JP3766629B2 - 水酸化テトラアルキルアンモニウム廃液の濃縮方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトレジストの現像廃液等として得られる低濃度の水酸化テトラアルキルアンモニウム(以下、TAAH)を含有する廃液の流下式薄膜蒸発器による新規な濃縮方法に関する。詳しくは、上記TAAHを含有する廃液を、流下式薄膜蒸発器に供給して効率的に且つ簡易に濃縮して高濃度のTAAH廃液を得るための濃縮方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子部品の製造工程において、ウェハー等の基板上にパターンを形成する場合、基板表面に形成した金属層にネガ型或いはポジ型のレジストを塗布し、これに、該パターン形成用のフォトマスクを介して露光し、未硬化部分或いは硬化部分に対してTAAHを含有する水溶液よりなる現像液を使用して現像後、エッチングを行って上記金属層にパターンを形成する作業が行われる。
【0003】
上記方法によって得られるTAAH含有廃液は、通常、1重量%以下の低濃度でTAAHを含有する。このような低濃度TAAH含有廃液を、焼却処分場や回収再生工場に運搬することはエネルギーコスト的に極めて不利である。したがって、焼却処分や回収して再利用する場合において、焼却処分場や回収再生工場への運搬に先立ち、該廃液を高濃度に濃縮することが必要であった。
【0004】
TAAH含有廃液の濃縮方法として、水を蒸発させることによって濃縮を行う方法が提案されている。ところが、レジスト現像工程から発生するTAAH含有廃液は、通常界面活性剤や、レジスト由来の有機物を含有している。上記界面活性剤は、レジスト膜への濡れ性向上のために、現像液に添加されている。また、レジスト由来の有機物もある程度の界面活性を有している。そのため、水の蒸発時における液の発泡が激しく、濃縮効率を低下させるという問題を有していた。
【0005】
かかる問題に対して、消泡剤を使用して発泡を抑える方法が考えられるが、消泡剤はTAAHの回収・リサイクルに妨げとなる場合があり、その使用が制限される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、レジスト及び界面活性剤を溶解したTAA廃液を蒸発濃縮する際に、上記レジスト及び界面活性剤による発泡を抑えながら、効率よく濃縮を行うことができる濃縮方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、前記TAAH廃液の蒸発濃縮に流下式薄膜蒸発器を使用し、その加熱面の下端における液膜の厚みが特定の範囲となるようにTAAH廃液の供給液量及び/又は加熱面の加熱条件を調節することにより、かかる加熱面におけるTAAH廃液の発泡が極めて効果的に防止でき、TAAH廃液の濃縮液を効率よく得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、レジスト由来の有機物及び界面活性剤を含有する水酸化テトラアルキルアンモニウム廃液を流下式薄膜蒸発器に供給して濃縮するに際し、該流下式薄膜蒸発器の加熱面の下端における液膜の厚み(T1)を0.3〜1.2mmに調整することを特徴とする水酸化テトラアルキルアンモニウム廃液の濃縮方法である。
【0009】
尚、本発明において、上記加熱面の下端における液膜の厚み(T1)は、Wilkeの実験式を用いて下記の算出方法によって求めた値である。
【0010】
先ず、加熱面下端における単位横幅あたりの流量m[kg/m・h]を次式で求める。
【0011】
【数1】
w;液流量[kg/h]
L;加熱面下端の長さ[m]
(加熱面が複数の管の内壁により形成される場合、Lは、N×Di×πにより求められる。但し、Nは管本数[本]、Diは管内径[m]、πは円周率[−]である。)
次に、レイノルズ数Reを次式で求める。
【0012】
【数2】
μl;濃縮液の粘度[kg/m・h]
上記式により求めたReが1600未満の場合、T1は次式で求められる。
【0013】
【数3】
また、上記式により求めたReが1600以上の場合、T1は次式で求められる。
【0014】
【数4】
g;重力加速度[m/h2]
ρl;濃縮液の密度[kg/m3]
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、処理の対象となるTAAH廃液は、レジスト由来の有機物及び界面活性剤を溶解したTAAH水溶液であれば特にその由来は問わない。代表的なものとして、半導体やカラーフィルター等の電子部品等を製造する設備の現像工程においてレジスト現像液としてTAAH水溶液を使用して現像後に得られる廃液が挙げられる。上記廃液には、一般的には、界面活性剤やレジスト由来の有機物が含有されている。このような界面活性剤やレジスト由来の有機物の含有量は、通常0.01〜1重量%程度である。
