JP3767234B2 - 平版印刷版材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版材料に関する。更に詳しくは、粗面化されたアルミニウム支持体に着色剤を吸着させることにより、優れたレーザー光吸収能を付与した光熱変換記録型平版印刷版材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザー光を熱に変換して画像を形成する光熱変換記録型平版印刷版材料においては、特開平9−5993号、同7−285275号、同9−43845号等に示されるとおり、従来は親水性の支持体上に光熱変換材料を含有する画像形成層を設けることが一般的であった。
【0003】
しかしながらこの場合、必然的にレーザー光の入射する画像形成層の表面付近は、多くの熱を発生して画像形成に充分な熱を発生するが、親水性支持体との界面付近ではレーザー光が減衰して画像形成に必要な熱が充分発生しない。
【0004】
よって露光エネルギー量が少ないと、ネガ型の画像形成層では画像強度不足、ポジ型の画像形成層では、現像不良による非画像部汚れが発生してしまうという問題があった。
【0005】
これらは画像形成層中の光熱変換材料を少なくし、支持体表面からの反射光も利用するという方法によりある程度改善可能であるが、支持体からの反射光は、レーザー照射部以外の画像形成層まで拡散してしまうために、解像度が低下してしまい、高解像度を維持しながら高感度化することは困難であった。
【0006】
上記問題を解決する方法としては、支持体上に光熱変換材料を含有した親水性層を設け、その上に画像形成層を塗設する方法が考えられるが、これらは従来の砂目と呼ばれる粗面化され、陽極酸化されたアルミニウム支持体に比較して、印刷時の安定性や耐久性等の印刷適性で劣り、加えて印刷品質の変動要因となる非画像部分ブランケット上のインキ堆積も多いという問題があった。
【0007】
また、別の解決方法として、特開平7−92660号に記載されている、平版印刷版用支持体に染料下塗り層を設ける方法が提案されているが、これは340〜450nmの波長域に吸収を有する染料とキノンジアジドを組み合わせた場合にのみ効果が発現し、解像度こそ向上するものの、下塗層を用いないものと比較して露光感度は向上せずにむしろ低下してしまうという問題があり、他の波長域の活性光線を用いて画像記録を行う画像形成材料では、画像部強度と親水性維持の両立は困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、高感度、高解像度で画像強度、現像性に優れ、かつ充分な印刷適性を有する光熱変換記録型平版印刷版材料及びその為の平版印刷版用支持体の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、以下の構成により達成された。
【0010】
1)アルミニウム板またはアルミニウム合金板に少なくとも陽極酸化処理を施して形成した平版印刷版用支持体上に、少なくとも感熱画像形成層を有する平版印刷版材料において、該平版印刷版用支持体が実質的に陽極酸化処理により生じたマイクロポア内部を選択的に着色処理することにより製造され、活性光線を熱に変換可能であることを特徴とする平版印刷版材料。
【0011】
2)着色処理が電解着色処理であることを特徴とする前記1)に記載の平版印刷版材料。
【0013】
3)活性光線が赤外線であることを特徴とする前記1)または2)に記載の平版印刷版材料。
【0014】
4)平版印刷版用支持体の830nmにおける反射率が0〜35%の範囲内であることを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載の平版印刷版材料。
【0017】
以下、本発明について詳述する。
【0018】
本発明の平版印刷版用支持体に使用される基体としては、アルミニウム板またはアルミニウム合金板が用いられるが、好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。
【0019】
本発明において、特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい(以下、アルミニウム板とアルミニウム合金板をまとめて「アルミニウム板」とする)。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
【0020】
本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、およそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
【0021】
アルミニウム板は、陽極酸化処理だけでなく粗面化処理されていることが好ましい。粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための、例えば、界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては、塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように、両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために、陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0022】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は、1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0023】
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施されるが、これは後に述べる着色処理を行った後に行うことが好ましい。
【0024】
本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同3,181,461号、同3,280,734号および同3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、または電解処理される。他に特公昭36−22063号に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、同4,153,461号、同4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0025】
本発明に用いられる平版印刷版用支持体には陽極酸化処理後、好ましくは必要に応じて行われる親水化処理前に、着色処理が行われる必要がある。
