JP3745402B2 - 圧力容器の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、フィラメントワインディング法に基づいて成形される繊維強化プラスチック製の圧力容器に関し、例えばロケットモータケースなどに使用される圧力容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フィラメントワインディング法に基づいて成形された繊維強化プラスチック製の圧力容器は、例えばロケットモータケースとして、平成4年9月30日に丸善が発行した『第2版・航空宇宙工学便覧』の第932頁および第933頁に記載されているものがある。
【0003】
このようなロケットモータケースは、ケース内形状に対応したマンドレルに熱硬化性樹脂を含浸させた繊維を巻き付けてプリフォームを形成し、このプリフォームに対して真空引きを行うとともに加熱することにより硬化成形される。このとき、モータケースの形状などに応じて、マンドレルに対する繊維の巻き付け方が選択される。
【0004】
図2に示すマンドレル100は、シリンダ部の両端側に断面略半円形のドーム部を有するロケットモータケースを成形するものであって、両端部を支持する回転軸101,102によりドーム部の中央に開口部が形成される。図示のマンドレル100における繊維Fの巻き付け方は、両側のドーム部を経て1周したときに軌跡の内側に平面を形成し、これを1周毎にずらせて連続的に巻き付けていくインプレーン巻である。このインプレーン巻は、例えば、AIAA JOURNAL VOL.1 NO.12の第2842〜2844頁に記載されている。
【0005】
また、その他の繊維の巻き付け方としては等張力曲面を構成するヘリカル巻があり、上記のようなシリンダ部を有するロケットモータケースを成形する場合、インプレーン巻ではシリンダ部における軸線に対する繊維の傾斜角が場所によって僅かに異なるのに対して、ヘリカル巻では同傾斜角が一定になる。これらの技術は、1979年11月の『東京大学宇宙航空研究所報告・第15巻・第4号』に記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記したような従来のロケットモータケース(圧力容器)の製造において、インプレーン巻は、球形もしくは略球形であるケースに好適であって、シリンダ部を有するケースの場合には、シリンダ部が長くなるにつれて軸線に対する繊維の傾斜角が小さくなり、これにより繊維のすべりが生じ易くなることから比較的シリンダ部の長いケースには不向きであり、また、ヘリカル巻は、シリンダ部の長いケースには対処し得るものの、一般的に用いられている等張力曲面形状を構成するための巻き付け条件によって結果的に両側の開口部の直径が等しいものに限られている。両端の開口部の直径を同一にせざるを得ない場合、小径側(通常はイグナイタ側)ではその開口部に取付けるボスが大型化し、重量増および部品コスト増に至ることとなる。
【0007】
このため、従来の圧力容器の製造における繊維の巻き付け方では、シリンダ部の長さや開口部の大きさなどの条件によっては成形が難しい場合があり、このような不具合を解決することが課題であった。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、シリンダ部の両端側にドーム部を有し且つ両ドーム部の中央に円形の開口部を有する圧力容器において、フィラメントワインディング法に基づいて、シリンダ部の長さや両側の開口部の寸法差に左右されることなく良好に圧力容器を成形することができる圧力容器の製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる圧力容器の製造方法は、シリンダ部の両端側にドーム部を有し且つ両ドーム部の中央に円形の開口部を有する圧力容器をフィラメントワインディング法に基づいて成形するに際し、圧力容器の内側形状に対応するマンドレルを用い、マンドレルのドーム成形部にはインプレーン巻により繊維を巻き付け、マンドレルのシリンダ成形部にはヘリカル巻により繊維を巻き付けることとし、各部位におけるインプレーン巻とヘリカル巻を繰り返しつつ連続して繊維を巻き付けて圧力容器を成形す構成としており、上記の構成を課題を解決するための手段としている。
【0010】
網目理論によるインプレーン巻が構成するシリンダ部は等張力曲面を構成するシリンダ部と全く同一ではないが、実際上、網目理論によるインプレーン巻のシリンダ部はほぼ巻角一定のヘリカル巻とみなして差支えないことに着目したものである。シリンダ部をヘリカル巻と仮定できれば、シリンダ部の長さ変更(巻角一定の下で)は任意であり、上記構成は実施可能であることが説明できる。当然両ドーム部はそれぞれが平面上にあるが、両ドーム部はねじれの位置にあることになる。
【0011】
【発明の作用】
本発明に係わる圧力容器の製造方法では、マンドレルのドーム成形部にはインプレーン巻により繊維を巻き付けることから、両側のドーム部の中央に形成される開口部の直径が異なる場合にも対処し得ることとなり、なお且つ、マンドレルのシリンダ成形部にはヘリカル巻により繊維を巻き付けることから、シリンダ部における軸線方向に対する繊維の傾斜角が一定になると共に、同シリンダ部が比較的長い場合であっても繊維のすべりを生じさせることなく巻き付けが行われる。
【0012】
【実施例】
以下、図面に基づいて、本発明に係わる圧力容器の製造方法を説明する。ここでは圧力容器としてロケットモータケースを例示している。
【0013】
図1(b)に示すロケットモータケースRは、フィラメントワインディング法に基づいて成形した繊維強化プラスチック製であって、シリンダ部1の両端側に断面略半円形のドーム部(鏡板部)2,3を有すると共に、両ドーム部2,3の中央に円形の開口部4,5を有している。