【0016】
本発明において、上記TAAHのアルキル基の種類は、メチル、エチル、プロピル、ブチル等が一般的である。そのうち、現像液としては、アルキル基がメチルである水酸化テトラメチルアンモニウムが通常使用される。
【0017】
また、本発明の濃縮方法に好適に供されるTAAH廃液のTAAH濃度は、0.01〜30重量%であり、特に、0.01〜20重量%である。そのうち、TAAH濃度が1重量%以下のTAAH廃液は、蒸発時の発泡が激しく、本発明が好ましく適用される。
【0018】
本発明において使用される流下式薄膜蒸発器は、公知の構造のものが特に制限なく使用される。一般的な構造を示せば、図1に示すように、加熱手段2を備えた、垂直又は傾斜させて設けられた湾曲面或いは平面よりなる加熱面1、該加熱面の上部に設けられる液供給口3、及び該加熱面の下部に設けられる液取出口4を有し、上記液供給口から供給された液を加熱面表面で液膜5として流下せしめるようにした構造を有するものが挙げられる。
【0019】
更に具体的に流下式薄膜蒸発器を例示すれば、加熱面を湾曲面で形成する態様としては、筒状又はコーン状の形状が好適である。この場合、加熱面を内面とし、外面を加熱手段によって加熱する方法が一般的である。
【0020】
また、上記加熱面の加熱手段は特に制限されないが、図に示すように、熱媒体供給口6と排出口7を有するジャケットを設けて熱媒体を供給する方法、ヒーターにより加熱する方法等挙げられるが、上記熱媒体を使用する方法が特に好ましい。上記熱媒体としては、水蒸気が一般的である。
【0021】
上記加熱面は、1つの蒸発器に単数設けてもよいし、複数設けてもよい。また、加熱手段は、1つの加熱面に1つの加熱手段を設けてもよいが、加熱面の上端から下端までの温度分布を調整するために上下方向に複数に分割してもよい。
【0022】
なお、本発明の流下式薄膜蒸発器を使用した濃縮は常圧で実施してもよいし、減圧装置を設けて減圧下で行ってもよいが、減圧下に行うことが望ましい。この場合、圧力は300torr以下、特に、100〜200torrが好ましい。
【0023】
本発明において、重要な要件は、上記流下式薄膜蒸発器において、加熱面の下端における液膜の厚み(T1;図において矢印で示す部分の厚み)を0.3〜1.2mm、好ましくは0.3〜0.8mmに調整することにある。即ち、上記加熱面下端における液膜の厚みを1.2mm以下に制限することにより、該加熱面の下部における発泡が極めて効果的に防止でき、発泡により発生した泡が堆積し、該加熱面における液の流下を妨げることなく、効率的にTAAH廃液を濃縮することができる。かかる効果は、供給される液粘度の変化によっても変わりなく発揮されるが、特に、加熱面の下端から取り出されるTAAH廃液の液粘度が1〜4センチポイズの範囲で効果が顕著である。
【0024】
上記T1を1.2mm以下とすることにより、発泡が防止できる機構については、明らかではないが、本発明者らは、液膜を薄くすることによって該液膜が加熱されて発生する気泡が成長する間に液膜表面に出て破裂し易くなるためと推定している。
【0025】
一方、前記T1が0.3mmより薄い場合は、工業的な実施において処理能力が低下するという問題を有する。また、特に、加熱面での濃縮倍率が高い場合には、含有されるレジストの析出物等により液の滞留が起こるおそれがある。
【0026】
本発明において、T1を上記範囲に調整する方法は特に制限されない。好適な方法を例示すれば、加熱面に対して供給するTAAH廃液の供給量を調整する方法、加熱面への供給熱量を調整する方法などが一般的である。
【0027】
本発明において、上記方法によってT1を調整するに際し、加熱面の上端における液膜の厚み(T2mm)は、特に制限されないが、下記の範囲となるように供給液量を調整することにより、加熱面の全面にわたって濃縮時の発泡をより防止することができ、好ましい。
【0028】
T1 < T ≦ 5
上記T2の厚みを調整する方法は特に制限されないが、液供給口3より供給するTAAH廃液の量を調整することが好ましい。
【0029】
本発明の流下式薄膜蒸発器を使用した濃縮方法は、対象とするTAAH廃液に対して1回実施してもよいし、液を循環して複数回実施してもよい。
【0030】
