JP3762862B2 - 細胞培養容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は細胞培養容器、特に多穴型細胞培養容器の製造手法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
多穴型容器(マイクロプレート)は、主に試料の定量測定用に使用されている。その材質は光学的に透明な材質で構成され、安価、割れ難く加工し易い、例えばポリスチレン、MCナイロン等のプラスチック、硬質ガラスが主であるため、細胞の培養と観察を行なう細胞培養容器として使用するには、測定精度の観点から満足のゆくものではなかった。
【0003】
すなわち、細胞培養容器の材質には一般的なプラスチック、硬質ガラスを用いることが最も一般的であるが、これらの材質自体も微弱であるが、蛍光を発している。一方、培養細胞自体の蛍光強度は、もともと非常に微弱であるため、培養細胞の微弱蛍光を測定するとき、該培養細胞の微弱蛍光と細胞培養容器から発せられる蛍光が重なり、培養細胞からの真の蛍光強度が正確に測定できなかった。
【0004】
また、凹部の側部と底部が一体的に形成されたマイクロプレートを作るには、特に底部の加工が難しく、このため、通常、底部の厚さが1mm以上ある場合が多い。しかしながら、例えばレーザ共振点顕微鏡法では底部の厚さが例えば、0.17mm以下等でないと使用できない場合がある。
また、前述のような一般的なプラスチック、硬質ガラス製のマイクロプレートでは、例えば300nm以下等の波長の光を通さない場合が多い。しかしながら、例えば300nm以下等の波長で測定する必要がある場合がある。
【0005】
ところで、これらの問題の解決手段のヒントとして、凹部の側部と底部を別個に作り、底部を無蛍光性の材質で構成することにより、細胞の培養と観察が可能にした一穴型の細胞培養容器がある。
この一穴型の無蛍光性を有する細胞培養容器は、無蛍光性底板が高価、割れ安く加工し難い等の理由から、通常、底部のみに無蛍光性底板が用いられ、側部は安価、割れ難く加工し易いプラスチック等の材質で作り、これらを接着剤により接着固定してつくられることが多い。
【0006】
この細胞培養容器により、細胞の培養と観察が容易となり、特に無蛍光性の材質で構成された底部を用いることにより、底部を介して凹部内での培養細胞から発せられる微弱蛍光をより正確に測定することが可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一穴型の無蛍光性の細胞培養容器のつくり方をそのまま多穴型の細胞培養容器に適用するには困難があった。
すなわち、多穴型細胞培養容器のつくり方としては、本体の各孔に底板をそれぞれ一枚ずつ接着する方法、本体の各孔に一枚の底板を接着する方法等が考えられる。
しかしながら、本体の各孔に底板をそれぞれ一枚ずつ接着する方法では、生産効率が悪く、コストが高くなる。
【0008】
一方、本体の各孔に一枚の底板を接着する方法では、生産効率が非常に良く、均一な材質のものが接着できる。またコストも大幅に低減できる利点がある。
しかしながら、この場合、使用時に液漏れが生じる、細胞の培養が良好に行なえない、培養細胞を容器に入れたまま、測定が適正に行なえない場合がある等の問題があり、その原因についても未だ不明であった。
【0009】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は多穴型の製造が効率的に行なえ、且つ細胞の培養と観察が適正に行なえる細胞培養容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記問題について鋭意検討を行なった結果、それらの原因が本体と底板の接着の良し悪しにあることを見つけた。
すなわち、無蛍光性の材質は、高価、割れ安く加工し難いため、無蛍光性を有する多穴型の細胞培養容器をつくる際は、通常、無蛍光性の材質は底板のみに用いられ、本体は、安価、割れ難く加工し易いプラスチック等の材質を用いる。そして、これらを接着剤により接着してつくる方法が考えられる。