【0014】
両開口部4,5は、互いに異なる直径D1,D2を有しており、例えば固体推進薬の充填後、図1左側の小さい開口部4には閉塞部材あるいはイグナイタが取付けられ、図1右側の大きい開口部5には推進用のノズルが取付けられる。
【0015】
上記のロケットモータケースRを成形するには、図1(a)に示すマンドレル10を用いる。このマンドレル10は、シリンダ部1の内側形状に対応するシリンダ成形部11、および各ドーム部2,3の内側形状に対応するドーム成形部12,13を有し、両端側が各開口部4,5を成形する回転軸14,15により支持してある。
【0016】
そして、マンドレル10を回転させながら熱硬化性樹脂を含浸させた連続繊維Fを巻き付けることとなるが、この際、ドーム成形部12,13には軌跡の内側に平面S1,S2を形成するインプレーン巻により繊維Fを巻き付け、シリンダ成形部11にはヘリカル巻により繊維Fを巻き付け、各部位におけるインプレーン巻とヘリカル巻を繰り返しつつ連続して繊維Fを巻き付けてロケットモータケース(プリフォーム)Rを成形する。
【0017】
このような製造方法では、ドーム成形部部12,13にはインプレーン巻により繊維Fを巻き付けることから、各ドーム部2,3に形成する開口部4,5の直径D1,D2が異なっていても良好に巻き付けが行われ、また、シリンダ成形部11にはヘリカル巻により繊維Fを巻き付けることから、シリンダ部1における軸線方向に対する繊維Fの傾斜角αが一定になると共に、同シリンダ部1が比較的長い場合であっても繊維Fのすべりを生じさせることなく、良好な巻き付けが行われる。
【0018】
また、上記のロケットモータケース(プリフォーム)Rは、後に真空引きおよび加熱処理を施して硬化成形されることとなり、上記した繊維Fの巻き付けにより、繊維配向状態が良好で且つ所望の強度を備えたものとなる。
【0019】
なお、上記実施例では、ロケットモータケースを例示したが、他の圧力容器の製造にも適用することができ、シリンダ部の短い圧力容器や両側の開口部の直径が等しい圧力容器についても当然適用できる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明に係わる圧力容器の製造方法によれば、シリンダ部の両端側にドーム部を有し且つ両ドーム部の中央に円形の開口部を有する圧力容器において、フィラメントワインディング法に基づいて、シリンダ部の長さや両側の開口部の寸法差に左右されることなく良好に圧力容器を成形することができ、とくに、比較的シリンダ部が長いものや両側の開口部の直径が異なるものについてもきわめて良好に成形することができ、シリンダ部、ドーム部および開口部を有する圧力容器の成形性を著しく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる圧力容器の製造方法において、マンドレルに対する繊維の巻き付け要領を説明する側面図(a)および圧力容器としてのロケットモータケースを説明する断面図(b)である。
【図2】インプレーン巻による繊維の巻き付け要領を説明する側面図である。
【符号の説明】
F 繊維
R ロケットモータケース(圧力容器)
1 シリンダ部
2 3 ドーム部
4 5 開口部
10 マンドレル
11 シリンダ成形部
12 13 ドーム成形部
Claims (1)
- シリンダ部の両端側にドーム部を有し且つ両ドーム部の中央に円形の開口部を有する圧力容器をフィラメントワインディング法に基づいて成形するに際し、圧力容器の内側形状に対応するマンドレルを用い、マンドレルのドーム成形部にはインプレーン巻により繊維を巻き付け、マンドレルのシリンダ成形部にはヘリカル巻により繊維を巻き付けることとし、各部位におけるインプレーン巻とヘリカル巻を繰り返しつつ連続して繊維を巻き付けて圧力容器を成形することを特徴とする圧力容器の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP07656995A JP3745402B2 (ja) | 1995-03-31 | 1995-03-31 | 圧力容器の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP07656995A JP3745402B2 (ja) | 1995-03-31 | 1995-03-31 | 圧力容器の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH08270793A JPH08270793A (ja) | 1996-10-15 |
JP3745402B2 true JP3745402B2 (ja) | 2006-02-15 |
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ID=13608870
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP07656995A Expired - Fee Related JP3745402B2 (ja) | 1995-03-31 | 1995-03-31 | 圧力容器の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3745402B2 (ja) |
-
1995
- 1995-03-31 JP JP07656995A patent/JP3745402B2/ja not_active Expired - Fee Related
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