JP3758766B2 - グリースおよびグリースの基油拡散防止剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はグリース中の油分の拡散または滲出を防止する基油拡散防止剤、および該基油拡散防止剤を含むグリースに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、精密機器類の急速な高性能化および小型化に伴って、それらの機械的な回転部や摺動部等に使用されているグリースに対するより優れた特性および品質が要求されるようになってきた。たとえば、小型化された各種機構部、モータ類、各種ベアリング類、スイッチ類、接点類などに使用するグリースについては、高性能の、耐熱性、低温性、軽トルク性等が要求されている。
【0003】
従来のグリースとしては、石けん系またはウレア系等の増稠剤を、低粘度の合成潤滑油からなる基油中に分散させたものが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、基油として合成潤滑油を使用した従来のグリースにおいては、グリース塗布後に時間が経過するとグリース中の油分または油状添加剤が塗布面から拡散または滲出する新たな問題が生じた。特に、基油の粘度が低い場合、グリースの稠度が軟質な場合、または、使用時または貯蔵時の温度が高い場合に、この傾向は顕著になる問題があった。
【0005】
この問題の原因は、グリースが、固体の増稠剤を液体の基油中に混合分散させた半固体であるために、時間が経過すると液体の基油がグリースから分離して油分として拡がり出すためであると考えられる。拡がり出した油分は、機器類を汚したり、接点障害を引き起こしたり、素材の表面に拡がりプラスチック等の基材に悪影響を及ぼすため、問題である。
【0006】
上記問題を解決する手段として、特公平4−46999には、分子中にポリフルオロアルキル基を1個と、ポリオキシエチレン基を1個有するフッ素系界面活性剤をグリースに添加する方法が提案されている。しかし、該フッ素系界面活性剤を添加したグリースでは、充分な拡散防止性能は得られなかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来のフッ素系界面活性剤よりも高い拡散防止性能を有するグリース用添加剤を得る目的で検討を行った。その結果、特定の含フッ素化合物が油分拡散をきわめて小さく抑えうることを見いだし、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下式1で表される含フッ素化合物、からなることを特徴とする、合成潤滑油を基油とするグリースに添加する基油拡散防止剤を提供する。
ただし、式1におけるR f1 、R f2 、a、b、Q 1 、Q 2 、およびYは、下記の意味を示す。
R f1 、R f2 :それぞれ、同一であっても異なっていてもよくポリフルオロアルキル基を示す。
a:1以上の整数である。
b:1以上の整数である。
Q 1 :(a+1)価の連結基を示す。
Q 2 :(b+1)価の連結基を示す。
Y:−(O−Alk) n −O−で表されるポリオキシアルキレンオキシ基を示す。ただし、Alkは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nが2以上である場合のAlkは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。nは(O−Alk)の個数を示し、1〜30の整数である。
(R f1 ) a Q 1 −Y−Q 2 (R f2 ) b ・・・式1
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の基油拡散防止剤は、特定の含フッ素化合物からなることが特徴である。特定の含フッ素化合物は、式1で表される含フッ素化合物である。
なお、以下においてポリフルオロアルキル基を「Rf 基」と記載する。Rf 基は、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基をいう。
【0010】
Rf 基の炭素数は、1〜18程度が好ましく、特に1〜12が好ましく、さらに6〜12が好ましい。また、該Rf 基は、アルキル基の炭素−炭素結合間に1個以上のエーテル性の酸素原子またはチオエーテル性の硫黄原子が挿入されていてもよい。
【0011】
Rf 基中のフッ素原子の割合、すなわち、(Rf 基中のフッ素原子数)/(Rf 基に対応する同一炭素数のアルキル基の水素原子数)×100(%)は60%以上が好ましく、特に80%以上が好ましく、さらに実質的に100%である場合のペルフルオロアルキル基が好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜18程度が好ましく、特に1〜12が好ましく、さらに6〜12が好ましい。
