JP3740897B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に当該機関の運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転を行う内燃機関に適用して好適な制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、機関運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転を実施し、稼動気筒数を減らすことで、実質的な内燃機関の排気量を一時的に低減して燃費の向上を図るようにした内燃機関の制御装置がある。
【0003】
図12は、4つの気筒#1〜#4を備える直列4気筒型内燃機関の場合を例として、その(a)全気筒運転時、及び(b)減筒運転時の機関回転数の推移を示している。
【0004】
この図12に例示した内燃機関では、気筒#1→#3→#4→#2の順に着火が行われているものとする。この内燃機関が全気筒で運転されているときには、同図12(a)に示すように、各気筒での着火の都度、機関回転数(機関回転速度)は増減を繰り返すように変動されている。ここで、気筒#3に対する燃料供給を遮断して減筒運転が行われると、同図12(b)に示すように、この気筒#3の本来の着火時期の直後に機関回転数(機関回転速度)が大きく低下するようになる。
【0005】
このように減筒運転を行う内燃機関では、減筒によって内燃機関の発生トルクのバランスが崩れ、機関回転の不適正な変動が生じるようになる。そして、この結果、内燃機関の振動や騒音が増大するなどの不都合が生じるおそれもある。
【0006】
そこで、特開平6−26430号公報に記載の内燃機関の制御装置では、休止対象となる特定気筒(休止対象気筒)に対して着火順序において直前の順となる気筒の着火時期(点火時期)を早め、同気筒の発生トルクを増大するようにしている。この結果、休止対象気筒の休止に先立ち、機関回転速度が予め高められるようになり、減筒に起因する機関回転速度の落ち込みを低減することができるようになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように減筒運転時に休止対象気筒に先行して着火される気筒の発生トルクを増大するようトルク制御することで、減筒に起因する機関回転数(機関回転速度)の一時的な落ち込みを好適に抑制することはでき、またその結果、内燃機関の振動や騒音の増大といった減筒に起因するトルク変動の影響をある程度は抑制することができる。しかしながら、こうしたトルク制御によっても、やはり減筒に起因するトルクの不適正な変動を充分に低減することはできず、内燃機関の回転バランスの悪化やそれに伴う振動や騒音などのトルク変動の影響を充分に抑制することはできない。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、特定気筒を休止して減筒運転を行う内燃機関において、減筒運転に伴うトルク変動の影響を更に効果的に抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、偶数個の気筒からなる内燃機関の運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転を行う内燃機関の制御装置において、前記減筒運転時には、各気筒の発生トルクを着火順序の順に交互に増大/減少させるべく、前記休止対象となる特定気筒から数えて着火順序において奇数番目の気筒の発生トルクを増大せしめると共に、同着火順序において偶数番目の気筒の発生トルクを減少せしめるように該特定気筒以外の気筒の発生トルクを制御するトルク制御手段を備えるようにしたものである。
【0010】
内燃機関の運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転中には、特定気筒を休止することによって、内燃機関の発生トルクが不用意に変動して、内燃機関の回転バランスが崩れ、振動や騒音が増大することがある。そこで、この請求項1に記載の構成では、こうした減筒運転時には、トルク制御手段によって、各気筒の発生トルクを着火順序の順に交互に増大/減少せるべく、前記休止対象となる特定気筒から数えて着火順序において奇数番目の気筒の発生トルクを増大せしめると共に、同着火順序において偶数番目の気筒の発生トルクを減少せしめるように上記特定気筒以外の気筒の発生トルクを制御するようにしている。こうしたトルク制御により、減筒運転時の内燃機関のトルク変動周期を短縮させることで、減筒に伴う内燃機関の回転変動を低減するようにしている。
【0011】
また、こうして各気筒の発生トルクを交互に増大/減少させるようにトルク制御を行えば、着火順序において上記休止対象となる特定気筒の直前及び直後の順の気筒の発生トルクが増大されるようになるため、この特定気筒の休止に起因する回転速度の落ち込みが抑制されるとともに、一時的に低下した回転速度をより早急に回復されるようになり、減筒による機関回転数の落ち込みを好適に抑制することができるようにもなる。
【0012】
ちなみに、実時間における各気筒の着火間隔がより短くなる内燃機関の高速運転中の減筒運転時に上記構成のトルク制御手段にかかるトルク制御を適用すれば、実時間における減筒運転時のトルク変動の周期が更に短縮されるため、こうしたトルク変動の影響の緩和に多大な効果が発揮されるようになる。このように、上記構成にかかるトルク制御は、高速運転中の減筒運転時に適用することでトルク変動の影響の抑制に特に高い効果を奏することができるが、高速運転中以外の減筒運転時に適用した場合にも、充分な抑制効果を得ることができる。
【0013】
したがって、この請求項1に記載の発明によれば、減筒運転時の機関回転に対するトルクの発生状態をよりバランスのとれた好適な態様とすることができ、機関回転の不適切な変動や内燃機関の振動や騒音の増大などの減筒運転時のトルク変動の影響を、更に効果的に抑制することができるようになる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、偶数個の気筒からなる内燃機関の運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転を行う内燃機関の制御装置において、当該機関の高速運転中の前記減筒運転時には、各気筒の発生トルクを着火順序の順に交互に増大/減少させるべく、前記休止対象となる特定気筒から数えて着火順序において奇数番目の気筒の発生トルクを増大せしめると共に、同着火順序において偶数番目の気筒の発生トルクを減少せしめるように該特定気筒以外の気筒の発生トルクを制御し、当該機関の低速運転中の前記減筒運転時には、前記休止対象となる特定気筒に対して着火順序において直前の順となる気筒の発生トルクを増大せしめ、同着火順序において直後の順となる気筒の発生トルクを減少せしめ、それ以外の気筒の発生トルクを保持するように発生トルクを制御するトルク制御手段を備えるようにしたものである。
【0019】
この請求項2に記載の構成では、内燃機関の高速運転中の減筒運転時にはトルク制御手段によって、各気筒の発生トルクを着火順序の順に交互に増大/減少させるべく、前記休止対象となる特定気筒から数えて着火順序において奇数番目の気筒の発生トルクを増大せしめると共に、同着火順序において偶数番目の気筒の発生トルクを減少せしめるように上記特定気筒以外の気筒の発生トルクが制御されるようになる。また、低速運転中の減筒運転時には、同じくトルク制御手段によって、上記休止対象となる特定気筒に対して着火順序において直前の順となる気筒の発生トルクが増大され、更にこの特定気筒に対して着火順序において直後の順となる気筒の発生トルクが減少され、それ以外の気筒の発生トルクが保持さるようになる。
【0020】
内燃機関の高速運転中の減筒運転時には、実時間における各気筒の着火間隔が短くなる。こうした高速運転中の減速運転時に、各気筒の発生トルクを着火順序の順に交互に増大/減少させるトルク制御を適用すれば、減筒運転時のトルク変動の実時間における周期が充分に短縮されるため、減筒に起因するトルク変動の影響の緩和に多大な効果が発揮されるようになる。
【0021】
一方、内燃機関の低速運転中は、実時間における各気筒の着火間隔がより長くなる。このときには、特定気筒に先行して着火される気筒の発生トルクを増大させるとともに、その特定気筒の直後に着火される気筒の発生トルクを減少させるようにトルク制御を行って、減筒運転時における内燃機関のトルクをより滑らかに変動させるようにすることで、減筒に起因するトルク変動の影響をより効果的に抑制することができるようになる。すなわち、この請求項2に記載の構成では、内燃機関の高速運転中と低速運転中とで減筒運転時のトルク制御態様を適宜に切り換えることで、減筒に起因して生じるトルク変動の影響を更に効果的に抑制するようにしている。
