲がって、平面状にできないことが多い。計測装置は、平面シートを想定して設計されているため、計測部に装着できず、酸素透過量を計測できない場合がある。さらに、切出した試験片を平面にできる場合であっても、面積を小さくする必要がある。その結果、ガス透過面積が小さくなって、ガス透過量が少なくなるために、ガス透過速度の計測精度が低下、結果としてバリヤ性の評価の信頼性を下げる。
【0030】
一方、ペットボトルのままでのガス透過速度の計測方法では、前述したようにペットボトルの口部をボトル装填冶具の蓋体に接着剤を用いて気密に接着する必要があるため、計測の準備および後始末に手間と時間がかかり、本計測での長時間化と相俟ってその評価によるバリヤ膜の成膜条件の制御、調節等の操作の迅速化をより一層妨げる。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、バリヤ膜被覆プラスチック容器またはバリヤ膜被覆プラスチックシートからなるバリヤ膜被覆プラスチック部材おいて、酸素のようなガスの透過速度がそのプラスチック部材の性状にそれほど支配されず、バリヤ膜の性状にほぼ支配されることを着目し、プラスチック部材のバリヤ膜の成膜時にそのバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを取付け、バリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測することによって、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材に近似したガス透過速度を短時間で計測することをでき、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性を迅速に評価し得る方法を見出し、本発明を完成した。
【0032】
また、本発明者らは、プラスチック部材のバリヤ膜の成膜時にそのバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、バリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測し、このガス透過速度を予め求めたバリヤ膜被覆プラスチック部材のガス透過速度とバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度の相関関係(例えば検量線)に照合させることによって、前記ダミーフィルムの短時間でのガス透過速度の計測および計測結果の検量線等への照合により、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性を迅速かつより高精度で評価し得る方法を見出し、本発明を完成した。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法は、プラスチック容器またはプラスチックシートからなるプラスチック部材のバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを取付け、前記プラスチック部材を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する工程と、
前記プラスチック部材のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0034】
本発明に係る別のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法は、プラスチック容器またはプラスチックシートからなるプラスチック部材のバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを取付け、前記各プラスチック部材を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する工程と、
前記プラスチック部材のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する工程と、
予め求めたバリヤ膜被覆プラスチック部材のガス透過速度とバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度との相関に基づいて前記計測されたバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度からバリヤ膜被覆プラスチック部材のガス透過速度を求める工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法を説明する。
【0036】
<第1実施形態>
この第1実施形態は、プラスチック部材としてプラスチック容器(例えばペットボトル)のバリヤ性の評価方法を説明する。
【0037】
(第1工程)
プラスチック容器のバリヤ膜被覆面にこの容器の肉厚より薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、このプラスチック容器をバリヤ膜成膜装置に設置し、前記プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する。
【0038】
前記プラスチック容器としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)から作られたボトル、いわゆるペットボトル等を用いることができる。
【0039】
前記プラスチック容器のバリヤ膜被覆面としては、その容器の使用形態によって内面、外面がある。
【0040】
前記ダミーフィルムは、ガス拡散定数が高く、耐熱温度が高く、かつガスバリヤ性がバリヤ膜のそれと比較して十分小さい材質であることが好ましい。特に、ダミーフィルムのガスバリヤ性がバリヤ膜のそれと比較して大きい材質を選ぶと、ガス透過速度の計測においてダミーフィルムのバリヤ性が支配的になって、バリヤ膜によるバリヤ性の評価に影響を与える虞がある。このようなダミーフィルムの材質は、プラスチック容器と同材質にすることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミドを挙げることができる。
【0041】
前記ダミーフィルムは、厚さが10μm以上、容器の肉厚の1/4以下(例えば容器の肉厚が800μmの場合、200μm以下)、より好ましくは10μm以上、100μm以下にすることが好ましい。ダミーフィルムの厚さを10μm未満にすると、プラスチック容器へのセッティングが困難になる虞がある。
【0042】
前記ダミーフィルムは、円形または四角形等の多角形状のものを用いることができる。特に、このダミーフィルムは後述する等圧法によるガス透過速度の計測に適用することから円形であることが好ましい。この円形のダミーフィルムは直径10cm前後の寸法を有することが好ましい。
【0043】
前記ダミーフィルムのセッティングは、例えば容器内面に適用する場合、1)ダミーフィルムに静電気を与え、このダミーフィルムを丸めて容器の口部から挿入し、その容器内面に静電気で密着させる方法、2)ダミーフィルムの片面に接着剤を塗布し、このダミーフィルムを丸めて容器の口部から挿入し、その容器内面に接着させる方法、3)ダミーフィルムを丸めて容器の口部から挿入し、接着シートを用いてダミーフィルムを容器内面に密着させる方法等を採用することができる。
【0044】
