JP3755649B2 - 細胞接着、伸張、および剥離活性を示すペプチドおよびその誘導体 - Google Patents

細胞接着、伸張、および剥離活性を示すペプチドおよびその誘導体 Download PDF

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Description

【0001】
発明の分野
本発明は、細胞接着、伸張、および剥離活性を示すペプチドおよびその誘導体に関する。特に、本発明は、機能的細胞受容体としてのα3β1インテグリンとの相互作用を通して細胞接着活性を促進し、細胞の接着および剥離活性にとって必須であるアスパラギン酸およびイソロイシンを含む、ペプチドNKDILおよびEPDIMならびにその誘導体に関する。
【0002】
発明の背景
βig-h3は、活性なTGF-βによるシグナル伝達の後に、その発現がヒト黒色腫細胞、哺乳類の上皮細胞、ケラチノサイト、および肺の繊維芽細胞を含む様々な細胞株において誘導される細胞外マトリクス蛋白質である。βig-h3遺伝子は、TGF-βによって処置されたヒト肺腺癌細胞株から作製されたcDNAライブラリのディファレンシャルハイブリダイゼーションスクリーニングによって初めて単離された。βig-h3遺伝子は、種間で高度に保存されているアミノ酸683個の蛋白質をコードする。これは、N-末端の分泌型シグナルペプチドおよびC-末端にアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)モチーフを含む。細胞接着を調節するRGDモチーフは、多くの細胞外マトリクス蛋白質において認められ、いくつかのインテグリンのリガンド認識配列として作用する。
【0003】
βig-h3遺伝子の発現は、様々な細胞株においてTGF-βによって増加し、その遺伝子は、その増殖速度がTGF-βによって制御される様々な細胞株において誘導されることから、βig-h3は、TGF-βのいくつかのシグナル伝達経路の媒介に関与すると考えられている。対照的に、βig-h3の発現は、メロレオストーシスの局所的な骨化過剰症を有する皮膚病変から培養した繊維芽細胞、いくつかの腫瘍細胞、およびデキサメタゾン処置幹細胞において減少していることが報告されている。したがって、βig-h3は、様々な組織において、形態形成および細胞と他の細胞外マトリクス蛋白質との相互作用において重要な役割を果たしている。
【0004】
さらに、βig-h3は、細胞の接着および剥離を媒介して、細胞接着分子として作用することが知られている。精製βig-h3蛋白質は、皮膚線維芽細胞の接着および伸張を促進するが、血清不含培地においてA549、HeLa、およびWi-38細胞の接着を阻害することが判明している。特に、βig-h3は、腫瘍細胞増殖およびコロニー形成に対して阻害活性を有することが知られている。実際に、βig-h3は、ヌードマウスにおけるCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞の増殖を顕著に抑制すると報告された。さらに、βig-h3の薬学的有効量を創傷に適用すると、細胞、特に線維芽細胞を伸張させて、創傷部位に接着させるという知見に基づく創傷治癒方法が開発された。その結果、様々な細胞株においてTGF-βによって誘導された細胞接着分子であるβig-h3は、細胞の増殖、細胞の分化、創傷治癒、形態形成および細胞接着において非常に重要な役割を果たしている。
【0005】
βig-h3は、内部相同性を有するアミノ酸140個の反復配列4個を含む。内部反復ドメインは、哺乳類、昆虫、ウニ、植物、酵母および細菌を含む様々な種の分泌型蛋白質または膜蛋白質において認められる非常に保存された配列を有する。ペリオスチン、ファシクリンI、ウニのHLC-2、藻類のCAMおよび放線菌のMPB70は、保存配列を含む例である。これらの蛋白質において保存されている相同性ドメイン(以降「fas-1」と呼ぶ)は、それぞれがアミノ酸約10個を有するH1およびH2という二つの非常に保存された分枝を有するアミノ酸約110〜140個からなる。四つのfas-1ドメインは、βig-h3、ペリオスチン、およびファシクリンIにおいて認められ、HCL-2には二つのfas-1ドメインが存在し、MPB70にはfas-1ドメインは一つだけである。蛋白質の機能は明らかに解明されていないが、それらのいくつかは、細胞接着分子として作用することが知られている。例えば、βig-h3、ペリオスチン、およびファシクリンIはそれぞれ、線維芽細胞、骨芽細胞、および神経細胞の接着を媒介することが報告されている。同様に、藻類のCAMは、藻類のボルボックスの胚に存在する細胞接着分子であることが開示されている。
【0006】
