JP3733742B2 - 水系媒体輸送ホース - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、水系媒体輸送ホースに係り、特に、自動車等の各種車両において冷却液として用いられている不凍液(LLC=ロング・ライフ・クーラント)を輸送するためのホースの構成に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来より、自動車等の各種車両において、エンジンとラジエータとの間やエンジンとヒーターコアとの間等を接続して、水を主成分とする冷却液、例えば水にエチレングリコールや防錆剤等を混合した冷却液(LLC)を流通させる車両用冷却液輸送ホースが、ラジエータホースやヒータホース等として知られている。そして、この種のホースの形成材料としては、一般に、EPDM等の耐水性に優れたエチレン−プロピレン系共重合体ゴムが用いられてきている。また、通常、そのようなエチレン−プロピレン系共重合体ゴムには、カーボンブラック等の充填剤、プロセスオイル等の軟化剤、加硫剤、加硫促進剤等が添加され、それらを混練加工して得られたゴム配合組成物を用いて、目的とする冷却液輸送ホースが成形されているのである。
【0003】
また、かかる冷却液輸送ホースを与えるゴム組成物にあっては、カーボンブラック等の充填剤やプロセスオイル等の軟化剤の添加量が少ない場合、押出加工時の寸法安定性が悪くなり、また平滑な押出肌が得難くなり、更には製品コストが高くなる等の問題を生じるところから、従来では、それらの問題を回避するために、カーボンブラック等の充填剤を多量に配合、混練せしめて、ゴム組成物を調製する高充填配合手法が採用されてきた。
【0004】
而して、近年、そのような高充填配合のゴム組成物を用いて得られる車両用冷却液輸送ホースを使用するうちに、ホースの内面側に多数のスジ(糸状乃至樹枝状の細かい亀裂)が入り、甚だしい場合には、ホースの内面側から外面側に到達するような亀裂が入って、冷却液の液漏れが発生する問題が、指摘されてきている。その原因とするところは、最近の自動車等の車両においては、電気関連部品の装着率が上昇しており、そのため迷走電流が発生し易い環境となっていることに加えて、車両の軽量化や防錆性能の向上等を目的として、アルミ材が多用化されてきたことにより、異種金属接触による局部電池の形成が起こり易い環境となっていること等の他、カーボンブラック等の充填剤を多量に混練した高充填配合のゴム組成物から冷却液輸送ホースが形成されていることにより、ホース全体としての体積固有抵抗が低くなり、導電性の高いホースとなっているために、そのような冷却液輸送ホースに電気が流れることによって、ホースと冷却液中の化合物が電気化学的に反応して、次第にホースの劣化を招くことによるものと、考えられている。
【0005】
このため、本願出願人は、先に、特開平6−262728号公報や特開平9−317956号公報等において、単層ホース若しくは多層ホースのうちの少なくとも最内層を、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とする、体積固有抵抗が104 Ωcm以上であるゴム材料にて形成してなる車両用冷却液輸送ホースを明らかにした。このようなホース構成によれば、少なくとも冷却液が接触するホース内面側の部位について、その体積固有抵抗が104 Ωcm以上に高められていることによって、電流の発生し易い環境下においても、電気が流れ難く、ホース内面側におけるホースと冷却液との間の電気化学的な反応が効果的に防止され得ることとなり、以て、そのような現象に起因するスジや亀裂の発生、更には液漏れ等の問題を有利に解消することが出来、電流の流れ易い車両内部においても、長期的に安定した性能を発揮することが可能となったのである。
【0006】
ところで、そのような冷却液輸送ホースの最内層を構成するゴム材料の体積固有抵抗を104 Ωcm以上とするためには、全体のゴム配合量中に占めるカーボンブラックの配合量の割合をコントロールすることが最も効果的であるが、加工性や製品物性を考慮して、前記したカーボンブラックの高充填配合を行なうと、必然的に体積固有抵抗が低くなるところから、目的とする104 Ωcm以上の体積固有抵抗となるようにカーボンブラックの配合量を減少せしめると、ポリマー使用量の増大による材料コストの上昇に加えて、強度等の物性の低下、更には押出肌や押出加工性の悪化等の問題が新たに惹起されるようになる。
【0007】