【0026】
尚、本発明の平版印刷版用支持体に施される着色処理は、可視光領域のみならず、紫外領域や赤外領域まで含めて活性光線の吸収性を付与する処理全てを指す。
【0027】
この着色処理は、主として陽極酸化処理後のマイクロポア内部に、色素、金属元素、金属酸化物等をほぼ選択的に吸着させることにより行われる。
【0028】
この選択的着色処理の具体的な方法としては、例えば、陽極酸化処理後のアルミニウム板を、アニオンまたはカチオン性色素の溶液または分散液中に浸漬した後、適当な電圧を印加し、主としてマイクロポア内部に色素を吸着させる方法、や各種金属塩等の電解液中に陽極酸化処理後のアルミニウム板を浸漬、これを電極としてマイクロポア内部をメッキ処理する電解着色法等が挙げられるが、着色剤の定着性や処理の安定性の点から電解着色法が好ましく、ニッケルまたは錫を電析物とする電解着色処理が更に好ましい。
【0029】
上記着色処理は画像記録に用いる活性光線を効率的に吸収するよう、適宜色材や着色量を選択することが好ましい。
【0030】
本発明は画像記録に用いる活性光線が赤外線であるときに、大きな効果が得られるため、本発明を適用する平版印刷版材料は感赤外線平版印刷版材料であることが好ましく、着色処理は赤外線吸収性付与処理であることが好ましい。この場合、830nmの反射率が0〜35%となるように、着色処理を行うことが高感度と高解像度の両立の点で好ましい。
【0031】
本発明の画像形成層には、レーザー光を利用して画像形成可能な変化を生じるものであれば、レーザー光を直接利用するものでも良いし、レーザー光を熱に変換し、これを利用して画像を形成するものでも良いが、レーザー光により生じた熱を利用して画像を形成する感熱画像形成層の方が、本発明の効果がより大きく発現するため好ましい。
【0032】
レーザー光を直接利用する画像形成層の場合は、本発明により記録部分の温度上昇により光化学反応が促進されて効果が発現する。
【0033】
以下、本発明に用いることが可能な画像形成層組成物を具体的に説明する。
【0034】
ポジ型画像形成層組成物の例の1つとして、特開平7−285275号に記載の光を吸収し熱を発生する物質、結着剤と熱分解性の結着剤溶解抑制剤からなる画像形成層組成物が挙げられる。
【0035】
結着剤としては、水不溶かつアルカリ水可溶性の樹脂が好ましい。この性質を有する種々の樹脂を使用することができるが、好ましい樹脂としては、下記ノボラック樹脂を挙げることができる。例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、o−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−またはm−/p−、m−/o−、o−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などのクレゾールホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。その他クレゾール型のフェノール樹脂類も好適に用いられ、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−またはm−/p−、m−/o−、o−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂が好ましく、特に特開昭61−217034号に記載されているフェノール樹脂類が好ましい。
【0036】
またフェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、特開昭51−34711号に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。中でもスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂が特に好ましい。ウレタン系の樹脂としては、特開昭63−124047号、同63−261350号、同63−287942号、同63−287943号、同63−287944号、同63−287946号、同63−287947号、同63−287948号、同63−287949号、特開平1−134354号、同1−255854号等に開示されているものが好ましく用いられる。
【0037】
これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500〜200,000で数平均分子量が200〜60,000のものが好ましい。かかるアルカリ可溶性の高分子化合物は、1種類あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよく、全感光性組成物固形分中、5〜99重量%、好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性の高分子化合物の添加量が5重量%未満であると記録層の耐久性が悪化し、また、99重量%を越えると感度、耐久性の両面で好ましくない。
【0038】
熱分解性でありかつ分解しない状態では、該結着剤の溶解性抑制する物質としては、種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物類等が結着剤の溶解性抑制する能力に優れている。
【0039】
オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げる事ができるが、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号に記載のものがあげられる。好適なキノンジアジド類としては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。
【0040】
o−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができ、例えば、J.コーサー著「ライト・センシティブ・システムズ」(John Wiley&Amp;Sons.,Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号および同3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用され、さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾールホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。
【0041】