【0022】
したがって、この請求項2に記載の発明によれば、内燃機関の運転条件に応じてより適正な態様のトルク制御が選択的に実行されるため、減筒に起因するトルク変動の影響をより一層効果的に抑制することができるようになる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した第1の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態にかかる内燃機関及びその制御装置を示す概略構成図である。ちなみに、この実施の形態では、上記制御装置の適用対象となる内燃機関として、直列4気筒型の車載用ガソリンエンジンが採用されている。
【0025】
同図1に示すように、このエンジン10は、直列的に配設された4つの気筒#1〜#4が設けられたエンジン本体10a、吸気通路12、及び排気通路17を備えて構成されている。
【0026】
この吸気通路12において、その上流には、アクセルペダル14の踏み込み操作に応じて同吸気通路12の流路面積を可変とするスロットルバルブ13が設けられており、更にその上流には、エンジン10への吸入空気量を検出するためのエアフローメータ16、及び吸入空気をろ過するためのエアクリーナ15が設けられている。また吸気通路12は、上記スロットルバルブ13の下流側において各気筒#1〜#4に分岐されており、分岐後の吸気通路12には各々の気筒#1〜#4へと燃料を噴射供給するためのインジェクタ11が気筒毎にそれぞれ設けられている。
【0027】
一方、エンジン本体10aに設けられた各気筒#1〜#4には、図示しないスパークプラグに火花を飛ばさせて燃料を点火するための高電圧の電流を、コイルへの通電のオン/オフ操作に基づき発生させる点火コイル20がそれぞれの気筒毎に設けられている。これら各気筒#1〜#4の点火コイル20の通電のオン/オフ操作は、イグナイタ21によって制御されている。ちなみにこの実施の形態では、180°CA(クランク角度)間隔で、気筒#1→#3→#4→#2の順に点火が行われている。
【0028】
こうしたエンジン10において、上記エアフローメータ16などの各種センサの出力は、エンジン10の制御系としての役目を司る電子制御装置(ECU)22に対して入力される。このECU22には、上記エアフローメータ16の他にも、エンジン10の回転数や回転速度を検出する回転数センサ23をはじめ、エンジン10の運転状態を検出するその他の各種センサ24の出力が入力されている。そしてECU22は、こうしたセンサの検出結果に基づいて、インジェクタ11の駆動制御による燃料噴射量や燃料噴射時期の制御、及びイグナイタ21の駆動制御による点火時期(着火時期)の制御をはじめとする各種エンジン制御を行っている。
【0029】
ところで、この実施の形態のエンジン10では、上記エアフローメータ16や回転数センサ23などの検出結果に基づきエンジン10が所定の運転状態にあると判断されたとき、特定気筒に対する燃料供給を遮断して3つの気筒のみによりエンジン10を稼動させる減筒運転を実施するようにしている。そしてこの実施の形態では、こうした減筒運転にあたり、点火時期の制御に基づく各気筒#1〜#4の発生トルクの調整を行って、減筒に起因する機関回転の変動の影響を緩和するようにしている。
【0030】
次に、こうした減筒運転時のトルク調整のための点火時期の制御を中心として、この実施の形態における点火時期制御について説明する。
ECU(電子制御装置)22は、各気筒#1〜#4での点火が行われる毎に、各種センサの出力結果から把握されるエンジン10の運転状態に応じて点火時期を予め算出し、算出された点火時期に応じた制御信号(最終目標点火時期aop)をイグナイタ21に出力する。こうしたECU22からの制御信号に応じてイグナイタ21は、点火を行う気筒に対応した点火コイル20の通電のオン/オフ操作により、上記算出された点火時期にスパークプラグから火花を飛ばさせて該当気筒の着火を行うようにしている。
【0031】
図2〜図4は、点火時期の算出にかかるECU(電子制御装置)22の処理手順を示すフローチャートである。続いて、このフローチャートに基づいて、この実施の形態での点火時期の算出方法、及びこの点火時期制御に基づく減筒運転時の各気筒#1〜#4の発生トルクの調整方法について説明する。
【0032】
ECU(電子制御装置)22は、各気筒#1〜#4での点火の実行に先行して点火時期の算出を行うため、所定クランク角毎の角度割り込み処理として図2の「点火時期の算出処理」を実行する。
【0033】
さて、処理がこの「点火時期の算出処理」に移行すると、ECU22はまずステップS100において、そのときの機関運転状態に応じた点火時期であるベース目標点火時期acalの算出を行う。ここでは、ECU22は、上記回転数センサ23の出力結果より求められた機関回転数ne、エアフローメータ16の出力結果から求められた吸入空気量klsmなどのそのときの機関運転状態に基づき、予めECU22内に記憶された周知の制御マップなどを参照して、ベース目標点火時期acalを算出するようにしている。
【0034】
そして続くステップS110においては、ECU22はそのとき減筒運転中であるか否かの判断を行っている。なお、この実施の形態では上述の通り、エンジン10が所定の運転状態にあるときに減筒運転を行うようにしている。そして、ECU22は、そのとき減筒運転中であると認識すればその処理をステップS120に移行する。
【0035】
また、ここで減筒運転中ではない、すなわち全気筒での運転中であると認識すれば、ECU22はその処理をステップS130に移行する。このステップS130においては、減筒運転にかかるトルク調整のための点火時期の補正を行わないようにするため、点火時期補正量aopadの値を「0」に設定する。そしてECU22は、続くステップS400において、上記算出したベース目標点火時期acalにこの点火時期補正量aopadを加算して最終目標点火時期aopを算出し、この算出処理を一旦終了する。すなわち、減筒運転中でなければ、そのときの機関運転状態に応じた点火時期であるベース目標点火時期acalがそのまま、最終目標点火時期aopとして設定され、エンジン10はその運転状態に応じた点火時期で運転されることとなる。
【0036】
一方、そのとき減筒運転中であると認識されていれば(ステップS110においてYES)、ECU22はステップS120において、今回の点火時期の算出にかかる気筒が、減筒運転にかかる休止対象となる特定気筒(休止対象気筒)であるか否かを判断する。
【0037】
具体的にはECU22は、こうした休止対象気筒の特定を点火順序カウンタNの値から判断するようにしている。この点火順序カウンタNは、減筒運転中に上記休止対象気筒以外の気筒の点火時期を算出すべく、この「点火時期算出処理」が実行される毎に「1」ずつ加算される(ステップS160)。そして休止対象気筒の点火時期の算出に際して、この点火順序カウンタNの値はクリア(N=「0」)される(ステップS140)。したがって、4つの気筒を備えるこのエンジン10では、この「点火時期算出処理」の実行にあたり、点火順序カウンタNの値が「3」であれば、今回の点火時期の算出にかかる気筒が、休止対象となる特定気筒であると判断することができる。
【0038】
なお、この実施の形態では、減筒運転にあたり気筒#3に対する燃料供給を遮断し、気筒#3を休止するようにしている。また、上述のようにこのエンジン10における気筒の点火順序は、気筒#1→#3→#4→#2の順となっている。このため、ステップS140或いはS160における処理(点火順序カウンタNの値の操作)後の各気筒に対応する点火順序カウンタNの値は、休止対象気筒にあたる気筒#3が値「0」に該当し、以下、気筒#4が値「1」に、気筒#2が値「2」に、気筒#1が値「3」にそれぞれ該当するようになる。
【0039】
ここで、今回の算出にかかる気筒が休止対象気筒でない旨認識されていれば(ステップS120においてNO)、ECU22はその処理をステップS160に移行する。また、ここで今回の点火時期算出にかかる気筒が休止対象気筒であると認識されていれば(ステップS120においてYES)、ECU22はその処理をステップS140に移行して、次の一連の処理(ステップS140,S150)を実行する。
【0040】
