JP2004157035A - バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法、バリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置およびバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法 - Google Patents
バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法、バリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置およびバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度またはガスバリヤ性を短時間で評価することが可能なバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を提供する。
【解決手段】内部にヘリウムガスを封入または流通したバリヤ膜被覆プラスチック容器が装填される真空容器と、
前記真空容器内のガスを排気管を通して排気するための排気手段と、
前記真空容器または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計と
を具備したことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】内部にヘリウムガスを封入または流通したバリヤ膜被覆プラスチック容器が装填される真空容器と、
前記真空容器内のガスを排気管を通して排気するための排気手段と、
前記真空容器または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計と
を具備したことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法、バリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置およびバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック容器、例えばペットボトルは、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素や水分などの透過、ペット樹脂成分の溶出を防止するために、プラスチック容器表面への膜被覆装置を用いて、その内面または外面にDLC(Diamond Like Carbon)のような炭素膜やSiOx膜などをコーティングすることが試みられている。
【0003】
このようなプラスチック容器表面へのバリヤ膜被覆装置によりバリヤ膜を被覆する際、そのバリヤ膜のバリヤ性を評価することが重要である。バリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性の評価には、従来、次に挙げるようなガス透過性の測定方法が採用されている。
【0004】
1)バリヤ膜被覆プラスチック容器、例えばバリヤ膜被覆ペットボトル内に炭酸水または水を収容して密封した後、ペットボトル内のガス圧力または重量の経時変化を測定する二酸化炭素または水分の保持率計測方法。
【0005】
2)バリヤ膜被覆ペットボトルから切り出したシートを密閉容器内にその容器を上下に分離するように挿入し、分離された下部室に二酸化炭素や酸素を封入し、上部室を例えば真空にした状態で放置し、前記下部室内から前記シートを透過して上部室内に流入した二酸化炭素量や酸素を測定するJIS K7126に準ずる差圧法。
【0006】
3)バリヤ膜被覆ペットボトルから切り出したシートを密閉容器内にその容器を左右に分離するように挿入し、分離された左室に二酸化炭素や酸素を連続的に供給し、右室に窒素のようなキャリアガスを連続的に供給し、右室からの排出ガスをセンサに導入し、ここで前記左室内から前記シートを透過して右室内に流入した二酸化炭素量や酸素を測定するMOCON法。
【0007】
以下、上記3)の方式を多少変更してペットボトルに適用した例を従来例として説明する。
【0008】
図8はペットボトルの酸素透過速度をペットボトルをそのままの形で装填して計測する方法の装置図である。ボトル装填冶具10は、サス板12に、ボトル内部にキャリヤガス(通常は純窒素ガス)を導入するキャリヤガス導入用サス管13と同ガスを排出するキャリヤガス排出用サス管14、およびボトル外部に酸素ガスあるいは空気を導入する酸素導入用サス管15と同ガスを排出する酸素排出用サス管16をガス漏れがないように溶接したものである。
【0009】
まず、ペットボトルBはこのボトル装填冶具10にエポキシ接着剤11でガス漏れがないように接着する。ペットボトルBの外部を酸素雰囲気で密閉するために、密閉容器17をボトル装填冶具10のサス板12にOリング18を挟んで鋲着する。さらに、このボトル装填冶具10および密閉容器17の一式を恒温槽19内に設置し、温度をバリヤ性計測の標準値である23℃に設定する。酸素ガス供給系21から酸素濃度計測器22内の図示しない流量調節系と酸素導入用サス管15を通して密閉容器17に酸素ガスあるいは空気を導入し、酸素排出用サス管16および酸素濃度計測器22内の図示しない配管系を通して大気および酸素を排気ポンプ23から排出する。初期には、大気を排出するために多量に酸素を供給するが、その後は10sccm程度の微量に減らすか、供給をやめて密閉しても良い。
【0010】
一方、ペットボトルB内部には、純窒素供給系24から酸素濃度計測器22内の図示しない流量調節系とキャリヤガス導入用サス管13を介して純窒素を供給し、キャリヤガス排出用サス管14を介して酸素濃度計測器22の図示しない酸素検知器に流通させる。初期には大気を排出するため多量に純窒素を供給するが、その後は10sccm程度の微量に減らし、図示しない酸素検知器に流通させる。このキャリヤガスには、矢印20で示すペットボトルBの樹脂を通して透過した酸素が極微量含まれている。この酸素の濃度を前記酸素検知器で測定し、この値と、供給している純窒素の流量から単位時間あたりの酸素透過量を算出する。計測し終えたキャリヤガスは酸素濃度計測器22内の図示しない配管系を介して大気および窒素を前記酸素排気と混合して排気ポンプ23から排出する。これらのガス供給の制御および酸素透過量の算出などは制御器25で行なう。
【0011】
【発明が解決しょうとする課題】
しかしながら、前述した1)〜3)のガス透過速度測定方法は、二酸化炭素や酸素など、バリヤ性評価を必要とするガスの、バリヤ膜被覆ペットボトルまたはこのペットボトルから切り出したシートに対する透過性が低いために、十分に長い放置時間を置かないとガス透過速度が定常値に達しないという問題があった。
【0012】
以下、この点を前述した従来例について具体的に説明する。この例で計測される酸素透過量は、計測初期にはペット樹脂内およびバリヤ膜内の酸素濃度分布が定常状態にないため,経時変化を起こす。図4にこのような計測における酸素透過量変化の理論値の一例を示す。この図4から酸素透過量が安定するには2〜3日程度かかることがわかる。これは、濃度分布が定常状態になるのにかかる時間であり、ガスの透過速度が遅いために長い時間となってしまう。酸素透過量は、この安定した状態の値が正しい値なので、計測に2〜3日を要することになる。
【0013】
また、図4には上記と同様の方法で二酸化炭素を計測する場合の理論値も合わせて示している。二酸化炭素の場合には、1〜2週間程度かかり、これも同様の要因である。
【0014】
本発明者らは、ペットボトル等のプラスチック容器およびこの容器内面に被覆されたバリヤ膜に対する透過速度が二酸化炭素や酸素や水に比べて極めて大きいヘリウムに着目し、このヘリウムをバリヤ膜被覆プラスチック容器内に封入してガス透過性の計測対象として利用し、このヘリウムガス封入バリヤ膜被覆プラスチック容器を真空容器に装填し、所定の真空度の下で前記真空容器内のヘリウム分圧を四重極型質量分析計で分析することによって、前記バリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性を短時間で評価できることを見出し、本発明のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置およびバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法を完成するに至ったものである。