【0011】
図1にはこのようにしてつくられた従来の多穴型細胞培養容器10を上方より見た図が示されている。
この本体12と底板14の接着時、図1に示すように接着剤16から小さな気泡18が発生する場合がある。本体12と底板14の間に気泡18が残ると、本体12の孔22により構成される凹部20の側部20aと、底板14により構成される凹部20の底部20bが完全密着の接着にはならない場合がある。
【0012】
このため、使用時、凹部20から培養液等の液漏れ等が発生する場合があることを見つけた。
また、この接着時に、余分な接着剤16が凹部20内へ流れ込む場合があり、接着剤16が凹部20内へ流れ込むと、培養時、接着剤16中に含まれる成分が培養液に溶け込む場合があり、これが細胞の培養に悪影響を及ぼす場合がある。
【0013】
また、測定時、凹部20上に接着剤16があると、培養面積が接着剤によって狭くなり細胞の発育の妨げになる場合がある。
そして、本発明者らは、本体12と底板14の接着時において、接着剤16から発生する気泡を外部に取除き、また余分な接着剤を外部に取除き、凹部へ流れ込むのを防ぐことにより、一穴型の無蛍光性の細胞培養容器のつくり方を多穴に適用した場合であっても、従来極めて困難であった、培養時の液漏れ防止、細胞の良好な培養、培養細胞を凹部に入れたまま、測定が適正に行なえることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかる細胞培養容器は、細胞を収容し、該細胞の培養と観察が可能な凹部が複数設けられた多穴型の細胞培養容器であって、本体と、一枚の底板と、接着剤と、抜孔と、を備える。前記抜孔は、前記凹部の径よりも小さい径を有し、且つ前記本体ないし前記底板に前記各凹部の外周囲に沿って設けられていることを特徴とする。
ここで、前記本体は、孔が複数設けられる。
【0015】
また、前記底板は、光学的に透明な材質で構成され、前記本体の下部に、前記各孔を閉口し、各対応凹部を構成するように設けられる。
前記接着剤は、前記本体と底板の間に、前記凹部を構成する部分を除いて固まっていない状態で設けられ、その後の固まった状態で該本体と該底板を該凹部に液漏れが生じないように固定可能とする。
【0016】
前記抜孔は、前記本体ないし前記底板の前記凹部を構成する部分と前記凹部を構成する部分の間に設けられ、該本体と該底板の間を固まっていない状態の前記接着剤で密着させた際、該本体と該底板の間の気泡ないし余分な該接着剤を該接着剤が固まる前に外部へ抜くことを可能とする。
ここにいう観察とは、凹部の底部の上方ないし下方よりの目視、顕微鏡観察は勿論、光学測定装置による光学測定を含めていう。
【0017】
本発明では、培養液として有機溶媒の使用も考えられるので、接着剤としては、例えば有機溶媒に溶けないもの、培養細胞に対し広く毒性が認められないものが好ましく、例えば合成ゴムの変性体である、メタクリル酸エステルを主成分としたもの等が一例として挙げられる。
【0018】
また、ここにいう本体と底板の間の気泡ないし余分な接着剤を接着剤が固まる前に外部に抜くとは、気泡だけが発生した場合は該気泡だけが抜けてもよいし、或いは気泡が発生していない場合は、余分な接着剤だけが抜けてもよいし、気泡と余分な接着剤が共に抜けることも意味する。
なお、本発明においては、前記底板を、光学的に透明な及び入射光強度に対する蛍光強度の比が10%以下の材質で構成し、前記本体に前記抜孔を設け、前記凹部の上方より、ないし底部を介して該凹部内の細胞の観察が行なわれることが好適である。
【0019】
ここにいう無蛍光性とは、全く蛍光が発せられないものであれば非常に理想的であるが、全く蛍光が発せられないものをつくることは現実的には難しい。このため、僅かに蛍光が発せられるが、この蛍光強度が培養細胞の真の微弱蛍光強度を測定するのに影響しない程度に非常に低いものをも含めていう。
その作り方としては、例えば天然の二酸化ケイ素から化学的プロセスにより塩化ケイ素を合成し、この高純度の塩化ケイ素を主原料として、合成石英を作ることが一例として挙げられる。
