JP3750245B2 - プリンタ用記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性染料をイオン交換作用に基づくインターカレーション反応により定着保持する層間化合物を含有するプリンタ用記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータやワードプロセッサー等により作製した画像情報や文字コード情報を記録媒体上に出力させる方法の一つとして、水溶性染料を含有する水性インクを、電界、熱、或いは圧力等を駆動源とする記録ノズルからプリンタ用記録媒体上に吐出させて、画像形成を行うインクジェット記録方式が挙げられる。
【0003】
このインクジェット記録方式は、記録時の騒音が小さく、ランニングコストが低く、普通紙に画像を形成することが可能であり、しかもインクリボン等の廃棄物を伴わないという利点を有するため、オフィス内や家庭内において、近年その利用が拡大している。
【0004】
ところで、一般にこのインクジェット記録方式に用いられる染料は、染料定着層へ移行した後、染料定着層構成成分とのファンデルワールス力、水素結合などの相互作用により染料定着層に保持されている。このため、画像形成後にそれらの染料に対してより親和性の高い水等の溶媒が画像に接触した場合には、染料定着層から溶媒に溶出して画像のボケが発生するという問題点があった。また、画像を構成する水溶性染料と染料定着層構成成分との間のファンデルワールス力及び水素結合とを打ち消すに足る熱エネルギーや水蒸気がプリンタ用記録媒体に供給された場合にも、水溶性染料が移動して画像ボケが発生するという問題があった。さらに、画像を構成する水溶性染料が紫外線等の高いエネルギー光線に暴露された場合には、染料自体の分解により画像の退色、変色、あるいは画像濃度の低下が生じるという問題があった。
【0005】
そこで、このようなインクジェット記録方式における画像の定着性、例えば耐水性を向上させるために、イオン交換作用に基づくインターカレーション反応により染料を染料定着層に定着保持させることが提案されている。特開平7−69725号公報においては、イオン交換能を有する層間化合物を、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルビチラール樹脂、ヒドロキシプロピルセルロース樹脂、あるいはポリビニルアルコール樹脂などの親水性のバインダー樹脂とともに配合した染料定着層が提案されている。
【0006】
また、インクの定着性を向上させるために、層間化合物に有機酸処理を施して、インクの定着性を向上させることが提案されている。
【0007】
さらに、画像の耐光性を向上させるために、染料の分子構造を改変することが試みられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような方法では、層間化合物に対し染料の定着が不十分であるため、依然として画像の保存性特に耐光性が十分でなく、やはり銀塩写真等のような定着性を確保することが困難であった。
【0009】
このようなことから、従来のインクジェット記録方式により記録媒体に形成される画像は、証明写真や屋外展示用印刷物等の高度な画像耐久性が要求される分野において実用が難しいとされている。しかし、このような分野においても、インクジェット記録方式による画像形成が実現できるように、画像の耐久性を高めることが要求されている。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、水溶性染料をイオン交換作用に基づくインターカレーション反応により定着保持する層間化合物を含有するプリンタ用記録媒体に、良好なインク定着性と耐水性とを付与し、さらにそのプリンタ用記録媒体に形成された画像の耐光性を向上させることを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、層間化合物と水性インクとの定着性を向上させるために用いる有機酸に加えて、新たに有機酸を添加することにより、プリンタ用記録媒体に形成された画像の耐光性を大幅に向上させることが出来ることを見いだした。
【0012】
すなわち、本発明に係るプリンタ用記録媒体は、水溶性染料をイオン交換作用に基づくインターカレーション反応により定着保持する層間化合物を含有するものであり、基材と、基材上に形成されたバインダー樹脂からななる染料定着層とから構成され、染料定着層には、層間化合物としてハイドロタルサイト群鉱物からなる層状無機高分子と、炭素数が1〜20の少なくとも1種の有機酸とが含有され、有機酸の含有量が層間化合物に対して5〜100重量%であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプリンタ用記録媒体は、水溶性染料をイオン交換作用に基づくインターカレーション反応により定着保持する層間化合物を含有するものであり、基材と、基材上に形成されたバインダー樹脂からなる染料定着層と、染料定着層上に形成されたインク吸収樹脂からなるインク吸収層とから構成され、染料定着層には、層間化合物としてハイドロタルサイト群鉱物からなる層状無機高分子と、炭素数が1〜20の少なくとも1種の有機酸とが含有され、有機酸の含有量が層間化合物に対して5〜100重量%であることを特徴とする。