【0015】
また、本発明者らはプラスチックシートおよびこのシートの表面に被覆されたバリヤ膜に対する透過速度が二酸化炭素や酸素や水に比べて極めて大きいヘリウムに着目し、このヘリウムをバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過性の計測対象として利用し、密閉容器にバリヤ膜被覆プラスチックシートをその密閉容器の真空排気室とヘリウムガスが封入または流通されるガス流入室の間に位置するように装填し、前記真空排気室のガスを排気して所定の真空度の下で前記真空排気室内のヘリウム分圧を四重極型質量分析計で分析することによって、前記バリヤ膜被覆プラスチックシートのバリヤ性を短時間で評価できることを見出し、本発明のバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置およびバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法を完成するに至ったものである。
【0016】
表1に酸素、二酸化炭素、ヘリウムのPETシートの透過係数を示す。透過係数は、PETシートへの溶解度と拡散係数の積であり、ガスの透過し易さを表す。
【0017】
【表1】
【0018】
ヘリウムは、従来計測されていた二酸化炭素や酸素や水あるいはペットの樹脂成分のように実際に容器やシートにおいてバリヤされるガス対象ではないが、その透過速度を測定することで、被測定体のバリヤ性の評価をある程度定量的に得ることができ、少なくともバリヤ性の有無をスクリーニングしたり、実際にバリヤ性が必要な二酸化炭素などとヘリウムとの相関を用いて簡単にバリヤ性の評価を行うことができる。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置は、内部にヘリウムガスを封入または流通したバリヤ膜被覆プラスチック容器が装填される真空容器と、
前記真空容器内のガスを排気管を通して排気するための排気手段と、
前記真空容器または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計と
を具備したことを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法は、前記バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を用いてバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度を測定する方法であって、
バリヤ膜被覆プラスチック容器を真空容器に装填し、その容器内部にヘリウムガスを封入またはヘリウムガスを流通する工程と、
排気手段により前記真空容器内のガスを排気管を通して排気しながら、前記真空容器あるいは排気管に取り付けられた四重極型質量分析計によりヘリウム量を検出する工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置は、バリヤ膜被覆プラスチックシートを挟んで一方に真空排気室、他方にヘリウムガスが封入または流通されるガス流入室を有する密閉容器と、
前記真空排気室内のガスを排気管を通して排気するための排気手段と、
前記真空排気室または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計と
を具備したことを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法は、前記バリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置を用いてバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度を測定する方法であって、
密閉容器にバリヤ膜被覆プラスチックシートをその密閉容器の真空排気室とヘリウムガスが封入または流通されるガス流入室の間に位置するように装填する工程と、
前記密閉容器のガス流入室にヘリウムガスを封入もしくは流通する工程と、
排気手段により前記密閉容器の真空排気室内のガスを排気管を通して排気しながら、前記真空排気室または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計によりヘリウム量を検出する工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0023】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、この第1実施形態のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を示す概略図である。
【0025】
バリヤ膜被覆プラスチック容器、例えばバリヤ膜被覆ペットボトルBが装填される真空容器1は、その底部にターボ分子ポンプ2が連結されている。油回転ポンプ3は、前記ターボ分子ポンプ2に連結されている。これらターボ分子ポンプ2および油回転ポンプ3により排気手段を構成している。
【0026】
真空計4は、前記真空容器1の上部に接続され、その真空容器1の全圧を測定する。四重極型質量分析計(Qmass)5は、前記真空容器1の上部に接続され、その真空容器1内のヘリウム分圧を測定する。制御器6は、前記Qmass5及び真空計4に接続されている。この制御器6は、予めバリヤ膜が被覆されていないペットボトルBをQmass5で測定されたヘリウム分圧が入力され、Qmass5からの分析信号に基づき前記バリヤ膜被覆ペットボトルBのバリヤ膜被覆のバリヤ性を判定する。また、この制御器6は、バリヤ膜被覆ペットボトルの測定の際に、真空容器1の全圧をモニタし、バリヤ膜被覆が無いペットボトルを測定した時と同じ全圧条件であるか否かを監視する。
【0027】
次に、前述したガス透過速度測定装置を用いて本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法を説明する。
【0028】
バリヤ膜被覆ペットボトルBの内部にヘリウムガスを封入した後、このペットボトルBを図2に示す真空容器1に装填する。このヘリウムガスの封入は、例えばグローブボックス内でペットボトルB内の空気を排気した後、ヘリウム(He)を入れ、そのペットボトルBの口部に金属製のキャップを接着剤を介して取り付ける方法を採用することができる
排気手段であるターボ分子ポンプ2および油回転ポンプ3を作動して前記真空容器1内のガスを排気する。この排気において、真空計4により前記真空容器1内の真空度を計測し、その真空度が例えば10−6Torrより高真空になった時点でQmass5により前記真空容器1内のHe分圧を分析する。真空度の目安は、例えばペットボトル(PET樹脂)のガスに対する拡散係数のような物性値から予想されるHe分圧の値より低くする。
【0029】
このようなQmass5によるヘリウム分圧の分析において、ヘリウムはペットボトルBおよびその表面のバリヤ膜に対する透過速度が酸素や二酸化炭素などに比べて極めて大きく、封入したヘリウムガスはバリヤ膜被覆ペットボトルBを容易に透過し、定常状態に短時間で到達するため、Qmass5により前記真空容器1内のヘリウム分圧を短時間(例えば5〜10分間)で分析することができる。このヘリウムの分圧は、バリヤ膜被覆ペットボトルBにおけるバリヤ膜のバリヤ性の程度に関連する。すなわち、前記ペットボトルB表面のバリヤ膜のバリヤ性が低い場合には封入したヘリウムのペットボトルBに対する透過速度が大きくなるため、Qmass5により分析されたヘリウムの分圧が高くなる。一方、前記ペットボトルBの表面にバリヤ膜が被覆されている場合には封入したヘリウムのペットボトルBに対する透過速度が低くなるため、Qmass5により分析されたヘリウムの分圧が低くなる。
【0030】
定量的には、ヘリウムの分圧に排気系のヘリウムの排気速度をかけた値が、ボトルから放出されるヘリウムの質量流量、すなわち、バリヤ膜被覆ペットボトルのバリヤ膜とペット樹脂を通して外部に放出されるヘリウムの時間あたりの透過量である。この大小で、バリヤ膜被覆ペットボトルのバリヤ性が評価できる。酸素や二酸化炭素のバリヤ性の違うサンプルのバリヤ性を上記の従来の手法であらかじめ計測しておき、一方、本手法でそれぞれのボトルのヘリウムの透過量を計測しておけば、その相関関係によって短時間に測定できるヘリウムの透過量によって、酸素や二酸化炭素などの本来バリヤ性を計測したいが時間のかかるガスでのバリヤ性を短時間の計測で推測することができる。
