JP3775091B2 - 超電導線材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導線材およびその製造方法に関し、特に超電導フィラメントが酸化物超電導体からなり、金属被覆中で螺旋状の経路を有する超電導線材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導体を複数に分割してフィラメントとし、それらを金属でマトリックス状に被覆した金属被覆超電導線材が知られている。高温で超電導特性を有する酸化物超電導線材も同様の構造が提案されており、銀または銀合金をマトリックスで被覆したいわゆる銀シース多芯超電導線材の開発が進められている。この場合、酸化物超電導体としては、たとえばBi−2212,Bi−2223,Tl−1223,Tl−2223,Y123,Nd−123,等の酸化物粉末を出発原料とし、銀または銀合金の被覆材と複合させ、さらに超電導化熱処理を施して、超電導線材が得られる。通常、このような複合化構造は、例えば図20にその断面を示すように、超電導体を複数のフィラメント1の組織に分割し、これらを銀または銀合金2で被覆した断面円形すなわち丸線のマルチフィラメント超電導線材3とする方法が多く用いられている(例えば、特開平4-292809を参照)。また、このような断面円形の線材に圧延加工を施し、図12に示すような断面が矩形状のテープ状酸化物超電導線材4とすることも多い。
【0003】
酸化物超電導線材の場合、丸形状線材の77Kにおける臨界電流密度をJc1 、テープ状線材のそれをJc2 とすると、Jc1 <Jc2 となるのが普通である。つまり、酸化物超電導体の場合、個々の超電導フィラメントの断面形状を丸(フィラメントのアスペクト比が1)でなく、楕円またはテープ(フィラメントのアスペクト比1以上)にした方がJcを大きくすることができる。
【0004】
ところで、線材の最終断面形状としては丸線の方がテープ状線材に比べ汎用性があり、しかも取り扱いが容易となるとの理由から、別の断面構造として、図22に示すように、超電導フィラメント1がテープ状(アスペクト比1より大)で線材の断面は円形とした酸化物超電導線材5が提案されている(特開平9-223418号)。このような構造の超電導線材は、断面円形の線材に圧延加工を施して断面が矩形状のテープ状線材とし、そのテープ状線材の複数本を金属パイプないしビレット中に組込み、その後、縮径加工を行うことで長尺で丸形状の超電導線材を得ている。
【0005】
また、超電導線材は交流損失低減対策や機械歪み耐性向上を目的として、線材の製作途中で線材をツイスト加工することにより、超電導フィラメントの経路を金属被覆中で長手方向に螺旋状に構成することがある。さらに、交流損失低減対策の他の手法として、超電導フィラメント間に電気的絶縁層を介在させることでフィラメント相互の電気的結合を抑制する、いわゆるバリアー層を形成する場合がある。このバリアー層の材料としては、通常BaZrO3 ,SrZrO3 ,MgO,MnOなどの酸化物材料がある。
【0006】
ここで、従来の超電導線材の製造方法を、酸化物超電導線材を例にツイスト加工工程を含む場合で整理すると、図19に示す通りとなる。すなわち、
(1)銀または銀合金パイプに酸化物超電導体粉末を充填し、必要に応じ縮径加工して単フィラメント丸線とし、その複数本を銀または銀合金製のパイプに組み込んで複合ビレット化したものを静水圧押出しし、次いで減面加工、ツイスト加工を施すことで、断面円形の酸化物超電導線材を得る。
【0007】
(2)(1)と同様の工程で得たツイスト加工済みの丸線に、さらに圧延加工を施すことで、テープ状の酸化物超電導線材を得る。
【0008】
(3)銀または銀合金製のパイプに酸化物超電導体粉末を充填し、必要に応じ縮径加工して単フィラメント丸線とし、その複数本を銀または銀合金製のパイプに組み込んで複合ビレット化したものを静水圧押出しし、次いで減面加工後に圧延してテープ状に成形する。当該テープ状の線材の複数本を束ねて銀または銀合金製のビレットに組み込んで静水圧押出しし、次いで減面加工、ツイスト加工を施すことで、テープ状の超電導フィラメントを有する断面円形の酸化物超電導線材を得る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、従来の酸化物超電導線材とその製造方法では、以下のような問題点があった。
【0010】
1.線材性能上の問題点
(1)図22に示すような断面円形の超電導線材においてもJc1 がJc2 に達することはない。原因は定かでないが、このような構造において、断面内の超電導フィラメントの平板は径方向(線材の軸線に垂直な方向)に積層配置されているため、減面加工の際にテープ形状の超電導フィラメントが等方的でない圧縮力を受け、図23に示すように超電導フィラメント1が折れてしまうことが要因の一つと考えられている。
【0011】
(2)また、図22に示すような断面構造の超電導丸線材においては、図19により説明したように、テープ状の線材の複数本を束ねて大型の銀または銀合金パイプに組み込むことで、超電導フィラメントの分割化(マルチフィラメント化)とフィラメントのテープ形状化を行なっている。しかしながら、この従来方法では、銀または銀合金製のパイプに組み込んで複合ビレット化する度に、超電導線材に占める金属比率が大きくなる。金属比率の増加は線材断面積あたりの電流密度の低下を招くので好ましくない。
【0012】
(3)交流損失低減や機械歪対策を目的として線材にツイスト加工を施しフィラメント経路を螺旋軌道にする場合には、先に説明したように、断面円形の線材の状態でツイスト加工を施すのが一般的である。しかしながら、図22に示したような断面構造の線材では、ツイスト加工を施すと、超電導フィラメントにせん断歪みが加わるため、形状乱れが予想される。形状乱れがあると、交流損失低減と機械歪み対策の効果が不十分となり、さらにJcも低下する。交流損失低減のためには、超電導線材中の多数の電流経路、すなわちフィラメント経路が相互にインダクタンス的に等価であるという条件を満たすことが理想的である。しかしながら、従来、この条件を満たす構造と製法は、高Jcを満足させる構造および製法と独立のものであって、結果的に性能面でのトレードオフの関係にあった。
【0013】
2.製造コスト上の問題点
(1)図19により説明したように、従来のテープ状の超電導フィラメントを有する断面円形の酸化物超電導線材の製造方法は、他の断面円形の酸化物超電導線材やテープ状の酸化物超電導線材の製造方法に比べてより多くの工程を必要とし、製造コスト上好ましくない。
【0014】
(2)複合ビレットを縮径加工して長尺の線材を得るためには、大体積の複合ビレットを用意する必要がある。しかるに、用意される複合ビレットの寸法上限は、設備の規模で制限されることになる。例えば、ビレット寸法の上限が、外径Dx、長さLxであるとすると、外径dsの線材の製造可能長Lmaxは、線材両端部を使用しないことによる歩留まりを80%とすれば、
Lmax=Lx×(Dx/Ds)2 ×0.8 (1)
となり、設備面でLx、Dxが大きく制限されると長尺の線材が得られない原因となる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記の欠点を解消し、横断面が略円形の超電導線材においても横断面がテープ状の超電導線材と同等の臨界電流密度を達成できる超電導線材とその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、製造工程が少なく製造コストを低減できる超電導線材およびその製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、高臨界電流密度を確保しつつ、超電導フィラメントが相互にインダクタンス的にほぼ等価となるように工夫された超電導線材およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、横断面が略円形の外形を有する超電導線材であって、前記超電導線材は、その横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合された集合体からなり、セグメントは超電導フィラメントと当該超電導フィラメントを覆う金属被覆とからなり、横断面が略円形の素線を螺旋状に撚り合せて縮径加工したものである超電導線材を提供する。ここで、超電導フィラメントは酸化物超電導体からなり、横断面のアスペクト比が1.5以上であることが好ましい。
【0017】
横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本が長手方向に所定ピッチで螺旋状に集合された集合体からなる超電導線材の製造方法であって、酸化物超電導材料からなる超電導フィラメントが金属で被覆された横断面が略円形の素線n本(n=2、3)を所定のピッチで螺旋状に撚り合わせ、次いで当該撚線を所定の外径を有する横断面が略円形の線材に縮径加工して前記超電導フィラメントをアスペクト比が1.5以上の横断面にする方法であって、素線外径をd、縮径加工前の撚線ピッチをP、縮径加工後の線材外径をdとすると、
n=2の場合、P/d=3〜30、d<1.2d
n=3の場合、P/d=8〜40、d<1.7d
である超電導線材の製造方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明では、横断面が略円形の外形を有する超電導線材であって、超電導線材は、その横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントを長手方向に所定のピッチで螺旋状に撚り合わされた形態をなし、セグメントは酸化物超電導体からなる超電導フィラメントと超電導フィラメントを覆う金属被覆からなり、前記超電導フィラメントはセグメントの螺旋と同一方向に所定のピッチで螺旋状に配置され、横断面のアスペクト比が1.5以上であることを特徴とする超電導線材を提供する。ここで、セグメントの各々の間に電気的絶縁層が設けられていることが好ましい。
【0019】