ステップS140では、ECU22は上述のように点火順序カウンタNの値をクリアする。そして続くステップS150において、ECU22は、この算出処理の終了後に本来、点火が行われる予定の休止対象気筒の点火を中止(点火カット)すべく旨の制御信号をイグナイタ21に対して出力する。こうして、休止対象気筒である気筒#3の点火カットを行わせるようにした後、ECU22は今回の処理を一旦終了する。
【0041】
一方、ここで今回の点火時期算出にかかる気筒が休止対象気筒ではない旨認識され(ステップS120においてNO)、その処理がステップS180に移行すると、ECU22はそのときエンジン10がある程度よりも低速(機関回転数ne<α)、且つある程度よりも低負荷(吸入空気量klsm<β)で運転されているか否かを判断する。ECU22は、ここでエンジン10が低速低負荷で運転されていると認識されていなければ(NO)その処理をステップS200(図3)に移行し、認識されていれば(YES)その処理をステップS300(図4)に移行する。そしてECU22は、これらステップS200及びS300にかかる処理においてそれぞれ、そのときのエンジン10の運転条件に応じたトルク調整がなされるように、上記点火時期補正量aopadを算出するようにしている。
【0042】
そしてこれらステップS200或いはステップS300にかかる処理において、それぞれの運転状態に応じた点火時期補正量aopadを算出した後、ECU22はステップS400において、先のステップS100において算出したベース目標点火時期acalにこの点火時期補正量aopadを加算して最終目標点火時期aopを求め、この算出処理を一旦終了する。
【0043】
このように、本実施の形態では、エンジン10が低速低負荷で運転されている時とそれ以外の時とで、異なる処理にて点火時期補正量aopadを求めるようにしている。次に、各運転条件における点火時期補正量aopadの算出方法について図3及び図4のフローチャート等を参照して説明する。
【0044】
図3は、ステップS200にかかる処理、すなわち減筒運転中にあってエンジン10が高速高負荷で運転されているときの点火時期補正量aopadの算出にかかる処理(「点火時期補正量の算出処理A」)の手順を示すフローチャートである。
【0045】
さて、処理がステップS200に移行すると、まずECU22はステップS210において、今回の算出にかかる気筒が点火順序において上記休止対象気筒から数えて奇数番目であるか否かを判断する。すなわち、このエンジン10においては、上記点火順序カウンタNの値が「1」に対応する気筒#4、及び同カウンタNの値「3」に対応する気筒#1の点火時期の算出に該当するか否かを判断する。
【0046】
ここで、上記条件に該当することが認識されていれば(ステップS210においてYES)、ECU22はその処理をステップS220に移行し、該当しないことが認識されていれば(NO)その処理をステップS230に移行する。
【0047】
そして、ステップS220においては、該当気筒の発生トルクをより増大させるため、点火時期をより進角させる方向の点火時期補正量aopadが算出される。また、ステップS230においては、該当気筒の発生トルクをより減少させるため、点火時期をより遅角させる方向の点火時期補正量aopadが算出される。具体的には、本実施の形態でのステップS220及びS230での点火時期補正量aopadは、ECU22内に予め記憶された制御マップを参照して算出されている。
【0048】
図5は、こうした点火時期補正量aopadの算出にかかる算出マップの一例を示している。
この図5の算出マップには、上記エアフローメータ16の検出結果から求められる吸入空気量klsm、及び上記回転数センサ23の検出結果から求められる機関回転数neと、点火時期補正量aopadの絶対値との対応関係が示されている。そして、点火時期を進角方向に補正する場合(ステップS220)には進角補正量として、遅角方向に補正する場合(ステップS230)には遅角補正量として、この算出マップより求められた点火時期補正量aopadの絶対値の正負を定め、点火時期補正量aopadを算出している。
【0049】
こうして点火時期補正量aopadを算出した後、ECU22はその処理を図2のステップS400に移行し、減筒運転にかかるトルク調整分を加味した最終目標点火時期aopを算出して、今回の「点火時期の算出処理」を終了する。
【0050】
図6に、このときの(a)点火時期補正量aopad、及び(b)機関回転数neの推移を示す。
減筒運転中にあってエンジン10が高速高負荷で運転されているときには、図6(a)に示す点火時期補正量aopadは、上述のように休止対象となる特定気筒#3から数えて点火順序において奇数番目の気筒#4,#1の点火時期を進角させ、また偶数番目の気筒#2の点火時期を遅角させるように設定される。そしてこうした点火時期補正により、減筒される気筒#3の前後に点火される上記奇数番目の気筒#4,#1ではその発生トルクがより増大され、また休止対象気筒#3から360°CA後に点火される上記偶数番目の気筒#2ではその発生トルクがより減少されるようになる。こうして、このときの各気筒の発生トルクは、減筒されてトルクを発生しない気筒#3も含めて、点火順序の順に交互に増大/減少されるようになる。
【0051】
この結果、エンジン10の発生トルクの変動は、こうしたトルク調整を行わないときの720°CA周期(点火間隔にて4気筒分)から360°CA周期(点火間隔にて2気筒分)にまで短縮されるようになる。したがって、このときのエンジン10のトルク発生態様は、360°CA間隔で点火が行われる2気筒運転の等間隔点火時のトルク発生態様に近づき、よりバランスのとれたものとなる。ちなみに、実時間における各気筒の点火間隔が短くなるエンジン10の高速運転中の減筒運転時に、こうしたトルク制御を適用すれば、減筒に起因するトルク変動の実時間における周期を充分に短くして、且つ機関回転のバランスを向上することで、こうした変動の影響の緩和に多大な効果を発揮するようになる。
【0052】
一方、こうしたトルク調整の結果、機関回転数ne(機関回転速度)は、例えば図6(b)に実線で示すように推移するようになる。なお、この図6(b)には、こうした減筒運転にかかるトルク調整を行わないとき(図12(b)参照)の減筒運転時の機関回転数neの変動も、破線にて併せ示されている。これらの対比からも明らかなように、上記の如くトルク調整を行えば、休止対象気筒の前後に点火される気筒での発生トルクが増大されることにより、減筒に起因する機関回転数ne(機関回転速度)の落ち込みが抑制されるとともに、一時的に低下した回転速度をより早急に回復させることができるようになり、機関回転数ne(機関回転速度)の落ち込み期間をより短縮することができるようにもなる。
【0053】
以上のように、この実施の形態では、減筒運転中にエンジン10が高速高負荷で運転されていれば、各気筒の発生トルクが点火順序の順に交互に増大/減少されるように休止対象気筒以外の気筒の発生トルクを制御するようにして、減筒に起因して生じるトルク変動の影響を抑制するようにしている。
【0054】
これに対して、同じ減筒運転中にあってもエンジン10が低速低負荷運転されていれば(ステップS170においてYES)、ECU22は上述のようにステップS300にかかる処理によって点火時期補正量aopadを求めており、上記の場合とは異なる態様で各気筒の発生トルクを制御している。次に、このときの点火時期制御によるトルク調整方法について図4及び図7を参照して説明する。
【0055】
図4は、こうしたステップS300にかかる処理、すなわち減筒運転中にあってエンジン10が低速低負荷運転されているときの点火時期補正量aopadの算出にかかる処理(「点火時期補正量の算出処理B」)の手順を示すフローチャートである。
【0056】
さて、処理がステップS300に移行すると、ECU22はステップS310及びS330における判断処理によって、今回の点火時期の算出対象となる気筒が点火順序において上記休止対象となる特定気筒の直前の順にあたる気筒である場合(S310においてYES)、直後の順にあたる気筒である場合(S310においてNO、且つS330においてYES)、及びそれ以外の気筒である場合(S310,S330ともにNO)とでその後の処理を分岐し、それぞれに応じた上記点火時期補正量aopadの算出を行う。
【0057】
「直前の順の気筒」に対応する場合、すなわちそのときの点火順序カウンタNの値が「3」であって、今回の点火時期の算出対象となる気筒が気筒#1である場合には、ECU22はステップS320において、該当気筒の発生トルクをより増大すべく、点火時期をより進角する方向の点火時期補正量aopadを算出する。
【0058】
