JP3775506B2 - 器官形成を改良した植物及びその作出方法 - Google Patents
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Description
本発明は、種々の改良された器官形成を有する植物、詳細には改良された茎、葉、花、子房(さや、果実)、種子を有する植物に関する。また、本発明は該植物の作出方法に関する。
背景技術
植物はそれぞれの生息地の様々な環境要因に適応して生活している。例えば、植物は生育する環境に応じて形を変化させる能力を有している。植物が一旦ある場所に根をおろしてしまうと、その場所の環境がいかにその植物に適していなくても移動することができず、自分自身の形を変化させることで適応して生育を続ける。植物にとっては形を変えることは生き残っていくうえで必須条件となっている。
種々の器官形成を改良するために交雑育種、最近の遺伝子工学技術を利用した育種、植物ホルモンや植物調節剤の作用を利用した方法等が行われている。
植物の器官形成や形態形成の制御機構を解明するためにシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いて数多くの研究が行われている。花形成に関与する遺伝子としては、LEAFY(LFY)、APETALA1(AP1)、AGAMOUS(AG)、SUPERMAN(SUP)、FIL(FIL)などが報告されている。茎形成に関与する遺伝子としてはTCH4、dbpなどが報告されている。葉形成に関与する遺伝子としてはLAN1、MACなどが報告されている。根形成に関与する遺伝子としては、ttg、gl2、CPC、IREなどが報告されている。
これまでに遺伝子工学技術を利用した、形態形成や器官形成を改良した植物の作出が行われている。ジンクフィンガーモチーフを有する転写因子(PetSPL3)をペチュニアに導入して花の形態変化が報告されている(特開平11−262390)。CPC遺伝子やIRE遺伝子をシロイヌナズナに導入して根の形態変化が報告されている(特開平10−4978、特開2000−270873)。しかし、これらの遺伝子を形質転換した植物の多くは、実際には産業上利用可能な程度に十分な効果は得られておらず、実用化に至っていないのが現状である。
ポリアミンとは第1級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物であり、20種類以上のポリアミンが見いだされている。代表的なポリアミンとしてはプトレシン、スペルミジン、スペルミンがある。ポリアミンの主な生理作用としては(1)核酸との相互作用による核酸の安定化と構造変化(2)種々の核酸合成系への促進作用(3)タンパク質合成系の活性化(4)細胞膜の安定化や物質の膜透過性の強化などが知られている。
植物におけるポリアミンの役割としては細胞増殖や***時に核酸、タンパク質生合成の促進効果や細胞保護が報告されているが、最近ではポリアミンと環境ストレス耐性との関わりも注目されている。
形態形成とポリアミンの関わりは、体細胞胚形成、不定根形成について幾つか報告されている。例えば、ニンジン(Planta,162,532,1984、Science,223,1433,1984)、エンバク(Plant Growth Reg.,3,329,1985)、ハクサイ(Plant Sci.,56,167,1988)、ペチュニア(Plant Sci.,62,123,1989)でポリアミンにより体細胞胚形成が促進されることや、リョクトウ(Physiol.Plant.,64,53,1985、Plant Cell Physiol.,24,677,1983)では不定根形成が促進されることが示されている。ポリアミンと花、茎、葉、子房などの器官形成との関与については、これまでほとんど報告されていない。
植物のポリアミン生合成に関わるポリアミン代謝関連酵素としてはアルギニン脱炭酸酵素(ADC)、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)、スペルミジン合成酵素(SPDS)、スペルミン合成酵素(SPMS)等が知られている。これらのポリアミン代謝関連酵素をコードするポリアミン代謝関連遺伝子については植物から既に幾つか単離されている。ADC遺伝子はエンバク(Mol.Gen.Genet.,224,431−436,1990)、トマト(Plant Physiol.,103,829−834,1993)、シロイヌナズナ(Plant Physiol.,111,1077−1083,1996)、エンドウ(Plant Mol.Biol.,28,997−1009,1995)、ODC遺伝子はチョウセンアサガオ(Datura)(Biocem.J.,314,241−248,1996)、SAMDC遺伝子はジャガイモ(Plant Mol.Biol.,26,327−338,1994)、ホウレンソウ(Plant Physiol.,107,1461−1462,1995)、タバコ、SPDS遺伝子はシロイヌナズナ(Plant cell Physiol.,39(1),73−79,1998)等から単離されている。
従って、本発明の目的は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の発現を人為的に制御して、ポリアミンレベルを変化させることによって、種々の器官形成が改良された組換え植物を作出することである。
発明の開示
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意努力した結果、ポリアミン生合成に関わるポリアミン代謝関連酵素遺伝子を単離して、該遺伝子を植物に導入して過剰発現することによって、ポリアミン代謝を操作してポリアミン濃度を変化させることによって、茎、葉、花、子房(果実、さや)、種子(胚珠)など種々の器官形成のパラメーターが改良されることを見出した。
ポリアミンは分子中にアミンを多く含む塩基性物質であり、代表的なポリアミンとしては二分子のアミンを含むプトレシン、三分子のアミンを含むスペルミジン、四分子のアミンを含むスペルミン等がある。植物において、これらのポリアミン生合成に関わるポリアミン代謝関連酵素としてはプトレシンについてはADC、ODC、スペルミジンについてはSAMDC、SPDS、スペルミンについてはSAMDC、SPMS等が見つかっている。これらのポリアミン代謝関連酵素をコードしているポリアミン代謝関連酵素遺伝子についても既に幾つかの植物で単離されている。さらに、幾つかのポリアミン代謝関連酵素遺伝子については植物への導入が試みられているが、得られた形質転換植物で茎、葉、花、子房、種子などの器官形成の改良については報告されていない。
このような状況下に、本発明者らは植物の器官形成を改良するために鋭意、検討した結果、器官形成において、特にポリアミンであるスペルミジンやスペルミン含量が重要であることを見いだし、実際に植物組織からスペルミジンやスペルミン生合成に関わるポリアミン代謝関連遺伝子(SPDS、SAMDC、ADC)を単離、同定した。さらに、該遺伝子を植物に導入して過剰発現することによって、ポリアミン代謝を操作してポリアミン濃度を変化させることによって、茎、葉、花、子房(果実、さや)、種子(胚珠)など種々の器官形成のパラメーターが改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を提供するものである。
1.植物中で機能し得るプロモーターの制御下にあるポリアミン量を調節する少なくとも1つの核酸配列を安定に保持し、且つ該核酸配列を有していない植物に比べて少なくとも1種の器官形成が改良された植物及びその子孫。
22. 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にあるポリアミン量を調節する少なくとも1つの核酸配列を安定に保持し、且つ該核酸配列を有していない植物の細胞を形質転換する工程を含む、該核酸配列を有していない植物に比べて改良された器官形成を有する植物の作出方法。
24. 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にあるポリアミン量を調節する少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つの発現ベクターで、該核酸配列を有していない植物の細胞を形質転換する工程を含む、該核酸配列を有していない植物に比べて改良された器官形成を有する植物の作出方法。
40. 以下の工程:
(1)植物中で機能し得るプロモーターの制御下にあるポリアミン量を調節する少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つの発現ベクターで、該核酸配列を有していない植物の細胞を形質転換し、
(2)該形質転換細胞から、該核酸配列を有していない植物に比べて改良された器官形成を有する植物体を再生し、
(3)該植物体から受粉により種子を採取し、および
(4)該種子を栽培して得られる植物体から受粉により得られる種子における該核酸配列を検定して該核酸配列のホモ接合体を選抜すること
を含む、該核酸配列についてホモ接合体である、該核酸配列を有していない植物に比べて改良された器官形成を有する形質が固定された植物の作出方法。
41. 以下の工程:
(1)植物中で機能し得るプロモーターの制御下にあるポリアミン量を調節する少なくとも1つの核酸配列の抑制因子を含む少なくとも1つの発現ベクターで、該核酸配列を有していない植物の細胞を形質転換し、
(2)該形質転換細胞からカルスを誘導する
を含む、該核酸配列についてホモ接合体である、該核酸配列を有していない植物に比べて改良された器官形成を有する形質が固定されたカルスの作出方法。
本発明において「器官」とは、植物のあらゆる器官(組織)で、例えば、茎、塊茎、葉、根、塊根、蕾、花、花弁、子房、果実、さや、さく果、種子、繊維、胚珠などを指す。該器官(組織)の形成に関わる形質としては、数量、生育期間、形、着色、性質、特性などをいう。ポリアミンの発現量は、植物の器官の数量と密接に関係し、葉、花、果実、塊茎、塊根さや、さく果などについては、数量とともに生育の開始は早くなり、かつ、終了が遅くなるので、長期間これらを鑑賞及び賞味することができる。
本発明で得られる植物は、栽培環境(例えば環境ストレス)に左右されずポリアミンの発現量が増大し、器官形成を改良することができる。
ポリアミン量を調節する核酸配列としては、外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子または内因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の抑制因子が挙げられる。外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子は植物体中のポリアミン量を増大させ、内因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の抑制因子は植物体中のポリアミン量を減少させる。
本発明において「該ポリアミン量を調節する核酸配列を有していない植物」とは該核酸配列(例えば外因性のポリアミン代謝関連酵素遺伝子又は内因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の抑制因子)をゲノム上に有しないあらゆる植物を意味する。従って、いわゆる野生種のほか、通常の交配によって樹立された栽培品種、それらの自然または人工変異体、並びにポリアミン代謝関連酵素遺伝子以外の外因性遺伝子を導入されたトランスジェニック植物などをすべて包含する。
本発明で言うところの「ポリアミン」は生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素化合物である。例えば、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミンなどが挙げられる。
ポリアミン代謝関連酵素遺伝子
本発明において「ポリアミン代謝関連酵素遺伝子」とは、植物におけるポリアミンの生合成に関与する酵素のアミノ酸をコードする遺伝子であり、例えば代表的なポリアミンであるプトレシンについてはアルギニン脱炭酸酵素(ADC)遺伝子とオルニチン脱炭酸酵素(ODC)遺伝子、スペルミジンについてはS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)遺伝子とスペルミジン合成酵素(SPDS)遺伝子、スペルミンについてはS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)遺伝子とスペルミン合成酵素(SPMS)遺伝子が関与し、律速になっていると考えられている。
アルギニン脱炭酸酵素(ADC:arginine decarboxylase EC4.1.1.19.)はL−アルギニンからアグマチンと二酸化炭素を生成する反応を触媒する酵素である。オルニチン脱炭酸酵素(ODC:ornithine decarboxylase EC4.1.1.17.)はL−オルニチンからプトレシンと二酸化炭素を生成する反応を触媒する酵素である。S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC:S−adenosylmethionine decarboxylase EC4.1.1.50.)はS−アデノシルメチオニンからアデノシルメチルチオプロピルアミンと二酸化炭素を生成する反応を触媒する酵素である。スペルミジン合成酵素(SPDS:spermidine synthase EC2.5.1.16.)はプトレシンとアデノシルメチルチオプロピルアミンからスペルミジンとメチルチオアデノシンを生成する反応を触媒する酵素である。