o−キノンジアジド化合物の添加量は、好ましくは感光性組成物全固形分に対し、1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも、特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0042】
光(輻射線)を吸収して熱を発生する物質としては、種々の顔料もしくは染料が挙げられる。顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0043】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック、チタンブラック等が使用できる。
【0044】
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0045】
また、染料としては、市販の染料および文献(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。
【0046】
これらの顔料、もしくは染料のうち赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが特に好ましい。赤外光、もしくは近赤外光を吸収する顔料としては、カーボンブラック、チタンブラックが好適に用いられる。赤外光、もしくは近赤外光を吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号、同59−84356号、同59−202829号、同60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、同58−181690号、同58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、同58−224793号、同59−48187号、同59−73996号、同60−52940号、同60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0047】
本発明の画像形成層に上記の画像形成層組成物を適用する場合には、必ずしも光を吸収し熱を発生する物質は必要ではないが、必要に応じ上記物質から適宜選択して使用することが出来る。
【0048】
ポジ型画像形成層の他の例としては、特開平9−171254号に記載のレーザー露光により酸を発生する光酸発生剤と発生した酸により分解し、現像液への溶解性が増大する酸分解化合物および赤外線吸収剤からなる画像形成層組成物が挙げられる。
【0049】
光酸発生剤としては、各種の公知化合物及び混合物が挙げられる。例えば、ジアゾニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びヨードニウムのBF4 -、PF6 -、SbF6 -、SiF6 2-、ClO4 -などの塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、及び有機金属/有機ハロゲン化合物も活性光線の照射の際に酸を形成又は分離する活性光線感光性成分であり、本発明の光酸発生剤として使用することができる。原理的には遊離基形成性の光開始剤として知られるすべての有機ハロゲン化合物は、ハロゲン化水素酸を形成する化合物で、本発明の光酸発生剤として使用することができる。前記のハロゲン化水素酸を形成する化合物の例としては、米国特許第3,515,552号、同3,536,489号及び同3,779,778号及び西ドイツ国特許第2,243,621号に記載されているものが挙げられ、又、例えば、西ドイツ国特許第2,610,842号に記載の光分解により酸を発生させる化合物も、使用することができる。また、特開昭50−36209号に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドを用いることができる。
【0050】
光酸発生剤として、有機ハロゲン化合物が赤外線露光による画像形成における感度及び画像形成材料の保存性の面から好ましい。該有機ハロゲン化合物としては、ハロゲン置換アルキル基を有するトリアジン類及びハロゲン置換アルキル基を有するオキサジアゾール類が好ましく、ハロゲン置換アルキル基を有するs−トリアジン類が特に好ましい。
【0051】
光酸発生剤の含有量は、その化学的性質及び本発明の画像形成材料の組成あるいは物性によって広範囲に変えることができるが、画像形成層の固形分の全重量に対して、約0.1〜約20重量%の範囲が適当であり、好ましくは0.2〜10重量%の範囲である。
【0052】
酸分解化合物としては、具体的には特開昭48−89003号、同51−120714号、同53−133429号、同55−12995号、同55−126236号、同56−17345号等に記載されているC−O−C結合を有する化合物、特開昭60−37549号、同60−121446号に記載されているSi−O−C結合を有する化合物、特開昭60−3625号、同60−10247号に記載されているその他の酸分解化合物。さらにまた特願昭61−16687号に記載されているSi−N結合を有する化合物、特願昭61−94603号に記載されている炭酸エステル、特願昭60−251744号に記載されているオルト炭酸エステル、特願昭61−125473号に記載されているオルトチタン酸エステル、特願昭61−125474号に記載されているオルトケイ酸エステル、特願昭61−155481号に記載されているアセタール及びケタール、特願昭61−87769号に記載されているC−S結合を有する化合物などが挙げられるが、これらのうち、前記特開昭53−133429号、同56−17345号、同60−121446号、同60−37549号及び特願昭60−251744号、同61−155481号に記載されているC−O−C結合を有する化合物、Si−O−C結合を有する化合物、オルト炭酸エステル、アセタール類、ケタール類及びシリルエーテル類が好ましい。
【0053】
酸分解化合物の含有量は、画像形成層を形成する組成物の全固形分に対し、5〜70重量%が好ましく、特に好ましくは10〜50重量%である。酸分解化合物は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
赤外線吸収剤としては、波長700nm以上に吸収を持つ赤外吸収色素、カーボンブラック、チタンブラック、磁性粉等を使用することができる。特に好ましい赤外線吸収剤は700〜850nmに吸収ピークを有し、ピークでのモル吸光係数εが105以上である赤外吸収色素である。赤外吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリウム系色素、クロコニウム系色素、アズレニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、チオピリリウム系色素、ジチオール金属錯体系色素、アントラキノ系色素、インドアニリン金属錯体系色素、分子間CT色素等が挙げられる。