このようなセッティング方法において、容器内面にダミーフィルムを密着させることが好ましい。容器内面とダミーフィルムの間に隙間が存在すると、例えばバリヤ膜をプラズマCVDにより成膜する場合、隙間に発生する寄生容量によりダミーフィルム表面の電圧発生状態が容器内面のそれと異なる。また、ダミーフィルムから容器への熱伝達も変化する。その結果、ダミーフィルム上に成膜されたバリヤ膜が容器内面のそれと異なる性状になり、バリヤ被覆プラスチック容器のバリヤ性評価の信頼度が低下する虞がある。前述したように容器内面にダミーフィルムを密着させることにより、このような問題を回避できる。
【0045】
前記1)、3)のセッティング方法において、ダミーフィルムの厚さが薄く、容器の口部から挿入した際に内部で広がるような腰の強さが弱い場合には、このダミーフィルムを腰のある厚い下地フィルム上に予め貼り付け、この積層フィルムを丸めて挿入し、容器内部で広がって下地フィルム側を容器内面に密着させることが好ましい。この下地フィルムは、容器の形状であってもよいし、平板状でもよい。
【0046】
前記1)、2)の方法によるダミーフィルムのセッティング後におけるプラスチック容器(例えばペットボトル)の状態を図1に具体的に示す。図1中の1はペットボトル、2はこのペットボトル1内面に密着されたダミーフィルムである。
【0047】
前記3)の方法によるダミーフィルムのセッティング後におけるプラスチック容器(例えばペットボトル)の状態を図2に具体的に示す。図2中の1はペットボトル、2はこのペットボトル1内面に密着されたダミーフィルム、3はダミーフィルムをペットボトル1内面に密着させるための接着テープである。
【0048】
また、図3に示すように複数枚、例えば3枚のダミーフィルム2をペットボトル1内面にその高さ方向に沿ってセッティングするなど、各部にセッティングしてもよい。このようにペットボトル1内面の各部にダミーフィルム1をセッティングすれば、ペットボトル1の各部ごとのガス透過性を計測できるため、ペットボトル1のバリヤ性をより細やかに評価することが可能になる。
【0049】
さらに、図4に示すようにダミーフィルム2を角型のペットボトル1内面にセッティングしてもよい。
【0050】
前記バリヤ膜としては、例えば炭素膜を挙げることができる。
【0051】
前記プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムへのバリヤ膜の成膜は、各種のCVD技術が組み込まれた成膜装置を用いて行なうことができる。
【0052】
(第2工程)
前記プラスチック容器のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去る。つづいて、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度、例えば酸素透過速度を計測する。
【0053】
前記ダミーフィルムの等圧法によるガス透過速度の計測は、例えば前述した図15に示す市販のガス透過速度計測装置または後述する図6に示すガス透過速度計測装置を用いて行なうことが可能である。
【0054】
前記ダミーフィルムの等圧法によるガス透過速度の計測は、前記容器を構成するプラスチックのガラス転移温度−30℃以上、ガラス転移温度以下でなされることが好ましい。
【0055】
以上、本発明の第1実施形態によればプラスチック容器のバリヤ膜被覆面にこの容器の肉厚より薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、前記プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜した後、このプラスチック容器のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する。このガス透過速度の計測は、ダミーフィルムの厚さがプラスチック容器の肉厚より薄いため、従来のバリヤ膜被覆プラスチック容器(ペットボトル)から切出したシートのガス透過速度の計測およびバリヤ膜被覆プラスチック容器(ペットボトル)の形態でのガス透過速度の計測に比べて極めて短時間で実行できる。
【0056】
前述したようにバリヤ膜被覆プラスチック容器おいて、酸素のようなガスの透過速度がそのプラスチック容器(容器基材)の性状にそれほど支配されず、バリヤ膜の性状にほぼ支配されることから、前記バリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を短時間で計測できるため、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材に近似したガス透過速度を短時間で計測することをでき、ひいてはバリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性を迅速に評価することができる。
【0057】
これは、以下に説明するガス透過速度の計算モデルから明らかである。
【0058】
(1)ガス透過速度の理論式(非定常状態)
平板状の基材の内外面でガス(例えば酸素)の濃度が異なり、基材内での初期濃度が一様である場合,非定常1次元拡散問題を解くと、基材厚さ方向の位置Xでの流速Fの経時変化は、下記数1の式(1)で表される。
【0059】
【数1】
ここで、
p0 :基材内の被計測ガスの分圧(atm)、
p1:基材内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:基材外側の被計測ガスの分圧(atm)、
L:基材の厚さ(cm)、
P:気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
D:拡散係数(cm2/s)、
S:溶解度係数(P=D×Sの関係がある)。
【0060】
前記気体透過係数P、拡散係数Dは、下記数2の近似式で与えられる。
【0061】
【数2】
ここで、
P:気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
D:拡散係数(cm2/s)、
T:絶対温度(K)、
a〜d:基材の材質で決まる係数。
【0062】
したがって、前記拡散定数Dが大きく、温度Tが高く、基材の厚さLが薄いほど速く定常状態になる。この事実からガス透過速度の計測において、薄いフィルムを用いることによって、速やかに定常状態になる。バリヤ膜被覆フィルムの場合、バリヤ膜が薄いとその内部が定常になる時間は非常に早く、全体が定常になる時間はフィルム自体のガス透過速度が定常になる時間で決まる。
【0063】
(2)定常状態のバリヤ膜被覆プラスチック容器およびバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度
バリヤ膜フリーのプラスチック容器(例えばペットボトル)のガス透過速度FC(cm3(STP)/cm2/s)の定常値は、前記(1)式でt=0とすると、下記数3の(4)式になる。
【0064】
【数3】
ここで、
PC:プラスチック容器の気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LC:プラスチック容器の厚さ(cm)、
p1:プラスチック容器内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:プラスチック容器外側の被計測ガスの分圧(atm)。
【0065】
一方、バリヤ膜フリーのダミーフィルムのガス透過速度FF(cm3(STP)/cm2/s)の定常値は、下記数4の(5)式で表される。
【0066】
【数4】
ここで、
PF:ダミーフィルムの気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LF:ダミーフィルムの厚さ(cm)、
p1:ダミーフィルム内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:ダミーフィルム外側の被計測ガスの分圧(atm)。
