JP3773868B2 - 電子写真感光体及びこれを用いる電子写真方法、電子写真装置、電子写真装置用プロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、高感度・高解像度でかつ高耐久な電子写真感光体に関する。また、特定の構成の表面層を設けてなる感光体を使用した電子写真方法、電子写真装置、電子写真用プロセスカートリッジに関する。
【0003】
【従来の技術】
【0004】
電子写真方法としては、カールソンプロセスやその種々の変形プロセスなどが知られており、複写機やプリンターなどに広く使用されている。この様な電子写真方法に用いられる感光体の中でも、有機系の感光材料を用いたものが、安価、大量生産性、無公害性などをメリットとして、近年使用され始めている。有機系の電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダーに代表される顔料分散型、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られており、特に機能分離型の感光体が注目されている。
【0005】
この機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後光照射すると、光は透明な電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され、光を吸収した電荷発生物質は電荷担体を発生し、この電荷担体は電荷輸送層に注入され、帯電によって生じている電界にしたがって電荷輸送層中を移動し、感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。機能分離型感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視部に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いることが知られており、かつ有用である。
【0006】
近年では、感光体の小径化、マシンおよび感光体の高耐久化(高寿命化)が要求されるようになってきた。上述のように、有機感光体は精力的な材料の開発により、高感度および静電的な高耐久化は確実に進んできた。ところが、機械的な耐久性、特に耐摩耗性に関しては必ずしも十分とは言えないのが現在の実力である。この点に鑑み、有機感光体の表面に機械的耐久性向上の機能を有する感光体の提案がなされてきた。その多くは、感光体最表層に用いるバインダー樹脂種の検討であるが、必ずしも満足のいくものではなかった。
【0007】
もう一つの考え方として、感光体の最表面に保護層を用いようという考え方も存在する。感光体の表面層としての保護層の検討は、無機系感光体で始まり、例えば、特公平2−3171号公報、特公平2−7058号公報、特公平3−43618号公報などに記載されている。このように無機感光体の表面に保護層が設けられた場合には、保護層には比較的抵抗の低いフィラーが良好に用いられた。このため、感光体が帯電される際、感光体表面に帯電されるというより、むしろ保護層バルクもしくは保護層/無機感光層界面に帯電される場合が多かった。確かに、潜像が感光体表面でなく、保護層内部(無機感光層との界面を含む)に形成された場合、感光体表面の形状(キズ等)の影響は少なくなるというメリットが見いだされた。しかしながら、表面層に保護層としての機能を持たせようとした場合、表面層中に添加するフィラーとしての導電性金属酸化物を多量に添加する必要がある。この場合、材料の選択により表面層の透明性を確保したとしても、表面層のバルクもしくは表面抵抗が低くなってしまうため、繰り返し使用時に画像ボケという欠点が出現する場合があった。このような欠点を解消するため、特公平2−7057号公報、特許第2675035号公報に、表面層中の導電性金属酸化物濃度を塗膜表面からの深さ方向において変化させる方法が開示されている。これにより、画像ボケ・流れを解消するものであった。
【0008】
また、画像ボケに対してプロセス中の処理により解消する方法として、感光体を加熱するドラムヒーターを搭載する手段が用いられている。感光体を加熱することによって画像ボケの発生は抑制できるものの、ドラムヒーターを搭載するには感光体の径が大きくなければならないため、電子写真装置の小型化に伴って、現在主流となりつつある小径感光体には適用できず、小径感光体の高耐久化が困難とされてきた。更に、ドラムヒーターの搭載によって装置が大型にならざるを得ず、消費電力が顕著に増加する上、装置の立ち上げ時には多くの時間を要する等、多くの課題を残しているのが実状であった。一方、有機系の電荷発生物質および電荷輸送物質を用いた感光体(一般にいうOPC)上に、前述のような技術を応用し、抵抗の低いフィラーを用いた表面層(保護層)を積層し、繰り返し使用の試験を行った場合、OPCとのマッチングが悪いためか、画像流れが生じた。また、無機系の感光体で有効であった導電性金属酸化物の表面層中に濃度分布を持たせる方法を用いた場合でも、ほぼ同様の結果であった。
【0009】
上述の原因の詳細については不明であるが、特許第2675035号公報の方法は、本発明と表面層のフィラー濃度の分布の方向が逆であり、表面側に向かい濃度が低い構成になっている。このため、感光体表面の耐摩耗性がそれほど高くなく、表面にキズ等が生じやすい状態であり、繰り返し使用においては帯電器等から発生する反応性ガスに基づき生じる低抵抗物質が溜まりやすい状態になっているものと推定される。また、特公平2−7057号公報の方法の場合には、表面層中のフィラー濃度分布に関しては本発明と同じ方向であるものの、使用されるフィラーの比抵抗は小さいものであり、導電性を示すものである。また、表面におけるフィラー濃度が40重量%以上も含有される。このため、表面層における表面抵抗あるいはバルク抵抗が非常に小さいものであり、繰り返し使用において画像流れが生じたものと推定される。最近の有機感光体を用いた電子写真プロセスにおいては、デジタル信号を感光体上にドットして書き込むような使い方がなされ、このような使用状況は無機系感光体が感光体の主流であったころとは大きく異なっている。マシン側から要求される解像度のレベルが大きく変わり、この現象(欠点)が顕著になったという見方もできる。
【0010】
このような状況から、有機系感光体の表面層には、導電性でなく抵抗の高いフィラーを用いることが必須である。しかしながら、抵抗の高いフィラーを用いた場合には、残留電位が増加してしまうという問題点が発生する場合がある。多く見られる残留電位の増加は、電子写真装置内では明部電位が高いことにつながり、画像濃度や階調性の低下を招くことになる。それを補うためには暗部電位を高くする必要があるが、暗部電位を高くすると電界強度が高くなり、地肌汚れ等の画像欠陥を生じさせるだけでなく、感光体の寿命をも低下させることにつながる。
【0011】
従来技術において残留電位上昇を抑制させる方法としては、保護層を光導電層とする方法(特公昭44−834号公報、特公昭43−16198号公報、特公昭49−10258号公報)が開示されている。しかし、保護層による光の吸収によって感光層へ到達する光量が減少するため、感光体の感度が低下する問題が生じ、その効果はわずかであった。
【0012】
それに対して、フィラーとして含有される金属あるいは金属酸化物の平均粒径を0.3μm以下にすることによって、保護層が実質的に透明となり、残留電位蓄積を抑制する方法(特開昭57−30846号公報)が開示されている。この方法は残留電位の増加を抑制する効果は認められるものの、その効果は不十分であり、課題を解決するには至っていないのが実状である。それは、フィラーを含有させた場合に引き起こされる残留電位の増加は、電荷発生効率よりもフィラーの存在による電荷トラップやフィラーの分散性に起因する可能性が高いことによる。フィラーの平均粒径が0.3μm以上であっても分散性を高めることによって透明性を得ることが可能であるし、平均粒径が0.3μm以下であってもフィラーがかなり凝集していれば膜の透明性は低下することになる。
【0013】
また、保護層にフィラーとともに電荷輸送物質を含有させることにより、機械的強度を備えつつ、残留電位増加を抑制させる方法(特開平4−281461号公報)が開示されている。この保護層への電荷輸送物質の添加は、電荷の移動度を向上させるのに効果を発揮し、残留電位を減少させるのに有効な方法である。しかし、フィラーが含有されたことによって引き起こされた残留電位の著しい増加は、フィラーの存在に起因する抵抗の増加あるいは電荷トラップサイトの増加によるとすると、電荷の移動度を向上させて残留電位上昇を抑制させるには限界がある。従って、保護層の膜厚や、フィラーの含有量を少なくせざるを得ず、要求される耐久性を満足させるに至っていないのが実状であった。
【0014】
残留電位上昇を抑制する別の手段としては、保護層中にルイス酸等を添加する方法(特開昭53−133444号公報)、保護層に有機プロトン酸を添加する方法(特開昭55−157748号公報)、電子受容性物質を含有させる方法(特開平2−4275号公報)、酸価が5(mgKOH/g)以下のワックスを含有させる方法(特開2000−66434号公報)が開示されている。これらの方法は、保護層/電荷輸送層界面での電荷の注入性を向上させ、また保護層に低抵抗部分が形成されることにより、電荷が表面にまで到達しやすくなることに起因していると考えられている。この方法は、残留電位の低減効果が認められるが、それによって画像ボケを引き起こしやすくなり、画像への影響が顕著に現れる副作用を有する。また、有機酸を添加した場合にはフィラーの分散性の低下を引き起こしやすくなるため、その効果は十分ではなく、課題の解決に至っていないのが実状である。
【0015】
また、高耐久化のためにフィラーを含有させた電子写真感光体において、高画質化を実現するためには、前述の画像ボケの発生や残留電位上昇を抑制させるだけでなく、電荷が保護層中のフィラーによって進行を妨げられることなく、感光体の表面まで電荷が直線的に到達することも重要である。それには保護層膜中のフィラーの分散性が大きく影響する。フィラーが凝集した状態では、電荷輸送層より保護層へ注入された電荷が表面へ移動する際、フィラーによって進行が妨げられやすくなり、結果的にトナーにより形成されたドットが散った状態となって解像度が大きく低下する。また、保護層を設けた場合に、フィラーによって書き込み光が散乱され光透過性が低下する場合も、同様に解像度に大きな悪影響を与えることになるが、この光透過性に与える影響もまたフィラーの分散性と密接に関係している。更に、フィラーの分散性は耐摩耗性に対しても大きく影響し、フィラーが強い凝集を起こし、分散性に乏しい状態では耐摩耗性が大きく低下する。従って、高耐久化のためにフィラーを含有させた保護層を形成した電子写真感光体において、同時に高画質化を実現するためには、画像ボケの発生や残留電位上昇を抑制させるだけでなく、保護層膜中のフィラーの分散性を高めることが重要である。
【0016】
しかし、それらを同時に解決できる有効な手段は見出されておらず、高耐久化のために感光体の最表面層にフィラーを含有させた場合、画像ボケや残留電位上昇の影響が強く現れ、高画質化に対する課題が今もなお残されているのが実状である。さらに、それらの影響を軽減させるために、ドラムヒーターを搭載する必要があることから、最も耐久性が必要とされる小径感光体の高耐久化が実現されておらず、それに伴い装置の小型化や消費電力の低減に対しても大きな障害となっているのが実状であった。
【0017】
また、光感度、分光感度域、無公害性、静電的耐久性等において無機系感光体を凌駕するようになってきた有機系感光体であるが、その長所を生かしきるために機械的耐久性の向上は急務であり、高耐久なマシン・プロセス設計上、その開発は熱望されているものであった。
【0018】
電子写真方式を利用したフルカラー画像形成装置としては、一般的には2つの方式が知られている。1つはシングル方式あるいはシングルドラム方式呼ばれるものであり、装置中に1つの電子写真感光体が搭載され、4色の現像部材が搭載されたものである。この方式においては、感光体上もしくは被転写部材(出力用の紙に直接、あるいは中間転写体に一旦転写され、その後に紙に転写される)に4色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)のトナー像が形成される。この場合、感光体の周りに配置される帯電部材、露光部材、転写部材、クリーニング部材、定着部材は共通化することが可能で、後述のタンデム方式に比べ、小型で、低コストに設計することが可能である。
【0019】
一方、もう1つの方式としてタンデム方式あるいはタンデムドラム方式と呼ばれるものがある。これは、少なくとも装置中に複数の電子写真感光体が搭載されたものである。一般的には、1本のドラムに対し、帯電、露光、現像、クリーニングの各部材が1つずつ配置され、1つの電子写真要素を形成し、これが複数個(一般的には4つ)搭載されている。この方式においては、1つの電子写真要素で1色のトナー像を形成し、順次、被転写体にトナー像を転写し、フルカラー像を形成する。この方式のメリットは、第1に高速画像形成が可能であることが挙げられる。これは上述のように、各色のトナー像を並列処理にて作製できるためである。このため、シングル方式に比べ、画像形成処理時間がおよそ4分の1の時間で済み、4倍の高速プリントに対応が可能になる。第2のメリットは、感光体をはじめとする前記電子写真要素中に具備された各部材の耐久性を実質的に高められると言うことである。これは、シングル方式においては、1本の感光体で4回の帯電、露光、現像の各工程を行い、1つのフルカラー像を形成するのに対し、タンデム方式では上記動作を1本で1回しか行わないからである。ところが、装置全体が大きくなってしまうという、またコストが高いものになってしまうというデメリットも併せ持っている。装置全体が大きくなる点に関しては、感光体を小径化し、感光体周りに設置される各部材を小型化し、1つの電子写真要素を小さくすることで対応が行われてきた。これにより、装置の小型化のみならず材料費の低減といった効果も生じ、装置全体としての低コスト化も多少進んだ。しかしながら、装置のコンパクト化・小型化に伴い、電子写真要素に搭載された感光体を含めた各部材の耐久性を上げなければならないという、新しい課題も新たに発生した。
【0020】
