JP3730006B2 - 電気絶縁用気体の圧力状態監視装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力容器内に密封された電気絶縁用気体の検出圧力と検出温度に基づいて所定の基準温度における圧力である温度補償圧力を算出し、該温度補償圧力に基づいて前記電気絶縁用気体の圧力を監視する電気絶縁用気体の圧力状態監視装置に関し、例えば電力分野におけるガス絶縁開閉装置(以下、GIS:Gas Insulated Switchgearという。)、ガス絶縁送電線(以下、GIL:Gas Insulated transmission Lineという。)及びガス絶縁変圧器(Gas insulated transformer)に密封されている六フッ化イオウ気体(SF6 ガス)など電気的絶縁性、不燃性、非腐食性に優れたガスの圧力状態を監視するのに適した電気絶縁用気体の圧力状態監視装置に関する。
以下の説明において、前記ガスが封入された電気機器を総称してGISと言い、また、気体とガスとは同じ意味とする。
【0002】
【従来の技術】
背景技術−1
一般に高電圧の電流を流すGIS内部には電気的絶縁性に優れたガスが封入されている。GIS内部においては種々の電気的現象が発生するが、前記電気的現象を検出するのに電圧検出、電流検出、温度検出、圧力検出、音響検出、光検出などの検出手段によってGIS内部の電気的現象を検出し、前記検出された各種の信号に基づいてGIS内部の状態を監視し、GISの稼働の継続/停止の判断をし、制御している。
GISが実用化されて以来、前記検出手段としてGIS内部のガス圧力を検出する手段を用いて、GIS内部の状態を監視する方法は、極めて有効であり多用されてきた。
電気的絶縁性に優れたガスとしては、SF6 ガスが多く用いられていることは、特公平6−40045号公報に開示されている例も含めて広く公知の事実である。
一方、特公昭61−45766号公報に開示されている要旨は、「電力用遮断器のガスは消孤性を持つガスであり、前記ガスの圧力−温度特性をメモリ中に非直線的曲線として記憶している」というものである。
背景技術−2
近年、地球環境を保護することは、種々の技術分野の社会的な責務として各種の対策が施され、あるいは技術の改良が研究されている。特に、1997年に開催された地球温暖化ガス排出削減を協議する第3回気候変動枠組条約締約団会合(COP3)、いわゆる「京都会議」において、「SF6 ガス」の大気への排出削減が求められている。
上記の暫定対策としては使用量の削減、いわゆる総量規制の考え方で「SF6 ガス」より絶縁性は劣るが、他の絶縁性ガスを混合することが検討されている。具体的には大気の体積の約78%を占める「窒素ガス」、大気の体積の約1%を占める「アルゴンガス」などの電気的絶縁性を持つガスである。
一方では、恒久対策としての「SF6 代替ガス」の発明発見の研究開発がなされていて、その成果、実用化が待たれるところである。
【0003】
従来、GIS等におけるガス状態の監視技術として、例えば実開昭59−9450号に開示されているように、機械式の温度補償圧力スイッチ(いわゆる、密度スイッチ)を用いるものがある。この温度補償圧力スイッチは、GISから徐々にガスが漏れて、温度補償圧力が低下し、所定の低圧側しきい値圧力(低圧側設定値)に達した場合にガス漏れ警報信号を発するように構成されている。
【0004】
しかし、このような機械式の温度補償圧力スイッチでは動作の信頼性や精度の点で問題があり、例えば特公平6−40045号公報に開示されているように、マイクロコンピュータを用いた電子式の温度補償圧力継電装置が提案されている。この温度補償圧力継電装置は、圧力容器内のガスの圧力と温度を検出し、予めメモリに記憶した複数の定密度直線の傾きと検出したガスの温度を用いて、順次複数のガス圧力を算出し得られたガス圧力のうち、検出したガスの圧力に最も近いガス圧力に対応する定密度直線を選定している。そして、選定した定密度直線の傾き、検出したガスの圧力及び温度を用いて、基準温度における温度補償圧力を算出している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
具体的には、この従来の温度補償圧力継電装置では、複数の定密度直線の傾きの値をインデックスIに対応させて記憶している。そして、ガス圧力と温度を検出し、I=0からスタートして順次Iの値を増して行きながら、定密度直線と検出温度から圧力を求め、この圧力が検出したガス圧力と最も近くなるような定密度直線を最適な定密度直線として選定している。そして、この選定した定密度直線に基づいて温度補償演算(圧力値の20℃換算)を行っている。
このように、従来の温度補償圧力継電装置では、演算に用いる定密度直線の傾きを選定するための演算処理を、ガス圧力を検出して温度補償演算を行う毎に毎回繰り返し行っているので、処理が複雑になり、処理に時間がかかるという問題点があった。
【0006】
GIS等におけるガス状態の監視技術においては、上記のような温度補償圧力の演算処理の他に、温度補償圧力を伝送する処理、高圧警報の出力を制御する処理、圧力上昇率を検出する処理等を行う必要がある。また、自己診断等を行うことも信頼性を高める上で有用である。すなわち、このような各種の処理を1つのマイコン(8ビット)で行うために、各種処理を可能な限り高速で処理することが要求される。
【0007】
本発明は、電気絶縁用気体の検出圧力と検出温度に基づいて温度補償圧力を算出して電気絶縁用気体の圧力を監視する電気絶縁用気体の圧力状態監視装置において、温度補償圧力を算出する際の処理時間を短縮することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、圧力容器内に密封された電気絶縁用気体の検出圧力と検出温度に基づいて所定の基準温度における圧力である温度補償圧力を算出し、該温度補償圧力に基づいて前記電気絶縁用気体の圧力を監視する電気絶縁用気体の圧力状態監視装置において、前記電気絶縁用気体の高圧側管理限界の近傍から低圧側管理限界の近傍に亘る複数の圧力に対応する複数のモル容積についての複数の定モル容積曲線を用い、前記検出温度に相当する温度データ、前記検出圧力に相当する圧力データ、前記複数の定モル容積曲線のうちの2本の定モル容積曲線から前記温度補償圧力を算出する工程を備え、当該圧力状態監視装置の起動時の1回目の温度補償圧力の算出に用いる2本の定モル容積曲線として、予め設定された定モル容積曲線を用い、2回目以降の温度補償圧力の算出に用いる2本の定モル容積曲線として、前回の温度補償圧力の算出の結果得られた温度補償圧力の値を挟む隣接2本の定モル容積曲線を選択していくようにしたことを特徴とする。