【0020】
このようにしてつくられた合成石英は、一般的なプラスチック、硬質ガラスに比較し自蛍光が非常に低いことに加えて、波長が190nm以上の光透過率が非常に高い、激しい温度変化にも耐えられる利点があるので、細胞の培養と観察を行なう本発明の細胞培養容器の材質として好ましい。例えば、凹部の蛍光強度比は、入射光強度に比較し例えば10%以下が一例として挙げられる。
また、本発明において、前記接着剤は、前記本体と前記底板とを密着させた際には固まっていない状態である。該接着剤は、該本体と該底板とを密着させ、該本体と該底板との間に生じるであろう気泡ないし余分な接着剤が前記抜孔より外部へ抜けた後に光照射されることにより硬化し、該本体と該底板とを固定することも好適である。
さらに、本発明においては、前記本体に対する前記底板の接着位置を決める際に用いられる突起部が該本体に設けられていることも好適である。
【0021】
【発明の実施の形態】
図2(A)には本発明の一実施形態にかかる多穴型細胞培養容器の要部拡大図(縦断面図)、同図(B)は同様の多穴型細胞培養容器の要部を上方より見た図である。
なお、前記従来技術と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
【0022】
同図に示す本実施形態にかかる多穴型細胞培養容器110は、本体112と、底板114と、接着剤116と、気泡抜孔(抜孔)134を備える。
ここで、前記本体112は、例えばポリスチレンの材質で構成され、孔122が複数設けられている。
また、前記底板114は、光学的に透明で及び無蛍光性の合成石英板で構成され、前記本体112の下部に、前記各孔122を閉口し、各対応凹部120を構成するように設けられている。
【0023】
前記接着剤116は、本体112と底板114の間に、該凹部120を構成する部分を除いて固まっていない状態で設けられ、その後の固まった状態で該本体112と該底板114を該凹部120に液漏れが生じないように固定可能とする。
前記気泡抜孔134は、本体112の凹部120を構成する部分と凹部120を構成する部分の間に設けられ、該本体112と該底板114の間を固まっていない状態の接着剤116で密着させた際、該本体112と底板114の間の気泡ないし余分な接着剤を、該接着剤116が固まる前に外部へ抜くことが可能とする。
【0024】
そして、前記接着剤116は、例えば本体112に底板114を密着させて、該本体112と底板114の間に生じた気泡や、余分な接着剤116が、前記気泡抜孔134より外部へ抜けた後、光照射により短時間で硬化するものを用いており、本体112と底板114を光学接着している。
つぎに、図3(A)には本発明の一実施形態にかかる多穴型細胞培養容器の全体を上方より見た図が示され、同図(B)には同様の多穴型細胞培養容器を側方より見た部分断面図が示されている。
【0025】
同図に示すように本実施形態にかかる多穴型細胞培養容器110は、外形が、例えば長手方向が約127.6mm、短手方向が約85.3mm程度で構成され、複数の凹部120が設けられている。
この各凹部120の側部120aは、例えばポリスチレン製本体112に設けられた、例えば直径約6.45mm程度の各孔122により構成され、その底部120bは、板厚が例えば約0.15mm程度の、一枚の無蛍光性合成石英板(底板)114で構成される。
【0026】
この各凹部120内は、培養液124で満たされ、各凹部120内で細胞126が培養される。そして、細胞の培養が終了した時点は勿論、その培養途中であっても、本実施形態にかかる細胞培養容器110を、そのまま例えば細胞内イオン測定装置のサンプル台128に載せ、例えば各凹部120内の培養細胞126のカルシウムイオン濃度等を、順次測定することが可能となる。
すなわち、サンプル台128は、本実施形態にかかる多穴型細胞培養容器110を例えばXY方向に移動できるようになっており、所定の測定位置となる光路上に各凹部120をセットし、該各凹部120での培養細胞126の測定を順次行なう。
【0027】