【0014】
上記プリンタ用記録媒体は、有機酸を層間化合物に対して5〜100重量%含有させることにより、記録媒体上に画像を形成するに際してインク定着性及び耐水性を向上させるとともに、画像の耐光性を向上させる。
【0015】
有機酸の含有量が5重量%未満の場合には、画像の耐水性及び耐光性が低下してしまう。一方、100重量%を越えた場合には、その分樹脂の割合が減少してしまうため、密着性が低下して耐水性が悪くなり、インクの浸透性が低下し、記録媒体としての光沢がなくなり画像の品位が低下してしまう。
【0016】
ところで、有機酸には、炭素数が1〜20であるものを用いる。
【0017】
また、本発明に係るプリンタ用記録媒体は、少なくとも基材と、基材上に形成されたバインダー樹脂からなる染料定着層とから構成され、層間化合物が、染料定着層中の固形分に対して10〜90重量%の割合で染料定着層に含有されてなることが好ましい。
【0018】
上記層間化合物の含有量が10重量%未満の場合には、染料固定効果が不足し、90重量%を越えた場合には、染料定着層を構成する固形分中の例えば樹脂の含有量が相対的に小さくなって柔軟性が低下するため好ましくない。
【0019】
この層間化合物には、ハイドロタルサイト群鉱物からなる層状無機高分子を用いる。
【0020】
ところで、このプリンタ用記録媒体の構成としては、基材と、基材上に形成されたバインダー樹脂からなる染料定着層とからなる2層構造であってもよいし、さらに染料定着層上にインク吸収樹脂からなるインク吸収層が形成された3層構造であってもよい。
【0021】
なお、この時、層間化合物及び有機酸は、染料定着層に含有される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るプリンタ用記録媒体の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
本発明を適用したプリンタ用記録媒体は、水溶性染料をイオン交換作用に基づくインターカレーション反応により定着保持する層間化合物を含有し、少なくとも1種の有機酸を前記層間化合物に対して5〜100重量%含有するものである。
【0024】
このように、プリンタ用記録媒体に添加された有機酸は、層間化合物と水性インクとの定着性を向上させるとともに、染料定着層に所定量の有機酸を含有させることにより、良好なインク浸透性と耐水性を付与し、さらに、そのプリンタ用記録媒体に形成された画像の耐光性を向上させるものである。
【0025】
有機酸の含有量が5重量%未満の場合には、画像の耐水性及び耐光性が低下する。また、100重量%を越えた場合には、基材及び他の層の密着性が低下し耐水性が悪くなる、水性インクの浸透性が低下する、被記録媒体としての光沢がなくなり画像の品位が低下する等の問題が生じる。
【0026】
本発明を適用したプリンタ用記録媒体は、少なくとも基材と、基材上に形成されたバインダー樹脂からななる染料定着層とから構成される。すなわち、このプリンタ用記録媒体の構成としては、基材と、バインダー樹脂からなり基材上に形成された染料定着層とからなる2層構造であってもよい。さらに、染料定着層上にインク吸収樹脂からなるインク吸収層が形成された3層構造であってもよい。
【0027】
この時、層間化合物及び有機酸は、染料定着層に含有される。
【0028】
具体的に、第一の実施の形態としては、図1に示すように、基材1、染料定着層2がこの順に形成された2層構造をとり、前記染料定着層2に層間化合物4と少なくとも1種の有機酸5とを含有するものである。
【0029】
第二の実施の形態としては、図2に示すように、基材1、染料定着層2、インク吸収層3がこの順に形成された3層構造をとり、染料定着層2に層間化合物4と少なくとも1種の有機酸5とを含有するものである。なお、ここで、インク吸収層3は、使用される水性インクの溶媒である水やアルコール等を吸収し、水性インクの浸透性を向上させる。
【0030】
本発明を適用したプリンタ用記録媒体の参考例を図3及び図4に示す。図3に示すプリンタ用記録媒体の参考例は、図2に示す第二の実施の形態と同様に3層構造をとり、染料定着層2に層間化合物4を含有し、インク吸収層3に少なくとも1種の有機酸5を含有するものである。
【0031】
図4に示すプリンタ用記録媒体の参考例は、図2に示す第二の実施の形態と同様に3層構造をとり、染料定着層2に層間化合物4と少なくとも1種の有機酸5とを含有し、インク吸収層3に少なくとも1種の有機酸5を含有するものである。