【0055】
また、必要に応じ前記の結着剤を適宜使用することができる。
【0056】
ネガ型画像形成層組成物の例の1つとして、特開平9−5993号に記載の光を吸収し熱を発生する物質、水酸基を有する高分子化合物、および下記一般式(I)で表されるo−ナフトキノンジアジド化合物を含有することを特徴とする画像形成層組成物が挙げられる。
【0057】
【化1】
【0058】
(式中、Aは2価の置換もしくは未置換の脂肪族残基、2価の置換もしくは未置換の芳香族残基を示す)
一般式(I)で表されるo−ナフトキノンジアジド化合物の具体例としては、下記式で表される化合物等を用いることが出来る。
【0059】
【化2】
【0060】
水酸基を有する高分子化合物は、酸の存在下でN−ヒドロキシイミド化合物と熱的に反応し、化学結合を形成するものであれば任意に選択して用いることができる。上記高分子化合物は、一般に線状高分子を得る公知の方法により合成できるが、例えば、水酸基を有するビニルモノマーとそれらと共重合可能な他のビニルモノマーを共重合することにより得ることができる。
【0061】
使用される水酸基を含むビニルモノマーとしては、ブタンジオールモノアクリレート、EHC変性ブチルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセロールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェノキシヒドロキシプロピルアクリレート、EO変性フタル酸アクリレート、EO、PO変性フタル酸メタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、p−2−ヒドロキシエチルスチレン、m−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0062】
上記モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、p−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニル桂皮酸、マレイン酸モノメチルエーテル、マレイン酸モノエチルエーテル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ビニルベンゾエート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、酢酸ビニル、N−(4−スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−フェニルホスホニルメタクリルアミド、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2−メルカプトエチルアクリレート等を挙げることができる。
【0063】
水酸基を含有するビニルモノマーと他の共重合可能なモノマーとは、任意の組み合わせでかつ任意の数のモノマーを共重合させることができるが、水酸基を含有するビニルモノマーと他の共重合可能なモノマーの比率としては、重量%で0.5〜90:99.5〜10の範囲が適当であり、好ましい範囲としては1〜70:99〜30、更に好ましい範囲としては3〜40:97〜60である。また水酸基を有する線状高分子は、水酸基を有するジカルボン酸化合物とジオール化合物との共縮合により得ることができる。例えば、2−ヒドロキシテレフタル酸、3−エチルヒドロキシテレフタル酸、2−ヒドロキシ−プロピルジカルボン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等のジオール化合物の共縮合物を挙げることができる。
【0064】
いずれの画像形成層組成物にも上記以外の成分として、画像の感脂性を向上させるオクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂の様な各種添加剤を用いることができる。
【0065】
また、画像形成層組成物の現像液および補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、ほう酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。
【0066】
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
【0067】
これらのアルカリ剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって、現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0068】
ネガ型画像形成層の他の例としては、特開平9−123387号に記載の、熱の影響下で合体可能であり、そして親水性結合剤中に分散された疎水性熱可塑性重合体粒子を含んでなる像形成層の融合により、画像を形成する画像形成層組成物が挙げられる。
【0069】
親水性結合剤としては、例えば、合成ホモまたは共重合体、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルメチルエーテルまたは天然結合剤、例えば、ゼラチン、多糖、例えば、デキストラン、プルラン、セルロース、アラビアゴム、アルギン酸が用いられる。
【0070】
疎水性熱可塑性重合体粒子としては、35℃以上の、そしてより好適には50℃以上の融合温度のものが好ましく用いられる。疎水性熱可塑性重合体粒子の融合温度には特別な上限がないが、この温度は重合体粒子の分解点より低い必要があり、分解が起きる温度より10℃以上低いことが好ましい。該重合体粒子を融合温度より高い温度にさらすと、これらは融合して親水性層の中で疎水性集塊を生成し、普通の水または水性液体の中に不溶性の画像部となる。
【0071】
疎水性熱可塑性重合体粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等およびそれらの共重合体が挙げられるが、これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0072】
高分子重合体の重量平均分子量Mwは5,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。高分子重合体中に酸価を有する官能基を含む場合には、これらの一部または全部が、多価金属イオンを介して分子間架橋し一体化した構造のアイオノマー樹脂であっても良い。