【0012】
Rf 基は、直鎖の構造でも分岐の構造でもよく、直鎖の構造が好ましい。分岐の構造である場合には、分岐部分が炭素数1〜3程度の短鎖である場合が好ましい。
Rf の具体例としては、以下の構造が挙げられるがこれらに限定されない。なお、以下の例においては、同一分子式を有する構造の異なる基である「構造異性の基」を含むものとする。
【0013】
C2 F5 −、C3 F7 −[CF3 (CF2 )2 −、および(CF3 )2 CF−の両者を含む。]、C4 F9 −[CF3 (CF2 )3 −、(CF3 )2 CFCF2 −、(CF3 )3 C−、CF3 CF2 CF(CF3 )−を含む]、C5 F11−[CF3 (CF2 )4 −、(CF3 )2 CF(CF2 )2 −、(CF3 )3 CCF2 −、CF3 CF2 CF(CF3 )CF2 −などの構造異性の基を含む]、C6 F13−[CF3 (CF2 )2 C(CF3 )2 −などの構造異性の基を含む]、C8 F17−、C10F21−、C12F25−、C15F31−、HCt F2t−(ここで、tは1〜18の整数である。)、(CF3 )2 CFCv F2v−(ここで、vは1〜15の整数である。)など。
【0014】
CF3 (CF2 )4 OCF(CF3 )−、F[CF(CF3 )CF2 O]s CF(CF3 )CF2 CF2 −、F[CF(CF3 )CF2 O]t CF(CF3 )−、F[CF(CF3 )CF2 O]u CF2 CF2 −、F(CF2 CF2 CF2 O)v CF2 CF2 −、F(CF2 CF2 O)w CF2 CF2 −(ただし、s、tは1〜10の整数、uは2〜6の整数、vは1〜11の整数、wは1〜11の整数である。)など。
【0015】
本発明における含フッ素化合物は、上記のRf 基を分子中に2個以上有する化合物である。Rf 基の数は2〜4個が好ましく、特に2個が好ましい。また、含フッ素化合物中のRf 基は同一であっても異なっていてもよく、合成しやすさの点から同一であるのが好ましい。
【0016】
本発明における式1で表される含フッ素化合物は、2個以上のRf 基とともに、1個以上のオキシアルキレン基を含む化合物である。
オキシアルキレン基は、炭素原子、水素原子、および酸素原子のみからなるのが好ましい。オキシアルキレン基としては、炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、−OCH2 CH2 −(オキシエチレン基)、−OCH(CH3 )CH2 −(オキシプロピレン基)、−O(CH2 )3 −(オキシトリエチレン基)、または−O(CH2 )4 −(オキシテトラエチレン基)が好ましく、特にオキシエチレン基またはオキシプロピレン基が好ましい。
【0017】
上記オキシアルキレン基は、式1で表される含フッ素化合物中に2個以上含まれるのが好ましく、特にオキシアルキレン機が2個以上連なったポリオキシアルキレン基として含まれるのが好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレン基中のオキシアルキレン基は、1種または2種が好ましく、特に1種が好ましい。1種である場合には、オキシエチレン基またはオキシプロピレン基が好ましく、特にオキシエチレン基が好ましい。オキシアルキレン基が2種である場合には、オキシエチレン基を含む2種であるのが好ましく、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の2種の基からなるのが好ましい。
オキシアルキレン基中のオキシエチレン基の割合、すなわち(オキシエチレン基の数)/(全オキシアルキレン基の数)、が0.5〜1であるのが好ましく、特に0.8〜1であるのが好ましい。
また、ポリオキシアルキレン基が2種以上のオキシアルキレン基からなる場合には、それぞれのオキシアルキレン基の連なり方は、ブロックまたはランダムのいずれであってもよい。
【0019】
上記のポリオキシアルキレン基は含フッ素化合物中において2個以上連なっていることが好ましく、ポリオキシアルキレン基同士が、2価の連結基で連結しているのが好ましい。
【0020】
ポリオキシアルキレン基中のオキシアルキレン基の数は、含フッ素化合物中のフッ素原子数により適宜変更されうるが、オキシアルキレン基の数は、2〜30個であるのが好ましく、特に5〜13個が好ましい。
【0021】
本発明における含フッ素化合物は、下式1で表される含フッ素化合物である。
【0022】