これらの遺伝子は、いずれの由来であってもいいが、例えば、種々の植物から単離することができる。具体的には、双子葉植物、例えばウリ科;ナス科;シロイヌナズナ等のアブラナ科;アルファルファ、カウピー(Vigna unguiculata)等のマメ科;アオイ科;キク科;アカザ科;ヒルガオ科からなる群から選ばれたもの、又は単子葉植物、例えばイネ、小麦、大麦、トウモロコシ等のイネ科などが含まれる。乾燥に強いサボテンやアイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)でもよい。好ましくは、ウリ科植物、より好ましくはクロダネカボチャがよい。
本発明の植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子を単離する植物組織としては種子形態、または生育過程にあるものである。生育中の植物は全体、あるいは部分的な組織から単離することができる。単離することができる部位としては、特に限定はされないが、好ましくは植物の全樹、蕾、花、子房、果実、葉、茎、根などである。
本発明において使用されるポリアミン代謝関連酵素遺伝子の好ましい例として、スペルミジン合成酵素遺伝子、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子、アルギニン脱炭酸酵素遺伝子を挙げることができる。具体的には、
・配列番号1に示される塩基配列中塩基番号77〜1060で示される塩基配列を有するDNA
・配列番号3に示される塩基配列中塩基番号456〜1547で示される塩基配列を有するDNA、及び
・配列番号5に示される塩基配列中塩基番号541〜2661で示される塩基配列を有するDNA、
が挙げられる。さらに、
・該上記いずれかの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有し、且つ該配列と同等のポリアミン代謝関連酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA、及び
・該上記いずれかの配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり且つ該配列と同等のポリアミン代謝関連酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
が挙げられる。
ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、特定ポリアミン代謝関連酵素遺伝子配列にコードされるポリアミン代謝関連酵素と同等のポリアミン代謝関連酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列のみが該特定配列とハイブリット(いわゆる特異的ハイブリット)を形成し、同等の活性を有しないポリペプチドをコードする塩基配列は該特定配列とハイブリット(いわゆる非特異的ハイブリット)を形成しない条件を意味する。当業者は、ハイブリダイゼーション反応および洗浄時の温度や、ハイブリダイゼーション反応液および洗浄液の塩濃度等を変化させることによって、このような条件を容易に選択することができる。具体的には、6×SSC(0.9M NaCl,0.09M クエン酸三ナトリウム)または6×SSPE(3M NaCl,0,2M NaH2PO4,20mM EDTA・2Na,pH7.4)中42℃でハイブリダイズさせ、さらに42℃で0.5×SSCにより洗浄する条件が、本発明のストリンジェントな条件の1例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
一般的に生理活性を有するタンパク質のアミノ酸配列において1個もしくは複数のアミノ酸が置換、削除、挿入または付加された場合であっても、その生理活性が維持される場合があることは当業者において広く認識されている。ここでいう「1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列」とは、このような修飾が加えられ、かつポリアミン代謝関連酵素をコードする遺伝子が例示され、このような遺伝子も本発明の範囲に含まれる。例えば、polyAテールや5’、3’末端の非翻訳領域が「欠失」されてもよいし、アミノ酸を欠失するような範囲で塩基が「欠失」されてもよい。また、フレームシフトが起こらない範囲で塩基が「置換」されてもよい。また、アミノ酸が付加されるような範囲で塩基が「付加」されてもよい。但し、そのような修飾があっても、ポリアミン代謝関連酵素活性を有することが必要である。好ましくは、「1又は数個の塩基が欠失、置換又は付加された遺伝子」がよい。
このような改変されたDNAは例えば、部位特異的変異法(Nucleic Acid Research,Vol.10,No.20,6487−6500,1982)等によって、特定の部位のアミノ酸が置換、削除、挿入、付加されるように本発明のDNAの塩基配列を改変することによって得られる。
本発明における「アンチセンス遺伝子」とはポリアミン代謝関連酵素遺伝子の塩基配列に相補的な配列を有する遺伝子を意味する。アンチセンスDNAは、例えば配列番号1、3、5の塩基配列に相補的なものであり、アンチセンスRNAはそれらから産生されるものである。
内因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の抑制因子
該抑制因子は、該遺伝子の発現を抑制するものであれば特に制限されず、例えば該遺伝子及びその上流又は下流から選ばれる配列のアンチセンスDNAまたは二本鎖RNA(dsRNA)、RNAiが例示される。該アンチセンスDNAは、該遺伝子のイントロンまたはエクソン、該遺伝子のプロモーターを含む5‘上流側の調節領域または終止コドンの下流側であって、遺伝子発現に影響する領域のいずれかに相補的であればよい。アンチセンスDNAの長さは、少なくとも20塩基、好ましくは少なくとも100塩基、より好ましくは少なくとも300塩基、特に少なくとも500塩基を有する。該アンチセンスDNAの転写産物は、内因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子のmRNAとハイブリダイズするか、内因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子或いはその上流又は下流の配列の非コーディング領域(例えばプロモーター、イントロン、転写終結因子)にハイブリダイズする。RNAiは、標的遺伝子に対するセンス配列と、標的遺伝子に対するアンチセンス配列を有するRNAから構成され、該センス配列とアンチセンス配列は2本のRNAに各々含まれて2本鎖RNAとして機能してもよく、1本のRNAに含まれて2重鎖部分とそれらをつなぐループ配列を有する1つのRNA分子として機能してもよい。
器官形成が改良された植物及びその子孫
本発明において、「器官」としては、上述のごとく、植物のあらゆる器官(組織)で、例えば、茎、塊茎、葉、根、塊根、蕾、花、花弁、子房、果実、さや、さく果、種子、繊維、胚珠などを包含し、該器官(組織)の形成に関わる形質として数量、生育期間、形、着色、性質、特性が例示される。
本発明において、「器官形成が改良された植物」および「改良された器官形成を有する植物」とは、外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子または内因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の抑制因子を導入することによって、導入前に比して器官形成に関わる形質である、数量、生育期間、形、着色、性質、特性が付与若しくは向上若しくは抑制した植物をいう。例えば、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子または該抑制因子を植物に導入することにより、茎、葉、花、子房、種子の形成に関わる形質が、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子または該抑制因子を有していない植物に比べて向上した植物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、ポリアミン量を調節する核酸配列により「茎の数が改良された植物」とは、植物の茎(主茎、側茎、花茎、幹、枝などを含む)の数が増加した植物、該抑制因子により植物の茎(主茎、側茎、花茎、幹、枝などを含む)の数が減少ないし縮小した植物である。
「葉の数が改良された植物」とは、植物の葉の数が増加又は減少若しくは縮小した植物である。
「花の数または花の開花期が改良された植物」とは、植物の花の数が増加又は減少若しくは縮小した植物、または植物の花の開花時期が早まりまたは開花期間が増大した植物である。「子房の数または子房の発達期間が改良された植物」とは、植物の子房、果実、さや、さく果の数が増加又は減少若しくは縮小した植物、または子房、果実、さや、さく果の着果から成熟までの生育または発達の期間が増大又は減少若しくは縮小した植物である。
「種子の数が改良された植物」とは、植物の種子(胚珠などを含む)の数が増加又は減少若しくは縮小した植物である。
これによって植物(器官・組織など)の品質、生産性、収量の向上、商品性の向上などが期待できる。また、野菜、果物等の可食性植物では、食用部分(葉、果実、塊茎、根茎など)のポリアミン量を減らすことで品質などの特性に好影響を与える可能性がある。従って、これらの食用部分では抑制因子を発現させ、その他の部分ではポリアミン関連酵素遺伝子を発現させて品質を向上しつつ収量の向上を図ることも可能である。
さらに、器官形成の改良で植物の形や形態が変化することで種々の環境ストレスに対する適応性(抵抗性)の向上も期待できる。特に、葉の数及びクロロフィルの増加による葉の緑色の増大、根(根茎、塊茎を含む)の伸長、茎の数及び太さの増大は、植物の環境適応性を増大させると考えられる。
さらに、本発明の好ましい実施形態の1つにおいて、植物は栄養生長期における外観上の相違は小さいが(葉が濃緑色になる)、生殖生長期において葉、花、茎等の器官の改良がより著しく認められ、これは植物の潜在能力(ポテンシャル)を向上させたものと理解される。
本発明の植物には、植物体全体(全樹)に限らず、そのカルス、種子、あらゆる植物組織、葉、茎、塊茎、根、塊根、蕾、花、花弁、子房、果実、さや、胚珠、繊維などが含まれる。更にその子孫も本発明の植物に含まれる。
本発明において「植物及びその子孫から得られる有用物質」とは、外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入することによって、導入前に比して器官形成が向上した植物およびその子孫で生産された有用物質をさし、有用物質としては例えば、アミノ酸、油脂、デンプン、タンパク質、フェノール、炭化水素、セルロース、天然ゴム、色素、酵素、抗体、ワクチン、医薬品、生分解性プラスチックなどが含まれる。
本発明の植物は、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に、遺伝子工学的手法により外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が導入され、且つ安定に保持されたものである。ここで「安定に保持される」とは、少なくともポリアミン代謝関連酵素遺伝子が導入された当代の植物体で該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が発現し、それによって器官形成が改良するのに十分な期間、該植物細胞内に保持されることをいう。従って、現実的には、該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子は宿主植物の染色体上に組み込まれるのが好ましい。該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子は次世代に安定に遺伝することがより好ましい。
また、ここで「外因性」とは、植物が生来有しておらず、外部より導入されたものを意味する。従って、本発明の「外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子」は、遺伝子操作により外部より導入される、宿主植物と同種の(すなわち、該宿主植物由来の)ポリアミン代謝関連酵素遺伝子であってもよい。コドン使用(codon usage)の同一性を考慮すれば、宿主由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子の使用もまた好ましい。