【0067】
なお、L/Pはバリヤ性を表す定数であり、一定の圧力下(p2−p1=一定)ではL/Fがバリヤ性を表す定数である。
【0068】
ところで、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度FBC(cm3(STP)/cm2/s)の定常値は、下記数5の(6)式で表される。
【0069】
【数5】
ここで、
PB:バリヤ膜の気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LB:バリヤ膜の厚さ(cm)、
PC:プラスチック容器そのものの気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LC:プラスチック容器そのものの厚さ(cm)、
FB:バリヤ膜のガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
FC:プラスチック容器そのもののガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
p1:バリヤ膜被覆プラスチック容器内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:バリヤ膜被覆プラスチック容器外側の被計測ガスの分圧(atm)。
【0070】
一方、前記バリヤ膜被覆プラスチック容器と同じバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムのガス透過速度FBF(cm3(STP)/cm2/s)の定常値は、下記数6の(7)式で表される。
【0071】
【数6】
ここで、
PB:バリヤ膜の気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LB:バリヤ膜の厚さ(cm)、
PF:ダミーフィルムの気体透過係数(cm3(STP)/cm/s/atm)、
LF:ダミーフィルムの厚さ(cm)、
FB:バリヤ膜のガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
FF:ダミーフィルムのガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
p1:バリヤ膜被覆ダミーフィルム内側の被計測ガスの分圧(atm)、
p2:バリヤ膜被覆ダミーフィルム外側の被計測ガスの分圧(atm)。
【0072】
したがって一定のガス圧条件下で、プラスチック容器そのもののガス透過速度FCとダミーフィルムのガス透過速度FFが分かっていれば、バリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度FBFを計測することによって、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度FBCを推測することができる。
【0073】
すなわち、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度FBCは下記数7に示す(8)式で表される。
【0074】
【数7】
ここで、
FB:バリヤ膜のガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
FF:ダミーフィルムのガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)、
FC:プラスチック容器そのもののガス透過速度(cm3(STP)/cm2/s)。
【0075】
前記(8)式から、被覆するバリヤ膜のバリヤ性が良好、つまり1/FBが大、プラスチック容器およびダミーフィルムのガス透過速度がいずれも無視できる、つまり1/FC、1/FFとも小である場合、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度はバリヤ膜被覆ダミーフィルムで計測したガス透過速度の値と近似的に等しくなる。
【0076】
したがって、既述したように前記バリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を短時間で計測できることによって、前記バリヤ膜被覆プラスチック部材に近似したガス透過速度を短時間で計測することをできるため、バリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性を迅速に評価することができる。
【0077】
また、第1実施形態によれば次のような効果を奏する。
【0078】
(1)ガス透過速度の計測対象が平板状のダミーフィルムであるため、既存の装置にそのまま適用して計測できる。その結果、従来のようにバリヤ膜被覆プラスチック容器から試験片を切出したり、またバリヤ膜被覆プラスチック容器のままでガス透過速度を計測する場合のように計測の準備に手間と時間が費やされたり、するのを回避でき、ガス透過速度のトータル的な計測時間を短縮できる。
【0079】
(2)ダミーフィルムとして直径10cm程度のものを用いれば、市販のガス透過速度計測装置の装着部にそのまま適用してガス透過速度を計測できる。
【0080】
(3)例えば10μm以上、プラスチック容器の肉厚の1/4以下の薄いダミーフィルムを用いれば、プラスチック容器の例えば内面にダミーフィルムをセッティングし、バリヤ膜を成膜するプロセスにおいて、前記ダミーフィルムの存在による成膜プロセスへの影響が少なく、実プロセスでプラスチック容器内面に成膜されたバリヤ膜と同等のバリヤ膜をダミーフィルム上に成膜できるため、本方法で計測したバリヤ膜に起因するガス透過速度を実プロセスのプラスチック容器のバリヤ膜に起因するガス透過速度と同等にできる。
【0081】
(4)例えば10μm以上、プラスチック容器の肉厚の1/4以下の薄いダミーフィルムをプラスチック容器のバリヤ膜被覆面に密着させることによって、前記容器のバリヤ膜被覆面にフィルムが存在しない状態と略同一にできるため、前記ダミーフィルム上に実プロセスで前記容器のバリヤ膜被覆面に成膜されるバリヤ膜と略同等のバリヤ膜を形成することができる。
【0082】
(実施例1)
図5は、本実施例1で用いるプラスチック容器(例えばペットボトル)内面への炭素膜形成装置を示す断面図である。
【0083】
上下端にフランジ11a,11bを有する円筒状支持部材12は、円環状基台13上に載置されている。筒状の金属製の外部電極本体14は、前記支持部材12内に配置されている。円板状をなす金属製の外部電極底部材15は、前記外部電極14の底部に着脱可能に取り付けられている。前記外部電極本体14および前記外部電極底部材15により炭素被膜を形成するプラスチック容器(例えばペットボトル)1を設置可能な大きさの空間をもつ有底円筒状の外部電極16が構成されている。なお、前記基台13と前記外部電極底部材15の間には円板状絶縁体17が配置されている。
【0084】
なお、前記外部電極底部材15、前記円板状絶縁体17および前記基台13は図示しないプッシャーにより前記外部電極本体14に対して一体的に上下動し、前記外部電極本体14の底部を開閉する。
【0085】
内部に挿入されるペットボトル1の口部および肩部に対応する円柱および円錐台を組み合わせた形状をなす空洞部18を有する誘電体材料(例えばプラスチックまたはセラミック)からなる円柱状スペーサ19は、前記外部電極16における前記本体14の上部に挿入されている。このスペーサ19は、この上に載置される後述する環状絶縁部材から螺着されたねじ(図示せず)により固定されている。このように円柱状スペーサ19を前記外部電極16における前記本体14の上部に挿入固定することにより、前記外部電極本体14の底部側からペットボトル1を挿入すると、そのペットボトル1の口部および肩部が前記スペーサ19の空洞部18内に、これ以外のペットボトル1部分が前記外部電極16内に収納される。
