JP3756470B2 - 複数の電極を有するカンチレバーおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子間力顕微鏡(AFM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等へ用いる複数の電極を有するカンチレバーおよびその製造方法に係り、特に、カンチレバー先端にナノメートルオーダーのギャップを有する複数電極が設けられたカンチレバーの構造及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、原子間力顕微鏡(AFM)を用いることにより、試料表面のナノメートルオーダーの観測が可能となった。この原子間力顕微鏡の観測部分は、カンチレバーと呼ばれ、片持ち梁で構成されている。
【0003】
従来、このような分野の技術としては、例えば、以下に開示されるようなものがあった。
【0004】
(1)小型で高精度のマルチプローブを有する走査型プローブ顕微鏡としては例えば、特開平6−195777号公報などがある。
【0005】
(2)トンネル電流乃至は原子間力等を検知するプローブの構造としては、例えば、特開平8−313543号公報、特開平9−159677号公報などがある。
【0006】
かかる従来のプローブにおいては、1本のプローブが単一の電極を有していたり、その構造は、プローブ本体に別体のチップを接合させるようにして構成されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のカンチレバーは試料表面の観測のみに用いられ、観測と同時にナノメートル領域の電気的特性を試料表面と対向又は接する複数の電極を有するカンチレバーを用いて測定することは不可能であった。
【0008】
また、上記したように、従来のプローブにおいては、1本のプローブは単一の電極を有しているので、プローブ数が増加するとその構造が複雑になり、製造コストが高くなる。
【0009】
また、プローブの製造工程も増加するので、更なるコストの上昇を招くといった問題があった。
【0010】
本発明は、上記状況に鑑みて、製造が容易であるとともに、多機能で微細な構造を有する複数の電極を有するカンチレバーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕複数の電極を有するカンチレバーにおいて、探針を形成するためのカンチレバーを用意し、前記カンチレバー上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層を形成し、前記第1の層上にホトレジストを形成してホトリソエッチングによりストライプを形成し、前記ストライプを形成した上に電子線励起堆積法によりアモルファス・カーボンを堆積させ、ブリッジを形成し、酸またはアルカリにより前記第1の層の一部を除去し、前記アモルファス・カーボンをマスクとして電極となる金属膜を蒸着し、エアーギャップを有する対向電極が形成されるカンチレバーを作製することを特徴とする。
【0012】
〔2〕複数の電極を有するカンチレバーの製造方法において、探針を形成するためのカンチレバーを用意し、前記カンチレバー上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層を形成し、前記第1の層上にホトレジストを形成して電子線露光を用いてホトレジストを露光し、該ホトレジストによるストライプを形成し、前記ストライプをマスクとして前記第1の層を除去し、金属電極を蒸着し、エアーギャップを有する対向電極が形成されるカンチレバーを作製することを特徴とする。
【0013】
〔3〕複数の電極を有するカンチレバーの製造方法において、探針を形成するカンチレバーを用意し、前記カンチレバー上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層を形成し、前記第1の層上にホトレジストを塗布し、ホトリソエッチングによりホトレジストを露光し、ストライプを形成し、前記ストライプをマスクとして前記第1の層を除去し、金属蒸着とリフトオフを行い、金属層を形成し、ギャップを形成する位置に、原子間力顕微鏡を用いた陽極酸化加工を用いて金属電極を酸化して、この金属酸化物の絶縁体を挟んだギャップを有する対向電極が形成されるカンチレバーを作製することを特徴とする。
【0014】