更に、タンデム方式の画像形成においては、複数の画像形成要素にて同時に画像形成を行わなければならないため、複数の画像形成要素が初期並びに経時(繰り返し使用)後も、ほぼ同じ特性を有していなければならないという課題も有している。この点に関して最も影響を与えるものが、画像形成要素中の感光体の静電特性である。複数の画像形成要素に使用される感光体の特性のバラツキが大きいと、出力される画像のカラーバランスが変化してしまい、入力原図との色再現性が異なってしまうというフルカラー画像形成装置にとって致命的な問題が発生してしまうものであった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、高耐久で繰り返し使用に対し安定な高画質画像を作像できる感光体を提供することにある。詳しくは、高耐久性を有し、かつ残留電位上昇、あるいは画像ボケの発生による画像劣化を抑制し、長期間の繰り返し使用に対しても高画質画像が安定に得られる感光体を提供することにある。また、タンデム方式の画像形成装置において、繰り返し使用後においても色再現性の良い感光体を提供することにある。また本発明の別の目的は、それらの感光体を用いることにより、感光体の交換が不要で、かつ高速印刷あるいは感光体の小径化に伴う装置の小型化を実現し、さらに繰り返し使用においても高画質画像が安定に得られる電子写真方法、電子写真装置、ならびに電子写真用プロセスカートリッジを提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは前述のように過去に行われてきた結果を踏まえ、更に検討を重ねた結果、以下のことが判明した。すなわち有機系感光層上に、保護層のような表面層を設ける場合、耐摩耗性の付与の目的でフィラーを添加する必要があるが、無機系感光体に用いられているような比抵抗の小さな材料(導電性材料)を用いると、初期あるいは繰り返し使用時に画像ボケあるいは画像流れといった異常画像を発生してしまう。従って、比抵抗の大きなフィラーを用いる必要がある。しかしながら、比抵抗の大きなフィラーを用いた場合、画像ボケ等の異常画像が回避できるが、残留電位(露光後電位)が高くなってしまうという新たな問題点が発生した。
【0025】
過去に用いられてきた無機系の感光体は、保護層の有無に関わらず正帯電で用いられてきた。一方、有機感光体に用いられる電荷輸送物質は、正孔輸送タイプと電子輸送タイプのいずれも開発が行われたが、実際に実用レベルに達しているものは正孔輸送タイプである。このため、OPCの特性を最大限生かすべく設計された機能分離型積層感光体においては、負帯電がそのほとんどを占める。一部、単層感光層、逆層タイプの感光層が開発されたが主流ではない。
【0026】
上述のように、無機系感光体用に開発されてきた保護層技術が有機系感光体に水平展開できない理由の1つは、この帯電極性にあるのではないかと考えられる。すなわち、無機系感光体も有機系感光体も帯電電位はほぼ同じレベルで用いられる。この際、帯電器の放電効率を考えた場合、一般論として正帯電の方が帯電効率が高い。また、正帯電と負帯電時における反応性ガスなどの発生量を比べてみると、負帯電の方が圧倒的に発生量が多いことも知られている。画像ボケという現象は、少なくとも感光体表面抵抗が下がることにより起こるものであることが理解されており、この表面抵抗の低下が反応性ガスにより生成された低抵抗物質の感光体表面への付着が主たる原因であることも分かっている。
【0027】
このような点を改良するために、接触型の帯電方式も提案されているが、確かに帯電部材近傍のオゾン濃度が低くなるというようなポジティブなデータが開示されているものの、本発明者らが測定した結果に依れば、感光体表面への低抵抗物質の付着量は非接触型の帯電部材を用いた場合とほとんど変わらないことが明らかになった。これは、接触型の帯電部材を用いることにより、帯電部材への印加電圧が下げられるものの、放電にかかる感光体との距離が狭まり、気流がうまく流れない、あるいは接触であるが故に低抵抗物質を感光体表面に直接押しつけてしまうなどの原因が考えられた。
【0028】
上記の点に鑑みれば、負帯電型感光体へ耐摩耗性を付与するべく表面層を設ける場合には、比抵抗の大きいフィラーを用いることが必須であり、過去に開示されている無機系感光体上へ使用する保護層とは本質的に考え方を変える必要があることが分かった。
【0029】
前述のように過去に行われてきた結果を踏まえ、更に検討を重ねた結果、以下のことが明らかになった。
【0030】
<1> 表面層(保護層)中のフィラー濃度を一定にした場合、残留電位は表面層厚に依存し、膜厚の2乗に比例する。
【0031】
<2> 表面層厚を一定にした場合、残留電位はフィラー濃度に依存し、フィラー濃度の増加に伴い、残留電位は大きくなる。
【0032】
<3> 表面層厚を一定にした場合、耐摩耗性はフィラー濃度に依存し、フィラー濃度の増加に伴い、耐摩耗性が向上する。
【0033】
<4> 耐摩耗性を余りにも大きくすると、画像ボケが発生しやすくなる。
【0034】
従って、耐摩耗性を向上させることと残留電位の低減を図ること、耐摩耗性を向上させることと画像ボケを押さえること、の2点はトレードオフの関係になりがちである。そこで、本発明者らは、表面層の層構成改良の方向で検討を重ねた結果、(i)表面層をフィラー濃度傾斜を付けた構成(支持体側から表面側に向かい、順次高くする構成)にすることにより、または(ii)表面層をフィラー濃度の異なる2層以上の多層構成とし、支持体側から表面側に向かい、順次高くする構成にすることにより、前記2つの問題点を同時にクリアできることを見いだし、高耐久で繰り返し使用に対し安定な高画質画像を作像できる感光体を設計でき、また、繰り返し使用においても安定な高画質画像を高速で作像可能な電子写真方法、電子写真装置、ならびに電子写真用プロセスカートリッジを設計できることが分かり本発明を完成するに至った。また、上記構成の感光体を使用することにより、複数の画像形成要素を使用するタンデム方式のフルカラー画像形成装置においても、複数の画像形成要素間の感光体の静電特性の変化および摩耗量のバラツキが低減され、繰り返し使用によっても色再現性が良好なタンデム方式のフルカラー画像形成装置を設計出来ることが分かった。
【0035】
本発明によれば、下記(1)〜(16)が提供される。
【0036】
(1)導電性支持体上に少なくとも有機電荷発生物質と有機電荷輸送物質を含有する感光層および表面層を設けてなる電子写真感光体において、該表面層に比抵抗1010Ω・cm以上のフィラーを含有し、該フィラー濃度が支持体側から表面側に向かい、連続的に高くなる濃度傾斜を有する構成であることを特徴とする電子写真感光体。
【0037】
(2)導電性支持体上に少なくとも有機電荷発生物質と有機電荷輸送物質を含有する感光層および表面層を設けてなる電子写真感光体において、該表面層が2層以上の複数層より構成され、各々の表面層に比抵抗1010Ω・cm以上のフィラーを含有し、該フィラー濃度が支持体側から表面側に向かい、順次高くなる構成であることを特徴とする電子写真感光体。
【0038】
(3)前記表面層の最表面におけるフィラー濃度が、表面層を構成する全材料に対して、5〜40重量%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
【0039】
(4)前記表面層に含有されるフィラーが比抵抗1010Ω・cm以上の無機顔料であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
【0040】
(5)前記無機顔料が、比抵抗1010Ω・cm以上の金属酸化物であることを特徴とする上記(4)に記載の電子写真感光体。
【0041】
(6)前記金属酸化物が、シリカ、アルミナ、酸化チタンの中から選ばれ、かつその比抵抗が1010Ω・cm以上であることを特徴とする上記(5)に記載の電子写真感光体。
【0042】
(7)前記表面層に電荷輸送物質を含有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
【0043】
(8)前記(1)、(3)〜(7)のいずれかに記載の感光体の表面層の作製方法において、フィラー濃度の異なる2種類以上の塗工液を用い、フィラー濃度の低い液から順にスプレー法により塗布し、この際1つ前に塗工した塗膜が指触乾燥する前に次の塗工液を塗布し積層することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0044】
(9)前記(2)〜(7)のいずれかに記載の感光体の表面層の作製方法において、フィラー濃度の異なる2種類以上の塗工液を用い、フィラー濃度の低い液から順にスプレー法により塗布し、この際1つ前に塗工した塗膜が指触乾燥が終了してから次の塗工液を塗布し積層することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0045】
(10)電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行う電子写真方法において、該電子写真感光体が上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真方法。
【0046】
(11)少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備してなる電子写真装置であって、該電子写真感光体が上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
【0047】
(12)前記帯電手段が帯電部材を感光体に接触もしくは近接配置したものであることを特徴とする上記(11)に記載の電子写真装置。
【0048】
(13)前記帯電部材と感光体間の空隙が200μm以下であることを特徴とする上記(12)に記載の電子写真装置。
【0049】
(14)前記帯電手段が、帯電部材に直流成分に交流成分を重畳し、感光体に帯電を与えるものであることを特徴とする上記(11)〜(13)のいずれかに記載の電子写真装置。
【0050】
(15)少なくとも電子写真感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段を具備してなる画像形成要素を複数配列したフルカラー電子写真装置であって、該電子写真感光体が上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするフルカラー電子写真装置。
【0051】
(16)少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、該電子写真感光体が上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
【0052】
前記の電子写真感光体、電子写真方法、電子写真装置のより好ましい態様は次のとおりである。
【0053】
(イ)前記電子写真感光体の感光層が、少なくとも有機電荷発生物質を含有する電荷発生層と有機電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構成からなること。また、前記有機電荷発生物質がアゾ顔料もしくはフタロシアニン顔料であること。
【0054】
(ロ)前期電子写真感光体の表面層に含有される無機顔料もしくは金属酸化物が、pH以上及び/又は誘電率5以上であること。
【0055】
(ハ)前記無機顔料もしくは金属酸化物が、少なくとも1種の表面処理剤で表面処理を施していること。この表面処理剤が、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、高級脂肪酸系、Al2O3、TiO2、ZrO2等のいずれかから選ばれる1種もしくはそれらの混合物、もしくはそれらとシランカップリング剤との混合物であること。また、前記表面処理が施された無機顔料もしくは金属酸化物において、表面処理量が3〜30wt%であること。
【0056】
(ニ)前記電子写真感光体の最表面層に含有されるフィラーの平均一次粒径が、0.01μm〜0.5μmであること。
【0057】
(ホ)前記電子写真感光体の表面層に含有される電荷輸送物質が高分子電荷輸送物質であること。その高分子電荷輸送物質が、少なくともトリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートであること。前記表面層に含有される電荷輸送物質が、表面層の下層として形成される感光層もしくは電荷輸送層に含有される電荷輸送物質と同一のものであること。
【0058】
(ヘ)前記電子写真感光体の表面層に含有されるバインダー樹脂が、ポリカーボネート樹脂もしくはポリアリレート樹脂の少なくとも一方を含むこと。
【0059】
(ト)前記電子写真感光体の製造方法において、使用する塗工液の数だけスプレーヘッドを用い、連続的に塗工すること。
【0060】
(チ)前記電子写真方法では画像露光の際にはLDあるいはLED等によって感光体上に静電潜像の書き込みが行われる、所謂デジタル方式の電子写真方法が採用されること。
【0061】
(リ)前記電子写真装置では、画像露光手段にLDあるいはLED等を使用することによって感光体上に静電潜像の書き込みが行われる、所謂デジタル方式の電子写真装置が採用されること。
【0062】
【発明の実施の形態】
【0063】
以下、本発明に用いられる電子写真感光体を図面に沿って説明する。図1は、本発明の電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生材料と電荷輸送材料を主成分とする単層感光層33が設けられ、更に感光層表面に表面層39が設けられてなる。この場合、表面層39にはフィラーが含有されており、フィラー濃度を支持体側から表面側に向かい連続的に高くした(濃度傾斜を持った)構成からなる。ここで用いられるフィラーは比抵抗1010Ω・cm以上のものである。
【0064】
図2は、本発明の電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層35と電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層37とが積層された構成をとっており、更に電荷輸送層上に表面層39が設けられてなる。この場合、表面層39にはフィラーが含有されており、フィラー濃度を支持体側から表面側に向かい連続的に高くした(濃度傾斜を持った)構成からなる。ここで用いられるフィラーは比抵抗1010Ω・cm以上のものである。