【0086】
環状絶縁部材20は、前記外部電極16上面にその環状絶縁部材20上面が前記筒状支持部材12の上部フランジ11aと面一になるように載置されている。上下にフランジ21a,21bを有するガス排気管22は、前記支持部材12の上部フランジ11aおよび前記環状絶縁部材20の上面に載置されている。この排気管22は、接地されている。図示しないねじを前記排気管22の下部フランジ21bから前記支持部材12の上部フランジ11aに螺着することにより前記ガス排気管22が前記支持部材12に固定されている。また、図示しないねじを前記排気管22の下部フランジ21bから前記環状絶縁部20を貫通して外部電極16の本体14に螺着することにより前記排気管22が前記環状絶縁部材20および前記外部電極16に固定されると共に、前記環状絶縁部材20が前記外部電極16に対しても固定される。なお、前記排気管22と前記環状絶縁部材20および前記外部電極16との固定は、前記排気管22と前記外部電極16とがねじにより電気的に導通しない取り付け構造になっている。分岐ガス排気管23は、前記ガス排気管22の側壁に連結され、その他端に図示しない真空ポンプのような排気設備が取り付けられている。蓋体24は、前記排気管22の上部フランジ21aに取り付けられている。
【0087】
例えば周波数13.56MHzの高周波電力を出力する高周波電源25は、ケーブル26および給電端子27を通して前記外部電極26の本体24に接続されている。整合器28は、前記高周波電源25と前記給電端子27の間の前記ケーブル26に介装されている。
【0088】
ガス供給管29は、前記蓋体24を貫通し、ガス排気管22を通して前記外部電極16の本体14内におけるペットボトル1の口部に対応する個所に挿入されている。例えばタングステンやステンレス鋼のような耐熱性を有する金属材料により作られる略円柱状をなす内部電極30は、前記外部電極16に挿入されたペットボトル1内の底部付近に配置され、その上端が前記ガス供給管29の下端に着脱自在に取り付けられている。前記内部電極30は、中心軸にガス流路31がくり抜かれていると共に、底部に媒質ガスを吹き出すための絶縁材料からなるガス吹き出し部である例えばプラスチック、セラミックのような絶縁材料からなるガス吹き出し管32が挿着されている。なお、前記内部電極30の径はペットボトル1の口金径以下とする。
【0089】
図6は、本実施例1で用いるバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を計測するためのガス透過速度計測装置を示す概略図である。
【0090】
恒温槽41内には、計測器側フランジ42と取付フランジ43が互いに左右に対峙して配置されている。後述する炭素バリヤ膜が成膜されたダミーフィルム2は、前記計測器側フランジ42と前記取付フランジ43の間にプラスチックまたはゴム製のシール材であるOリング44,45を介して気密に挟持される。前記ダミーフィルム1の挟持により、このダミーフィルム2の左右にガス透過速度計測室(左室)46、計測ガス導入室(右室)47がそれぞれ形成される。
【0091】
ガス透過速度の計測ガス、例えば酸素ガスの供給系48は、酸素濃度計測器49内の図示しない流量調節系を通して酸素導入用サス管50に接続され、このサス管50は前記取付フランジ43に前記計測ガス導入室(右室)47と連通するように接続されている。
【0092】
キャリヤガス供給系(純窒素ガス供給系)51は、酸素濃度計測器49内の図示しない流量調節系を通してキャリヤガス導入用サス管52に接続され、このサス管52は前記計測器側フランジ42に前記ガス透過速度計測室(左室)46と連通するように接続されている。
【0093】
酸素排出用サス管53は、一端が前記取付フランジ43に前記計測ガス導入室(右室)47と連通するように接続され、他端が前記酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して排気ポンプ54に接続されている。
【0094】
キャリヤガス排出用サス管55は、一端が前記計測器側フランジ42に前記ガス透過速度計測室(左室)46と連通するように接続され、他端が前記酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に接続されている。
【0095】
なお、前記酸素濃度計測器49は制御器56により酸素ガス、キャリヤガスの供給の制御および酸素透過量の算出などがなされる。
【0096】
次に、図5に示す炭素膜形成装置を用いて内面にダミーフィルムが密着されたプラスチック容器への炭素膜被覆方法を説明する。
【0097】
まず、前述した図1に示すようにプラスチック容器、例えば口部の径が約70mm、肉厚が400μm、内容積が500mLのペットボトル1を用意した。このペットボトル1内に12cm角で厚さが10μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなるダミーフィルム2を丸めて挿入し、そのペットボトル1内面にダミーフィルム2を例えば接着剤により密着させてセッティングした。前記ダミーフィルム2は、通常、前処理を行う必要がないが、埃などが問題となるときは溶剤や水などで洗浄して乾燥させてもよい。
【0098】
図示しないプッシャーにより外部電極底部材15、円板状絶縁体17および基台13を取り外して外部電極本体14の底部を開放した。つづいて、厚さが10μmのダミーフィルム2が密着されたペットボトル1を開放した外部電極本体14の底部側からそのペットボトル1の口部側から挿入した後、図示しないプッシャーにより外部電極本体14の底部側に外部電極底部材15、円板状絶縁体17および基台13をこの順序で取り付けることによって、図5示すようにペットボトル1の口部から肩部が誘電体材料からなる円柱状スペーサ19の空洞部18内に、前記ペットボトル1の肩部から底部側が前記外部電極16内に収納した。このとき、前記ペットボトル1は排気管12にその口部を通して連通された。
【0099】
次いで、図示しない排気手段により分岐排気管23および排気管22を通して前記排気管22内および前記ペットボトル1内外のガスを排気した。つづいて、媒質ガス(C2H2ガス)をガス供給管29を通して内部電極30のガス流路31に供給し、この内部電極30の底部に挿着した絶縁材料からなるガス吹き出し管32からペットボトル1内に吹き出させた。このC2H2ガスは、さらにペットボトル1の口部に向かって流れていく。つづいて、ガス供給量とガス排気量のバランスをとり、前記ペットボトルB内を所定のガス圧力に設定した。
【0100】
次いで、高周波電源25から例えば周波数13.56MHzの高周波電力をケーブル26、整合器28および給電端子27を通して前記外部電極16の本体14に供給した。このとき、前記内部電極30の周囲にプラズマが生成された。このようなプラズマの生成によって、前記C2H2ガスが前記プラズマで解離されて前記外部電極16およびスペーサ19内のペットボトル1のダミーフィルム2を含む内面に均一厚さで均質な炭素膜(バリヤ膜)がコーティングされた。
【0101】
炭素膜の厚さが所定の膜厚に達した後、前記高周波電源25からの高周波電力の供給を停止し、C2H2ガスの供給の停止、残留ガスの排気を行い、ガスの排気を停止した後、窒素、希ガス、又は空気等を前記ガス供給管29を通して内部電極30のガス流路31およびガス吹き出し管32を通してペットボトル1内に供給し、このペットボトル1内外を大気圧に戻し、内面炭素膜被覆ペットボトルを取り出す。その後、前述した順序に従ってペットボトル1を交換し、次のペットボトルのコーティング作業へ移した。