また「直後の順の気筒」に対応する場合、すなわちそのときの点火順序カウンタNの値が「1」であって、今回の点火時期の算出対象となる気筒が気筒#4である場合には、ECU22はステップS340において、該当気筒の発生トルクをより減少すべく、点火時期をより遅角する方向の点火時期補正量aopadを算出する。なお、このときの点火時期補正量aopadも、先のステップS220,S230と同様に、図5の算出マップを参照することによって求められている。
【0059】
更に「それ以外気筒」に対応する場合、この実施の形態ではそのときの点火順序カウンタNの値が「2」であり、今回の点火時期の算出対象となる気筒が気筒#2である場合には、ECU22はステップS350において、該当気筒の発生トルクを本来のレベルに保持すべく、点火時期補正量aopadの値を「0」に設定する。
【0060】
以上のようにして、今回の点火時期の算出対象となる気筒の点火順序に応じた点火時期補正量aopadを算出した後、ECU22はその処理を図2のステップS400に移行し、ここで算出した点火時期補正量aopadに応じて最終目標点火時期aopの算出を行い、今回の算出処理を終了する。
【0061】
図7に、このときの(a)点火時期補正量aopad、及び(b)機関回転数neの推移を示す。
図7(a)に点火時期補正量aopadの推移を示すように、減筒運転中にあってエンジン10が低速低負荷で運転されているときには、休止対象となる特定気筒#3に対して点火順序において直前の順にあたる気筒#1の点火時期を進角させ、直後の順にあたる気筒#4の点火時期を遅角させるように補正が行われている。すなわち、ここでは休止対象となる特定気筒#3に先行して点火が行われる気筒#1の発生トルクが増大され、また特定気筒の直後に点火が行われる気筒#4の発生トルクを減少されるように点火時期を補正するようにしている。
【0062】
こうしたトルク調整の結果、機関回転数ne(機関回転速度)は、例えば図7(b)に実線で示すように推移するようになる。この図7(b)にも、減筒運転にかかるトルク調整を行わないときの機関回転数ne(機関回転速度)の推移を破線で示している。
【0063】
これらの対比からも明らかなように、ここでは休止対象気筒に先行して点火される気筒の発生トルクを増大させ、点火カットに先立ち予め機関回転数ne(機関回転速度)を高めておくことで、減筒に起因する機関回転数ne(機関回転速度)の落ち込みを抑制するようにしている。また、ここでは、休止対象気筒の直後に点火される気筒の発生トルクを低減することで、点火の再開に伴いエンジン10の回転が急激に加速されて生じるショックを緩和するようにしている。このように、このときには、上記のトルク調整によって機関回転数neの落ち込みを抑制し、点火再開時のショックを緩和することで、減筒に起因して生じるトルク変動の影響を低減するようにしている。
【0064】
ちなみに、各気筒の点火間隔が比較的長くなるエンジン10の低速運転中における減筒運転時に、こうしたトルク制御を適用して同エンジン10のトルク変動を円滑に推移するようにすれば、こうした減筒に起因するトルク変動の影響をより一層効果的に抑制することができるようになる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態の内燃機関の制御装置によれば、以下に記載する効果を得ることができるようになる。
(1)減筒運転時に、各気筒の発生トルクが点火順序の順に交互に増大/低減されるように休止対象気筒以外の気筒のトルク調整を行うことで、減筒に起因して生じるエンジン10のトルク変動や回転変動の影響を効果的に抑制することができるようになる。
【0066】
(2)減筒運転時に、休止対象気筒に対して点火順序において直前の順の気筒の発生トルクを増大し、また直後の順の気筒の発生トルクを低減するようにトルク調整を行うことで、点火再開時のショックを緩和して、減筒に起因して生じるエンジン10のトルク変動や回転変動の影響を効果的に抑制することができるようになる。
【0067】
(3)減筒運転時のエンジン10の運転状態、特に機関回転数neに応じてトルク制御態様を適宜に切り換えることで、更に効果的に減筒に起因する変動の影響を抑制することができるようになる。
【0068】
(4)減筒運転時における各気筒の発生トルクの調整量(点火時期補正量aopad)をそのときのエンジン10の回転数(機関回転数ne)及び負荷(吸入空気量klsm)に応じて算出するようにすることで、減筒によって生じる回転変動やトルク変動、或いはこうした変動によって発生する振動の発生態様のエンジン10の運転状態に応じた変化に合わせ、適切なトルク制御を行うことができるようになり、減筒に起因する変動の影響を更に効果的に抑制することができるようになる。
【0069】
(5)点火時期の制御に基づいてこうした減筒運転にかかるトルク調整を行うようにすることで、各気筒の発生トルク容易且つ適切に制御することができるようになる。
【0070】
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0071】
第1の実施の形態では、エンジン10の減筒運転にかかる各気筒のトルク制御として次の2つの制御、
(A1)各気筒の発生トルクが点火順序の順に交互に増大/減少されるように、休止対象気筒以外の気筒のトルクを調整する制御。
(A2)休止対象気筒に対して点火順序において直前の順の気筒の発生トルクを増大し、また直後の順の気筒の発生トルクを減少させるように調整する制御。
を行うことで、減筒に起因するエンジン10のトルク変動や回転変動の影響を効果的に抑制できることについて述べた。また、機関高速運転中の減筒運転時には上記(A1)のトルク制御を行い、機関低速運転中の減筒運転時には上記(A2)のトルク制御を行うように、減筒運転時のトルク制御態様をエンジン10の運転状態に応じて適宜に切り換えることで、減筒に伴うトルク変動の影響を更に効果的に抑制し得ることについても上述した通りである。
【0072】
なお、第1の実施の形態では、こうした減筒運転時のトルク制御を行う内燃機関の制御装置を直列4気筒型の車載用ガソリンエンジンに適用した場合について説明しているが、気筒数や気筒配列の異なるその他の形式の内燃機関についてもこれに準じたトルク制御を同様に適用することができる。そして、その場合にも同様に減筒に起因するトルク変動の影響を抑制することができる。
【0073】
そこで、この第2の実施の形態では、本発明にかかる減筒運転時のトルク制御を行う内燃機関の制御装置を、直列6気筒型のガソリンエンジンに適用した場合について説明する。
【0074】
この実施の形態における直列6気筒型のガソリンエンジンは、直列的に配設された6つの気筒#1〜#6を備えている。これら各気筒#1〜#6にそれぞれ点火プラグ及び点火コイル20が設けられており、また各気筒の点火時期がECU(電子制御装置)22の指令信号に基づき作動するイグナイタ21によって制御されることは、先の第1の実施の形態のエンジン10と同様である(図1参照)。なお、この実施の形態では、クランク角にて120°CAの等間隔で、
気筒#1→気筒#5→気筒#3→気筒#6→気筒#2→気筒#4
の順に点火が行われている。また、この実施の形態では、減筒運転にあたり気筒#1への燃料供給が遮断されて、残りの5気筒での運転が行われている。
【0075】
そしてこの実施の形態でも、減筒運転時には先の第1の実施の形態に準じた態様でのトルク制御が行われている。以下、このエンジンでの減筒運転時のトルク制御について、図8及び図9を参照して説明する。
【0076】
図8は、本実施の形態にかかるエンジンが高速運転中に減速運転されているときの(a)点火時期補正量aopad及び(b)機関回転数neの推移を示している。
【0077】
この図8に示すように、本実施の形態においても、エンジンの高速運転中の減速運転時には、各気筒の発生トルクが点火順序の順に交互に増大/減少されるように、休止対象気筒#1以外の気筒#2〜#5の発生トルクが制御されている。詳しくは、図8(a)に示すように、休止される気筒#1から数えて点火順序において奇数番目にあたる気筒#5,#6,#4の発生トルクを増大させるべく、これらの気筒の点火時期を進角側に補正するよう点火時期補正量aopadを設定するようにしている。また、休止される気筒#1から数えて点火順序において偶数番目にあたる気筒#3,#2の発生トルクを減少させるべく、これらの気筒の点火時期を遅角側に補正するように点火時期補正量aopadを設定するようにしている。
【0078】