例えば細胞内イオン測定装置の光照射手段(図示省略)からの所定波長の励起光130が細胞培養容器110の下方より入射され、その底板114を介して凹部120内の培養細胞126に照射される。すると、培養細胞126からは蛍光が発せられ、そのうち、底板114を介して下方に出射された蛍光132は、後段の検出手段(図示省略)に入射され、公知の信号処理が行なわれ、例えば該凹部120での培養細胞126内のカルシウムイオン濃度等が測定される。
【0028】
次いでサンプル台128を移動し、他の凹部、例えば同列の隣りの凹部を前記測定のための光路上に位置させ、測定を行ない、この操作を複数の凹部について繰返し行なうことにより、一穴型の細胞培養容器を複数個交換しながら測定した場合に比較し、容器の交換作業等が省かれるので、同一個数の凹部の測定であっても、その作業がより効率的に行なえる。
【0029】
ここで、各凹部120の底部120bを構成する底板114は、実質的に蛍光性を有さない合成石英板114で構成されているので、細胞培養容器110から発せられる蛍光を大幅に低減することができる。これにより培養細胞126の真の微弱蛍光強度を正確に測定することができるので、該底部120bを介して各凹部内の生きたままの培養細胞を、培養の過程を随時、例えば細胞内イオン測定装置、蛍光顕微鏡等で直接、測定、観察が適正に行なえる。
【0030】
ところで、無蛍光性を有する細胞培養容器は、例えば合成石英等の無蛍光性の材質が高価、割れ安く加工し難い等の理由から、通常、底板のみに無蛍光性の材質のものを用い、本体は孔が加工し易い、安価なプラスチック等の材質が用いられる。そして、これらを接着剤等により接着して多穴型の細胞培養容器を完成させるが、この多穴型細胞培養容器の作り方としては、一般に本体の各孔に底板を一枚ずつ接着する方法、本体の各孔に一枚の底板を接着する方法等が考えられる。
【0031】
しかしながら、本発明者らによれば、本体の各孔に底板を一枚ずつ接着する方法では、生産効率が悪く、コストが高くなり、一方、本体の各孔に一枚の底板を接着する方法では、本体と底板の間に接着剤から発生する小さな気泡が残る場合があり、凹部の側部と底部が完全密着の接着にはならない場合がある。このため、使用時、凹部から液漏れ等が発生する場合がある。また、余分な接着剤が凹部内へ流れ込む場合もあり、凹部での細胞の培養と培養細胞の観察が適正に行なえない場合があることを見つけた。
【0032】
そこで、本発明において特徴的なことは、これらの問題を一挙に解決するため、本体ないし底板の凹部を構成する部分と凹部を構成する部分の間に、該本体と該底板の間を固まっていない状態の接着剤で密着させた際、該本体と底板の間の気泡ないし余分な接着剤を該接着剤が固まる前に外部へ抜くことが可能な抜孔を設けたことである。
【0033】
このために本実施形態においては、本体112に、各凹部120の外周囲に沿って、例えば直径約3mm程度の気泡抜孔(抜孔)134を複数設けている。
そして、図4に示すように本体112に接着剤116を、凹部120を構成する部分を除いて固まっていない状態で設けている。
【0034】
つぎに、図5(A)に示すようにこのような本体112の上方より底板114を下降させ、同図(B)に示すように本体112と底板114を密着させ、光学接着している。
この結果、図6に示すように密着時、接着剤116はまだ固まっていないので、本体112と底板114の間の接着剤116から気泡118が発生しても、その気泡118は気泡抜孔134を介して外部に抜けるので、本体112と底板114を完全に密着させて接着することができる。これにより各凹部120の側部120aと底部120bを完全に密着させて接着できるので、使用時、凹部120からの培養液等の漏れが完全に防げる。
【0035】
また、本体112と底板114の間に余分な接着剤116があっても、それらの密着時、気泡抜孔134を介して外部へ抜けるので、凹部120への接着剤116の流れ込みが大幅に低減される。これにより例えば接着剤116中に含まれる成分が培養液に溶け込むことによる培養細胞への悪影響が大幅に低減される。
【0036】