βig-h3の細胞接着活性は、ヒトの皮膚線維芽細胞において初めて発見され、その後、軟骨細胞、腹腔線維芽細胞およびヒトMRC5線維芽細胞において認められた。当初、βig-h3の細胞接着活性は、C-末端のRGDモチーフによって媒介されると考えられていた。しかし、いくつかの研究結果から、RGDモチーフは軟骨細胞の伸張を促進するために必要でないこと、およびそのRGDモチーフがカルボキシ末端のプロセシングによって欠失している成熟可溶性βig-h3が細胞接着を阻害できることが明らかになり、βig-h3のRGDモチーフはβig-h3の細胞接着活性の媒介にとって重要ではないという結論が得られた。さらに、βig-h3は、インテグリンのα1β1を通して線維芽細胞の伸張を促進するが、βig-h3のRGDモチーフはβig-h3媒介細胞伸張にとって必要ではないことが最近報告されている。さらに、βig-h3の保存されたペプチドH1およびH2は、βig-h3媒介細胞接着を阻害せず、保存されたペプチドはβig-h3媒介細胞接着にとって有効ではない。これらの結果を併せると、βig-h3の細胞接着活性にとって必須のアミノ酸は、H1およびH2以外の領域に存在することを示している。他の蛋白質のfas-1ドメインと共にβig-h3の反復fas-1ドメインにおける相同性に関するコンピューター解析から、H1およびH2ペプチドの他にいくつかの高度に保存されたアミノ酸配列が存在することが開示され、保存されたアミノ酸配列が細胞接着活性に関与する可能性を示唆している。
【0007】
発明の概要
本発明者らによって行われた細胞接着と細胞剥離活性に関与する保存されたモチーフに関する集中的な徹底した研究によって、βig-h3の第二と第四のfas-1ドメインのそれぞれにおけるH2領域近傍の位置のアスパラギン酸とイソロイシンとが非常に高度に保存され、α3β1インテグリンを通して細胞接着を媒介するための機能的に必須の単位として同定される、という知見が得られ、それが本発明に至った。
【0008】
したがって、細胞接着、伸張、および剥離活性にとって必須の保存されたアミノ酸配列を含むペプチドおよびその誘導体を提供することが本発明の目的である。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、創傷治癒、組織再生および癌の転移抵抗性において用いられる薬学的組成物を提供することである。
【0010】
本発明の一つの態様に従って、以下の一文字コード:XXDIXによって表されるアミノ酸配列およびその誘導体を含む、細胞接着、伸張、および剥離活性を有するペプチドが提供され、式中Xは一般的なアミノ酸20個のいずれかであり、Dはアスパラギン酸、およびIはイソロイシンを表す。
【0011】
本発明のもう一つの局面に従って、上記のペプチドまたはその誘導体を薬学的活性成分として含む薬学的組成物が提供される。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明において、第四のfas-1ドメインを含むβig-h3のみならず、第二または第四のドメインのいずれか単独でも細胞接着活性を媒介することができるという知見に基づいて、細胞接着活性を媒介することが知られているβig-h3のアミノ酸配列を用いて、細胞接着および伸張活性に対して必須である保存された配列を含むペプチドを調製する。
【0013】
より詳細に説明すると、βig-h3遺伝子の異なる四つの切断型DNA断片、すなわち、第一から第四の内部反復ドメインをそれぞれコードするβig-h3 D-I、βig-h3 D-II、βig-h3 D-III、およびβig-h3 D-IVを、図1aに示すように合成した。得られた四つの組換え蛋白質の細胞接着および伸張活性を示す定量的測定を行うと、図2に示すように、四つのfas-1ドメインの第二または第四のいずれかのみが、βig-h3の細胞接着および伸張活性を媒介できることが示され、このことは細胞接着と伸張の媒介にとって必須であるアミノ酸が二つのドメインに存在することを示している。対照的に、βig-h3の第一のドメインは、中間的な細胞接着および伸張活性を示すが、第三のドメインには細胞接着活性を認めない。
【0014】
同様に、本発明に従って、α3β1インテグリンは、βig-h3の第二および第四のドメインの機能的受容体であることが同定される。
【0015】
そのそれぞれが細胞接着、伸張および剥離活性を示すβig-h3の第二および第四のドメインを含む切断型蛋白質を用いて、本発明者らは、βig-h3の受容体を調べた。第二および第四のfas-1ドメイン媒介細胞接着活性は、図3に示すように、α3およびβ1インテグリンサブユニットに対する抗体によってほぼ完全に抑制された。これらの結果は、第二および第四のfas-1ドメインはいずれも機能的受容体であるα3β1インテグリンに結合して、細胞接着活性を媒介し、細胞接着活性を媒介するために必須であるアミノ酸を有することを意味する。
【0016】
本発明はまた、βig-h3の細胞接着、伸張および剥離活性にとって必須である特徴的な保存されたアミノ酸配列、アスパラギン-イソロイシンを含み、このように第二および第四のドメインと同じ活性を示すペプチドを提供する。
【0017】
βig-h3の第二および第四のfas-1ドメインにおいて、細胞接着、伸張および剥離活性を独立して示す細胞接着に関与するアミノ酸配列を見つけだすために、βig-h3の内部反復fas-1ドメインのみならず、fas-1ドメインを含む他の蛋白質においてもアミノ酸配列のアライメントを行った。その後、本発明者らは、H2領域付近の二つのアミノ酸、すなわちアスパラギン酸とイソロイシンが、図4に示されるように、様々な蛋白質のあいだで高度に保存されていることを発見した。
【0018】