こうしたトルク制御の結果、休止されてトルクを発生しない気筒#1も含め、各気筒の発生トルクは点火順序の順に交互に増大/減少されるようになる。そして、エンジンの発生トルクの変動は、こうしたトルク調整を行わないときの720°CA周期(点火間隔にて6気筒分)から240°CA周期(点火間隔にて2気筒分)にまで短縮されるようになる。このため、このエンジンのトルク発生態様は、当該エンジンにおいて240°CA間隔で点火が行われる等間隔点火による3気筒運転状態に近づき、よりバランスのとれた状態でエンジン回転が行われるようになる。
【0079】
なお、実時間における各気筒の点火間隔が短くなるエンジンの高速運転中の減筒運転時にこうしたトルク制御を適用することで、減筒に起因するエンジンのトルク変動や回転変動の影響を特に効果的に緩和できることは、先に挙げた直列4気筒エンジンの場合と同様である。
【0080】
こうしたトルク制御の結果、機関回転数ne(機関回転速度)は、例えば図8(b)に示すような態様で推移するようになる。この図8(b)に示すように、休止対象気筒#1の前後に点火される気筒(気筒#4,#5)の発生トルクを増大させることで、減筒に起因する機関回転数ne(機関回転速度)の落ち込みが抑制されるとともに、一時的に低下した回転速度をより早急に回復されるようになる。このように上記トルク制御の結果、減筒に起因する機関回転数ne(機関回転速度)の落ち込み期間はより短縮されるようにもなる。
【0081】
また一方で、この実施の形態でも、エンジンの低速運転中の減速運転時には、高速運転中とは異なった態様でのトルク制御が行われている。図9は、こうしたエンジンの低速運転中の減速運転時の(a)点火時期補正量aopad、及び(b)機関回転数neの推移を示している。
【0082】
この図9に示すように、エンジンの低速運転中の減筒運転時には、休止対象気筒#1に対して点火順序において直前の順にあたる気筒#4の発生トルクを増大すると共に、直後の順にあたる気筒#5の発生トルクを減少させるようにトルク制御が行われている。すなわちここでは、図9(a)に示すように、休止対象気筒#1に先行して点火される気筒#4の発生トルクを増大させるべく、同気筒#4の点火時期が進角されるよう点火時期補正量aopadが設定されている。またその一方で、休止対象気筒#1の直後に点火される気筒#5の発生トルクを減少すべく、同気筒#5の点火時期が遅角されるよう点火時期補正量aopadが設定されている。
【0083】
そしてこうしたトルク制御の結果、機関回転数ne(機関回転速度)は、例えば図9(b)に示すような態様で推移するようになる。この図9(b)に示すように、ここでは休止対象気筒#1に先行して点火される気筒#4の発生トルクを増大させて、点火カットに先立ち予め機関回転数ne(機関回転速度)を高めておくことで、減筒に起因する機関回転数ne(機関回転速度)の落ち込みを抑制するようにしている。また更にここでは、休止対象気筒#1の直後に点火される気筒#5の発生トルクを低減することで、点火の再開に伴いエンジンの回転が急激に加速されて生じるショックを緩和するようにしている。このように、このときには、上記のトルク調整によって機関回転数neの落ち込みを抑制し、点火再開時のショックを緩和することで、減筒に起因して生じるトルク変動や機関回転数ne(機関回転速度)の変動の影響を低減するようにしている。
【0084】
なお、各気筒の点火間隔が比較的長くなるエンジン10の低速運転中の減筒運転時に、こうしたトルク制御を適用することで、減筒に起因するエンジンのトルク変動や回転変動の影響を特に効果的に緩和できることは、先述した通りである。
【0085】
以上、直列4気筒型或いは直列6気筒型エンジンの場合を例として説明したように、エンジンの減筒運転時に上記(A1)(A2)に記載のトルク制御を適用すれば、減筒に起因して発生するトルク変動やエンジン回転の変動の影響を効果的に抑制することができるようになる。また、エンジンの高速運転中の減筒運転時に上記(A1)に記載のトルク制御を、また低速運転中の減筒運転時に上記(A2)に記載のトルク制御をそれぞれ適用すれば、減筒にかかるトルクやエンジン回転の変動の影響を特に好適な態様で抑制することができるようにもなる。
【0086】
なお、上記(A1)(A2)に記載のトルク制御は、直列4気筒型或いは直列6気筒型のエンジンに限らず、気筒数や気筒配列の異なる任意の形式のエンジンについても同様に適用できることは上述した通りであるが、以上説明した第1及び第2の実施の形態にかかる内燃機関の制御装置は、更に以下のように変更して実施することも可能である。
【0087】
・上記各実施の形態では、減筒運転時のトルク制御にかかる点火時期の調整量(点火時期補正量aopad)をエンジンの回転数(機関回転数ne)と負荷(吸入空気量klsm)に応じて算出する構成としたが、上記(A1)(A2)に記載の態様で各気筒の発生トルクの増大/減少が可能であれば、こうした点火時期の調整量の算出方法は任意であり、例えば他の機関運転状態を示すパラメータを用いて算出するなど、他の算出方法によって求めるようにしてもよい。また、後述するように点火時期の調整以外の方法でトルク制御を行う場合においても、上記エンジンの回転数及び負荷から算出する方法以外の任意の方法で発生トルクの調整量を算出するようにすることができる。
【0088】
・また、こうした減筒運転にかかるトルク制御にあたり、各気筒の発生トルクの調整量に適宜に変化を付けるようにしてもよい。こうして各気筒の発生トルクを更に細かく制御することで、減筒に起因して生じるトルク変動の影響を更に効果的に低減することができるようになる。
【0089】
・なお、減筒に起因して生じるエンジン回転やトルクの変動、或いはこうした変動によって生じる振動や騒音の発生態様は、エンジンのフリクション状態、例えばエンジンの温度状態による潤滑油の粘度変化に応じた機関出力軸(クランクシャフト)等の回転フリクションの違いや、エンジンの吸気態様によって変化するエンジン回転時のポンピング損失の大きさなどによって変化する。そこで、冷却水温度や潤滑油温度などのエンジンの温度状態の変化、或いは機関バルブのバルブ特性を可変とする可変動弁装置や吸気管の管路長さや管路断面積などを可変とする可変吸気装置などのエンジンの吸気態様を変化させる装置の制御量などにも応じて、上記減筒運転時の発生トルクの調整量(点火時期補正量aopad)を算出するようにしてもよい。このようにすれば、エンジンのフリクション状態の変化に応じた減筒時の回転変動などの発生態様の変化に合わせて、更に好適な態様で減筒運転時のトルク制御を行うことができ、こうした変動などの影響を更に効果的に抑制することができるようになる。
【0090】
・また、上記減筒に起因して生じる変動や振動の発生態様は、エンジンを懸架支持するエンジンマウントやエンジンの搭載される車両のサスペンションなどのエンジン支持装置の固有振動数などによっても変化する。このため、エンジンや車両の運転状態に応じてその減衰特性や弾性特性を可変とする可変エンジンマウントや可変サスペンションなどが採用された車両においては、こうしたエンジン支持装置の制御態様によっても、最適な減筒運転時のトルク制御態様が変化する。そこで、こうした可変エンジンマウントや可変サスペンションなどの制御量、或いはこれらの制御にかかるエンジンや車両の運転状態を示すパラメータに応じても、上記減筒運転時のトルク制御にかかる各気筒の発生トルクの調整量(点火時期補正量aopad)を算出するようにしてもよい。このようにすれば、上記エンジン支持装置の制御状態に応じた変動や振動などの発生態様の変化に合わせて、より適切な減筒運転時のトルク制御を行うことができるようになり、更に効果的に上記変動などの影響を抑制することができるようになる。
【0091】
・なお、減筒に起因して生じる変動や振動の発生態様は、エンジンマウントなどのエンジン支持装置やエンジンの圧縮比などの経時変化や個体差などによっても変化する。そこで、こうした変化に応じた最適値をエンジン回転数などに応じて学習する制御などによって、上記減筒運転にかかるトルク制御時のトルク調整量を制御装置自身が自己調整する構成としてもよい。こうした構成とすることで、上記経時変化や個体差などに拘わらず、常に適正なトルク制御を行うことができるようになる。
【0092】
・上記各実施の形態では、エンジンの高速運転中の減筒運転時には上記(A1)に記載の制御へと、低速運転中の減筒運転時には上記(A2)に記載の制御へと、減筒運転にかかるトルク制御をそれぞれ切り換えて実行する構成としたが、これら(A1)(A2)のトルク制御は、こうした切り換え態様に限らず、減筒運転時に任意に適用することができる。例えば、減筒運転時に、機関運転状態に関わらず常に(A1)或いは(A2)のいずれか一方のトルク制御のみを行う構成としてもよい。上述のように、エンジンの高速運転中或いは低速運転中の減筒運転時に、それぞれ上記(A1)或いは(A2)のトルク制御を適用すれば、特に高い変動の影響の抑制効果が得られるものの、それ以外の機関運転中の減筒運転時に適用した場合にも充分な抑制効果を得ることができる。