【0031】
前記Qmass5によるヘリウム分圧の測定後、この測定信号を制御器6に出力し、上記の相関関係を元にバリヤ性を予測する。なお、前記Qmass5による前記真空容器1内の全圧を計測して、その全圧にほぼ変化がなければ、真空系全体がリークのないことを確認できる。
【0032】
したがって、本発明によればバリヤ膜被覆ペットボトルBのバリヤ性を短時間で推測することができる。このようにボトルのバリヤ性の迅速な評価によって、出荷する製品ボトルの抜き取り検査を迅速化したり、全数検査を行ったり、あるいは、バリヤ膜成膜装置やバリヤ膜被覆量産装置などに本装置を組み込むなどして、その生産工程の健全性評価などを迅速化することができる。また、本方法をスクリーニングに用い、ペットボトルBのバリヤ性を大まかに評価し、必要に応じて従来技術に記載した方法を用いて酸素や二酸化炭素など実際に用いる際に必要なガスの透過速度を測定してもよい。
【0033】
(実施例1)
グローブボックス内でバリヤ膜被覆を施さないペットボトルB内の空気を排気した後、ヘリウム(He)で置換し、そのペットボトルBの口部に金属製のキャップを接着剤を介して取り付けることによりその内部にHeガスを封入した。つづいて、このペットボトルBをグローブボックスから取り出し、図1に示す真空容器1に装填した。
【0034】
次いで、排気手段であるターボ分子ポンプ2および油回転ポンプ3を作動して前記真空容器1内のガスを排気した。この排気において、真空計4により前記真空容器1内の真空度を計測し、その真空度が例えば10−6Torrになった時点(排気後60分間経過)でQmass5により前記真空容器1内のHe分圧の測定を150分間行った。
【0035】
(実施例2)
グローブボックス内でバリヤ膜被覆ペットボトルB内の空気を排気した後、ヘリウム(He)で置換し、そのペットボトルBの口部に金属製のキャップを接着剤あるいは真空グリースを介して取り付けることによりその内部にHeガスを封入した。つづいて、このペットボトルBをグローブボックスから取り出し、図1に示す真空容器1に装填した。
【0036】
次いで、実施例1と同様に排気手段であるターボ分子ポンプ2および油回転ポンプ3を作動して前記真空容器1内のガスを排気し、この排気において真空計4により前記真空容器1内の真空度を計測し、その真空度が例えば10−6Torrになった時点(排気後60分間経過)でQmass5により前記真空容器1内のHe分圧の測定を150分間行った。
【0037】
このような実施例1,2における測定時間とHe分圧の関係を図2に示す。なお、実施例1,2において前記Qmass5による前記真空容器1内の全圧を計測した結果を同図2に示す。
【0038】
図2から明らかなように実施例1,2がいずれも全圧にほぼ変化がなく、真空系全体がリークのない条件の下、測定開始から150分間の短時間で、実施例1のバリヤ膜被覆を施さないペットボトルBのHe分圧が実施例2のバリヤ膜被覆ペットボトルBのHe分圧より大きく、その分圧比が約2倍になることから、これらのバリヤ膜被覆ペットボトルBのヘリウムに対するバリヤ性が約2倍であることがわかる。このようにヘリウムに対してバリヤ性が得られれば、一般に酸素や二酸化炭素に対してもバリヤ性があるので、バリヤ性の有無を短時間でスクリーニングできることがわかる。
【0039】
さらに、定量的に酸素や二酸化炭素に対するバリヤ性を評価するために、図3は前述の方法で計測したヘリウムに対するバリヤ性と、それぞれのボトルの二酸化炭素に対するバリヤ性(従来の計測法で計測)をプロットしたものである。この図3から例えばヘリウムのバリヤ性が2倍の場合、二酸化炭素のバリヤ性は40倍程度と推測される。この相関関係を制御器6に記憶させ、ヘリウムの分圧計測結果からヘリウムのバリヤ性を算出し、さらに二酸化炭素のバリヤ性を出力するようにした。これにより、二酸化炭素のバリヤ性を迅速に評価する事が出来るようになった。
【0040】
図3に示したようなヘリウムのバリヤ性と二酸化炭素のバリヤ性の相関関係は、常に一定ではなく、バリヤ膜の組成や材質や製造方法や製造条件によって変わる可能性がある。したがって、上記が異なるごとに実測することが好ましい。また、本方法は二酸化炭素だけでなく、酸素や水などについても当然同様に行える。
【0041】
(第2実施形態)
図5は、この第2実施形態のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を示す概略図である。
【0042】
ペットボトルBを装填され、底部に開閉可能なフランジ57を有する真空容器47は、バリヤ性が温度依存性があるために、正確な測定を目的として恒温槽48内に設置した。排気管49は、その一端が真空バルブ50を介して前記真空容器47に接続され、他端がターボ分子ポンプ51および粗引きポンプ52からなる排気ポンプ系53に接続されている。真空排気にかかる時間をできるだけ短縮するため、真空容器47のサイズはペットボトルが納まるサイズにし、前記排気管49は可能な限り短くした。真空バルブ50と排気ポンプ系53の間の排気管49には、ヘリウムを一定量流出することが可能な校正リーク46とヘリウムの分圧に比例した信号を出す四重極型質量分析計45とが接続されており、さらにこれらを制御器54でコントロールしている。
【0043】
本装置の四重極型質量分析計45、校正リーク46、排気ポンプ系53、制御器54の一式は、ヘリウムリーク計測装置55として市販されたものを流用することもできる。
【0044】
以下、本装置を用いたバリヤ性の計測について説明する。
【0045】
まず、装置の校正を行う。真空バルブ50を閉じ、排気ポンプ系53を立ち上げる。質量分析計45が使用できる状態になったら、校正リーク46からたとえば質量流量1×10−6Pa・m3/sでヘリウムを流し、質量分析計45のヘリウム出力信号を制御器54で校正する。つづいて、バリヤ性を計測するペットボトルBを第1実施形態と同様に内部をヘリウムガスに置換し、サス板56(またはキャップ)を真空グリース11(または接着剤)で接着して密封する。このペットボトルBを真空容器の底の開閉可能なフランジ57から真空容器47内に設置する。真空容器47が入っている恒温槽48は、ペットボトルBの温度が一定温度に早くなるように予め一定温度、例えば25℃に設定しておく。この温度はペットボトルBの初期温度(計測する前の温度)にあわせて設定しておくと、計測値が定常状態に落ち着くのが早い。例えば室温のボトルを計測するのであれば、室温程度の一定温度に設定しておくことが好ましいし、コーティング直後のボトルを計測するのであれば、コーティング直後の温度(たとえば40℃)に設定しておくことが好ましい。
【0046】
次いで、質量分析計45が真空度の悪化によりトリップしないように注意しながら真空バルブ50をゆっくりと開き、真空容器47を真空引きする。真空バルブ50を全開したら質量分析計45のヘリウム出力信号を制御器54でモニタし、一定値に安定したあと、その値を校正リーク46の校正値と比較し、ボトルBから矢印58のように放出されるヘリウム量を算出する。
【0047】
図6は、ヘリウム放出量の経時変化である。図6から明らかなように放出量は、5分程度で定常状態に安定することがわかる。
【0048】
このようにして計測した結果、ペットボトルBがバリヤ膜のないボトルの場合、例えば3.0×10−6Pa・m3/sと値が得られた。一方、酸素バリヤ性が20倍のバリヤ性が得られて得られている炭素系のバリヤ膜のついたボトルの場合、2.8×10−6Pa・m3/sと値が得られた。酸素バリヤ性20倍に対し、ヘリウムバリヤ性は1.07倍である。この値はバリヤ性の有無のスクリーニングなどには十分である。
【0049】
しかしながら、定量的な評価には不十分な場合もある。そこで、さらに精度の高い定量的な評価を行うために、バリヤ膜のコーティング工程を複数回行って、膜の厚さを複数倍にすることにより、定量性を高めることにした。下記表2に示すように1回のコーティングで上記のように1.07倍のヘリウムバリヤ性が得られたコーティング方法で、20回同様にコーティングしたときのヘリウムバリヤ性は3.3倍、100回で8.8倍であった。
