JP3736038B2 - 角速度検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検出体の角速度を検出する角速度検出装置に関するものであり、特に、車両、航空機若しくは船舶等の移動体のナビゲーションシステム若しくは姿勢制御又は撮像機器の手ブレ補正等に適用される角速度検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の角速度検出装置は、特開平7−239339号公報に記載されている。この角速度検出装置は、振動体と駆動電極間に電圧を印加し、振動体をY軸方向に振動させている。本装置は、振動体をY軸方向に振動させた状態で、被検出体がX軸回りの角速度運動を行った場合に、振動体のZ軸方向に働くコリオリの力をその静電容量の変化を用いて検出し、被検出体の角速度を検出している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、振動体の安定振動によって角速度検出精度を向上させるため、振動体を振動させる電圧は、通常、振動体の実際の振動を検知して生成しており、上記従来の角速度検出装置においては、振動体の実際の振動を検出するための振動モニタ用電極を振動体及び駆動電極とは別に備えており、装置の構成及び製造方法が複雑となっていた。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、簡単な電極構成で高精度の角速度を行うことができる角速度検出装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、本発明に係る角速度検出装置は、隣接する駆動電極及び可動電極から構成されるコンデンサに印加される駆動信号によって駆動電極と可動電極との間に働く静電引力により、可動電極を所定方向に振動させ、被検出体の角速度に応じて可動電極に働くコリオリの力を検出することによって被検出体の角速度を検出する角速度検出装置において、所定電位とコンデンサの一端との間に可動電極の振動が追従しないような高周波信号を駆動信号に重畳して印加し、可動電極の所定方向の変位に応じてコンデンサから出力される出力信号が変調されるとともに出力信号から駆動信号が除去されるようにコンデンサの他端に接続される回路を設定し、変調された出力信号を用いて可動電極の所定方向の変位を検出することを特徴とする。
【0005】
本装置は、車両、航空機若しくは船舶等の移動体又は撮像機器等の被検出体に搭載される。駆動電極と可動電極との間に駆動信号を与えると、この間に働く静電引力によって、可動電極が所定方向に振動する。この可動電極の所定方向振動時に、被検出体が角速度を有する運動を行うと、可動電極の振動速度及び被検出体の角速度に応じてコリオリの力が可動電極に働き、可動電極がコリオリの力に沿った方向にも振動する。したがって、可動電極のコリオリの力に沿った方向の振動振幅等を検出することにより、可動電極に働くコリオリの力を検出すれば、被検出体の角速度を検出することができる。
【0006】
本装置は、所定電位とコンデンサの一端との間に可動電極の振動が追従しないような高周波信号を駆動信号に重畳して印加するので、高周波信号の重畳によっては可動電極の振動は追従しない。コンデンサから出力される出力信号は、コンデンサに接続された回路の設定によって可動電極の変位に応じて変調される。したがって、この出力信号は実際の可動電極の所定方向の振動変位情報を含んでいる。この回路は、例えばハイパスフィルタを構成し、出力信号から駆動信号が除去されるように設定されているため、変調された出力信号から可動電極の所定方向の変位を検出することができる。したがって、本装置は振動モニタ用の別の電極を用いることなく、可動電極の実際の振動を検出することができる。可動電極の実際の振動を検出すれば、可動電極を安定して振動させることができ、角速度検出精度を向上させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に係る角速度検出装置について説明する。同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。
【0008】