このように、ゴム材料の電気抵抗を大きくしようとする場合には、カーボンブラックの配合量は少ない方が好ましいものであるのに対して、ゴム材料に大きな破断強度や引張応力等の優れた物性を付与しようとすれば、カーボンブラックの配合量が多い方が望ましいのであり、このため、ゴム材料の体積固有抵抗を大きくすることと、引張時の破断強度や引張時に発生する応力を大きくすることを、カーボンブラックの配合量にて調整することは、相反する効果を同時に得ようとすることになり、実際上、困難なことであったのである。
【0008】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、電流の流れ易い車両内部においても、ホースの電気化学的劣化が効果的に防止され、長期的に安定した性能を有する車両用冷却液輸送ホースの如き水系媒体輸送ホースを、強度を代表とする諸物性の低下や加工性等の悪化を伴うことなく、提供することにある。
【0009】
【解決手段】
そして、そのような課題を解決するために、本発明は、単層ホース若しくは多層ホースの、少なくとも、輸送せしめられる水系媒体に接触する最内層が、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主成分として、これにポリオレフィン樹脂及びポリアミド繊維を配合せしめ、更にカーボンブラックを30重量%未満の割合で配合してなるゴム組成物を加硫して得られる、体積固有抵抗が105 Ωcm以上であるゴム材料にて形成されていることを特徴とする水系媒体輸送ホースを、その要旨とするものである。
【0010】
要するに、本発明は、少なくともホース最内層を構成するゴム材料を与えるゴム組成物におけるカーボンブラックの配合量を30重量%未満とすると共に、そのようなゴム組成物に、更に、ポリオレフィン樹脂とポリアミド繊維を配合せしめるようにしたものであって、これにより、体積固有抵抗を105 Ωcm以上に高めて、ホースの電気劣化性を効果的に抑制乃至は阻止せしめると共に、強度を代表とする諸物性の低下や加工性等の悪化を伴うことのない、水系媒体輸送ホースを有利に実現したのである。
【0011】
なお、かくの如き本発明に従う水系媒体輸送ホースの好ましい態様の一つによれば、前記ゴム組成物は、前記エチレン−プロピレン系共重合体ゴムの100重量部に対して、前記ポリオレフィン樹脂が1〜6重量部の割合において、また前記ポリアミド繊維が3〜13重量部の割合において含有せしめられ、以て本発明の目的が、より一層有利に達成され得ることとなる。
【0012】
そして、本発明にあっては、ポリオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレンが有利に用いられ、また、ポリアミド繊維としては、ナイロン6の微細繊維が有利に用いられることとなるのである。
【0013】
【発明の実施の形態】
ここにおいて、本発明に従う水系媒体輸送ホースは、単層、多層の何れの構成であってもよいが、少なくとも、輸送せしめられる水系媒体に接触せしめられるホースの内面側の部位が、カーボンブラックの配合量を30重量%未満と抑制しつつ、ポリオレフィン樹脂とポリアミド繊維とを配合せしめて、体積固有抵抗が105 Ωcm以上とされたゴム材料にて、形成されている必要があるのである。なお、かくの如きゴム材料は、耐水性の良いエチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とするゴム組成物を加硫して得られるものであるが、そのようなエチレン−プロピレン系共重合体ゴムとしては、公知のEPDMやEPM等が用いられる。
【0014】
ところで、この本発明において用いられるエチレン−プロピレン系共重合体ゴムにあっては、それ自体の体積固有抵抗は、1014〜1016Ωcm程度であり、それ自体電気を通し難いものであるが、それに充填されるカーボンブラックは、その体積固有抵抗が10-1〜101 Ωcm程度と極めて小さいところから、両者を混練りして得られるゴム配合(組成物)の体積固有抵抗は、カーボンブラックの配合量の増加と共に減少して、大体、10〜1014Ωcmの範囲内で変化することとなる。
【0015】
一方、カーボンブラックは、それのエチレン−プロピレン系共重合体ゴムに対する充填量を増加させると、得られるゴム材料の物理(力学)的強度が増加するようになるのであり、その結果、所謂ゴムの性質が顕著となり、伸長が加わった場合に、収縮しようとする応力が発現し、一般に、引張時の破断強度は大略5〜20MPaの範囲で変化し、また伸長時の引張応力も、破断強度を越えない範囲で変化するようになる。
【0016】