【0050】
【表2】
【0051】
このようにして得たヘリウムバリヤ性を用い、第1実施形態で行ったと同様に酸素バリヤ性との相関関係を調べ、その相関関係を用いて制御器54で酸素のバリヤ性を表示するようにした。その結果、5分程度の非常に短い時間で、通常なら2〜3日かかる酸素バリヤ性を評価することができるようになった。この手法は、二酸化炭素や水などでも当然同様に用いることができ、例えば二酸化炭素では2〜3週間かかる測定を同様に5分程度の非常に短い時間で評価することができる。
【0052】
バリヤ性のコーティング工程にかかる時間は、例えば炭素膜のプラズマコーティング法の場合、数秒であるので、100回行ったとしても数分で終了する。したがって、複数回コーティングすることによって準備に数分余計にかかるが、全体としては接着の時間も含めて数十分以内で迅速に、酸素などボトルの用途上評価が必要なガスのバリヤ性を簡単に得ることができる。
【0053】
本装置をバリヤ膜コーティング装置に搭載し、またはどこか別の場所に用意し、初期立ち上げ運転時あるいはメンテ終了後の装置のコーティング動作が正常かどうかを迅速に確認するために用いることができる。例えば、当該コーティング装置の各チャンバ毎にコーティングを適当な複数回行い、各ボトル毎のバリヤ性を上記方法で定量し、必要なバリヤ性が出ているかどうかを確認する。
【0054】
従来の方法により前記計測をすれば、酸素で一チャンバあたり最低1日、30チャンバあるコーティング装置なら全部で1ヶ月の期間がかかってしまい、コスト的にも大きなコストがかかり、実用上は適用が難しい。これに対し、本発明方法では一本あたり数分〜数十分、30チャンバでも並行してボトルの接着、装着などの準備を行えば数時間で計測を終えることができ、生産を開始することができるとともに、万が一コーティング装置に不具合があってバリヤ性が予定通りに得られなければ、その発見と修正を即座に行うことができる。
【0055】
さらに、本装置をバリヤ膜コーティング装置に搭載すれば、通常はコーティング有無のスクリーニングの全数検査または抜き取り検査に用いることによって、不良品の検知、コーティング工程の条件適正化あるいは制御、メンテ時期の検知などに用いることができ、コーティングボトルの品質保持に役立てることができる。
【0056】
(第3実施形態)
図7は、この第3実施形態のバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置を示す概略図である。この装置では、被供試体がペットボトルのような容器形状ではなく、平板状のバリヤ膜被覆プラスチックシートSである場合の例を示したもので、前述した第2実施形態における図5の真空容器47を、バリヤ膜被覆プラスチックシートSが装填できる密閉容器で置き換えたものである。
【0057】
すなわち、密閉容器70は上下に分割可能で、バリヤ膜被覆プラスチックシートSを挟んで上方に真空排気室61、下方にガス流入室62が配置されている。前記密閉容器70と接するバリヤ膜被覆プラスチックシートSからの漏れを防止するためのO−ring63がそれらの接触部に介在され、かつその表面に真空グリースが塗布されている。
【0058】
前記ガス流入室62が位置される前記密閉容器70には、ヘリウムガスを流通あるいは封入できるようにプラスチックシートSの近傍にガスを供給するガス供給管65と、ガス溜まりを生じないようにプラスチックシートSより遠い部分に設置されたガス排気管66が溶接された構造となっている。ガス供給管65にはヘリウム供給系64が接続されている。
【0059】
また、プラスチックシートSが真空排気室61とガス流入室62の圧力差で破損しないようにガス流通用の穴のあいたパンチングボードで製作したバックアップ板67でプラスチックシートSを支えている。前記密閉容器70は、一定温度で計測するために恒温槽48に設置されている。
【0060】
以下、本装置を用いたバリヤ性の計測について説明する。
【0061】
まず、装置の校正を第2実施形態と同様に行う。つづいて、バリヤ性を計測するバリヤ膜被覆プラスチックシートSを密閉容器70に真空排気室61とガス流入室62の間にO−ring63を介して装填、密閉する。ガス流入室62側には、ヘリウムガスを流す。初期は、ガス流入室62内の大気を放出するために大目の流量を流すが、その後は例えば10sccm程度の微量を流すか、あるいは封止しても良い。
【0062】
次いで、真空排気室61を真空引きし、計測を開始するが、この動作は前述した第2実施形態と同様である。
【0063】
この装置でも、前述した第2実施形態と同様、炭素バリヤ膜を例として数十分で計測値が得られ、迅速な評価を行えることがわかった。
【0064】
なお、本発明に係るガス透過速度測定装置はプラスチック容器の製造装置、ガスバリヤを目的とした薄膜をプラスチック容器に被覆する装置、プラスチック容器を洗浄する装置、プラスチック容器に飲料を充填する装置、プラスチック容器にキャッピングする装置の少なくとも1つの装置またはそれら装置を組合せたシステムに搭載して飲料プラントを構成することを許容する。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によればバリヤ膜被覆プラスチック容器またはシートのガス透過速度もしくはバリヤ性を短時間で評価でき、ひいてはプラスチック容器またはシートのバリヤ膜被覆装置のコーティング動作の正常性の迅速な見極め、コーティング条件の制御の指標に利用できる等の顕著な効果を奏するバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置、およびその測定方法、バリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置およびその測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を示す概略図。
【図2】本発明の実施例1,2によるHe分圧の測定時間とHe分圧の関係を示す特性図。
【図3】ヘリウムに対するバリヤ性と、それぞれのボトルの二酸化炭素に対するバリヤ性(従来の計測法で計測)の関係を示す図。
【図4】酸素透過量および炭酸ガス透過量の変化の一例を示す図。
【図5】本発明に係る第2実施形態のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を示す概略図。
【図6】図5の装置を用いた場合のヘリウム放出量の経時変化を示す図。
【図7】本発明に係る第3実施形態のバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置を示す概略図。
【図8】従来技術に係るペットボトルの酸素透過速度を測定するための装置構成図。
【符号の説明】
1,47…真空容器、
2,51…ターボ分子ポンプ、
3…油回転ポンプ、
4…真空計、
5,45…四重極型質量分析計(Qmass)、
6,54…制御器、
46…校正リーク、
B…バリヤ膜被覆ペットボトル、
70…密閉容器、
61…真空排気室、
62…ガス流入室、
64…ヘリウム供給系、
66…ガス排気管、
65…ガス供給管
S…バリヤ膜被覆プラスチックシート。
【発明の属する技術分野】
本発明は、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置、バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法、バリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置およびバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック容器、例えばペットボトルは、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素や水分などの透過、ペット樹脂成分の溶出を防止するために、プラスチック容器表面への膜被覆装置を用いて、その内面または外面にDLC(Diamond Like Carbon)のような炭素膜やSiOx膜などをコーティングすることが試みられている。
【0003】
このようなプラスチック容器表面へのバリヤ膜被覆装置によりバリヤ膜を被覆する際、そのバリヤ膜のバリヤ性を評価することが重要である。バリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性の評価には、従来、次に挙げるようなガス透過性の測定方法が採用されている。