図1は、第1実施形態に係る角速度検出装置1を示す。本角速度検出装置1は、支持基板2と、支持基板2の表面2s上に形成された検出電極3と、支持基板2の表面2sの上方に配置された振動体(可動電極)4と、振動体4の両端にそれぞれ隣接した一対の駆動電極5a,5bと、振動体4の一部分と支持基板2の表面2sとの間に介在するスペーサ6a,6b,6c,6dと、駆動電極5a,5bの一部分と支持基板2の表面2sとの間にそれぞれ介在するスペーサ7a,7bと、支持基板2の裏面に固定された電気回路8とを備えている。なお、電気回路8は別基板上に固定されることとしてもよい。また、この角速度検出装置1は、図示しない密閉容器内に配置される。
【0009】
支持基板2は、ガラス等の絶縁体から構成される。以下の説明では、支持基板2の表面2sを規定する2つの軸をX軸及びY軸とし、支持基板2の厚み方向をZ軸と規定する。なお、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交しているものとし、支持基板2から振動体4に向かう方向をZ軸の正方向「上方向」とし、これと逆の方向をZ軸の負方向「下方向」とする。また、X軸の正方向を「右方向」とし、負方向を「左方向」とする。
【0010】
検出電極3は、駆動電極5a,5bの直下に位置するスペーサ7a,7b間に配置されている。
【0011】
振動体4は、検出電極3の直上に空間を介して位置する外縁矩形状の質量部4eと、矩形状の質量部4eの4つの角部に連続してY軸方向に沿って延びた4つの支持部4a1,4b1,4c1,4d1と、各支持部4a1,4b1,4c1,4d1の先端に連続して設けられた固定部4a2,4b2,4c2,4d2と、質量部4eのX軸方向両端からX軸正負の方向にそれぞれ延びた櫛歯電極4e2,4e1とから構成される。振動体4は、導電性の材料によって一体的に構成されており、ドーパントの添加された多結晶シリコンから構成される。多結晶シリコンは、フォトリソグラフィ技術を用いた加工が可能である。なお、振動体4の材料としては、例えば、単結晶シリコン、アルミニウム若しくは銅等の金属、又は合金を用いることができる。
【0012】
駆動電極5a、5bは、Y軸方向に沿って延びた基部5a2,5b2と、質量部4eのX軸方向両端部に位置する櫛歯電極4e1,4e2にそれぞれ噛みあうように隣接する櫛歯電極5a1,5b1とを備えている。櫛歯電極4e1と櫛歯電極5a1及び櫛歯電極4e2と櫛歯電極5b1は、それぞれインターデジタル構造を構成している。
【0013】
スペーサ6a〜6dは、振動体4の固定部4a2,4b2,4c2,4d2と支持基板2の表面2sとの間に介在しており、振動体4の質量部4e及び支持部4a1〜4d1と、支持基板2の表面2sとの間に空間を与えている。
【0014】
スペーサ7a,7bは、駆動電極5a,5bの基部5a2,5b2と支持基板2の表面2sとの間に介在しており、櫛歯電極5a1,5b1と支持基板2の表面2sとの間に空間を与えている。スペーサ6a〜6d,7a,7bは、PSG(Phospho-Silicate Glass)又はSiO2等の振動体4の材料に対して選択的にエッチングが可能な材料又は振動体4と同一の材料からなる。
【0015】
電気回路8は、検出電極3、駆動電極5a,5b及び振動体4に電気的に接続されており、振動体4をX軸方向に振動させる信号を出力するとともに、振動体4のZ軸方向の振動に応じた信号を検出する。換言すれば、駆動電極5a,5bと振動体4との間に所定の電圧(重畳信号)を印加すると、これらから構成されるコンデンサの容量が増加するように、振動体4はX軸方向に沿って振動する。振動体4をX軸方向に振動させた状態で、この角速度検出装置1の設けられた被検出体がY軸に平行な軸を中心とする回転運動を行うと、その角速度Ω、振動体4可動部の質量m及び振動速度Vxに応じてZ軸方向にコリオリの力Fcが働き、振動体4はZ軸方向にも振動する。振動体4のZ軸方向の振動に応じて検出電極3から出力された信号(検出信号)の振幅は角速度Ωに比例するため、電気回路8は被検出体の角速度Ωに比例した信号を出力することができる。
【0016】
図2は、図1に示した角速度検出装置1の電気的な構成を示す。また、図3(a)は駆動信号A1,A2のタイミングチャート、図3(b)は変調信号Bのタイミングチャート、図3(c)は反転した変調信号Cのタイミングチャート、図3(d)は変調された実際の駆動振動(重畳信号)D1,D2のタイミングチャート、図3(e)は振動体4のX軸方向の変位Eのタイミングチャート、図3(f)は振動体4の電位Fのタイミングチャート、図3(g)は振動体4の検波後のX軸方向の変位検出信号Gを示す。以下の説明においては、図2と共に図3を適宜参照する。