さらにまた、本発明では、横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本が長手方向に所定ピッチで螺旋状に集合された集合体からなる超電導線材の製造方法であって、酸化物超電導材料からなる超電導フィラメントが金属で被覆された横断面が略円形の素線に所定のピッチPでツイスト加工を施し、そのツイスト加工された素線n本(n=2、3)を所定のピッチで螺旋状に撚り合わせ、次いで撚線を所定の外径を有する横断面が略円形の線材に縮径加工して前記超電導フィラメントをアスペクト比が1.5以上の横断面にすることを特徴とする超電導線材の製造方法を提供する。ここで、素線外径をd、縮径加工前の撚線ピッチをP、縮径加工後の線材外径をdとすると、
n=2の場合、P/d=3〜30、d<1.2d
n=3の場合、P/d=8〜40、d<1.7d
であり、ピッチPとピッチPの螺旋の方向は同一とする。
【0020】
なお、本発明において、横断面が略円形とは、円形のみならず、対称N角形(Nは6以上)を含む概念である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図4、図6、及び図8は、本発明に係る超電導線材の第1の実施の態様を横断面図で示したものである。
【0023】
図4に示す例は、アスペクト比が1.5以上である酸化物超電導フィラメント1を55本と、酸化物超電導フィラメント1を覆う金属被覆2を有し、かつ横断面が略半円形であるセグメント8a,8bの2本を、長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体9からなり、横断面が略円形の外形を有している酸化物超電導線材である。
【0024】
図6は、他の例であって、アスペクト比が1.5以上である酸化物超電導フィラメント1を55本と、酸化物超電導フィラメント1を覆う金属被覆2を有し、かつ横断面において中心角が略120度であるセグメント10a,10b,10cの3本を、長手方向に所定のピッチで集合した集合体11からなり、横断面が略円形の形状を有している。
【0025】
図8は、さらに別の例であって、横断面において中心角が略120度であるセグメント12a,12b,12cのそれぞれに含まれる酸化物超電導フィラメント1の本数を19とし、これらセグメント12a,12b,12cを長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体13としたものである。各酸化物超電導フィラメント1内に金属芯材14が配置されている点とフィラメントの本数が19本である点を除き、他の基本構成は、図6の例と同様である。これらの例において、酸化物超電導フィラメント1の各々は、アスペクト比(フィラメントの横断面における長軸長/短軸長)が1.5以上であり、かつ線材長手方向において螺旋状の経路を有している。
【0026】
このような構造を有する酸化物超電導線材によれば、超電導フィラメントは、アスペクト比が1.5以上である横断面が板状または楕円状に形成されるので、横断面が略円形の超電導線材においても横断面がテープ状の超電導線材と同等の臨界電流密度を達成できる。一方、超電導線材は、横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本を長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合したので、超電導フィラメントは、必ず線材の長手方向に螺旋状に配置される。したがって、交流損失が少なく、かつ、機械歪に強い超電導線材となる。しかも、2個または3個のセグメントの集合体であるから、線材としての単重(単体積)は、従来手法の場合に比べ2倍または3倍にできるので、同じ設備で長尺の線材を製造する場合の製造限界重量を大幅に大きくできる。さらに、以下に述べるような、従来より少ない工程で製造できるので、製造コストを大幅に低減できる。
【0027】
次に、本発明に係る第1の実施の態様の超電導線材の製造方法について説明する
【0028】
図1は、本発明に係る製造方法の工程を示すフローチャートであり、金属被覆内部に1本の酸化物超電導体の芯を含む単フィラメントを作製する工程と、その単フィラメントの複数本を金属管内に複数本組み込んで多芯ビレット化し、それを静水圧押出しにより多芯フィラメント複合体を形成する工程と、その多芯フィラメント複合体を縮径加工し横断面が略円形の素線を作成する工程と、その素線を2本または3本撚り合わせる工程と、その撚線を更に縮径加工する工程を含む。
【0029】
図2は図1の製造工程における好ましい加工条件の一例を示すフローチャートであり、仕様外径ds、仕様撚線ピッチPsの酸化物超電導線材を得ることを目的としている。
【0030】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0031】
A.単フィラメント作製
まず、1本の酸化物超電導フィラメントと金属被覆からなる単フィラメントを作製する。フィラメントを構成する物質は、公知の酸化物超電導材料、例えば、Bi−2212,Bi−2223,Tl−1223,Tl−2223,Y−123,Nb−123からなる。一方、金属被覆は、特に限定するものではないが、芯となる酸化物超電導材料と反応して超電導特性を低下させない材料が好まし、例えば、Bi−2212,B−2223の酸化物超電導材料のときは、銀または銀合金(Agを主成分としてAu,Pd,Ti,Mg,Ni,Sb,Al,Mnより選ばれた少なくとも1種を添加したもの)であることが好ましい。本工程の一例として、超電導材料は超電導化熱処理を施していない粉末または一旦焼結後に粉砕した粉末(以下、前駆体粉末という)を所定の長さの金属管に充填し、次いで縮径加工することにより、横断面が略円形の単フィラメントを作製する。
【0032】
B.多芯フィラメント複合体の作製
工程Aで得た単フィラメントを複数本、所定の長さの別の金属管に組み込み多芯ビレット化する。金属管は、その材料を特に限定するものではないが、好ましくは銀または銀合金(Auを主成分としてAu,Pd,Ti,Mg,Ni,Sb,Al,Mnより選ばれた少なくとも1種を添加したもの)である。多芯ビレット化に際し、中心に金属被覆と同様の材料からなる金属芯材を配置してもよい。この多芯ビレットは静水圧押出しにより、横断面が略円形の多芯フィラメント複合体に成形される。
【0033】
C.縮径加工
次いで、工程Cの多芯フィラメント複合体を、押出し、スウェージャーまたは伸線により減面加工し、横断面が略円形で多芯フィラメントを有する素線を作製する。以下の工程での説明の便宜上、得られた素線の外径をd0 、長さをL0 とする。
【0034】
D.撚線加工
工程Cで得られた素線を2本または3本を所定のピッチP1 で撚り合わせる。素線の撚り合わせピッチは、素線が2本の場合、P1 /d0 =3〜30、素線が3本の場合は、P1 /d0 =8〜40を満足する範囲とする。通常の撚線で形状を維持するためには、P1 /d0 の上限は約100まで可能である。しかしながら、本発明では、撚線が次の縮径加工を経るので、P1 /d0 が100程度まで大きいと、縮径加工の際に素線がばらけてしまい、加工が困難になる。そこで、撚線に縮径加工を施すことができる上限として、P1 /d0 は、素線が2本の場合30、素線が3本の場合40が選ばれる。一方、P1 /d0 が小さすぎると、撚線加工時に素線が過度の加工歪を受け、金属被覆中のフィラメント組織に乱れや破壊が生じ、そのために最終的に得られた超電導線材において超電導特性の低下を招くおそれがある。発明者らの実験の結果、かかる問題の生じないP1 /d0 の下限は、素線が2本の場合3、3本の場合8である。
【0035】
図3、図5および図7は撚線加工後の状態を示し、図3は2本の例を、図5および図7は3本の例をそれぞれ示しており、6,16,26はそれぞれ撚線である。図示のとおり、撚線加工後の外径をd1 とすると、d1 は幾何学的に一義に決定し、2本の場合(図3)ではd1 =2d0 、3本の場合(図5、7)ではd1 =2.31d0 である。
【0036】
E.縮径加工
工程Dで得られた撚線に、ダイスを用いた伸線装置またはスウェージャー等公知の手段によって縮径加工を行なう。この縮径加工は1回でも複数回の繰り返しでもよいが、1回の縮径加工による外径の減少率は2〜20%となるよう、ダイス口径を選定することが好ましい。縮径加工を複数回繰り返すときは、縮径加工の途中で、焼鈍処理や超電導化のための中間熱処理、あるいは前駆体粉末組織の脱ガス処理を施してもよい。中間熱処理を行なうときは、その後の縮径加工は、1回のパスによる外径の減少率は2〜5%とするのが好ましい。
【0037】
縮径加工によって得られる複合線材の外径をdとすると、素線が2本の場合d<1.2d0 、素線が3本の場合d<1.7d0 に達すると、外径が略円形に成形された線材が得られる。この際、縮径加工によって2本または3本の素線はつぶされて横断面が半円形または中心角が略120度の扇形に変形し、略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントを長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体を構成する。一方、金属被覆内の超電導フィラメントの横断面形状は、アスペクト比が高い(好ましくは1.5以上の)板状、楕円状に変形させられる。これは、本工程の縮径加工によって、2本または3本の撚線の隣接素線同士と撚線外径d1 の円筒内面で形成される空隙を埋めるように素線材料の一部が円周方向に展性変形するからである。
【0038】
今、撚線直後の空隙率vを、撚線外径d1 に等しい円筒空間内での空隙(素線の占有しない体積)の割合と定義し、素線が2本の場合と3本の場合についてそれぞれ計算すると、素線が2本の場合、P1 /d0 =3〜30の範囲でv=0.44〜0.55、素線が3本の場合、P1 /d0 =8〜40の範囲でv=0.38〜0.43となる。この空隙率が略0%となった時点で、空隙のないセグメントの集合体となる。
【0039】