【0065】
図3は、本発明の電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生材料と電荷輸送材料を主成分とする単層感光層33が設けられ、更に感光層表面にフィラー濃度の異なる複数の表面層39(例えば、39−1、39−2、39−3からなる表面層)が設けられてなる。この場合、複数の表面層39には比抵抗1010Ω・cm以上のフィラーが含有されており、フィラー濃度を支持体側から表面側に向かい順次高くなる構成からなる。
【0066】
図4は、本発明の電子写真感光体のさらに別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層35と電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層37とが積層された構成をとっており、更に電荷輸送層上にフィラー濃度の異なる複数の表面層39(例えば、39−1、39−2、39−3からなる表面層)が設けられてなる。この場合、複数の表面層39には比抵抗1010Ω・cm以上のフィラーが含有されており、フィラー濃度を支持体側から表面側に向かい順次高くなる構成からなる。
【0067】
上述した図1〜図4の構成において、使用するフィラーは2種類以上のフィラーを混合して用いても良い。このような場合、同一材料(材質)から構成されても異種材料から構成されても良い。保護層バルクとしての特性を大きく変えたくない場合には、同一材料から構成することにより、安定した特性を得ることができる。一方、保護層バルクとしての抵抗を調整したいような場合、あるいは透過率をバルク方向でコントロールしたい場合等においては、比抵抗の異なる2種以上のフィラーを混合させたり、粒度分布(平均粒径)の異なる2種類以上のフィラーを混合させいたりして用いても良い。このような場合、表面側に抵抗の小さな成分を含有させると画像ボケの発生を起こしやすくなってしまうような副作用を生じることもある。このため、表面側に高抵抗のフィラーを用い、支持体(感光層)側に低抵抗なフィラーを用いると有効である。また、粒径の小さなフィラーを表面側に用いると、耐摩耗性が低下するなどの副作用が生じることもある。このため、表面側に粒径の大きなフィラーを、感光層側に粒径の小さなフィラーをも用いると有効である。このように、フィラー濃度分布の傾斜を形成すると同時に、比抵抗の傾斜、粒径の傾斜を加えることは本発明の効果を一層顕著なものとするものである。
【0068】
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
【0069】
また、これらの中でも陽極酸化皮膜処理を簡便に行うことのできるアルミニウムからなる円筒状支持体が最も良好に使用できる。ここでいうアルミニウムとは、純アルミ系あるいはアルミニウム合金のいずれをも含むものである。具体的には、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金が最も適している。陽極酸化皮膜は各種金属、各種合金を電解質溶液中において陽極酸化処理したものであるが、中でもアルミニウムもしくはアルミニウム合金を電解質溶液中で陽極酸化処理を行ったアルマイトと呼ばれる被膜が本発明に用いる感光体には最も適している。特に、反転現像(ネガ・ポジ現像)に用いた際に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止する点で優れている。
【0070】
陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行われる。このうち、硫酸浴による処理が最も適している。一例を挙げると、
硫酸濃度:10〜20%、
浴温:5〜25℃、
電流密度:1〜4A/dm2、
電解電圧:5〜30V、
処理時間:5〜60分程度
の範囲で処理が行われるが、これに限定するものではない。
【0071】
このように作製される陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高いため、表面が非常に不安定な状況である。このため、作製後の経時変化が存在し、陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすい。これを回避するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが望ましい。
【0072】
封孔処理には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。このうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最も好ましい。
【0073】
封孔処理に引き続き、陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。これは、封孔処理により付着した金属塩等の過剰なものを除去することが主な目的である。これが支持体(陽極酸化皮膜)表面に過剰に残存すると、この上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因にもなってしまう。
【0074】
洗浄は純水1回の洗浄でも構わないが、通常は他段階の洗浄を行う。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれい(脱イオンされた)ものであることが好ましい。また、他段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが望ましい。
【0075】
以上のようにして形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、5〜15μm程度が望ましい。これより薄すぎる場合には陽極酸化皮膜としてのバリア性の効果が十分でなく、これより厚すぎる場合には電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生や感光体のレスポンスが低下する場合がある。
【0076】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0077】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
【0078】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される場合から述べる。
【0079】
電荷発生層35は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層35には、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合してもかまわない。
【0080】
中でもアゾ顔料および/またはフタロシアニン顔料が有効に用いられる。特に下記構造式(I)で表されるアゾ顔料、およびチタニルフタロシアニン、特にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが有効に使用できる。
【0081】
【化1】
式中、Cp1、Cp2はカップラー残基を表し、同一でも異なっていても良い。R201、R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良い。またCp1、Cp2は下記(II)式で表され、
【0082】
【化2】
式中、R203は、水素原子、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基を表す。R204、R205、R206、R207、R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基を表し、Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環または置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表す。
【0083】
特に、前記Cp1とCp2が異なる構造の非対称アゾ顔料は、Cp1とCp2が同一構造である対象型のアゾ顔料よりも、光感度が良好な場合が多く、感光体の小径化、使用プロセスの高速化に対応できるものであり、有効に使用される。
【0084】
また、ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンの中でも、最低角として7.3゜にピークを有するチタニルフタロシアニン(特開2001−19871号公報に記載)が、高感度であり、繰り返し使用における帯電性の低下が小さく、特に有効に使用できる。
【0085】
電荷発生層35は、必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0086】
必要に応じて電荷発生層35に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
【0087】
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0088】
電荷輸送層37は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0089】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電荷輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0090】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
【0091】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0092】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度・応答性の点から、25μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5μm以上が好ましい。
【0093】
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどがあげられる。
【0094】
本発明の感光体において電荷輸送層37中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
【0095】
次に感光層が単層構成33の場合について述べる。上述した電荷発生物質を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。単層感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。さらに、この感光層には上述した電荷輸送材料を添加した機能分離タイプとしても良く、良好に使用できる。また、必要により、可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0096】
結着樹脂としては、先に電荷輸送層37で挙げた結着樹脂をそのまま用いるほかに、電荷発生層35で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましくさらに好ましくは50〜150重量部である。
【0097】
単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を必要ならば電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成できる。単層感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
【0098】
本発明の感光体においては、導電性支持体31と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0099】
これらの下引き層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0100】
本発明の感光体においては、感光層保護の目的で、表面層39が感光層の上に設けられる。表面層39は、フィラー濃度が支持体側から表面側に向かい、連続的に高くなるように構成される(図1、図2)。あるいは、表面層39は、フィラー濃度が異なる複数の層より構成され(図3、図4)、この場合、フィラー濃度が支持体側から表面側に向かい、順次高くなるように構成される。これにより、表面の耐摩耗性向上と残留電位低減の両立を図ることが可能になる。
【0101】
表面層中のフィラー濃度は使用するフィラー種により、また感光体を使用する電子写真プロセス条件によっても異なるが、最表層側又は最表層側の層においては、全固形分に対するフィラーの比で40重量%以下、好ましくは30重量%以下、5重量%以上、好ましくは10重量%以上程度が良好である。最感光層側の層においては30重量%以下、好ましくは10重量%以下程度が良好である。表面層の最表面のフィラー濃度が5重量%以下であると耐摩耗性が得られず、また、繰り返し使用による摩耗による膜厚のバラツキが大きくなる。一方、40重量%以上であると、繰り返し使用による残留電位の上昇が大きくなったり、表面性が荒れたり、書き込み光の散乱が大きくなったりする。
【0102】
表面層39に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネートもしくはポリアリレートが最も良好に使用できる。
【0103】
また、感光体の表面層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でフィラー材料が添加される。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。特に、シリカ、酸化チタン、アルミナが有効に使用できる。
【0104】