ただし、式1におけるRf1、Rf2、a、b、Q1 、Q2 、およびYは、下記の意味を示す。
Rf1、Rf2:それぞれ、同一であっても異なっていてもよくポリフルオロアルキル基を示す。
a:1以上の整数である。
b:1以上の整数である。
Q1 :(a+1)価の連結基を示す。
Q2 :(b+1)価の連結基を示す。
Y:−(O−Alk) n −O−で表されるポリオキシアルキレンオキシ基を示す。ただし、Alkは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nが2以上である場合のAlkは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。nは(O−Alk)の個数を示し、1〜30の整数である。
【0023】
(Rf1)a Q1 −Y−Q2 (Rf2)b ・・・式1
【0024】
上記式1におけるRf1およびRf2は上記と同様のRf 基であり、好ましい態様も上記と同じであり、特にペルフルオロアルキル基が好ましい。
式1におけるaおよびbは、それぞれ1以上の整数であり、1または2が好ましく、特に1が好ましい。
【0025】
式1におけるYは、−(O−Alk)nO−[Alkは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nが2以上である場合のAlkは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。nは(O−Alk)の個数を示し、1〜30の整数である。]で表されるポリオキシアルキレンオキシ基である。さらに、Alkは、エチレン基、プロピレン基、またはエチレン基とプロピレン基が好ましく、特にエチレン基の1種のみであるのが好ましい。
【0026】
式1におけるQ1 およびQ2 は、それぞれ、上記のYとRf1およびRf2を連結する基であり、Rf1がa個の場合には(a+1)価の連結基、Rf1がb個の場合には(b+1)価の連結基である。Q1 およびQ2 としては、炭化水素基、官能基(たとえば、水酸基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミノアルキル基、カルボニル基、スルホニル基、アシロキシル基、アシル基等)が結合した炭化水素基、結合基(たとえば、エーテル結合、エステル結合、アルキルアミド結合、アミド結合、スルホニル結合、またはスルホンアミド結合等の結合基)が挿入された炭化水素基等が好ましい。
【0027】
式1で表される化合物としては、Rf1およびRf2が、それぞれ、同一でも異なっていてもよいペルフルオロアルキル基、aおよびbが1、Q1 およびQ2 が、それぞれ、2価の連結基、Yがポリオキシエチレンオキシ基である場合の下式2で表される化合物が好ましい。ただし、式2におけるRf3、Rf4は、それぞれ、ペルフルオロアルキル基、Q3 、Q4 はそれぞれ2価の連結基。nは1〜30の整数を示し、5〜13が好ましい。
【0028】
R f3−Q3 −O(CH2 CH2 O)n −Q4 −Rf4・・・式2
【0029】
式2におけるRf3およびRf4は同一であるのが好ましく、炭素数4〜16のペルフルオロアルキル基が好ましい。Q3 およびQ4 は同一であるのが好ましく、以下の具体例中に示される2価の連結基が好ましい。
【0030】
含フッ素化合物としては、下記化合物が好ましい。ただし、下式において、RF は炭素数4〜16のペルフルオロアルキル基を示し、R10は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、R11は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1〜30の整数を示し、Alkはエチレン基および/またはプロピレン基を示す。
【0031】
R F-CH2CH(OR10)CH2-O(Alk-O)nCH2CH(OR10)CH2-RF、
RF-CH2OCH2CH(OR10)CH2-O(Alk-O)nCH2CH(OR10)CH2OCH2-RF、
RF-CH2CH2OCH2CH(OR10)CH2-O(Alk-O)nCH2CH(OR10)CH2OCH2CH2-RF、
RF-CH2CH(OCOR11)CH2-O(Alk-O)n-CH2CH(OCOR11)CH2-RF 、
RF-CONR10CH2CH2-O(Alk-O)n-CH2CH2NR10CO-RF 、
RF-CONR10CH2CH2-O(Alk-O)n-CH2CH2NR10CO-RF 、
RF-SO2NR10CH2CH2-O(Alk-O)n-CH2CH2NR10SO2-RF 。
【0032】