外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子はいかなる遺伝子工学的手法によって植物に導入されてもよく、例えば、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有する異種植物細胞とのプロトプラスト融合、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を発現するように遺伝子操作されたウイルスゲノムを有する植物ウイルスによる感染、あるいはポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含有する発現ベクターによる宿主植物細胞の形質転換が挙げられる。
好ましくは、本発明の植物は、植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含む発現ベクターで、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換することにより得られる、トランスジェニック植物である。
植物中で機能し得るプロモーターとしては、例えば、植物細胞で構成的に発現するカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子(NOS)プロモーター、オクトピン合成酵素遺伝子(OCS)プロモーター、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)遺伝子プロモーター、カルコンシンターゼ(CHS)遺伝子プロモーター等を挙げることができる。さらにこれらに限定されない公知の植物プロモーターも挙げられる。
35Sプロモーターのような器官全体に恒常的に発現させるプロモーターだけでなく、器官または組織特異的プロモーターを用いれば、特定の器官、又は組織だけに目的遺伝子を発現させることができ、特定の器官又は組織だけ器官形成を改良することができる。例えば、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子と花器に特異的に働くプロモーター(例えば、WO99/43818、特開平11−178572、特開2000−316582)を用いることによって、花の器官のみで花の数や花の開花期を改良することができる。さらに、果実、子房に特異的に働くプロモーター(例えば、Plant Mol.Biol.,11,651−662,1988)を用いることによって、子房、果実の生育や発達期間を改良することができる。
時期特異的なプロモーターを用いれば、特定の時期だけに目的遺伝子を発現させることができ、特定の時期だけに器官形成を改良することができる。例えば、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子と栄養生長期に働くプロモーターを用いることによって、栄養生長期のみで器官形成を改良することができる。
低温、高温、塩、乾燥、光、熱、ホルモンあるいは傷害等の調節性のプロモーターを用いれば、生活環境に応じて目的遺伝子を発現させることができる。例えば、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子と植物が低温に遭遇した時だけ転写を起こさせ得るプロモーター(例えば、BN115プロモーター:Plant Physiol.,106,917−928,1999)を用いることによって、低温時のみ植物体のポリアミン代謝を制御し器官形成を改良することができる。さらに、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子と植物が乾燥に遭遇した時だけ転写を起こさせ得るプロモーター(例えば、Atmyb2プロモーター:The Plant Cell,5,1529−1539,1993)を用いることによって、乾燥時のみ植物体のポリアミン代謝を制御し器官形成を改良することができる。
本発明の発現ベクターにおいて、外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子は、植物中で機能し得るプロモーターによりその転写が制御されるように、該プロモーターの下流に配置される。該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の下流には、植物で機能し得る転写終結シグナル(ターミネーター領域)がさらに付加されていることが好ましい。例えば、ターミネーターNOS(ノパリン合成酵素)遺伝子等が挙げられる。
本発明の発現ベクターは、エンハンサー配列等のシス調節エレメントをさらに含んでもよい。また、該発現ベクターは、薬剤耐性遺伝子マーカーなどの形質転換体選抜のためのマーカー遺伝子、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子、グリフォセート耐性遺伝子等をさらに含んでもよい。選択圧をかけない条件では、組み込まれた遺伝子が脱落する現象が起こる場合があるので、除草剤耐性遺伝子をベクター上で共存させておけば、栽培中該除草剤を使用することにより、常に選択圧がかかった条件を実現できるという利点もある。
さらに、大量調製および精製を容易にするために、該発現ベクターは、大腸菌での自律複製を可能にする複製起点および大腸菌での選択マーカー遺伝子(例えばアンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子等)を含むことが望ましい。本発明の発現ベクターは、簡便には、pUC系またはpBR系の大腸菌ベクターのクローニング部位に上記ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の発現カセットと必要に応じて選択マーカー遺伝子を挿入することにより構築することができる。
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)やアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacteriumu rhizogenes)による感染を利用して外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入する場合には、該細菌が保持するTiまたはRiプラスミド上のT−DNA領域(植物染色体に転移する領域)内に該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子発現カセットを挿入して用いることができる。現在、アグロバクテリウム法による形質転換の標準的な方法ではバイナリーベクター系が使用される。T−DNA転移に必要な機能は、T−DNA自身とTi(またはRi)プラスミドの両者から独立に供給され、それぞれの構成要素は別々のベクター上に分割できる。バイナリープラスミドはT−DNAの切り出しと組込みに必要な両端の25bpボーダー配列を有し、クラウンゴール(または毛状根)を引き起こす植物ホルモン遺伝子が除去されており、同時に外来遺伝子の挿入余地を与えている。このようなバイナリーベクターとして、例えばpBI101やpBI121(ともにCLONTECH社)などが市販されている。なお、T−DNAの組込みに作用するVir領域は、ヘルパープラスミドと呼ばれる別のTi(またはRi)プラスミド上にあってトランスに作用する。
植物の形質転換には、従来公知の種々の方法を使用することができる。例えば、セルラーゼやヘミセルラーゼなどの細胞壁分解酵素処理により、植物の細胞からプロトプラストを単離し、該プロトプラストと上記ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の発現カセットを含む発現ベクターとの懸濁液にポリエチレングリコールを加えてエンドサイトーシス様の過程で該発現ベクターをプロトプラスト内に取り込ませる方法(PEG法)、ホスファチジルコリン等の脂質膜小胞内に超音波処理等により発現ベクターを入れ、該小胞とプロトプラストをPEG存在下に融合させる方法(リポソーム法)、ミニセルを用いて同様の過程で融合させる方法、プロトプラストと発現ベクターの懸濁液に電気パルスを印加して外液中のベクターをプロトプラスト内に取り込ませる方法(エレクトロポレーション法)が挙げられる。しかしながら、これらの方法は、プロトプラストから植物体へ再分化させる培養技術を必要とする点で煩雑である。細胞壁を有するインタクトな細胞への遺伝子導入手段としては、マイクロピペットを細胞に刺し込み、油圧やガス圧でピペット内のベクターDNAを細胞内に注入するマイクロインジェクション法、およびDNAをコーティングした微小金粒子を火薬の爆発やガス圧を利用して加速し、細胞内に導入するパーティクルガン法等の直接導入法と、アグロバクテリウムによる感染を利用した方法とがある。マイクロインジェクションは操作に熟練を要し、また、扱える細胞数が少ないという欠点がある。従って、操作の簡便性を考慮すれば、アグロバクテリウム法および、パーティクルガン法により植物を形質転換することが好ましい。パーティクルガン法は、栽培中の植物の頂端***組織に直接遺伝子を導入することが可能である点さらに有用である。また、アグロバクテリウム法において、バイナリーベクターに植物ウイルス、例えばトマトゴールデンモザイクウイルス(TGMV)等のジェミニウイルスのゲノムDNAをボーダー配列の間に同時に挿入することにより、栽培中の植物の任意の部位の細胞に注射筒などを用いて菌懸濁液を接種するだけで、植物体全体にウイルス感染が拡がり、同時に目的遺伝子も植物体全体に導入される。
以下に、具体例として、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の取得方法とアグロバクテリウムによる目的遺伝子の導入および形質転換植物の作出方法を例示するが、内因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の抑制因子に関しても以下の記載を参考にして当業者は容易に植物に導入し、形質転換植物を作出することが可能である。
1.ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の取得
(1)PCR用cDNAライブラリーの作製
昼18℃/夜14℃・3日間の低温処理を行ったクロダネカボチャ(Cucurbita ficifolia Bouche)の根組織から常法に従い、poly(A)+RNAを抽出する。単離したpoly(A)+RNAから市販のMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)等を用いてPCR用に使用するcDNAライブラリーを作製することができる。単離したpoly(A)+RNAを鋳型として、3’末端に2つのdegenerate nucleotide positionを持つ修飾lock−docking oligo(dT)プライマーと逆転写酵素を用いてfirst−strand cDNAを合成し、ポリメラーゼ反応によって2本鎖化したcDNAを得る。該2本鎖cDNAをT4 DNA ポリメラーゼにより末端を平滑化し、Marathon cDNAアダプターをライゲーション反応により結合させ、アダプター結合二本鎖cDNAライブラリーを作製する。
(2)PCRプライマーの設計
ポリアミン代謝関連酵素遺伝子としてSPDS遺伝子、SAMDC遺伝子、ADC遺伝子、ODC遺伝子を単離することができる。SPDS遺伝子はシロイヌナズナやヒヨス、SAMDC遺伝子はジャガイモ、ホウレンソウ、タバコ、ADC遺伝子はダイズ、エンドウ、トマト、ODC遺伝子はチョウセンアサガオ(Datura)等から単離されており、既に塩基配列が決定している。従って、決定している既知の塩基配列を比較し、非常に保存されている領域を選抜し、DNAオリゴマーを合成しPCR用プライマーを設計することができる。
(3)PCRによるSPDS遺伝子、SAMDC遺伝子、ADC遺伝子断片の取得
上記(1)の方法で作製したPCR用cDNAライブラリーをテンプレートとして、上記(2)の方法で設計したプライマーを使用して、それぞれPCRを行う。PCR産物をゲル電気泳動で分離し、グラスミルク法などで精製する。精製したPCR産物はTAベクターなどのクローニングベクターに連結させる。
クローン化されたcDNAの塩基配列の決定は、Maxam−Gilbert法あるいはダイデオキシ法等により決定できる。いずれの方法も市販されているキットを用いて行うことができ、配列決定を自動的に行うオートシーケンサーを使用してもよい。
(4)完全長遺伝子の単離
完全長の遺伝子を得るためには、常法に従って、プラークハイブリダイゼーション、RACE(rapid amplification of cDNA ends)法やMarathon RACE法等により完全長の遺伝子を得ることができる。
このようにして取得した遺伝子は、ポリアミン生合成に関与する遺伝子であり、この遺伝子を利用して巧妙に、即ち、遺伝子発現を分子生物学的に制御することにより、ポリアミンレベルの制御が可能となり、種々の器官形成が改良された植物の作出も可能になる。
2.シロイヌナズナにおけるアグロバクテリウムによる目的遺伝子の導入、および形質転換植物の作出。
上記1.で取得した遺伝子を植物宿主に導入することにより、種々の器官形成、特に茎、葉、花、子房、果実、さや、種子などの器官形成が改良された特性を有するトランスジェニック植物を作出することができる。
(1)発現コンストラクトの作製および、アグロバクテリウムの形質転換