【0102】
このような炭素膜のコーティングにおいて、その条件を下記のように設定した。
【0103】
<コーティング条件>
・円柱状スペーサ19:ホトベール(商品名、住金セラミックス製)から作った、
・ガス吹き出し管32:径1mm、
・媒質:C2H2ガス、
・媒質のガス流量:124sccm、
・ペットボトル1および排気管22内のガス圧力:0.3Torr、
・外部電極16に供給する高周波電力:13MHz、1600W。
【0104】
次に、前述した図6に示すガス透過速度計測装置を用いて炭素膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度(酸素透過速度)の計測を説明する。
【0105】
前記ペットボトル1から炭素膜被覆ダミーフィルム2を例えばピンセットで取り出し、このダミーフィルム2を計測器側フランジ42と前記取付フランジ43の間にそのフィルム2の炭素膜4が計測器側フランジ42に対向するようにOリング44,45を介して気密に挟持した。この時、ダミーフィルム2を境に前記フランジ42、43間の空間がガス透過速度計測室(左室)46および計測ガス導入室(右室)47に分離する。また、恒温槽41内の温度をバリヤ性計測の標準値である23℃に設定した。
【0106】
次いで、酸素ガスの供給系48から酸素(または空気などのガス透過速度の計測ガス)を酸素濃度計測器49内の図示しない配管系および酸素導入用サス管50を通して計測ガス導入室(右室)47に連続的に供給し、排気ポンプ54を作動して酸素を酸素排出用サス管53、前記酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して排出した。計測初期は、前記ダミーフィルム2を取り付けた際に計測ガス導入室(右室)47および酸素導入用サス管50、酸素排出用サス管53内に残存する大気を排出し、酸素100%にするために酸素ガスの流量を200sccm程度まで増加させた。10分間から30分間程度この操作を行った後、10sccmに供給量を下げて連続的に運転した。
【0107】
一方、キャリヤガス供給系51から純窒素ガスのようなキャリヤガスを酸素濃度計測器49内の図示しない配管系およびキャリヤガス導入用サス管52を通してガス透過速度計測室(左室)46に連続的に供給し、ガス透過速度計測室(左室)46内のガスをキャリヤガス排出用サス管55から前記酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して酸素検知器(図示せず)に流通させた。計測初期は、前記右室47側と同様に、ダミーフィルム2を取り付けた際にガス透過速度計測室(左室)46および酸素濃度計測器49までの排気サス管55、導入用サス管52内に残存した大気中の酸素を排出するために、キャリヤガスの流量を200sccm程度まで増加させた。10分間から30分間程度この操作を行った後、10sccmに供給量を下げて連続的に運転した。前記計測ガス導入室(右室)47に供給された酸素は、前記ダミーフィルム2および被覆された炭素膜4を透過して前記ガス透過速度計測室(左室)46内に流入するため、前記キャリヤガスには極微量の酸素が含有される。この酸素の濃度を前記酸素検知器で計測し、この値と供給される純窒素(キャリヤガス)の流量から単位時間あたりの酸素透過量、つまり酸素ガス透過速度を算出した。
【0108】
計測終了後のキャリヤガスは、酸素濃度計測器49内の図示しない配管系を通して前記酸素排出用サス管41を流通する排気酸素と混合され、排気ポンプ54から排出した。これらのガス供給の制御および酸素透過量の算出等は、制御器56により行なった。
【0109】
(実施例2、3)
まず、前述した図1に示すようにプラスチック容器、例えば口部の径が約70mm、肉厚が400μm、内容積が500mLのペットボトル1を用意した。このペットボトル1内に12cm角で厚さが50μmおよび200μmのPETからなるダミーフィルム2を丸めてそれぞれ挿入し、各ペットボトル1内面にダミーフィルム2を例えば接着剤によりそれぞれ密着させてセッティングした。
【0110】
次いで、厚さが50μmおよび200μmのダミーフィルム2が内面に密着された前記2つのペットボトルについて、実施例1と同様な方法によりペットボトル1のダミーフィルム2を含む内面に均一厚さで均質な炭素膜(バリヤ膜)をそれぞれコーティングした。さらに、各炭素膜被覆ダミーフィルムについて実施例1と同様な方法により酸素透過速度を算出した。
【0111】
(比較例1)
まず、前述した図1に示すようにプラスチック容器、例えば口部の径が約70mm、肉厚が400μm、内容積が500mLのペットボトル1を用意した。このペットボトル1内に12cm角で厚さが400μm(ペットボトル1の肉厚と同厚さ)のPETからなるダミーフィルム2を丸めて挿入し、そのペットボトル1内面にダミーフィルム2を例えば接着剤により密着させてセッティングした。
【0112】
次いで、厚さが400μmのダミーフィルム2が内面に密着された前記ペットボトルについて、実施例1と同様な方法によりペットボトル1のダミーフィルム2を含む内面に均一厚さで均質な炭素膜(バリヤ膜)をコーティングした。さらに、各炭素膜被覆ダミーフィルムについて実施例1と同様な方法により酸素透過速度を算出した。
【0113】
得られた実施例1〜3および比較例1の炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を図7〜図10にそれぞれ示す。これらの図7〜図10において、横軸は計測開始からの経過時間、縦軸は計測されたガス透過速度をダミーフィルムの計測面積(たとえば50cm2)とペットボトルの面積(たとえば400cm2)の比を用いてペットボトル1パッケージあたりに換算した換算ペットボトル酸素透過速度を示している。また、炭素膜被覆ダミーフィルムの厚さと酸素透過速度の計測において定常状態に達するまでの時間との関係を図11に示す。
【0114】
本実施例1〜3の結果である図7〜図9に示すように定常状態になるまでに要する時間は、ダミーフィルム2の厚さが10μmで0.3時間、ダミーフィルム2の厚さが50μmで2時間、ダミーフィルム2の厚さが200μmで25時間であり、ダミーフィルム2の厚さが400μmの比較例1に比べて圧倒的に短縮されることがわかる。
【0115】
また、図11に示すように定常状態になるまでの経過時間はフィルム厚さの二乗に比例している。これは、前述したガス透過速度の計算モデルで説明したとおり、ダミーフィルムにコーティングした炭素膜(バリヤ膜)のガス透過速度が定常状態になる時間はダミーフィルムのみのガス透過速度が定常状態になる時間で決まり、それはダミーフィルムの厚さの自乗に反比例するためである。
【0116】
また、実施例2、3の結果である図8、図9においては比較例1の結果である図10と同じように一旦ガス透過速度が低くなり、その後徐々に増加するのに対し、厚さ10μmのダミーフィルムを用いた実施例1では図7に示すようにガス透過速度が低くなる時間帯が現れない。これは、ダミーフィルムを取り付けた際にガス透過速度計測室(左室)46および酸素濃度計測器49までのキャリヤガス排気配管55内に残存した大気に含まれていた酸素が系外に排気される前にダミーフィルム2内の酸素量が上昇し終わって定常状態に入っているためと考えられる。このように計測された換算ペットボトル酸素透過速度は、従来の方法でペットボトルをそのまま実測した酸素透過速度と良く一致した。
【0117】