次に、細胞接着活性にとってアミノ酸配列アスパラギン酸およびイソロイシンが不可欠であることをなお確認しなければならない。この点において、βig-h3の第四のfas-1ドメインを含む切断型蛋白質を、図5aに示すように、プロリン、アスパラギン酸およびイソロイシンをそれぞれ、セリン、アラニンおよびセリンに置換することによって変異させた。アスパラギン酸とイソロイシンが置換された変異型蛋白質において、第四のfas-1ドメイン媒介細胞接着活性のほぼ完全な抑制が認められ、アミノ酸配列アスパラギン酸とイソロイシンがβig-h3の細胞接着活性の媒介において非常に重要であることを確認する。
【0019】
さらに、アスパラギン酸とイソロイシンはいずれも、高い細胞接着活性を有するβig-h3の第二および第四のfas-1ドメインにおいて保存されているが、中間的な細胞接着活性を示す第一のfas-1ドメイン1ではアスパラギン酸のみが保存されている。細胞接着活性を示さない第三のfas-1ドメインに関して、これは二つのアミノ酸をいずれも有しない。それらの事実は、アスパラギン酸とイソロイシンが細胞の接着と伸張活性の媒介に必須であることを示すさらなる証拠である。
【0020】
細胞接着活性に関してアスパラギン酸とイソロイシンが不可欠であることを確認した後、βig-h3のfas-1ドメインI、II、およびIVから、二つのアミノ酸を含む三つのペプチドをそれぞれ合成した。これらのペプチドは、βig-h3のfas-1ドメインI、IIおよびIVの保存された配列を有する。すなわち、図7に示すように、配列番号:1のKADHH(アミノ酸219〜223位)、配列番号:2のNKDIL(アミノ酸354〜358位)、および配列番号:3のEPDIM(アミノ酸615〜619位)を有するように、ペプチドをデザインする。
【0021】
当然のこととして、βig-h3のfas-1ドメインに由来するこれらの合成ペプチドを、細胞接着および剥離活性に関して調べた。第二のfas-1ドメイン由来合成ペプチドNKDILおよび第四のfas-1ドメイン由来合成ペプチドEPDIMは、図8aに認められるように、細胞接着活性の有意な抑制を示して非常に優れた細胞剥離作用を示すことが測定された。一方、第一のfas-1ドメイン由来合成ペプチドKADHHでは、細胞接着のその弱い抑制のために、比較的非常に低い細胞剥離作用を認め、対照ペプチドDEMPIは細胞接着活性がないために、細胞剥離活性を示すことができなかった。基質として第二および第四のfas-1ドメインを用いた場合に得られた細胞接着活性に対する抑制作用は、図8bに示すように、基質としてβig-h3を用いた場合に得られた作用とほぼ同じであった。
【0022】
図9aに示すように、合成ペプチドNKDILおよびEPDIMは、細胞接着を用量依存的に媒介することができる。その上、βig-h3の表面受容体として知られているα3β1インテグリンは、図9bに認められるように、合成ペプチドEPDIMおよびNKDIL媒介細胞接着の受容体として作用することが判明した。これらの理由から、NKDILおよびEPDIMは、図10aに示すように、α3β1相互作用分子と特異的に競合するように思われた。
【0023】
本発明において、上記のように、細胞の接着および剥離活性にとって必須であって、βig-h3の機能的受容体であるα3β1インテグリンを通しての細胞接着を誘導するために十分である、アスパラギン酸およびイソロイシンを含むペプチド、NKDILおよびEPDIMが提供される。これらのペプチド配列は、独立して細胞接着を誘導するfas-1ドメインIIおよびIVの保存配列に由来する。本発明のペプチドは、βig-3hを含む様々な細胞外マトリクス蛋白質を通して媒介される細胞接着活性を調べるため、かつ細胞の接着、伸張および剥離促進ペプチドを開発するために有用に用いることができる。
【0024】
本発明のさらなる局面に従って、細胞接着および剥離活性を示すペプチドまたはその誘導体を、創傷治癒および組織再生活性、ならびに癌転移に対する抵抗性を付与する有効成分として含む薬学的組成物が提供される。
【0025】
ペプチドまたはその誘導体は、経口または非経口投与によって投与可能であり、通常の剤形で用いてもよい。すなわち、ペプチドまたはその誘導体は、非経口投与のための様々な剤形に製剤化することができる。製剤化する場合、充填剤、濃化剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等を含む薬学的に許容される希釈剤、手段、および/または担体を用いてもよい。非経口投与のための用途剤形には、滅菌水溶液、非水性溶媒、懸濁液、乳液、凍結乾燥剤、坐剤等が含まれる。非水性溶媒および懸濁液の製剤の場合では、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールのような植物油、またはオレイン酸エチルのような注射用エステルを用いてもよい。坐剤に関する基剤として、ウィテップゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオバター、ラウリン酸、およびグリセロゼラチンが有用である。
【0026】