〔4〕上記〔3〕記載の複数の電極を有するカンチレバーの製造方法において、さらに、前記ギャップを形成する位置に、集束イオンビームによるエッチング加工を施し、カンチレバーの一部を除去し、切れ込み部を設けることにより対向電極が形成されることを特徴とする。
【0015】
〔5〕上記〔1〕、〔2〕、〔3〕又は〔4〕記載の複数の電極を有するカンチレバーの製造方法において、前記ギャップがナノメートルオーダーに形成されることを特徴とする。
【0016】
〔6〕複数の電極を有するカンチレバーにおいて、上記〔1〕から〔5〕の何れか1項に記載のカンチレバーの製造方法を用いて製造される。
【0017】
すなわち、本発明によれば、
(1)ナノ領域の半導体・金属等の電気物性の測定ができる。
【0018】
(2)ナノ・オーダーの分解能での半導体キャリア濃度評価ができる。
【0019】
(3)ナノ領域のキャリア寿命の測定による、多結晶半導体の粒界評価ができる。
【0020】
(4)磁性ティップを用いた、半導体へのスピン・インジェクションに対する基礎実験ツールとなる。
【0021】
(5)マイクロ波を介したナノ領域の誘電物性の測定ができる。
【0022】
(6)ダブルティップは、間隔がナノスケールのピンセットと考えることができ、DNA等の操作が可能となる。
【0023】
(7)ダブルティップのナノピンセットで分子を挟み、電気的特性を与えることができる。
【0024】
このように物質の電気的特性は、物性評価のうち最も基本的なものであるため、その応用範囲は極めて広い。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0026】
図1は本発明の第1実施例を示す一対の電極(2探針)を有するカンチレバーの探針の製造工程図であり、ここでは、カンチレバーの探針の先端部の電極の形成部の各平面図(d−2)〜(g−2)を右側に対応させて示している。
【0027】
(1)まず、図1(a)に示すように、探針を形成するカンチレバー1を用意する。
【0028】
(2)次に、図1(b)に示すように、そのカンチレバー1上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層(例えば、酸化亜鉛、ゲルマニウムなど)2を形成する。
【0029】
(3)次に、図1(c)に示すように、第1の層2上にホトレジスト3を塗布する。
【0030】
(4)次に、図1(d)に示すように通常の光学露光(ホトリソエッチング)を用いてホトレジスト3を露光し、ストライプ3Aを形成する。
【0031】
(5)次に、図1(e)に示すように、ストライプ3Aを形成した上に電子線励起堆積法によりアモルファス・カーボン(a−C)4を堆積させ、ブリッジを形成する。
【0032】
(6)次に、図1(f)に示すように、酸またはアルカリにより第1の層2の一部を除去する。なお、3A′は第1の層2がエッチングされたストライプである。
【0033】
(7)次に、アモルファス・カーボン(a−C)4をマスクとして電極となる金属膜を蒸着する。その際には第1の層2で高さを稼ぐようにしているので、蒸着される金属膜はアモルファス・カーボン(a−C)4には接触しないように形成することができ、第1の層2より上の膜のリフトオフ時には何ら問題は生じることはない。
【0034】
したがって、図1(g)に示すように、エアーギャップ6を有するエアーギャップ構造の一対の電極(2探針)5をカンチレバー(AFMカンチレバー)1上に実現することができる。
【0035】
このようにして製造されたAFMカンチレバー1の先端部に一対の電極(2探針)5を形成した平面図を図2に示す。
【0036】
次に、本発明の第2実施例(第1実施例の変形例)について説明する。
【0037】
図3は本発明の第2実施例(第1実施例の変形例)1対の電極を有するカンチレバーの探針の製造工程図であり、ここではカンチレバーの探針の先端部の電極の形成部の各平面図(d−2)〜(f−2)を右側に対応させている。
【0038】
(1)まず、図3(a)に示すように、探針を形成するカンチレバー11を用意する。
【0039】
(2)次に、図3(b)に示すように、そのカンチレバー11上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層12を形成する。
【0040】
(3)次に、図3(c)に示すように、第1の層12上にホトレジスト13を塗布する。