更に、画像ボケが発生しにくいフィラーとしては、電気絶縁性が高いフィラー(比抵抗が1010Ω・cm以上)が好ましく、フィラーのpHが5以上を示すものやフィラーの誘電率が5以上を示すものが特に有効に使用できる。また、pHが5以上のフィラーあるいは誘電率が5以上のフィラーを単独で使用することはもちろん、pHが5以下のフィラーとpHが5以上のフィラーとを2種類以上を混合したり、誘電率が5以下のフィラーと誘電率が5以上のフィラーとを2種類以上混合したりして用いることも可能である。また、これらのフィラーの中でも高い絶縁性を有し、熱安定性が高い上に、耐摩耗性が高い六方細密構造であるα型アルミナは、画像ボケの抑制や耐摩耗性の向上の点から特に有用である。
【0105】
本発明において使用するフィラーの比抵抗は以下のように定義される。フィラーのような粉体は、充填率によりその比抵抗値が異なるので、一定の条件下で測定する必要がある。本発明においては、特開平5−94049号公報(図1)、特開平5−113688号公報(図1)に示された測定装置と同様の構成の装置を用いて、フィラーの比抵抗値を測定し、この値を用いた。測定装置において、電極面積は4.0cm2である。測定前に片側の電極に4kgの荷重を1分間かけ、電極間距離が4mmになるように試料量を調節する。測定の際は、上部電極の重量(1kg)の荷重状態で測定を行い、印加電圧は100Vにて測定する。106Ω・cm以上の領域は、HIGH RESISTANCE METER(横河ヒューレットパッカード)、それ以下の領域についてはデジタルマルチメーター(フルーク)により測定した。これにより得られた比抵抗値を本発明の言うところの比抵抗値と定義するものである。
【0106】
また、本発明の構成要件の一つであるフィラーのpHも解像度やフィラーの分散性に大きく影響する。その理由の一つとしては、フィラー、特に金属酸化物は製造時に塩酸等が残存することが考えられる。その残存量が多い場合には、画像ボケの発生は避けられず、またそれは残存量によってはフィラーの分散性にも影響を及ぼす場合がある。もう一つの理由としては、フィラー、特に金属酸化物の表面における帯電性の違いによるものである。通常、液体中に分散している粒子はプラスあるいはマイナスに帯電しており、それを電気的に中性に保とうとして反対の電荷を持つイオンが集まり、そこで電気二重層が形成されることによって粒子の分散状態は安定化している。粒子から遠ざかるに従いその電位(ゼータ電位)は徐々に低くなり、粒子から十分に離れて電気的に中性である領域の電位はゼロとなる。従って、ゼータ電位の絶対値の増加によって粒子の反発力が高くなることによって安定性は高くなり、ゼロに近づくに従い凝集しやすく不安定になる。一方、系のpH値によってゼータ電位は大きく変動し、あるpH値において電位はゼロとなり等電点を持つことになる。従って、系の等電点からできるだけ遠ざけて、ゼータ電位の絶対値を高めることによって分散系の安定化が図られることになる。
【0107】
本発明の構成においては、フィラーとしては前述の等電点におけるpHが、少なくとも5以上を示すものが画像ボケ抑制の点から好ましく、より塩基性を示すフィラーであるほどその効果が高くなる傾向があることが確認された。等電点におけるpHが高い塩基性を示すフィラーは、系が酸性であった方がゼータ電位はより高くなることにより、分散性及びその安定性は向上することになる。ここで、本発明におけるフィラーのpHは、ゼータ電位から等電点におけるpH値を記載した。この際、ゼータ電位の測定は、大塚電子(株)製レーザーゼータ電位計にて測定した。フィラーの誘電率は以下のように測定した。上述のような比抵抗の測定と同様なセルを用い、荷重をかけた後に、静電容量を測定し、これより誘電率を求めた。静電容量の測定は、誘電体損測定器(安藤電気(株)製)を使用した。
【0108】
更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。
【0109】
表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。フィラーの表面処理量に関しては、上述のようにフィラー量に対する使用する表面処理剤の重量比で定義される。
【0110】
これらフィラー材料は、適当な分散機を用いることにより分散できる。また、フィラーの平均粒径は、1μm以下、好ましくは0.5μm以下にあること表面層の透過率の点から好ましい。尚、本発明におけるフィラーの平均粒径とは、特別な記載のない限り体積平均粒径であり、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により求めたものである。この際、累積分布の50%に相当する粒子径(Median系)として算出されたものである。また、同時に測定される各々の粒子の標準偏差が1μm以下であることが重要である。これ以上の標準偏差の値である場合には、粒度分布が広すぎて、本発明の効果が顕著に得られなくなってしまう場合がある。
【0111】
なお、表面層の厚さは複数層の合計で0.1〜10μm程度が適当である。
【0112】
本発明の表面層の形成法としては通常の塗布法が採用される。中でも、スプレー工法は有効な手段である。複数のフィラー濃度の異なる表面層用塗工液を、下層が指触乾燥する前に順次スプレー法で積層していく方法、あるいは下層の指触乾燥が終了したら順次スプレー法で積層していく方法が、最も適している。この場合、塗工液の数だけスプレーヘッドを用意し、塗工を連続的に行うことが望ましい。
【0113】
また、表面層39には残留電位低減、応答性改良のため、電荷輸送物質を含有しても良い。電荷輸送物質は、電荷輸送層の説明のところに記載した材料を用いることができる。電荷輸送物質として、低分子電荷輸送物質を用いる場合には、複数の表面層中における濃度を変えても構わない。耐摩耗性向上のため、表面側を低濃度にすることは有効な手段である。ここで言う濃度とは、表面層を構成する全材料の総重量に対する低分子電荷輸送物質の重量の比を表し、濃度傾斜とは上記重量比において表面側において濃度が低くなるような傾斜を設けることを示す。
【0114】
また、表面層に使用する電荷輸送物質は、上述のように低分子電荷輸送物質でも、後述のような高分子電荷輸送物質でも良いが、表面層の下層として形成される感光層あるいは電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質と同一のものを用いることが好ましい。これは、感光層で形成された光キャリアが感光体表面に輸送される際、感光層(電荷輸送層)から表面層に電荷が渡されるが、同一構造の場合にはエネルギーギャップ(障壁)等を形成することなく、スムーズな電荷の受け渡しが行われるためである。
【0115】
また、表面層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される表面層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、(III)〜(XII)式で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられ、これらを以下に例示し、具体例を示す。
【0116】
(III)式
【0117】
【化3】
式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す。
【0118】
【化4】
式中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)または、
【0119】
【化5】
(式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す。)を表す。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0120】
(IV)式
【0121】
【化6】
式中、R7、R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1、Ar2、Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0122】
(V)式
【0123】
【化7】
式中、R9、R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4、Ar5、Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0124】
(VI)式
【0125】
【化8】
式中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7、Ar8、Ar9は同一又は異なるアリレン基、pは1〜5の整数を表す。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0126】
(VII)式
【0127】
【化9】
式中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1、X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0128】
(VIII)式
【0129】
【化10】
式中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0130】
(IX)式
【0131】
【化11】
式中、R19、R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0132】
(X)式
【0133】
【化12】
式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0134】
(XI)式
【0135】
【化13】
式中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar25、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0136】
(XII)式
【0137】
【化14】
式中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(III)式の場合と同じである。
【0138】
また、保護層に使用される高分子電荷輸送物質として、上述の高分子電荷輸送物質の他に、保護層の成膜時には電子供与性基を有するモノマーあるいはオリゴマーの状態で、成膜後に硬化反応あるいは架橋反応をさせることで、最終的に2次元あるいは3次元の架橋構造を有する重合体も含むものである。
【0139】
これら電子供与性基を有する重合体から構成される保護層、あるいは架橋構造を有する重合体は耐摩耗性に優れたものである。通常、電子写真プロセスにおいては、帯電電位(未露光部電位)は一定であるため、繰り返し使用により感光体の表面層が摩耗すると、その分だけ感光体にかかる電界強度が高くなってしまう。この電界強度の上昇に伴い、地汚れの発生頻度が高くなるため、感光体の耐摩耗性が高いことは、地汚れに対して有利である。これら電子供与性基を有する重合体から構成される保護層は、自身が高分子化合物であるため成膜性に優れ、低分子分散型高分子からなる保護層に比べ、電荷輸送部位を高密度に構成することが可能で電荷輸送能に優れたものである。このため、高分子電荷輸送物質を用いた保護層を有する感光体には高速応答性が期待できる。
【0140】
その他の電子供与性基を有する重合体としては、公知単量体の共重合体や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーや、また、例えば特開平3−109406号公報、特開20000−206723号公報、特開2001−34001号公報等に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることも可能である。
【0141】
本発明の感光体においては感光層と保護層との間に中間層を設けることも可能である中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく通常の塗布法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0142】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することができる。これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
【0143】
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0144】
(a)フェノ−ル系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソ−ル、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノ−ル、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロ−ル類など。
【0145】
(b)パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0146】
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0147】
(d)有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネ−ト、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネ−ト、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネ−トなど。
【0148】
(e)有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0149】
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0150】
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
【0151】
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
【0152】
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
【0153】
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
【0154】