さらに、ペプチドおよびその誘導体は、生物活性生理食塩液または有機溶媒のような薬学的に許容される担体と組み合わせて用いてもよい。同様に、ブドウ糖、蔗糖、およびデキストランのような糖質、アスコルビン酸およびグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量蛋白質、またはその他の安定化剤を用いて、ペプチドの安定性または吸収を増加させてもよい。
【0027】
ペプチドの全有効量を、ボーラスの投与剤形として投与してもよく、または比較的短期間の投与が望ましい場合には単回用量を注入によって投与してもよい。または、ペプチドの投与は分画した治療プロトコールに従って多数回投与様式に従ってもよい。患者の年齢、身体条件、および体重と共に投与経路および治療回数に応じて、本発明のペプチドの薬学的に有効な用量は、変更してもよく、当業者によって容易に決定されうる。
【0028】
治療的に有効な成分としてペプチドまたはその誘導体を含む薬学的組成物は非経口的に投与されるため、それらは毒性に関して調べられなかった。
【0029】
実施例
本発明のよりよい理解は、本発明を説明するために述べられ、本発明を制限すると解釈されない以下の実施例を参照して得られると思われる。
【0030】
実施例1:組換えβ ig-h3 Fas-1 ドメイン蛋白質の作製と細胞接着活性のアッセイ法
βig-h3の細胞接着に対して必須のアミノ酸を見つけるために、四つの反復配列fas-1ドメインのそれぞれがβig-3hの細胞接着を媒介するか否かを調べた。この目的のため、細胞接着活性アッセイ法に関して、四つの反復配列fas-1ドメインを含む四つの組換え蛋白質を作製した。
【0031】
1−1:四つの反復配列ドメインのそれぞれをコードする組換えβ ig-h3 fas-1 蛋白質の産生
βig-h3タンパク質のアミノ酸配列中133〜236位、242〜372位、373〜501位、および501〜632位にそれぞれ対応する第一から第四のドメインをコードする四つのDNA断片をPCRによって作製して、pET-29β(ノバゲン社(Novagen))にクローニングし、図1aに示すように、βig-h3 D-I、βig-h3 D-II、βig-h3 D-IIIおよびβig-h3 D-IVと呼ばれるfas-1ドメインに関する発現ベクターを構築した。6個の縦列反復ヒスチジン残基をDNA断片のC-末端に提供してヒスチジンタグを作製し、これはNi-NTA樹脂(キアゲン社(Quiagen))を用いた発現蛋白質の精製にとって有用である。大腸菌(E. coli)株BS21(DE3)を、組換え発現ベクターのそれぞれによって形質転換して、50 μg/mlカナマイシンを含むLB培地において培養した。組換えβig-h3蛋白質は、1mM IPTGの存在下で形質転換体を培養することによって誘導し、その後遠心した。ペレットを50 mMトリス塩酸(pH 8.0)、100 mM EDTA、1%トライトンX-100、1mM PMSF、および0.5 mM DTTからなる溶解緩衝液に浮遊させた後、超音波処理して細胞を溶解した。工程を5回繰り返した後、遠心を行って上清を分離すると、Ni-NTA樹脂を充填したカラムから関係する蛋白質が精製される。
【0032】
SDS-PAGEでは、組換え蛋白質βig-h3 D-Iは14.4 kDaで検出されたが、組換え蛋白質βig-h3 D-II、βig-h3 D-IIIおよびβig-h3 D-IVは全て、図1bに示されるように、21.5 kDaで検出された。
【0033】
1−2:組換えβ ig-h3 fas-1 ドメインタンパク質の細胞接着活性アッセイ法
上記のように調製した組換えβig-h3 fas-1ドメイン蛋白質を、細胞接着活性に関してアッセイした。まず、組換えβig-h3蛋白質を、37℃で1時間インキュベートすることによって96ウェルマイクロタイタープレート(ファルコン社(Falcon))の底に接着させ、0.2%BSAを含むPBSによってブロッキングした。HCE細胞を培養培地に2×105個/mlの密度で浮遊させた。細胞浮遊液0.1 mlを、組換え蛋白質をコーティングしたプレートの各ウェルに加えた。37℃で1時間インキュベートした後、非接着細胞をPBSによる洗浄によって除去した。接着細胞を、ヘキソサミニナーゼ基質として3.75 mM p-ニトロフェノール-N-アセチル1-β-D-グリコサミニドおよび0.25%トライトンX-100を含む50 mMクエン酸緩衝液、pH 5.0中で37℃で1時間インキュベートした後、酵素活性をブロックするために5mM EDTAを含む50 mMグリシン緩衝液、pH 10.4を加えた。測定はマルチスキャンMCC/340マイクロプレートリーダー(Multiskan MCC/340 micorplate reader)において405 nmで行った。吸光度の結果を図2に示す。
【0034】
図2のヒストグラムにおいて認められるように、HCE細胞は、組換え第二のfas-1ドメイン蛋白質(βigh3-D-II)および組換え第四のfas-1ドメイン蛋白質(βigh3-D-IV)によってコーティングした双方のプレートにおいて、野生型βig-h3(βig3-WT)の活性と同等の細胞接着および伸張活性を示したが、組換え第一のfas-1ドメイン蛋白質(βigh3-D-I)によってコーティングしたプレートでは弱い活性を示した。一方、組換えfas-1ドメインIII蛋白質(βigh3-D-III)によってコーティングしたプレートでは、ほとんど活性が検出されなかった。