このように、ゴム材料の電気抵抗値を大きくしようとする場合には、カーボンブラックの配合量は少ない方が好ましく、一方、大きな引張応力を得ようとすれば、カーボンブラックの配合量は多い方が望ましいのであり、従って、ゴム配合物の体積固有抵抗を大きくすることと、引張時に発生する応力を大きくすることを、カーボンブラックの配合量で調整することは、相反する効果を同時に得ようとすることになり、実際上は、極めて困難となるのである。
【0017】
このため、本発明にあっては、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とするゴム組成物において、カーボンブラックの配合量が30重量%よりも少なくなるように低減せしめると共に、ポリオレフィン樹脂とポリアミド繊維とを更に配合、混練せしめるようにしたものであり、これによって、高い体積固有抵抗と高い引張応力といった相反する性能を工業的に妥当性のあるコストで得ることを可能ならしめたことに加えて、ホース押出加工時に必要とされる寸法安定性や押出肌の平滑性を有利に確保し得たのである。
【0018】
なお、かかる本発明において、カーボンブラックの配合量が30重量%以上となるような割合とすると、体積固有抵抗が低下し、それが105 Ωcm以上となるゴム材料を得ることが困難となるところから、そのようなカーボンブラックの配合量の上限は30重量%とされ、かかる数値未満の割合において、適宜に選定されることとなる。
【0019】
また、このように、カーボンブラックの配合量を30重量%未満とすると、先述せるように、強度等の物性の低下や加工性の悪化等の問題を惹起することとなるのであるが、本発明にあっては、そのような問題を、ポリオレフィン樹脂とポリアミド繊維の配合によって、解消するようにしたのである。
【0020】
すなわち、それらポリオレフィン樹脂やポリアミド繊維が、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とするゴム組成物に配合せしめられることによって、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムとポリオレフィン樹脂とがマトリックスを構成し、そのマトリックス中にポリアミド繊維が均一に分散せしめられ、且つそれら二成分と結合するようになるのである。また、ポリアミド繊維と結合したポリオレフィン樹脂は、アンカー効果の役割を果たす一方、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムと結合したポリオレフィン樹脂は、微細な粒子として、かかる共重合体ゴム中に均一に分散し、補強充填剤としての効果をも発現して、カーボンブラックの配合量が少ないことによる、強度等の物性の低下や加工性の悪化等を効果的に抑制乃至は阻止しているのである。
【0021】
ここにおいて、かかるエチレン−プロピレン系共重合体ゴムに配合せしめられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンブロック若しくはランダム共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン等の公知の各種のものが、適宜に用いられることとなるが、その中でも、特に、低密度ポリエチレンが有利に用いられ、また、ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−ナイロン66共重合体、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等の繊維、中でも平均繊維径が1μm以下、好ましくは0.05〜1.0μm程度であり、且つアスペクト比(繊維長/繊維径)が10以上である微細な短繊維が有利に用いられ、特に、ナイロン6の微細繊維が好適に用いられることとなる。
【0022】
そして、そのようなポリオレフィン樹脂やポリアミド繊維の配合量としては、目的とするホース構成層の要求特性に応じて適宜に決定されることとなるが、一般に、ポリオレフィン樹脂は、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムの100重量部に対して、1〜6重量部の割合において、またポリアミド繊維は、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムの100重量部に対して、3〜13重量部に割合において配合せしめられることとなる。なお、それらポリオレフィン樹脂やポリアミド繊維の配合量が少な過ぎると、それらの添加による前記した特徴的な作用・効果を充分に奏し得なくなるからであり、また、それらの配合量が多過ぎた場合にあっては、押出加工性が悪化して、ホースへの成形が困難となる等という問題を惹起するようになるからである。