発現コンストラクトの作製は前記1.で得られたポリアミン代謝関連酵素遺伝子をオープンリーディングフレームをすべて含むような適当な制限酵素で切断後、必要に応じて適当なリンカーを連結し、植物形質転換用ベクターに挿入して作製することができる。植物形質転換用ベクターとしては、pBI101、pBI121などを用いることができる。
作製した発現コンストラクトを大腸菌中で増幅後、発現コンストラクトをアグロバクテリウム・ツメファシエンスC58、LBA4404、EHA101等に、三者接合法(Nucleic Acid Research,12,8711,1984)、凍結融解法、エレクトロポレーション法等により形質転換することができる。例えば、三者接合法は目的遺伝子を含んだ発現コンストラクトを保有する大腸菌、ヘルパープラスミド(例えばpRK2013等)を保有する大腸菌、およびアグロバクテリウムを混合培養して、抗生物質(例えばリファピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン等)を含んだ培地上で培養することによって形質転換アグロバクテリウムを得ることができる。
(2)トランスジェニック植物の作出
本発明において、遺伝子導入を行う植物としては、植物体全体、植物器官(例えば葉、茎、根、花器、生長点、種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)、植物培養細胞などを挙げることができる。
(1)で作製した形質転換アグロバクテリウムを例えばカルス再生法(Plant Cell Reports,12,7−11,1992)で植物に感染させて目的遺伝子を導入することができる。すなわち、シロイヌナズナの種子を常法に従って、MSOプレート(ムラシゲ・スクーグ無機塩類4.6g、ショ糖10g、1000×ビタミンストック液1ml/リットル、pH6.2)に播種し、無菌的に栽培する。発根した根の切片を用いてCIMプレート(MSOプレートに2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を終濃度0.5μg/ml、カイネチンを0.05μg/mlとなるように加えたもの)上でカルス培養を行う。プロモーターに目的遺伝子を接続し、カナマイシン及びハイグロマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドにより形質転換したアグロバクテリウムを培養し、希釈したものをチューブに分注し、カルス化した根の切片を浸し、数日間CIMプレート上で共存培養する。菌株が肉眼で観察できるまで十分に増殖したら、除菌操作を行い、SIMCプレート(MSOプレートに、N6−[2−イソペンテニル]アデニンを終濃度5μg/ml、インドール酢酸(IAA)を終濃度0.15μg/ml、クラフォランを終濃度500μg/mlとなるように加えたもの)上で数日間培養を行う。これらの切片を最終的にSIMCSプレート(カナマイシンおよびハイグロマイシンBを含有するプレート)上で培養し、1週間ごとに新しいプレートに移植を繰り返す。形質転換した切片は増殖を続け、カルスが現れてくる。抗生物質で選択しているため、非形質転換切片は褐変する。形質転換体が5mm程度の大きさになり、ロゼット葉を形成するまで培養する。完全なロゼットの形状を示すようになったら、形質転換体の根元をカルス部分を含まないようにメスで切り取り、RIMプレート(MSOプレートにIAAを終濃度0.5μg/mlとなるように加えたもの)に移植する。大きなカルスが付いていると、発根してもカルスを介して根が出ていて、ロゼットとは維管束がつながっていないことが多い。約8〜10日後、無機塩類培地〔5mM KNO3、2.5mM K−リン酸緩衝液(pH5.5)、2mM MgSO4、2mM Ca(NO3)2、50μM Fe−EDTA、1000×微量要素(70mM H3BO3、14mM MnCl2、0.5mM CuSO4、1mM ZnSO4、0.2mM NaMoO4、10mM NaCl、0.01mM CoCl2)1ml/リットル〕に浸したロックウール上に定植する。開花し、さやを形成した植物体は無機塩類培地に浸した土に移植し、種子を得ることができる。この種子を滅菌処理し、MSH(MSOプレートのハイグロマイシンBを終濃度5U/mlとなるように加えたもの)に播種して発芽させることにより形質転換体を得ることができる。
さらに、(1)で作製した形質転換アグロバクテリウムを例えば減圧浸潤法(The Plant Journal,19(3),249−257,1999)で植物に感染させて目的遺伝子を導入することができる。すなわち、シロイヌナズナの種子を常法に従って培養土(例えばメトロミックス等)に播種して、22℃、長日条件下(例えば16時間日長・8時間暗黒等)で栽培する。約3〜4週間後に伸長した主軸(花茎)を切除して、側枝の誘導を開始させる。摘心約1週間をに培養した形質転換アグロバクテリウム懸濁液にシロイヌナズナを浸し、これをデシケーターに入れてバキュームポンプで約−0.053Mpa(400mmHg)になるまで吸引後、10分間、室温放置する。感染後の鉢を深底トレイに移して、横倒しに置き、トレイの底に少量の水を滴下して透明な覆いを被せ多湿条件下で約1日放置する。感染後の鉢を起こして、22℃・長日条件下で栽培を開始して、種子の収穫を行う。
約2〜4週間の間、種子の収穫を行い、収穫した種子は茶こしなどで莢やゴミを取り除き、デシケーター内で乾燥保存する。
トランスジェニック植物体の選択は、収穫した種子を常法に従って殺菌処理して、約9mlの0.1%寒天水溶液に懸濁して、選択培地(例えば、1×MS塩、1×GamborgB5ビタミン、1% Sucrose、0.5g/l MES、0.8% 寒天、100mg/l カルベニシリン、50mg/l カナマイシン、40mg/l ハイグロマイシンなど)に広げ、22℃で無菌栽培する。抗生物質に対して抵抗性を示すトランスジェニック植物体は順調に生長して、約1〜2週間で同定することができる。本葉が約4〜6枚展開したトランスジェニック植物体を培養土を含んだ鉢に移植して22℃で長日栽培を開始する。
得られたトランスジェニック植物より、常法に従ってDNAを抽出し、このDNAを適当な制限酵素で切断し、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子をプローブとして用いてサザンハイブリダイゼーションを行い、遺伝子導入の有無を確認することができる。
また、トランスジェニック植物や、非トランスジェニック植物より、常法に従ってRNAを抽出し、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子のセンス配列、もしくはアンチセンス配列を有するプローブを作製し、これらのプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーションを行い、目的遺伝子の発現の状態を調べることができる。
また、得られたトランスジェニック植物からカルス誘導を行い、カルスを作出することができる。
減圧浸潤法で得られたトランスジェニック植物(T1)の、自家受粉により得られるT2種子の形質転換出現比率は、通常メンデルの法則に従う。例えば、該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が一遺伝子座にヘテロ(heterozygous)に組み込まれた場合、T2種子では形質転換体は3:1の割合で分離する。T2種子を栽培して、自家受粉させて得られるT3種子において、形質転換体がすべての種子で出現すれば、該T2形質転換植物はホモ接合体(homozygote)であり、該形質転換植物が3:1に分離すれば、該T2形質転換植物は導入されたポリアミン代謝関連酵素遺伝子についてヘテロ(heterozygote)であると決定できる。
このようにして選抜された、導入されたポリアミン代謝関連酵素遺伝子についてホモ接合体である植物は、改良された器官形成が固定された系統として、種子産業の分野において極めて有用である。
上記に示した、サザン解析やノーザン解析でポリアミン代謝関連酵素遺伝子の遺伝子発現解析を行ったトランスジェニック植物はポリアミン含量や種々の器官形成の評価を行うことができる。
例えば、ポリアミンの定量は、0.05〜1gの試料をサンプリングして、5%過塩素酸水溶液を加えて、ポリアミンを抽出する。抽出したポリアミンの定量はダンシル化またはベンゾイル化等で蛍光標識した後、UVまたは蛍光検出器を接続した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて内部標準法で分析することができる。
例えば、種々の器官形成の評価は、茎形成の評価は、トランスジェニック植物の自家受粉で得られたT2種子又はT3種子を適当な生育培地又は生育土壌に播種し、長日条件下(昼/夜:16時間/8時間日長)、20〜25℃で生育させて茎(例えば主花茎、側花茎、枝など)の数や形等を調べることにより評価することができる。葉形成の評価は、トランスジェニック植物の自家受粉で得られたT2種子又はT3種子を適当な生育培地又は生育土壌に播種し、長日条件下(昼/夜:16時間/8時間日長)、20〜25℃で生育させて葉(例えばロゼット葉、本葉など)の数や形等を調べることにより評価することができる。花形成の評価は、トランスジェニック植物の自家受粉で得られたT2種子又はT3種子を適当な生育培地又は生育土壌に播種し、長日条件下(昼/夜:16時間/8時間日長)、20〜25℃で生育させて花の数や開花時期、開花期間および形、色等を調べることにより評価することができる。子房形成の評価は、トランスジェニック植物の自家受粉で得られたT2種子又はT3種子を適当な生育培地又は生育土壌に播種し、長日条件下(昼/夜:16時間/8時間日長)、20〜25℃で生育させて子房(例えばさや、果実など)の数、形、色や着果から成熟までの発達期間等を調べることにより評価することができる。種子形成の評価は、トランスジェニック植物の自家受粉で得られたT2種子又はT3種子を適当な生育培地又は生育土壌に播種し、長日条件下(昼/夜:16時間/8時間日長)、20〜25℃で生育させて種子の数や形、収穫後に発芽率等を調べることにより評価することができる。
本発明の形質転換される植物は、特に限定されるものではないが、双子葉植物、単子葉植物、草本性植物、木本性植物などが挙げられる。例えば、サツマイモ、トマト、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、タバコ、シロイヌナズナ、ピーマン、ナス、マメ、サトイモ、ホウレンソウ、ニンジン、イチゴ、ジャガイモ、イネ、トウモロコシ、アルファルファ、コムギ、オオムギ、ダイズ、ナタネ、ソルガム、ユーカリ、ポプラ、ケナフ、杜仲、サトウキビ、アカザ、ユリ、ラン、カーネーション、バラ、ペチュニア、トレニア、キンギョソウ、シクラメン、カスミソウ、ゼラニウム、ヒマワリ、シバ、ワタ、マツタケ、シイタケ、キノコ、チョウセンニンジン、柑橘類、バナナ、キウイ、キャッサバ、サゴヤシ等が挙げられる。好ましくは、サツマイモ、ジャガイモ、トマト、キュウリ、イネ、トウモロコシ、ダイズ、コムギ、ペチュニア、トレニア、ユーカリ、ワタである。
本発明により、植物の種々の器官形成を改良することができ、植物の器官や組織の品質、価値、生産性、収量の向上、或いは矮小化による耐倒伏性の向上などが期待できる。具体的には、茎、葉、花、子房、果実、さや、種子の数が増加することによって、該器官が農作物として生産される場合、品質、生産性、収量の増加が期待される。例えば、イネは1株当たりの種子数が増加することで収穫できる米の収量が増大することが期待できる。トウモロコシは1株当たりの雌穂の数が増加することで穀粒の収量が増大することが期待できる。ダイズは1株当たりのサヤの数が増加することでマメの収量が増大することが期待できる。ワタは1株当たりのコットンボールの数が増加することで収穫できる繊維の収量が増大することが期待できる。サツマイモやジャガイモは塊根や塊茎の数が増加することでイモの収量が増大することが期待できる。果樹は着果した果実(子房)の数が増加して、発達期間が長くなることで生産性の向上が期待される。観賞植物は花、茎、葉、特に花の数が増加し、かつ開花期間が延長されたり、ミニチュア化することで見栄えが良くなり、商品価値が高まることが期待される。さらに、植物の形や形態を変化させることで様々な環境適応性が向上し、栽培の安定化、生産性の向上、栽培地域の拡大なども期待できる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1:植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子のクローニング
(1)ポリ(A)+RNAの調製
クロダネカボチャ(Cucurbita ficifolia Bouche)をバーミキュライトに播種し、子葉展開時に市販の床土(サンサン床土;タキイ種苗社製)を詰めた鉢に移植した。鉢上げしたクロダネカボチャを植物栽培用のインキュベーター(気温 昼26℃/夜22℃、13時間日長)内に置いた。第2本葉展開時にインキュベーター内の温度を昼18℃/夜14℃まで下げ低温処理を開始した。低温処理3日後に、根、茎、葉に分けてサンプリングした。RNA抽出まで−80℃のフリーザーに保存した。