【0041】
(4)次いで、ここでは、上記(1)〜(3)と断面方向は90度異なるが、図3(d)に示すように、電子線露光を用いて、ホトレジスト13を露光し、ホトレジスト13によるブリッジを有するストライプ13Aを形成する。
【0042】
(5)次に、図3(e)に示すように、酸またはアルカリにより第1の層12を除去する。
【0043】
(6)次いで、図3(f)に示すように、金属電極14を蒸着し、エアーギャップ15を形成する。
【0044】
このようにして製造される、AFMカンチレバー11の先端部にギャップ15を有する一対の電極(2探針)14を形成した平面図を図4に示す。
【0045】
次に、本発明の第3実施例について説明する。
【0046】
この実施例ではエアーギャップに比べ電極間の絶縁耐性を向上させた、絶縁体を挟んだギャップを有するカンチレバーの構成例を示す。
【0047】
図5は本発明の第3実施例の1対の電極を有するカンチレバーの探針の製造工程図であり、ここではカンチレバーの探針の先端部の電極の形成部の各平面図(d−2)〜(g−2)を右側に対応させている。
【0048】
(1)まず、図5(a)に示すように、探針を形成するカンチレバー21を用意する。
【0049】
(2)次に、図5(b)に示すように、そのカンチレバー21上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層22を形成する。
【0050】
(3)次に、図5(c)に示すように、第1の層22上にホトレジスト23を塗布する。
【0051】
(4)次に、図5(d)に示すように、ホトリソエッチングによりホトレジスト23を露光し、ストライプ23Aを形成する。
【0052】
(5)次に、図5(e)に示すように、酸またはアルカリにより第1の層22を除去する。なお、22′は第1の層22により形成されるストライプである。
【0053】
(6)次いで、上記までの断面とは90度方向が異なるが、図5(f)に示すように、金属蒸着とリフトオフを行い、金属層(電極)24を形成する。
【0054】
(7)次に、図5(g)に示すように、ギャップを構成する位置に、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた陽極酸化加工を用いて金属電極24を酸化して、ギャップ位置を金属酸化物25で埋める。
【0055】
なお、第1の層22は、金属ストライプを良好に作製するためのものであり、必要に応じて適宜省くことができる。
【0056】
このようにして製造されたAFMカンチレバー21の先端部の平面図を図6に示す。
【0057】
この実施例によれば、図6に示すように、金属酸化物25の絶縁体を挟んだギャップ構造を有する電極(2探針)24がAFMカンチレバー21上に実現できる。
【0058】
次に、本発明の第4実施例について説明する。
【0059】
図7は本発明の第4実施例を示すカンチレバーの要部工程図である。
【0060】
この実施例では、分子等をマニピュレートするための、先端に空隙を有する2電極構造を有するカンチレバーの構成例を示す。但し、カンチレバーとして一つの振動数を保持するために、電極部を空隙により完全には分離しない。
【0061】
(1)まず、図7(a)に示すように、探針を形成するカンチレバー31を用意する。
【0062】
(2)次に、図7(b)に示すように、そのカンチレバー31上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層32を形成する。
【0063】
(3)次に、図7(c)に示すように、第1の層32上にホトレジスト33を塗布する。
【0064】
(4)次に、図7(d)に示すように、ホトリソエッチングによりホトレジスト33を露光し、ストライプ33Aを形成する。
【0065】
(5)次に、図7(e)に示すように、酸またはアルカリにより第1の層32を除去する。ここで、32′は第1の層32により形成されるストライプである。
【0066】
(6)次に、上記までの断面とは方向が90度異なるが、図7(f)に示すように、金属蒸着とリフトオフを行い、金属層34を形成する。
【0067】
(7)次いで、図7(g)に示すように、カンチレバーの先端部を集束イオンビームによるエッチング加工(カンチレバーの一部を除去)して、スリット(切れ込み部)35を形成する。
【0068】
