JP3750223B2 - 消臭性繊維構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、衣料品、家庭用品、インテリア製品および各種産業資材などの用途に用いる消臭性繊維構造物に関するものである。さらに詳しくは、消臭性、特に洗濯耐久性およびドライクリーニング耐久性にすぐれた消臭性を有し、かつ風合いがソフトな消臭性繊維構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種繊維構造物に対し消臭性を付与する技術については従来から多くの提案がなされており、その代表例としては、合成繊維の製糸段階で消臭性物質を内部に練り込んだ繊維から構成された消臭性繊維構造物(例えば特開昭63−135512号公報)、および後加工の段階で消臭性物質を樹脂剤と共に繊維表面にコーティングして得た繊維から構成された消臭性繊維構造物(例えば特開平2 −289148号公報)が知られている。
【0003】
しかしながら、前者の消臭性繊維構造物は、消臭性物質の表面が合成樹脂で被覆されてしまうため、消臭効率が悪いという問題があった。
【0004】
また、後者の消臭性繊維構造物では、樹脂剤の使用量が多いために繊維の風合が硬くなるばかりか、消臭性能の洗濯やドライクリーニングに対する耐久性が劣るという問題があった。さらに、繊維構造物の素材として難燃性ポリエステル繊維を用いた場合には、難燃剤が樹脂剤で覆われてしまうため、十分な難燃性が発揮し得ず、例えば繊維構造物の難燃カーテンなどへの用途展開が制限されるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、消臭性、特に洗濯耐久性およびドライクリーニング耐久性にすぐれた消臭性を有し、かつ風合がソフトで、難燃性が要求される用途にも適用可能な消臭性繊維構造物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の消臭性繊維構造物は、繊維構造物を、酸化ケイ素と酸化亜鉛とからなる化合物である無機系多孔質物質と、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、クエン酸銅およびフタロシアニン銅から選ばれた少なくとも1種の金属化合物と、エマルジョン形成性合成樹脂とを含有する処理液で処理してなり、前記無機系多孔質物質の付着量が0.1〜10%owf 、前記金属化合物の付着量が0.001〜1%owf 、前記合成樹脂の付着量が0.01〜2%owfであることを特徴とする。
【0008】
また、繊維構造物が難燃剤としてハロゲン化シクロアルカン化合物を含有するポリエステル繊維からなる場合には、上記合成樹脂の付着量は0.01〜2 %owf の範囲であることが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の繊維構造物とは、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル樹脂、アセテート樹脂などの合成樹脂から形成された合成繊維または半合成繊維.ベンベルグ、レーヨンなどの再生繊維、および木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維などの各種繊維の単独からなる繊維構造物、または上記の2種以上の繊維を混紡、混繊、交撚、交編織したものからなる繊維構造物であり、その形態としては綿、糸、編織物、不織布、縫製品などのさまざまなものが挙げられる。
【0011】
なお、これらの繊維構造物は、繊維の製造段階ないしは後加工段階において、染料、顔料、酸化防止剤、耐熱剤、紫外線防止剤、可塑剤、抗菌剤および難燃剤などの任意の添加剤を添加されるか、またはこれら添加剤により処理されたものであってもよい。
【0012】
上記繊維構造物のなかでも、特にポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルから形成されたポリエステル繊維を含む編織物、不織布、縫製品を好ましく適用することができ、前記ポリエステルは、難燃剤、特にハロゲン化シクロアルカン化合物により難燃化されたものを使用することができる。
【0013】