約4gのクロダネカボチャの根組織を直ちに液体窒素中で凍結し、液体窒素存在下乳鉢で細かく粉砕した。その後、10mlの抽出用0.2Mトリス酢酸緩衝液〔5M guanidine thiocyanate、0.7%β−mercaptoethanol、1%polyvinylpyrrolidone(M.W.360,000)、0.62%N−Lauroylsarcosine Sodium Salt、pH8.5)を加えポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA社製)を用い氷冷下2分間粉砕した。ただし、β−メルカプトエタノールとポリビニルピロリドンは使用する直前に添加した。その後、粉砕液を17,000×gで20分間遠心分離し、上清を回収した。
この上清をミラクロスに濾過し、その濾液を超遠心分離管に入れた5.7M塩化セシウム溶液1.5mlに静かに重層し、155,000×g、20℃で20時間遠心した後、上清を捨てRNAの沈殿を回収した。この沈殿を3mlの10mM Tris−HCl、1mM EDTA・2Na、pH8.0(TE緩衝液と呼ぶ)に溶解し、さらに等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(容積比、25:24:1)を加え良く混合した後、遠心分離を行って上層の水層を回収した。得られた水層に、1/10倍量の3M酢酸ナトリウム(氷酢酸でpH6.2に調製)と、2.5倍量のエタノールを添加して良く混合し、−20℃で一晩静置した。その後、17,000×gで20分間遠心分離し、得られた沈殿を70%エタノールで洗浄して減圧乾燥した。
この乾燥標品を500μlの前述のTE緩衝液に溶解し、全RNA溶液を得た。このRNA溶液を65℃で5分間インキュベートした後、氷上で急冷した。これに2×結合緩衝液(10mM Tris−HCl、5mM EDTA・2Na、1M NaCl、0.5% SDS、pH7.5)を等量になるようにRNA溶液に加え、平衡化緩衝液(10mM Tris−HCl、5mM EDTA・2Na、0.5M NaCl、0.5% SDS、pH7.5)で予め平衡化したオリゴdTセルロースカラム(Clontech社製)に重層した。次いで、カラムを約10倍量の前述の平衡化緩衝液で洗浄した後、溶出緩衝液(10mM Tris−HCl、5mM EDTA・2Na、pH7.5)でpoly(A)+RNAを溶出した。
得られた溶出液に1/10倍量の前述の3M酢酸ナトリウム水溶液と、2.5倍量のエタノールを加え混合し、−70℃で静置した。その後、10,000×gで遠心分離を行ない、得られた沈殿を70%エタノールで洗浄して減圧乾燥した。この乾燥標品を再度500μlのTE緩衝液に溶解し、オリゴdTセルロースカラム精製を繰り返し行った。得られた低温処理したクロダネカボチャの根由来のpoly(A)+RNAはPCR用のcDNAライブラリーと完全長遺伝子単離用のcDNAライブラリーの作製に用いた。
(2)PCR用cDNAライブラリーの作製
cDNAライブラリーの作製はMarathon cDNA Amplification Kit(Clontech社製)を使用した。(1)で得られたクロダネカボチャの根由来のpoly(A)+RNAを鋳型として3’末端に2つのdegenerate nucleotide positionを持つ修飾lock−dockingオリゴ(dT)プライマーと逆転写酵素を用い、GublerとHoffmanらの方法(Gene,25,263−269(1983))に従い2本鎖cDNAを合成した。
得られたcDNAの両末端にMarathon cDNAアダプター(T4 DNA ligaseによりds cDNAの両末端へ結合しやすくなるように5’末端をリン酸化したもの)を連結した。得られたアダプター結合のcDNAをクロダネカボチャ根由来のPCR用cDNAライブラリーとした。
(3)PCR用プライマーの設計
既に植物や哺乳類から単離されているアルギニン脱炭酸酵素遺伝子、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子、スペルミジン合成酵素遺伝子の決定されている塩基配列を比較した。そして、非常に相同性が高く保存されている領域を選び出し、DNAオリゴマーを合成した(配列プライマーI〜VI)。
(4)PCRによる増幅
(2)で得られたPCR用cDNAライブラリーをテンプレートとして、(3)で設計した配列プライマーを用いてPCRを行った。PCRのステップは最初、94℃、30秒、45℃、1分間、72℃、2分間で5サイクル、続いて94℃、30秒、55℃、1分間、72℃、2分間で30サイクル行った。
(5)アガロースゲル電気泳動
PCR増幅産物を1.5%アガロース電気泳動を行い、泳動後のゲルをエチジウムブロマイド染色し、UVトランスイルミネーター上で増幅バンドを検出した。
(6)PCR産物の確認と回収
検出された増幅バンドを確認し、カミソリの刃を用いてアガロースゲルから切り出した。切り出したゲルを1.5mlのマイクロチューブに移し、QIAEXII Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いてゲルからDNA断片の単離精製を行った。回収したDNA断片をpGEMTクローニングベクター(Promega社製)にサブクローニングし、大腸菌に形質転換後、常法に従ってプラスミドDNAを調製した。
(7)塩基配列決定
得られたプラスミドの挿入配列の塩基配列決定をダイデオキシ法(Messing,Methods in Enzymol.,101,20−78,1983)により行った。SPDS遺伝子については3種類の遺伝子、SAMDC遺伝子については1種類の遺伝子、ADC遺伝子については2種類の遺伝子が単離された。
(8)ホモロジー検索
これらの遺伝子の塩基配列を既知遺伝子塩基配列のデータベースとホモロジーサーチを行うとSPDS遺伝子は既知の植物由来のSPDS遺伝子と70%の相同性を示した。SAMDC遺伝子については既知の植物由来のSAMDC遺伝子と70%以上の相同性を示した。ADC遺伝子については既知の植物由来のADC遺伝子と67%以上の相同性を示した。
(9)完全長遺伝子の取得
完全長遺伝子はプラークハイブリダイゼーション法で取得した。cDNAライブラリーの作製はZAP−cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)を使用した。(1)で得られたクロダネカボチャ根由来のpoly(A)+RNAを鋳型としてオリゴ(dT)プライマーと逆転写酵素を用い、GublerとHoffmanらの方法(Gene,25,263−269(1983))に従い2本鎖cDNAを合成した。
得られたcDNAの両末端にEcoRIアダプター(内部にXhoIとSpeIサイトを持つ)を連結し、XhoIで消化した後、それをλファージベクター、λZAPIIアームのEcoRIとXhoI部位に連結後、インビトロパッケージングキット(Stratagene社製、GIGAPACK Gold)を用い、パッケージングを行ない、大腸菌SURE株(OD660=0.5)に感染させることにより多数の組換えλファージを得た。これをクロダネカボチャ根由来のcDNAライブラリーとした。このライブラリーのサイズは8.0×106であった。
プローブの作製は(6)で調製したSPDS、SAMDC、ADC遺伝子のプラスミドDNAからインサートcDNAを単離・調製し、得られたcDNAを鋳型として、Random Primed DNA Labeling Kit(USB社製)を用いて、32P標識プローブを作製した。得られた32P標識cDNAをプローブに用いた。
前記、クロダネカボチャ根由来のcDNAライブラリーを構成するファージを大腸菌に感染させてLB寒天培地上で増殖させ、約50,000個のファージDNAをナイロンメンブレン(ハイボンド−N、アマシャム社製)に写し取った。
ファージDNAを写し取ったナイロンメンブレンをアルカリ変性液(0.5M NaOH、1.5M NaCl)を含んだ濾紙上に移し、4分間放置し、次に中和液(0.5M Tris−HCl、1.5M NaCl、pH8.0)を含んだ濾紙上に移し5分間放置した。2×SSC(0.3M NaCl、0.03M クエン酸三ナトリウム)で洗浄した後、メンブレンをストラタリンカー(Stratagene社製)を用いDNAの固定を行なった。固定処理を行なったナイロンメンブレンをハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、0.5%SDS、6×SSPE(3M NaCl、0.2M NaH2PO4、20mM EDTA・2Na、pH7.4)、5×デンハルト溶液(0.1% Ficoll、0.1% Polyvinylpyrrolidone、0.1% bovine serum albumin)、50μg/ml変性サケ***DNAを含有中において、42℃で3時間プレハイブリさせ、作製したcDNAプローブを加え42℃で18時間ハイブリダイズさせた。その後、メンブレンを取り出し、2×SSC、1×SSC、0.5×SSCおよび0.1×SSCを含有する溶液を用いて、42℃で1時間〜2時間洗浄した。このメンブレンを乾燥した後、X線フィルムを密着させて一晩感光させた。
その結果、SPDS、SAMDC、ADC遺伝子断片から得たプローブでハイブリダイズした陽性クローンを選抜することができた。
陽性クローンのファージDNAそれぞれから、インビボ・エクシジョン法によりcDNAインサートを持つプラスミドクローンを調製した。インビボ・エクシジョン法は、ZAP−cDNA Synthesis Kit(stratagene社製)の方法に従った。
SPDS遺伝子、SAMDC遺伝子、ADC遺伝子を含む各ファージ液200μl、大腸菌XL1−Blue懸濁液200μl、ヘルパーファージR408懸濁液1μlを混ぜ37℃で15分間インキュベートした後、3mlの2×YT培地を加え37℃で2時間振盪培養し、70℃で20分間処理し、遠心分離(4,000×g、10分間)して上清を回収した。得られた上清30μlと大腸菌SURE懸濁液30μlを混ぜ、37℃で15分間インキュベートした後、アンピシリンを50ppm含むLB寒天培地に数μl植菌し、37℃で一晩培養した。コロニーを形成した大腸菌は、cDNAインサートを持つプラスミドクローンを含んでいた。これらのプラスミドの挿入配列の塩基配列決定を、ダイデオキシ法(Messing,Methods in Enzymol.,101,20−78,1983)により行った。その結果、開始コドンを含むプラスミドであることが明らかとなった。
得られた完全長のクロダネカボチャ由来のスペルミジン合成酵素遺伝子をFSPD1(配列番号1,2)、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子をFSAM24(配列番号3,4)、アルギニン脱炭酸酵素遺伝子をFADC76(配列番号5,6)と命名した。
得られたFSPD1と既知の植物由来のスペルミジン合成酵素遺伝子とアミノ酸比較を行った(表1)。表1の結果からクロダネカボチャ根由来のFSPD1は他の植物由来のSPDS遺伝子とアミノ酸レベルで高い相同性を示した。
得られたFSAM24と既知の植物由来のS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子とアミノ酸比較を行った(表2)。表2の結果からクロダネカボチャ根由来のFSAM24は他の植物由来のSAMDC遺伝子とアミノ酸レベルで高い相同性を示した。
得られたFADC76と既知の植物由来のアルギニン脱炭酸酵素遺伝子とアミノ酸比較を行った(表3)。表3の結果からクロダネカボチャ根由来のFADC76は他の植物由来のADC遺伝子とアミノ酸レベルで高い相同性を示した。
実施例2:トランスジェニックシロイヌナズナの作製
(1)発現コンストラクトの作製
配列番号1に示したポリアミン代謝関連遺伝子FSPD1の塩基配列よりオープンリーディングフレームをすべて含むように、XhoIで切断し、グラスミルク法で精製した。次にpGEM−7Zf(Promega社製)をXhoI切断して、FSPD1断片をセンスとアンチセンス方向にそれぞれサブクローニングした。pGEM−7Zfのマルチクローニングサイトの制限酵素XbaIとKpnIで再度FSPD1断片を切り出して、35Sプロモーターが連結しているバイナリーベクターpBI101−Hm2にサブクローニングした。これらのプラスミドをpBI35S−FSPD1+/−と命名した。その発現コンストラクトの構造を図1に示した。なお、形質転換された大腸菌JM109を、Escherichia coli JM109/pBI35S−FSPD1+/−と命名した。
配列番号3に示したポリアミン代謝関連遺伝子FSAM24の塩基配列よりオープンリーディングフレームをすべて含むように、NotIで切断し、それぞれ平滑末端化した。これらの断片を平滑末端化した35Sプロモーターが連結しているバイナリーベクターpBI101−Hm2にセンス方向とアンチセンス方向にサブクローニングした。これらのプラスミドをpBI35S−FSAM24+/−と命名した。なお、形質転換された大腸菌JM109を、Escherichia coli JM109/pBI35S−FSAM24+/−と命名した。