【0032】
本発明を適用したプリンタ用記録媒体は、インクの吸収性を良くするためにインク吸収層3を設けるとよい。
【0033】
なお、図1及び図2に示す本発明を適用したプリンタ用記録媒体は、層間化合物4に対して有機酸5を5〜100重量%含有することを特徴とする。
【0034】
有機酸5の含有量が10重量%未満の場合には、画像の耐水性及び耐光性が低下してしまう。一方、150重量%を越えた場合には、その分樹脂の割合が減少してしまうため、密着性が低下して耐水性が悪くなり、インクの浸透性が低下し、記録媒体としての光沢がなくなり画像の品位が低下してしまう。
【0035】
なお、上記有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、エノール、イミド、オキシム、芳香族スルホンアミド等が挙げられる。これら有機酸の炭素数は、1〜20とする。また、これら有機酸は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0036】
ところで、上述した染料定着層2は、層間化合物を染料定着層2中の固形分に対して10〜90重量%の割合で染料定着層2に含有してなることが好ましい。
【0037】
上記層間化合物の含有量が10重量%未満の場合には、染料固定効果が不足し、90重量%を越えた場合には、染料定着層2を構成する固形分中の例えば樹脂の含有量が相対的に小さくなって柔軟性が低下するため好ましくない。
【0038】
この層間化合物4には、水吸着性を若しくは水に対する膨潤性に優れ、かつアニオン交換能を有する層状無機高分子材料を用いることが好ましく、例えば、層間に交換性陰イオンを有するハイドロタルサイト群鉱物を用いるとよい。なかでもMg0.7Al0.3O1.15にて示される構造を有するハイドロタルサイト群鉱物の天然鉱物が好ましく、この他若干組成の異なる合成品が用いてもよい。
【0039】
この合成品の微粉末は、天然品のように夾雑物を含まず純白色を呈し、結晶そのものが光学的に透明である。したがって、このような合成品の微粉末を層間化合物4として染料定着層2中に含有させて使用した場合には、銀塩写真に十分匹敵し得る彩度を有する画像を形成することができる。
【0040】
さらには、ハイドロタルサイト群鉱物のイオン交換部位に水やアルコール等の高誘電率媒体に溶媒和しやすい無機イオン、例えばNO3 −、SO4 2−、ClO4−、Fe(CN)6 4−、ヘテロポリリン酸イオン等、或いは親水性有機アニオンを有する低級カルボキシレートイオン等のようなものを有するものを用いてもよい。これに対し、高級カルボキシレートイオンは、上述のようなイオンに比べ、溶媒和し難い層間を与える傾向があるため好ましくない。
【0041】
さらに、上記層間化合物4としては、後述するバインダー樹脂への分散性を改善するとともに、アルコール等の非水溶媒に対する膨潤性を改善するために、交換性陰イオンの一部を有機アニオンで置換させ、層間距離を広げる効果(ピラー効果)や層間を部分的に疎水化する効果を付与させたものを用いてもよい。この有機アニオンとしては、カルボン酸アニオン類、スルホン酸アニオン類、エステルアニオン類、燐酸エステルアニオン類等が好適である。
【0042】
次に、プリンタ用記録媒体を構成する染料定着層2は、上述した層間化合物4とともにバインダー樹脂を含有する。このバインダー樹脂には、染料定着層2中の層間化合物4の分散性を高める作用を有し、水性インクの溶媒である水やアルコール等を浸透させる親水性樹脂が用いられる。
【0043】
このバインダー樹脂としては、一般的な熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリビニールブチラール樹脂等のビニルアルコールのアセタール化物、ヒドロキシプロピルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体等のポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、単独で使用しても、混合して用いてもよい。なお、このとき、上記バインダー樹脂中に凝集を引き起こしたり画像の定着作用を阻害するような置換基、例えば水溶性染料よりも相対的にイオン交換しやすく保持されやすいような基を含むものは好ましくない。
【0044】
なお、上記染料定着層2の層厚としては、通常2〜40μm、好ましくは4〜15μmである。
【0045】
次に、上述した染料定着層2上に形成されるインク吸収層3には、本発明の記録方法で使用される水性インクの溶媒である水やアルコール等が浸透する親水性樹脂が用いられる。
【0046】
このインク吸収樹脂としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂等が用いられる。これらインク吸収樹脂は、単独で使用しても、混合して用いてもよい。