上記ハロゲン化シクロアルカン化合物とは、環状飽和炭化水素化合物または少なくとも1個の環状飽和炭化水素基を有する飽和炭化水素化合物であって、水素原糸の少なくとも一部が臭素または塩素などのハロゲンで置換された化合物であり、具体例としては1,2,3,4,5,6 −ヘキサブロモシクロヘキサン、1,2,3,4 −テトラブロモシクロオクタン(TBCO)、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)1,2 −ビス(3,4 −ジブロモシクロヘキシル)1,2 −ジブロモエタンまたはこれらの臭素が塩素で置換された化合物などが挙げられる。なかでも、ハロゲンの大部分またはすべてを臭素とした化合物が、吸尽効率がきわめて高いことから好ましく使用される。
【0014】
これらのハロゲン化シクロアルカン化合物は、紡糸前のポリエステルに配合されるか、または紡糸後のポリエステル繊維の表面に付与されるが、ポリエステル繊維に対する含有量は1.5〜10%owf 、特に2〜8%owf の範囲が好ましく、1.5%owf 未満では難燃性が低く、また消臭加工を施すことによって難燃性がさらに低下する傾向があり、10%owf を越えると繊維構造物の耐光堅牢度の低下や吸尽効率の悪化を招くため好ましくない。
【0015】
本発明の消臭性繊維構造物は、上記繊維構造物を特定の処理液により処理することにより得られる。
【0016】
上記処理液に含まれる無機系多孔質物質は、消臭性物質として機能するものであり、その具体例としては酸化ケイ素とマグネシウム、銅、亜鉛、鉄、銀、鉛などとからなる化合物、および天然ゼオライトなどが挙げられるが、すぐれた消臭性を発揮する点では酸化ケイ素と酸化亜鉛からなる化合物の使用が最も効果的である。
【0017】
処理液における無機系多孔質物質の濃度は、繊維構造物に対する付着量が 0.1 〜10%owf 、特に1 〜5 %owf となる範囲に設定すべきである。
【0018】
上記処理液に含まれる銅、亜鉛、コバルト、マグネシウムおよび鉄から選ばれた少なくとも1種の金属元素からなる金属化合物は、臭気成分の吸着剤として機能するものであり、なかでも銅化合物、具体的には硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、クエン酸銅、フタロシアニン銅、水酸化第二銅などが好ましく使用される。
【0019】
処理液における金属化合物の濃度は、繊維構造物に対する付着量が0.001 〜 1 %owf 、特に0.01〜0.2 %owf となる範囲に設定すべきである。
【0020】
上記処理液に含まれるエマルジョン形成性合成樹脂は、消臭性物質である無機系多孔質物質および金属化合物を繊維表面に保持させるために機能するものであり、ウレタン系樹脂、アミノプラスト系樹脂、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂などが使用される。
【0021】
ここで、合成樹脂としては、ウレタン系樹脂エマルジョンが好ましく使用され、その具体例としては大日本インキ(株)製「ポンディック1610」、「ポンディック1670」、「ポンディック1640」、保土ケ谷化学(株)製「アイゼラックスS4040N」、日華化学(株)製「エバファノールNS−2」、「エバファノールS−5」、「エバファノールKH」などが挙げられる。
【0022】
また、アミノプラスト系樹脂としては、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールジメトオキシエチレン尿素、ジメチロールブチレン尿素、テトラメチロールアセチレンジ尿素、ジメチロールプロピレン尿素、およびジメチロール5ヒドロキシプロピレン尿素などが挙げられる。
【0023】
さらに、アクリル系樹脂としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルアクリレート、および1,4−ブチレングリコールモノアクリレートなどの単独重合体または共重合体エマルジョンおよびこれらの混合エマルジョンなどが挙げられる。
【0024】
処理液における上記合成樹脂の濃度は、繊維構造物に対する付着量が0.01〜 5 %owf 、特に0.1 〜2 %owf となる範囲に設定すべきである。
【0025】
また、特に繊維構造物としてハロゲン化シクロアルカン化合物を含有するポリエステル繊維を用いる場合には、処理液における上記合成樹脂の濃度を、繊維構造物に対する付着量が0.01〜2 %owf 、特に0.1 〜1 %owf となる範囲に設定すべきである。
【0026】
上記各成分を含む処理液による繊維構造物の処理は、繊維構造物を上記処理液中に適宜の時間浸漬した後、これを取出して絞り、乾燥してから、熱処理することにより行われる。
【0027】