配列番号5に示したポリアミン代謝関連遺伝子FADC76の塩基配列よりオープンリーディングフレームをすべて含むように、NotIで切断し、それぞれ平滑末端化した。これらの断片を平滑末端化した35Sプロモーターが連結しているバイナリーベクターpBI101−Hm2にセンス方向とアンチセンス方向にサブクローニングした。これらのプラスミドをpBI35S−FADC76+/−と命名した。なお、形質転換された大腸菌JM109を、Escherichia coli JM109/pBI35S−FADC76+/−と命名した。
(2)プラスミドのアグロバクテリウムへの導入
(1)で得られた大腸菌pBI35S−FSPD1+/−、大腸菌pBI35S−FSAM24+/−、大腸菌pBI35S−FADC76+/−とヘルパープラスミドpRK2013を持つ大腸菌HB101株を、それぞれ50mg/lのカナマイシンを含むLB培地で37℃で1晩、アグロバクテリウムC58株を50mg/lのカナマイシンを含むLB培地で28℃で2晩培養した。各培養液1.5mlをエッペンドルフチューブに取り集菌したのち、LB培地で洗浄した。これらの菌体を1mlのLB培地に懸濁後、3種の菌を100μlずつ混合し、LB培地寒天培地にまき、28℃で培養してプラスミドをアグロバクテリウムに接合伝達(三者接合法)させた。1から2日後に一部を白金耳でかきとり、50mg/lカナマイシン、20mg/lハイグロマイシン、25mg/lクロラムフェニコールを含むLB寒天培地上に塗布した。28℃で2日間培養した後、単一コロニーを選択した。得られた形質転換体をC58/pBI35S−FSPD1+/−、C58/pBI35S−FSAM24+/−、C58/pBI35S−FADC76+/−と命名した。トランスジェニックシロイヌナズナの作製は減圧浸潤法〔以下(3)〜(6)〕または、カルス再生法〔以下(7)〜(12)〕で行った。
(3)シロイヌナズナの栽培
培養土メトロミックス(ハイポネックスジャパン社製)をプラスチック鉢に入れ、表面を網戸用のメッシュで覆い、メッシュの間にシロイヌナズナコロンビア株(以下「コロンビア株」又は「野生株」という)の種子(奈良先端科学技術大学院大学、河内孝之博士より提供)を2〜5粒づつ播種した。2日間・4℃の低温室にいれ発芽処理後、22℃・長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)に移して栽培を行った。約4〜6週間後に主軸花茎が5〜10cm伸長した植物体について、摘心して側枝の誘導を行った。摘心約1〜2週間後にアグロバクテリウム感染処理を行った。
(4)アグロバクテリウム懸濁液の調製
前記(2)で作製したアグロバクテリウムを感染2日前に、抗生物質(50μg/mlカナマイシン、20μg/mlハイグロマイシン)を含んだ10mlLB培地に植菌して28℃で24時間振とう培養した。さらに、この培養液を分取して抗生物質(50μg/mlカナマイシン、20μg/mlハイグロマイシン)を含んだ1000ml LB培地に移して、さらに、28℃、約24時間振とう培養した(OD600が1.2〜1.5になるまで)。培養液を室温下で集菌して、OD600が0.8〜1になるように浸潤用懸濁培地(0.5×MS塩、0.5×GamborgB5ビタミン、1% Sucrose、0.5g/l MES、0.44μM ベンジルアミノプリン、0.02% Silwet−77)に再懸濁した。
(5)アグロバクテリウムの感染
前記(3)で作製したシロイヌナズナの鉢に前記(4)で調製したアグロバクテリウム懸濁液が培養土中に吸収されるのを抑えるために、鉢の培養土中に水を与えた。1000mlのビーカーに約200〜300mlのアグロバクテリウム懸濁液を分取し、シロイヌナズナの鉢を逆さにして、植物体を懸濁液に浸けた。鉢を入れたビーカーをデシケーター内に入れ、バキュームポンプで約−0.053MPa(400mmHg)になるまで吸引後、約10分間放置した。徐々に陰圧を解除した後、植物をアグロバクテリウム懸濁液から取り出して、キムタオルで余分なアグロバクテリウム懸濁液を取り除き、深底トレイに横倒しした。少量の水を入れて、サランラップを被せた。この状態で約1日放置した。サランラップを外して、鉢を起こして約1週間給水を停止した。その後、徐々に培養土に水を与え、約3〜5週間の間、成熟したさやから種子の収穫を行った。収穫した種子は、茶こしを用いて、さややゴミを取り除きデシケーター内に入れ十分に乾燥させた。
(6)形質転換植物の取得
前記(5)で取得した種子100μl(約2000粒)を1.5mlのエッペンドルフチューブに移して、70%エタノール中で2分間、5%次亜塩素酸ナトリウム溶液中に15分間それぞれ浸して、最後に滅菌水で5回洗浄して種子の殺菌を行った。殺菌後の種子を15mlのファルコンチューブに移して、約9mlの0.1%無菌寒天溶液を加えて、激しく混合した。種子0.1%寒天混合液をファージをプレートする要領で選択培地(1×MS塩、1×GamborgB5ビタミン、1% Sucrose、0.5g/l MES、0.8% 寒天、100mg/l カルベニシリン、50mg/l カナマイシン、40mg/l ハイグロマイシン、8g/l Phytagar、pH5.7)に均一になるように広げた。クリーンベンチ内で約30分乾燥後、4℃、2日間の低温処理後、22℃のグロースチャンバーに移して、抗生物質に対して抵抗性を示す形質転換体を選抜した。本葉が3〜5枚した植物体を再度新しい選択培地に移して本葉が4〜6枚になるまで栽培した。抗生物質に対して抵抗性を示した形質転換植物(T1)を培養土を含んだ鉢に定植して、約5〜7日間多湿条件下で順化させた。順化後、23℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培させた。得られた形質転換植物(T1)、および該形質転換植物から得られた種子(T2)から生育させたT2植物体についてPCRまたはサザンハイブリダイゼーションによる導入遺伝子の解析とノーザンハイブリダイゼーションによる発現レベルの解析を行い、目的のポリアミン代謝関連酵素遺伝子が安定に組み込まれ、且つ発現している形質転換体を確認した。さらに、T2植物体からT3種子を収穫し、抗生物質に対する抵抗性試験(分離比検定)を行って形質転換出現比率からホモ接合体(T2)を取得した。T2種子とホモ接合体から取得したT3種子(T3ホモセルライン)を以下の実験に用いた。
(7)無菌シロイヌナズナの栽培
シロイヌナズナWassilewskija株(以下WS株と称す)の種子(奈良先端科学技術大学院大学、新名惇彦博士より提供)数10粒を1.5mlチューブに入れ、70%エタノール1mlを加え3分間放置した。続いて滅菌液(5%次亜塩素酸ナトリウム、0.02%TritonX−100)に3分間浸し、滅菌水で5回洗浄した後に、MSOプレート(ムラシゲ−スクーグ無機塩類4.6g、ショ糖10g、1000×ビタミンストック液1ml/リットル、pH6.2)に置床した。このプレートを4℃に2日間放置して低温処理を行い、続いて植物インキュベーター(サンヨー製、MLR−350HT)中に22℃、光強度6000ルクス、長日条件下(明期16時間、暗期8時間)にて、21日間培養した。感染効率を上げるために再度植物を無菌的に引き抜いて、新たなMSOプレートの表面に根を広げ、さらに2日間培養を続けた。
(8)アグロバクテリウムの感染
前記で21日間培養したWS株の根を数株ずつそろえて、メスで1.5〜2.0cm程度に切りそろえ、CIMプレート(MSOプレートに2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を終濃度0.5μg/ml、カイネチンを0.05μg/mlとなるように加えたもの)に置き並べた。光強度3000ルクス、16時間明期、8時間暗期で2日間培養した。前記(2)で作製したアグロバクテリウムを抗生物質(50μg/ml カナマイシン、20μg/ml ハイグロマイシン)を含んだ10mlLB培地に植菌して28℃で24時間振とう培養し、アグロバクテリウムを、MS希釈液(ムラシゲ−スクーグ無機塩類6.4g/l、pH6.3)で3倍に希釈した。アグロバクテリウム希釈液をそれぞれ1mlずつチューブに分注し、この中にカルス化した根の切片を10分間浸した。2枚重ねた滅菌ろ紙上に並べ、余分な水分を除き、新しいCIMプレートに各々置き並べた。同条件にて2日間共存培養した。
(9)除菌
各々の菌株が肉眼で観察できるまで十分に増殖した切片を除菌液(MS希釈液にクラフォランを終濃度200μg/mlになるように加えたもの)に移し、ゆっくり振盪させて60分間洗浄した。この操作を5回繰り返した後、滅菌ろ紙上で水分を取り除き、SIMCプレート(MSOプレートに、2−ipを終濃度5μg/ml、IAAを終濃度0.15μg/ml、クラフォランを終濃度500μg/mlとなるように加えたもの)に置き並べ、光強度6000ルクス、16時間明期、8時間暗期で2日間培養した。
(10)形質転換植物の選択
前記で2日間培養した切片をSIMCSプレート(SIMCプレートにハイグロマイシンBを終濃度4.6U/mlとなるように加えたもの)に移植し、光強度6000ルクス、16時間明期、8時間暗期で培養した。以後、1週間毎に新しいSIMCSプレートに移植した。形質転換した切片は増殖を続け、ドーム状に盛り上がったカルスとなるが、非形質転換体は褐変した。形質転換体は約2週間後、カルスが緑色を呈し、約1カ月後、葉が形成され、その後ロゼット葉となった。
(11)形質転換植物の再生
ロゼット葉となった植物体の根本を、カルス部分を含まないように剃刃もしくはメスで切り取り、RIMプレートに軽く乗せるように挿した。8〜10日後、1〜2cm程度の根が数本形成したものをピンセットで無機塩類培地〔5mM KNO3、2.5mM K−リン酸緩衝液(pH5.5)、2mM MgSO4、2mM Ca(NO3)2、50μM Fe−EDTA、1000×微量要素(70mM H3BO3、14mM MnCl2、0.5mM CuSO4、1mM ZnSO4、0.2mM NaMoO4、10mM NaCl、0.01mM CoCl2)1ml/リットル〕に浸したロックウールミニポット(日東紡績社製)に定植し、培養した。開花し、莢形成後は、パーライトとバーミキュライト(TES社製)を1:1に混合し無機塩類混合培地に浸した土に植え換えた。約1カ月後、1株につき数百粒の種子が得られた。これを以後、T2種子と称す。
(12)抗生物質耐性株の取得
T2種子約100粒を(7)と同様の方法で滅菌し、MSHプレートに播種した。ほぼ3:1の割合でハイグロマイシンB耐性株が発芽した。
(13)DNA抽出とサザンハイブリダイゼーション
前記で発芽したT2種子を無機塩類培地に浸したロックウールミニポットにピンセットで移植し、光強度6000ルクス、16時間明期、8時間暗期、22℃の条件下で培養した。2週間後、ロックウールの表面をナイフで撫でるようにメスで地上部を切り取り、直ちに液体窒素で凍結した。これを液体窒素存在下乳鉢で細かく粉砕し、1g当たり、3mlのDNA抽出用緩衝液〔200mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM EDTA−2Na、1% N−ラウロイルサルコシンナトリウム、100μg/ml proteinaseK〕を加え十分撹拌した。60℃1時間インキュベート後、遠心(10,000×g、10分間)し上清をミラクロスで濾過し新しいチューブに移した。フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)抽出を3回行なった後、エタノール沈殿を行った。沈殿をTE緩衝液に溶解した。それぞれ植物体約2.0gから、20μgずつのゲノムDNAが得られた。このうち1μgのDNAを用いて、それぞれを制限酵素EcoRI、HindIIIで切断し、1%アガロース電気泳動及びサザンハイブリダイゼーションに供した。
また、形質転換を行っていないWS株の種子を発芽、生育させ、植物体より、同様にDNAを抽出し、制限酵素EcoRI、HindIIIによる消化を行ない、1%アガロースゲル電気泳動及びサザンハイブリダイゼーションに供した。ハイブリダイゼーション用プローブは各FSPD1、FSAM24、FADC76遺伝子断片を用いた。
サザンハイブリダイゼーションは、モレキュラー クローニング,ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Cloning,a Laboratory Manual)、第9章、第31〜58頁〔コールド スプリング ハーバー(Cold Spring Harber)社、1989年刊〕に記載の方法に従って行った。すなわち、それぞれのDNA試料について1%アガロースゲル電気泳動を行い、泳動後、アルカリ変性を行いナイロンメンブレン(ハイボンド−N、アマシャム社製)に一晩サザンブロットした。紫外線トランスイルミネーター(254nm)に3分間照射させ、DNAを固定した。このメンブレンをプレハイブリダイゼーション緩衝液(5×デンハルト液、6×SSC、0.1%SDS、10μg/ml サケ***DNA)5ml中で50℃、2時間プレハイブリダイゼーションを行った。プローブを加え、50℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションの後、メンブレンを2×SSC、0.1%SDSを含む洗浄液で室温10分間2回洗浄し、続いて同じ洗浄液で50℃、30分間で2回洗浄した。メンブレンは乾燥させた後、X線フィルム(コダック社製)を入れたカセット内で−80℃一晩感光させ、オートラジオグラフィーをとった。形質転換を行っていない株(1)、FSPD1、FSAM24、FADC76を導入した形質転換体(2)、ベクターのみを導入した形質転換体(3)について、サザンハイブリダイゼーションにより検出されたシグナルのパターンを比較した。