【0073】
疎水性熱可塑性重合体粒子は乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、従来公知のいずれの方法で重合された高分子重合体からなるものでも良い。
【0074】
溶液重合法または気相重合法で重合された高分子重合体を、微粒子化する方法としては、高分子重合体を有機溶媒に溶解した溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水または水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。また、いずれの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いても良い。
【0075】
疎水性熱可塑性重合体粒子は、分散媒に分散された分散液の状態で用いられることが好ましく、水性の分散液であることが更に好ましい。
【0076】
疎水性熱可塑性重合体粒子の粒径は、0.005〜10μmの粒径を有することが好ましく、疎水性熱可塑性重合体粒子を含む層中に含有される疎水性熱可塑性重合体粒子の量は、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも45重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%である。
【0077】
この画像形成層には、必要に応じて光を吸収し熱を発生する物質としては、前述のものより適宜選択して用いることができる。
【0078】
また、この画像形成層組成物用いた画像形成材料は、画像記録後、印刷機に装着する前に現像剤を用いて行っても良いし、印刷機に装着した後に印刷機上にて手動または自動で現像を行っても良い。印刷機の版胴に取り付けた画像記録済みの画像形成材料を、インキローラーによるインキ供給や、湿し水ローラーによる湿し水供給を利用して現像する方法が、簡便かつ安定して現像を行えるため好ましい。この場合、湿し水とは一般的には酸性pHを有し、界面活性剤やイソプロパノールの如きアルコールを必要に応じて含んでなる水性液を指すが、有用な湿し液に関しては特別な制限はなく、湿し水として市販されている各種の湿し液を使用することができる。
【0079】
その他の現像方法として、現像剤による疎水性熱可塑性重合体粒子を含む層の溶解、再分散のみならず、膨潤剥離や粘着剥離を利用した現像でも良い。
【0080】
本発明の画像形成層に上記の画像形成層組成物を適用する場合には、必ずしも光を吸収し熱を発生する物質は必要ではないが、必要に応じ光を吸収し熱を発生する物質から適宜選択して使用することが出来る。
【0081】
本発明における平版印刷版用支持体表面の反射率は、画像形成層を設ける側の表面を積分球を用いて、JISに準拠した方法にて測定される。具体的には日立分光光度計U−4000型測定装置を用い、測定入射光角度5°で測定した反射光量から通常の方法により算出した反射率を用いる。
【0082】
【実施例】
〈平版印刷版用支持体−1の製造〉
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、85℃に保たれた10%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、5秒間脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂したアルミニウム板を、25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後、水洗した。次いでこのアルミニウム板に、研磨材スラリー(アルミナ:#400、18wt%)を使用し、回転するナイロンブラシを、支持体に押し付けることにより粗面化を行った。粗面化は支持体に対してブラシの押し込みを15mmとし、ラインスピード5m/minで所定の回数を通過させて行った。ブラシの回転方向は支持体走行方向の逆方向とし、回転数は毎分400回転とした。
【0083】
次いで、50℃に保たれた1%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、溶解量が35g/m2になるようにエッチングし、次いで、25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後、水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、温度25℃、電流密度2A/dm2の条件で1分間陽極酸化処理を行った。その後、80℃に保たれた0.1%の酢酸アンモニウム水溶液中に30秒間浸漬し、封孔処理を行い、80℃で5分間乾燥して平版印刷版用支持体−1を製造した。
【0084】
こうして得られた平版印刷版用支持体−1の830nmの反射率を、発明の詳細な説明に記載の方法で測定したところ、その反射率は49%であった。
【0085】
〈平版印刷版用支持体−2の製造〉
平版印刷版用支持体−1に赤外線吸収剤(CY−4:日本化薬製)の1%アセトニトリル溶液を、乾燥後の膜厚が0.02g/m2となるように塗布、80℃で3分間乾燥して平版印刷版用支持体−2を得た。
【0086】
得られた平版印刷版用支持体−2の830nm反射率を同様に測定したところ、その反射率は10%であった。
【0087】
また、赤外線吸収剤を下塗りする前後の支持体表面を、各々電子顕微鏡観察して比較したところ、赤外線吸収剤は表面のマイクロポア内のみならず、ほぼ表面全体に付着していた。
【0088】
〈平版印刷版用支持体−3の製造〉
平版印刷版用支持体−1に、赤外線吸収剤(CY−17:日本化薬製)の1%水溶液を乾燥後の膜厚が0.025g/m2となるように塗布、80℃で3分間乾燥して平版印刷版用支持体−3を得た。
【0089】
得られた平版印刷版用支持体−3の830nm反射率を同様に測定したところ、その反射率は13%であった。
【0090】
また、赤外線吸収剤を下塗りする前後の支持体表面を、各々電子顕微鏡観察して比較したところ、赤外線吸収剤は表面のマイクロポア内のみならず、ほぼ表面全体に付着していた。
【0091】
〈平版印刷版用支持体−4の製造〉
陽極酸化処理後、封孔処理を行う前に、27℃に加温した硫酸ニッケル(100g/L)とホウ酸(25g/L)の水溶液中に陽極酸化処理後のアルミニウム板を浸漬、これを電極として50Hz、15Vの交流電圧を1分間印加することにより着色した以外は、平版印刷版用支持体−1と同様にして平版印刷版用支持体−4を製造した。
【0092】