【0004】
1)バリヤ膜被覆プラスチック容器、例えばバリヤ膜被覆ペットボトル内に炭酸水または水を収容して密封した後、ペットボトル内のガス圧力または重量の経時変化を測定する二酸化炭素または水分の保持率計測方法。
【0005】
2)バリヤ膜被覆ペットボトルから切り出したシートを密閉容器内にその容器を上下に分離するように挿入し、分離された下部室に二酸化炭素や酸素を封入し、上部室を例えば真空にした状態で放置し、前記下部室内から前記シートを透過して上部室内に流入した二酸化炭素量や酸素を測定するJIS K7126に準ずる差圧法。
【0006】
3)バリヤ膜被覆ペットボトルから切り出したシートを密閉容器内にその容器を左右に分離するように挿入し、分離された左室に二酸化炭素や酸素を連続的に供給し、右室に窒素のようなキャリアガスを連続的に供給し、右室からの排出ガスをセンサに導入し、ここで前記左室内から前記シートを透過して右室内に流入した二酸化炭素量や酸素を測定するMOCON法。
【0007】
以下、上記3)の方式を多少変更してペットボトルに適用した例を従来例として説明する。
【0008】
図8はペットボトルの酸素透過速度をペットボトルをそのままの形で装填して計測する方法の装置図である。ボトル装填冶具10は、サス板12に、ボトル内部にキャリヤガス(通常は純窒素ガス)を導入するキャリヤガス導入用サス管13と同ガスを排出するキャリヤガス排出用サス管14、およびボトル外部に酸素ガスあるいは空気を導入する酸素導入用サス管15と同ガスを排出する酸素排出用サス管16をガス漏れがないように溶接したものである。
【0009】
まず、ペットボトルBはこのボトル装填冶具10にエポキシ接着剤11でガス漏れがないように接着する。ペットボトルBの外部を酸素雰囲気で密閉するために、密閉容器17をボトル装填冶具10のサス板12にOリング18を挟んで鋲着する。さらに、このボトル装填冶具10および密閉容器17の一式を恒温槽19内に設置し、温度をバリヤ性計測の標準値である23℃に設定する。酸素ガス供給系21から酸素濃度計測器22内の図示しない流量調節系と酸素導入用サス管15を通して密閉容器17に酸素ガスあるいは空気を導入し、酸素排出用サス管16および酸素濃度計測器22内の図示しない配管系を通して大気および酸素を排気ポンプ23から排出する。初期には、大気を排出するために多量に酸素を供給するが、その後は10sccm程度の微量に減らすか、供給をやめて密閉しても良い。
【0010】
一方、ペットボトルB内部には、純窒素供給系24から酸素濃度計測器22内の図示しない流量調節系とキャリヤガス導入用サス管13を介して純窒素を供給し、キャリヤガス排出用サス管14を介して酸素濃度計測器22の図示しない酸素検知器に流通させる。初期には大気を排出するため多量に純窒素を供給するが、その後は10sccm程度の微量に減らし、図示しない酸素検知器に流通させる。このキャリヤガスには、矢印20で示すペットボトルBの樹脂を通して透過した酸素が極微量含まれている。この酸素の濃度を前記酸素検知器で測定し、この値と、供給している純窒素の流量から単位時間あたりの酸素透過量を算出する。計測し終えたキャリヤガスは酸素濃度計測器22内の図示しない配管系を介して大気および窒素を前記酸素排気と混合して排気ポンプ23から排出する。これらのガス供給の制御および酸素透過量の算出などは制御器25で行なう。
【0011】
【発明が解決しょうとする課題】
しかしながら、前述した1)〜3)のガス透過速度測定方法は、二酸化炭素や酸素など、バリヤ性評価を必要とするガスの、バリヤ膜被覆ペットボトルまたはこのペットボトルから切り出したシートに対する透過性が低いために、十分に長い放置時間を置かないとガス透過速度が定常値に達しないという問題があった。
【0012】
以下、この点を前述した従来例について具体的に説明する。この例で計測される酸素透過量は、計測初期にはペット樹脂内およびバリヤ膜内の酸素濃度分布が定常状態にないため,経時変化を起こす。図4にこのような計測における酸素透過量変化の理論値の一例を示す。この図4から酸素透過量が安定するには2〜3日程度かかることがわかる。これは、濃度分布が定常状態になるのにかかる時間であり、ガスの透過速度が遅いために長い時間となってしまう。酸素透過量は、この安定した状態の値が正しい値なので、計測に2〜3日を要することになる。
【0013】
また、図4には上記と同様の方法で二酸化炭素を計測する場合の理論値も合わせて示している。二酸化炭素の場合には、1〜2週間程度かかり、これも同様の要因である。
【0014】
本発明者らは、ペットボトル等のプラスチック容器およびこの容器内面に被覆されたバリヤ膜に対する透過速度が二酸化炭素や酸素や水に比べて極めて大きいヘリウムに着目し、このヘリウムをバリヤ膜被覆プラスチック容器内に封入してガス透過性の計測対象として利用し、このヘリウムガス封入バリヤ膜被覆プラスチック容器を真空容器に装填し、所定の真空度の下で前記真空容器内のヘリウム分圧を四重極型質量分析計で分析することによって、前記バリヤ膜被覆プラスチック容器のバリヤ性を短時間で評価できることを見出し、本発明のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置およびバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法を完成するに至ったものである。
【0015】
また、本発明者らはプラスチックシートおよびこのシートの表面に被覆されたバリヤ膜に対する透過速度が二酸化炭素や酸素や水に比べて極めて大きいヘリウムに着目し、このヘリウムをバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過性の計測対象として利用し、密閉容器にバリヤ膜被覆プラスチックシートをその密閉容器の真空排気室とヘリウムガスが封入または流通されるガス流入室の間に位置するように装填し、前記真空排気室のガスを排気して所定の真空度の下で前記真空排気室内のヘリウム分圧を四重極型質量分析計で分析することによって、前記バリヤ膜被覆プラスチックシートのバリヤ性を短時間で評価できることを見出し、本発明のバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置およびバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法を完成するに至ったものである。
【0016】
表1に酸素、二酸化炭素、ヘリウムのPETシートの透過係数を示す。透過係数は、PETシートへの溶解度と拡散係数の積であり、ガスの透過し易さを表す。
【0017】
【表1】
【0018】
ヘリウムは、従来計測されていた二酸化炭素や酸素や水あるいはペットの樹脂成分のように実際に容器やシートにおいてバリヤされるガス対象ではないが、その透過速度を測定することで、被測定体のバリヤ性の評価をある程度定量的に得ることができ、少なくともバリヤ性の有無をスクリーニングしたり、実際にバリヤ性が必要な二酸化炭素などとヘリウムとの相関を用いて簡単にバリヤ性の評価を行うことができる。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置は、内部にヘリウムガスを封入または流通したバリヤ膜被覆プラスチック容器が装填される真空容器と、
前記真空容器内のガスを排気管を通して排気するための排気手段と、
前記真空容器または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計と
を具備したことを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法は、前記バリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を用いてバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度を測定する方法であって、
バリヤ膜被覆プラスチック容器を真空容器に装填し、その容器内部にヘリウムガスを封入またはヘリウムガスを流通する工程と、