【0009】
上記のように構成した請求項1記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、検出温度に相当する温度データと検出圧力に相当する圧力データから温度補償圧力を算出するときの2本の定モル容積曲線は、2回目以降の温度補償圧力の算出時には前回の温度補償圧力の算出の結果得られた温度補償圧力の値を挟む隣接2本の定モル容積曲線が選択されるので、温度補償圧力に変化が少ないときは殆どの場合、前回と同じ2本の定モル容積曲線を用いることになるので、定モル容積曲線の選択に時間がかからず、処理時間が短縮する。また、定モル容積曲線を選択し直す場合でも、前回の2本の近傍の定モル容積曲線を選択すればよい場合が殆どであり、処理時間が短縮する。なお、各定モル容積曲線における温度補償圧力(圧力値の例えば20℃換算)の値は予めわかっているので、前回の算出の結果得られた温度補償圧力と上記予めわかっている温度補償圧力との大小関係を判定するだけで、定モル容積曲線を選択することができる。
【0010】
本発明の請求項2記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、請求項1の構成を備え、前記1回目の温度補償圧力の算出に用いる2本の予め設定された定モル容積曲線が、前記高圧側管理限界の近傍の曲線と前記低圧側管理限界の近傍の曲線であることを特徴とする。
【0011】
上記のように構成した請求項2記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1の作用効果に加えて、次のような作用効果が得られる。最初の温度補償圧力の算出は、2本の定モル容積曲線の間の内挿により算出するので、温度補償圧力を挟んで隣接する2本の定モル容積曲線を用いた場合ほどは精度は良くないが、初回の演算結果としてほぼ平均的な精度が得られる。
【0012】
本発明の請求項3記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、請求項1または請求項2の構成を備え、前記定モル容積曲線は、前記検出温度の検出下限温度と検出上限温度の範囲内で複数区間に分けて各区間の中の定モル容積曲線を直線とみなして折れ線近似されたものであり、該折れ線近似の直線に基づく比例配分演算を行って前記温度補償圧力を算出することを特徴とする。
【0013】
上記のように構成した請求項3記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1または請求項2の作用効果に加えて、定モル容積曲線を折れ線近似しているので温度補償圧力の演算に直線の式を用いればよいので処理時間がさらに短縮する。
【0014】
本発明の請求項4記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、請求項1または請求項2の構成を備え、前記温度補償圧力の算出をマイクロコンピュータで行い、該マイクロコンピュータの記憶手段に前記定モル容積曲線の係数が記憶されていることを特徴とする。
【0015】
上記のように構成した請求項4記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1または請求項2の作用効果に加えて、定モル容積曲線を選択するときその係数を記憶手段から読み出すだけでよい。
【0016】
本発明の請求項5記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、請求項3の構成を備え、前記温度補償圧力の算出をマイクロコンピュータで行い、該マイクロコンピュータの記憶手段に前記定モル容積曲線の折れ線近似の直線の係数が記憶されていることを特徴とする。
【0017】
上記のように構成した請求項5記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項3の作用効果に加えて、定モル容積曲線の折れ線近似の直線を選択するときその係数を記憶手段から読み出すだけでよい。
【0018】
本発明の請求項6記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の構成を備え、前記定モル容積曲線は予めビリアル型状態方程式を用いて解法して求めたものであることを特徴とする。
【0019】
上記のように構成した請求項6記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の作用効果に加えて、電気絶縁用ガスに、あるいは複数の電気絶縁用ガスを混合した場合に適用できる。
【0020】
本発明の請求項7記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の構成を備え、前記定モル容積曲線は予めBeattie−Bridgemanの式を用いて解法して求めたものであることを特徴とする。
【0021】
上記のように構成した請求項7記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の作用効果に加えて、SF6 ガスを用いる場合、定モル容積曲線は定モル容積直線となるので温度補償圧力の演算に直線の式を用いればよいので処理時間がさらに短縮する。
【0022】
本発明の請求項8記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、圧力容器内に密封された電気絶縁用気体の検出圧力と検出温度に基づいて所定の基準温度における圧力である温度補償圧力を算出し、該温度補償圧力に基づいて前記電気絶縁用気体の圧力を監視する電気絶縁用気体の圧力状態監視装置において、前記電気絶縁用気体の第1の圧力と第2の圧力に対応する異なるモル容積についての第1の定モル容積曲線と第2の定モル容積曲線の2本を用い、前記検出温度に相当する温度データ、前記検出圧力に相当する圧力データ、前記第1の定モル容積曲線、および前記第2の定モル容積曲線から、比例配分により前記温度補償圧力を算出することを特徴とする。
【0023】
上記のように構成した請求項8記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、第1の定モル容積曲線と第2の定モル容積曲線の前記検出温度におけるそれぞれの圧力と検出圧力とにより温度補償圧力を算出するとき、比例配分で算出するので、演算が簡単になり処理時間も短縮する。
【0024】