【0047】
なお、上記インク吸収層3の層厚としては、通常0.1〜5μm、好ましくは0.5〜1.5μmである。インク吸収層3の層厚が0.1μm以下では、水性インクの吸収が不足し、5μm以上では、水性インクがインク吸収層3に吸収されてしまい、染料を受容保持する層間化合物4におけるインクの浸透性が低下してしまうので好ましくない。
【0048】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例について、実験結果に基づいて説明する。本発明が本実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0049】
<実験1>
実験1においては、図2に示すように、基材1上の染料定着層2に層間化合物4及び有機酸5を含有させたプリンタ用記録媒体を用意し、水溶性染料として直接染料及び酸性染料を含有したインクを用意した。これらを用いてプリンタ用記録媒体の記録された画像の耐久性を調査した。
【0050】
サンプル1
まず、始めにエチルアルコール14gと水64gとの混合溶媒中に、バインダー樹脂としてポリビニールアルコール樹脂(商品名:KH−20、日本合成化学社製)4gを添加して溶解させた。次に、これに、層間化合物4として有機酸処理ハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト(商品名:KW2200、協和化学社製)4gにリンゴ酸2.5g当量を吸着させたもの)を添加し、サンドミルで8時間分散処理をし、染料定着層形成用分散液を用意した。さらに、この染料定着層形成用分散液に有機酸5としてフタル酸0.8gを溶解させた。
【0051】
そして、このようにして得られた染料定着層形成用分散液を、125μm厚の透明ポリエステルフィルム基材(商品名:ルミラーT−60、東レ社製)1に乾燥厚4μmとなるように塗布し、100℃1分という条件で乾燥させ、染料定着層2を形成した。
【0052】
次に、エチルアルコール90gに、インク吸収樹脂としてヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−L、日本層達社製)1.6gを溶解し、インク吸収層形成用溶液を調整した。そして、このインク吸収層形成用溶液を、染料定着層2上に乾燥厚1μmとなるようにワイヤーバーにより塗布して乾燥させ、インク吸収層3を形成した。これにより、プリンタ用記録媒体(サンプル1)を作製した。
【0053】
サンプル2〜サンプル6
フタル酸に代えて、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルフィン酸、アセト酢酸エチル、フタルイミド、ベンズアルキシドムをそれぞれ使用して染料定着層用分散液を調整した。これ以外は、サンプル1と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル2〜サンプル6)を作製した。
【0054】
サンプル7
フタル酸に代えて、フタル酸/リンゴ酸=2/1の混合有機酸を使用して染料定着層形成用分散液を調整した以外は、サンプル1と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル7)を作製した。
【0055】
サンプル8
溶解するフタル酸の添加量を0.24gに代えて染料定着層形成用分散液を調整した以外は、サンプル1と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル8)を作製した。
【0056】
サンプル9
サンプル1で使用した染料定着層形成用分散液からフタル酸を除いた以外は、サンプル1と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル9)を作製した。
【0057】
サンプル10
溶解するフタル酸の添加量を4.4gに代えて染料定着層形成用分散液を調整した以外は、サンプル1と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル10)を調整した。
【0058】
<実験1の評価>
上述のようにして得られたサンプル1〜サンプル10のプリンタ用記録媒体に対して、インクジェット記録方式プリンター(商品名:MJ−800C、セイコーエプソン社製)を用いて、印字サンプルを記録し、画像を形成した。そして、プリンタ用記録媒体の光沢度、耐水性、インク吸収性、インク定着性、及び耐光性を以下に説明するように調査した。
【0059】
(1)光沢度試験
染料定着層2を形成する前の透明ポリエステル基材を対照として、染料定着層2を形成した後の基材の光沢度をグロスメーター(機種名:VG−1D、日本電色工業社製)にて入反射角45°の条件で測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