図2に示すように、縮径加工後の外径dが仕様外径dsに達すれば、縮径工程は終了する。d>dsであるときは、さらに縮径加工を繰り返す。一般に、縮径加工を施す毎に被加工材の撚線ピッチは長くなる。この繰り返しの縮径加工においても、加工前の撚線ピッチPと外径dの比P/dが大きすぎると、縮径加工の際に素線がばらけてしまい、加工が困難になる。その限界値をP2 /dで表現すると、P/d<P2 /dであり、発明者の実験によれば、好ましくは、2本の素線の場合P2 /d=20〜30、3本の素線の場合P2 /d=30〜60である。
【0040】
集合体が横断面で略円形になると、外径dと撚ピッチPは縮径加工の前後で数値的に略次式が成立する。
【0041】
P・d2 =一定 (2)
この(2)の関係式に基づいて、縮径加工を制御すれば、異なる仕様外径ds、撚線ピッチPsに応じた集合体が得られる。
【0042】
一方、縮径加工後の集合体の総長については、長さL0 、外径d0 の素線を撚り合わせ、次いで縮径加工すると、歩留まりを無視した場合、集合体外径がdsで長さn×Lmaxとなる。但し、nL0 0 2 =Lmaxds2 である。
【0043】
F.縮径加工途中のツイスト加工
工程Eの縮径加工において、外径dと撚線ピッチPがP/d>P2 /d、すなわち繰り返しの縮径加工が困難なとき、または、所定のピッチPsを縮径加工以外の方法でより短く調整しようとするときは、縮径加工の途中で撚線にツイスト加工を施し、P/dを小さくすることができる。この加工は、通常、撚線の撚りが締まる方向に回転する(ツイストする)ことで行なう。
【0044】
ツイスト加工前の撚線のピッチP2 、ツイスト加工後のピッチをP3 、ツイスト加工時の撚線外径をdとすると、ツイスト加工に必要な単位長さあたりの回転数dnは、次式で与えられる。
【0045】
dn=1/P3 −1/P2 (3)
このツイスト加工に先立ち、ツイストをやり易くするために、金属被覆に焼鈍処理を施してもよい。
【0046】
ツイスト加工は、加工度が大きすぎると超電導フィラメントの組織に乱れが生じたり、破壊に至ることがある。これを防止するために、加工度は制約される。発明者の実験によれば、2本の素線の場合P3 /d>3であり、3本の場合P3 /d>5である。
【0047】
G.超電導化熱処理
超電導化熱処理は、超電導フィラメントの超電導特性を発現させるために必要な処理である。この熱処理の条件は、一般に超電導材料の種類に依存するが、超電導フィラメントの厚さ(断面積)、アスペクト比、金属被覆マトリックスの組成によっても若干左右される。図4、図6および図8に示したように、本発明の酸化物超電導線材においては、超電導フィラメント自体は従来の線材(例えば図21)の超電導フィラメントと同様、板状ないし断面楕円状に成形されているため、従来の線材における最適熱処理条件と略同様の熱処理を施せばよい。ここで、最適熱処理条件とは、臨界電流密度を最大にできかつ熱処理によって線材に膨れが生じたりしない条件である。
【0048】
次に、本発明に係る超電導線材の第2の実施の態様を、横断面図で示した図11、図14、図15、図16および図18により説明する。
【0049】
図11に示す例は、アスペクト比が1.5以上で好ましくは20以下である酸化物超電導フィラメント21を55本と、酸化物超電導フィラメント21を覆う金属被覆2を有し、かつ横断面が略半円形であるセグメント28a,28bの2本を、長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体29からなり、横断面が略円形の外形を有している酸化物超電導線材である。そして、各酸化物超電導フィラメント21は、各セグメント28a,28b内において、セグメントの螺旋の方向と同一方向の螺旋状に、所定のピッチに配置されている。
【0050】
図14は、他の例であって、アスペクト比が1.5以上で好ましくは20以下である酸化物超電導フィラメント21を55本と、酸化物超電導フィラメント1を覆う金属被覆2を有し、かつ横断面において中心角が略120度であるセグメント30a,30b,30cの3本を、長手方向に所定のピッチで集合した集合体31からなり、横断面が略円形の形状を有している。そして、この例においても、図11と同様に、各酸化物超電導フィラメント21は、各セグメント30a,30b,30c内において、セグメントの螺旋の方向と同一方向の螺旋状に、所定のピッチに配置されている。
【0051】
図15は、さらに別の例であって、横断面において中心角が略120度であるセグメント32a,32b,32cのそれぞれに含まれる酸化物超電導フィラメント21の本数を19とし、これらセグメント32a,32b,32cを長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体33としたものであり、各セグメント32a,32b,32cの間には、電気的絶縁材料(例えば、BaZrO3 ,SrZrO3 ,MgO,MnO等の酸化物)で構成されるバリアー層44が設けられており、これにより各セグメントは電気的に絶縁されている。この例において、各フィラメント21は、そのアスペクト比が1.5以上好ましくは20以下であり、かつ、各セグメント32a,32b,32c内において、セグメントの螺旋と同一方向の螺旋状に配置されている。
【0052】
図16は、さらに別の例であって、横断面において中心角が略120度であるセグメント34a,34b,34cのそれぞれに含まれる酸化物超電導フィラメント41の本数を55とし、これらセグメント34a,34b,34cを長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体43としたものであり、各フィラメント41の表面には、電気的絶縁材料(例えば、BaZrO3 ,SrZrO3 ,MgO,MnO等の酸化物)で構成されるバリアー層44が設けられており、これにより各フィラメントは電気的に絶縁されている。そして、各フィラメント41は、そのアスペクト比が1.5以上好ましくは20以下であり、かつ、各セグメント34a,34b,34c内において、セグメントの螺旋と同一方向の螺旋状に配置されている。
【0053】
図18は、さらに別の例であって、ほぼ中心に金属芯材53が配置された酸化物超電導フィラメント51と、酸化物超電導フィラメント51の19本を覆う金属被覆(フィラメント被覆)54と、その外側を覆うもう一つの金属被覆(セグメント被覆)55からなる、横断面において中心角が略120度であるセグメント36a,36b,36cを長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体56よりなる。金属芯材53は、その硬さが金属被覆54、55よりも小さい、すなわち柔らかい材料に選ばれ、かつ金属被覆54はその硬さが金属被覆55よりも小さい、すなわち柔らかい材料に選ばれている。この例においても、酸化物超電導フィラメント51の各々は、アスペクト比が1.5以上このましくは2.0以下であり、かつセグメント36a,36b,36c内において、セグメントの螺旋の方向と同一方向の螺旋状に配置されている。
【0054】
以上の、本発明の第2の実施の態様による酸化物超電導線材によれば、各超電導フィラメントが長手方向において線材の内層部側、外層部側に交互に配置されているので、線材の製造工程における縮径加工時の超電導フィラメントの圧下力、それに伴う超電導フィラメントの緻密化度が、各々の超電導フィラメント間で均一化される。しかも、超電導フィラメントは、アスペクト比が1.5以上である横断面が板状または楕円状に形成されるので、横断面が略円形の超電導線材においても横断面がテープ状の超電導線材と同等の臨界電流密度を達成できる。
【0055】
一方、各超電導フィラメントは、セグメント内で長手方向に所定のピッチで螺旋状に配置されると共に、各セグメントも長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合したので、超電導フィラメントは、必ず線材の長手方向に螺旋状に配置される。したがって、多数の電流経路はインダクタンス的にほぼ等価となる。
【0056】
特に、図18の例では、各セグメントを構成する金属材料において、金属被覆(セグメント被覆)55の硬さが、金属芯材53および金属被覆(フィラメント被覆)54の硬さよりも大きく選ばれているので、超電導フィラメントの界面における凹凸が減少して平滑化され、臨界電流密度Jcの向上に寄与する。交流損失が少なく、かつ、機械歪に強い超電導線材となる。
【0057】
なお、本発明の第2の実施の態様においても、先に説明した第1の実施の態様と同様に、2個または3個のセグメントの集合体であるから、線材としての単重(単体積)は、従来手法の場合に比べ2倍または3倍にできるので、同じ設備で長尺の線材を製造する場合の製造限界重量を大幅に大きくできる。さらに、以下に述べるような、従来より少ない工程で製造できるので、製造コストを大幅に低減できる。
【0058】
次に、本発明に係る第2の実施の態様の超電導線材の製造方法について説明する
【0059】
図9は、その製造方法の工程を示すフローチャートであり、金属被覆内部に1本の酸化物超電導体の芯を含む単フィラメントを作製する工程と、その単フィラメントの複数本を金属管内に複数本組み込んで多芯ビレット化し、それを静水圧押出しにより多芯フィラメント複合体を形成する工程と、その多芯フィラメント複合体を縮径加工し横断面が略円形の素線を作成する工程と、その素線に所定のピッチでツイスト加工する工程と、その素線を2本または3本撚り合わせる工程と、その撚線を更に縮径加工する工程を含む。
【0060】
以下、仕様外径ds、仕様撚線ピッチPsの酸化物超電導線材を得ることを例に、各工程について詳細に説明する。
【0061】
H.単フィラメント作製