【0035】
細胞接着および伸張を媒介するためには、第二または第四のfas-1ドメインのいずれかで十分であり、このことは、細胞接着および伸張に必須のアミノ酸が二つのドメインのそれぞれに存在することを示している。
【0036】
1−3:β ig-h3 fas-1 ドメイン蛋白質の受容体の同定
それぞれが細胞接着および伸張活性を示す組換えβig-h3の第二および第四のドメイン蛋白質を用いて、βig-h3受容体を調べた。この点において、βig-h3によってコーティングした表面に対するHCE細胞の接着に及ぼす、様々なインテグリンサブユニットに対する機能遮断性のモノクローナル抗体の作用を調べた。
【0037】
詳細に説明すると、異なるタイプのインテグリンに対するモノクローナル抗体(5μg/ml)のそれぞれの存在下で、HCEをインキュベーション溶液(細胞3×105個/ml)において37℃で30分間プレインキュベートした。プレインキュベートした細胞をβig-h3蛋白質によって予めコーティングしたプレートに移して、37℃で1時間さらにインキュベートした後、実施例1〜2に記載のようにヘキソサミニダーゼ基質によって定量的に分析した。定量的な結果を図3に示し、この場合、値は、モノクローナル抗体の非存在下で接着した細胞数の割合として表記する。
【0038】
図3に認められるように、第二または第四のfas-1ドメイン媒介細胞接着は、α3およびβ1インテグリンサブユニットに対する抗体の双方によってほぼ完全に阻害された。これらの結果は、第二および第四のfas-1ドメインの双方がα3β1インテグリンに会合して、細胞接着活性を媒介し、媒介に必須のアミノ酸を有することを示している。
【0039】
実施例2:β ig-h3 の細胞接着および伸張活性にとって必須のアミノ酸、アスパラギン酸とイソロイシン
2−1: fas-1 ドメインを含む様々な蛋白質のアミノ酸配列アライメント
それぞれが細胞接着および伸張活性を有するβig-h3の第二および第四のfas-1ドメインから細胞接着に関与するアミノ酸を同定するために、βig-h3の内部反復fas-1ドメインのみならず、fas-1ドメインを含む他の蛋白質のアミノ酸配列アライメントを行った。その結果、二つのアミノ酸、すなわち、アスパラギン酸とイソロイシンが、図4に示すように、様々な基質蛋白質におけるそれぞれのfas-1ドメインのH2領域近傍の部位で高度に保存されていることが判明した。全体として、アスパラギン酸とイソロイシンはいずれも、βig-h3の第二および第四のfas-1ドメインを含む様々なfas-1ドメインにおいて保存されているが、第一のfas-1ドメインではアスパラギン酸のみが保存されている。第三のfas-1ドメインに関しては、これは二つのアミノ酸を有しなかった。
【0040】
2−2:β ig-h3 の第四の fas-1 ドメインの置換変異体を含む組換え蛋白質の作製
βig-h3の細胞接着活性に対してアスパラギン酸とイソロイシンが不可欠であることを調べるために、セリン、アラニンおよびセリンがそれぞれ616位のプロリン、617位のアスパラギン酸、および618位のイソロイシンの代わりに置換されている、βig-h3の第四のドメインに由来する組換え蛋白質βig-h3 D-IVの変異体を作製した。得られた変異組換え蛋白質を、βigh3 D-IV-sDI、βigh3 D-IV-PaI、βigh3 D-IV-PDs、およびβigh3 D-IV-sasと命名した(図5a)。SDS-PAGEにおいて、変異組換え蛋白質は全て、βigh3 D-IVと同じ位置で検出された(図5b)。
【0041】
2−3:β ig-h3 の第四の fas-1 ドメインの置換変異体を含む組換え蛋白質の細胞接着活性のアッセイ法
βigh3 D-IVの616位のプロリン、617位のアスパラギン酸、および618位のイソロイシンがそれぞれセリン、アラニン、およびセリンに組み合わせて置換されている変異蛋白質、すなわちβigh3 D-IV-sDI、βigh3 D-IV-PaI、βigh3 D-IV-PDs、およびβigh3 D-IV-sasの細胞接着活性を調べた。この目的のために、変異体蛋白質をコーティングしたプレートのウェルにおいて、HCE細胞を37℃で1時間インキュベートした後、実施例1〜2のように接着細胞をヘキソサミニダーゼ基質に加えた。結果を図6に示す。
【0042】
図6に認められるように、D617A(βigh3 D-IV-PaI)と呼ばれるAsp617の代わりにアラニンを有する変異体蛋白質、およびI618S(βigh3 D-IV-PDs)と呼ばれるIle618の代わりにセリンを有する変異体蛋白質は、細胞接着を有意に阻害したのに対し、P616S(βigh3 D-IV-sDI)と呼ばれるPro616の代わりにセリンを有する変異体蛋白質は、野生型対照と同等の細胞接着活性を示すことが判明した。P616S/D617A/I618S(βigh3 DIV-sas)と呼ばれるアミノ酸3個が変異している変異体蛋白質では、その細胞接着活性も同様に対照よりかなり低かった。
【0043】