【0023】
なお、本発明において用いられるゴム組成物は、前記したエチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とし、これに、上記のポリオレフィン樹脂及びポリアミド繊維の所定量を配合せしめてなるものであるが、通常、そのようなゴム組成物には、プロセスオイル等の軟化剤、加硫剤、加硫促進剤等も、所定割合において添加、配合せしめられている。しかしながら、それら軟化剤や加硫剤等は、その配合量の多少により、形成されるゴム材料の体積固有抵抗値に大きな影響を与えることはないのである。
【0024】
尤も、体積固有抵抗の高いゴム材料を得るには、非導電性の白色充填剤、例えばクレー、タルク、シリカ等を添加することが有効であるが、この白色充填剤を添加する場合には、得られるゴム材料の力学的強度等の特性が低下するようになるところから、本発明にあっては、ゴム材料の体積固有抵抗を105 Ωcm以上と為すために、そのような白色充填剤を添加(配合)することは避けることが望ましいのである。
【0025】
そして、上述の如くして調製されたエチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体として、これにポリオレフィン樹脂及びポリアミド繊維を配合せしめ、更に所定量のカーボンブラックを配合せしめてなるゴム組成物を用いて、少なくともホース最内層が形成されることにより、目的とするホースの成形が行なわれ、その後硫黄や過酸化物による通常の加硫操作にて加硫せしめられることによって、特性に優れた水系媒体輸送ホースが形成される。即ち、ホースの最内層を与えるゴム材料の体積固有抵抗が105 Ωcm以上とされることによって、ホースの電気化学的劣化が効果的に阻止され得ることとなると共に、引張強度や引張応力等の物理的特性を改善しつつ、更に、寸法安定性や押出肌の平滑性の向上したホースが、有利に実現され得るのである。
【0026】
ところで、図1〜図5には、本発明に従う水系媒体輸送ホースの代表的な例の幾つかが示されているが、それら各種の水系媒体輸送ホースにおいて、その少なくとも最内層が、上記せる如き、本発明に従うゴム組成物からなるゴム材料にて形成されることとなるのである。即ち、先ず、図1は、本発明の適用される最も基本的な構造である、単層ホース10を示しており、そこにおいて、ホース全体が、本発明に従うゴム組成物からなるゴム材料で形成されている。一方、多層ホースの具体例の一つが図3に示されており、そこにおいて、多層ホース14は、本発明に従うゴム材料にて形成された内層16を有する一方、かかる内層16上に、通常のEPDM等のゴム材料を用いて一体的に形成された外層18を有する構造を呈するものであって、このような多層ホース14の場合には、少なくともその最内層(16)が、前記本発明に従うゴム材料で形成されることとなるのである。
【0027】
また、図2には、内部に補強糸層12を有する多層ホース14の一例が示されており、そこでは、補強糸層12の内側に位置する内層16と補強糸層12の外側に位置する外層18とが、何れも、前記本発明に従うゴム材料で形成された構造となっている。更に、図4に示される例にあっては、前記本発明に従うゴム材料にて内層16が形成されている一方、該内層16上に、補強糸層12が設けられ、更にその上に、通常のEPDM等のゴム材料にて外層18が形成された構造とされている。更にまた、図5に示される例にあっては、図4に示される多層ホース14の内層16と補強糸層12との間に、通常のEPDM等のゴム材料からなる中間層17が設けられてなる構造とされている。
【0028】
このように、本発明にあっては、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、各種のホース構造が適宜に採用され得るものであり、そしてそのような各種のホース層構成は、その用途に応じて適宜に選択されるものであり、それによって、各層構成に伴う所定の効果を得ることが可能である。
【0029】
なお、何れのホース構造の場合にも、ホースの通電に対する耐久性を有利に向上させる上において、前記本発明に従うゴム組成物からなるゴム材料で形成する層(10、16)の厚みを0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上とすることが、推奨される。
【0030】