本発明の請求項9記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置は、請求項8の構成を備え、前記温度補償圧力を算出する前記検出圧力の範囲は、前記検出温度の直線と交差する前記第1の定モル容積曲線上の第1の圧力の近傍の圧力値から、前記検出温度の直線と交差する前記第2の定モル容積曲線上の第2の圧力の近傍の圧力値の範囲内にあることを特徴とする。
【0025】
上記のように構成した請求項9記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項8の作用効果に加えて、外挿により温度補償圧力を算出する場合でも、第1の定モル容積曲線または第2の定モル容積曲線の近傍になるので、精度の高い演算結果が得られるとともに、2本の定モル容積曲線を内挿となるように選択し直さなくても良いので処理時間が短縮する。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。なお、説明文中において電気絶縁用気体は多用されているSF6 ガスとした。また後述において、定モル容積曲線を用いる電気絶縁用気体の説明と定モル容積直線を用いるSF6 ガスの説明とは、必要に応じ分けて説明するが、曲線は一般的には多項式であり、直線は1次式で曲線の一部であることは言うまでもなく、よって定モル容積曲線による温度補償の説明を主として行う。
【0027】
図1は実施形態に係るSF6 ガスの圧力状態監視システムの概要構成図であり、この実施形態におけるSF6 ガスの圧力状態監視システム1はGIL(ガス絶縁送電線)の管内ガス圧を監視するものである。GIL2内にはおよそ3万〜50万[V]の電圧で電流を流す送電線2Bが配設されており、この送電線2Bはシーリングを兼ねた絶縁スペーサ2Aによって支持されている。絶縁スペーサ2AおよびGIL2により仕切られた空間はそれぞれ独立の圧力容器2Cを形成しており、各圧力容器2C内には電気絶縁用気体としてSF6 ガスが密封されている。
【0028】
SF6 ガスの圧力状態監視システム1は本発明の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置の一実施形態としての圧力状態監視装置6を複数備えており、各圧力状態監視装置6は各圧力容器2Cに圧力導入管3でそれぞれ連通されている。また、SF6 ガスの圧力状態監視システム1は、複数のアナログ系ローカル監視装置7、複数のディジタル系ローカル監視装置8、第1中央監視装置10、第2中央監視装置12および電気機器回路操作部13を備えており、各アナログ系ローカル監視装置7は対応する複数一組の圧力状態監視装置6に第1アナログ信号伝送ライン4を介してそれぞれ接続され、各ディジタル系ローカル監視装置8はアナログ系ローカル監視装置7と同じく対応する複数一組の圧力状態監視装置6に第1ディジタル信号伝送ライン5を介してそれぞれ接続されている。また、第1中央監視装置10は第2アナログ信号伝送ライン9を介してアナログ系ローカル監視装置7に接続され、第2中央監視装置12は第2ディジタル信号伝送ライン11を介してディジタル系ローカル監視装置8に接続されている。なお、電気機器回路操作部13は各種操作信号を出力する。
【0029】
圧力状態監視装置6は、対応する圧力容器2C内のSF6 ガスについての検出圧力、検出温度、温度補償圧力をアナログ信号として第1アナログ信号伝送ライン4を介してアナログ系ローカル監視装置7に出力するとともに、検出圧力に基づく異常高圧警報、圧力上昇警報あるいは異常低圧警報などの信号をディジタルデータとして第1ディジタル信号伝送ライン5を介してディジタル系ローカル監視装置8に出力する。
【0030】
図2は圧力状態監視装置6の概要構成ブロック図である。
圧力状態監視装置6は、圧力容器2C内のSF6 ガスの気体圧力を検出して圧力電圧信号を出力する圧力検出部21と、圧力容器2C内のSF6 ガスの気体温度を検出して温度電圧信号を出力する温度検出部22と、各種データの設定や表示切替を行うための切替設定部23と、この圧力状態監視装置6全体を制御するコントロール部24とを備えている。また、警報、各種データ及び表示しているデータに対応する単位を表示する表示部25と、圧力上昇検出データ、異常高圧検出データあるいは異常低圧検出データを対応するディジタル系ローカル監視装置8に伝送するための警報出力部26と、対応するアナログ系ローカル監視装置7にアナログ信号を伝送するためのアナログ信号伝送部27とを備えている。さらに、図示しない外部の直流電源あるいは対応するローカル監視装置7,8と結線するための端子台28と、外部の直流電源の電圧を所定の内部電源電圧に降圧する絶縁型DC/DCコンバータ29と、図示しない電源スイッチあるいはリセットスイッチの手動操作によりコントロール部24の動作を初期化するためのリセット信号SRST を出力するリセット信号出力部30とを備えている。
【0031】
また、圧力容器2Cに接続された圧力導入管3の途中には、点検時等には閉状態とされ通常使用時においては常に開状態とされる常時開放型止め弁3Aが設けられ、圧力導入管3の端部には、一端が常時開放型止め弁3Aの他端に直列に接続され、他端がSF6 ガスの充排気口として解放状態とされている常時閉塞型止め弁3Bが設けられている。
【0032】
圧力検出部21は、常時開放型止め弁3Aと常時閉塞型止め弁3Bとの間でSF6 ガスの気体圧力を検出し原圧力検出信号SPOを出力する気体圧力検出センサ31と、原圧力検出信号SPOを電圧信号である原圧力電圧信号SVPO に変換して出力する圧力/電圧変換器(P/V変換器)32とを備えている。
【0033】
温度検出部22は、常時開放型止め弁3Aと常時閉塞型止め弁3Bとの間でSF6 ガスの気体温度を検出し原温度検出信号STOを出力する気体温度検出センサ33と、原温度検出信号STOを電圧信号である原温度電圧信号SVTO に変換して出力する温度/電圧変換器(T/V変換器)34とを備えている。
【0034】
切換設定部23は、表示切替を行うための表示切替スイッチ35と、設定切替を指定する設定切替スイッチ36と、各種設定を行うための設定部37と、異常圧力上昇率を検出するための各種設定値を入力設定する圧力上昇検出設定部38と、異常圧力上昇率検出時に手動(マニュアル)で復帰させるためのマニュアル復帰スイッチ39とを備えている。
【0035】