上記熱処理条件は、加熱温度が100 〜200 ℃であって、この加熱温度範囲において高温ほど処理時間を短くし、低温になるほど長い処理時間になるようにして、0.1 〜30分間の範囲で選ぶことが好ましい。
【0028】
かくして得られる本発明の消臭性繊維構造物には、上記無機系多孔質物質が、0.1 〜10%owf 、上記金属化合物が0.001 〜1 %owf 、上記合成樹脂が0.01〜 5 %owf 、それぞれ付着している。
【0029】
ここで、上記無機系多孔質物質の付着量が0.1 %owf 未満では消臭性が低く、10%owf を越えると繊維構造物に色むらが発生する傾向となるため好ましくない。上記金属化合物の付着量が0.001 %owf 未満では消臭性が低く、1 %owf を越えると加工コストが高くなるため好ましくない。
【0030】
さらに、上記合成樹脂の付着量が0.01%owf 未満では付与した消臭性の洗濯耐久性が不十分となり、5 %owf を越えると繊維構造物の風合が硬くなるため好ましくない。
【0031】
また、特に繊維構造物の素材としてハロゲン化シクロアルカン化合物を含有するポリエステル繊維を用いる場合には、付着量の上限を2%owf に設定すべきであり、2%owf を越えると十分な難燃性能が発揮できなくなるため好ましくない。
【0032】
上述のようにして得た本発明の消臭性繊維材料は、アンモニア、アミン類、硫化水素及びメルカプタン類などの悪臭や、タバコ臭に含まれるアルデヒド類、酢酸などに対して耐久性のある、かつ優れた消臭性を有するものとなり、しかも柔軟な風合いにすることができる。
【0033】
本発明の消臭性繊維材料は、特にカーテン、カ−ペット、マット、毛布、シーツ、ふとんカバー、まくらカバー、ふとん綿、自動車の内装材などの建寝装材料に好ましく適用することができるほか、スーツ、ユニフォーム、シャツ、ブラウス、スラックス、スカート、セーター、靴下、パンティストッキング、芯地、裏地などの衣料材料、靴の中敷、内張り地、かばん地、風呂敷、クッション、ぬいぐるみなどの材料、布おむつ、おむつカバーなどの衛生材料、家具、冷蔵庫などの消臭材、フィルター類、及び不織布などの用途にも幅広く適用することができる。
【0034】
また、繊維材料として、ハロゲン化シクロアルカン化合物の付与したポリエステル繊維を使用した場合の消臭性繊維材料は、難燃性が要求されるカーテン、カーペット、マット、毛布、シーツ、ふとんカバー、まくらカバー、ふとん綿、自動車の内装材などの建寝用途に特に有効である。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明の構成および効果をさらに説明する。
【0036】
なお、実施例中の洗濯方法、および消臭性、風合、難燃性の評価方法は下記のとおりである。
【0037】
洗濯方法
JIS L 1042の6.1.1に記載の洗濯装置を使用し、花王(株)製弱アルカリ洗剤「ザブ」0.1%、温度60℃±2℃、浴比1:40の条件で、75分間洗濯した後、排液脱水し、25分間のすすぎ洗いを3回繰り返して行う。これを5回繰り返すものとする。
【0038】
消臭性
各500mlの密閉容器に、アンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタンおよび硫化水素を、それぞれ初期濃度が200ppm 、60ppm 、40ppm および20ppm となるように設定して封入し、その中に試料を3gずつ入れて、30分間放置した後、ガス検知器により残留ガス濃度を測定し、下記式に準じて臭気除去率を求めた。
【0039】
また、同様な方法で、アセトアルデヒド、酢酸の臭気に対して初期濃度が各々200ppm 、20ppm になるように設定し、残留ガス濃度を測定した。
【0040】
[たばこ臭に対する消臭性の臭覚評価]
500mlのガラス製三角フラスコを入り口を下にして、入り口の直下に発煙している紙巻きたばこを5秒間置いた後、すばやく三角フラスコを横にして、試料3gを投入し、ガラス栓で密閉した。1時間放置後にガラス栓を開け、残臭を嗅いで評価した。
【0041】
○:残臭がほとんどない △:やや残臭がある ×:残臭が大きい
臭気除去率(%)=(初期濃度−残留ガス濃度)/初期濃度×100
風合
各消臭性繊維構造物について、目視および触感による風合を、下記の基準で判定した。
【0042】
○:きわめてソフトな風合である。
【0043】
△:ややソフトな風合である。
【0044】
×:ソフト感がなく、硬い風合である。
【0045】
難燃性
JIS L 1091 D法(接炎試験)により評価した。
【0046】
実施例1、2、比較例1〜3