これに対し、ペットボトルの厚さと同等の400μmのダミーフィルムを用いた比較例1の結果を示す図10において、計測の初期はダミーフィルムを取り付けた際にガス透過速度計測室(左室)46および酸素濃度計測器49までのキャリヤガス排気配管55内に残存した大気に含まれていた酸素が計測されるため酸素透過速度が高く算出される。酸素透過速度は、酸素が十分に排気されるまで値は低下する。その後、酸素透過速度は徐々に増加する。
【0118】
また、比較例1の結果を示す図10から定常状態になるまでの必要時間は約70時間で、既述した図18に示したペットボトルのまま計測した場合の約100時間とそれほど変わらない。これはPETからなるダミーフィルムの厚さがペットボトルのPETの厚さとほぼ同等なためである。定常状態になるまでの必要時間に関して、ペットボトルの方が長くなっているのは、ペットボトルの場合、口元や底の部分の厚さが胴部の厚さ(400μm)よりも厚いため、その影響が出ていると考えられる。
【0119】
本発明の実施例1〜3において、前述したガス透過速度の計算モデルで説明したように、コーティングした炭素膜(バリヤ膜)のバリヤ性がダミーフィルム自体やペットボトル自体より高い場合(例えばダミーフィルム自体やペットボトル自体のバリヤ性の5倍程度以上)では、ダミーフィルム自体やペットボトル自体のバリヤ性は全体のバリヤ性に影響しない。そのため、換算の際にダミーフィルムの厚さを考慮する必要はない。したがって、ダミーフィルムの酸素ガス透過速度を計測することによって、このダミ−フィルムをセッティングした炭素膜被覆ペットボトルのガスバリヤ性を迅速に評価することができる。
【0120】
(実施例4)
まず、前述した図4に示すようにプラスチック容器、例えば口部の径が約70mm、肉厚が400μm、内容積が500mLのペットボトル1を用意した。このペットボトル1内に3cm角で厚さが10μmのPETからなる3枚のダミーフィルム2を丸めて順次挿入し、そのペットボトル1内面に3枚のダミーフィルム2をペットボトル1底部側から口部に向かって例えば接着剤によりそれぞれ密着させてセッティングした。
【0121】
次いで、図4に示す3枚のダミーフィルム2が内面に密着された前記ペットボトルについて、実施例1と同様な方法によりペットボトル1の3枚のダミーフィルム2を含む内面に均一厚さで均質な炭素膜(バリヤ膜)をそれぞれコーティングした。さらに、各炭素膜被覆ダミーフィルムについて実施例1と同様な方法により酸素透過速度を算出した。
【0122】
このような実施例4によれば、炭素膜被覆ペットボトルの高さ方向におけるバリヤ性の分布を迅速に評価できる。
【0123】
すなわち、炭素膜被覆ペットボトルにおいて前記成膜方法によってはペットボトル内に炭素膜の厚さ分布を生じることがある。炭素膜被覆ペットボトルの研究開発や品質管理では、そのような炭素膜の厚さ分布、つまりガスバリヤ性の分布を評価する必要がある場合がある。しかしながら、従来法では炭素膜被覆ペットボトルの高さ方向における酸素透過速度を正確に計測することができないか、またはそれらの酸素透過速度が不可能であった。具体的には、従来の切出しシートのガス透過速度計測においてペットボトルの肩部から切り出したシートでは湾曲する。このため、ガス透過速度計測装置では平面シートを想定して設計されているため、湾曲したシートでは計測部に装着できず、酸素透過量を計測できない場合がある。また、従来の炭素膜被覆ペットボトルのままでガス透過速度計測装置で酸素ガス透過量を計測する場合、ペットボトル全体の酸素ガス透過量として計測されるため、局所(例えば肩部)での酸素ガス透過速度の計測が不可能になる。
【0124】
このようなことから、本実施例4ではペットボトル1内面に複数枚、例えば3枚のダミーフィルム2をペットボトル1底部側から口部に向かって例えば接着剤によりそれぞれ密着させてセッティングし、炭素膜の成膜後にペットボトルから取り出した3枚の炭素膜被覆ダミーフィルムの酸素透過速度を計測することによって、従来法では困難であった炭素膜被覆ペットボトルの高さ方向など、各部におけるバリヤ性の分布を迅速に評価できる。
【0125】
<第2実施形態>
この第2実施形態では、プラスチック部材であるプラスチック容器(例えばペットボトル)のバリヤ性の評価方法を説明する。
【0126】
図12は、この第2実施形態で用いられるバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を計測するための改良したガス透過速度計測装置を示す概略図である。なお、図12において前述した図6と同様な部材は同符号を付した説明を省略する。
【0127】
図12に示すガス透過速度計測装置は、取付フランジ43と対向する計測器側フランジ42の面に環状(例えば四角環状)の金属エッジ57を形成した構造を有する。
【0128】
図12に示すガス透過速度計測装置において、バリヤ膜4が被覆されたダミーフィルム2を前記計測器側フランジ42と前記取付フランジ43の間にダミーフィルム2が計測器側フランジ42の金属エッジ57に当接し、炭素膜4が取付フランジ43に対向するようにOリング45を介して気密に挟持する。このような取付形態によれば、金属エッジ57がバリヤ膜4と反対のダミーフィルム1の面に食い込んで高いシール性能を発揮できるため、前述した実施例1と同様な手法で酸素ガス透過速度を計測する際、酸素を含むキャリヤガスの大気へのリークを防止できる。その結果、バリヤ性の高いバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムや、前述した実施例4のようにサイズの小さいバリヤ膜被覆ダミーフィルムを適用しても高い精度で酸素ガス透過速度を計測でき、バリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性を評価できる。
【0129】
すなわち、バリヤ性の高いバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムや、サイズの小さいバリヤ膜被覆ダミーフィルムを前述した図6に示すガス透過速度計測装置に取り付けた場合、ダミーフィルム2をシールしているOリング44において大気のリークまたはガス放出によりガス透過速度が実際より高く計測される不具合が生じる。例えば、ガス透過速度が比較的高い0.06cc/m2/day程度の場合にはダミーフィルムの計測面積が実施例1のように50cm2であれば、ダミーフィルムを透過して酸素検出器に流れる酸素透過量は0.0003cc/dayで、ガスリーク量に換算して4×10-10Pa・m3/s程度である。このような場合には、良質の真空グリースを用いてシールすればリーク量(10-11Pa・m3/s台)が無視できる程度に低減できる。しかしながら、ダミーフィルムの計測面積を例えば5cm2程度に小さくすると、このダミーフィルムを透過する酸素量は0.00003cc/dayとなり、ガスリーク量に換算して0.4×10-10Pa・m3/s程度となって、Oリングによるシールではリークが無視できない量になる。
【0130】
このようなことから、図12に示すように取付フランジ43と対向する計測器側フランジ42の面に環状(例えば四角環状)の金属エッジ57を形成し、計測器側フランジ42とダミーフィルム2の間のガス透過速度計測室(左室)46側のシール性を高めることによって、バリヤ性の高いバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムや、サイズの小さいバリヤ膜被覆ダミーフィルム、つまり透過する酸素のようなガスの量が減少されるダミーフィルムを適用しても、前記シール部でのリーク、ガス放出を防止してガス透過速度を高精度で計測することができる。
【0131】