本発明における含フッ素化合物の特に好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。ただし、下記具体例中のRF に該当する部分は構造異性の基の全てを例示し、直鎖の構造が好ましい。オキシアルキレン部分が2種以上存在する場合には、ブロック状またはランダム状の両方の場合を例示しているものとする。また、(C3 H6 O)は、オキシプロピレン基を意味し、C3 H7 はn−プロピル基またはイソピロピル基の両方の場合を例示しているものとする。
【0033】
C 8F17CH2CH(OH)CH2O(C2H4O)10CH2CH(OH)CH2C8F17、
CH2CH(OH)CH2O[(CH2CH2O)10・(C3H6O)2]CH2CH(OH)CH2C8F17 、
C10F21CH2CH(OCOCH3)CH2O(CH2CH2O)6CH2CH(OCOCH3)CH2C10F21 、
C10F21CH2CH(OCOCH3)CH2O(CH2CH2O)8CH2CH(OCOCH3)CH2C10F21 、
C10F21C2H4OCH2CH(OH)CH2O(CH2CH2O)6CH2CH(OH)CH2OC2H4C10F21 、
C6F13C2H4OCH2CH(OCONHC3H7)CH2O(CH2CH2O)8CH2CH(OCONHC3H7)CH2OC2H4C6F13、
C8F17CONHCH2CH2O(CH2CH2O)6CH2CH2NHCOC8F17 、
C8F17CONHCH2CH2O(CH2CH2O)8CH2CH2NHCOC8F17 、
C6F13SO2N(CH2CH3)CH2CH2O(CH2CH2O)6CH2CH2N(CH2CH3)SO2C6F13 、
C10F21CONHC2H4OCH2CH(OH)CH2O(CH2CH2O)10CH2CH(OH)CH2OC2H4NHCOC10F21、
C8F17CH2CH(OH)CH2O[(CH2CH2O)10・(C3H6O)2]CH2CH(OH)CH2C8F17 、
C12F25CH2CH(OH)CH2O(CH2CH2O)12CH2CH(OH)CH2C12F25、
C10F21COO(CH2CH2O)8OCOC10F21、
C8F17C2H4O(CH2CH2O)10C2H4C8F17。
【0034】
本発明の基油拡散防止剤は、上記のフッ素化合物からなるものである。本発明の基油拡散防止剤は、合成潤滑油を基油とするグリースに添加して用いられる。
【0035】
合成潤滑油としては、ポリ(α−オレフィン)油、エチレン単位と他のα−オレフィン単位とのコオリゴマー油、シリコーン油、ジカルボン酸のジアルキルエステルからなるオイル等が挙げられる。
また、グリースには、通常の場合、合成潤滑油とともに、増稠剤を含ませるのが好ましい。増稠剤としては、石けん系(金属石けん系、複合石けん系等)、またはウレア系等の増稠剤が好ましい。
【0036】
基油拡散防止剤のグリースへの添加量は、グリースの全重量に対して0.01重量%以上が好ましく、特に0.1〜15重量%が好ましく、とりわけ0.1〜10重量%が好ましい。含フッ素化合物量が0.01重量%未満であると、充分な油分拡散防止効果が得られない場合がある。また、多すぎると効果が飽和し、かつ、経済的にも不利である。
【0037】
本発明のグリースの基油拡散防止剤を添加したグリースは、カメラのヘリコイド部、絞り機構、時計の軸受け機構等の精密機器類、マイクロモータの回転軸等の各種ベアリング類、電子機器の機構部、スイッチ類等への用途に使用できる。
【0038】
本発明のフッ素化合物は、従来の添加剤に比べて耐薬品性および耐熱性に優れるため、グリースの品質を高めうる効果もある。また、ウレア系増稠剤をグリースに含有させた場合には、増稠剤と合成潤滑油とのなじみが良くなる効果もある。さらに、本発明の基油拡散防止剤は、グリースが含フッ素油[たとえば、ポリ(トリフルオロクロロエチレン)、ペルフルオロポリエーテル等]を含有している場合にも、拡散防止性能を示す利点もある。
【0039】
【作用】
従来の基油拡散防止剤に対して、本発明の含フッ素化合物からなる基油拡散防止剤が優れた効果を発揮するメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
本発明における含フッ素化合物は、分子中に2個以上の疎水性のRf 基を含む化合物であるため、合成潤滑油に対する相溶性に優れる化合物である。また該化合物は、Rf 基よりも相対的に親水性であるオキシアルキレン基を含むことから、合成潤滑油に添加した場合、疎水性のRf 基を潤滑油の表面に、オキシアルキレン基を潤滑油側に規則正しく並べる効果に優れるものと考えられる。そして、潤滑油表面にRf 基が規則正しく並び覆う効果は、従来のフッ素系界面活性剤よりも優れているため、同等量を添加した場合には、より優れた拡散防止効果を発揮するものと推測される。