(8)そこで、そのカンチレバーの先端部を裏返して立体的に見ると、図7(h)に示すように、先端にはスリット35を有するとともに、下方に複数の電極を有する尖った突起部36を形成することができる。
【0069】
なお、第1の層32は、金属ストライプを良好に作製するためのものであり、必要に応じて適宜省くことができる。
【0070】
以下、本発明の一対の電極(2探針)を有するカンチレバーによる試料の測定例について説明する。
【0071】
図8は本発明の一対の電極(2探針)を有するカンチレバーによる試料の電流−電圧の測定の模式図である。
【0072】
この図において、41は試料、41Aはその試料表面、42はカンチレバーの先端、43,44は一対の電極であり、断面を示している。なお、45は交流又は直流電源、46は電流計、47は電圧計である。
【0073】
このように、試料表面41Aに2探針の電極43,44をセットして、交流又は直流電源45から電力を供給し、電流計46により電流を、電圧計47により電圧を測定することにより、試料表面41Aの電気的特性を容易に測定することができる。
【0074】
図9は本発明の二対の電極(4探針)を有するカンチレバーによる試料の電流−電圧の測定の模式図、図10はその二対の電極(4探針)と試料の説明のための模式図である。
【0075】
これらの図において、51は試料、51Aはその試料表面、52はカンチレバーの先端、53,54;55,56は二対の電極(4探針)である。なお、57は電流源、58は電流計、59は電圧計である。
【0076】
このように4探針構造とすることにより、より精密な試料の電気的特性の測定を行うことができる。
【0077】
図11は本発明の実施例を示す複数のリードを有するカンチレバーをSPMシステム(その1)に適用した模式図である。
【0078】
この図において、61は半導体試料、62はカンチレバーの先端、63,64は一対の電極、65はパルス電源、66は電流計である。
【0079】
この実施例では一対の電極(2探針)63,64を有するカンチレバー先端62において、一対の電極63と試料61間にバイアス電圧としてのパルス電圧をパルス電源65より加え、一対の電極63,64間の電流を電流計66により測定することにより、キャリア(電子)の寿命を測定することができる。
【0080】
図12は本発明の実施例を示す複数のリードを有するカンチレバーをSPMシステム(その2)に適用した平面模式図である。
【0081】
この図において、71はカンチレバー先端、72,73;74,75は二対の電極(4探針)、76は電流源、77は電流計、78は電圧計である。
【0082】
この実施例では、二対の電極(4探針)72,73;74,75を有するカンチレバーにおいて、ホール効果によりキャリア濃度を測定することができる。
【0083】
ここでは、カンチレバー自体が強磁性体であるように構成する。
【0084】
本発明は、以下のような実施形態を有する。
【0085】
本発明のカンチレバーは、一つの片持ち梁において、独立した複数の電極を形成することができる。
【0086】
また、複数の探針と外部との接続を可能とする複数の接点を有し、探針と接点がそれぞれ同電位となるように構成することができる。
【0087】
さらに、スリットにより先端が分割され、電極が個別に動く構造を有しており、そのスリットの幅は可変に構成することができ、可動構造として強誘電体を設けるように構成することもできる。
【0088】
また、複数の電極のうち、少なくとも1つの電極を用いて試料表面を観察するとともに、複数の探針を強磁性体で構成することができる。
【0089】
また、カンチレバーの基材部分を、半導体/絶縁体/半導体構造で構成することができる。
【0090】
また、複数の探針と複数の接点へのリード部を半導体から構成することができる。
【0091】
また、複数の探針を有するカンチレバー部と空間を隔てて半導体が存在するように構成することができる。
【0092】
また、その半導体に独立して電圧を印加するように構成することができる。
【0093】
また、複数の接点を有するカンチレバーと、複数の外部リードとの接続可能とする交換可能なカンチレバー・ホルダーとして構成することができる。
【0094】
さらに、本発明は複数のリードを有するSPMシステムに適用して、
(a)複数の電極により、電圧を測定、若しくは電流−電圧特性を測定することができる。
【0095】