(2)耐水性試験
画像が形成されたプリンタ用記録媒体の全体を水中に10分間浸漬した後、水中から引き上げ、染料定着層2の変化を目視にて観察し、以下の基準に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
○:染料定着層に変化が見られない場合
×:染料定着層が基材から剥離するか、あるいは溶けてしまってプリンタ用記録媒体としての利用が出来ない場合
【0062】
(3)インク吸収性試験
画像形成の際に、インクが染料定着層2に浸透して吸収されるか否かを目視にて観察し、以下の基準に従って評価した。その結果を表1に示す。
○:インクが染料定着層に浸透して吸収された場合
×:インクが染料定着層に浸透せず、吸収されない場合
【0063】
(4)インク定着性試験
耐水性試験の際の画像変化を目視にて観察し、以下の基準に従って評価した。その結果を表1に示す。
○:画像が変化しない場合
△:画像は滲んでいるが、実用上問題がない場合
×:画像が著しく流れたり、あるいは滲んでしまった場合
【0064】
(5)耐光性試験
各サンプルに形成された画像について、分光計(機種名:SPM100−11、GRTAG社製)によりJIS Z 8105に規定される*L,*a,*bを測定した。
【0065】
次に、上記画像が記録された各サンプルに、WEATHER−OMETER(アトラス社製)により72時間かけて90kJ/m2のエネルギーを照射し、上述したように、エネルギー照射後の各サンプルの画像の*L,*a,*bを測定した。
【0066】
そして、エネルギー照射後の各サンプルにおける色差ΔEを下記の(1)式により求め、以下の基準に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0067】
色差ΔE=[(Δ*L)2+(Δ*a)2+(Δ*b)2]1/2 ・・・(1)
Δ*L=試験前後の*Lの差
Δ*a=試験前後の*aの差
Δ*b=試験前後の*bの差
○:ΔE≦5
△:5<ΔE≦5
×:ΔE>15
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から、層間化合物4を含有する染料定着層2に1種または2種以上の有機酸を含有するサンプル1〜サンプル8のプリンタ用記録媒体においては、有機酸5を含有しないサンプル9のプリンタ用記録媒体よりも耐水性、インク定着性、及び耐光性が大幅に向上していることがわかる。但し、サンプル10のように、染料定着層中に有機酸を層間化合物に対して100重量%を越えて含有させた場合には、プリンタ用記録媒体としての性能が劣化するため好ましくない。
【0070】
以上の結果から、本発明を適用した図2の構成を有するサンプル1〜サンプル8のプリンタ用記録媒体では、染料定着層2中に所定量の有機酸5を含有させることにより、記録媒体に画像を形成するに際して、インク定着性及び耐水性を向上させるとともに、画像の耐光性を向上させることができることができる。
【0071】
<実験2>
実験2においては、図3に示す本発明の参考例となるプリンタ用記録媒体に記録された画像の耐久性を調査した。実験2では、図3に示すように、基材1上の染料定着層2に層間化合物4を含有させ、インク吸収層3に有機酸5を含有させたプリンタ用記録媒体のを用意し、水溶性染料として直接染料及び酸性染料を含有したインクを用意した。これらを用いてプリンタ用記録媒体に記録された画像の耐久性を調査した。
【0072】
サンプル11
まず、始めにエチルアルコール14gと水64gとの混合溶媒中に、バインダー樹脂としてポリビニールアルコール樹脂(商品名:KH−20、日本合成化学社製)4gを添加して溶解させた。次に、これに、層間化合物4として有機酸処理ハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト(商品名:KW2200、協和化学社製)4gにリンゴ酸2.5g当量を吸着させたもの)を添加し、サンドミルで8時間分散処理をし、染料定着層形成用分散液を用意した。
【0073】
そして、このようにして得られた染料定着層形成用分散液を、125μm厚の透明ポリエステルフィルム基材(商品名:ルミラーT−60、東レ社製)1に乾燥厚4μmとなるように塗布し、100℃1分という条件で乾燥させ、染料定着層2を形成した。
【0074】
次に、エチルアルコール90gに、インク吸収樹脂としてヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−L、日本層達社製)1.6gと、有機酸5としてフタル酸0.96gとを溶解させ、インク吸収層形成用溶液を調整した。そして、このインク吸収層形成用溶液を、染料定着層2上に乾燥厚1μmとなるようにワイヤーバーにより塗布して乾燥させ、インク吸収層3を形成した。これにより、プリンタ用記録媒体(サンプル11)を作製した。