まず、1本の酸化物超電導フィラメントと金属被覆からなる単フィラメントを作製する。フィラメントを構成する物質、金属被覆を構成する材料については、第1の実施の形態における工程Aと同様である。本工程の一例として、超電導材料は超電導化熱処理を施していない粉末または一旦焼結後に粉砕した粉末(以下、前駆体粉末という)を所定の長さの金属管に充填し、次いで縮径加工することにより、横断面が略円形の単フィラメントを作製する。ここで、単フィラメントの最外層には金属被覆が設けられている(フィラメント被覆)。また、単フィラメントの中心には金属芯材を配置しても良く、この場合、金属芯材は、その硬さがフィラメント被覆よりも小さい、すわなち柔らかい材料に選ぶことが好ましい。これにより、後述の工程Lにおけるフィラメントの変形がスムースに起こる。さらに、交流損失低減効果を重視する場合は、フィラメント被覆の表面に金属または酸化物等であって後述する超電導化熱処理によって良導体とならない材料を、例えばペースト状にして200μm以下の厚さで塗布してもよい。
【0062】
I.多芯フィラメント複合体の作製
工程Hで得た単フィラメントを複数本、所定の長さの別の金属管に組み込み多芯ビレット化する。金属管は、その材料を特に限定するものではないが、好ましくは銀または銀合金(Agを主成分としてAu,Pd,Ti,Mg,Ni,Sb,Al,Mnより選ばれた少なくとも1種を添加したもの)であり、その材料の硬さは、フィラメント被覆を構成する材料と同じとするか、より好ましくは、金属芯材およびフィラメント被覆を構成する材料の硬さより大きいものとする。多芯ビレット化に際し、中心に金属被覆と同様の材料からなり超電導材料を含まない金属芯材をさらに配置してもよい。この多芯ビレットは静水圧押出しにより、横断面が略円形の多芯フィラメント複合体に成形される。これにより、金属管は多芯フィラメント複合体の最外層を構成する金属被覆となり、後工程の撚線加工、撚線の縮径加工を経てセグメント化されたときの金属被覆(セグメント被覆)となる。
【0063】
J.縮径加工
次いで、工程Iの多芯フィラメント複合体を、押出し、スウェージャーまたは伸線により減面加工し、横断面が略円形で多芯フィラメントを有する素線を作製する。ここで、交流損失低減効果を重視する場合は、この素線の表面に、金属または酸化物等であって後述する超電導化熱処理によって良導体とならない材料を、例えばペースト状にして所定の厚さで塗布してもよい。この層は、線材化したときの各セグメント間の電気的接続を遮断するためのものである。なお、ここで塗布する材料は、塗布することによって潤滑性の向上するものが望ましいが、それに限定されるものではない。以下の工程での説明の便宜上、ここで得られた素線の外径をd0 、長さをL0 とする。
【0064】
K.素線のツイストと撚線加工
工程Jで得られた素線にツイスト加工(ツイスト加工後のフィラメントの螺旋ピッチをP0 とする)を施し、次いで、図12に示すように、そのツイスト加工された素線の2本または3本を、素線のツイスト加工の方向と同一の方向に所定のピッチP1 で螺旋状に撚り合わせる。図において、61は素線、62a,62b,62cは撚線46の進行方向を軸としてその周囲を公転する素線ボビンである。なお、ツイスト加工の直後に伸線または所定の熱処理のいずれか1つを施してから撚り合わせてもよい。
【0065】
また、図13に示すように、別の態様として、素線ボビン63a,63b,63cを素線61の送出し方向を軸に回転させることによって素線をツイスト加工しつつ、素線ボビンを撚線46の進行方向を軸としてその周囲に公転させることで、撚り合わせを行うことも可能である。
【0066】
素線の撚り合わせピッチは、素線が2本の場合、P1 /d0 =1.5〜30、素線が3本の場合は、P1 /d0 =4〜40を満足する範囲とする。通常の撚線で形状を維持するためには、P1 /d0 の上限は約100まで可能である。しかしながら、本発明では、撚線が次の縮径加工を経るので、P1 /d0 が100程度まで大きいと、縮径加工の際に素線がばらけてしまい、加工が困難になる。そこで、撚線に縮径加工を施すことができる上限として、P1 /d0 は、素線が2本の場合30、素線が3本の場合40が選ばれる。一方、P1 /d0 が小さすぎると、撚線加工時に素線が過度の加工歪を受け、金属被覆中のフィラメント組織に乱れや破壊が生じ、そのために最終的に得られた超電導線材において超電導特性の低下を招くおそれがある。しかしながら、撚線加工に先立って素線にツイスト加工を施すことにより、フィラメント組織の乱れや破壊がかなり防止されることがわかった。発明者らの実験の結果、撚線加工によって問題の生じないP1 /d0 の下限が、素線が2本の場合1.5、素線が3本の場合4まで拡大できることがわかった。
【0067】
図10および図17は撚線加工後の状態を示し、図10は2本の例を、図17は3本の例をそれぞれ示しており、46,56はそれぞれ撚線である。図示のとおり、撚線加工後の外径をd1 とすると、d1 は幾何学的に一義に決定し、2本の場合(図10)ではd1 =2d0 、3本の場合(図17)ではd1 =2.31d0 である。また、素線のツイストピッチ(即ちフィラメントの螺旋ピッチ)P0 および素線の撚り合わせピッチP1 の回転方向は、いわゆるS巻またはZ巻のいずれでもよいが、共に同一方向であるよう選択する。回転方向が互いに逆の場合、臨界電流密度特性が低下するからである。
【0068】
L.縮径加工
工程Kで得られた撚線に、ダイスを用いた伸線装置またはスウェージャー等公知の手段によって縮径加工を行なう。この縮径加工は1回でも複数回の繰り返しでもよいが、1回の縮径加工による外径の減少率は2〜20%となるよう、ダイス口径を選定することが好ましい。縮径加工を複数回繰り返すときは、縮径加工の途中で、焼鈍処理や超電導化のための中間熱処理、あるいは前駆体粉末組織の脱ガス処理を施してもよい。中間熱処理を行なうときは、その後の縮径加工は、1回のパスによる外径の減少率は2〜5%とするのが好ましい。
【0069】
縮径加工によって得られる複合線材の外径をdとすると、素線が2本の場合d<1.3d0 、素線が3本の場合d<1.8d0 に達すると、外径が略円形に成形された線材が得られる。この際、縮径加工によって2本または3本の素線はつぶされて横断面が半円形または中心角が略120度の扇形に変形し、略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントを長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体を構成する。さらに、各々の超電導フィラメントは、各々のセグメント内で所定のピッチで螺旋状に配置されているので、結果として、各超電導フィラメントは2次螺旋状に集合している。
【0070】
一方、金属被覆内の超電導フィラメントの横断面形状は、アスペクト比が高い(好ましくは1.5以上の)板状、楕円状に変形させられる。これは、本工程の縮径加工によって、2本または3本の撚線の隣接素線同士と撚線外径d1 の円筒内面で形成される空隙を埋めるように素線材料の一部が円周方向に展性変形するからである。
【0071】
ところで、縮径加工時には、通常、潤滑材、例えば合成油、石油、モリブデン、2硫化モリブデン等が使用される。この潤滑材は、セグメント間の隙間に浸透し残留物となる。通常は、潤滑油を除去するために縮径加工後に拭き取り作業等の洗浄作業を行うが、本発明の第2の実施の形態にかかる超電導線材の製造方法では、交流損失低減効果を重視する場合に限り、この残留潤滑材を残しておくことが好ましい。この残留潤滑材は、適切な材料を選択することによって、後述する超電導加熱処理を経ることによって、各セグメント間の電気的絶縁層を形成するよう変化するからである。したがって、縮径加工中では、潤滑材を豊富に使い、その後、セグメント間の潤滑材除去を目的とする洗浄作業をあえて行わないようにすることが好ましい。
【0072】
なお、空隙のないセグメント集合体とするための条件の他、繰り返しの縮径加工における加工前の撚線ピッチPと外径dの比P/dと加工限界値P2 /dとの関係、外径dと撚ピッチPの関係式(2)、縮径加工後の集合体の総長は、第1の実施の態様の工程Eに示した条件と同様であり、詳細は省略する。
【0073】
M.縮径加工途中のツイスト加工
第1の実施の形態における工程Fと同様であり、詳細は省略する。
【0074】
N.超電導化熱処理
第1の実施の形態における工程Gと同様であり、詳細は省略する。
【0076】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0077】
[実施例1]
組成としてBi2 Sr1 Ca2 Cu2 x (以下Bi−2212という)が得られるようにBi2 3 ,SrCO3 ,Ca2 CO3 ,CuOの各粉末を混合し、これを大気中で820℃、20時間の熱処理を施した後、それを粉砕してBi−2212相の前駆体粉末を用意した。外径15mm、内径13.5mm、長さ500mmの銀合金パイプに前駆体粉末を充填した。この粉末と銀合金の複合体を、対辺寸法7.64mmの6角棒形状にまで伸線加工し、素材Aを得た。
【0078】
この素材Aの55本を、外径71.1mm、内径64mm、長さ500mmの銀合金パイプに組み込み、銀合金被覆酸化物ビレットX(外径71.1mm、長さ500mm、体積Vx=2×106 mm3 )を得た。ビレットXに、押出し加工、スウェージャー加工、伸線加工を施し、外径d0 =1.7mmの銀合金被覆酸化物の丸型素線(素材B)を得た。素材Bは、酸化物ビレットXの体積Vxの歩留まり約80%で作製されるので、体積がVxB =0.8Vxとなっている。したがって、素材Bの長さはL0 =VxB /(πd0 2 /4)≒700000mm=700mである。また、素材Bの被覆材である銀合金の占有率は66%であった。長さ約700mの素線(素材B)を2ロッド作製した。
【0079】
2ロッドの丸型素線(素材B)を用いて、図3に示すように、最外径約2d0 =3.4mmで2本束ね、撚線加工を施しピッチP1 =15mmの撚線を作製した。撚線の体積は2VxB である。
【0080】
