JP3736735B2 - アダプティブアレーアンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は例えば移動通信システムの基地局に使用され、移動局の移動に伴いアンテナ指向特性の主ビーム方向をそれに追尾させたり、干渉局からの電波到来方向がアンテナ指向特性のナル方向となるように、特に受信アンテナ指向特性及び送信アンテナ指向特性を適応制御するアダプティブアレーアンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
移動通信システムの基地局にアダプティブアレーアンテナを導入することにより、回線容量の増大を計る場合、上り回線だけではなく、下り回線における干渉波抑圧が必要である。このような点からアダプティブアレーアンテナを送信と受信とに兼用し、受信信号から求めた各アンテナ素子と対応する重みを、送信信号に対する重みとして利用することが行われていた。
【0003】
つまり、図5に示すように、アンテナ素子A1〜A8が等間隔dで配列される。受信キャリア周波数fr、その波長をλr、送信キャリア周波数ft、その波長をλtとすると、d=λr/2=λt/(2R)、R=λt/λrとされる。アンテナ素子A1〜A8はそれぞれ送受共用器DUX1〜DUX8と接続され、これら送受共用器DUX1〜DUX8にはそれぞれ送信機Tx1〜Tx8と、受信機Rx1〜Rx8が接続される。
【0004】
受信機Rx1〜Rx8の受信出力信号(ベースバンド信号)は重み決定回路11で各アンテナ素子A1〜A8について、アンテナ指向特性の主ローブの方向が信号波の到来方向となり、ナル方向が干渉波の到来方向となるように重みW1〜W8が計算され、これら重みW1〜W8が、受信機Rx1〜Rx8の各出力信号に対し、受信用重み付与回路Mr1〜Mr8で受信機Rx1〜Rx8の各出力受信信号に重み付けがなされ、つまり振幅と位相が制御され、これら受信用重み付与回路Mr1〜Mr8の出力が合成回路12で合成されて、受信信号が出力される。この受信信号は、アンテナ指向特性の主ローブが信号(希望)波方向に向き、ナル方向が干渉波方向に向いた状態の受信信号となる。
【0005】
送信信号のアンテナ指向特性の主ローブが希望局の方向に向き、ナル方向が干渉源になる方向となるようにするため、従来においては、送信信号(ベースバンド信号)を分配回路13で、この例では8分配して、各分配された送信信号に対し、送信用重み付与回路Mt1〜Mt8でそれぞれ重みW1〜W8が与えられ、送信用重み付与回路Mt1〜Mt8の各出力はそれぞれ送信機Tx1〜Tx8に入力され、高周波送信信号として、アンテナA1〜A8へ給電される。
【0006】
このようにして上り回線の改善に用いた重みを用いて下り回線の信号に重みも与えて、下り回線の改善を行っていた。
なお、アンテナ素子間隔を等比間隔とするアレーアンテナとして、対数周期アンテナ(ログペリアンアンテナ)がある。このアンテナは素子間隔が等比であり、かつ素子長もまた等比構造をなし、給電点は1箇所であり、アレー構造であるが、各素子に任意の重みで給電するマルチポートアンテナではないので任意の指向特性のビームを生成することはできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
アレーアンテナにおいては、送信搬送波周波数と、受信搬送波周波数とでは、本来は送信と受信それぞれの周波数に対応した波長で規格化した素子間隔として、各素子ごとに重みを与えて、指向特性の制御をすべきであるが、図5に示した従来のアダプティブアレーアンテナにおいては、送信時も、受信時も、アンテナ素子間隔は同一としているため、図6に示すように、水平面指向特性は受信時は曲線14となり、送信時は曲線15となり、可成り異なったものとなり、下り回線と上り回線とを同一の放射パターンとすることはできなかった。
【0008】
このような場合、仮に上り回線で干渉局からの電波を十分抑圧しても、下り回線での干渉は抑圧できないため、結局、回線容量を増大することはできない。
この不一致を解消するために、図7に示すように、上り回線用重みW1〜W8を、補正回路16で、送信周波数と受信周波数との周波数偏差の分だけ数値演算的に補正を行い、これら補正した重みW1′〜W8′を送信用重み付与回路Mt1〜Mt8にそれぞれ与えることが考えられる。しかしこの場合は特定のビームや零点のみにしか適用できない。更に余分な処理時間がかかり、適応性に問題があり、必ずしも正しい制御を行うことができない。なお図7において、受信用重み付与回路Mr1〜Mr8、合成回路12は、図を簡略するため省略して示した。
【0009】