また、凹部120内に接着剤が付着することが大幅に低減されるので、測定時、接着剤116の成分がノイズとなって、細胞の測定結果に乗ってしまうことが大幅に低減される。これにより、このような接着時の工夫と、底板を実質的に蛍光性を有さない無蛍光性の材質で構成したことの相乗効果により、例えば凹部120での培養細胞の非常に弱い蛍光測定が該底部120bを介してより正確に行なえる。
【0037】
しかも、本実施形態では、加工がし易い、安価なプラスチックで構成された本体112に気泡抜孔134を設けているので、底板114に気泡抜孔を設けた場合に比較し加工コストが安くなる、割れるのを防げる、加工がし易い等の利点がある。
【0038】
また、本実施形態では、本体と底板を別個に構成しているため、底板の板厚を例えば0.17mm以下等につくることも可能であるので、一般的な凹部の側部と底部を一体的に形成した細胞培養容器では困難であった、例えばレーザ共振点顕微鏡法等に本実施形態にかかる細胞培養容器110を適用することができる。
【0039】
さらに、本実施形態にかかる細胞培養容器110の底板114に用いられる合成石英板は、例えば300nm以下等の波長の光であっても、その透過性に非常に優れているので、本実施形態にかかる細胞培養容器110を例えば300nm以下等の波長での測定にも適用することができる。
なお、本発明は前記構成に限定されず、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0040】
例えば前記構成では、96穴の多穴型細胞培養容器を例に説明したが、二以上の任意の数、例えば72、48、24、12、8穴等の多穴型細胞培養容器に適用可能である。
【0041】
また、前記構成では、低コスト化、細胞の微弱蛍光測定等がより正確に行なえる利点があるので、底板に無蛍光性の合成石英板等を用い、本体には安価、割れ難く加工し易いプラスチック製のものを用いた例について説明したが、本発明は、本体と底板の両方に無蛍光性の材質のものを用いること、また本体と底板の両方に無蛍光性以外の一般的な材質を用いる場合等にも適用可能である。例えば、前記構成では、本体に合成石英板を接着する例について説明したが、本体に例えばホウケイ酸ガラス等のカバーガラス等を接着する場合にも適用可能である。
【0042】
また、本実施形態では、本体上の底板を接着する部分を規定するように該本体には突起部136,138,140,142を設けている。この結果、本体上の突起部136,138,140,142により規定される部分に底板を載せるだけで、該本体の孔、気泡抜孔に対する底板の接着位置が自動的に設定されるので、このような突起部がない場合に比較し、本体に底板を接着する際の位置決めが非常に容易となる。
【0043】
また、本実施形態にかかる細胞培養容器を殺菌するため、使用前に、例えばその表面をEOG(エチレンオキシドグリコール)で処理することも好ましい。
さらに、前記構成では、本体に気泡抜孔を設けた例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、接着する合成石英板、又はカバーガラス等の底板に気泡抜孔を設けてもよい。
【0044】
用途
本発明の多穴型細胞培養容器は、下記の利点があるので、以下の用途が一例として考えられる。
1.同一条件(一枚の合成石英板(底板)を介して各凹部での培養細胞を測定)で多くの細胞内微細構造や、微量物質の機能を比較測定することができる。
2.貴重な試料が微量で測定できる。
3.自動測定が可能である(マイクロプレートリーダ等を使用する)。
4.従来測定が不可能であった細胞内の微量蛍光標識物質の動態を、高感度定量測定が迅速に行なえる。
5.倍率の高い顕微鏡写真や、蛍光顕微鏡写真において、鮮明な写真が誰にでも撮影可能となる。
6.例えば培養細胞、浮遊細胞、組織細胞、レーザ共振点顕微鏡、細胞内イオン測定装置、蛍光画像解析等。
【0045】
市場性
本発明の多穴型細胞培養容器は、細胞微細構造並びに機能学的に研究の改良と発展性が期待されることから、下記の市場性が一例として考えられる。
1)細胞、免疫機能を分析