【0017】
電気回路8は、振動体4をX軸方向に振動させるための重畳信号D1及びD2を出力する駆動回路8aと、振動体4のZ軸方向の振動に応じた検出信号Iが入力され、振動体4のZ軸方向の振動振幅に応じた信号を端子VOUTから出力する検出回路8bとを備えている。
【0018】
駆動回路8aは、所定周波数fLの正弦波電圧信号(駆動信号)Aを出力する駆動信号発生器8a1と、正弦波電圧信号Aの位相を反転させるインバータ等の第1位相反転器8a2とを備えており、互いに位相が反転した正弦波電圧信号A1,A2が駆動信号として櫛歯電極4e1,5a1から構成されるコンデンサC1及び櫛歯電極4e2,5b1から構成されるコンデンサC2にそれぞれ印加される(図3(a))。正弦波電圧信号A1,A2は、それぞれ接地電位から所定値高い電位を振幅中心とする正弦波電位と接地電位との電位差によって規定される。コンデンサC1及びC2の一端を構成する振動体4は、コンデンサ両端に電圧が印加されるとその静電容量を増加させるような静電引力を受け、X軸に沿って移動する。コンデンサの容量は対向する電極面積が増加するほど増加する。振動体4及び駆動電極5a,5bは、振動体4がX軸の正方向に移動し、櫛歯電極4e2と5b1とから構成されるコンデンサC2の容量が増加すると、櫛歯電極4e1と5a1とから構成されるコンデンサC1の容量が減少するように配置されている。したがって、振動体4は駆動信号A1,A2が印加されることにより、X軸に沿って振動しようとする。
【0019】
駆動回路8aは、矩形波の高周波電圧信号Bを発生する発振器8a3と、高周波電圧信号Bの位相を反転させて高周波電圧信号Cとして出力する第2位相反転器8a4とを備えている(図3(b),図3(c))。これらの互いに位相反転した高周波電圧信号B,Cは、駆動回路8a内の加算器8a5,8a6にそれぞれ入力される。加算器8a5,8a6は、それぞれ駆動信号A1,A2に高周波電圧信号B,Cを重畳し、重畳信号D1及びD2を出力する(図3(d))。高周波電圧信号B,Cの周波数fHは、駆動信号Aの周波数fLよりも十分に高く、振動体4の支持部4a1〜4d1のバネ定数等から決定される振動体4の固有振動数よりも十分に高い。したがって、この重畳信号D1及びD2をそれぞれコンデンサC1,C2の両端に印加すると、電圧D1及びD2による静電引力にしたがい、振動体4はX軸方向に沿って駆動信号A1,A2の周波数fLで振動する。すなわち、振動体4のX軸方向の変位Eの振動周波数は周波数fLに一致する(図3(e))。ここでは、振動体4がそのX軸方向の固有振動数で振動しているものとし、その振動の位相は駆動信号の位相に対してπ/2ずれているものとする。
【0020】
駆動回路8aは、入力が振動体4に電気的に接続された電圧フォロア回路8a7を備える。振動体4は電圧フォロア回路8a7の抵抗RINを介して接地電位に接続されており、コンデンサC1,C2及び抵抗RINはハイパスフィルタを構成する。このハイパスフィルタは、その低域遮断周波数fCが高周波電圧信号B,Cの周波数fHよりも低く、駆動信号A1,A2の周波数fLよりも高く設定されているため、振動体4の電位信号Fからは駆動信号A1,A2の成分が除去され、高周波電圧信号B,C成分が振動体4の実際の振動変位に応じて振幅変調された信号が出力される(図3(f))。この変調された信号を電界効果トランジスタFETのゲートに入力し、入力信号に応じてFETのドレイン/ソース間を流れる電流を制御し、この電流が抵抗Rを流れることによる電圧降下信号をバンドパスフィルタ8a8に入力する。バンドパスフィルタ8a8の帯域は、変調された信号の周波数のみを通過させるように設定し、ノイズ成分を除去する。
【0021】
また、本装置は、発振器8a3から出力された高周波電圧信号B,Cで、バンドパスフィルタを通過した信号を同期検波する同期検波回路8a9と、同期検波された信号を通過させるローパスフィルタ8a10とを備えている。この同期検波によって、振動体4の電位の包絡線、すなわち、振動体4の実際の変位を示す変位検出信号G(図3(g))を得ることができる。
【0022】
このようにして得られた変位検出信号Gは、自動利得制御回路(AGC)8a11に入力される。自動利得制御回路8a11は、入力される変位検出信号Gの振幅が大きくなる場合には、駆動信号発生器8a1から出力される駆動信号の振幅を小さくし、入力される変位検出信号Gの振幅が小さくなる場合には、駆動信号発生器8a1から出力される駆動信号の振幅を大きくし、駆動信号の振幅を一定に保持するようフィードバック制御を行う。