排気手段により前記真空容器内のガスを排気管を通して排気しながら、前記真空容器あるいは排気管に取り付けられた四重極型質量分析計によりヘリウム量を検出する工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置は、バリヤ膜被覆プラスチックシートを挟んで一方に真空排気室、他方にヘリウムガスが封入または流通されるガス流入室を有する密閉容器と、
前記真空排気室内のガスを排気管を通して排気するための排気手段と、
前記真空排気室または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計と
を具備したことを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法は、前記バリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置を用いてバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度を測定する方法であって、
密閉容器にバリヤ膜被覆プラスチックシートをその密閉容器の真空排気室とヘリウムガスが封入または流通されるガス流入室の間に位置するように装填する工程と、
前記密閉容器のガス流入室にヘリウムガスを封入もしくは流通する工程と、
排気手段により前記密閉容器の真空排気室内のガスを排気管を通して排気しながら、前記真空排気室または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計によりヘリウム量を検出する工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0023】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、この第1実施形態のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を示す概略図である。
【0025】
バリヤ膜被覆プラスチック容器、例えばバリヤ膜被覆ペットボトルBが装填される真空容器1は、その底部にターボ分子ポンプ2が連結されている。油回転ポンプ3は、前記ターボ分子ポンプ2に連結されている。これらターボ分子ポンプ2および油回転ポンプ3により排気手段を構成している。
【0026】
真空計4は、前記真空容器1の上部に接続され、その真空容器1の全圧を測定する。四重極型質量分析計(Qmass)5は、前記真空容器1の上部に接続され、その真空容器1内のヘリウム分圧を測定する。制御器6は、前記Qmass5及び真空計4に接続されている。この制御器6は、予めバリヤ膜が被覆されていないペットボトルBをQmass5で測定されたヘリウム分圧が入力され、Qmass5からの分析信号に基づき前記バリヤ膜被覆ペットボトルBのバリヤ膜被覆のバリヤ性を判定する。また、この制御器6は、バリヤ膜被覆ペットボトルの測定の際に、真空容器1の全圧をモニタし、バリヤ膜被覆が無いペットボトルを測定した時と同じ全圧条件であるか否かを監視する。
【0027】
次に、前述したガス透過速度測定装置を用いて本発明に係るバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法を説明する。
【0028】
バリヤ膜被覆ペットボトルBの内部にヘリウムガスを封入した後、このペットボトルBを図2に示す真空容器1に装填する。このヘリウムガスの封入は、例えばグローブボックス内でペットボトルB内の空気を排気した後、ヘリウム(He)を入れ、そのペットボトルBの口部に金属製のキャップを接着剤を介して取り付ける方法を採用することができる
排気手段であるターボ分子ポンプ2および油回転ポンプ3を作動して前記真空容器1内のガスを排気する。この排気において、真空計4により前記真空容器1内の真空度を計測し、その真空度が例えば10−6Torrより高真空になった時点でQmass5により前記真空容器1内のHe分圧を分析する。真空度の目安は、例えばペットボトル(PET樹脂)のガスに対する拡散係数のような物性値から予想されるHe分圧の値より低くする。
【0029】
このようなQmass5によるヘリウム分圧の分析において、ヘリウムはペットボトルBおよびその表面のバリヤ膜に対する透過速度が酸素や二酸化炭素などに比べて極めて大きく、封入したヘリウムガスはバリヤ膜被覆ペットボトルBを容易に透過し、定常状態に短時間で到達するため、Qmass5により前記真空容器1内のヘリウム分圧を短時間(例えば5〜10分間)で分析することができる。このヘリウムの分圧は、バリヤ膜被覆ペットボトルBにおけるバリヤ膜のバリヤ性の程度に関連する。すなわち、前記ペットボトルB表面のバリヤ膜のバリヤ性が低い場合には封入したヘリウムのペットボトルBに対する透過速度が大きくなるため、Qmass5により分析されたヘリウムの分圧が高くなる。一方、前記ペットボトルBの表面にバリヤ膜が被覆されている場合には封入したヘリウムのペットボトルBに対する透過速度が低くなるため、Qmass5により分析されたヘリウムの分圧が低くなる。
【0030】
定量的には、ヘリウムの分圧に排気系のヘリウムの排気速度をかけた値が、ボトルから放出されるヘリウムの質量流量、すなわち、バリヤ膜被覆ペットボトルのバリヤ膜とペット樹脂を通して外部に放出されるヘリウムの時間あたりの透過量である。この大小で、バリヤ膜被覆ペットボトルのバリヤ性が評価できる。酸素や二酸化炭素のバリヤ性の違うサンプルのバリヤ性を上記の従来の手法であらかじめ計測しておき、一方、本手法でそれぞれのボトルのヘリウムの透過量を計測しておけば、その相関関係によって短時間に測定できるヘリウムの透過量によって、酸素や二酸化炭素などの本来バリヤ性を計測したいが時間のかかるガスでのバリヤ性を短時間の計測で推測することができる。
【0031】
前記Qmass5によるヘリウム分圧の測定後、この測定信号を制御器6に出力し、上記の相関関係を元にバリヤ性を予測する。なお、前記Qmass5による前記真空容器1内の全圧を計測して、その全圧にほぼ変化がなければ、真空系全体がリークのないことを確認できる。
【0032】
したがって、本発明によればバリヤ膜被覆ペットボトルBのバリヤ性を短時間で推測することができる。このようにボトルのバリヤ性の迅速な評価によって、出荷する製品ボトルの抜き取り検査を迅速化したり、全数検査を行ったり、あるいは、バリヤ膜成膜装置やバリヤ膜被覆量産装置などに本装置を組み込むなどして、その生産工程の健全性評価などを迅速化することができる。また、本方法をスクリーニングに用い、ペットボトルBのバリヤ性を大まかに評価し、必要に応じて従来技術に記載した方法を用いて酸素や二酸化炭素など実際に用いる際に必要なガスの透過速度を測定してもよい。
【0033】
(実施例1)
グローブボックス内でバリヤ膜被覆を施さないペットボトルB内の空気を排気した後、ヘリウム(He)で置換し、そのペットボトルBの口部に金属製のキャップを接着剤を介して取り付けることによりその内部にHeガスを封入した。つづいて、このペットボトルBをグローブボックスから取り出し、図1に示す真空容器1に装填した。
【0034】
次いで、排気手段であるターボ分子ポンプ2および油回転ポンプ3を作動して前記真空容器1内のガスを排気した。この排気において、真空計4により前記真空容器1内の真空度を計測し、その真空度が例えば10−6Torrになった時点(排気後60分間経過)でQmass5により前記真空容器1内のHe分圧の測定を150分間行った。
【0035】
(実施例2)
グローブボックス内でバリヤ膜被覆ペットボトルB内の空気を排気した後、ヘリウム(He)で置換し、そのペットボトルBの口部に金属製のキャップを接着剤あるいは真空グリースを介して取り付けることによりその内部にHeガスを封入した。つづいて、このペットボトルBをグローブボックスから取り出し、図1に示す真空容器1に装填した。
【0036】
次いで、実施例1と同様に排気手段であるターボ分子ポンプ2および油回転ポンプ3を作動して前記真空容器1内のガスを排気し、この排気において真空計4により前記真空容器1内の真空度を計測し、その真空度が例えば10−6Torrになった時点(排気後60分間経過)でQmass5により前記真空容器1内のHe分圧の測定を150分間行った。
【0037】
このような実施例1,2における測定時間とHe分圧の関係を図2に示す。なお、実施例1,2において前記Qmass5による前記真空容器1内の全圧を計測した結果を同図2に示す。
【0038】