【0075】
サンプル12〜サンプル16
フタル酸に代えて、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルフィン酸、アセト酢酸エチル、フタルイミド、ベンズアルキシドムをそれぞれ使用してインク吸収形成用溶液を調整した。これ以外は、サンプル11と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル12〜サンプル16)を作製した。
【0076】
サンプル17
フタル酸に代えて、フタル酸/リンゴ酸=2/1の混合有機酸を使用してインク吸収層形成用溶液を調整した以外は、サンプル11と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル17)を作製した。
【0077】
サンプル18
溶解するフタル酸の添加量を0.16gに代えてインク吸収層形成用溶液を調整した以外は、サンプル11と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル18)を作製した。
【0078】
サンプル19
サンプル11で使用したインク吸収層形成用溶液からフタル酸を除いた以外は、サンプル11と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル19)を作製した。
【0079】
サンプル20
溶解するフタル酸の添加量を3.2gに代えて染料定着層形成用分散液を調整した以外は、サンプル11と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル20)を調整した。
【0080】
<実験2の評価>
実験1と同様にインクジェット記録方式プリンターを用いて、サンプル11〜サンプル20のプリンタ用記録媒体に印字サンプルを記録し画像を形成した。そして、実験1と同様にプリンタ用記録媒体の光沢度、耐水性、インク吸収性、インク定着層、耐光性を評価した。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表2の結果から、インク吸収層3に1種または2種以上の有機酸5を含有するサンプル11〜サンプル18のプリンタ用記録媒体においては、有機酸5を含有しないサンプル19のプリンタ用記録媒体よりも耐水性、インク定着性、及び耐光性が大幅に向上していることがわかる。また、サンプル20のように、インク吸収層3に有機酸5をインク吸収樹脂に対して150重量%を越えて含有させた場合には、プリンタ用記録媒体としての性能が劣化するため好ましくない。
【0083】
以上の結果から、本発明の参考例となる図3の構成を有するサンプル11〜サンプル18のプリンタ用記録媒体においても、インク吸収層3中に所定量の有機酸5を含有させることにより、記録媒体に画像を形成するに際して、インク定着性及び耐水性を向上させるとともに、画像の耐光性を向上させることができる。
【0084】
<実験3>
実験3においては、図4に示す本発明の参考例となるプリンタ用記録媒体に記録された画像の耐久性を調査した。実験3では、図4に示すように、基材1上の染料定着層2に層間化合物4及び有機酸5を含有させ、インク吸収層3にも有機酸5を含有させたプリンタ用記録媒体を用意し、水溶性染料として直接染料及び酸性染料を含有したインクを用意した。これらを用いてプリンタ用記録媒体に記録された画像の耐久性を調査した。
【0085】
サンプル21
染料定着層用分散液を調整するに際して、フタル酸を0.8g溶解させ、インク吸収層形成用溶液を調整するに際して、フタル酸を0.96g溶解させた。これ以外は、サンプル11と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル21)を作製した。
【0086】
サンプル22
染料定着層用分散液を調整するに際して、フタル酸を0.24g溶解させ、インク吸収層形成用溶液を調整するに際して、フタル酸を0.16g溶解させたこと以外は、サンプル21と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル22)を作製した。
【0087】
サンプル23
染料定着層用分散液及びインク吸収層形成用溶液を調整するに際して、フタル酸を添加しなかった。これ以外は、サンプル21と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル23)を作製した。
【0088】
サンプル24
染料定着層用分散液を調整するに際して、フタル酸を4.4g溶解させ、インク吸収層形成用溶液を調整するに際して、フタル酸を3.2g溶解させたこと以外は、サンプル21と同様にしてプリンタ用記録媒体(サンプル24)を作製した。
【0089】
<実験3の評価>