(b)2つの電極を有するカンチレバーにおいて、1つの電極と試料間にバイアス電圧を加え、2つの電極間の電流を測定することにより、キャリア(電子)寿命を測定することができる。
【0096】
上記(b)においてバイアス電圧をパルス電圧とすることができる。
【0097】
(c)4つの電極を有するカンチレバーにおいて、ホール効果によりキャリア濃度を測定することができる。
【0098】
上記(c)においてカンチレバー自体が強磁性体であるように構成する。
【0099】
また、複数の接点を有するカンチレバーと、複数の外部リードとの接続可能とする交換可能なカンチレバー・ホルダーとして構成する。
【0100】
さらに、本発明のカンチレバーはティップ先端に複数の電極構造を有しており、これにより、試料表面の観測と同時に電極間の電流−電圧特性を測定することで、試料の抵抗率、キャリア濃度、誘電特性の評価を可能としている。また、カンチレバー先端にスリットがある場合には、ピンセットとして使用することが可能であり、DNAなどの分子の操作および電極を用いることにより挟んだ分子の電気的特性評価をも可能にする。
【0101】
また、先端部を可動とするために、先端部に焦電素子を設ける。若しくは、カンチレバー全体を焦電素子とすることもできる。
【0102】
さらに、本発明のカンチレバーを用いることにより、試料表面の凹凸構造が観察出来ると同時に、電極間の電流−電圧特性を測定することで、試料のナノ領域の電気的特性が評価できる。
【0103】
また、本発明のカンチレバーに対して、電極材料を強磁性体とすることで、偏極した電子スピンを試料に注入することができる。
【0104】
さらに、本発明のカンチレバーを用いることにより、試料表面の凹凸構造が観察出来る。同時に、片側の電極と試料ステージ間に定常電圧あるいはパルス電圧を印加し、電極間に流れる電流を測定することで、試料のナノ領域のキャリア寿命、キャリアの拡散長が評価できる。
【0105】
また、本発明のカンチレバーを用いることにより、ナノ構造の試料を電極間に挟むことが出来ると同時に、電極間の電流−電圧特性を測定することで、試料の電気的特性が評価できる。
【0106】
さらに、4端子構造を有するカンチレバーを用いることにより、試料に対して外部から磁場を印加することで、試料表面の凹凸構造が観察できると同時に、試料のナノ領域のキャリア濃度が評価できる。
【0107】
また、試料に対して外部から磁場を印加する代わりに、試料ステージを強磁性体材料とする。これにより、外部磁場発生装置を省略することが出来る。
【0108】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0109】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0110】
(A)従来のAFMやSPM装置に、本発明にかかる複数の電極を有するカンチレバーを用いると、従来からの表面観察と同時に、複数の電極間の試料の電流電圧測定等が行えることから、新たに試料の抵抗率、キャリア濃度、電子寿命、誘電特性などの評価も同時に行うことができる。
【0111】
(B)また、このカンチレバーは半導体、絶縁体、強磁性体等の素材を構成材として保持することで計測器としての機能を向上させることもできる。
【0112】
なお、このカンチレバー先端部の構成では、その電極だけが分離している構造の他に、その電極と同時にカンチレバーの一部が複数に分割されている構造とすることも可能である。但し、カンチレバーとしての一つの共振振動数を保持するために、カンチレバーの一部を空隙により完全には分離しない。後者は微小試料を保持するためのピンセットとしての機能をも持たせることが可能であり、使い勝手の良い装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示す一対の電極を有するカンチレバーの探針の製造工程図である。
【図2】 本発明の第1実施例により製造されたAFMカンチレバーの先端部の平面図である。
【図3】 本発明の第2実施例(第1実施例の変形例)を示す一対の電極を有するカンチレバーの探針の製造工程図である。
【図4】 本発明の第2実施例により製造されたAFMカンチレバーの先端部の平面図である。
【図5】 本発明の第3実施例を示す1対の電極を有するカンチレバーの探針の製造工程図である。
【図6】 本発明の第3実施例により製造されたAFMカンチレバーの先端部の平面図である。