Asp617またはIle618で変異している第一のfas-1ドメインでは、第一のfas-1ドメイン媒介細胞接着活性がないことは、617位のアスパラギン酸および618位のイソロイシンがβig-h3の細胞接着活性を媒介するために非常に重要であることを示している。
【0044】
これらの結果は、実施例1と一致する。実施例1の結果を再検討すると、細胞接着活性を媒介するために必須であると同定されたアスパラギン酸とイソロイシンは、細胞接着活性を示す第二および第四のfas-1ドメインの双方において保存されているが、弱い細胞接着活性を示す第一のfas-1ドメインではアスパラギン酸のみが保存されている。一方、細胞接着活性を示さない第三のドメインは、二つのアミノ酸を有しない。それによって、これらの結果は共に、Asp617およびIle618がβig-h3の細胞接着および伸張活性を媒介するために非常に重要であることを証明している。
【0045】
実施例3:細胞接着、伸張、および剥離活性を有するβ ig-h3- 媒介合成ペプチド
細胞接着活性に関してアスパラギン酸とイソロイシンが不可否であることを確認した後、二つのアミノ酸を含むペプチドを合成し、細胞接着および剥離活性に関してアッセイした。
【0046】
3−1:β ig-h3 fas-1 ドメイン由来蛋白質の合成
βig-h3の第一、第二、および第四のfas-1ドメインに由来するペプチドおよび対照ペプチドは、標準的な固相法によって自動多重ペプチドシンセサイザー(PE/ABD433)を用いて合成し、それらを単離して、逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製した。βig-h3の第一、第二、および第四のfas-1ドメインの保存された配列にそれぞれ対応する、配列番号:1のKADHH(アミノ酸219〜223位)、配列番号:2のNKDIL(アミノ酸354〜358位)、および配列番号:3のEPDIM(アミノ酸615〜619位)を有するように、合成ペプチドをデザインして、対照ペプチドDEMPIは、ペプチドEPDIMと同じアミノ酸組成を有したが、図7に示すように、そのアミノ酸配列を変化させた。
【0047】
3−2:合成ペプチドの細胞接着および剥離活性のアッセイ法
βig-h3のfas-1ドメインの保存配列を含むペプチドがβig-h3媒介細胞接着に及ぼす作用を、HCE細胞において調べた。四つの合成ペプチドのそれぞれを100 μM含む、またはペプチドを含まない培地中で細胞を30分間プレインキュベートして、10 μg/ml BSAまたは10 μg/mlβig-h3によってコーティングしたプラスチック培養皿に移した。実施例1〜2に記載するように、接着細胞に定量的ヘキソサミニダーゼ分析を行った。結果を8aに示す。
【0048】
図8aに示すように、それぞれが保存されたアスパラギン酸-イソロイシン残基の双方を含む合成ペプチドNKDILおよびEPDIMは、βig-h3に対するHCE細胞の接着を有意に阻害し、優れた細胞剥離活性を示したが、保存されたアスパラギン酸のみを含む合成ペプチドKADHHは、細胞接着を弱く阻害した。一方、保存されたアミノ酸残基を含まない対照ペプチドDEMPIは、細胞接着に影響を及ぼさず、このように、低い細胞剥離活性を示した。
【0049】
組換え蛋白質βigh3 D-IIおよびβigh3 D-IVに対するHCE細胞の接着もまた、合成ペプチドの存在下または非存在下において調べた。この目的のため、HCE細胞を四つの合成ペプチド100 μMをそれぞれ含む、またはペプチドを含まない培地中で30分間プレインキュベートした後、10 μg/mlβigh3 D-IIまたはD-IVによってコーティングしたプラスチック培養皿に移した。インキュベーション後、接着細胞を、実施例1〜2に記載のようにヘキソサミニダーゼによって定量的に分析した。結果を図8bに示す。
【0050】
図8bにおいて認められるように、第二および第四のfas-1ドメインを基質として用いた場合に得られた合成ペプチドの遮断作用は、βig-h3を基質として用いた場合に得られた作用と類似であった。
【0051】
3−3:合成ペプチドによってコーティングした表面に対する HCE 細胞の接着
合成ペプチドのそれぞれが細胞接着を媒介できるか否かを決定するために実験を行った。ウェルプレートをそれぞれのペプチドの0 mM、20 mM、40 mM、60 mM、80 mM、100 mM、および120 mM濃度によってコーティングした後、HCE細胞と共に37℃で一時間インキュベートした。接着した細胞を実施例1〜2に記載のようにヘキソサミニダーゼによって定量的に分析した。結果を図9aに示す。
【0052】
それぞれがアスパラギン酸とイソロイシンの双方を含む合成ペプチドNKDILおよびEPDIMは、細胞の接着を用量依存的に媒介することが判明した。合成ペプチドKADHHはまた、細胞接着を用量依存的に媒介することができたが、NKDILおよびEPDIMと比較すると活性は低かった。予想されるように、二つのアミノ酸をいずれも有しない対照ペプチドは細胞接着において活性ではなかった。
【0053】
3−4:合成ペプチドの細胞接着、伸張、および剥離活性を媒介するための受容体の同定