得られた平版印刷版用支持体−4の830nm反射率を同様に測定したところ、その反射率は40%であった。
【0093】
また、電解着色処理前後の支持体表面を各々電子顕微鏡観察して比較したところ、着色材は表面のマイクロポア内部のみに付着しており、他の部分は着色処理前と変わらなかった。
【0094】
〈平版印刷版用支持体−5の製造〉
着色処理の交流電圧印加時間を3分間とした以外は、平版印刷版用支持体−4と同様にして平版印刷版用支持体−5を製造した。
【0095】
得られた平版印刷版用支持体−5の830nm反射率を同様に測定したところ、その反射率は11%であった。
【0096】
また、電解着色処理前後の支持体表面を各々電子顕微鏡観察して比較したところ、着色材は表面のマイクロポア内部のみに付着しており、他の部分は着色処理前と変わらなかった。
【0097】
〈平版印刷版用支持体−6の製造〉
着色処理の交流電圧印加時間を6分間とした以外は、平版印刷版用支持体−4と同様にして平版印刷版用支持体−6を製造した。
【0098】
得られた平版印刷版用支持体−6の830nm反射率を同様に測定したところ、その反射率は11%であった。
【0099】
また、電解着色処理前後の支持体表面を各々電子顕微鏡観察して比較したところ、着色材は表面のマイクロポア内部のみに付着しており、他の部分は着色処理前と変わらなかった。
【0100】
〈平版印刷版用支持体−7の製造〉
白色ポリエステルフィルム(ルミラーE60・188μm:東レ社製)の片面にコロナ放電処理を施し、この処理面上に下記親水性付与層塗工液の分散液を乾燥膜厚8μmとなるよう塗布し、150℃で5分で乾燥し、親水性付与層を設け、平版印刷版用支持体−7とした。
【0101】
《親水性付与層塗工液》
得られた平版印刷版用支持体−7の830nm反射率を同様に測定したところ、その反射率は11%であった。
【0102】
〈酸分解化合物Aの合成〉
1,1−ジメトキシシクロヘキサン(0.5モル)、フェニルセロソルブ(1.0モル)及びp−トルエンスルホン酸80mgを攪拌しながら、100℃で1時間反応させ、その後150℃まで徐々に温度を上げ、更に150℃で4時間反応させた。反応により生成するメタノールはこの間に留去した。冷却後、テトラヒドロフラン500ml及び無水炭酸カリウム2.5gを加えて攪拌し濾過した。濾液から溶媒を減圧留去し、更に150℃、高真空下で低沸点成分を留去し、粘調な油状の下記酸分解化合物Aを得た。
【0103】
【化3】
【0104】
比較例1
平版印刷版用支持体−1上に、下記組成の画像形成層組成物−1を乾燥後の膜厚が2g/m2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥して平版印刷版材料−1を得た。
【0105】
《画像形成層組成物−1》
【0106】
【化4】
【0107】
【0108】
【化5】
【0109】
この画像形成材料を、半導体レーザー(波長830nm、出力100mW/ch)で感光層表面に画像露光を行った。レーザー光径はピークにおける強度の1/e2で6.35μmであった。また、解像度は走査方向、副走査方向とも4000dpiとし、走査時間を変化させることにより、露光エネルギー量を250〜450mJ/cm2まで25mJ/cm2間隔で変化させて、同一の画像を露光した。こうして得られた露光済み平版印刷版材料−1を、ポジPS版用現像液SDR−1(コニカ(株)製)を水で容積比6倍に希釈した27℃の現像液に25秒間浸漬し、非画像部(露光部)を除去した後、水洗して平版印刷版−1を得た。
【0110】
こうして得られた印刷版を印刷機(DAIYA:三菱重工(株)製)に取り付け印刷を行ったところ、375mJ/cm2以下の露光エネルギー量では現像不良による非画像部汚れを生じてしまい、印刷可能な画像形成には400mJ/cm2の露光エネルギー量が必要であった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0111】
なお、印刷時湿し水量許容度の判定は以下のように行った。
【0112】
印刷当初に最も良好な印刷物が得られる湿し水量に調整して、その湿し水量を適正水量とし、その時の水元ローラー回転数を5%、10%減じた水量を、各々適正−5%、適正−10%の湿し水量として、この条件での印刷物を下記基準により判定した。
【0113】
○:シャドウ部網点のつぶれ、非画像部分の汚れを発生することなく印刷することが可能
△:非画像部分の汚れは発生しないものの、シャドウ部網点のつぶれが生じ、良好な印刷物が得られない
×:非画像部分に汚れを生じてしまう。
【0114】
比較例2
画像形成層組成物の赤外線吸収剤の量を1.1部に変更した以外は、比較例1と同様にして平版印刷版材料−2を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−2を得た。
【0115】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、350mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能であったが、画像解像度は2000dpiに低下してしまった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0116】
比較例3
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−2に変更した以外は、比較例2と同様にして平版印刷版材料−3を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−3を得た。
【0117】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、350mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能であったが、湿し水量の僅かな変化でシャドウ部再現性の低下や非画像部汚れを生じてしまい、品質の安定した印刷物を得ることが困難であった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0118】
比較例4
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−3に変更した以外は、比較例2と同様にして平版印刷版材料−4を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−4を得た。