事実、図12に示すガス透過速度計測装置、5cm2程度の小さい寸法の炭素膜被覆ダミーフィルムを用い、キャリヤガス流量を10sccmから1sccmに減少させた以外、実施例1と同様な方法で酸素ガス透過速度を計測した結果、誤差なく計測できた。
【0132】
(第3実施形態)
この第3実施形態では、プラスチック部材であるプラスチック容器(例えばペットボトル)のバリヤ性の評価方法を説明する。
【0133】
まず、プラスチック容器のバリヤ膜被覆面に前記容器の肉厚より薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、前記各プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する。つづいて、前記プラスチック容器のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する。予め求めたバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度とダミーフィルムのガス透過速度との相関に基づいて計測されたダミーフィルムのガス透過速度からバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度を求めることによりそのプラスチック容器のバリヤ性を評価する。
【0134】
前記バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度とダミーフィルムのガス透過速度との相関を求めるには、プラスチック容器のバリヤ膜被覆面にその容器に肉厚より薄い膜厚の複数枚のダミーフィルムをそれぞれ配置し、前記各プラスチック容器を含む前記ダミーフィルムに異なる厚さのバリヤ膜をそれぞれ成膜する工程と、前記各プラスチック容器のバリヤ膜被覆面から厚さの異なるバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去り、これらダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度をそれぞれ計測する工程と、前記バリヤ膜が被覆された各プラスチック部材を等圧法によりガス透過速度をそれぞれ計測する工程と、計測された各プラスチック容器のガス透過速度と計測された各ダミーフィルムのガス透過速度からそれらのガス透過速度の相関関係を例えば検量線等として作成する。
【0135】
このような第3実施形態によれば、計測されたバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度からバリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性をより高い精度で評価することができる。
【0136】
すなわち、前述した第1実施形態の実施例1では計測された酸素透過速度をダミーフィルムの面積とペットボトルの面積の比を用いてペットボトル1パッケージあたりに換算した換算ペットボトル酸素透過速度が実際のペットボトルの酸素透過速度とほぼ等しいことを前提にしてバリヤ性を評価した。
【0137】
しかしながら、表面状態が荒れたダミーフィルムや静電気による付着防止用の活剤が使用されているダミーフィルムを用いる場合には、成膜されるバリヤ膜に欠陥ができ、ペットボトル表面に成膜されたバリヤ膜よりバリヤ性が低下することがある。また、ペットボトルに成膜されたバリヤ膜内に厚さ分布がある場合にも前記面積比による換算が実際の値と合わないことがある。
【0138】
本第3実施形態では、図13に示すように前記面積比を用いずにバリヤ膜被覆ダミーフィルムの酸素透過速度とこのダミ−フィルムが取り付けられたバリヤ膜被覆ペットボトルの実測酸素透過速度とを用いて検量線を作成する。この検量線を用いれば、バリヤ膜被覆ダミーフィルムの計測で得られた酸素透過速度から実際のペットボトルの酸素透過速度を予測することができ、前記のような場合でもバリヤ膜被覆ペットボトルのバリヤ性を迅速に評価することができる。
【0139】
なお、前述した第1実施形態から第3実施形態では酸素および空気のガス透過速度の計測例を示したが、二酸化炭素や水蒸気など他の計測ガスでも同様の手法を用いることができる。また、成膜方法はプラズマCVDであったが、スパッタリングなどの方法でも同様に用いることができる。
【0140】
<第4実施形態>
この第4実施形態では、プラスチック部材としてプラスチックシートのバリヤ性の評価方法を説明する。ここでは、バリヤ膜としてSiOx膜を用いた。
【0141】
まず、プラスチックシートのバリヤ膜被覆面に前記シートの厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを配置し、前記プラスチックシートを含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する。つづいて、前記プラスチックシートのバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取り去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する。
【0142】
前記ダミーフィルムは、前記第1実施形態で説明したのと同様なものが用いられる。
【0143】
このようなバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度計測結果から、前述した第1実施形態と同様な発明思想に基づきにバリヤ膜被覆プラスチックシートのバリヤ性を評価できる。
【0144】
(実施例5)
まず、図14に示すように50cm角、厚さ300μmのPETシート61に10cm角、厚さ25μmのポリイミドからなるダミーフィルム62を貼り付けた。
【0145】
次いで、図15示すプラズマCVD装置の真空チャンバ71内の上下に対向した平板電極72、73のうちの下部の平板電極(アース電極)73上にダミーフィルム62を貼り付けられたPETシート61を設置した。
【0146】
次いで、真空ポンプ74を作動し、排気管75を通して前記真空チャンバ71内を50mTorrまで真空引きした後、成膜ガスとしてのHMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)と酸素ガスの混合ガスを供給管76を通して前記真空チャンバ71内に流量100sccmで供給し、真空チャンバ71内が100mTorrの圧力になるように排気速度を調整した。つづいて、高周波電源77から周波数2MHz、出力300Wの高周波電力を前記上部平板電極72に供給し放電を発生させることにより、前記ダミーフィルム62を含むPETシート61上面にSiOxを主成分とするバリヤ膜を成膜した。1秒間から10秒間程度の所定の成膜時間の後に、成膜ガス、電力の供給を止めて大気開放し、前記ダミーフィルム62をPETシートとともに取り出した。
【0147】
前記SiOxを主成分とするバリヤ膜の成膜に際し、ダミーフィルムへの熱入力が大きく、PETからなるダミーフィルムを用いた場合、収縮してその後の酸素透過速度の計測に使用できなかった。これに対し、耐熱性の高いポリイミドからなるダミーフィルムでは収縮を生じることなく、バリヤ膜の成膜が可能となった。
【0148】
バリヤ膜被覆ダミーフィルムをシートから取り去り、このダミーフィルムを実施例1と同様に酸素透過速度を計測することにより、バリヤ膜被覆PETシートノバリヤ性を迅速な評価することが可能となった。
【0149】
なお、実施例5においてTEOS(テトラエトキシシラン)などの有機系Si化合物と酸素ガスの混合ガスを成膜ガスとして用いてもよい。
【0150】