2)超微細機能/形態解析
3)環境科学解析等
4)脳及び代謝系疾患研究分野
5)遺伝子系研究分野等
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる細胞培養容器によれば、本体ないし底板の凹部を構成する部分と凹部を構成する部分の間に設けられ、該本体と該底板の間を固まっていない状態の接着剤で密着させた際、該本体と該底板の間の気泡ないし余分な該接着剤を該接着剤が固まる前に外部へ抜くことが可能な抜孔を備えることとしたので、多穴型の製造が効率的に行なえ、且つ細胞の培養と観察が適正に行なえる。
また、本発明においては、前記底板を光学的に透明な及び実質的に蛍光性を有さない材質で構成し、前記本体に前記抜孔を設けることにより、前記多穴型の製造がより容易に行なえ、且つ凹部の底部を介しての細胞の観察がより適正に行なえる。
さらに、本発明においては、前記抜孔を、前記本体ないし底板に各凹部の外周囲に沿って設けることにより、前記細胞の培養と観察がより適正に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の多穴型細胞培養容器の問題点の説明図である。
【図2】同図(A)は本発明の一実施形態にかかる多穴型細胞培養容器の要部拡大図(縦断面図)、同図(B)は、同様の多穴型細胞培養容器の要部を上方より見た図である。
【図3】同図(A)は本発明の一実施形態にかかる多穴型細胞培養容器の全体を上方より見た図、同図(B)は同様の多穴型細胞培養容器を側方より見た部分断面図である。
【図4】図3に示した多穴型細胞培養容器の本体に接着剤が設けられた状態を下方より見た図である。
【図5】図3に示した多穴型細胞培養容器の本体と底板間の接着時の説明図である。
【図6】図3に示した多穴型細胞培養容器の作用効果の説明図である。
【符号の説明】
110 多穴型細胞培養容器(細胞培養容器)
112 本体
114 合成石英板(底板)
116 接着剤
120 凹部
120a 凹部側部
120b 凹部底部
122 本体孔
134 気泡抜孔(抜孔)
Claims (4)
- 細胞を収容し、該細胞の培養と観察が可能な凹部が複数設けられた多穴型の細胞培養容器であって、
孔が複数設けられた本体と、
光学的に透明な材質で構成され、前記本体の下部に、前記各孔を閉口し各対応凹部を構成するように設けられた一枚の底板と、
前記本体と前記底板の間に、前記凹部を構成する部分を除いて固まっていない状態で設けられ、その後の固まった状態で該本体と該底板を該凹部に液漏れが生じないように固定可能な接着剤と、
前記本体ないし底板の凹部を構成する部分と凹部を構成する部分の間に設けられ、該本体と該底板の間を固まっていない状態の前記接着剤で密着させた際、該本体と該底板の間の気泡ないし余分な該接着剤を該接着剤が固まる前に外部へ抜くことが可能な抜孔と、
を備え、前記抜孔は、前記凹部の径よりも小さい径を有し、且つ前記本体ないし前記底板に前記各凹部の外周囲に沿って設けられていることを特徴とする細胞培養容器。 - 請求項1記載の細胞培養容器において、
前記底板を、光学的に透明な及び入射光強度に対する蛍光強度の比が10%以下の材質で構成し、
前記本体に前記抜孔を設け、
前記凹部の上方より、ないし底部を介して該凹部内の細胞の観察が行なわれることを特徴とする細胞培養容器。 - 請求項1又は2記載の細胞培養容器において、
前記接着剤は、前記本体と前記底板とを密着させた際には固まっていない状態であり、該本体と該底板とを密着させ、該本体と該底板との間に生じるであろう気泡ないし余分な該接着剤が前記抜孔より外部へ抜けた後に光照射されることにより硬化し、該本体と該底板とを固定することを特徴とする細胞培養容器。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養容器において、
前記本体に対する前記底板の接着位置を決める際に用いられる突起部が該本体に設けられていることを特徴とする細胞培養容器。
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