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
【0155】
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
【0156】
(g)エポキシ系可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
【0157】
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
【0158】
(i)含塩素系可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
【0159】
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
【0160】
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
【0161】
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
【0162】
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0163】
各層に添加できる滑剤としては、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0164】
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
【0165】
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
【0166】
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
【0167】
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
【0168】
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
【0169】
(f)金属石けん
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
【0170】
(g)天然ワックス
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
【0171】
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0172】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0173】
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンなど。
【0174】
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなど。
【0175】
(c)ベンゾトリアゾール系
(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ3’−ターシャリブチル5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール
【0176】
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレートなど。
【0177】
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2’チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
【0178】
(f)HALS (ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
【0179】
次に図面を用いて本発明の電子写真方法ならびに電子写真装置を詳しく説明する。図5は、本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。図5において、感光体1は導電性支持体上に、少なくとも感光層とフィラー濃度傾斜をもつ表面層又はフィラー濃度の異なる複数層より構成された表面層とが設けられてなる。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電部材3、転写前チャージャー7、転写チャージャー10、分離チャージャー11、クリーニング前チャージャー13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラーを始めとする公知の手段が用いられる。帯電部材3は、感光体1に対し接触もしくは近接配置したものが良好に用いられる。
【0180】
ここでいう接触方式の帯電部材とは、感光体表面に帯電部材の表面が接触するタイプのものであり、帯電ローラー、帯電ブレード、帯電ブラシの形状がある。中でも帯電ローラーや帯電ブラシが良好に使用される。また、近接配置した帯電部材とは、感光体表面と帯電部材表面の間に200μm以下の空隙(ギャップ)を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。空隙の距離から、コロトロン、スコロトロンに代表される公知の帯電器とは区別されるものである。本発明において使用される近接配置された帯電部材は、感光体表面との空隙を適切に制御できる機構のものであればいかなる形状のものでも良い。例えば、感光体の回転軸と帯電部材の回転軸を機械的に固定して、適正ギャップを有するような配置にすればよい。中でも、帯電ローラーの形状の帯電部材を用い、帯電部材の非画像形成部両端にギャップ形成部材を配置して、この部分のみを感光体表面に当接させ、画像形成領域を非接触配置させる、あるいは感光体非画像形成部両端ギャップ形成部材を配置して、この部分のみを帯電部材表面に当接させ、画像形成領域を非接触配置させる様な方法が、簡便な方法でギャップを安定して維持できる方法である。特に特願平13−211448号、特願平13−226432号に記載された方法は良好に使用できる。帯電部材側にギャップ形成部材を配置した近接帯電機構の一例を図9に示す。
【0181】
また、帯電部材により感光体に帯電を施す際、帯電部材に直流成分に交流成分を重畳した電界により感光体に帯電を与えることにより、帯電ムラを低減することが可能で効果的である。
【0182】
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図5に示されるように転写チャージャー10と分離チャージャー11を併用したものが効果的である。
【0183】
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。かかる光源等は、図5に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0184】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0185】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0186】
図6には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体21は導電性支持体上に、少なくとも感光層とフィラー濃度傾斜をもつ表面層又はフィラー濃度の異なる複数層より構成された表面層とが設けられてなる。駆動ローラー22a、22bにより駆動され、帯電器23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、帯電器25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。図6においては、感光体21(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0187】
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図6において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは表面層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0188】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図7に示すものが挙げられる。感光体23は、導電性支持体上に、少なくとも感光層とフィラー濃度傾斜をもつ表面層又はフィラー濃度の異なる複数層より構成される表面層が設けられてなる。
【0189】
図10は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。図10において、符号1C、1M、1Y、1Kはドラム状の感光体であり、この感光体1C、1M、1Y、1Kは図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材2C、2M、2Y、2K、現像部材4C、4M、4Y、4K、クリーニング部材5C、5M、5Y、5Kが配置されている。帯電部材 2C、2M、2Y、2Kは、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。この帯電部材2C、2M、2Y、2Kと現像部材4C、4M、4Y、4Kの間の感光体表面に図示しない露光部材からのレーザー光3C、3M、3Y、3Kが照射され、感光体1C、1M、1Y、1Kに静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体1C、1M、1Y、1Kを中心とした4つの画像形成要素6C、6M、6Y、6Kが、転写材搬送手段である転写搬送ベルト10に沿って並置されている。転写搬送ベルト10は各画像形成ユニット6C、6M、6Y、6Kの現像部材4C、4M、4Y、4Kとクリーニング部材5C、5M、5Y、5Kの間で感光体1C、1M、1Y、1Kに当接しており、転写搬送ベルト10の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ11C、11M、11Y、11Kが配置されている。各画像形成要素6C、6M、6Y、6Kは現像装置内部のトナーの色が異なるのと、本発明に係わる黒色トナー像形成用帯電部材2KにDC成分のみを印可し、黒色以外のトナー像用帯電部材2C、2M、2YにDC成分にAC成分を重畳した交番電界を印加するものであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0190】
図10に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行われる。まず、各画像形成要素6C、6M、6Y、6Kにおいて、感光体1C、1M、1Y、1Kが矢印方向(感光体と連れ周り方向)に回転する帯電部材2C、2M、2Y、2Kにより帯電され、次に露光部でレーザー光3C、3M、3Y、3Kにより、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。次に現像部材4C、4M、4Y、4Kにより潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材4C、4M、4Y、4Kは、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のトナーで現像を行う現像部材で、4つの感光体1C、1M、1Y、1K上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙7は給紙コロ8によりトレイから送り出され、一対のレジストローラー9で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト10に送られる。転写搬送ベルト10上に保持された転写紙7は搬送されて、各感光体1C、1M、1Y、1Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行われる。感光体上のトナー像は、転写ブラシ11C、11M、11Y、11Kに印加された転写バイアスと感光体1C、1M、1Y、1Kとの電位差から形成される電界により、転写紙7上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙7は定着装置12に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体1C、1M、1Y、1K上に残った残留トナーは、クリーニング装置5C、5M、5Y、5Kで回収される。
【0191】
なお、図10の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(6C、6M、6Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。更に、図10において帯電部材は感光体と当接しているが、両者の間に適当なギャップ(10〜200μm程度)を設けてやることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電部材へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
【0192】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、各々の電子写真要素はプロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
【0193】
【実施例】
【0194】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
【0195】
(実施例1)
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層、5μmの表面層からなる電子写真感光体を形成した。なお、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層は浸漬塗工法で塗工し、表面層はスプレー法にて塗工を行った。
【0196】
下引き層塗工液:
二酸化チタン粉末 400部