コントロール部24はマイクロコンピュータ等で構成されており、コントロール部24全体を制御するためのコントロールユニット40と、各種演算を行うための演算ユニット41と、各種比較を行うための比較ユニット42と、比較ユニット42における比較結果に基づいて各種判断を行う判断ユニット43と、入力されたアナログ信号のアナログ/ディジタル変換を行うA/D変換器44と、各種データを記憶するROM、RAM等で構成された記憶ユニット45と、複数のタイマを有し、タイマ割込みの割込み信号などを出力する計時ユニット46とを備えている。なお、コントロールユニット40、演算ユニット41、比較ユニット42および判断ユニット43の機能は、マイクロコンピュータを構成するCPUとこのCPUが実行する後述説明する制御プログラムにより実現されている。
【0036】
表示部25は、気体温度、気体圧力、標準温度20℃における気体圧力である温度補償圧力あるいは異常圧力上昇率等を数値表示する数値表示部50と、数値表示部50に表示された数値の単位を表示する単位表示部51と、警報出力時に当該出力している警報内容を表示する出力表示部52とを備えている。
【0037】
警報出力部26は、異常圧力上昇検出制御信号SSPに基づいて異常圧力上昇検出リレースイッチ53を駆動するための圧力上昇検出出力信号SCSP を出力する圧力上昇警報出力部54と、高圧側警報制御信号SHEに基づいて高圧側警報リレースイッチ55を駆動するための高圧側警報出力信号SCHE を出力する高圧側警報出力部56と、低圧側警報制御信号SLEに基づいて低圧側警報リレースイッチ57を駆動するための低圧側警報出力信号SCLE を出力する低圧側警報出力部58とを備えている。
【0038】
アナログ信号伝送部27は、後述の電圧/電流変換器(V/I変換器)62とコントロール部24とを電気的に絶縁した状態で温度補償圧力電圧信号SVCP0の伝送を行う光結合器61と、温度補償圧力電圧信号SVCP1を電流信号である温度補償圧力電流信号SACP に変換して出力する電圧/電流変換器62と、温度補償圧力電流信号SACP を4〜20[mA]の電流範囲を有する温度補償圧力伝送信号STACPとして出力する第1伝送信号出力部63とを備えている。また、原圧力電圧信号SVPO を増幅して増幅圧力電圧信号ASVP として出力する絶縁増幅器65と、増幅圧力電圧信号ASVP を電流信号である圧力電流信号SAPに変換して出力する電圧/電流変換器66と、圧力電流信号SAPを4〜20[mA]の電流範囲を有する圧力伝送信号STAP として出力する第2伝送信号出力部67とを備えている。さらに、原温度電圧信号SVTO を増幅して増幅温度電圧信号ASVT として出力する絶縁増幅器70と、増幅温度電圧信号ASVT を電流信号である温度電流信号SATに変換して出力する電圧/電流変換器71と、温度電流信号SATを4〜20[mA]の電流範囲を有する温度伝送信号STAT として出力する第3伝送信号出力部72とを備えている。
【0039】
この圧力状態監視装置6は主に次のような処理を行う。気体圧力を5msec でサンプリングしながら複数の圧力検出データを求め、20msec 毎に前記複数の圧力検出データから瞬時の異常上昇を検出し、200msec 毎に急な異常上昇を検出し、2sec 毎にゆっくりした異常上昇を検出し、20sec 毎に非常にゆっくりした異常上昇を検出する。そして、検出結果を圧力上昇警報出力部54を介してディジタル系ローカル監視装置8に出力するとともに、異常上昇の種類と警報を表示部25に表示する。なお、このような異常上昇と判定するための基準圧力上昇率は、短絡事故発生時や地絡事故発生時など各種想定される事故発生時の圧力上昇率に対応して決められており、上記4種類の異常上昇についてそれぞれ切替設定部23の圧力上昇検出設定部38で設定される。
【0040】
また、気体圧力と気体温度を検出して温度補償圧力を求め、この温度補償圧力から高圧異常や低圧異常を検出し、それぞれ高圧警報を高圧側警報出力部56を介してディジタル系ローカル監視装置8に出力し、低圧警報を低圧側警報出力部58を介してディジタル系ローカル監視装置8に出力する。なお、高圧異常や低圧異常と判定するための基準圧力は、切替設定部23の設定部37で設定される。また、検出した気体圧力、気体温度および温度補償圧力はそれぞれアナログ信号伝送部27を介してアナログ系ローカル監視装置7に出力するとともに表示部25に表示する。
【0041】
次に、圧力状態監視装置6で検出温度および検出圧力から温度補償圧力を求めるための定モル容積曲線について説明する。圧力状態監視装置6のコントロール部24における記憶ユニット45のROMには、SF6 ガスの高圧側管理限界の近傍から低圧側管理限界の近傍に亘る複数の圧力に対応する複数のモル容積についての複数の定モル容積曲線の係数が記憶されている。定モル容積曲線は一定モル容積Vにおけるガス圧力Pをガス温度tの関数で表したものであり、次式(1)で表される。なお、ガス圧力Pは後述の都合上、次式(1)においてはFi(t)としている。
【0042】
【数1】
式(1)において、ガス温度tに関して2次よりも大きい項の係数ai2,ai3,…が0のときは、1次式すなわち直線となる。
【0043】
一般に電気絶縁用気体を用いた場合、実在気体の状態方程式として、例えばビリアル型状態方程式のLeiden型を適用し、第2ビリアル係数B、第3ビリアル係数Cを選択し代入すれば、前記ビリアル型状態方程式はモル容積Vについての3次方程式となる。
ここで、所定の複数の温度補償圧力P20i と基準温度20℃とを順次代入していけば、前記ビリアル型状態方程式は「カルダノの公式」を用いて解法することができ、モル容積Vを求めることができる。すなわち、一定モル容積Vi の値が求まり、順次複数の一定モル容積Vi を求めて行くことになる。そして、順次複数の一定モル容積Vi をビリアル型状態方程式に逆代入すれば、式(1)を得ることができる。
この場合、第2ビリアル係数B、第3ビリアル係数Cはガス温度tに依存するので、式(1)はガス温度tに関する多項式になり、定モル容積曲線が得られることになる。
【0044】
特に電気絶縁用気体としてSF6 ガスを用いた場合、例えば Beattie-Bridgemanの式を適用すれば、前記 Beattie-Bridgemanの式はモル容積Vについての3次方程式となる。
ここで、所定の複数の温度補償圧力P20i 、基準温度20℃を代入すれば、前記 Beattie-Bridgemanの式は「カルダノの公式」を用いて解法することができ、モル容積Vを求めることができる。すなわち、一定モル容積Vi の値が求まり、順次複数の一定モル容積Vi を求めていくことになる。そして、順次複数の一定モル容積Vi を Beattie-Bridgemanの式に逆代入すれば、式(1)を得ることができる。
この場合、式(1)はガス温度tに関する1次式になり、定モル容積直線が得られることとなる。
【0045】