【0093】
・上記各実施の形態では、こうした減筒運転時のトルク制御を火花着火式内燃機関の一種であるガソリンエンジンに対して適用し、点火時期の調整に基づき各気筒のトルク制御を行う構成について説明したが、上記各実施の形態に準じた態様での減筒運転時のトルク制御は、ガソリンエンジン以外の火花着火式内燃機関や例えばディーゼルエンジンなどの自己着火式内燃機関など、他の形式の内燃機関にも適用することができる。ちなみに、自己着火式内燃機関においては、点火時期の代わりに燃料噴射時期を制御し、各気筒での着火時期を調整してすることでその発生トルクを制御することもできる。何れにせよ、減筒運転時に上記(A1)或いは(A2)に記載の如く各気筒の発生トルクを制御するようにすれば、それが機関運転状態に応じて減筒運転を行うものであれば、如何なる形式の内燃機関であれ、減筒に起因して生じるトルク変動などの影響を効果的に抑制することができる。
【0094】
・また、上記各実施の形態では、ガソリンエンジンなどの火花着火式内燃機関における点火時期或いはディーゼルエンジンなどの自己着火式内燃機関における燃料噴射時期などの着火時期の調整によって各気筒の発生トルクを制御する構成としたが、各気筒の発生トルクの制御方法は任意であり、各気筒の発生トルクを個別に調整可能であれば他の方法で行うようにしてもよい。例えば、燃料噴射量(空燃比)、圧縮比、或いは燃料噴射態様(噴射燃料の微細化による燃焼促進など)などを各気筒毎に個別に制御することで各気筒の発生トルクを調整するようにしてもよい。また、機関バルブのバルブ特性を可変とす可変動弁装置を備える内燃機関や、吸気管の長さや断面積を可変とする可変吸気装置を備える内燃機関においては、これら可変動弁装置や可変吸気装置の制御によって各気筒に導入される吸入空気量を適宜に制御することで、発生トルクを制御するようにしてもよい。何れの方法にせよ、減筒運転時に上記(A1)或いは(A2)に記載の如く各気筒の発生トルクを制御するようにすれば、減筒に起因するトルク変動の影響を効果的に抑制することはできるようになる。
【0095】
(第3の実施の形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した第3の実施の形態について説明する。
【0096】
上記各実施の形態では、直列型エンジンの場合を例として減筒運転時のトルク変動の影響の抑制効果を図るためのトルク制御について説明した。こうした減筒運転時のトルク制御は、例えばV型エンジンや水平対向型エンジンなどの、複数のバンクにそれぞれ配設された複数の気筒群を備える内燃機関に適用した場合にも、やはり同様に減筒運転時のトルク変動の影響を効果的に抑制することができることは上述した通りである。
【0097】
なお、こうした複数のバンクにそれぞれ配設された複数の気筒群を備える内燃機関では、休止対象気筒の属する気筒群の構成気筒の発生トルクの変動を低減することによっても、エンジン回転の変動や振動などの減筒運転時のトルク変動の影響を抑制できることが確かめられている。
【0098】
そこで、この第3の実施の形態にかかる内燃機関の制御装置では、休止対象気筒の属する気筒群のトルク変動を低減すべく、休止対象気筒の選定や各気筒の発生トルクの調整を行うようにしている。以下、本実施の形態における減筒運転時のエンジン制御について、図10及び図11に基づき説明する。
【0099】
図10は、この実施の形態にかかる内燃機関の制御装置の適用対象となるエンジンの気筒配列を模式的に示している。
本実施の形態の適用されるエンジン100には、この図10に示すように、左右2つのバンク100a,100bに4つの気筒がそれぞれ設けられたV型8気筒式のガソリンエンジンである。そしてこのエンジン100の各気筒#1〜#8は、左バンク100aに設けられた気筒#1,#3,#5,#7からなる第1気筒群と、右バンク100bに設けられた気筒#2,#4,#6,#8からなる第2気筒群とに区分けされている。
【0100】
また、同図10では図示しないが、このエンジン100においても、これら各気筒#1〜#8にはそれぞれ点火プラグ及び点火コイルが設けられており、またECU(電子制御装置)の指令信号に基づき作動するイグナイタによって各気筒の点火時期が制御されていることは、先の第1及び第2の実施の形態と同様である。なお、このエンジン100では、クランク角90°CAの等間隔で、
”気筒#1”→[気筒#8]→[気筒#4]→”気筒#3”→
[気筒#6]→”気筒#5”→”気筒#7”→[気筒#2]
の順に点火が行われている。ちなみに、ここでは左バンク100aの第1気筒群に属する気筒をダブルコーテーション(” ”)で、また右バンク100bの第2気筒群に属する気筒を角括弧([ ])でそれぞれ囲んで記している。
【0101】
こうした点火順序で点火を行っているため、左右両バンク100a,100bの気筒群をそれぞれ個別にみれば、不等間隔で点火が行われることとなる。すなわち、左バンク100aの第1気筒群の各気筒の点火間隔はそれぞれ、気筒#1〜#3間が270°CA、気筒#3〜#5間が180°CA、気筒#5〜#7間が90°CA、気筒#7〜#8間が180°CAと不等間隔となっている。また、右バンク100bの第2気筒群の各気筒の点火間隔についても、気筒#8〜#4間が90°CA、気筒#4〜#6間が180°CA、気筒#6〜#2間が270°CA、気筒#2〜#8間が180°CAと、やはり不等間隔となっている。ちなみに全気筒運転中は、このように両気筒群の各気筒の点火間隔が不等間隔であっても、エンジン100全体でみれば各気筒の点火は等間隔で行われているため、同エンジン100の回転バランスは保たれた状態となっている。
【0102】
さて、本実施の形態では、減筒運転に際して燃焼供給が遮断される特定気筒(休止対象気筒)を次のように選定するようにしている。すなわち、この実施の形態では、左右バンク100a,100bいずれかの気筒群において、その気筒群の4つの気筒間での点火間隔が最も短くなる2つの気筒のいずれか休止対象気筒として選定するようにしている。ちなみに、このエンジン100では、左バンク100aの第1気筒群においては点火間隔が90°CAとなる気筒#5及び気筒#7のいずれかが、また右バンク100bの第2気筒群においては気筒#8気筒#4のいずれかが、それぞれ休止対象気筒として設定されることとなる。
【0103】
こうして休止対象気筒を設定することで、このエンジン100では減筒運転時に、同エンジン100全体について云えば気筒間の点火間隔は不等間隔となるが、休止対象気筒の属するバンクの気筒群について云えば気筒間の点火間隔は等間隔に近づくこととなり、トルク変動はより周期的でよりバランスのとれた状態となる。
【0104】
図11は、このエンジン100での減筒運転時における制御態様の一例を示している。ここでは、各気筒群についてそれぞれ1気筒ずつ、都合2気筒が減筒されており、第1気筒群については気筒#5への、第2気筒群については気筒#8への燃料供給が遮断されている。こうして各気筒群における休止対象気筒(#5,#8)以外の3つの気筒の点火間隔は、この図11に示すように、より等間隔に近い状態となり、各気筒群におけるトルク変動は低減されるようになる。
【0105】
ちなみに、この実施の形態では、こうした休止対象気筒の選定ばかりでなく、点火時期制御に基づく各気筒の発生トルクの調整によっても、減筒による各気筒群でのトルク変動を低減するようにしている。
【0106】
この図11に示す態様で減筒を行った場合、各気筒群における点火間隔はより等間隔に近い状態とされているものの、第1気筒群では気筒#7と気筒#1との点火間隔が、また第2気筒群では気筒#4と気筒#6との点火間隔が180°CAと、その他の気筒間の点火間隔270°CAに比べて短くなっている。そこで、この実施の形態では、これらの点火間隔が比較的短い4つの気筒#1,#4,#6,#7の発生トルクを低減するため、点火時期を遅角するよう点火時期補正量aopadを設定するようにしている。また更に、この実施の形態では、各気筒群において休止対象気筒(#5,#8)に先行して点火される気筒(#3,#2)のこれら気筒#2,#3の発生トルクを増大するように、点火時期を進角するよう点火時期補正量aopadを設定している。こうしたトルク調整の結果、各気筒群でのトルク変動はより低減されるようになる。
【0107】
このように本実施の形態では、複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群を備える内燃機関において、特定気筒を休止する減筒運転に際して、