また、補強糸層12は、通常のゴムホースに用いられているものがそのまま採用され、例えばポリエステル繊維、アラミド繊維等の合成繊維を主体とする糸のブレード編みやスパイラル編み等によって形成される。また、外層18及び中間層17の形成材料には、耐候性、耐熱性、耐透水性等に優れる材料を使用することが好ましく、例えば通常のEPDMやEPM等のゴム材料等が好適に用いられることとなる。但し、前述したように、内層16に対する接着性との関係で、内層16の加硫形態、加硫条件に応じて、中間層17及び外層18の形成材料には、硫黄加硫物若しくは過酸化物加硫物が適宜に選択使用されることとなる。
【0031】
そして、そのような本発明に従う水系媒体輸送ホースは、従来より公知の各種手法に従って製造することが出来、例えば、図4の如き多層ホース14は、以下のようにして、順次、積層形成することにより製造することが出来る。
【0032】
(a) 先ず、内層形成用の本発明に従うゴム組成物、即ちエチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とし、これにポリオレフィン樹脂及びポリアミド繊維を配合せしめ、更にカーボンブラックを30重量%未満の割合で配合してなる、加硫によって体積固有抵抗が105 Ωcm以上であるゴム材料を与えるゴム組成物を調製し、それを押出成形機より押し出すことにより、内層16を与える管状体を成形する。
【0033】
(b) 次いで、内層16の外周面に、必要に応じて接着剤(ゴム糊等)を塗布した後、繊維補強糸をブレード編み若しくはスパイラル編みする等の手法によって、補強糸層12を形成する。
【0034】
(c) その後、かかる形成された補強糸層12の外周面に、必要に応じて所定の接着剤(ゴム糊等)を塗布した後、その上に外層形成用のゴム組成物を押し出して、目的とする外層18を所定厚さに形成する。
【0035】
(d) そして、このようにして得られた積層管を加硫(架橋)せしめて、一体化することにより、目的とするホースを得るようにするのである。なお、この際の加硫条件としては、通常、140〜170℃程度の温度及び20〜90分程度の加硫時間が採用されることとなる。
【0036】
尤も、かかる多層ホース14における内層16は、上述の如く押出成形手法にて形成され得る他、前記本発明に従うゴム組成物をゴム糊にして、ホース内面に塗布することによっても、形成することが可能である。また、従来と同様に、加硫に際して、例えば、金属マンドレルにホースを挿入する等して、その曲り管成形加工を行なうことも、適宜に採用されるところである。
【0037】
【実施例】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、そのような実施例の記載によって、本発明が、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0038】
先ず、下記表1及び表2に示される各配合組成に従って、各々の材料を秤り取り、均一に混練せしめて、各種のゴム組成物を調製した。なお、ここでは、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムとしては、市販のEPDM(エスプレン:住友化学工業株式会社製)を用い、またポリオレフィン樹脂及びポリアミド繊維としては、それらの混合物である市販のLA3080(宇部興産株式会社製)を用いた。ここで、上記の市販のLA3080は、ポリオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)を用い、またナイロン繊維として、ナイロン6の微細繊維(繊維径=約0.2μm)を用い、それらとEPDMを均一に配合したものであって、ナイロン6微細繊維/EPDM/LDPE=105/100/40なる重量組成比を有するものである。
【0039】
次いで、この得られた各種のゴム組成物を用いて、公知の手法に従い、性能評価用のテストピースと共に、図1に示される如き単層構造のホース10(内径:20mm、外径:28mm)を作製した。なお、この単層ホース10の押出成形に際しては、各ゴム組成物の押出加工性を評価した。また、それら得られた各種のテストピース及び単層ホースには、通常の加硫操作を施した。
【0040】
そして、かくして得られた各々のテストピースについて、その体積固有抵抗及び破断強度、破断伸び、硬さを測定する一方、各単層ホースについては、それぞれ、図6に示される如き評価試験機に取り付け、通電に対する耐久試験(ブラボライザ試験)を実施した。なお、試験条件としては、各ホース内に、水/ロング・ライフ・クーラント(LLC)=50/50の割合で調節した冷却液を内容積の75%になるように充填した後、試験機の両端間に12Vの直流電圧を印加して、100℃の雰囲気下で336時間経過させた。しかる後、ホースを試験機より取り外して、ホース断面を観察することにより、耐電気化学劣化特性を評価した。以上の結果を併せて、下記表3及び表4に示した。