さらに地球温暖化ガス排出削減対策として、「複数の電気絶縁用気体を混合したガス」が用いられた場合、実在気体の状態方程式として、例えばビリアル型状態方程式のLeiden型を適用する。
二成分混合ガスの第2ビリアル係数B、第3ビリアル係数Cは、
B=B11χ1 2+2B12χ1χ2+B22χ2 2
C=C111χ1 3+3C112χ1 2χ2+3C122χ1χ2 2+C222χ2 3
で表される。式中のχ1 、χ2 は各成分のモル分率であり、B11、B22、C111 、C222 は純成分の係数であり、B12、C112 、C122 は混合系の相互作用(クロス)ビリアル係数である。
前記第2ビリアル係数B、前記第3ビリアル係数Cを選択し代入すれば、前記ビリアル型状態方程式はモル容積Vについての3次方程式となる。
ここで、所定の複数の温度補償圧力P20i と基準温度20℃とを順次代入していけば、前記ビリアル型状態方程式は「カルダノの公式」を用いて解法することができ、モル容積Vを求めることができる。すなわち、一定モル容積Vi の値が求まり、順次複数の一定モル容積Vi を求めていくことになる。そして、順次複数の一定モル容積Vi をビリアル型状態方程式に逆代入すれば、式(1)を得ることができる。
この場合、第2ビリアル係数B、第3ビリアル係数Cはガス温度tに依存するので、式(1)はガス温度tに関する多項式になり、定モル容積曲線が得られることとなる。
【0046】
上述した3次方程式の解法、逆代入演算を本実施形態のコントロール部24で処理することは非常に時間がかかるので、パーソナルコンピュータなどで予め演算した結果を記憶ユニット45に記憶させることになる。
【0047】
この実施例では、20℃のときのGISの圧力容器内の圧力がそれぞれ基準圧力0.20MPa(メガパスカル)、0.30MPa、0.40MPa、0.50MPa、0.60MPa、0.70MPa、および、0.80MPaとなるような7種類の定モル容積曲線の係数が記憶されている。なお、0.20MPaの定モル容積曲線が低圧側管理限界の近傍であり、0.80MPaの定モル容積曲線が高圧側管理限界の近傍である。図3は定モル容積曲線の係数を記憶した第1実施形態の係数テーブルを概念的に示す図であり、この第1実施形態では、インデックスi=1〜7にそれぞれ対応して基準圧力0.20MPa〜0.80MPaの各係数ai0,ai1,ai2,…が記憶されている。なお、以下の説明で、各基準圧力の係数のセットをi=1〜7に対応させてA(1) 〜A(7) で表す。
【0048】
なお、キュービクル型のGIS、すなわちC−GISにおいては、基準圧力0.00MPa、0.05MPa、0.10MPa、0.15MPa、0.20MPa、0.25MPa、0.30MPaとなるような7種類の定モル容積曲線の係数を記憶すれば良い。
また、GIS、あるいはC−GISにおいて、定モル容積曲線は7種類(7本)に限らず、4種類でも、16種類でも、演算精度、処理速度、記憶容量との兼ね合いで任意の種類が選定できることは言うまでもない。
さらに、定モル容積曲線でなく、定モル容積直線であるならば、各係数はai0、ai1が記憶されることになる。
【0049】
記憶ユニット45のRAMには、前式(1)に基づいて演算を行う際に係数ai0,ai1,…を参照するための2組のレジスタ群[Ad ],[Au ]が2本の定モル容積曲線に対応してそれぞれ設定されており、後述説明するように選択した2つの定モル容積曲線の係数をこの2組のレジスタ群[Ad ],[Au ]にそれぞれセット(格納)する。これにより2本の定モル容積曲線が選択されたことになる。また、演算ユニット41は前式(1)に対応する演算プログラムにより上記レジスタ群[Ad ],[Au ]を参照して検出温度に対応する圧力を演算する。そして、これらの演算結果および各曲線に対応する基準圧力および検出圧力から温度補償圧力P20が演算される。すなわち、検出圧力Ptが温度補償圧力P20に換算される。
【0050】
図4は複数本(この実施形態では7本)の定モル容積曲線から選択した2本の定モル容積曲線に基づいて、検出温度tおよび検出圧力Ptから温度補償圧力P20を求める方法を説明する図である。定モル容積曲線は前式(1)のように温度の関数であり、図示のように基準圧力が高い方の定モル容積曲線の関数をFu(t)、基準圧力が低い方の定モル容積曲線の関数をFd(t)とする。
【0051】
各定モル容積曲線上の検出温度tに対応する圧力はそれぞれFu(t),Fd(t)として求められ、また、基準温度(20℃)に対応する圧力はそれぞれFu(20) ,Fd(20) として求められる。なお、Fu(20) ,Fd(20) の値は各定モル容積曲線毎に既知であり、計算で求めなくてもよい。検出圧力Ptと検出温度tの交点を通る仮想的な定モル容積曲線F′(t) として、Fu(t)とFd(t)との間を補間したものを想定すると、この仮想的な定モル容積曲線F′(t)上の基準温度(20℃)に対応する圧力を検出圧力Ptに対する温度補償圧力P20とみなすことができる。
【0052】
すなわち、温度補償圧力P20は次式(2)のように比例配分により求めることができる。
【数2】
【0053】
なお、図4の例では2本の定モル容積曲線の検出温度tにおける両圧力の範囲内に検出圧力Ptがある場合(内挿の場合)を示しているが、上記両圧力の範囲外に検出圧力Ptがある場合(外挿の場合)にも上式(2)で同様に求めることができる。
【0054】
この実施形態では、2本の定モル容積曲線Fu(t)とFd(t)は、初期状態では基準圧力0.80MPaと0.20MPaに対応するものであり、1回目はこの定モル容積曲線により温度補償圧力P20を求める。その後、2回目以降に温度補償圧力P20を求めるときは、前回の温度補償圧力P20を挟む隣接する2本の定モル容積曲線とする。
【0055】
図5〜図9はコントロール部24のマイクロコンピュータを構成するCPUの制御プログラムのフローチャートであり、図5はメインルーチンのフローチャート、図7は割込み処理のフローチャート、図6,図8,図9は各種サブルーチンのフローチャートである。以下、同フローチャートに基づいて動作を説明する。なお、以下の説明および各フローチャートにおいて、制御に用いられる各レジスタおよびフラグを下記のラベルで表記し、各レジスタおよびフラグとそれらの記憶内容は特に断らない限り同一のラベルで表す。
【0056】
A(i) :i番目の基準圧力に対応する定モル容積曲線の係数の組が格納された係数テーブルのレジスタ
[Ad ]:選択された2本の定モル容積曲線のうちの基準圧力が低い方の係数組を格納するレジスタ群
[Au ]:選択された2本の定モル容積曲線のうちの基準圧力が高い方の係数組を格納するレジスタ群