(B1)該当気筒の属する気筒群において点火間隔の最も小さな2つの気筒のいずれかを休止対象となる特定気筒として設定する制御。
(B2)休止対象となる特定気筒の属する気筒群において、この特定気筒に先行して点火される気筒の発生トルクを増大するようトルク調整を行う制御。
(B3)休止対象となる特定気筒の属する気筒群において、この特定気筒以外の気筒で、気筒間の点火間隔が他よりも短くなる気筒の発生トルクを低減するようにトルク調整を行う制御。
を行っている。そして、こうした制御によって、減筒運転時における休止対象気筒(休止対象となる特定気筒)の属する気筒群のトルク変動を低減するようにしている。上述したように、減筒運転によって内燃機関全体のトルクバランスが崩れた場合、本実施の形態のように休止対象気筒の属する気筒群のトルク変動を低減することによっても、減筒に起因する内燃機関全体のトルク変動の影響を低減することができる。
【0108】
以上説明した本実施の形態にかかる内燃機関の制御装置は、次のように変更して実施することもできる。
・上記(B1)〜(B3)に記載した制御の一部のみを、複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群を備える内燃機関における減筒運転時の制御として採用するようにしてもよい。
【0109】
・また、(B3)とは逆に、
(B4)休止対象となる特定気筒の属する気筒群において、この特定気筒以外の気筒で、気筒間の点火間隔が他よりも長くなる気筒の発生トルクを増大するようにトルク調整を行う制御。
を行うようにしてもよい。こうした制御によっても、休止対象気筒の属する気筒群のトルク変動を低減することは可能であり、同様に、減筒に起因する内燃機関のトルク変動の影響を低減することができる。
【0110】
・また、上記(B1)に記載したように休止対象気筒を選定して減筒運転を行う内燃機関に、上述の(A1)(A2)に記載のトルク制御の少なくとも一方を適用するようにしてもよい。こうした場合、上記(A1)や(A2)に記載のトルク制御の効果に加え、休止対象気筒の属する気筒群でのトルク変動の低減による効果も相まって、減筒に起因して生じるトルク変動の影響をより好適に低減することができるようになる。
【0111】
・なお、上記実施の形態にかかる減筒運転時の制御は、この第3の実施の形態において例示したV型8気筒式のガソリンエンジン以外にも、複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群を備える内燃機関であれば、これに準じた態様で同様に適用することができ、同様に減筒に起因する内燃機関のトルク変動の影響を低減することができる。
【0112】
・また、上記(B2)(B3)(B4)に記載したトルク制御を点火時期制御以外の方法によって行う構成としても、上記実施の形態と同様に減筒に起因する内燃機関のトルク変動の影響を低減することができる。
【0113】
(第4の実施の形態)
次に、減筒運転を行うことで生じる不具合を低減するための制御を行う内燃機関の制御装置の一例を説明する。
【0114】
減筒運転時には、燃焼が行われていない休止対象気筒からの排気には、それ以外の燃焼が行われる気筒からの排気(燃焼ガス)よりも多量の酸素が含まれている。このため、減筒運転中は、全気筒運転時に比べて排気中の酸素分圧が高くなる。特に、休止対象気筒の排気行程中は、排気通路内の酸素分圧は通常よりも大幅に高くなっている。
【0115】
また、減筒運転時には、休止対象気筒では爆発がないため、他の気筒と比べ、排気として排出されるガスの量(体積)が少なくなり、その分、排気の脈動が低下するようになる。
【0116】
この結果、休止対象気筒の排気行程が行われているときに吸気行程を迎える気筒では、内部EGR(排気再循環)量が減少し、しかもそのEGR中の酸素分圧が高くなってしまう。したがって、こうした休止対象気筒の排気行程中に吸気行程を迎える気筒では、気筒内の酸素量が通常よりも多くなり、しかも内部EGR量が少ない分、通常よりも燃焼が促進されるようになるため、ノッキングが発生し易い状態となる。
【0117】
そこで、本実施の形態の内燃機関の制御装置では、機関運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転に際して、休止対象となる特定気筒の排気行程中に吸気行程を迎える気筒のノッキングの発生(異常燃焼)を抑制する制御を行っている。詳しくは、こうした燃焼抑制制御を、該当気筒の点火時期を遅角することや、空燃比をよりリッチ側に調整して燃料噴射量を増量することなどによって行っている。こうした制御によって、休止対象気筒の排気行程中に吸気行程を迎える気筒の燃焼を抑制することで、減筒に起因するノッキングの発生を効果的に抑制することができるようになる。
【0118】
なお、以上説明した各実施の形態から把握される請求項以外の技術的思想について、その効果と共に以下に記載する。
(イ)複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群を備える内燃機関の制御装置において、特定気筒を休止する減筒運転に際して、該当気筒の属する気筒群において着火間隔の最も小さな2つの気筒のいずれかを前記特定気筒として設定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【0119】
上記(イ)に記載の構成では、減筒運転にあたり、内燃機関に複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群のうち、休止対象となる気筒群において点火間隔の最も小さな2つの気筒のいずれかが休止対象となる特定気筒(休止対象気筒)として設定されるようになり、その気筒が休止されるようになる。こうして休止対象気筒を設定すれば、休止対象気筒としてその他の気筒を設定した場合に比べ、減筒運転時の休止対象気筒の属する気筒群での着火気筒の着火間隔をより等間隔に近づけることができるようになる。そしてこの結果、減筒運転時における休止対象気筒の属する気筒群での各気筒の発生トルクの変動を低減することができ、ひいては内燃機関全体での減筒に起因するトルク変動の影響を抑制することができるようになる。
【0120】
したがって、この(イ)に記載の構成によれば、休止対象気筒の属する気筒群の着火気筒の着火間隔をより均等化することができ、減筒に起因して生じるトルク変動の影響を低減することができるようになる。
【0121】
(ロ)複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群を備える内燃機関の制御装置において、特定気筒を休止する減筒運転に際して、前記特定気筒の属する気筒群において、この特定気筒に先行して着火される気筒の発生トルクを増大するようにトルク調整を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【0122】
上記(ロ)に記載の構成では、減筒運転にあたり、内燃機関に複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群のうち、休止対象となる気筒群において、休止対象気筒に先行して着火される気筒の発生トルクが増大されるようになる。そしてこの結果、休止対象気筒の属する気筒群での構成気筒の発生トルクの変動がより平滑化され、該気筒群での減筒に起因するトルク変動が低減されるようになる。また、休止対象気筒の本来の着火時期に先立ち、機関回転数を高めておくことができるようになるため、減筒による機関回転数の落ち込みを抑制することができるようにもなる。こうして、ひいては内燃機関全体での減筒に起因するトルク変動の影響が低減されるようになる。
【0123】
したがって、この(ロ)に記載の構成によれば、休止対象気筒の属する気筒群のトルク変動が低減され、また減筒による機関回転数の落ち込みが抑制されるため、減筒に起因するトルク変動の影響を低減することができるようになる。
【0124】
(ハ)複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群を備える内燃機関の制御装置において、特定気筒を休止する減筒運転に際して、前記特定気筒の属する気筒群において、この特定気筒以外の気筒のうちで気筒間の着火間隔が他よりも短くなる気筒の発生トルクを低減するようにトルク調整を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【0125】