メラミン樹脂 65部
アルキッド樹脂 120部
2−ブタノン 400部
【0197】
電荷発生層塗工液:
下記構造のビスアゾ顔料 12部
【0198】
【化15】
ポリビニルブチラール 2部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0199】
電荷輸送層塗工液:
A型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【0200】
【化16】
テトラヒドロフラン 200部
【0201】
表面層塗工液1:
C型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0202】
【化17】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0203】
表面層塗工液2:
C型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0204】
【化18】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 4部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0205】
表面層塗工液3:
C型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0206】
【化19】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 7部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0207】
上記表面層塗工液は、表面層塗工液1、2、3の順に3つのスプレーヘッドを用い、スプレー法により連続的に塗工した。この際連続的とは、下層を塗工後、指触乾燥しないうちに次の塗工液をスプレー法により積層することを指す。なお、表面層塗工液1、2は2μm相当ずつ塗工し、表面層塗工液3は1μm相当塗工し、合計5μmの表面層を形成した。
【0208】
(実施例2)
実施例1における表面層塗工液1、2、3をそれぞれ以下の組成のものに変更した以外は、実施例1と同様に感光体を作製した。
【0209】
表面層塗工液1:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0210】
【化20】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 1部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0211】
表面層塗工液2:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0212】
【化21】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0213】
表面層塗工液3:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0214】
【化22】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 3部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0215】
(比較例1)
実施例1における表面層を表面層塗工液1のみを用い、5μm相当の表面層を形成した以外は、実施例1と全く同様に感光体を作製した。
【0216】
(比較例2)
実施例1における表面層を表面層塗工液3のみを用い、5μm相当の表面層を形成した以外は、実施例1と全く同様に感光体を作製した。
【0217】
(比較例3)
実施例1における表面層塗工液1、2、3に含有されるフィラー(アルミナ微粒子)を以下のものに変更した以外は、実施例1と同様に感光体を作製した。
【0218】
フィラー:導電性酸化錫(比抵抗:5×105Ω・cm、平均一次粒径:0.3μm)
【0219】
(比較例4)
実施例2における表面層を表面層塗工液1のみを用い、5μm相当の表面層を形成した以外は、実施例2と全く同様に感光体を作製した。
【0220】
(比較例5)
実施例2における表面層を表面層塗工液1のみを用い、5μm相当の表面層を形成した以外は、実施例2と全く同様に感光体を作製した。
【0221】
以上のように作製した実施例1、2および比較例1〜5の感光体を図5に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し、帯電部材はスコロトロン方式チャージャー)に装着し、画像露光光源を655nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、連続して2万枚の印刷を行い、その時の画像を初期と2万枚後に評価した。更に、2万枚おける感光体表面の摩耗量も併せて測定した。以上の結果は、表1に併せて示す。
【0222】
【表1】
【0223】
(実施例3)
実施例1で使用した図5に示す電子写真プロセスの帯電部材をスコロトロン・チャージャーから帯電ローラーに変更し、帯電ローラーが感光体に接触するように配置した。この装置に実施例1で作製した感光体を搭載し、下記の帯電条件で、実施例1と同様の評価を行った。
【0224】
帯電条件:
DCバイアス:−930V
その結果、初期及び2万枚目の画像はいずれも良好であったが、2万枚後の画像には帯電ローラー汚れ(トナーフィルミング)に基づく、ごく僅かな異常画像(地汚れ)が認められた。しかしながら、連続プリント時のオゾン臭は実施例1の場合に比べて、格段に少なかった。
【0225】
(実施例4)
実施例3で使用した帯電ローラーの両端部に厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを張り付け、帯電ローラー表面と感光体表面との間に空間的なギャップ(50μm)を有するように配置した。その他の条件は実施例3と全く同様に評価を行った。その結果、実施例3で認められた帯電ローラー汚れは、全く認められず、初期及び2万枚目の画像はいずれも良好であった。しかしながら、2万枚後にハーフトーン画像を出力した際、ごく僅かではあるが、帯電ムラに基づく画像ムラが認められた。
【0226】
(実施例5)
実施例4の評価において、帯電条件を以下のように変更した以外は実施例4と同様の評価を行った。
【0227】
帯電条件:
DC バイアス:−900V
AC バイアス:2.0kV (peak to peak)、周波数2kHz
初期及び2万枚後の画像は良好であった。実施例3で認められた帯電ローラー汚れ、実施例4で認められたハーフトーン画像ムラは、全く認められなかった。
【0228】
(参考例1)
ニッケルベルト上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層、3μmの表面層からなる電子写真感光体を形成した。なお、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層は浸漬塗工法で塗工し、表面層はスプレー法にて塗工を行った。
【0229】
下引き層塗工液:
二酸化チタン粉末 100部
アルコール可溶性ナイロン 100部
メタノール 500部
ブタノール 300部
【0230】
電荷発生層塗工液:
下記構造のビスアゾ顔料 10部
【0231】
【化23】
ポリビニルブチラール 2部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0232】
電荷輸送層塗工液:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0233】
【化24】
テトラヒドロフラン 200部
【0234】
表面層塗工液1:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 6部
【0235】
【化25】
酸化チタン微粒子(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 1.5部
トルエン 600部
【0236】
表面層塗工液2:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 6部
【0237】
【化26】
酸化チタン微粒子(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 4部
トルエン 600部
【0238】
表面層塗工液3:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 6部
【0239】
【化27】
酸化チタン微粒子(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 7部
トルエン 600部
【0240】
上記表面層塗工液は、表面層塗工液1、2、3の順に3つのスプレーヘッドを用い、スプレー法により連続的に塗工した。この際連続的とは、下層を塗工後、指触乾燥しないうちに、次の塗工液をスプレー法により積層することを指す。なお、表面層塗工液1、2、3は1μm相当ずつ塗工し、合計3μmの表面層を形成した。
【0241】
(参考例2)
参考例1における表面層塗工液1、2、3をそれぞれ以下の組成のものに変更した以外は、参考例1と同様に感光体を作製した。
【0242】
表面層塗工液1:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=135000) 7部
【0243】
【化28】
シリカ微粒子(比抵抗:4×1013Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 1部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0244】
表面層塗工液2:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=135000) 7部
【0245】
【化29】
シリカ微粒子(比抵抗:4×1013Ω・cm、
平均一次粒径:0.5μm) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0246】
表面層塗工液3:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=135000) 7部
【0247】
【化30】
シリカ微粒子(比抵抗:4×1013Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 3部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0248】
(比較例6)
参考例1における表面層を表面層塗工液1のみを用い、3μm相当の表面層を形成した以外は、参考例1と全く同様に感光体を作製した。
【0249】
(比較例7)
参考例1における表面層を表面層塗工液3のみを用い、3μm相当の表面層を形成した以外は、参考例1と全く同様に感光体を作製した。
【0250】
(比較例8)
参考例1における表面層を積層せず、電荷輸送層を25μmとした以外は、参考例1と同様に感光体を作製した。
【0251】
(比較例9)
参考例1における表面層塗工液1、2、3に含有されるフィラー(酸化チタン微粒子)を以下のものに変更した以外は、参考例1と同様に感光体を作製した。
【0252】
フィラー:導電性酸化チタン(比抵抗:7.1×107Ω・cm)
【0253】
(比較例10)
参考例2における表面層を表面層塗工液1のみを用い、3μm相当の表面層を形成した以外は、参考例2と全く同様に感光体を作製した。
【0254】
(比較例11)
参考例2における表面層を表面層塗工液1のみを用い、3μm相当の表面層を形成した以外は、参考例2と全く同様に感光体を作製した。
【0255】
以上のように作製した参考例1、2および比較例6〜10の感光体を図6に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を655nmのLEDとして、連続して3万枚の印刷を行い、その時の画像を初期と3万枚後に評価した。更に、3万枚おける感光体表面の摩耗量も併せて測定した。以上の結果は、表2に併せて示す。
【0256】
【表2】
【0257】
(参考例3、4)
参考例1に使用したフィラー(酸化チタン微粒子)に処理量が20wt%になるようにチタネート系カップリング剤およびAl2O3による表面処理を行った。このフィラーを用いて、参考例1における表面層塗工液1、2、3を作製した。これらについて、塗工液中の平均粒径(堀場製作所社製:CAPA700で測定)、塗工液の沈降性(試験管内で静置した塗工液粒子の沈降度合いを肉眼で確認)について評価した。結果を表3に示す。なお、表3に示される値は、それぞれの表面層塗工液3の測定結果である。
【0258】
【表3】
【0259】
(参考例5、6)
参考例3、4で作製した分散液を用い、参考例1と同様に感光体を作製した。また、透過率測定用サンプルとして、表面層のみをポリエステルフィルム上に形成した。感光体の外観結果、表面粗さRzと655nmにおける透過率を表4に示す。
【0260】
【表4】
【0261】
(参考例7、8)
参考例5、6で作製した感光体を先の参考例1の評価に用いた装置と同じものに搭載し、画像評価を行った。その結果、参考例1の分散液を用いた感光体より、参考例3、4の分散液を用いた感光体の解像度が勝っていた。
【0262】
(実施例6)
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、21μmの電荷輸送層および4μmの表面層からなる電子写真感光体を形成した。
【0263】
下引き層塗工液:
二酸化チタン粉末 400部
メラミン樹脂 65部
アルキッド樹脂 120部
2−ブタノン 400部
【0264】
電荷発生層塗工液:
図8で表わされたXDスペクトルを有するチタニルフタロシアニン 8部
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 400部
【0265】
電荷輸送層塗工液:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0266】