図2は本発明の方法の実施に使用することができる代表的な流下式薄膜蒸発器を示す概略図である。図において、TAAH廃液槽103より液供給ポンプ102によって縦型流下式薄膜蒸発器101に供給されたTAAH廃液は、複数の管の内壁に形成された加熱面を流下して濃縮されながら該加熱面の下端に至る。該加熱面の下端では、前記したように液膜の厚みを調整するように運転条件が採用される。また、加熱面下端より滴下する液滴が下部の貯液部109に落下することによる発泡を防止するため、液面カバー108を設けることが好ましい。一方、真空ポンプ3によって吸引されたガスは、凝縮器105によって冷却され、貯槽106より水13が取り出される。該真空ポンプ107の出力を調整することにより、蒸発器内の圧力を任意に減圧することができる。
【0031】
本発明において、流下式薄膜蒸発器による濃縮の程度は特に制限されないが、1回の濃縮による濃縮倍率が、供給されるTAAH廃液のTAAH濃度を1.1〜50倍、好ましくは、1.2〜40倍程度に濃縮するように、且つ濃縮液のTAAH濃度が40重量%を超えない範囲で行うのが一般的である。
【0032】
また、本発明において、流下式薄膜蒸発器より得られる濃縮液を更に、減圧蒸発器の気相部に供給して更に濃縮を行うことも好適な態様である。即ち、流下式薄膜蒸発器において得られる濃縮液は高温度の液であり、かかる温度を実質的に維持した状態で、或いは必要に応じて追加の加熱を行った後気相部に供給することにより、減圧蒸発器の液相部に加熱器を設けること無く、効率的に濃縮を行うことができる。
【0033】
また、該液相部に加熱器を設ける場合においても、該加熱器での加熱を減少することができ、かかる加熱による発泡を抑えることも可能である。上記気相部への濃縮液の供給は内壁面に対して行い、該壁面を流下させることが発泡を抑えるために好ましい。
【0034】
上記流下式薄膜蒸発器による濃縮と減圧蒸発器による濃縮は、両者を組み合わせて少なくとも2回実施することも可能である。
【0035】
また、上記流下式薄膜蒸発器及び減圧蒸発器は、液相部(貯液部)の液面に、消泡機能を有するメッシュ状、或いは多孔質状のフロートを浮かべることにより、発泡によって生じた気泡を積極的に破壊するようにした構造を採用することは、TAAH廃液の濃縮時の発泡による問題を軽減する手段として好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明をより具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1
LSI製造工程から排出されるフォトレジスト、界面活性剤及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含有するフォトレジスト現像廃液を使用した。この廃液は、TMAH濃度が0.6重量%、界面活性剤、フォトレジスト由来のCOD濃度が67ppm、pHが12.9であった。
【0038】
図2に示す縦型流下式薄膜式蒸発器を使用して上記廃液の濃縮を行った。上記濃縮は、真空ポンプ7にて蒸発器内を150torrの減圧にして実施した。また、縦型流下式薄膜式蒸発器1の加熱面は、伝熱管内径が0.0214m、伝熱管長さが1m、伝熱管本数が7本のものによって構成し、その表面を水蒸気で約130℃に加熱した。
【0039】
上記蒸発器に前記TMAH廃液(被処理液)を表1に示す供給量で供給し、加熱面下端より得られる濃縮液の液流量、密度、粘度より、前述したWilkeの実験式により液膜の厚さを算出した。
【0040】
各TMAH廃液の供給量毎に下記の基準により発泡性を観察し、その結果を表1に併せて示した。
【0041】
○:加熱面下端での発泡がなく安定に連続運転が可能
△:加熱面下端での若干の発泡があるが連続運転は可能
×:加熱面下端での発泡により連続運転不可
【0042】
【表1】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明の方法によれば、TAAHを含有する廃液を、効率的に且つ簡易に濃縮して高濃度のTAAH廃液を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において使用される流下式薄膜蒸発器の部分的な構造を示す概略図
【図2】本発明において使用される流下式薄膜蒸発器の代表的な態様を示す概略図
【符号の説明】
1 加熱面
2 加熱手段
3 液供給口
4 液取出口
5 液膜
6 熱媒体供給口
7 熱媒体排出口
101 たて型流下式薄膜蒸発器
102 被処理液供給ポンプ
103 被処理液槽
104 濃縮液槽
105 冷却器
106 凝縮水槽
107 真空ポンプ
108 分散板
Claims (1)
- レジスト由来の有機物及び界面活性剤を含有する水酸化テトラアルキルアンモニウム廃液を流下式薄膜蒸発器に供給して濃縮するに際し、該流下式薄膜蒸発器の加熱面の下端における液膜の厚み(T1)を0.3〜1.2mmに調整することを特徴とする水酸化テトラアルキルアンモニウム廃液の濃縮方法。
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