【0041】
【表1】
*1・・・ゴム組成物中のカーボンブラック含有量
*2・・・EPDM100重量部に対するポリアミド繊維の配合量
*3・・・EPDM100重量部に対するポリオレフィン樹脂の配合量
【0042】
【表2】
*1・・・ゴム組成物中のカーボンブラック含有量
*2・・・EPDM100重量部に対するポリアミド繊維の配合量
*3・・・EPDM100重量部に対するポリオレフィン樹脂の配合量
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
以上の表の結果の対比から明らかなように、実施例1〜6の如く、カーボンブラックの配合量を30重量%未満とすると共に、所定量のポリオレフィン樹脂(LDPE)及びポリアミド繊維(ナイロン6微細繊維)を配合せしめてなるゴム組成物を用いて、体積固有抵抗が105 Ωcm以上とされたものにあっては、引張り強度等の物性が高く、また押出加工性においても優れている共に、ブラボライザ試験においても、何等の異常も認められてはいない。
【0046】
これに対して、比較例1〜4に示されるものにあっては、何れも、何等かの問題を有するものであった。例えば、充填剤としてカーボンブラックを30重量%以上配合したゴム組成物を用いた比較例1の場合にあっては、体積固有抵抗が105 Ωcmよりも低くなり、そのために、ブラボライザ試験において、ホースにスジ、亀裂が入り、冷却液の漏出が認められ、また比較例2及び3に示される如く、ポリアミド繊維を配合しなかったり、或いはその配合量が少なかったりすると、破断伸び等の物性が悪化することとなるのであり、更に、比較例4の如く、ポリアミド繊維の配合量が多くなり過ぎると、成形が困難となる等の問題を生じるようになるのである。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う水系媒体輸送ホースは、電流の発生し易い環境に置かれても、電気が流れ難く、ホース内面側におけるホースと冷却液の如き水系媒体との間の電気化学的な反応が効果的に防止され得るものであり、従って、そのような現象に基因するところのスジや亀裂の発生、更には液漏れ等の問題を有利に解消することが出来ると共に、ゴム配合物の力学的強度の低下等の物性の低下の問題も効果的に防止乃至は阻止することが出来、電流の流れ易い車両内部等の場所においても、長期的に安定した性能を発揮することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う水系媒体輸送ホースの一例を示す横断面図である。
【図2】本発明に従う水系媒体輸送ホースの別の例を示す横断面図である。
【図3】本発明に従う水系媒体輸送ホースの更に別の例を示す横断面図である。
【図4】本発明に従う水系媒体輸送ホースの他の例を示す横断面図である。
【図5】本発明に従う水系媒体輸送ホースの更に他の例を示す横断面図である。
【図6】実施例において用いた評価試験機の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
10 単層ホース 12 補強糸層
14 多層ホース 16 内層
17 中間層 18 外層
Claims (4)
- 単層ホース若しくは多層ホースの、少なくとも、輸送せしめられる水系媒体に接触する最内層が、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主成分として、このエチレン−プロピレン系共重合体ゴムの100重量部に対して、1〜6重量部の割合のポリオレフィン樹脂及び3〜13重量部の割合のポリアミド繊維を配合せしめると共に、所定量のカーボンブラックを配合せしめてなり、且つ、かかるカーボンブラックの配合量が30重量%よりも少なくなるように抑制されたゴム組成物を加硫して得られる、体積固有抵抗が105 Ωcm以上であるゴム材料にて形成されていることを特徴とする水系媒体輸送ホース。
- 前記ポリオレフィン樹脂が、低密度ポリエチレンである請求項1に記載の水系媒体輸送ホース。
- 前記ポリアミド繊維が、ナイロン6の微細繊維である請求項1又は請求項2に記載の水系媒体輸送ホース。
- 前記水系媒体が、車両用冷却液である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の水系媒体輸送ホース。
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