上記の撚線に伸線加工を施すと、2本の丸型素線は徐々に潰され、最外径が約半分のds=1.6mmまで縮径されると、図4に示すように、2個の半円形のセグメントが互いに合わさった丸型成形集合体(素材C)となった。この成形集合体は、体積を略維持したまま縮径加工されるので、外径dsにおける線材単長Lsは、Ls=2VxB /(πds2 /4)=1.6×106 mm=1580mである。図4に示すように、素材Cの超電導フィラメントの横断面は、多くがアスペクト比1.5から20くらいの板型、または楕円型となっていることがわかる。また、素材Cの銀合金占有率は、素線(素材B)より若干大きくなり、68%であった。素材CのピッチPsは縮径加工によって伸びるので、Ps=Ls/L0 ×P1 =34mmであった。素材Cは、超電導フィラメントが銀合金で被覆されたセグメントの撚線であるので、各フィラメントはセグメントの撚りピッチPsと同一の螺旋軌道で線材長手方向延びている。
【0081】
素材Cを、1atm ,大気中で880℃、10分間保持後、5℃/時間の冷却速度で830℃まで徐冷し、さらに1時間保持して炉冷した。この熱処理により、素材Cは超電導特性を有する超電導線材に変化した。この超電導線材の一部を長さ約50mmに切断し、試料Cとした。試料Cを液体ヘリウム、外部磁場10T中で、臨界電流密度Jcを1μV/cmの定義で測定した。その結果、超電導フィラメントについてJc=1500A/mm2 、線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jc=480A/mm2 であった。
【0082】
一方、比較のため、素材Bをそのまま圧延し、テープ状の複合素材を得た。この複合素材に、上記と同様の超電導化熱処理を施し、テープ状超電導線材を得た。その一部を切り出し、比較材とした。比較材を試料1と同様に、液体ヘリウム、外部磁場10T中で、臨界電流密度Jcを1μV/cmの定義で測定した。その結果、超電導フィラメントについてJc=1600A/mm2 、線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jc=600A/mm2 であった。
【0083】
試料Cと比較材から明らかなように、本発明による試料1の丸型超電導線材と従来のテープ状超電導線材とは磁場中でのJcが略同等であることがわかった。
【0084】
[実施例2]
実施例1で作製した丸型成形集合体(素材C)を用い、ツイスト加工と縮径加工を繰り返し行なうことで、外径1.6mm以下で、線材の仕様外径dsの異なる8種類の細い素材を作製し、それぞれ素材E,素材F,素材G,素材H,素材I,素材J,素材K,素材Lとした。実施例1における素材C,および実施例1における素材Cにさらに所定のツイスト加工のみを施した素材D,ならびに素材E〜Lについて、仕様外径ds、単長L、仕様ピッチPs、仕様外径と仕様ピッチの比P/d(ピッチ比という)を表1に示す。また、各素材の作製工程を表2に示す。
【0085】
【表1】
Figure 0003775091
【0086】
【表2】
Figure 0003775091
【0087】
丸型成形撚線は、ピッチ比P/dが20以上大きくなると、撚りがほどけてしまう。しかも、減面加工(伸線加工)の工程を繰り返すほど、P/dは大きくなる。表1の例では、素材C、素材GのP/dが20程度と大きいため、ツイスト加工によりピッチ比P/dを小さくした後に、さらなる減面加工(伸線加工)を施すことで、仕様外径dsの素材を得ている(素材D、素材G)。また、各素材の単長Lは、仕様外径dsが小さくなるほど長くなっており、略L×ds2 =一定、かつ、Ps×ds2 =一定の関係が成立している。つまり、これらの式の関係を利用しつつ、加工条件を選定してツイスト加工と縮径加工を繰り返すことで、任意の外径とピッチを有する超電導線材を作製することが可能であることがわかった。
【0088】
各素材C〜Lに、超電導化熱処理を施して超電導線材を得た。各線材の一部を長さ約50mmに切断し、それぞれ、試料C〜Lとした。各試料について、実施例1と同様の方法で線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jcを測定した。その結果を表1中に示す。overall−Jcは、比較材のテープ材のそれ(600A/mm2 )と略同等の値を示していることがわかる。
【0089】
なお、前述したように、伸線加工とツイスト加工では、線材端部が超電導線材として使用できないので、各線材の有効な単長は表1に示した長さの80%程度である。
【0090】
[実施例3]
実施例1で作製した丸型素線(素材B、単長L0 =705m、外径1.7mm)を3ロッド用意した。その3ロッドを用いて、図5に示すように、最外径d1 が約2.3d0 =3.91mmで3本束ね、撚線加工を施しピッチP1 =36mmの撚線を作製した。撚線の体積は3VxB である。
【0091】
上記の撚線に伸線加工を施すと、3本の丸型素線は徐々に潰され、最外径がds=2.4mmまで縮径されると、図6に示すように、3個の中心角が略120度の扇形のセグメントが互いに合わさった丸型成形集合体(素材M)となった。この成形集合体は、体積を略維持したまま縮径加工されるので、外径dsにおける線材単長LsはLs=3VxB /(πds2 /4)=1.0×106 mm=1000mである。図6に示すように、素材Mの超電導フィラメントの横断面は、多くがアスペクト比2から20くらいの板型、または楕円型となっていることがわかる。また、素材Mの銀合金占有率は、素線(素材B)より若干大きくなり、68%であった。素材MのピッチPsは縮径加工によって伸びるので、Ps=Ls/L0 ×P1 =54.2mmであった。素材Mは、超電導フィラメントが銀合金で被覆されたセグメントの撚線であるので、各フィラメントはセグメントの撚りピッチPsと同一の螺旋軌道で線材長手方向延びている。
【0092】
この素材Mに超電導化熱処理を施し、超電導線材を得た。この超電導線材の一部を長さ約50mmに切断し、試料Mとした。試料Mを実施例1と同様の測定方法で線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jcを測定した。その結果、overall−Jc=500A/mm2 であり、テープ状の線材のそれと略同等であった。
【0093】
[実施例4]
組成としてBi1.8 Pb0.34Sr1.9 Ca2.2 Cu3.1 x (以下Bi−2223という)の前駆体粉末を用意した。外径15mm、内径13.5mm、長さ500mmの銀合金パイプに前駆体粉末を充填した。この粉末と銀合金の複合体を、対辺寸法7.64mmの6角棒形状にまで伸線加工し、素材Nを得た。
【0094】
この素材Nの55本を、外径71.1mm、内径64mm、長さ500mmの銀合金パイプに組み込み、銀合金被覆酸化物ビレットY(外径71.1mm、長さ500mm、体積Vx=2×106 mm3 )を得た。ビレットYに、押出し加工、スウェージャー加工、伸線加工を施し、外径d0 =1.4mmの銀合金被覆酸化物の丸型素線(素材P)を得た。素材Pは、酸化物ビレットYの体積Vyの歩留まり約80%で作製されるので、体積がVyp=0.8Vyとなっている。したがって、素材Pの長さはL0 =Vyp/(πd0 2 /4)≒1000000mm=1000mである。また、素材Bの被覆材である銀合金の占有率は66%であった。長さ約1000mの素線(素材P)を3ロッド作製した。
【0095】
3ロッドの丸型素線(素材P)を用いて、図5と同様に、最外径約2.3d0 =3.2mmで3本束ね、撚線加工を施しピッチP1 =12mmの撚線を作製した。撚線の体積は3Vypである。
【0096】
上記の撚線に伸線加工を施すと、3本の丸型素線は徐々に潰される。本実施例では、伸線のパスは、外径3.2mmから始まり、2.8mm、2.6mm、2.45mmと順じ伸線し、外径2.45mmで、成形集合体に超電導化のための中間熱処理を施した。熱処理条件は、1atm 、空気中で840℃、50時間とした。この中間熱処理は、フィラメントの前駆体組織をBi−2223相へ超電導化するためのものである。次いで、1回のパスの最外径dの減少率を4%とし、伸線加工を経て、最外径を2.35mmとした後、第2回目の中間熱処理を施した。熱処理条件は、1atm 、空気中で845℃、50時間とした。その後、それに伸線加工を施し、最外径を2.3mmの成形集合体(素材Q)とした。この素材Qは、空隙率が略0%の3本撚りの丸型成形集合体で、最外径2.3mm、単長1100m、ピッチ13mmであり、その断面構造は、図6と同様であった。
【0097】
次いで、素材Qに酸化物Bi−2223相生成のための最後の超電導化熱処理を施し、丸型超電導線材を得た。
【0098】
一方、比較材として、素線(素材P)を用いて、圧延加工、中間熱処理、再圧延加工、第2回目の中間熱処理、再々圧延加工を施し、厚さ0.2mmのテープ状素材(素材R)とし、次いで最後の超電導加熱処理を施し、テープ状の超電導線材を得た。ここで、素材Q,素材Rの中間熱処理と最終熱処理は、ともに同一のバッチで行なった。両線材の一部を長さ約50mm切断し、それぞれ試料Q、比較材Rとした。液体窒素中、外部磁場無しの状態で、線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jcを1μV/cmの定義で測定した。試料Qでoverall−Jc=80A/mm2 であり、比較材Rでoverall−Jc=100A/mm2 であった。テープ状の線材のJcが丸型線材のそれよりやや高いが、略同等と評価できる特性であった。
【0099】
[実施例5]
組成としてBi−2212が得られるようにBi2 3 ,SrCO3 ,Ca2 CO3 ,CuOの各粉末を混合し、これを大気中で820℃、20時間の熱処理を施した後、それを粉砕してBi−2212相の前駆体粉末を用意した。外径15mm、内径14mm、長さ500mmの銀合金パイプと、外径3mmの銀合金丸棒を用意した。銀合金丸棒を中心に配置して銀合金パイプに前駆体粉末を充填した。この粉末と銀合金の複合体を、外径12.3mmの丸線に伸線加工し、素材Sを得た。
【0100】
