JP3733515B2 - 高温高圧気体・液体の貯蔵方法および貯蔵施設 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、岩盤・地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞内に高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵する高温高圧気体・液体の貯蔵方法および貯蔵施設に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、近年、火力、原子力発電所、ごみ焼却施設、製鋼などのプラント施設から発生する熱を地下に貯蔵して利用する構想が発表されており、このための施設として、特に、火力や原子力発電所から発生する熱を100℃以上で岩盤内に形成した空洞内に貯蔵する温水・熱水貯蔵施設が提案されている。
【0003】
このような温水・熱水および蒸気の貯蔵施設においては、内部に貯蔵される蒸気および熱水等の温度が高いため、周辺の岩盤・地盤に大きな熱応力が作用し、降伏・破壊が生じることが考えられる。そこで、岩盤・地盤に発生する熱応力がその強度以下となるように、周辺岩盤・地盤の温度を制御したり、あるいは、空洞内壁に空洞周辺の岩盤・地盤への熱伝達・伝導を防ぐための断熱材を設置するなどの対策が考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の対策のうち、周辺岩盤の温度を制御する方法を採用する場合には、使用目的に適合した岩盤・地盤を選択しなければならず立地条件に対する制約が大きくなること、または、貯蔵を考えたい岩盤・地盤の熱特性・強度特性によっては、貯蔵すべき高温高圧の気体あるいは液体の温度が制限され、貯蔵施設としての効率が低下することなどの問題点が生じる。
【0005】
一方、空洞内壁に空洞周辺への熱伝達・熱伝導を防ぐための断熱材を設置する対策を採用した際には、一般にウレタン系材料などの断熱材が、その内部に多くの空気を含むことにより断熱性を高めていることから、地下水や蒸気等により断熱材中の空気が置換された場合に、その断熱特性が失われ、岩盤への熱伝達・熱伝導を完全に防ぐことができない懸念がある。また、これを避けるために、断熱材の表面を何らかの被覆材(薄肉スチールや温水・蒸気中において耐腐食性を発揮するステンレスなど)によって被覆したとしても、被覆材を介して断熱材に、温水、熱水、あるいは蒸気の貯蔵圧が作用し、これにより、断熱材がつぶれて断熱材中の空気層が失われ、結果として断熱機能が損なわれてしまうこととなる。さらに、断熱材の設置には、空洞の建設と同等のコストが要求されるために、建設コストの増大が大きな問題となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、立地条件や貯蔵すべき高温高圧の気体あるいは液体の温度等に関して制約が生じず、なおかつ、安全に、低コストで高温高圧の気体あるいは液体を岩盤・地盤中に貯蔵する技術を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の発明は、岩盤・地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞内に高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵するための方法であって、前記空洞内に前記高温高圧の気体あるいは液体を所定温度で貯蔵したと仮定した場合に、前記空洞を囲む岩盤・地盤内で前記空洞内壁に沿った方向に生じる熱応力による圧縮応力を計算しておき、実際に前記高温高圧の気体あるいは液体を前記空洞内に貯蔵する際には、前記高温高圧の気体あるいは液体の圧力が前記空洞内壁に作用した際に前記岩盤・地盤内で前記空洞内壁に沿った方向に生じることが予想される引張応力と、前記圧縮応力とが均衡するように、前記高温高圧の気体あるいは液体の圧力を調整することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、岩盤・地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞内に高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵する高温高圧の気体あるいは液体の貯蔵施設であって、
前記空洞内面にシール材が配置されるとともに、該シール材と前記岩盤・地盤との間に裏込め材が充填されることにより、前記シール材の内部が前記高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵するためのタンクとして形成され、