Pt :検出圧力のレジスタ
RB1:検出圧力を格納するリングバッファの最も古いデータが格納されたレジスタ
RB2:検出圧力を格納するリングバッファの2番目に古いデータが格納されたレジスタ
RB3:検出圧力を格納するリングバッファの3番目に古いデータが格納されたレジスタ
RB4:検出圧力を格納するリングバッファの4番目に古いデータが格納されたレジスタ
RB5:検出圧力を格納するリングバッファの最新のデータが格納されたレジスタ
【0057】
p1o:200msec 毎に圧力上昇率を検出するための旧の圧力データを待避するレジスタ
p2o:2sec 毎に圧力上昇率を検出するための旧の圧力データを待避するレジスタ
p3o:20sec 毎に圧力上昇率を検出するための旧の圧力データを待避するレジスタ
p1n:200msec 毎に圧力上昇率を検出するための新の圧力データを待避するレジスタ
p2n:2sec 毎に圧力上昇率を検出するための新の圧力データを待避するレジスタ
p3n:20sec 毎に圧力上昇率を検出するための新の圧力データを待避するレジスタ
t:検出温度のレジスタ
P20:温度補償圧力のレジスタ
i:定モル容積曲線の順番を示すレジスタ
P20,i :i番目の定モル容積曲線における基準温度に対応する基準圧力のレジスタ
ct20m :5msec の割込み処理で20msec を計時するためのカウンタレジスタ
ct1 :5msec の割込み処理で200msec を計時するためのカウンタレジスタ
ct2 :5msec の割込み処理で2sec を計時するためのカウンタレジスタ
ct3 :5msec の割込み処理で20sec を計時するためのカウンタレジスタ
S1 :200msec 経過したことを示すフラグ
S2:2sec 経過したことを示すフラグ
S3:20sec 経過したことを示すフラグ
a:200msec ,2sec ,20sec の圧力上昇率を演算する際の処理時刻を順次5msec づつ遅延させるためのフラグ
【0058】
電源の投入等によってCPUが図5のメインルーチンの処理を開始すると、先ず、ステップS1で各フラグおよび各レジスタのリセット、セット等の初期設定、あるいは圧力状態監視装置6の各部を起動するなどの初期化処理を行う。なお、この初期化処理が終了すると、圧力検出部21から出力される原圧力電圧信号に基づいて、アナログ信号伝送部27の絶縁増幅器65、電圧/電流変換器66および第2伝送信号出力部67により、4〜20[mA]の電流範囲を有する圧力伝送信号が形成され、端子板28および第1アナログ信号伝送ライン4を介してアナログ系ローカル監視装置7に出力される。また、原温度電圧信号に基づいて、アナログ信号伝送部27の絶縁増幅器70、電圧/電流変換器71および第3伝送信号出力部72により、4〜20[mA]の電流範囲を有する温度伝送信号が形成され、端子板28及び第1アナログ信号伝送ライン4を介してアナログ系ローカル監視装置7に出力される。
【0059】
これらの結果、アナログ系ローカル監視装置7には、圧力伝送信号及び温度伝送信号が伝達されることとなり、アナログ系ローカル監視装置7は、これらの信号を仲介して第1中央監視装置10に伝送することとなる。これにより第1中央監視装置10は、圧力伝送信号、温度伝送信号に基づいて信号処理を行い、必要に応じて送電を中止したり、監視者への通報を行うこととなる。すなわち、監視者は予防保全の対処が可能となる。
以下、同様にして、アナログ系ローカル監視装置7及び第1中央監視装置10は、後述するディジタル系ローカル監視装置8及び第2中央監視装置12の動作と並行して監視動作を継続することとなる。
【0060】
ステップS1の初期化処理が終了すると、ステップS2で計時ユニット46の10分計時用の10分タイマを起動し、ステップS3で計時ユニット46の5msec 計時用の5msec タイマをスタートさせてタイマ割込みを起動する。これにより、5msec タイマから5msec 毎に出力される割込み信号によりCPUは後述説明する図7の割込み処理を行う。
【0061】
次に、CPUは、ステップS4で、ROMの係数テーブルに記憶されている基準圧力0.20MPaの定モル容積曲線の係数組A(1) をレジスタ群[Ad ]にセットするとともに、基準圧力0.80MPaの定モル容積曲線の係数組A(7) をレジスタ群[Au ]にセットし、温度補償圧力の演算に用いる2本の定モル容積曲線として低圧側管理限界の近傍と高圧側管理限界の近傍の曲線を選択する。さらに、これにより選択した2本の定モル容積曲線が初期状態として設定されたものであることを示す初期曲線フラグをセットする。
【0062】
次に、ステップS5でA/D変換器44から気体温度t(検出温度)のデータを読み込み、ステップS6で気体温度tが−20℃〜60℃の範囲内であるか否かを判定する。−20℃〜60℃の範囲内でなければ、ステップS7で温度センサ異常のデータを出力して表示し、高圧側警報出力処理を行い、ステップS7′で5msec タイマの割込みを禁止して、待機(Wait)する。これにより、気体温度が異常な場合に警報が発せられるとともに、割込み処理が中断され、復旧後のキー入力等があるまで待機する。なお、復旧後のキー入力に対応する処理はメインルーチンに復帰する強制的な割込み処理であり、詳細な説明は省略する。また、−20℃〜60℃の範囲内であれば、ステップS8で図6の温度補償圧力演算処理を行い、ステップS9で温度補償圧力演算処理の結果に基づく圧力異常判定処理と温度補償圧力P20の表示を行い、温度補償圧力伝送信号を伝送する。そして、ステップS10で設定部の操作に対応する処理や表示の制御などその他の処理を行ってステップS5に戻る。このように、ステップS5〜ステップS10を繰り返す中で、5msec タイマからの割込み信号により5msec 毎に図7の割込み処理を行う。
【0063】
図7の割込み処理では、先ず、ステップS11で次の割込み処理のために5msec タイマをリスタートし、ステップS12でA/D変換器44の出力から気体圧力Pt(検出圧力)のデータを読み込み、ステップS13で10分タイマに基づいて電源が投入されてから10分が経過したか否かを判定する。これは電源が投入されてから10分間は、GISの圧力容器内の状態が非定常状態にある可能性が高いため、誤って圧力上昇を検出しないようにするための処理である。そして、10分が経過していないときは、ステップS14で、気体圧力Ptをレジスタp1o,p2o,p3oにそれぞれセットして元のルーチンに復帰する。なお、このレジスタp1o,p2o,p3oにセットされたデータは、10分が経過した段階では10分経過直前の各々200msec 前、2sec 前、20sec 前の気体圧力を待避したものとなり、後述説明する圧力上昇率の検出時の旧データとして初回だけ用いるものである。