図2から明らかなように実施例1,2がいずれも全圧にほぼ変化がなく、真空系全体がリークのない条件の下、測定開始から150分間の短時間で、実施例1のバリヤ膜被覆を施さないペットボトルBのHe分圧が実施例2のバリヤ膜被覆ペットボトルBのHe分圧より大きく、その分圧比が約2倍になることから、これらのバリヤ膜被覆ペットボトルBのヘリウムに対するバリヤ性が約2倍であることがわかる。このようにヘリウムに対してバリヤ性が得られれば、一般に酸素や二酸化炭素に対してもバリヤ性があるので、バリヤ性の有無を短時間でスクリーニングできることがわかる。
【0039】
さらに、定量的に酸素や二酸化炭素に対するバリヤ性を評価するために、図3は前述の方法で計測したヘリウムに対するバリヤ性と、それぞれのボトルの二酸化炭素に対するバリヤ性(従来の計測法で計測)をプロットしたものである。この図3から例えばヘリウムのバリヤ性が2倍の場合、二酸化炭素のバリヤ性は40倍程度と推測される。この相関関係を制御器6に記憶させ、ヘリウムの分圧計測結果からヘリウムのバリヤ性を算出し、さらに二酸化炭素のバリヤ性を出力するようにした。これにより、二酸化炭素のバリヤ性を迅速に評価する事が出来るようになった。
【0040】
図3に示したようなヘリウムのバリヤ性と二酸化炭素のバリヤ性の相関関係は、常に一定ではなく、バリヤ膜の組成や材質や製造方法や製造条件によって変わる可能性がある。したがって、上記が異なるごとに実測することが好ましい。また、本方法は二酸化炭素だけでなく、酸素や水などについても当然同様に行える。
【0041】
(第2実施形態)
図5は、この第2実施形態のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を示す概略図である。
【0042】
ペットボトルBを装填され、底部に開閉可能なフランジ57を有する真空容器47は、バリヤ性が温度依存性があるために、正確な測定を目的として恒温槽48内に設置した。排気管49は、その一端が真空バルブ50を介して前記真空容器47に接続され、他端がターボ分子ポンプ51および粗引きポンプ52からなる排気ポンプ系53に接続されている。真空排気にかかる時間をできるだけ短縮するため、真空容器47のサイズはペットボトルが納まるサイズにし、前記排気管49は可能な限り短くした。真空バルブ50と排気ポンプ系53の間の排気管49には、ヘリウムを一定量流出することが可能な校正リーク46とヘリウムの分圧に比例した信号を出す四重極型質量分析計45とが接続されており、さらにこれらを制御器54でコントロールしている。
【0043】
本装置の四重極型質量分析計45、校正リーク46、排気ポンプ系53、制御器54の一式は、ヘリウムリーク計測装置55として市販されたものを流用することもできる。
【0044】
以下、本装置を用いたバリヤ性の計測について説明する。
【0045】
まず、装置の校正を行う。真空バルブ50を閉じ、排気ポンプ系53を立ち上げる。質量分析計45が使用できる状態になったら、校正リーク46からたとえば質量流量1×10−6Pa・m3/sでヘリウムを流し、質量分析計45のヘリウム出力信号を制御器54で校正する。つづいて、バリヤ性を計測するペットボトルBを第1実施形態と同様に内部をヘリウムガスに置換し、サス板56(またはキャップ)を真空グリース11(または接着剤)で接着して密封する。このペットボトルBを真空容器の底の開閉可能なフランジ57から真空容器47内に設置する。真空容器47が入っている恒温槽48は、ペットボトルBの温度が一定温度に早くなるように予め一定温度、例えば25℃に設定しておく。この温度はペットボトルBの初期温度(計測する前の温度)にあわせて設定しておくと、計測値が定常状態に落ち着くのが早い。例えば室温のボトルを計測するのであれば、室温程度の一定温度に設定しておくことが好ましいし、コーティング直後のボトルを計測するのであれば、コーティング直後の温度(たとえば40℃)に設定しておくことが好ましい。
【0046】
次いで、質量分析計45が真空度の悪化によりトリップしないように注意しながら真空バルブ50をゆっくりと開き、真空容器47を真空引きする。真空バルブ50を全開したら質量分析計45のヘリウム出力信号を制御器54でモニタし、一定値に安定したあと、その値を校正リーク46の校正値と比較し、ボトルBから矢印58のように放出されるヘリウム量を算出する。
【0047】
図6は、ヘリウム放出量の経時変化である。図6から明らかなように放出量は、5分程度で定常状態に安定することがわかる。
【0048】
このようにして計測した結果、ペットボトルBがバリヤ膜のないボトルの場合、例えば3.0×10−6Pa・m3/sと値が得られた。一方、酸素バリヤ性が20倍のバリヤ性が得られて得られている炭素系のバリヤ膜のついたボトルの場合、2.8×10−6Pa・m3/sと値が得られた。酸素バリヤ性20倍に対し、ヘリウムバリヤ性は1.07倍である。この値はバリヤ性の有無のスクリーニングなどには十分である。
【0049】
しかしながら、定量的な評価には不十分な場合もある。そこで、さらに精度の高い定量的な評価を行うために、バリヤ膜のコーティング工程を複数回行って、膜の厚さを複数倍にすることにより、定量性を高めることにした。下記表2に示すように1回のコーティングで上記のように1.07倍のヘリウムバリヤ性が得られたコーティング方法で、20回同様にコーティングしたときのヘリウムバリヤ性は3.3倍、100回で8.8倍であった。
【0050】
【表2】
【0051】
このようにして得たヘリウムバリヤ性を用い、第1実施形態で行ったと同様に酸素バリヤ性との相関関係を調べ、その相関関係を用いて制御器54で酸素のバリヤ性を表示するようにした。その結果、5分程度の非常に短い時間で、通常なら2〜3日かかる酸素バリヤ性を評価することができるようになった。この手法は、二酸化炭素や水などでも当然同様に用いることができ、例えば二酸化炭素では2〜3週間かかる測定を同様に5分程度の非常に短い時間で評価することができる。
【0052】
バリヤ性のコーティング工程にかかる時間は、例えば炭素膜のプラズマコーティング法の場合、数秒であるので、100回行ったとしても数分で終了する。したがって、複数回コーティングすることによって準備に数分余計にかかるが、全体としては接着の時間も含めて数十分以内で迅速に、酸素などボトルの用途上評価が必要なガスのバリヤ性を簡単に得ることができる。
【0053】
本装置をバリヤ膜コーティング装置に搭載し、またはどこか別の場所に用意し、初期立ち上げ運転時あるいはメンテ終了後の装置のコーティング動作が正常かどうかを迅速に確認するために用いることができる。例えば、当該コーティング装置の各チャンバ毎にコーティングを適当な複数回行い、各ボトル毎のバリヤ性を上記方法で定量し、必要なバリヤ性が出ているかどうかを確認する。
【0054】
従来の方法により前記計測をすれば、酸素で一チャンバあたり最低1日、30チャンバあるコーティング装置なら全部で1ヶ月の期間がかかってしまい、コスト的にも大きなコストがかかり、実用上は適用が難しい。これに対し、本発明方法では一本あたり数分〜数十分、30チャンバでも並行してボトルの接着、装着などの準備を行えば数時間で計測を終えることができ、生産を開始することができるとともに、万が一コーティング装置に不具合があってバリヤ性が予定通りに得られなければ、その発見と修正を即座に行うことができる。
【0055】
さらに、本装置をバリヤ膜コーティング装置に搭載すれば、通常はコーティング有無のスクリーニングの全数検査または抜き取り検査に用いることによって、不良品の検知、コーティング工程の条件適正化あるいは制御、メンテ時期の検知などに用いることができ、コーティングボトルの品質保持に役立てることができる。
【0056】
(第3実施形態)
図7は、この第3実施形態のバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置を示す概略図である。この装置では、被供試体がペットボトルのような容器形状ではなく、平板状のバリヤ膜被覆プラスチックシートSである場合の例を示したもので、前述した第2実施形態における図5の真空容器47を、バリヤ膜被覆プラスチックシートSが装填できる密閉容器で置き換えたものである。
【0057】