【0119】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、375mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能であったが、画像部の強度が低下して印刷可能枚数が減少してしまった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0120】
実施例1
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−4に変更した以外は、比較例2と同様にして平版印刷版材料−5を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−5を得た。
【0121】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、380mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能で、画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水許容度のいずれも劣化させることなく、比較例1よりも露光エネルギー量を低減することが出来たばかりか、印刷品質変動の要因となる非画像部分ブランケット上のインキ堆積も減少した。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0122】
実施例2
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−5に変更した以外は、比較例2と同様にして平版印刷版材料−6を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−6を得た。
【0123】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、350mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能で、画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水許容度のいずれも劣化させることなく、比較例1のみならず比較例2よりも露光エネルギー量を低減することが出来たばかりか、印刷品質変動の要因となる非画像部分ブランケット上のインキ堆積も減少した。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0124】
実施例3
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−6に変更した以外は、比較例2と同様にして平版印刷版材料−7を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−7を得た。
【0125】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、325mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能で、画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水許容度のいずれも劣化させることなく、比較例1のみならず比較例2よりも露光エネルギー量を低減することが出来たばかりか、印刷品質変動の要因となる非画像部分ブランケット上のインキ堆積も減少した。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0126】
比較例5
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(重合体に対して1%)で安定化されたポリメタクリル酸メチル(90nmの平均粒子直径)の脱イオン水中20%分散液6.75gに、7gのカーボンブラック15%分散液および1mlのグリセリン水溶液(50%)、73gの水を連続して加え、そして最後に攪拌しながら200.000g/モルの重量平均分子量を有する98%加水分解されたポリ酢酸ビニルの5%溶液12gを加え、画像形成層組成物−2を作製し、これを平版印刷版用支持体−1上に30g/m2の量(湿潤コーテイング量)でコーティングしてそれを35℃で乾燥することにより、平版印刷版材料−8を得た。
【0127】
得られた平版印刷版材料−8に比較例1で用いた半導体レーザーで、露光部と未露光部を反転させた以外は、実施例1と同様にして画像露光を行った。画像露光後、カルボキシメチルセルロース1%水溶液中に浸漬、洗浄することにより、非画像部(未露光部)を除去して平版印刷版−8を得た。
【0128】
こうして得られた印刷版を印刷機(DAIYA:三菱重工(株)製)に取り付け印刷を行ったところ、425mJ/cm2以下の露光エネルギー量では、画像層融着不良による画像部着肉不良を生じてしまい、印刷可能な画像形成には450mJ/cm2の露光エネルギー量が必要であった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0129】
比較例6
画像形成層組成物−2のカーボンブラック添加量を7gから4gにした以外は、比較例5と同様にして平版印刷版材料−9を得、比較例5同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−9を得た。
【0130】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、400mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能であったが、画像解像度は2000dpiに低下してしまった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0131】
比較例7
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−2に変更した以外は、比較例6と同様にして平版印刷版材料−10を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−10を得た。
【0132】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、400mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能であったが、湿し水量の僅かな変化でシャドウ部再現性の低下や非画像部汚れを生じてしまい、品質の安定した印刷物を得ることが困難であった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0133】
比較例8