様々なインテグリンサブユニットに対するモノクローナル抗体を用いる機能遮断実験を行って、βig-h3の表面受容体として知られるα3β1インテグリンが合成ペプチドEPDIMおよびNKDILによって媒介される細胞接着に関与するか否かを調べた。HCEを異なるタイプのインテグリンに対するモノクローナル抗体(5μg/ml)のそれぞれの存在下で37℃で30分間プレインキュベートした。プレインキュベートした細胞を100 μM EPDIMまたは100μM NKDILによって予めコーティングしたプレートに移した後、37℃でさらに1時間インキュベートし、その後実施例1〜2に記載のように、ヘキソサミニダーゼ基質によって定量的に分析した。定量的な結果を図9bに示す。
【0054】
図3において認められるように、第二または第四のfas-1ドメイン媒介細胞接着は、α3およびβ1インテグリンサブユニットに対する双方の抗体によってほぼ完全に阻害された。これらの結果は、第二および第四のfas-1ドメインがいずれもα3β1インテグリンに会合して細胞接着を媒介することを示している。
【0055】
3−5:様々な細胞外マトリクスペプチドに対する細胞接着に及ぼす合成ペプチドの効果
細胞接着に対する合成ペプチドEPDIMおよびNKDILの阻害活性がβig-h3に対して特異的であるか否かを調べるために、様々なマトリクス蛋白質に対する細胞接着に及ぼす合成ペプチドの作用を調べた。HCE細胞を、100μMの合成ペプチドEPDIMまたはNKDILを加えた、またはそれらを加えない培地中でプレインキュベートした後、βig-h3、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、I型およびII型コラーゲンを含む様々なマトリクス蛋白質によってコーティングしたプレートに加えた。1時間インキュベートした後、接着した細胞を、実施例1〜2に記載のようにヘキソサミニダーゼによって定量的に分析した。結果を図10aに示す。
【0056】
図10aに示されるように、合成ペプチドNKDILおよびEPDIMは、βig-h3に対するのみならず、ラミニンに対する細胞接着も有効に遮断し、優れた細胞剥離活性を示した。しかし、フィブロネクチンに対するそれらの細胞接着の阻害は弱く、I型およびII型コラーゲンならびにビトロネクチンに対する細胞接着には全く影響を及ぼさなかった。したがって、結果は共に、合成ペプチドNKDILおよびEPDIMが、α3β1インテグリン相互作用分子と特異的に競合することを示唆している。
【0057】
合成ペプチドNKDILおよびEPDIMによって遮断されることが判明したβig-h3、ラミニン、およびフィブロネクチンに対する細胞接着を、EPDIMの様々な濃度で調べた。HCE細胞を、0μM、200μM、400μM、600μM、800μM、1,000μM、および1,200μM濃度の合成ペプチドEPDIMを含む培地においてインキュベートして、βig-h3、フィブロネクチン、およびラミニンよってコーティングしたプレートに加えた。1時間インキュベートした後、接着細胞を、実施例1〜2に記載のようにヘキソサミニダーゼによって定量的に分析した。結果を図10bに示す。
【0058】
曲線から認められるように、βig-h3、フィブロネクチン、およびラミニンに対する細胞接着は、合成ペプチドEPDIMの濃度が増加するにつれて、弱くなった。すなわち、βig-h3、フィブロネクチン、およびラミニンに対する細胞接着に及ぼすEPDIMの作用は、用量依存的であった。
【0059】
本発明において、上記のように、いずれも細胞接着と伸張活性にとって必須であるアスパラギン酸とイソロイシンとをその保存されたモチーフに含む合成ペプチドNKDILおよびEPDIMを調製した。ペプチドは、βig-h3の第二および第四のfas-1ドメインの保存された配列を含み、各ドメインは、細胞接着活性を示すことが判明し、それらは、機能的細胞受容体として知られるα3β1インテグリンを通して細胞接着を誘導する。トロンボスポンジン、ラミニン、IV型コラーゲン等のようなα3β1インテグリンに結合することが知られている様々な細胞外マトリクス蛋白質の場合、その活性部位において相同性を有する特徴的な配列も、α3β1インテグリンに関する特徴的な保存された結合モチーフのいずれも、これまで発見されていない。しかし、それぞれが保存されたアミノ酸、アスパラギン酸とイソロイシンの双方を含む合成ペプチドNKDILおよびEPDIMが、細胞接着活性を媒介するためにα3β1インテグリンに特異的に結合することを考慮すると、保存されたアスパラギン酸-イソロイシンは、本発明に従ってα3β1インテグリンの特徴的な保存された結合モチーフであると同定される。したがって、本発明のペプチドは、βig-h3を含む様々な細胞外マトリクス蛋白質を通して媒介される細胞接着活性を調べるため、かつ細胞接着、伸張、および剥離促進ペプチドを開発するために有用に用いることができる。
【0060】
工業的応用性
本発明に従って、細胞接着分子であるβig-h3の四つのfas-1ドメインのうち、第二および第四のドメインは、細胞接着および剥離活性を示し、それぞれが細胞接着および剥離活性にとって必須である保存されたアスパラギン酸-イソロイシン配列を有することが開示される。これらの知見を考慮して、機能的アミノ酸残基を含み、α3β1インテグリンを通して細胞接着を誘導するペプチドNKDILおよびEPDIMが調製される。本発明のペプチドは、βig-h3を含む様々な細胞外マトリクス蛋白質を通して媒介される細胞接着活性を調べるため、かつ細胞接着、伸張、および剥離促進ペプチドを開発するために有用に用いることができる。