【化31】
塩化メチレン 80部
【0267】
表面層塗工液1:
ポリアリレート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【0268】
【化32】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0269】
表面層塗工液2:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【0270】
【化33】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 4部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0271】
表面層塗工液3:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【0272】
【化34】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 8部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0273】
上記表面層塗工液は、表面層塗工液1、2、3の順に3つのスプレーヘッドを用い、スプレー法により連続的に塗工した。この際連続的とは、下層を塗工後、指触乾燥しないうちに、次の塗工液をスプレー法により積層することを指す。なお、表面層塗工液1、2は1.5μm相当ずつ塗工し、表面層塗工液3は1μm相当塗工し、合計4μmの表面層を形成した。
【0274】
(比較例12)
実施例6における表面層を表面層塗工液1のみを用い、4μm相当の表面層を形成した以外は、実施例6と全く同様に感光体を作製した。
【0275】
(比較例13)
実施例6における表面層を表面層塗工液3のみを用い、4μm相当の表面層を形成した以外は、実施例6と全く同様に感光体を作製した。
【0276】
(比較例14)
実施例6における表面層を積層せず、電荷輸送層を25μmとした以外は、実施例6と同様に感光体を作製した。
【0277】
以上のように作製した実施例6および比較例12〜14の感光体を第5図に示す電子写真プロセス用カートリッジに装着し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、連続して2万枚の印刷を行い、その時の画像を初期と2万枚後に評価した。更に、2万枚における感光体表面の摩耗量も併せて測定した。以上の結果は、表5に併せて示す。
【0278】
【表5】
【0279】
(実施例7)
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層、5μmの表面層からなる電子写真感光体を形成した。なお、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層は浸漬塗工法で塗工し、表面層はスプレー法にて塗工を行った。
【0280】
下引き層塗工液:
二酸化チタン粉末 400部
メラミン樹脂 65部
アルキッド樹脂 120部
2−ブタノン 400部
【0281】
電荷発生層塗工液:
下記構造のビスアゾ顔料 10部
【0282】
【化35】
ポリビニルブチラール 2部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0283】
電荷輸送層塗工液:
A型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【0284】
【化36】
テトラヒドロフラン 200部
【0285】
表面層塗工液1:
A型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0286】
【化37】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0287】
表面層塗工液2:
A型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0288】
【化38】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 4部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0289】
表面層塗工液3:
A型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0290】
【化39】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 7部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0291】
上記表面層塗工液は、表面層塗工液1、2、3の順に3つのスプレーヘッドを用い、スプレー法により順次塗工した。この際順次塗工とは、下層を塗工後、指触乾燥が完了したら次の塗工液をスプレー法により積層することを指す。なお、表面層塗工液1、2は2μm相当ずつ塗工し、表面層塗工液3は1μm相当塗工し、合計5μmの表面層を形成した。
【0292】
(実施例8)
実施例7における表面層塗工液1、2、3をそれぞれ以下の組成のものに変更した以外は、実施例7同様に感光体を作製した。
【0293】
表面層塗工液1:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0294】
【化40】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 1部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0295】
表面層塗工液2:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0296】
【化41】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0297】
表面層塗工液3:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0298】
【化42】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 3部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0299】
(比較例15)
実施例7における表面層を表面層塗工液1のみを用い、5μm相当の表面層を形成した以外は、実施例7と全く同様に感光体を作製した。
【0300】
(比較例16)
実施例7における表面層を表面層塗工液3のみを用い、5μm相当の表面層を形成した以外は、実施例7と全く同様に感光体を作製した。
【0301】
(比較例17)
実施例7における表面層塗工液1、2、3に含有されるフィラー(アルミナ微粒子)を以下のものに変更した以外は、実施例7と同様に感光体を作製した。
フィラー:導電性酸化錫(比抵抗:5×105Ω・cm、平均一次粒径:0.3μm)
【0302】
(比較例18)
実施例8における表面層を表面層塗工液1のみを用い、5μm相当の表面層を形成した以外は、実施例8と全く同様に感光体を作製した。
【0303】
(比較例19)
実施例8における表面層を表面層塗工液1のみを用い、5μm相当の表面層を形成した以外は、実施例8と全く同様に感光体を作製した。
【0304】
以上のように作製した実施例7、8および比較例15〜19の感光体を図5に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し、帯電部材はスコロトロン方式チャージャー)に装着し、画像露光光源を655nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、連続して2万枚の印刷を行い、その時の画像を初期と2万枚後に評価した。更に、2万枚おける感光体表面の摩耗量も併せて測定した。以上の結果は、表6に併せて示す。
【0305】
【表6】
【0306】
(実施例9)
実施例7で使用した図5に示す電子写真プロセスの帯電部材をスコロトロン・チャージャーから帯電ローラーに変更し、帯電ローラーが感光体に接触するように配置した。この装置に実施例7で作製した感光体を搭載し、下記の帯電条件で、実施例7と同様の評価を行った。
【0307】
帯電条件:
DCバイアス:−930V
その結果、初期及び2万枚目の画像はいずれも良好であったが、2万枚後の画像には帯電ローラー汚れ(トナーフィルミング)に基づく、ごく僅かな異常画像(地汚れ)が認められた。しかしながら、連続プリント時のオゾン臭は実施例7の場合に比べて、格段に少なかった。
【0308】
(実施例10)
実施例9で使用した帯電ローラーの両端部に厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを張り付け、帯電ローラー表面と感光体表面との間に空間的なギャップ(50μm)を有するように配置した。その他の条件は実施例9と全く同様に評価を行った。その結果、実施例9で認められた帯電ローラー汚れは、全く認められず、初期及び2万枚目の画像はいずれも良好であった。しかしながら、2万枚後にハーフトーン画像を出力した際、ごく僅かではあるが、帯電ムラに基づく画像ムラが認められた。
【0309】
(実施例11)
実施例10の評価において、帯電条件を以下のように変更した以外は実施例10と同様の評価を行った。
【0310】
帯電条件:
DCバイアス:−900V
ACバイアス:2.0kV (peak to peak)、周波数2kHz
初期及び2万枚後の画像は良好であった。実施例9で認められた帯電ローラー汚れ、実施例10で認められたハーフトーン画像ムラは、全く認められなかった。
【0311】
(参考例9)
ニッケルベルト上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層、3μmの表面層からなる電子写真感光体を形成した。なお、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層は浸漬塗工法で塗工し、表面層はスプレー法にて塗工を行った。
【0312】
下引き層塗工液:
二酸化チタン粉末 100部
アルコール可溶性ナイロン 100部
メタノール 500部
ブタノール 300部
【0313】
電荷発生層塗工液:
下記構造のビスアゾ顔料 10部
【0314】
【化43】
ポリビニルブチラール 2部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0315】
電荷輸送層塗工液:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0316】
【化44】
テトラヒドロフラン 200部
【0317】
表面層塗工液1:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 6部
【0318】
【化45】
酸化チタン微粒子(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、
平均1次粒径:0.4μm) 1.5部
トルエン 600部
【0319】
表面層塗工液2:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 6部
【0320】
【化46】
酸化チタン微粒子(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、
平均一次粒径:0.4μm) 4部
トルエン 600部
【0321】
表面層塗工液3:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 6部
【0322】
【化47】
酸化チタン微粒子(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、
平均一次粒径:0.4μm) 7部
トルエン 600部
【0323】
上記表面層塗工液は、表面層塗工液1、2、3の順に3つのスプレーヘッドを用い、スプレー法により順次塗工した。この際順次塗工とは、下層を塗工後、指触乾燥が完了したら、次の塗工液をスプレー法により積層することを指す。なお、表面層塗工液1、2、3は1μm相当ずつ塗工し、合計3μmの表面層を形成した。
【0324】
(参考例10)
参考例9における表面層塗工液1、2、3をそれぞれ以下の組成のものに変更した以外は、参考例9と同様に感光体を作製した。
【0325】
表面層塗工液1:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0326】
【化48】
シリカ微粒子(比抵抗:4×1013Ω・cm、
平均一次粒径:0.3μm) 1部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0327】
表面層塗工液2:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0328】
【化49】
シリカ微粒子(比抵抗:4×1013Ω・cm、
平均一次粒径:0.4μm) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0329】
表面層塗工液3:
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Mw=130000) 7部
【0330】
【化50】
シリカ微粒子(比抵抗:4×1013Ω・cm、
平均一次粒径:0.4μm) 3部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0331】
(比較例20)
参考例9における表面層を表面層塗工液1のみを用い、3μm相当の表面層を形成した以外は、参考例9と全く同様に感光体を作製した。
【0332】
(比較例21)
参考例9における表面層を表面層塗工液3のみを用い、3μm相当の表面層を形成した以外は、参考例9と全く同様に感光体を作製した。
【0333】
(比較例22)
参考例9における表面層を積層せず、電荷輸送層を25μmとした以外は、参考例9と同様に感光体を作製した。
【0334】