上記(ハ)に記載の構成では、減筒運転にあたり、内燃機関に複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群のうち、休止対象となる気筒群において、休止対象気筒以外の気筒のうちで気筒間の着火間隔が他よりも短くなる気筒の発生トルクが低減されるようになる。各気筒の発生トルクが同じであれば、着火間隔の短い部分ではトルク(機関回転数)がより高くなってしまう。そこでこの(ハ)に記載の構成のように、着火間隔が他よりも短くなる気筒の発生トルクを低減するようにすることで、休止対象気筒の属する気筒群のトルク変動がより低減されるようになる。そして、こうして同気筒群のトルク変動を低減することで、ひいては内燃機関全体の減筒運転時のトルク変動の影響も抑制することができるようになる。
【0126】
したがって、この(ハ)に記載の構成によれば、休止対象気筒の属する気筒群でのトルク変動を抑制することで、減筒に起因するトルク変動の影響を低減することができるようになる。
【0127】
(ニ)複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群を備える内燃機関の制御装置において、特定気筒を休止する減筒運転に際して、前記特定気筒の属する気筒群において、この特定気筒以外の気筒で気筒間の着火間隔が他よりも長くなる気筒の発生トルクを増大するようにトルク調整を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【0128】
上記(ニ)に記載の構成では、減筒運転にあたり、内燃機関に複数設けられたバンク毎に区分けされた複数の気筒群のうち、休止対象となる気筒群において、休止対象気筒以外の気筒のうちで気筒間の着火間隔が他よりも長くなる気筒の発生トルクが増大されるようになる。各気筒の発生トルクが同じであれば、着火間隔の長い部分ではトルク(機関回転数)がより低くなってしまう。そこでこの(ニ)に記載の構成のように、着火間隔が他よりも長くなる気筒の発生トルクを増大するようにすることで、休止対象気筒の属する気筒群のトルク変動がより低減されるようになる。そして、こうして同気筒群のトルク変動を低減することで、ひいては内燃機関全体の減筒運転時のトルク変動の影響も抑制することができるようになる。
【0129】
したがって、この(ニ)に記載の構成によれば、休止対象気筒の属する気筒群でのトルク変動を抑制することで、減筒に起因するトルク変動の影響を低減することができるようになる。
【0130】
(ホ)機関運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転を行う内燃機関の制御装置において、減筒運転に際して、前記特定気筒の排気行程中に吸気行程を迎える気筒の異常燃焼を抑制するよう制御する異常燃焼抑制手段を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【0131】
減筒運転時の休止対象気筒では、燃焼が行われないため、同気筒の排気行程中は、排気通路内の酸素分圧は通常よりも高くなる。また、減筒運転時の休止対象気筒では爆発がないため、排気として排出されるガスの量(体積)が少なくなり、その分、排気の脈動が低下するようになる。このため、休止対象気筒の排気行程が行われているときに吸気行程を迎える気筒では、内部EGR(排気再循環)量が減少し、しかもそのEGR中の酸素分圧が高くなるため、ノッキングが発生し易い状態となる。この点、この(ホ)に記載の構成では、減筒運転時には、休止対象気筒の排気行程中に吸気行程を迎える気筒の異常燃焼が抑制されるような制御が行われるため、こうした減筒によるノッキングの発生が効果的に抑制されるようになる。
【0132】
(へ)上記(ホ)に記載の内燃機関の制御装置において、前記異常燃焼抑制手段は、該当気筒の点火時期を通常よりも遅角するよう制御するものであることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【0133】
この(ヘ)に記載の構成では、減筒運転時には、休止対象気筒の排気行程中に吸気行程を迎える気筒の点火時期が遅角されるようになる。例えばガソリンエンジンのような火花点火式の内燃機関では、点火時期を通常よりも遅角することで気筒内の燃焼が抑制されるようになる。このため、上記(ヘ)に記載の構成によれば、減筒運転時において休止対象気筒の排気行程中に吸気行程を迎える気筒の異常燃焼の発生、すなわちノッキングの発生が効果的に防止されるようになり、ひいては減筒運転をより好適な態様で行うことができるようになる。
【0134】
(ト)上記(ホ)に記載の内燃機関の制御装置において、前記燃焼抑制手段は、該当気筒の空燃比を通常よりもリッチ側にするよう制御するものであることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【0135】
この(ト)に記載の構成では、減筒運転時には、休止対象気筒の排気行程中に吸気行程を迎える気筒の空燃比が通常よりもリッチ側とされて、同気筒の燃料噴射量が通常よりも増量されるようになる。このため上記気筒では、上述したように減筒に起因して増大した気筒内の酸素分圧に見合った量の燃料が噴射されるようになり、酸素過多による異常燃焼の発生が好適に回避されるようになる。したがって、この(ト)に記載の構成によれば、減筒によるノッキングの発生が抑制され、ひいては減筒運転をより好適な態様で行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる内燃機関の制御装置の第1実施形態についてその概略構成を示す略図。
【図2】同実施形態による点火時期の算出手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態による点火時期補正量の算出手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態による点火時期補正量の算出手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態で用いられる点火時期補正量算出マップ例を示す略図。
【図6】同実施形態によるトルク制御態様を示すタイムチャート。
【図7】同実施形態によるトルク制御態様を示すタイムチャート。
【図8】本発明にかかる内燃機関の制御装置の第2実施形態のトルク制御態様を示すタイムチャート。
【図9】同じく第2実施形態のトルク制御態様を示すタイムチャート。
【図10】本発明にかかる内燃機関の制御装置の第3実施形態についてその適用対象となる内燃機関の気筒配置を示す略図。
【図11】同第3実施形態によるトルク制御態様を示すタイムチャート。
【図12】従来の内燃機関の制御装置によるトルク制御態様を示すタイムチャート。
【符号の説明】
10,100…エンジン、#1〜#8…気筒、11…インジェクタ、12…吸気通路、13…スロットルバルブ、14…アクセルペダル、15…エアクリーナ、16…エアフローメータ、20…点火コイル、21…イグナイタ、22…ECU(電子制御装置)、23…回転数センサ。
Claims (2)
- 偶数個の気筒からなる内燃機関の運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転を行う内燃機関の制御装置において、
前記減筒運転時には、各気筒の発生トルクを着火順序の順に交互に増大/減少させるべく、前記休止対象となる特定気筒から数えて着火順序において奇数番目の気筒の発生トルクを増大せしめると共に、同着火順序において偶数番目の気筒の発生トルクを減少せしめるように前記特定気筒以外の気筒の発生トルクを制御するトルク制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 偶数個の気筒からなる内燃機関の運転状態に応じて特定気筒を休止する減筒運転を行う内燃機関の制御装置において、
当該機関の高速運転中の前記減筒運転時には、各気筒の発生トルクを着火順序の順に交互に増大/減少させるべく、前記休止対象となる特定気筒から数えて着火順序において奇数番目の気筒の発生トルクを増大せしめると共に、同着火順序において偶数番目の気筒の発生トルクを減少せしめるように前記特定気筒以外の気筒の発生トルクを制御し、当該機関の低速運転中の前記減筒運転時には、前記休止対象となる特定気筒に対して着火順序において直前の順となる気筒の発生トルクを増大せしめ、同着火順序において直後の順となる気筒の発生トルクを減少せしめ、それ以外の気筒の発生トルクを保持するように発生トルクを制御するトルク制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
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