前記第1実施形態から第4実施形態では、炭素膜、SiOx膜を例として実施例を示したが、本手法が他のバリヤ膜たとえばAl等の金属薄膜や有機系の薄膜にも本手法が利用できる。
【0151】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法によればバリヤ膜が表面に被覆されたプラスチック容器またはバリヤ膜が表面に被覆されたシートにおけるバリヤ性を迅速に評価でき、ひいてはプラスチック容器またはシートに成膜装置によりバリヤ膜を成膜する際の膜正常性の迅速な見極めや、成膜条件の制御の指標に利用できる等の顕著な効果を奏する。また、バリヤ膜の成膜チャンバを数十台持つようなロータリー式の成膜装置の検収、健全性管理のための各チャンバの性能確認や、製品のサンプリング確認などのために、バリヤ性を頻繁に確認する操作において、本発明のようにバリヤ性評価の迅速化はコスト低減等の利益が絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態で用いるダミーフィルムが内面に取り付けられたペットボトルを示す斜視図。
【図2】 本発明の第1実施形態で用いるダミーフィルムが内面に取り付けられたペットボトルの他の形態を示す斜視図。
【図3】 本発明の第1実施形態で用いるダミーフィルムが内面に取り付けられたペットボトルの他の形態を示す斜視図。
【図4】 本発明の第1実施形態で用いるダミーフィルムが内面に取り付けられた角形ペットボトルを示す斜視図。
【図5】 本発明の実施例1で用いたプラスチック容器(例えばペットボトル)内面への炭素膜形成装置を示す断面図。
【図6】 本発明の実施例1で用いた酸素透過速度計測装置を示す概略図。
【図7】 本発明の実施例1における炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を示す特性図。
【図8】 本発明の実施例2における炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を示す特性図。
【図9】 本発明の実施例3における炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を示す特性図。
【図10】 比較例1における炭素膜被覆ダミーフィルムによるガス透過速度の計測結果を示す特性図。
【図11】 炭素膜被覆ダミーフィルムの厚さと酸素透過速度の計測において定常状態に達するまでの時間との関係を示す特性図。
【図12】 本発明の第2実施形態で用いられるバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度を計測するためのガス透過速度計測装置を示す概略図。
【図13】 本発明の第3実施形態におけるバリヤ膜被覆ダミーフィルムの酸素透過速度とバリヤ膜被覆ペットボトルの実測酸素透過速度との関係(検量線)を示す図。
【図14】 本発明の第4実施形態におけるプラスチックシートにダミーフィルムを貼り付けた状態を示す斜視図。
【図15】 本発明の第4実施形態で用いたプラズマCVD装置を示す概略図。
【図16】 バリヤ膜被覆シートのガス透過速度を計測するための市販のガス透過速度計測装置を示す概略図。
【図17】 ペットボトルのままの形で酸素透過速度計測するガス透過速度計測装置を示す概略図。
【図18】 ペットボトルのままでの酸素透過速度の計測における経過時間と1パッケージあたりの酸素透過速度の関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…ペットボトル、2,62…ダミーフィルム、14…外部電極、19…円柱状スペーサ、22…排気管、29…ガス供給管、30…内部電極、41…恒温槽、42…計測器側フランジ、43…取付フランジ、44,45…Oリング、46…ガス透過速度計測室(左室)、47…計測ガス導入室(右室)、48…酸素ガスの供給系、49…酸素濃度計測器、51…キャリヤガス供給系、57…金属エッジ、61…PETシート、71…真空チャンバ、72,73…平板電極、74…真空ポンプ、77…高周波電源。
Claims (7)
- プラスチック容器またはプラスチックシートからなるプラスチック部材のバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを取付け、前記プラスチック部材を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する工程と、
前記プラスチック部材のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する工程と
を含むことを特徴とするバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法。 - 前記ダミーフィルムは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドであることを特徴とする請求項1記載のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法。
- 前記ダミーフィルムは、厚さが10μm以上、前記プラスチック部材の厚さの1/4以下であることを特徴とする請求項1記載のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法。
- 前記ダミーフィルムの等圧法によるガス透過速度計測は、前記プラスチック部材のガラス転移温度−30℃以上、ガラス転移温度以下でなされることを特徴とする請求項1記載のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法。
- 前記バリヤ膜被覆ダミーフィルムの等圧法によるガス透過速度計測は、2つのフランジ間に前記ダミーフィルムをバリヤ膜側にプラスチックまたはゴム製のシール材を、バリヤ膜と反対のダミーフィルム面に前記一方のフランジ面に取り付けた金属エッジを食い込ませて挟持し、このバリヤ膜被覆ダミーフィルムを境にしてガス透過速度計測室および計測ガス導入室を形成し、前記計測ガス導入室に酸素または空気を流通させ、前記ガス透過速度計測室にキャリヤガスを流通させて、計測ガス導入室から前記バリヤ膜被覆ダミーフィルムを透過し、前記キャリヤガスと共に輸送された酸素または空気の量を計測することによりなされることを特徴とする請求項1記載のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法。
- プラスチック部材は、プラスチック容器であり、前記ダミーフィルムはプラスチック容器のバリヤ膜被覆面の各部に複数枚取付けることを特徴とする請求項1記載のバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法。
- プラスチック容器またはプラスチックシートからなるプラスチック部材のバリヤ膜被覆面に前記部材の厚さより薄い膜厚のダミーフィルムを取付け、前記各プラスチック部材を含む前記ダミーフィルムにバリヤ膜を成膜する工程と、
前記プラスチック部材のバリヤ膜被覆面からバリヤ膜が被覆されたダミーフィルムを取去り、このダミーフィルムを等圧法によりガス透過速度を計測する工程と、
予め求めたバリヤ膜被覆プラスチック部材のガス透過速度とバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度との相関に基づいて前記計測されたバリヤ膜被覆ダミーフィルムのガス透過速度からバリヤ膜被覆プラスチック部材のガス透過速度を求める工程と
を含むことを特徴とするバリヤ膜被覆プラスチック部材のバリヤ性評価方法。
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