この素材Sの19本を、外径71.1mm、内径64mm、長さ500mmの銀合金パイプに組み込み、銀合金被覆酸化物ビレットZ(外径71.1mm、長さ500mm、体積Vx=2×106 mm3 )を得た。ビレットZに、押出し加工、スウェージャー加工、伸線加工を施し、外径d0 =1.7mmの銀合金被覆酸化物の丸型素線(素材T)を得た。素材Tは、酸化物ビレットZの体積Vzの歩留まり約80%で作製されるので、体積がVzT =0.8Vzとなっている。したがって、素材Tの長さはL0 =VzT /(πd0 2 /4)≒700000mm=700mである。また、素材Tの被覆材である銀合金の占有率は71%であった。長さ約700mの素線(素材T)を3ロッド作製した。
【0101】
3ロッドの丸型素線(素材T)を用いて、図7に示すように、最外径d1 が約2.3d0 =3.9mmで3本束ね、撚線加工を施しピッチP1 =12mmの撚線を作製した。撚線の体積は3VzT である。
【0102】
上記の撚線に伸線加工を施すと、3本の丸型素線は徐々に潰され、最外径がds=2.4mmまで縮径されると、図8に示すように、3個の中心角が略120度の扇形のセグメントが互いに合わさった丸型成形集合体(素材U)となった。この成形集合体は、体積を略維持したまま縮径加工されるので、外径dsにおけ
線材単長LsはLs=3VzT /(πds2 /4)=1.0×106 mm=1000mである。図8に示すように、素材Uの超電導フィラメントの横断面は、中心に配置された銀合金とともに多くがアスペクト比2から20くらいの板型、または楕円型となっていることがわかる。また、素材Uの銀合金占有率は、素線(素材T)より若干大きくなり、73%であった。素材UのピッチPsは縮径加工によって伸びるので、Ps=Ls/L0 ×P1 =54.2mmであった。素材Uは、超電導フィラメントが銀合金で被覆されたセグメントの撚線であるので、各フィラメントはセグメントの撚りピッチPsと同一の螺旋軌道で線材長手方向延びている。
【0103】
この素材Uに超電導化熱処理を施し、超電導線材を得た。この超電導線材の一部を長さ約50mmに切断し、試料Uとした。試料Uを実施例1と同様の測定方法で線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jcを測定した。その結果、overall−Jc=1100A/mm2 であった。
【0104】
比較のため、素材Tをそのまま圧延し、テープ状の複合素材を得た。この複合素材に、上記と同様の超電導化熱処理を施し、テープ状超電導線材を得た。その一部を切り出し、比較材とした。比較材を試料Uと同様の条件で、臨界電流密度Jcを1μV/cmの定義で測定した。その結果、線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jc=1000A/mm2 であった。
【0105】
この実施例では、各フィラメントの中心には銀合金が配置されているため、縮径加工と同時に起こるフィラメントの円形断面から矩形または楕円形への変形挙動が安定して超電導特性の向上に寄与したことから、比較材のテープ状線材よりJcが向上したと推定される。
【0106】
次に、本発明の第2の実施の形態に従い得られる超電導線材の例を、以下説明する。
【0107】
[実施例6]
組成としてBi−2212が得られるようにBi2 3 ,SrCO3 ,Ca2 CO3 ,CuOの各粉末を混合し、これを大気中で820℃、20時間の熱処理を施した後、それを粉砕してBi−2212相の前駆体粉末を用意した。外径15mm、内径13.5mm、長さ500mmの銀合金パイプに前駆体粉末を充填した。この粉末と銀合金の複合体を、対辺寸法7.64mmの6角棒形状にまで伸線加工し、素材AAを得た。
【0108】
この素材AAの55本を、外径71.1mm、内径64mm、長さ500mmの銀合金パイプに組み込み、銀合金被覆酸化物ビレットXX(外径71.1mm、長さ500mm、体積Vx=2×106 mm3 )を得た。ビレットXXに、押出し加工、スウェージャー加工、伸線加工を施し、外径d0 =1.7mmの銀合金被覆酸化物の丸型素線(素材BB)を得た。素材BBは、酸化物ビレットXの体積Vxの歩留まり約80%で作製されるので、体積がVxBB=0.8Vxとなっている。したがって、素材Bの長さはL0 =VxBB/(πd0 2 /4)≒700000mm=700mである。また、素材BBの被覆材である銀合金の占有率は66%であった。長さ約700mの素線を2ロッド作製した(素材BB)。この素線にS方向のツイスト加工を施し、表面のピッチがP0 =7.5mmとなるようにした。
【0109】
2ロッドのツイスト素線を用いて、図10に示すように、最外径約2d0 =3.4mmで2本束ね、撚線加工を施しピッチP1 =15mmの撚線を作製した。撚線の体積は2VxBBである。
【0110】
上記の撚線に伸線加工を施すと、2本の丸型素線は徐々に潰され、最外径が約半分のds=1.6mmまで縮径されると、図11に示すように、2個の半円形のセグメントが互いに合わさった丸型成形集合体(素材CC)となった。この成形集合体は、体積を略維持したまま縮径加工されるので、外径dsにおける線材単長Lsは、Ls=2VxBB/(πds2 /4)=1.6×106 mm=1580mである。図4に示すように、素材Cの超電導フィラメントの横断面は、多くがアスペクト比1.5から20くらいの板型、または楕円型となっていることがわかる。また、素材CCの銀合金占有率は、素線(素材BB)より若干大きくなり、68%であった。
【0111】
素材CCは、超電導フィラメントが銀合金で被覆されたセグメント撚線であって、さらに各セグメント内で超電導フィラメントが螺旋状に配置されている、2次螺旋配置構造である。
【0112】
セグメント内のフィラメントの螺旋ピッチを1次ピッチPs1 、セグメン撚線の螺旋のピッチをPs2 とすると、両ピッチは縮径加工によって伸びるので、Ps1 =Ls/L0 ×P0 =17mm、Ps2 =Ls/L0 ×P1 =34mmであった。セグメント横断面における各超電導フィラメントの位置は、撚線長手方向の場所によって内層部と外層部で周期的に入れ替わるよう変化する。
【0113】
撚線の縮径加工時には、横断面における外層部と内層部で加工変形度は異なり、外層部に行くほど加工度は大きい。この例では、超電導フィラメントは長手方向で内層部と外層部を周期的に延びるので、縮径加工による変形は、フィラメント長手方向全体として均一に起こるとみなすことができる。
【0114】
素材CCを、1atm ,大気中で880℃、10分間保持後、5℃/時間の冷却速度で830℃まで徐冷し、さらに1時間保持して炉冷した。この熱処理により、素材CCは超電導特性を有する超電導線材に変化した。この超電導線材の一部を長さ約50mmに切断し、試料CCとした。試料CCを液体ヘリウム、外部磁場10T中で、臨界電流密度Jcを1μV/cmの定義で測定した。その結果、超電導フィラメントについてJc=2500A/mm2 、線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jc=800A/mm2 であった。
【0115】
一方、比較のため、素材BBをそのまま圧延し、テープ状の複合素材を得た。この複合素材に、上記と同様の超電導化熱処理を施し、テープ状超電導線材を得た。その一部を切り出し、比較材とした。比較材を試料CCと同様に、液体ヘリウム、外部磁場10T中で、臨界電流密度Jcを1μV/cmの定義で測定した。その結果、超電導フィラメントについてJc=1600A/mm2 、線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jc=600A/mm2 であった。
【0116】
試料CCと比較材から明らかなように、本発明による試料CCの丸型超電導線材は、従来のテープ状超電導線材よりも磁場中でのJcが大きく向上しているあることがわかった。
【0117】
[実施例7]
実施例6で作製した丸型素線(素材BB、単長L0 =705m、外径1.7mm)に、ピッチP0 =7.5mmにてZ方向のツイスト加工を施し、その3本を束ねて図12に示すようにピッチP1 =36mmでZ方向に撚り合わせた。撚線の最外径d1 は約2.3d0 =3.39mmであり、体積は3VxBBである。
【0118】
上記の撚線に伸線加工を施すと、3本の丸型素線は徐々に潰され、最外径がds=2.4mmまで縮径されると、図14に示すように、3個の中心角が略120度の扇形のセグメントが互いに合わさった丸型成形集合体(素材EE)となった。この成形集合体は、体積を略維持したまま縮径加工されるので、外径dsにおける線材単長LsはLs=3VxBB/(πds2 /4)=1.0×106 mm=1000mである。図14に示すように、素材EEの超電導フィラメントの横断面は、多くがアスペクト比2から20くらいの板型、または楕円型となっていることがわかる。
【0119】
素材EEは、実施例6と同様に、超電導フィラメントが銀合金で被覆されたセグメント撚線であって、さらに各セグメント内で超電導フィラメントが螺旋状に配置されている、2次螺旋配置構造である。
【0120】
セグメント内のフィラメントの螺旋ピッチ(1次ピッチ)は、Ps1 =Ls/L0 ×P0 =10.6mm、セグメン撚線の螺旋のピッチ(2次ピッチ)Ps2 =Ls/L0 ×P1 =51mmであった。実施例6と同様にして、セグメント横断面における各超電導フィラメントの位置は、撚線長手方向の場所によって内層部と外層部で周期的に入れ替わるよう変化する。
【0121】
この素材EEに超電導化熱処理を施し、超電導線材を得た。この超電導線材の一部を長さ約50mmに切断し、試料Mとした。試料EEを実施例6と同様の測定方法で線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jcを測定した。その結果、overall−Jc=700A/mm2 であり、テープ状の線材のそれを超える値であった。
【0122】
[実施例8]
実施例6で作製した丸型素線(素材BB、単長L0 =705m、外径1.7mm)の表面に2硫化モリブデン粉末を含むペーストを約30μmの厚さに塗布した。この2硫化モリブデンを含む層を塗布により形成する目的は、第1には、その後の縮径加工の際の潤滑性を確保するためであり、第2には、素線間に電気的絶縁層(薄い膜)を設けるためである。