該タンクは、その内圧を調整する内圧調整装置に対して接続され、該内圧調整装置は、前記タンク内に前記高温高圧の気体あるいは液体を所定温度で貯蔵したと仮定した場合に前記空洞を囲む岩盤・地盤内で前記空洞内壁に沿った方向に生じる熱応力による圧縮応力と、前記高温高圧の気体あるいは液体の圧力が前記空洞内壁に作用した際に前記岩盤・地盤内で前記空洞内壁に沿った方向に生じることが予想される引張応力とを均衡させるように、前記高温高圧の気体あるいは液体の圧力を調整することを特徴としている。
【0009】
これらの発明においては、上記のような構成により、岩盤・地盤内において、熱応力による圧縮応力と、高温高圧の気体あるいは液体の貯蔵圧に起因する引張応力とがバランスすることとなり、これにより、岩盤・地盤内において過大な応力が発生することを防ぐことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示す図であり、図中符号1は高温高圧気体・液体貯蔵施設を表す。この高温高圧気体・液体貯蔵施設1は、岩盤(地盤)R内を掘削して空洞2を形成し、この空洞2内に、熱水等の高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵するためのものであり、空洞2の内面にシール材3が配置されるとともに、シール材3と岩盤Rとの間に裏込めコンクリート(裏込め材)Cが充填されることにより、シール材3の内部が高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵するためのサイロ型のタンク4として形成されたものである。
【0011】
シール材3は、高温高圧の気体あるいは液体のタンク4外への漏洩を防止する役割を担うものであり、カーボンスチールやステンレススチールなどが考えられるが、高温下における耐腐食性を有するものが用いられる。
【0012】
また、この高温高圧気体・液体貯蔵施設1においては、タンク4に内圧調整装置5が接続されている。この内圧調整装置5は、タンク4の内圧を、あらかじめ定めた圧力に調整する機能を有している。
【0013】
図2は、高温高圧気体・液体貯蔵施設1の壁部7(図1参照)を拡大して示した図である。図中に示すように、裏込めコンクリートCと岩盤Rとの間には、排水パイプ8,8,…が設置されている。この排水パイプ8,8,…は、タンク4の建設時や開放点検時に岩盤R内の地下水圧が過度にシール材3に作用することを防ぐ役割をする。また、この場合、裏込めコンクリートCは、シール材3の局所的な変形を防いでタンク4の滑らかな内空形状を確保し、高温高圧の気体あるいは液体の貯蔵圧を岩盤Rに対して滑らかに伝達する機能を有するほか、排水パイプ8,8,…を高温高圧の気体あるいは液体の貯蔵圧から保護する機能を有する。
【0014】
次に、この高温高圧気体・液体貯蔵施設1内に高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵する際の手順(高温高圧気体・液体の貯蔵方法)について説明する。タンク4内に高温高圧の気体あるいは液体を高圧かつ高温で貯蔵すると、空洞2を囲む岩盤Rには、高温高圧の気体あるいは液体のもつ熱が伝達し、これにより、岩盤Rが膨張して岩盤R内に圧縮応力が発生することが予想される。一方、高温高圧の気体あるいは液体の貯蔵圧により、空洞2の内壁は地山側に変位し、これにより、空洞2を囲む岩盤Rには、空洞2の内壁方向に引張応力が発生することが予想される。
【0015】
したがって、ここでは、まず、タンク4内に高温高圧の気体あるいは液体を所定温度で貯蔵したと仮定した場合に、空洞2を囲む岩盤R内に生じる熱応力による圧縮応力を計算しておき、さらに、このように計算された圧縮応力とバランスする引張応力を空洞2を囲む岩盤R内に生じさせるために必要な高温高圧の気体あるいは液体の圧力を計算しておく。そして、このように計算した圧力を、内圧調整装置5の調整対象の圧力として定めておく。
【0016】
そして、実際に高温高圧の気体あるいは液体をタンク4内に貯蔵する際には、内圧調整装置5によりタンク4内の圧力を、上述のようにして計算した所定の圧力に定め、さらに高温高圧の気体あるいは液体の温度を上述の所定温度とする。これにより、岩盤R内に生じる熱応力による圧縮応力と、高温高圧の気体あるいは液体の内圧に起因する岩盤R内の引張応力とをバランスさせ、岩盤R内に過大な応力が発生することを避けることができる。この場合、具体的には、例えば、熱水を貯蔵温度200〜300℃で貯蔵する場合において、岩盤(地盤)の弾性係数、線膨張係数、地下水の有無によって条件が異なるが、熱水の圧力を3〜6MPa以上に保つのが望ましいと予想される。
【0017】