【図7】 本発明の第4実施例を示すカンチレバーの要部工程図である。
【図8】 本発明の一対の電極(2探針)を有するカンチレバーによる試料の電流−電圧の測定の模式図である。
【図9】 本発明の二対の電極(4探針)を有するカンチレバーによる試料の電流−電圧の測定の模式図である。
【図10】 本発明の二対の電極(4探針)と試料の説明のための模式図である。
【図11】 本発明の実施例を示す複数のリードを有するカンチレバーをSPMシステム(その1)に適用した模式図である。
【図12】 本発明の実施例を示す複数のリードを有するカンチレバーをSPMシステム(その2)に適用した平面模式図である。
【符号の説明】
1,11,21,31 探針を形成するカンチレバー
2,12,22,32 第1の層
3,13,23,33 ホトレジスト
3A,3A′,13A,22′,23A,32′,33A ストライプ
4 アモルファス・カーボン(a−C)
5 一対の電極(2探針)
6 エアーギャップ
14 金属電極
15 エアーギャップ
24,34 金属層
25 金属酸化物(絶縁体)
35 スリット(切れ込み部)
36 突起部
41,51 試料
41A,51A 試料表面
42,52,62,71 カンチレバーの先端
43,44,63,64 一対の電極(2探針)
45 交流又は直流電源
46,58,66,77 電流計
47,59,78 電圧計
53,54;55,56、72,73;,74,75 二対の電極(4探針)
57,76 電流源
61 半導体試料
65 パルス電源
Claims (6)
- (a)探針を形成するためのカンチレバーを用意し、
(b)前記カンチレバー上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層を形成し、
(c)前記第1の層上にホトレジストを形成してホトリソエッチングによりストライプを形成し、
(d)前記ストライプを形成した上に電子線励起堆積法によりアモルファス・カーボンを堆積させ、ブリッジを形成し、
(e)酸またはアルカリにより前記第1の層の一部を除去し、
(f)前記アモルファス・カーボンをマスクとして電極となる金属膜を蒸着し、
(g)エアーギャップを有する対向電極が形成されるカンチレバーを作製することを特徴とする複数の電極を有するカンチレバーの製造方法。 - (a)探針を形成するためのカンチレバーを用意し、
(b)前記カンチレバー上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層を形成し、
(c)前記第1の層上にホトレジストを形成して電子線露光を用いてホトレジストを露光し、該ホトレジストによるストライプを形成し、
(d)前記ストライプをマスクとして前記第1の層を除去し、
(e)金属電極を蒸着し、
(f)エアーギャップを有する対向電極が形成されるカンチレバーを作製することを特徴とする複数の電極を有するカンチレバーの製造方法。 - (a)探針を形成するカンチレバーを用意し、
(b)前記カンチレバー上に酸またはアルカリに対して容易に溶ける第1の層を形成し、
(c)前記第1の層上にホトレジストを塗布し、ホトリソエッチングによりホトレジストを露光し、ストライプを形成し、
(d)前記ストライプをマスクとして前記第1の層を除去し、
(e)金属蒸着とリフトオフを行い、金属層を形成し、
(f)ギャップを形成する位置に、原子間力顕微鏡を用いた陽極酸化加工を用いて金属電極を酸化して、該金属酸化物の絶縁体を挟んだギャップを有する対向電極が形成されるカンチレバーを作製することを特徴とする複数の電極を有するカンチレバーの製造方法。 - 請求項3記載の複数の電極を有するカンチレバーの製造方法において、さらに、前記ギャップを形成する位置に、集束イオンビームによるエッチング加工を施し、カンチレバーの一部を除去し、切れ込み部を設けることにより対向電極が形成されることを特徴とする複数の電極を有するカンチレバーの製造方法。
- 請求項1、2、3又は4記載の複数の電極を有するカンチレバーの製造方法において、前記ギャップがナノメートルオーダーに形成されることを特徴とする複数の電極を有するカンチレバーの製造方法。
- 請求項1から5の何れか1項に記載のカンチレバーの製造方法を用いて製造される複数の電極を有するカンチレバー。
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