【0123】
このような素線を3本を束ねて、図13に示すように、ピッチP1 =36mmでS方向に撚り合わせた。図13の態様においては、素線のツイスト加工と3本の撚線加工を同時に行うので、あらかじめ素線をツイスト加工する必要がなくなる。撚線の最外径d1 は約2.3d0 =3.39mmであり、体積は3VxBBである。
【0124】
上記の撚線に伸線加工を施すと、3本の丸型素線は徐々に潰され、最外径がds=2.4mmまで縮径されると、図15に示すように、3個の中心角が略120度の扇形のセグメントが互いに合わさり、かつセグメント間に2硫化モリブデンを主成分とするバリアー層が介在した丸型成形集合体(素材FF)となった。セグメントは、このバリアー層によって、相互に電気的に絶縁されている。
【0125】
先に説明したように、従来は潤滑材を十分に除去してから次の超電導化熱処理を行う。しかし、この例では、あえて2硫化モリブデンは残留させたまま超電導化熱処理を行った。この熱処理により、2硫化モリブデンは酸化モリブデンに変化し、電気的絶縁層、すなわちバリアー層としての機能が保証される。
【0126】
この素材FFに超電導化熱処理を施し、超電導線材を得た。この超電導線材の一部を長さ約50mmに切断し、試料FFとした。試料FFを実施例6と同様の測定方法で線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jcを測定した。その結果、overall−Jc=700A/mm2 であり、テープ状の線材のそれを超える値であった。また、超電導特性は、バリアー層を有しない試料EEと同等であることも確認した。
【0127】
この例では、バリアー層を交流損失低減のために設けているが、その効果を確かめるために、実施例7で作製した試料EE、従来のテープ状の線材、および試料FFの交流損失特性を比較した。評価は、各試料を液体窒素中のゼロ磁場下に置き、交流通電損失を測定する方法で行った。試料に、直流臨界電流値の半分の実効値電流を50Hzの交流で通電し、その時の損失電圧を測定した。結果は、電圧タップ100mmで、従来のテープ状線材が10μV、試料EEが1μV、試料FFが0.3μVであった。試料EE、試料FFでは、超電導フィラメントがインダクタンス的に等価に配置されているため、テープ状線材よりも交流損失が小さく、特に試料FFではセグメント間の電気的絶縁が確保されたことによって、さらに交流損失が小さくなったと考えられる。
【0128】
[実施例9]
組成としてBi−2223の前駆体粉末を用意した。外径15mm、内径13.5mm、長さ500mmの銀合金パイプに前駆体粉末を充填した。この粉末と銀合金の複合体を、対辺寸法7.64mmの6角棒形状にまで伸線加工し、素材NNを得た。
【0129】
この素材NNの表面にペースト状のモリブデンを塗布し塗膜を形成した後、その55本を、外径71.1mm、内径64mm、長さ500mmの銀合金パイプに組み込み、銀合金被覆酸化物ビレットYYを得た。ビレットYYに、押出し加工、スウェージャー加工、伸線加工を施し、外径d0 =1.4mmの銀合金被覆酸化物の丸型素線(素材PP)とし、さらに、長さあたり333回転(ピッチP0 =3mm)のS方向のツイスト加工を施した。このツイスト加工した素材を3本用意し、最外径約2.3d0 =3.2mmで3本束ね、S方向の撚線加工を施しピッチP1 =12mmの撚線を作製した。
【0130】
上記の撚線に伸線加工を施すと、3本の丸型素線は徐々に潰される。本実施例では、伸線のパスは、外径3.2mmから始まり、2.8mm、2.6mm、2.45mmと順次伸線し、外径2.45mmで、成形集合体に超電導化のための中間熱処理を施した。熱処理条件は、1atm 、空気中で840℃、50時間とした。この第1回目の中間熱処理は、フィラメントの前駆体組織をBi−2223相へ超電導化するためのものである。この熱処理によって、モリブデンの塗布膜は酸化モリブデンの電気的絶縁層に変化し、フィラメント間のバリアー層として機能する。
【0131】
次いで、1回のパスの最外径dの減少率を4%とし、伸線加工を経て、最外径を2.35mmとした後、第2回目の中間熱処理を施した。熱処理条件は、1atm 、空気中で845℃、50時間とした。その後、それに伸線加工を施し、最外径を2.3mmの成形集合体(素材QQ)とした。この素材QQは、空隙率が略0%の3本撚りの丸型成形集合体で、最外径2.3mm、単長1100mである。セグメント内における超電導フィラメントの螺旋ピッチ(1次ピッチ)Ps1 =Ls/L0 ×P0 =1100/1000×3=3.3mm、セグメントの螺旋のピッチ(2次ピッチ)Ps2 =Ls/L0 ×P1 =1100/1000×12=13.2mmであった。
【0132】
次いで、素材QQに酸化物Bi−2223相生成のための最後の超電導化熱処理を施し、丸型超電導線材を得た。
【0133】
一方、比較材として、素線(素材PP)を用いて、圧延加工、中間熱処理、再圧延加工、第2回目の中間熱処理、再々圧延加工を施し、厚さ0.2mmのテープ状素材(素材RR)とし、次いで最後の超電導加熱処理を施し、テープ状の超電導線材を得た。ここで、素材QQ,素材RRの中間熱処理と最終熱処理は、ともに同一のバッチで行なった。両線材の一部を長さ約200mm切断し、それぞれ試料QQ、比較材RRとした。液体窒素中、外部磁場無しの状態で、線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jcを1μV/cmの定義で測定した。試料QQでoverall−Jc=100A/mm2 であり、比較材Rでoverall−Jc=120A/mm2 であった。酸化物バリアー層を含まないテープ状の線材に比べ若干低いJc特性であった。
【0134】
[実施例10]
組成としてBi−2212が得られるようにBi2 3 ,SrCO3 ,Ca2 CO3 ,CuOの各粉末を混合し、これを大気中で820℃、20時間の熱処理を施した後、それを粉砕してBi−2212相の前駆体粉末を用意した。外径15mm、内径14mm、長さ500mmの純銀パイプと、外径3mmの純銀丸棒を用意した。純銀丸棒を中心に配置して銀合金パイプに前駆体粉末を充填した。この粉末と純銀および銀合金の複合体を、外径12.3mmの丸線に伸線加工し、素材SSを得た。
【0135】
この素材SSの19本を、外径71.1mm、内径64mm、長さ500mmの銀合金パイプ(合金組成:Ag−0.05wt%Mg−0.05wt%Ni)に組み込み、銀合金被覆酸化物ビレットZZを得た。ビレットZZに、押出し加工、スウェージャー加工、伸線加工を施し、外径d0 =1.7mmの銀合金被覆酸化物の丸型素線(素材TT)を得た。素材TTを3本用意し、それにピッチP0 =3mmのZ方向のツイスト加工を施した。
【0136】
ツイスト加工された3本のロッドを用いて、図17に示すように、最外径d1 が約2.3d0 =3.2mmで3本束ね、Z方向の撚線加工を施し、ピッチP1 =12mmの撚線を作製した。
【0137】
上記の撚線に伸線加工を施すと、3本の丸型素線は徐々に潰され、最外径がds=2.4mmまで縮径されると、図18に示すように、3個の中心角が略12
度の扇形のセグメントが互いに合わさった丸型成形集合体(素材UU)となった。図18に示すように、素材UUの超電導フィラメントの横断面は、中心に配置された純銀の金属芯材とともに多くがアスペクト比2から20くらいの板型、または楕円型となっていることがわかる。また、フィラメントの経路は、セグメントの撚り方向と同一でかつセグメント内で螺旋状に延びる2次螺旋状であり、長手方向に見てインダクタンス的に等価な配置となっている。
【0138】
この素材UUに超電導化熱処理を施し、超電導線材を得た。この超電導線材の一部を切断し、試料UUとした。試料Uを実施例6と同様の測定方法で線材断面積で除した臨界電流密度overall−Jcを測定した。その結果、overall−Jc=1000A/mm2 であった。
【0139】
この実施例では、各フィラメントの中心に配置される金属芯材とフィラメント被覆には純銀が、セグメント被覆には銀合金(合金組成:Ag−0.05wt%Mg−0.05wt%Ni)が使用されている。このため、セグメント被覆は、超電導化熱処理を経ることにより酸化分散型銀合金となり、その内側に使用されるフィラメント被覆および金属芯材よりも降伏応力、ビッカース硬さがともに大きな材料となる。したがって、縮径加工と同時に起こるフィラメントの円形断面から矩形または楕円形への変形挙動が安定して、線材長手方向のばらつきを抑制し、超電導特性の向上に寄与するものである。
【0140】
本発明の超電導線材は、それ自体導体として、あるいはその複数本の集合化した導体として用いる場合の他、それらを他の部材と複合化した構成にしてもよい。その応用例としては、マグネット、コイル、ケーブル、ブスバー、電流リード、磁気シールド、永久電流スイッチ等の超電導デバイスがあげられる。さらに、前記の応用として使用する場合、その作製法はReact&Wind法あるいはWind&React法のいずれであってもよい。
【0141】
また、セグメント間にバリアー層を有する超電導線材においては、そのまま3相一括の電力ケーブルとして使用することが可能である。
【0142】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、横断面が略円形の外形を有する超電導線材であって、超電導線材は、かつその横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本を長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合した集合体からなり、セグメントは、超電導フィラメントの少なくとも1本と、当該超電導フィラメントを覆う金属被覆からなる超電導線材であるので、横断面が略円形の超電導線材においても横断面がテープ状の超電導線材と同等の臨界電流密度を達成できる。しかも、本発明の製造方法によれば、製造工程が少なく製造コストを低減できる。
【0143】