経糸、および緯糸ともに、150d−48フィラメントのポリエチレンテレフタレート加工糸を用いて形成した平織物を、三洋化成(株)製「サンデットG−29」1g/l、および30%水酸化ナトリウム溶液2g/lを含む処理液中で、80℃、15分間の条件で精練した後、乾燥し、さらに150℃で30秒間の中間セットを施してから、次の処方の染色処理液を使用し、液流染色機により液比1:10、130℃、60分の条件で染色処理した。
【0047】
次いで、三洋化成(株)製「サンデットG−29」1g/l、及び30%水酸化ナトリウム溶液2g/lを含む処理液中で、80℃、20分間の条件で洗浄し、60℃、10分間湯洗した後、さらに水洗してから、ピンテンターで120℃、2分間乾燥した。
【0048】
一方、酸化亜鉛と酸化ケイ素(比率1:3)の化合物を3%owsおよび硫酸銅を0.5%ows含む溶液に、水溶性ウレタン樹脂の50%エマルジョンをそれぞれ0.018%ows、0.02%ows、2%ows、12%owsとなるように配合した処理液を調製し、各処理液に上記で得た繊維構造物を浸漬した後、ピックアップ率100%で絞り、ピンテンターで120℃、2分間乾燥し、さらに180℃で30秒間熱処理することにより、それぞれ表1に示した処理液成分付着量を有する繊維構造物を得た。
【0049】
なお、比較例3では、処理液への硫酸銅の添加を省略した。
【0050】
各繊維構造物について、消臭性および風合を評価した結果を表1に併せて示す。
【0051】
【表1】
表1の結果から明らかなように、本実施例1,2では消臭性および風合ともにすぐれているのに対し、ウレタン樹脂の付着量が0.01%owf 未満の場合(比較例1)は、洗濯後の消臭性が低下し、5%owf を越えた場合(比較例2)は、繊維構造物の風合が硬くなり、処理液への硫酸銅の添加を省略した場合(比較例3)はメルカプタンに対する消臭性向上効果を得ることができない。
【0052】
実施例3,4、比較例4,5
実施例1の染色済み織物を、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカンの5%ows処理液中に浸漬した後、ピックアップ率100%で絞り、ピンテンターで120℃、2分間乾燥し、さらに195℃で30秒間乾燥することにより、難燃性織物を得た。
【0053】
一方、酸化亜鉛と酸化ケイ素(比率1:3)の化合物を3%owsおよび硫酸銅を0.5%ows含む溶液に、水溶性ウレタン樹脂の50%エマルジョンをそれぞれ0.018%ows、0.02%ows、4%ows、4.2%owsとなるように配合した処理液を調製し、各処理液に上記で得た繊維構造物を浸漬した後、ピックアップ率100%で絞り、ピンテンターで120℃、2分間乾燥し、さらに180℃で30秒間熱処理することにより、それぞれ表2に示した処理液成分付着量を有する繊維構造物を得た。
【0054】
各繊維構造物について、消臭性および難燃性を評価した結果を表2に併せて示す。
【0055】
【表2】
表2の結果から明らかなように、本実施例3,4では消臭性および難燃性ともに優れているのに対し、ウレタン樹脂の付着量が0.01%owf 未満の場合(比較例4)は難燃性は問題ないが洗濯後の消臭性が低下し、2%owf を越えた場合(比較例5)は繊維構造物良好な難燃性を得ることができない。
【0056】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、アンモニア、アミン類、硫化水素、及びメルカプタン類などの悪臭や、タバコ臭に含まれるアルデヒド類、酢酸などに対し耐久性のある、しかも優れた消臭性を発現させ、しかも柔軟な風合いを得ることができる。
Claims (3)
- 繊維構造物を、酸化ケイ素と酸化亜鉛とからなる化合物である無機系多孔質物質と、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、クエン酸銅およびフタロシアニン銅から選ばれた少なくとも1種の金属化合物と、エマルジョン形成性合成樹脂とを含有する処理液で処理してなり、前記無機系多孔質物質の付着量が0.1〜10%owf 、前記金属化合物の付着量が0.001〜1%owf 、前記合成樹脂の付着量が0.01〜2%owf である消臭性繊維構造物。
- 合成樹脂が、ウレタン系樹脂である請求項1に記載の消臭性繊維構造物。
- 繊維構造物が難燃剤としてハロゲン化シクロアルカン化合物を含有するポリエステル繊維からなる請求項1または2に記載の消臭性繊維構造物。
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