【0064】
ステップS13で10分が経過していると、ステップS15で気体圧力Ptが−0.101MPa〜1.000MPaの範囲内であるか否かを判定し、範囲外であればステップS16で圧力センサ異常のデータを出力して表示し、高圧側警報出力処理を行い、ステップS16′で5msec タイマの割込みを禁止して、待機(Wait)する。これにより、気体圧力が異常な場合に警報が発せられるとともに、割込み処理が中断され、復旧後のキー入力等があるまで待機する。なお、復旧後のキー入力に対応する処理はメインルーチンに復帰する強制的な割込み処理であり、詳細な説明は省略する。
【0065】
ステップS15で気体圧力Ptが範囲内であれば、ステップS17で気体圧力Ptをリングバッファに書き込み、ステップS18に進む。なお、リングバッファは気体圧力Ptを書き込むレジスタを少なくとも5つ備えたものであり、1回の書込み動作毎に書込みポインタを更新し、時系列なデータを書き込む。なお、この説明では、RB1で最も古いデータ、RB2で2番目に古いデータ、RB3で3番目に古いデータ、RB4で4番目に古いデータ、および、RB5で最新のデータを示す。
【0066】
次に、ステップS18では、「ct20m =3」であるか否かすなわちカウンタレジスタct20m の値が“3”であるか否かを判定し、「ct20m =3」でなければステップS19でct20m を“1”インクリメントしてステップS103に進み、「ct20m =3」であればステップS101で図8の圧力上昇率検出処理(I) を行い、ステップS102でct20m をリセットしてステップS103に進む。すなわちカウンタレジスタct20m は初期設定で“0”にリセットされており、ステップS18の判定、ステップS19のインクリメントの処理およびステップS102のリセット処理により、ステップS101,ステップS102の処理は20msec (5msec ×4)毎に実行されることになる。そして、ステップS103では後述説明する図9の圧力上昇率検出処理(II)を行って元のルーチンに復帰する。すなわち、ステップS103は5msec 毎に処理され、ステップS101の圧力上昇率検出処理(I) の結果を受けて200msec 毎、2sec 毎および20sec 毎の圧力上昇率の演算と判定を、5msec づつ遅延させて実行する。なお、以上の割込み処理が5msec 毎に繰り返されることにより気体圧力が5msec のサンプリング周期でサンプリングされる。
【0067】
図8の圧力上昇率検出処理(I) では、ステップS21でリングバッファの検出圧力RB1,RB2,RB3,RB4,RB5から圧力上昇率を計算し、その計算結果に基づいて瞬時の異常上昇を検出する判定処理を行い、判定結果に基づく警報出力処理を行う。そして、200msec 計時用のカウンタレジスタct1 を“1”インクリメントしてステップS22に進む。なお、上記圧力上昇率の計算は、例えば、5つの検出圧力RB1,RB2,RB3,RB4,RB5のうちの最小値と最大値を求め、その両検出圧力のサンプリング時間差(5msec または10msec または15msec または20msec )で最大値と最小値の差分を割り算することにより求めるとよい。また、判定処理は所定の基準圧力上昇率との比較により判定する。なお、ステップS21の計算において、レジスタRB1が最も古いデータであり、レジスタRB5が最新のデータである。言うまでもないが、後述する図10のタイミングの例において、レジスタRB5のデータは5msec 毎に、時系列的に順次リングバッファに書き込まれ、次回のステップS21の計算では、レジスタRB1に格納され、レジスタRB5には20msec 経過した時点での最新のデータが格納される。
【0068】
このように、ステップS21により20msec 毎の瞬時の異常上昇の検出動作が行われるが、次のステップS22以降で、200msec 毎の急な異常上昇、2sec 毎のゆっくりした異常上昇、20sec 毎の非常にゆっくりした異常上昇をそれぞれ検出するために、カウンタレジスタct1 ,ct2 ,ct3 を用いて各時間間隔に対応するようにタイミングを制御して各検出圧力を取り込む。
【0069】
すなわち、ステップS22では、「ct1 =10」であるか否か(カウンタレジスタct1 の値が“10”であるか否か)を判定し、「ct1 =10」でなければ元のルーチン(割込み処理)に復帰する。一方、「ct1 =10」であれば、ステップS23でct1 をリセットするとともに200msec が経過したことを示すフラグS1 をセットし、検出圧力RB5をレジスタp1nにセットし、さらに、2sec 計時用のカウンタレジスタct2 を“1”インクリメントしてステップS24に進む。すなわち、カウンタレジスタct1 は初期設定で“0”にリセットされており、20msec 経過する毎にステップS21でインクリメントされるので、ステップS22の判定によりステップS23の処理が200msec (20msec ×10)毎に実行されることになる。
【0070】
ステップS24では、「ct2 =10」であるか否かを判定し、「ct2 =10」でなければ元のルーチンに復帰し、「ct2 =10」であれば、ステップS25に進む。ステップS25では、ct2 をリセットするとともに2sec が経過したことを示すフラグS2 をセットし、検出圧力RB5をレジスタp2nにセットし、さらに、20sec 計時用のカウンタレジスタct3 を“1”インクリメントしてステップS26に進む。すなわち、カウンタレジスタct2 は初期設定で“0”にリセットされており、200msec 経過する毎にステップS23でインクリメントされるので、ステップS24の判定によりステップS25の処理が2sec (200msec ×10)毎に実行される。
【0071】
ステップS26では、「ct3 =10」であるか否かを判定し、「ct3 =10」でなければ元のルーチンに復帰し、「ct3 =10」であれば、ステップS27に進む。ステップS27では、ct3 をリセットするとともに20sec が経過したことを示すフラグS3 をセットするとともに検出圧力RB5をレジスタp3nにセットし元のルーチンに復帰する。すなわち、カウンタレジスタct3 は初期設定で“0”にリセットされており、2sec 経過する毎にステップS25でインクリメントされるので、ステップS26の判定によりステップS27の処理は20sec (2sec ×10)毎に実行される。
【0072】