すなわち、密閉容器70は上下に分割可能で、バリヤ膜被覆プラスチックシートSを挟んで上方に真空排気室61、下方にガス流入室62が配置されている。前記密閉容器70と接するバリヤ膜被覆プラスチックシートSからの漏れを防止するためのO−ring63がそれらの接触部に介在され、かつその表面に真空グリースが塗布されている。
【0058】
前記ガス流入室62が位置される前記密閉容器70には、ヘリウムガスを流通あるいは封入できるようにプラスチックシートSの近傍にガスを供給するガス供給管65と、ガス溜まりを生じないようにプラスチックシートSより遠い部分に設置されたガス排気管66が溶接された構造となっている。ガス供給管65にはヘリウム供給系64が接続されている。
【0059】
また、プラスチックシートSが真空排気室61とガス流入室62の圧力差で破損しないようにガス流通用の穴のあいたパンチングボードで製作したバックアップ板67でプラスチックシートSを支えている。前記密閉容器70は、一定温度で計測するために恒温槽48に設置されている。
【0060】
以下、本装置を用いたバリヤ性の計測について説明する。
【0061】
まず、装置の校正を第2実施形態と同様に行う。つづいて、バリヤ性を計測するバリヤ膜被覆プラスチックシートSを密閉容器70に真空排気室61とガス流入室62の間にO−ring63を介して装填、密閉する。ガス流入室62側には、ヘリウムガスを流す。初期は、ガス流入室62内の大気を放出するために大目の流量を流すが、その後は例えば10sccm程度の微量を流すか、あるいは封止しても良い。
【0062】
次いで、真空排気室61を真空引きし、計測を開始するが、この動作は前述した第2実施形態と同様である。
【0063】
この装置でも、前述した第2実施形態と同様、炭素バリヤ膜を例として数十分で計測値が得られ、迅速な評価を行えることがわかった。
【0064】
なお、本発明に係るガス透過速度測定装置はプラスチック容器の製造装置、ガスバリヤを目的とした薄膜をプラスチック容器に被覆する装置、プラスチック容器を洗浄する装置、プラスチック容器に飲料を充填する装置、プラスチック容器にキャッピングする装置の少なくとも1つの装置またはそれら装置を組合せたシステムに搭載して飲料プラントを構成することを許容する。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によればバリヤ膜被覆プラスチック容器またはシートのガス透過速度もしくはバリヤ性を短時間で評価でき、ひいてはプラスチック容器またはシートのバリヤ膜被覆装置のコーティング動作の正常性の迅速な見極め、コーティング条件の制御の指標に利用できる等の顕著な効果を奏するバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置、およびその測定方法、バリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置およびその測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を示す概略図。
【図2】本発明の実施例1,2によるHe分圧の測定時間とHe分圧の関係を示す特性図。
【図3】ヘリウムに対するバリヤ性と、それぞれのボトルの二酸化炭素に対するバリヤ性(従来の計測法で計測)の関係を示す図。
【図4】酸素透過量および炭酸ガス透過量の変化の一例を示す図。
【図5】本発明に係る第2実施形態のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を示す概略図。
【図6】図5の装置を用いた場合のヘリウム放出量の経時変化を示す図。
【図7】本発明に係る第3実施形態のバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置を示す概略図。
【図8】従来技術に係るペットボトルの酸素透過速度を測定するための装置構成図。
【符号の説明】
1,47…真空容器、
2,51…ターボ分子ポンプ、
3…油回転ポンプ、
4…真空計、
5,45…四重極型質量分析計(Qmass)、
6,54…制御器、
46…校正リーク、
B…バリヤ膜被覆ペットボトル、
70…密閉容器、
61…真空排気室、
62…ガス流入室、
64…ヘリウム供給系、
66…ガス排気管、
65…ガス供給管
S…バリヤ膜被覆プラスチックシート。
Claims (7)
- 内部にヘリウムガスを封入または流通したバリヤ膜被覆プラスチック容器が装填される真空容器と、
前記真空容器内のガスを排気管を通して排気するための排気手段と、
前記真空容器または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計と
を具備したことを特徴とするバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置。 - 前記四重極型質量分析計からの分析信号に基づき前記バリヤ膜被覆プラスチックのガス透過速度あるいはバリヤ性を評価するための制御器は、前記四重極型質量分析計にさらに接続されていることを特徴とする請求項1記載のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置。
- 請求項1記載のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定装置を用いてバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度を測定する方法であって、
バリヤ膜被覆プラスチック容器を真空容器に装填し、その容器内部にヘリウムガスを封入またはヘリウムガスを流通する工程と、
排気手段により前記真空容器内のガスを排気管を通して排気しながら、前記真空容器あるいは排気管に取り付けられた四重極型質量分析計によりヘリウム量を検出する工程と
を含むことを特徴とするバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法。 - 計測されるバリヤ膜被覆プラスチック容器は、製品状態のバリヤ膜よりも2倍以上厚く成膜したバリヤ膜または製品状態のバリヤ膜の成膜工程を2回以上成膜したバリヤ膜が被覆されたもので、このプラスチック容器をサンプルとしてガス透過速度を測定し、この測定結果に基づいて前記製品を製造するバリヤ膜の成膜工程におけるバリヤ性の評価に用いることを特徴とする請求項2記載のバリヤ膜被覆プラスチック容器のガス透過速度測定方法。
- バリヤ膜被覆プラスチックシートを挟んで一方に真空排気室、他方にヘリウムガスが封入または流通されるガス流入室を有する密閉容器と、
前記真空排気室内のガスを排気管を通して排気するための排気手段と、
前記真空排気室または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計と
を具備したことを特徴とするバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置。 - 請求項5記載のバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定装置を用いてバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度を測定する方法であって、
密閉容器にバリヤ膜被覆プラスチックシートをその密閉容器の真空排気室とヘリウムガスが封入または流通されるガス流入室の間に位置するように装填する工程と、
前記密閉容器のガス流入室にヘリウムガスを封入もしくは流通する工程と、
排気手段により前記密閉容器の真空排気室内のガスを排気管を通して排気しながら、前記真空排気室または前記排気管に取り付けられた四重極型質量分析計によりヘリウム量を検出する工程と
を含むことを特徴とするバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法。 - 計測されるバリヤ膜被覆プラスチックシートは、製品状態のバリヤ膜よりも2倍以上厚く成膜したバリヤ膜または製品状態のバリヤ膜の成膜工程を2回以上成膜したバリヤ膜が被覆されたもので、このプラスチックシートをサンプルとしてガス透過速度を測定し、この測定結果に基づいて前記製品を製造するバリヤ膜の成膜工程におけるバリヤ性の評価に用いることを特徴とする請求項6記載のバリヤ膜被覆プラスチックシートのガス透過速度測定方法。
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