【0061】
本発明は、説明的に記述してきたが、用いた用語は、制限するためではなく、説明するためであると理解すべきである。本発明の多くの改変および変更が上記の教示に照らして可能である。したがって、本発明は特に説明した以外の方法で実践してもよく、それらも添付の請求の範囲の範囲内であると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 βig-h3のfas-1ドメインに由来する組換え蛋白質を示す略図である。
【図1B】 βig-h3のfas-1ドメインに由来する組換え蛋白質のSDS-PAGE結果を示す写真である。
【図2】 βig-h3のfas-1ドメインに由来する組換え蛋白質の細胞接着活性を示すヒストグラムである。
【図3】 βig-h3のfas-1ドメインに由来する組換え蛋白質の細胞接着活性に対する抗インテグリン抗体の阻害活性を示すヒストグラムである。
【図4】 fas-1ドメインを含む様々なマトリクス蛋白質のアミノ酸配列を示す。
【図5A】 βig-h3の第四のfas-1ドメインに由来する置換変異体を示す略図である。
【図5B】 βig-h3の第四のfas-1ドメインに由来する置換変異体の15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す写真である。
【図6】 βig-h3の第四のfas-1ドメインに由来する置換変異体の細胞接着活性を示すヒストグラムである。
【図7】 本発明の合成ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図8A】 HCE細胞接着に対する合成ペプチドの阻害活性を示すヒストグラムである。
【図8B】 合成βig-h3ペプチドによるβig-h3 D-IIまたはβig-h3 D-IVに対するHCE細胞の接着の阻害を示すヒストグラムである。
【図9A】 本発明の合成ペプチドによるHCE細胞接着活性を示す曲線である。
【図9B】 合成ペプチドEPDIMおよびNKDILに対するHCE細胞の接着に対する抗インテグリン抗体の阻害を示すヒストグラムである。
【図10A】 いくつかの細胞外マトリクス蛋白質に対するHCE細胞接着に及ぼす本発明の合成ペプチドの作用を示すヒストグラムである。
【図10B】 様々な濃度のEPDIMの存在下で細胞外マトリクス蛋白質によって表面をコーティングしたHCE細胞接着の用量依存的阻害を示す曲線である。
【配列表】
Figure 0003755649

Claims (6)

  1. 下記(a)から(e)のいずれかに記載の、細胞接着、伸張、および/または剥離活性を有するペプチド。
    (a)アミノ酸配列が配列番号:2に記載の NKDIL であるペプチド
    (b)アミノ酸配列が配列番号:3に記載の EPDIM であるペプチド
    (c)β ig-h3 242 位から 372 位のアミノ酸配列からなるβ igh3 D-II ペプチド
    (d)β ig-h3 501 位から 632 位のアミノ酸配列からなるβ igh3 D-IV ペプチド
    (e)β ig-h3 501 位から 632 位のアミノ酸配列からなるβ igh3 D-IV ペプチドにおけるβ ig-h3 616 位のプロリンがセリンに置換されたアミノ酸配列からなるβ igh3 D-IV-sDI ペプチド
  2. ペプチドがα3β1インテグリンを通して細胞接着および伸張活性を媒介する、請求項1記載のペプチド
  3. ペプチドが、βig-h3、フィブロネクチン、またはラミニンに対する細胞接着に対して阻害活性を示す、請求項1記載のペプチド。
  4. 下記(a)から(e)のいずれかに記載のペプチドを含む、細胞接着、伸張、および/または剥離剤。
    (a)アミノ酸配列が配列番号:2に記載の NKDIL であるペプチド
    (b)アミノ酸配列が配列番号:3に記載の EPDIM であるペプチド
    (c)β ig-h3 242 位から 372 位のアミノ酸配列からなるβ igh3 D-II ペプチド
    (d)β ig-h3 501 位から 632 位のアミノ酸配列からなるβ igh3 D-IV ペプチド
    (e)β ig-h3 501 位から 632 位のアミノ酸配列からなるβ igh3 D-IV ペプチドにおけるβ ig-h3 616 位のプロリンがセリンに置換されたアミノ酸配列からなるβ igh3 D-IV-sDI ペプチド
  5. 請求項1から3のいずれかに記載のペプチド、または請求項4に記載の細胞接着、伸張、および/または剥離剤を薬学的活性成分として含む、薬学的組成物。
  6. 薬学的組成物が、生体材料および組織インプラントの生体界面を改善して、創傷治癒、組織再生、または癌転移抵抗性に関して治療的に有効である、請求項記載の薬学的組成物。
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