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−3に変更した以外は、比較例6と同様にして平版印刷版材料−11を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−11を得た。
【0134】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、425mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能であったが、画像部の強度が低下して印刷可能枚数が減少してしまった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0135】
実施例4
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−4に変更した以外は、比較例6と同様にして平版印刷版材料−12を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−12を得た。
【0136】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、420mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能で、画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水許容度のいずれも劣化させることなく、比較例5よりも露光エネルギー量を低減することが出来たばかりか、印刷品質変動の要因となる非画像部分ブランケット上のインキ堆積も減少した。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0137】
実施例5
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−5に変更した以外は、比較例6と同様にして平版印刷版材料−13を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−13を得た。
【0138】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、375mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能で、画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水許容度のいずれも劣化させることなく、比較例5のみならず比較例6よりも露光エネルギー量を低減することが出来たばかりか、印刷品質変動の要因となる非画像部分ブランケット上のインキ堆積も減少した。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0139】
実施例6
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−6に変更した以外は、比較例6と同様にして平版印刷版材料−14を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−14を得た。
【0140】
こうして得られた印刷版を比較例1同様、印刷を行ったところ、325mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能で、画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水許容度のいずれも劣化させることなく、比較例5のみならず比較例6よりも露光エネルギー量を低減することが出来たばかりか、印刷品質変動の要因となる非画像部分ブランケット上のインキ堆積も減少した。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0141】
比較例9
平版印刷版用支持体−1を平版印刷版用支持体−7に変更した以外は、比較例6と同様にして平版印刷版材料−15を得、同様に画像露光、現像、水洗を行って平版印刷版−15を得た。
【0142】
こうして得られた印刷版を比較例5同様、印刷を行ったところ、325mJ/cm2の露光エネルギー量で印刷可能な画像形成が可能であったが、砂目を用いた場合に比べて湿し水量の僅かな変化でシャドウ部再現性の低下を生じやすく、品質の安定した印刷物を得るのが困難であるばかりか、親水性層が容易に摩耗してしまうため、印刷可能枚数が大幅に減少してしまった。このときの画像解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度(非画像部汚れ耐性)、500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度を併せて表1に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜6は比較例1〜9に比較して、露光感度、解像度、印刷可能枚数、印刷時湿し水量許容度および500枚刷了後の非画像部分ブランケット上インキ濃度のいずれの項目でも優れていることが分かる。
【0145】
【発明の効果】
従来の砂目と呼ばれる粗面化されたアルミニウム支持体のマイクロポア内部のみに着色剤を吸着させることにより、砂目の形状、親水性や画像形成層との接着性を損なうことなくレーザー光吸収能を付与することができ、高感度・高解像度で画像強度・現像性に優れ、かつ充分な印刷適性を有する光熱変換記録型平版印刷版材料を得ることが可能となった。
Claims (4)
- アルミニウム板またはアルミニウム合金板に少なくとも陽極酸化処理を施して形成した平版印刷版用支持体上に、少なくとも感熱画像形成層を有する平版印刷版材料において、該平版印刷版用支持体が実質的に陽極酸化処理により生じたマイクロポア内部を選択的に着色処理することにより製造され、活性光線を熱に変換可能であることを特徴とする平版印刷版材料。
- 着色処理が電解着色処理であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版材料。
- 活性光線が赤外線であることを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版材料。
- 平版印刷版用支持体の830nmにおける反射率が0〜35%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版材料。
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