この発明の目的は、受信アンテナ指向特性パターンと送信アンテナ指向特性パターンとを、時間遅れを伴うことなく、一致させることができるアダプティブアレーアンテナを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明によれば、複数のアンテナ素子が送受信搬送波周波数比に等しい等比間隔で配列され、アンテナ素子配列方向において、その全素子数Nより少ない、つまりN−1以下で2分の1より多い、つまり(N/2)+1以上の連続したアンテナ素子が受信用とされ、これら受信用アンテナ素子に対し、その素子配列方向にずらされた、全素子数Nより少ない(N−1以下)が2分の1より多い((N/2)+1以上)連続したアンテナ素子が送信用とされ、従って少なくとも1つのアンテナ素子が送信用と受信用とに共用され、受信信号から求めた各アンテナ素子の受信信号に対して与える重みを、受信用アンテナ素子配列と送信用アンテナ素子配列とのずれだけずらして送信用アンテナ素子への各送信信号に対して重みを与える。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1にこの発明の実施例を示し、図5と対応する部分に同一参照記号を付けてある。この例は1次元アレーの場合である。この発明ではアンテナ素子A1〜A8は、送信搬送波周波数ft(波長λt)と受信搬送波周波数fr(波長λr)との比に等しい等比間隔で配列される。また受信用アンテナ素子列と送信用アンテナ素子列は、その素子配列方向においてずらされているが、少くとも1つのアンテナ素子は受信用と送信用とに兼用される。
【0012】
また受信用素子配列と送信用素子配列とのずらされたアンテナ素子数をn、R=λt/λr=fr/ft、σ=R1/nとすると、図1において中央部のアンテナ素子A4とA5の間隔はd、それより図1において右側の各隣接アンテナ素子間隔はそれぞれ中央部から離れるに従ってd/σ、d/σ2,d/σ3とされ、左側の各隣接アンテナ素子間隔はそれぞれ中央部から離れるに従ってσd、σ2d,σ3dとされる。
【0013】
この実施例では、送受信搬送波周波数比fr/ft=0.9のFDD(周波数分割半二重通信)方式において8素子アレーアンテナ構成とした場合で、アンテナ素子A2〜A8が受信用とされ、アンテナ素子A1〜A7が送信用とされ、つまりこれら受信用アンテナ素子列と送信用アンテナ素子列とのずれnは1の場合である。アンテナ素子間隔をRとdにより示すと、左からR3d,R2d,Rd,d,d/R,d/R2,d/R3となる。受信機Rx2〜Rx8の受信出力信号(ベースバンド信号)が重み決定回路11に入力され、受信用重み付与回路Mr2〜Mr8にそれぞれ与える重みW2〜W8が計算される。受信機Rx2〜Rx8の受信出力信号に対し、回路Mr2〜Mr8でそれぞれ重みW2〜W8が与えられ、これら重みが与えられた信号が合成回路12で合成された受信信号として出力される。
【0014】
一方、送信信号は分配回路13で7分配され、送信用重み付与回路Mt1〜Mt7に入力され、それぞれ前記重みW2〜W8が補正されることなくそのまま付与され、これら送信用重み付与回路Mt1〜Mt7の出力が送信機Tx1〜Tx7で高周波信号とされてアンテナ素子A1〜A7に給電される。つまり受信用アンテナ素子A2〜A8の受信信号に対して与える重みW2〜W8を、その配列関係を保ったまま、受信用アンテナ素子列と送信用アンテナ素子列とのずれだけずらして、送信用アンテナ素子A1〜A7への送信信号に対して重みを与える。
【0015】
いま図2A,Bに示すようにアンテナ素子間隔を送受信搬送波周波数比に等しい等比間隔で配列し、受信アンテナ素子列と送信アンテナ素子列とのずれであるアンテナ素子数n=1の場合、各アンテナ素子間隔を受信搬送波周波数で規格化すると、つまり受信波長λrで割算すると、図2Cに示すようになり、また送信搬送波周波数で規格化すると図2Dに示すようになる。これら規格化アンテナ素子間隔は受信波長λrで規格化したもの(図2C)を、送受信用のアンテナ素子のずれ数n=1だけ図2において左にずらすと、つまり送信用アンテナ素子列側に移動すると、送信波長λtで規格化した間隔(図2D)と同一になる。
【0016】
従って、図1に示すように受信用アンテナ素子A2〜A8の受信信号に対し与える重みW2〜W8を、送信用アンテナ素子A1〜A7の送信信号に与えると、受信アンテナ指向特性と、送信アンテナ指向特性とが同一パターンとなる。図1に示した実施例において、電子計算機シュミレーションにより求めた水平面指向特性は図3に示すようになり、受信パターン曲線17と送信パターン曲線18とはほぼ一致し、干渉波方向を完全に一致させることができる。
【0017】