【0023】
上述のように、振動体4をX軸方向に振動させた状態で、Y軸に平行な軸を回転軸とする運動を被検出体が行うと、振動体4のZ軸方向に被検出体の角速度Ωに応じたコリオリの力が働き、振動体4の質量部4eと検出電極3とから構成されるコンデンサC3の容量が変化する。検出回路8bはこのコンデンサC3の容量変化を測定し、容量変化に応じた信号を角速度情報として端子VOUTから出力する。
【0024】
以上、説明したように、上記実施形態に係る角速度検出装置は、隣接する駆動電極5a,5b及び可動電極4から構成されるコンデンサC1,C2に印加される駆動信号A1,A2によって駆動電極5a,5bと可動電極4との間に働く静電引力により、可動電極4を所定方向(X)に振動させ、可動電極4の振動速度Vx及び被検出体の角速度Ωに応じて可動電極4に働くコリオリの力Fcを検出することによって被検出体の角速度Ωを検出する角速度検出装置において、所定電位(0V)とコンデンサC1,C1の一端との間に可動電極4の振動が追従しないような高周波信号を駆動信号A1,A2に重畳して印加し、可動電極4の所定方向(X)の変位に応じてコンデンサC1,C2から出力される出力信号Fが変調されるとともに出力信号Fから駆動信号A1,A2が除去されるようにコンデンサC1,C2の他端に接続される回路(ハイパスフィルタ)を設定し、変調された出力信号Fを用いて可動電極4の所定方向(X)の変位を検出する。本実施形態に係る角速度検出装置は、変位検出信号Gが振動体4のX軸方向の実際の変位を示すため、その変位を検出することができ、検出された変位を用いて振動を安定化させ、高精度の角速度検出を行うことができる。なお、上記実施形態においては、電圧フォロア回路8a7を用いたが、これは図4に示すようなCV変換回路8a7’を代わりに用いてもよい。
【0025】
また、振動体4の構造は角速度検出ができるような構造であれば、種々の変形が可能である。
【0026】
また、上記実施形態の角速度検出装置においては、駆動信号A及び変調信号B,Cとして正弦波及び矩形波を用いたが、これらの信号として三角波等の他の波形を用いてもよい。
【0027】
さらに、従来の振動モニタ用電極として用いられている電極に駆動信号A及び変調信号B,Cを印加し、駆動力及び感度を更に高めることとしてもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る角速度検出装置は、信号を変調することによって可動電極の実際の変位を検出することができるため、特別な電極を用いることなく、可動電極の変位を検出することができるとともに、可動電極を安定して振動させることができ、角速度検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る角速度検出装置の斜視図。
【図2】図1に示した角速度検出装置のシステム構成図。
【図3】駆動電極に与えられる信号並びに検出信号及び可動電極の変位のタイミングチャート。
【図4】CV変換回路の回路図。
【符号の説明】
5a,5b…駆動電極、4…可動電極(振動体)、C1,C2…コンデンサ。
Claims (1)
- 隣接する駆動電極及び可動電極から構成されるコンデンサに印加される駆動信号によって前記駆動電極と前記可動電極との間に働く静電引力により、前記可動電極を所定方向に振動させ、被検出体の角速度に応じて前記可動電極に働くコリオリの力を検出することによって前記被検出体の角速度を検出する角速度検出装置において、所定電位と前記コンデンサの一端との間に前記可動電極の振動が追従しないような高周波信号を前記駆動信号に重畳して印加し、前記可動電極の前記所定方向の変位に応じて前記コンデンサから出力される出力信号が変調されるとともに前記出力信号から前記駆動信号が除去されるように前記コンデンサの他端に接続される回路を設定し、変調された前記出力信号を用いて前記可動電極の前記所定方向の変位を検出することを特徴とする角速度検出装置。
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1997
- 1997-05-29 JP JP14037097A patent/JP3736038B2/ja not_active Expired - Fee Related
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