(2)には、(1)、(2)、(3)共通の内在性のシグナルのほかに、EcoRIで切断したサンプルと、HindIIIで切断したサンプルでは特異的なシグナルが観察され、目的遺伝子が(2)に組み込まれていることが観察された。
実施例3:ノーザンブロット解析
実施例2で得られたT2形質転換体で目的の遺伝子が実際に遺伝子発現しているかを確かめるために、ノーザンブロッティングを下記に示す様に行った。
形質転換を行っていない野生株(WT)とT2形質転換体(セルライン:TSP−14、15、16、17、19)のロゼット葉から全RNAを抽出した。RNA抽出は定法に従って行った。得られた全RNA10μgを1.5%ホルムアルデヒドアガロースゲルで電気泳動した後、ハイボンドNナイロンメンブランに一晩ブロッティングした。UVクロスリンカーでRNAを固定した後、プレハイブリダイゼーションバッファー(50% Formamide、5×SSPE、5×Denhardt’s、0.1% SDS、80μg/ml Salmon sperm DNA、pH7.0)で、42℃、2時間プレハイブリダイゼーションを行った。形質転換を行ったクロダネカボチャSPDS遺伝子断片のcDNAを32P−dCTPとランダムラベルキット(アマシャム社製)を用いて、プローブを作製した。このプローブをプレハイブリダイゼーションに加え、42℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、メンブランを2×SSC、0.1% SDSを含む洗浄液からスタートし、最終的には0.1×SSC、0.1% SDSを含む洗浄液で55℃30分2回まで洗浄した。メンブランをX線フィルム(Kodak社製)を用いて、オートラジオグラフィーを行った。
ノーザンブロッティングの結果を図2に示した。図2の結果から、野生株(WT)では外因性クロダネカボチャSPDS遺伝子の発現は検出されなかったが、形質転換を行った全てのT2形質転換体では非常に高いレベルでクロダネカボチャSPDS遺伝子(FSPD1)が発現していることが確認された。
実施例4:ポリアミン含量の評価
(1)目的遺伝子が導入されている系統(セルライン)の選抜
実施例2で作製した形質転換体について、PCR(またはサザン解析)とノーザン解析による目的遺伝子の導入確認でセルラインの選抜を行った。その結果、確実にポリアミン代謝関連酵素遺伝子が導入され、且つ該遺伝子を発現しているセルライン、TSP−114、115、116、117、119、131、132、151、152、221、222を選抜した。TSP−114〜115はFSPD1が導入されている系統、TSP−131、132はFSAM24が導入されている系統、TSP−151、152はFADC76が導入されている系統、TSP−221、222はFSPD1がアンチセンス方向で導入されている系統についてポリアミン含量を調べた。
(2)ポリアミン含量の分析
同時に栽培を行った野生株(WT)と形質転換体(TSP)から約0.1〜0.3gのロゼット葉(または本葉)をサンプリングして密閉可能なポリ製バイアル瓶に移して凍結保存した。サンプリングした試料に希釈内部標準液(1,6−hexanediamine、内部標準量=7.5nmol)と5%過塩素酸水溶液(試料生体重1.0g当たり5〜20ml)を加え、オムニミキサーを用いて室温下で十分に磨砕抽出した。磨砕液を、4℃・35,000×gで20分間遠心分離して上清液を採取し本液を遊離型ポリアミン溶液とした。スクリューキャップ付きのマイクロチューブに400μlの遊離型ポリアミン溶液、200μlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、200μlのダンシルクロライド/アセトン溶液(10mg/ml)を加えて軽く混和した。チューブの栓をしっかりと閉めたのちアルミ箔で多い、60℃のウォーターバスで1時間加温してダンシル化を行った。チューブを放冷した後、プロリン水溶液(100mg/ml)を200μl加えて混和した。アルミ箔で覆ってウォーターバスで30分間再加温した。放冷後、窒素ガスを吹き付けてアセトンを除いた後に、600μlのトルエンを加えて激しく混和した。チューブを静置して2相に分かれた後に、上層のトルエン層を300μlマイクロチューブに分取した。分取したトルエンに窒素ガスを吹き付けてトルエンを完全除去した。チューブに100〜200μlのメタノールを加えてダンシル化遊離型ポリアミンを溶解させた。プトレシン、スペルミジン、スペルミンの遊離型ポリアミン量の定量は蛍光検出器(励起波長は365nm、発光波長は510nm)を接続した高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析した。HPLCカラムはμBondapak C18(Waters社製:027324、3.9×300mm、粒子径10μm)を使用した。試料中のポリアミン含量は標準液と試料のHPLCチャートから、それぞれ各ポリアミンと内部標準のピーク面積を求めて算出した。その結果を表4に示す。
表4より、明らかなようにポリアミン代謝関連酵素遺伝子をセンス方向に導入したセルラインTSP−114、115、116、117、119、131、132、151、152は、プトレシン含量、スペルミジン含量、スペルミン含量が野生株(WT)より有意に増大し、総ポリアミン含量も野生株(WT)より有意に増大していることが明らかとなった。特にスペルミジンとスペルミン含量の増加が顕著であった。さらに、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子をアンチセンス方向に導入したセルラインTSP−221、222は、特にスペルミジン含量とスペルミン含量が野生株(WT)より有意に減少し、総ポリアミン含量も野生株(WT)より有意に減少していることが明らかとなった。
以上の結果から、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を植物にセンス方向又はアンチセンス方向で遺伝子導入することで、植物内のポリアミン含量を増加又は減少させることが可能であることが明らかとなった。これらのことから、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を植物に遺伝子導入することで、ポリアミン代謝を操作してポリアミン含量を制御できることが認められた。
実施例5:種々の器官形成の評価
(1)茎・葉・花・さや数の評価
実施例2で得られたT3形質転換体(FSPD1がセンス方向で導入されているセルライン:TSP−16−1、16−2)と野生株(WT:コロンビア株)種子を培養土メトロミックス(ハイポネックスジャパン社製)を含んだプラスチック鉢に播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、鉢をプラスチックバットに入れ、23℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。播種後、15週間育成した。育成後、各ラインで1個体当たりの茎(花茎)数を調査した。各ライン30個体について調査を行った。その結果を図3に示した。
図3の結果から、T3形質転換体(TSP−16−1、16−2)は野生株に比べて有意に1株当たりで約7〜8本の茎数が増大していることが明らかとなった。さらに、1株当たりの茎数が増大したことで葉(茎生葉)、花、さや(子房)数も顕著に増大していることが明らかとなった。野生株とTSP−16−1の草姿を図4に示した。
(2)主茎と側茎数の評価
(1)の結果からT3形質転換体では野生株に比べて有意に茎数の増加が確認された。そこで、シロイヌナズナの茎は主茎(主花茎)と側茎(側花茎)に分かれることから、主茎と側茎についてそれぞれ数を調査することとした。実施例2で得られたT3形質転換体(FSPD1がセンス方向で導入されているセルライン:TSP−161B、162B)と野生株(WT:コロンビア株)種子を培養土メトロミックス(ハイポネックスジャパン社製)を含んだプラスチック鉢に播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、鉢をプラスチックバットに入れ、23℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。播種後、7週間育成し、7週間目(49日目)から1週間毎に13週間目(91日目)まで、各ラインで1個体当たりの主茎(主花茎)と側茎(側花茎)数をそれぞれ調査した。各ライン30〜32個体について調査を行った。その結果を図5および図6に示した。
図5の結果からT3形質転換体は野生株に比べて、49日目から有意に主花茎数の増加が認められ、70日目ではT3形質転換体では野生株に比べて1株当たりで約1本増加した。T3形質転換体と野生株の主花茎の増加程度は91日目までほぼ同程度で続き、最終的な主花茎数もT3形質転換体では野生株より高まった。
図6の結果からT3形質転換体は野生株に比べて、49日目から有意に側花茎数の増加が認められ、70日目ではT3形質転換体では野生株に比べて1株当たりで約4本増加した。さらに、91日目ではT3形質転換体では野生株に比べて1株当たりで約5〜6本増加し、最終的な側花茎数もT3形質転換体では野生株より顕著に高まった。
(3)葉・花・さや数の評価
(1)の結果からT3形質転換体では野生株に比べて葉、花およびさや(子房)数の増加が確認された。そこで、各器官についてそれぞれ詳細に数を調査した。実施例2で得られたT3形質転換体(FSPD1がセンス方向で導入されているセルライン:TSP−15−3、16−1)と野生株(WT:コロンビア株)種子を培養土メトロミックス(ハイポネックスジャパン社製)を含んだプラスチック鉢に播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、鉢をプラスチックバットに入れ、23℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。播種後、67日間育成して67日目に各ラインで1個体(株)当たりの葉(茎生葉)、白色の花弁が付いている花、さや(さや長が5mm以上)数を調査した。各ライン30個体について調べた。その結果を表5に示した。
表5の結果からT3形質転換体は1株当たりの本葉、花、さやの数が野生株に比べて有意に増大していることが明らかとなった。さやは全てのラインで調査後に成熟して裂開後、成熟した種子が収穫できた。1さや当たりの種子数はT3形質転換体と野生株で有意な差は見られなかったが、T3形質転換体では1株当たりで1.6〜2.0倍程度さやの数が増加した結果、1株当たりで収穫された全種子数は有意に増大していることが明らかとなった。T3形質転換体から収穫されたT4種子と野生株の種子を用いて発芽率の比較試験を行ったところ、T4種子、野生株ともに95〜100%の高い発芽率が得られた。
(4)花の開花期、子房(さや)の発達期間の評価
実施例2で得られたT3形質転換体(FSPD1がセンス方向で導入されているセルライン:TSP−15−3、16−1)と野生株(WT:コロンビア株)種子を培養土メトロミックス(ハイポネックスジャパン社製)を含んだプラスチック鉢に播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、鉢をプラスチックバットに入れ、23℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。各ラインすべての株について抽だい開始日と開花日(1番花)の調査と1番花の開花日からさや(子房)の成熟日(裂開開始日)までの調査を行った。各ライン30個体について調べた。花の開花日の結果を図7、さや(子房)の発達期間の結果を表6に示した。
図7の結果からT3形質転換体は野生株より開花日が早くなっていることが明らかとなった。平均でT3形質転換体は野生株より6〜7日程度早まっていることが確認された。
表6の結果からT3形質転換体は野生株に比べてさや(子房)の発達期間が有意に増大していることが明らかとなった。
実施例6:形質転換ペチュニアの評価
(1)形質転換ペチュニアの作製
pBI101−35S−FSPD1+とpBI101−35S−FSAM24+をアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefacience)AglO株(Lazo et al.Bio Technology 9:963−967(1991))に塩化カルシウムを用いる方法(たとえば、新生化学実験のてびき 3 化学同人 121−122ページ、1996)で導入した。得られた形質転換アグロバクテリウムを、それぞれペチュニア(Petunia hybrida)品種サフィニアパープルミニ(サントリーフラワーズ株式会社)由来のリーフディスクに感染させ、ハイグロマイシンに抵抗性を示す植物細胞を選抜、再分化させることにより、形質転換ペチュニアを取得した。ペチュニアの形質転換は公知の方法(Horsch et al.Science 227:1229−1231(1985))を用いて行った。pBI101−35S−FSPD1+とpBI101−35S−FSAM24+により形質転換されたペチュニアそれぞれを実験区PT144と実験区PT146とした。PT144では23個体、PT146では43個体の独立した形質転換体を取得した。