(比較例23)
参考例9における表面層塗工液1、2、3に含有されるフィラー(酸化チタン微粒子)を以下のものに変更した以外は、参考例9と同様に感光体を作製した。
【0335】
フィラー:導電性酸化チタン(比抵抗:7.1×107Ω・cm)
【0336】
(比較例24)
参考例10における表面層を表面層塗工液1のみを用い、3μm相当の表面層を形成した以外は、参考例10と全く同様に感光体を作製した。
【0337】
(比較例25)
参考例10における表面層を表面層塗工液1のみを用い、3μm相当の表面層を形成した以外は、参考例10と全く同様に感光体を作製した。
【0338】
以上のように作製した参考例9、10および比較例20〜25の感光体を図6に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を655nmのLEDとして、連続して3万枚の印刷を行い、その時の画像を初期と3万枚後に評価した。更に、3万枚おける感光体表面の摩耗量も併せて測定した。以上の結果は、表7に併せて示す。
【0339】
【表7】
【0340】
(参考例11、12)
参考例9に使用したフィラーに処理量が20wt%になるようにチタネート系カップリング剤およびAl2O3による表面処理を行った。このフィラーを用いて、参考例9における表面層塗工液1、2、3を作製した。これらについて、塗工液中の平均粒径(堀場製作所社製:CAPA700で測定)、塗工液の沈降性(試験管内で静置した塗工液粒子の沈降度合いを肉眼で確認)について評価した。結果を表8に示す。なお、表8に示される値は、それぞれの表面層塗工液3の測定結果である。
【0341】
【表8】
【0342】
(参考例13、14)
参考例11、12で作製した分散液を用い、参考例9と同様に感光体を作製した。また、透過率測定用サンプルとして、表面層のみをポリエステルフィルム上に形成した。感光体の外観結果、表面粗さRzと655nmにおける透過率を表9に示す。
【0343】
【表9】
【0344】
(参考例15、16)
参考例13、14で作製した感光体を先の参考例9の評価に用いた装置と同じものに搭載し、画像評価を行った。その結果、参考例9の分散液を用いた感光体より、参考例13、14の分散液を用いた感光体の解像度が勝っていた。
【0345】
(実施例12)
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、21μmの電荷輸送層および4μmの表面層からなる電子写真感光体を形成した。
【0346】
下引き層塗工液:
二酸化チタン粉末 400部
メラミン樹脂 65部
アルキッド樹脂 120部
2−ブタノン 400部
【0347】
電荷発生層塗工液:
図8で表わされたXDスペクトルを有するチタニルフタロシアニン 8部
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 400部
【0348】
電荷輸送層塗工液:
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0349】
【化51】
塩化メチレン 80部
【0350】
表面層塗工液1:
ポリアリレート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【0351】
【化52】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.4μm) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0352】
表面層塗工液2:
ポリアリレート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【0353】
【化53】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.4μm) 4部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0354】
表面層塗工液3:
ポリアリレート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【0355】
【化54】
アルミナ微粒子(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、
平均一次粒径:0.4μm) 8部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 200部
【0356】
上記表面層塗工液は、表面層塗工液1、2、3の順に3つのスプレーヘッドを用い、スプレー法により順次塗工した。この際順次塗工とは、下層を塗工後、指触乾燥が完了したら、次の塗工液をスプレー法により積層することを指す。なお、表面層塗工液1、2は1.5μm相当ずつ塗工し、表面層塗工液3は1μm相当塗工し、合計4μmの表面層を形成した。
【0357】
(比較例26)
実施例12における表面層を表面層塗工液1のみを用い、4μm相当の表面層を形成した以外は、実施例12と全く同様に感光体を作製した。
【0358】
(比較例27)
実施例12における表面層を表面層塗工液3のみを用い、4μm相当の表面層を形成した以外は、実施例12と全く同様に感光体を作製した。
【0359】
(比較例28)
実施例12における表面層を積層せず、電荷輸送層を25μmとした以外は、実施例12と同様に感光体を作製した。
【0360】
以上のように作製した実施例12および比較例26〜28の感光体を図5に示す電子写真プロセス用カートリッジに装着し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、連続して2万枚の印刷を行い、その時の画像を初期と2万枚後に評価した。更に、2万枚における感光体表面の摩耗量も併せて測定した。以上の結果は、表10に併せて示す。
【0361】
【表10】
【0362】
(実施例13)
実施例12において、導電性支持体(JIS1050)を以下の陽極酸化皮膜処理を行い、次いで下引き層を設けずに、実施例12と同様に電荷発生層、電荷輸送層、保護層を設け、感光体を作製した。
【0363】
[陽極酸化皮膜処理]
支持体表面の鏡面研磨仕上げを行い、脱脂洗浄、水洗浄を行った後、液温20℃、硫酸15vol%の電解浴に浸し、電解電圧15Vにて30分間陽極酸化皮膜処理を行った。更に、水洗浄を行った後、7%の酢酸ニッケル水溶液(50℃)にて封孔処理を行った。その後純水による洗浄を経て、6μmの陽極酸化皮膜が形成された支持体を得た。
【0364】
実施例12、実施例13で作製した感光体を図7に示す電子写真プロセス用カートリッジに装着し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、連続して2万枚の印刷を行い、その時の画像を初期と2万枚後に評価した。両者の2万枚後の画像を比較すると、いずれも実使用上問題無いものであるが、地肌部の汚れ(黒点)が、実施例13の画像に比べ、実施例12の方がわずかに多かった。
【0365】
(実施例14)
実施例1で作製した感光体を図10に示す電子写真装置に搭載し、4つすべての画像形成要素は以下に示すプロセス条件にてフルカラー画像20000枚の画像評価を行った。結果を表11に示す。
【0366】
・帯電条件
DCバイアス:−800V
ACバイアス:2.0kV(peak to peak)、周波数2kHz
・露光条件
655nmの半導体レーザー(ポリゴンミラーによる画像書き込み)
【0367】
(比較例29)
実施例14で使用した感光体に変えて、比較例1で作製した感光体を使用した以外は、実施例14と同様に画像評価試験を行った。結果を表11に示す。
【0368】
(比較例30)
実施例14で使用した感光体に変えて、比較例2で作製した感光体を使用した以外は、実施例14と同様に画像評価試験を行った。結果を表11に示す。
【0369】
【表11】
【0370】
【発明の効果】
【0371】
本発明によれば、有機系感光体の高耐久化のために表面層にフィラーを添加した感光体において発生する副作用(耐摩耗性と残留電位発生、耐摩耗性向上と画像ボケの発生などのトレード・オフの関係)を、表面層中のフィラー濃度を感光層側から表面側に向かい連続的に高くなるような濃度傾斜を持たせた構成にすることにより、或いは、表面層を複数層の構成とし、フィラー濃度を感光層側から表面側に向かい順次高くなるような構成にすることにより、両立させることが可能になった。これにより、高耐久で繰り返し使用に対し安定な高画質画像を作像できる感光体が提供される。また、繰り返し使用においても安定な高画質画像を高速で作像可能な電子写真方法、電子写真装置、ならびに電子写真用プロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図2】本発明の別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図3】本発明の別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図4】本発明のさらに別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図5】本発明の電子写真装置を説明するための図である。
【図6】本発明の別の電子写真装置を説明するための図である。
【図7】本発明のプロセスカートリッジを説明するための図である。
【図8】実施例6及び12で用いたチタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルを表わした図である。
【図9】帯電部材側にギャップ形成部材を配置した近接帯電機構の一例を説明するための図である。
【図10】本発明のフルカラー電子写真装置の説明するための図である。
【符号の説明】
(図1〜図4において)
31 導電性支持体
33 単層感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 表面層
(図9において)
29 感光体
30 帯電ローラー
31 ギャップ形成部材
32 金属シャフト
33 画像形成領域
34 非画像形成領域
(図10において)
1 ドラム状感光体
2 帯電部材
3 レーザー光
4 現像部材
5 クリーニング部材
6 画像形成要素
7 転写紙
8 給紙コロ
9 レジストローラー
10 転写搬送ベルト
11 転写ブラシ
12 定着装置
Claims (13)
- 導電性支持体上に少なくとも有機電荷発生物質と有機電荷輸送物質を含有する感光層および表面層を設けてなる電子写真感光体において、
該表面層に比抵抗1010Ω・cm以上のアルミナを含有し、
該アルミナ濃度が支持体側から表面側に向かい、連続的に高くなる濃度傾斜を有する構成である
ことを特徴とする電子写真感光体。 - 導電性支持体上に少なくとも有機電荷発生物質と有機電荷輸送物質を含有する感光層および表面層を設けてなる電子写真感光体において、
該表面層が2層以上の複数層より構成され、
各々の表面層に比抵抗1010Ω・cm以上のアルミナを含有し、
該アルミナ濃度が支持体側から表面側に向かい、順次高くなる構成である
ことを特徴とする電子写真感光体。 - 前記表面層の最表面におけるアルミナ濃度が、表面層を構成する全材料に対して、5〜40重量%である
ことを特徴とする請求項1又は2項の電子写真感光体。 - 前記表面層に電荷輸送物質を含有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。 - 請求項1、3及び4のいずれかに記載の感光体の表面層の作製方法において、
アルミナ濃度の異なる2種類以上の塗工液を用い、
アルミナ濃度の低い液から順にスプレー法により塗布し、この際1つ前に塗工した塗膜が指触乾燥する前に次の塗工液を塗布し積層する
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 請求項2〜4のいずれかに記載の感光体の表面層の作製方法において、
アルミナ濃度の異なる2種類以上の塗工液を用い、
アルミナ濃度の低い液から順にスプレー法により塗布し、この際1つ前に塗工した塗膜が指触乾燥が終了してから次の塗工液を塗布し積層する
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行う電子写真方法において、
該電子写真感光体が請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真方法。 - 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備してなる電子写真装置であって、
該電子写真感光体が請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体である
ことを特徴とする電子写真装置。 - 前記帯電手段が帯電部材を感光体に接触もしくは近接配置したものである
ことを特徴とする請求項8記載の電子写真装置。 - 前記帯電部材と感光体間の空隙が200μm以下である
ことを特徴とする請求項9記載の電子写真装置。 - 前記帯電手段が、帯電部材に直流成分に交流成分を重畳し、感光体に帯電を与えるものである
ことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の電子写真装置。 - 少なくとも電子写真感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段を具備してなる画像形成要素を複数配列したフルカラー電子写真装置であって、
該電子写真感光体が請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体である
ことを特徴とするフルカラー電子写真装置。 - 少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、
該電子写真感光体が請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体である
ことを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
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