ちなみに、受信アンテナ素子列と送信アンテナ素子列とのずれのアンテナ素子数をn=3とした場合、σ=R1/3となり、受信波長λrで規格化したアンテナ素子間隔は図2Eに示すようになり、送信波長λtで規格化したアンテナ素子間隔は図2Fに示すようになる。この場合も図2Eの各値をずれのアンテナ素子数n=3だけ図において左へずらせば、アンテナ素子間隔は同一となる。つまり受信用アンテナ素子A4〜A9の受信信号に対し与える重みW4〜W9を、送信用アンテナ素子A0〜A6への送信信号にそれぞれ与えればよい。
【0018】
この発明は2次元アレーアンテナにも適用できる。図4にその実施例を示す。ここでは説明のため送受信搬送波周波数比fr/ft=0.9のFDD方式システムにおいて、8素子×10素子アレーアンテナ構成の場合である。この場合は図1に示したと同様に水平方向アレーにこの発明を適用すると共に垂直方向アレーにも適用している。受信用アンテナ素子としてA22〜A28,A32〜A38,…A102〜A108が用いられ、送信用アンテナ素子としてA11〜A17,A21〜A27,…A101〜A107が用いられる。これら受信用2次元アレーアンテナ21の各隣接素子間隔を、受信波長λrで規格化したものと、送信用2次元アレーアンテナ22の隣接素子間隔を送信波長λtで規格化したものとは互いに等しいものとなる。よって図1に示した実施例と同様に、受信用2次元アレーアンテナの各受信信号に対して与えた重みを、送信用2次元アレーアンテナの対応するアンテナ素子に対する送信信号に対し与えれば、受信パターンと同一の送信パターンを3次元的に生成することができる。
【0019】
この2次元アレーアンテナにおいても、受信用2次元アレーアンテナと送信用2次元アレーアンテナとのずれは、1アンテナ素子に限らないがアンテナ素子配列方向(水平方向又は垂直方向)において少くとも1つのアンテナ素子を共用するようにする。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、送信パターンを受信パターンと同一にすることができ、しかも、受信パターンを得るために用いた重みをそのまま用いて、送信パターン形成に利用できるため、送信パターンの制御を、受信パターンの制御と同時に行うことができ、送受信の干渉改善のバランスが良くなる。従って回線容量の大幅な増加を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を1次元アレーアンテナに適用した実施例を示す図。
【図2】等比アンテナ間隔と、その受信波長で規格化した値と、送信波長で規格化した値の例を示す図。
【図3】この発明の実施例における受信アンテナと送信アンテナの各水平面指向性を示す図。
【図4】この発明を2次元アレーアンテナに適用した実施例を示す図。
【図5】従来の送受信兼用アダプティブアレーアンテナを示す図。
【図6】図5に示したアレーアンテナの送信時と受信時における各水平面指向性を示す図。
【図7】従来の送受信兼用アダプティブアレーアンテナの他の例を示す図。
Claims (2)
- 複数のアンテナ素子が送受信搬送波周波数比に等しい等比間隔で配列され、
アンテナ素子配列方向において、その全素子数より少ないが2分の1より多い連続したアンテナ素子が受信用とされ、これら受信用アンテナ素子に対しその素子配列方向にずらされた、全素子数より少ないが2分の1より多い連続したアンテナ素子が送信用とされ、少くとも1つのアンテナ素子が送受共用とされ、
各受信用アンテナ素子の受信信号に対し、それぞれ指向特性制御用の重みを与える受信用重み付与回路が設けられ、
各送信用アンテナ素子の送信信号に対し、それぞれ指向特性制御用の重みを与える送信用重み付与回路が設けられ、
受信信号から各受信用重み付与回路に与える重みを適応的に求める重み決定回路を備え、
アンテナ素子配列方向において、その受信用重み付与回路に与えられた各重みが、上記受信用アンテナ素子配列と送信用アンテナ素子配列とのずれの関係を保持した状態で送信用重み付与回路にそれぞれ与えられることを特徴とするアダプティブアレーアンテナ。 - 上記受信搬送波周波数の波長をλr、送信搬送波周波数の波長をλt、R=λt/λr、上記受信用アンテナ素子配列と送信用アンテナ素子配列との上記ずらされたアンテナ素子数をn、d=λr/2,σ=R1/nとすると、アンテナ素子配列における中央の隣接アンテナ素子の間隔はdであり、これより一方側における隣接アンテナ素子間隔はその中央から遠去かるに従って、順次σd,σ2d,σ3,…とされ、他方側においてd/σ,d/σ2,d/σ3,…とされていることを特徴とする請求項1記載のアダプティブアレーアンテナ。
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