【0040】
【実施例】
[グリースAの調製]
ポリ(α−オレフィン)(動粘度が100℃で6cSt)を基油とし、これに増稠剤としてリチウムヒドロキシステアレートを5.0重量%含有させたものをグリースAとした。グリースAの稠度番号は1であり、滴点は203℃であった。なお、稠度番号、および、滴点は、JIS−K2220記載の方法にしたがって測定した。
【0041】
[グリースBの調製]
エチルヘキシルセバケートを基油とし、これに増稠剤としてトリウレア化合物を8重量%含有させたものをグリースBとした。グリースBの稠度番号は1であり、滴点は260℃であった。
【0042】
[実施例:例1〜6]
上記のグリースAまたはBに、下式3で表される基油拡散防止剤を添加して油分拡散防止効果を評価した。グリースの種類および基油拡散防止剤の添加量(グリースAまたはBの100重量部に対する重量)の組み合わせと評価結果を表1に示す。
【0043】
[比較例:例7〜11]
実施例の基油拡散防止剤の代わりに下式4で表される化合物をグリースに添加して、同様に油分拡散防止効果を評価した。グリースの種類および添加した化合物の種類および添加量(グリースAまたはBの100重量部に対する重量)の組み合わせと評価結果を表1に示す。
【0044】
C 8F17CH2CH(OH)CH2O(CH2CH2O)10CH2CH(OH)CH2C8F17・・・式3
C8F17CH2CH(OH)CH2O(CH2CH2O)5H ・・・式4
【0045】
[油分拡散防止効果の評価方法]
図1に示すように、グリース1を注射器により0.05ccずつ採り、スリガラス板(10cm×10cm)2の粗面側へ円形山型に塗布し、クリアランスをとるため4隅に厚さ0.35mmの平ワッシャ3をのせた。
つぎに、同型のスリガラス板4を上に重ね、粗面同士を向かい合わせた状態にして、グリース1が15mmの円形になるように加圧した。そして、恒温槽(80℃)に入れて24時間放置し、油分が拡散してあるいは滲み出ることによりスリガラス板2、4の粗面が半透明になった拡散部分5の拡散幅(mm)を測定した。さらに、拡散幅を下式にあてはめて拡散率(%)を求めた。
拡散率(%)=(拡散幅−15)÷15×100
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明の基油拡散防止剤は、グリース自体の著しい拡散を防止する優れた性能を発揮する。該拡散防止効果は、従来のフッ素系界面活性剤に比較して顕著な効果であった。さらに、該効果は、従来の含フッ素界面活性剤と同様の量で発揮されうる。
以上のように、本発明の基油拡散防止剤は、顕著な拡散防止効果を有し、かつ、実用性の点においても優れた化合物である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における油分拡散試験方法を示す説明図。
【符号の説明】
1:グリース
2、4:スリガラス板
3:平ワッシャ
5:拡散部分
Claims (5)
- 下式1で表される含フッ素化合物、からなることを特徴とする、合成潤滑油を基油とするグリースに添加する基油拡散防止剤。
ただし、式1におけるRf1、Rf2、a、b、Q1 、Q2 、およびYは、下記の意味を示す。
Rf1、Rf2:それぞれ、同一であっても異なっていてもよくポリフルオロアルキル基を示す。
a:1以上の整数である。
b:1以上の整数である。
Q1 :(a+1)価の連結基を示す。
Q2 :(b+1)価の連結基を示す。
Y:−(O−Alk) n −O−で表されるポリオキシアルキレンオキシ基を示す。ただし、Alkは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nが2以上である場合のAlkは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。nは(O−Alk)の個数を示し、1〜30の整数である。
(Rf1)a Q1 −Y−Q2 (Rf2)b ・・・式1 - Rf1およびRf2が、それぞれ、同一であっても異なっていてもよいペルフルオロアルキル基である請求項1に記載の基油拡散防止剤。
- 式1において、nが2以上である請求項1または2に記載の基油拡散防止剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の基油拡散防止剤を含むグリース。
- グリースの100重量部中に請求項1〜3のいずれかに記載の基油拡散防止剤を0.1〜10重量部含むグリース。
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