(2)導入遺伝子の発現解析
これらの植物から染色体DNAおよびRNAをそれぞれDNeasy Plant Mini KitとRNeasy Plant Mini Kit(株式会社キアゲン、東京)を用いることにより調製した。染色体DNAを鋳型にしたPCR反応(PT144はプライマーFSPD1F(5’−TAGTAGAGGGATTATTATGTCTGCGGA−3’)とFSPD1R(5’−ATGACGCTGATCACAATATAAAGCGAC−3’)をPT146はプライマーFSAM24F(5’−TGAAGGCTATGAAAAGAGGCTTGAAGTA−3’)とFSAM24R(5’−TCATGAGGATTGACCTTGGGATGACG−3’)を用いてPCR反応を行った。反応は、95℃で1分間保持した後、95℃・1分、52℃・2分、72℃・3分からなるサイクルを30サイクル行い、さらに72℃で1分間保持した。)により、PT144およびPT146のペチュニアはそれぞれSPDS(FSPD1)およびSAMDC(FSAM24)遺伝子を保持する形質転換体であることがわかった。また、これら形質転換ペチュニアの葉から抽出した全RNAを用いてRT−PCR(スーパースクリプトファーストストランド合成システムRT−PCR用(インビトロジェン株式会社、東京)を用いてOligo(dT)12−18プライマーを用いて、逆転写反応を行った。逆転写産物を鋳型とし、染色体DNAと同じプライマーとサイクルでPCRを行った。)によって各個体の遺伝子発現を解析した。PT144では9個体、PT146では27個体の植物体で外来遺伝子(PT144はSPDS、PT146はSAMDC)の発現が確認された。
(3)ポリアミン含量の評価
形質転換体の中から発現量の多かった個体(セルライン)について遊離型ポリアミン含量の分析を行った。同時に栽培を行った野生株(元株:PT144−C、PT146−C)と形質転換体(PT144,PT146)から約0.3〜0.6gの葉をサンプリングして凍結保存した。サンプリングした試料に希釈内部標準液(1,6−hexanediamine、内部標準量=7.5nmol)と5%過塩素酸水溶液(試料生体重1.0g当たり5〜10ml)を加え、オムニミキサーを用いて室温下で十分に磨砕抽出した。磨砕液を、4℃・35,000×gで20分間遠心分離して上清液を採取し本液を遊離型ポリアミン溶液とした。スクリューキャップ付きのマイクロチューブに400μlの遊離型ポリアミン溶液、200μlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、200μlのダンシルクロライド/アセトン溶液(10mg/ml)を加えて軽く混和した。チューブの栓をしっかりと閉めたのちアルミ箔で覆い、60℃のウォーターバスで1時間加温してダンシル化を行った。チューブを放冷した後、プロリン水溶液(100mg/ml)を200μl加えて混和した。アルミ箔で覆ってウォーターバスで30分間再加温した。放冷後、窒素ガスを吹き付けてアセトンを除いた後に、600μlのトルエンを加えて激しく混和した。チューブを静置して2相に分かれた後に、上層のトルエン層を300μlマイクロチューブに分取した。分取したトルエンに窒素ガスを吹き付けてトルエンを完全除去した。チューブに100〜200μlのメタノールを加えてダンシル化遊離型ポリアミンを溶解させた。プトレシン、スペルミジン、スペルミンの遊離型ポリアミン量の定量は蛍光検出器を接続した高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析した。HPLCカラムはμBondapak C18(Waters社製:027324、3.9×300mm、粒子径10μm)を使用した。試料中のポリアミン含量は標準液と試料のHPLCチャートから、それぞれ各ポリアミンと内部標準のピーク面積を求めて算出した。その結果を表7に示した。
遊離型プトレシン量の野生株(144−C、146−C)における平均は29.46nmol/gFW(FW:新鮮重)、形質転換体(144、146)の平均は38.67nmol/gFW、遊離型スペルミジン量の野生株における平均は37.03nmol/gFW、形質転換体の平均は50.40nmol/gFWであり、遊離型プトレシン量、遊離型スペルミジン量がともに増加した。野生株と形質転換体間のt−検定の結果、遊離型スペルミジンは有意水準5%で差があることがわかり、形質転換体において特に遊離型スペルミジン量が増加していることが明らかとなった。さらに、PT146の形質転換体では遊離型スペルミン含量が野生株(146−C)に比べて有意に増加していることも確認された。
(4)形質転換ペチュニアの形態形成の評価
ペチュニアは気温約25℃で、自然光に16時間明8時間暗サイクルの人口光を補った閉鎖系温室内で栽培し、切り戻した直後から60日目までの間、外来遺伝子が発現していた個体について個体当たりの花数変化を経時的に測定した。その結果を表8、図8、図9に示した。表8、図8、図9の結果から形質転換ペチュニアでは元株(野生株)に比べて明らかに分枝数と花数が増加した。測定期間中、元株のサフィニアパープルミニの花数は10を越えることはなかったが、PT144では6個体(67%)、PT146では18個体(67%)が花数10を越えた。また、一枝当たりの花数も元株では0〜3個の場合が多く5個を越えることはほとんど見られない。しかし、形質転換体では、5個を越える花をつけた枝を持つ個体がPT144では3個体(33%)、PT146では5個体(19%)と高い割合を示した。
ポリアミン量の増加とペチュニアの花数や枝数の増加に相関関係があることがわかり、導入した遺伝子がポリアミン量を増やし花数や枝数の増加をもたらすことが明らかとなった。ここで見られた花数の増加が、個々の花の開花期間が長くなったことに起因するものか、同時に開花している花芽数の増加に起因するものかを調べるために、一枝当たりの花数が多かった個体(PT144は5個体、PT146は9個体)で、開花期間の長さを調べた(花が開花した直後から花弁が萎えるまでの期間を開花期間として、1個体につき5個の花について測定を行い、平均値で比較した)。元株の平均開花日数は8.34日、形質転換体の平均開花日数は9.35日であり、形質転換体では開花期間が増加している傾向が観察された。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含む発現コンストラクトの構造を示す。
図2は、形質転換体におけるクロダネカボチャSPDS遺伝子の発現結果を示す。図2中、1.野生株(WT);2.形質転換体(TSP−14);3.形質転換体(TSP−15);4.形質転換体(TSP−16);5.形質転換体(TSP−17);6.形質転換体(TSP−19)。
図3は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との茎数の比較を示す。
図4は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との茎、葉、花、子房、種子数の比較を示す写真である。
図5は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との主茎数の比較を示す図である。
図6は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との側茎数の比較を示す図である。
図7は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との開花日の比較を示す図である。
図8は、外来遺伝子が発現していた個体についての個体当たりの経時的花数変化の測定結果を示す。図9は、外来遺伝子が発現していた個体についての個体当たりの経時的花数変化の測定結果を示す。
Claims (14)
- 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性スペルミジン合成酵素(SPDS)遺伝子により該外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程、該工程で得られた形質転換細胞から植物体を再生する工程、前記植物体から得られる形質転換体を栽培して器官形成の評価を行う工程を含む、以下の(a)〜(f)からなる群から選ばれる少なくとも1種の改良された器官形成を有し、該器官形成の改良により生産性又は/及び収量が向上することを特徴とする、該外因性SPDS遺伝子を有していない植物に比べて、改良された器官形成を有する植物の作出方法:
(a)茎の数の増加
(b)葉の数の増加
(c)花の数の増加
(d)さやまたは子房または果実の数の増加
(e)さやまたは子房または果実の発達期間の増加
(f)種子または胚珠の数の増加 - 前記外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程が、植物中で機能し得る構成的プロモーター、組織特異的プロモーターまたは時期特異的プロモーターの制御下にある外因性SPDS遺伝子を含む発現ベクターで、該外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程である、請求項1に記載の方法。
- 前記外因性SPDS遺伝子が導入確認されたセルラインを選抜する工程をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
- 前記導入された外因性SPDS遺伝子がホモ接合体である植物を選抜する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 以下の工程:
(1)前記植物体から受粉により種子を採取する工程、および
(2)該種子を栽培して得られる植物体から受粉により得られる種子における前記外因性SPDS遺伝子を検定して該外因性SPDS遺伝子のホモ接合体を選抜する工程
を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。 - 前記プロモーターが構成的プロモーター、組織特異的プロモーターまたは時期特異的プロモーターである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 前記(a)〜(f)からなる群から選ばれる少なくとも2以上の器官形成が同時に改良されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性SPDS遺伝子により該外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程、該工程で得られた形質転換細胞から植物体を再生する工程、前記植物体から得られる形質転換体を栽培して器官形成の評価を行う工程を含む、以下の(a)〜(f)からなる群から選ばれる少なくとも1種の改良された器官形成を有し、該器官形成の改良により生産性又は/及び収量が向上することを特徴とする、植物の器官形成を改良する方法:
(a)茎の数の増加
(b)葉の数の増加
(c)花の数の増加
(d)さやまたは子房または果実の数の増加
(e)さやまたは子房または果実の発達期間の増加
(f)種子または胚珠の数の増加 - 前記外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程が、植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性SPDS遺伝子を含む発現ベクターで、該外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程である、請求項8に記載の方法。
- 前記外因性SPDS遺伝子が導入確認されたセルラインを選抜する工程をさらに含む請求項8または9に記載の方法。
- 前記導入された外因性SPDS遺伝子がホモ接合体である植物を選抜する工程をさらに含む、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
- 以下の工程:
(1)前記植物体から受粉により種子を採取する工程、および
(2)該種子を栽培して得られる植物体から受粉により得られる種子における前記外因性SPDS遺伝子を検定して該外因性SPDS遺伝子のホモ接合体を選抜する工程
をさらに含む、請求項8または11に記載の方法。 - 前記プロモーターが構成的プロモーター、組織特異的プロモーターまたは時期特異的プロモーターである、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
- 前記(a)〜(f)からなる群から選ばれる少なくとも2以上の器官形成が同時に改良されることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
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