以上述べた高温高圧気体・液体貯蔵施設1および高温高圧気体・液体の貯蔵方法においては、高温高圧の気体あるいは液体の圧力が空洞2内壁に作用した際に岩盤R内に生じることが予想される引張応力と、高温高圧の気体あるいは液体の熱が岩盤Rに伝導した場合に岩盤R内に生じることが予想される圧縮応力とが均衡するように、高温高圧の気体あるいは液体の圧力を調整したため、断熱材を用いずに、岩盤R内において過大な応力が発生することを防ぐことができ、建設コストの大幅な削減を図ることができる。また、従来の岩盤・地盤内の温度を制御する手法に比較しても、立地条件に対する制約が少なく、また、高温高圧の気体あるいは液体の温度にも制限が少ないため、エネルギー貯蔵効率を非常に高くすることができる。さらに、高圧下の貯蔵でも貯蔵温度によりシール材3に温度応力による伸びが期待できることより、貯蔵圧力による大きな伸びひずみが生じることがないため、シール材3を力学的に安定した状態で利用することができ、安全性が高い。
【0018】
なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で他の構成を採用するようにしてもよい。
例えば、上記実施の形態の高温高圧気体・液体貯蔵施設1においては、タンク4の形状がサイロ型とされていたが、これに代えて、図3,4に示す高温高圧気体・液体貯蔵施設1’のように、トンネル型のタンク4’を採用するようにしても良い。
【0019】
また、上記実施の形態の高温高圧気体・液体貯蔵施設1は、岩盤R内に設置されていたが、これに代えて、比較的堅固な地山内に設置することも可能である。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高温高圧の気体あるいは液体の圧力が空洞内壁に作用した際に岩盤・地盤内で空洞内壁に沿った方向に生じることが予想される引張応力と、高温高圧の気体あるいは液体の熱が地盤に伝導した場合に岩盤・地盤内で空洞内壁に沿った方向に生じることが予想される圧縮応力とが均衡するように、高温高圧の気体あるいは液体の圧力を調整したため、断熱材を用いずに、岩盤・地盤内において過大な応力が発生することを防ぐことができ、建設コストの大幅な削減を図ることができる。また、従来の岩盤内の温度を制御する手法に比較しても、立地条件に対する制約が少なく、また、高温高圧の気体あるいは液体の温度にも制限が少ないため、エネルギー貯蔵効率を非常に高くすることができる。さらに、高圧下の貯蔵でもシール材に大きな伸びひずみが生じることがないため、シール材を力学的に安定した状態で利用することができ、安全性が高い。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【図1 】 本発明の一実施の形態を模式的に示す高温高圧気体・液体貯蔵施設の部分断面斜視図である。
【図2 】 図1に示した高温高圧気体・液体貯蔵施設の壁部を拡大して示す断面図である。
【図3 】 本発明の他の実施の形態を模式的に示す高温高圧気体・液体貯蔵施設の断面斜視図である。
【図4 】 同、立断面図である。
【符号の説明】
1 高温高圧気体・液体貯蔵施設
2 空洞
3 シール材
4 タンク
5 内圧調整装置
C 裏込めコンクリート
R 岩盤
Claims (2)
- 岩盤・地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞内に高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵するための方法であって、
前記空洞内に前記高温高圧の気体あるいは液体を所定温度で貯蔵したと仮定した場合に、前記空洞を囲む岩盤・地盤内で前記空洞内壁に沿った方向に生じる熱応力による圧縮応力を計算しておき、
実際に前記高温高圧の気体あるいは液体を前記空洞内に貯蔵する際には、前記高温高圧の気体あるいは液体の圧力が前記空洞内壁に作用した際に前記岩盤・地盤内で前記空洞内壁に沿った方向に生じることが予想される引張応力と、前記圧縮応力とが均衡するように、前記高温高圧の気体あるいは液体の圧力を調整することを特徴とする高温高圧気体・液体の貯蔵方法。 - 岩盤・地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞内に高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵する高温高圧気体・液体の貯蔵施設であって、
前記空洞内面にシール材が配置されるとともに、該シール材と前記岩盤・地盤との間に裏込め材が充填されることにより、前記シール材の内部が前記高温高圧の気体あるいは液体を貯蔵するためのタンクとして形成され、
該タンクは、その内圧を調整する内圧調整装置に対して接続され、該内圧調整装置は、前記タンク内に前記高温高圧の気体あるいは液体を所定温度で貯蔵したと仮定した場合に前記空洞を囲む岩盤・地盤内で前記空洞内壁に沿った方向に生じる熱応力による圧縮応力と、前記高温高圧の気体あるいは液体の圧力が前記空洞内壁に作用した際に前記岩盤・地盤内で前記空洞内壁に沿った方向に生じることが予想される引張応力とを均衡させるように、前記高温高圧の気体あるいは液体の圧力を調整することを特徴とする高温高圧気体・液体の貯蔵施設。
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