実験1と同様にインクジェット記録方式プリンターを用いて、サンプル21〜サンプル24のプリンタ用記録媒体に印字サンプルを記録し画像を形成した。そして、実験1と同様にプリンタ用記録媒体の光沢度、耐水性、インク吸収性、インク定着性、耐光性を評価した。その結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
表3の結果から、染料定着層2及びインク吸収層3に1種または2種以上の有機酸5を含有するサンプル21〜サンプル22のプリンタ用記録媒体においては、有機酸5を含有しないサンプル23のプリンタ用記録媒体よりも耐水性、インク定着性、及び耐光性が大幅に向上していることがわかる。また、サンプル24のように、染料定着層2及びインク吸収層3に有機酸5を過剰に含有させた場合には、プリンタ用記録媒体としての性能が劣化するため好ましくない。
【0092】
以上の結果から、本発明の参考例となる図4の構成を有するサンプル21〜サンプル22のプリンタ用記録媒体においても、染料定着層2及びインク吸収層3中に所定量の有機酸5を含有させることにより、記録媒体に画像を形成するに際して、インク定着性及び耐水性を向上させるとともに、画像の耐光性を向上させることができることがわかる。
【0093】
以上、実験1から分かるように、本発明を適用したプリンタ用記録媒体では、染料定着層2に1種以上の有機酸を含有させることによって、記録媒体の耐水性、定着性、及び記録媒体に形成された画像の耐光性を大幅に向上させることができることがわかる。但し、有機酸の含有量が多すぎると、その分樹脂の割合が少なくなり、プリンタ用記録媒体としての性能が大幅に劣化してしまうため、好ましくない。
【0094】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に係るプリンタ用記録媒体は、基材と、染料定着層とから構成され、染料定着層に層間化合物としてハイドロタルサイト群鉱物からなる層状無機高分子と、炭素数が1〜20の少なくとも1種の有機酸とが含有され、有機酸の含有量が層間化合物に対して5〜100重量%であることにより、画像を形成するに際して、インク定着性及び耐水性を向上させるとともに、プリンタ用記録媒体に形成された画像の耐光性を大幅に向上させることができる。
【0095】
また、本発明に係るプリンタ用記録媒体は、染料定着層上に、インク吸収樹脂からなる インク吸収層を設けることによって、インク吸収性が更に向上し、インク定着性及び耐水性を向上させるとともに、プリンタ用記録媒体に形成された画像の耐光性を大幅に向上させることができる。
【0096】
すなわち、本発明に係るプリンタ用記録媒体は、銀塩写真に匹敵し得る耐久性を有するものとなり、証明写真や屋外展示印刷物として充分使用し得るものとなり、その工業的価値は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したプリンタ用記録媒体の構成を示す模式図である。
【図2】本発明を適用したプリンタ用記録媒体の構成を示す模式図である。
【図3】本発明のプリンタ用記録媒体の参考例の構成を示す模式図である。
【図4】本発明のプリンタ用記録媒体の参考例の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 基材、2 染料定着層、3 インク吸収層、4 層間化合物、5 有機酸
Claims (4)
- 水溶性染料をイオン交換作用に基づくインターカレーション反応により定着保持する層間化合物を含有するプリンタ用記録媒体において、
基材と、基材上に形成されたバインダー樹脂からななる染料定着層とから構成され、
上記染料定着層には、上記層間化合物としてハイドロタルサイト群鉱物からなる層状無機高分子と、炭素数が1〜20の少なくとも1種の有機酸とが含有され、
上記有機酸の含有量が上記層間化合物に対して5〜100重量%であることを特徴とするプリンタ用記録媒体。 - 上記層間化合物は、上記染料定着層中の固形分に対して10〜90重量%含有されていることを特徴とする請求項1記載のプリンタ用記録媒体。
- 水溶性染料をイオン交換作用に基づくインターカレーション反応により定着保持する層間化合物を含有するプリンタ用記録媒体において、
基材と、基材上に形成されたバインダー樹脂からなる染料定着層と、染料定着層上に形成されたインク吸収樹脂からなるインク吸収層とから構成され、
上記染料定着層には、上記層間化合物としてハイドロタルサイト群鉱物からなる層状無機高分子と、炭素数が1〜20の少なくとも1種の有機酸とが含有され、
上記有機酸の含有量が上記層間化合物に対して5〜100重量%であることを特徴とするプリンタ用記録媒体。 - 上記層間化合物は、上記染料定着層中の固形分に対して10〜90重量%含有されていることを特徴とする請求項3記載のプリンタ用記録媒体。
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