また、超電導フィラメントをセグメント内でセグメントの撚り合わせ方向と同一方向に螺旋状に配置したときには、フィラメント経路は2次螺旋配置となり、各フィラメントについて、均一な緻密化が達成されるとともに、線材長手方向でインダクタンス的に等価にでき、交流通電損失を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超電導線材の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図2】図1の製造工程における好ましい加工条件の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る超電導線材の製造工程における、撚線加工後の状態を示す説明図である。
【図4】図3の撚線より得られる超電導線材の一例を示す横断面図である。
【図5】本発明に係る別の超電導線材の製造工程における、撚線加工後の状態を示す説明図である。
【図6】図5の撚線より得られる別の超電導線材の例を示す横断面図である。
【図7】本発明に係るさらに別の超電導線材の製造工程における、撚線加工後の状態を示す説明図である。
【図8】図7の撚線より得られるさらに別の超電導線材の例を示す横断面図である。
【図9】本発明に係る別の超電導線材の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係る別の超電導線材の製造工程における、撚線加工後の状態を示す説明図である。
【図11】図10の撚線より得られる超電導線材の一例を示す横断面図である。
【図12】撚線方法の一例を示す説明図である。
【図13】撚線方法の他の例を示す説明図である。
【図14】本発明に係る別の超電導線材の他の例を示す横断面図である。
【図15】本発明に係る別の超電導線材のさらに他の例を示す横断面図である。
【図16】本発明に係る別の超電導線材のさらに他の例を示す横断面図である。
【図17】本発明に係る別の超電導線材の製造工程における、撚線加工後の状態を示す説明図である。
【図18】図17の撚線より得られるさらに別の超電導線材の例を示す横断面図である。
【図19】従来の超電導線材の製造方法を示すフローチャートである。
【図20】従来の超電導線材の例を示す横断面図である。
【図21】従来の超電導線材の別の例を示す横断面図である。
【図22】従来の超電導線材のさらに別の例を示す横断面図である。
【図23】従来の超電導線材のさらに別の例を示す横断面図である。
【符号の説明】
1,21,41,51 超電導体フィラメント
2,22,42,52 金属被覆
6,16,26,46,56 撚線
8a,8b,10a,10b,10c,12a,12b,12c,28a,28b,28c,30a,30b,30c,32a,32b,32c,34a,34b,34c,36a,36b,36c セグメント
9,11,13,29,31,33,35,37 集合体
14,53 金属芯材
44 バリアー層

Claims (16)

  1. 横断面が略円形の外形を有する超電導線材であって、前記超電導線材は、その横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合された集合体からなり、前記セグメントは酸化物超電導体からなる超電導フィラメントと当該超電導フィラメントを覆う金属被覆とからなり横断面が略円形の素線を螺旋状に撚り合せて縮径加工したものであり、前記超電導フィラメントは横断面のアスペクト比が1.5以上であることを特徴とする超電導線材。
  2. 前記超電導フィラメントのアスペクト比が20以下であることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材。
  3. 横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本が長手方向に所定ピッチで螺旋状に集合された集合体からなる超電導線材の製造方法であって、酸化物超電導材料からなる超電導フィラメントが金属で被覆された横断面が略円形の素線n本(n=2、3)を所定のピッチで螺旋状に撚り合わせ、次いで当該撚線を所定の外径を有する横断面が略円形の線材に縮径加工して前記超電導フィラメントをアスペクト比が1.5以上の横断面にすることを特徴とする超電導線材の製造方法。ここで、素線外径をd、縮径加工前の撚線ピッチをP、縮径加工後の線材外径をdとすると、
    n=2の場合、P/d=3〜30、d<1.2d
    n=3の場合、P/d=8〜40、d<1.7d
    である。
  4. 前記縮径加工が複数回の縮径加工の繰り返しからなり、当該繰り返しの途中で、撚線に撚りが締まる方向にツイスト加工を施すことを特徴とする請求項3に記載の超電導線材の製造方法。
  5. 前記縮径加工が、口径の異なる複数のダイスによる引き抜き加工であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の超電導線材の製造方法。
  6. 前記ツイスト加工が、ツイスト加工後の撚線ピッチをP3 、前記素線外径をd0 とすると、
    n=2の場合、P3 /d0 >3、
    n=3の場合、P3 /d0 >5
    であることを特徴とする請求項に記載の超電導線材の製造方法。
  7. 前記線材における超電導フィラメントのアスペクト比が20以下であることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の超電導線材の製造方法。
  8. 前記縮径加工が複数回の縮径加工と中間熱処理の繰り返しからなること特徴とする請求項3に記載の超電導線材の製造方法。
  9. 横断面が略円形の外形を有する超電導線材であって、前記超電導線材は、その横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本を長手方向に所定のピッチで螺旋状に集合された集合体からなり、前記セグメントは酸化物超電導材料からなる超電導フィラメントと当該超電導フィラメントを覆う金属被覆とからなり横断面が略円形の素線を螺旋状に撚り合せて縮径加工したものであり、前記超電導フィラメントは当該セグメント内でセグメントの螺旋と同一方向に所定のピッチで螺旋状に配置され、横断面のアスペクト比が1.5以上であることを特徴とする超電導線材
  10. 前記セグメントが、各々の間に電気的絶縁層が設けられて密着配置されていることを特徴とする請求項9に記載の超電導線材。
  11. 前記セグメントは、超電導フィラメントの中心に配置される金属芯材とフィラメントの周囲を覆う金属被覆と、最外層の金属被覆を含み、前記金属芯材及びフィラメントを覆う金属被覆の硬さが、最外層の金属被覆の硬さよりも小さいことを特徴とする請求項に記載の超電導線材。
  12. 横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本が長手方向に所定ピッチで螺旋状に集合された集合体からなる超電導線材の製造方法であって、酸化物超電導材料からなる超電導フィラメントが金属で被覆された横断面が略円形の素線に所定のピッチPでツイスト加工を施し、そのツイスト加工された素線n本(n=2、3)を所定のピッチで螺旋状に撚り合わせ、次いで当該撚線を所定の外径を有する横断面が略円形の線材に縮径加工して前記超電導フィラメントをアスペクト比が1.5以上の横断面にすることを特徴とする超電導線材の製造方法。ここで、素線外径をd、縮径加工前の撚線ピッチをP、縮径加工後の線材外径をdとすると、
    n=2の場合、P/d=3〜30、d<1.2d
    n=3の場合、P/d=8〜40、d<1.7d
    であり、ピッチPとピッチPの螺旋の方向は同一とする。
  13. 横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本が長手方向に所定ピッチで螺旋状に集合された集合体からなる超電導線材の製造方法であって、酸化物超電導材料からなる超電導フィラメントが金属で被覆された横断面が略円形の素線に所定のピッチPでツイスト加工を施し、次いで、伸線加工工程と熱処理工程のうちいずれか1工程を施し、その後、その素線n本(n=2、3)を所定のピッチで螺旋状に撚り合わせ、次いで当該撚線を所定の外径を有する横断面が略円形の線材に縮径加工して前記超電導フィラメントをアスペクト比が1.5以上の横断面にすることを特徴とする超電導線材の製造方法。ここで、素線外径をd、縮径加工前の撚線ピッチをP、縮径加工後の線材外径をdとすると、
    n=2の場合、P/d=1.5〜30、d<1.3d
    n=3の場合、P/d=4〜40、d<1.8d
    であり、ピッチPとピッチPの螺旋の方向は同一とする。
  14. 横断面が略半円形または中心角が略120度である扇形のセグメントの2本または3本が長手方向に所定ピッチで螺旋状に集合された集合体からなる超電導線材の製造方法であって、酸化物超電導材料からなる超電導フィラメントが金属で被覆された横断面が略円形の素線に所定のピッチPでツイスト加工を施し、次いで、その素線n本(n=2、3)を各々の素線間に潤滑材層を介在させつつ所定のピッチで螺旋状に撚り合わせ、次いで当該撚線を所定の外径を有する横断面が略円形の線材に縮径加工して前記超電導フィラメントをアスペクト比が1.5以上の横断面にすることを特徴とする超電導線材の製造方法。ここで、素線外径をd、縮径加工前の撚線ピッチをP、縮径加工後の線材外径をdとすると、
    n=2の場合、P/d=1.5〜30、d<1.3d
    n=3の場合、P/d=4〜40、d<1.8d
    であり、ピッチPとピッチPの螺旋の方向は同一とする。
  15. 前記潤滑材層を、超電導化熱処理によって電気絶縁性を発現する材料で構成したことを特徴とする請求項14に記載の超電導線材の製造方法。
  16. 前記縮径加工が複数回の縮径加工と中間熱処理の繰り返しからなること特徴とする請求項12、13または14のいずれかに記載の超電導線材の製造方法。
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