図9の圧力上昇率検出処理(II)は、圧力上昇率検出処理(I) においてレジスタp1n,p2n,p3nにセットされた検出圧力RB5から、200msec 毎の急な異常上昇を検出するための圧力上昇率(以後、「200msec 幅圧力上昇率」という。)、2sec 毎のゆっくりした異常上昇を検出するための圧力上昇率(以後、「2sec 幅圧力上昇率」という。)、20sec 毎の非常にゆっくりした異常上昇を検出するための圧力上昇率(「以後、「20sec 幅圧力上昇率」という。)を演算する処理を行う。
【0073】
ここで、200msec 、2sec 、20sec を計時するためのカウントは同じ5msec の割込み処理を基にしているので、圧力上昇率検出処理(I) (図8)においてステップS23,ステップS25,ステップS27の処理が互いに同一割込みタイミング(5msec 、200msec 、2sec 、20sec の公倍数のタイミング)で処理されることがある。このとき、レジスタp1n,p2n,p3nに検出圧力RB5をセットした時点で各圧力上昇率を演算すると、ステップS21の20msec 毎の圧力上昇率の他に200msec 幅圧力上昇率、2sec 幅圧力上昇率、20sec 幅圧力上昇率の最大で4種類の演算を同一の割込みタイミングにおいて行うことになり、一回の割込み処理に手間を要する。
【0074】
そこで、圧力上昇率検出処理(II)では、5msec の一回の割込み処理ではせいぜい1種類の圧力上昇率の演算を行うように、4種類の圧力上昇率を演算するタイミングを5msec づつシフトする。先ず、ステップS31で200msec のタイミングを示すフラグS1 がセットされているか否か判定する。セットされていなければステップS34に進み、セットされていればステップS32で「a=1」であるか否かを判定する。ここで、フラグaは初期設定で“0”にリセットされており、5msec を一回パスする毎にこのフローのステップS301で“1”にセットされ、“1”にセットされていることで、ステップS33、ステップS36、ステップS39の各処理を行う。
【0075】
「a=1」でなければ、ステップS301でフラグaを“1”にセットして元のルーチンに復帰する。「a=1」であれば、ステップS33で新旧の検出圧力p1n,p1oから200msec 幅圧力上昇率を計算し、その計算結果に基づいて急な異常上昇を検出する判定処理を行い、判定結果に基づく警報出力処理を行う。また、次回の演算のために最新の検出圧力p1nを旧の検出圧力としてp1oに格納し、フラグS1をリセットする。そして、2sec の処理をパスするためにフラグaを“0”にリセットしてステップS34に進む。
【0076】
以下各ステップについての詳細な説明は省略するが、フローチャートからわかるように、ステップS34〜ステップS36は2sec 幅圧力上昇率についての計算等の処理を、また、ステップS37〜ステップS39は20sec 幅圧力上昇率についての計算等の処理を、それぞれ200msec 幅圧力上昇率の計算等と同様な制御で行うものである。
【0077】
以上の処理により、例えば20sec のタイミングとなったときは、20msec 、200msec および2sec のタイミングでもあり、先ず図8のステップS21で20msec の処理が行われ、このときの割込み処理では図9のステップS32からステップS301を経て元のルーチンに復帰し、200msec 、2sec および20sec の処理はパスされる。次の割込み処理(図7)では、ステップS18→ステップS19→ステップS103となり、図9のステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS34→ステップS35→ステップS301となって元のルーチンに復帰し、200msec の処理だけが行われる。同様に、その次の割込み処理では2sec の処理だけが行われ、さらに次の割込み処理では20sec の処理だけが行われる。
【0078】
図10は上記各圧力上昇率の処理のタイミングの一例を示す図であり、5msec 毎にサンプリングした検出圧力RB1,RB2,RB3,RB4,RB5から、時刻t0において20msec の演算処理Aが行われ、次の5msec 後にp1o,p1nから200msec の演算処理Bが行われる。また、その次の5msec 後にp2o,p2nから2sec の演算処理Cが行われ、その次の5msec 後にp3o,p3nから20sec の演算処理Dが行われる。このように、5msec ずつ処理がシフトしているので、1回の割込み処理を短時間で終了することができる。すなわち、その他の機能を余裕を持って実行でき、各機能の信頼性が高まる。
【0079】
次に、図6の温度補償圧力演算処理について説明する。先ず、ステップS41でA/D変換器44の出力から気体圧力Ptのデータを読み込み、ステップS42で、選択されている2本の定モル容積曲線とステップS5(図5)で読み込んだ検出温度tからFd(t),Fu(t)を計算するとともに、選択されている2本の定モル容積曲線における20℃に対応する基準圧力Fd(20),Fu(20)を計算する。次に、ステップS43で、気体圧力Pt、Fd(t)、Fu(t)、Fd(20),Fu(20)から、前掲の式(2)に基づいて気体圧力Ptに対応する温度補償圧力P20を計算する。
【0080】
次に、ステップS44で初期曲線フラグがリセットされているか否かを判定し、リセットされていなければ1回目の処理であるので、ステップS45で、P20,i ≦P20≦P20,i+1 となるi、すなわち計算結果の温度補償圧力P20を挟む基準圧力を有する2本の定モル容積曲線の小さい方の番号iを求め、ステップS46で初期曲線フラグをリセットしてステップS401に進む。これにより、次回の演算で用いる定モル容積曲線の番号が求められる。
【0081】
ステップS44で初期曲線フラグがリセットされていれば、2回目以降の処理であるので、ステップS47で、「Fd(20) ≦P20≦Fu(20) 」であるか否か、すなわち計算結果の温度補償圧力P20が現在選択されている2本の定モル容積曲線の基準圧力の範囲内にあるか否かを判定し、範囲内であれば定モル容積曲線を更新する必要がないのでそのまま元のルーチンに復帰する。一方、範囲外であれば、ステップS48で、「0.20MPa≦P20≦0.80MPa」であるか否か、すなわち計算結果の温度補償圧力P20が低圧側管理限界の近傍と高圧側管理限界の近傍の範囲内であるか否かを判定する。範囲外であれば温度補償圧力P20を挟むような2本の定モル容積曲線が存在しないので、起動時の1回目の温度補償圧力P20の計算を再び行う。すなわちステップS49でメインルーチンのステップS4と同じように、ROMの係数テーブルに記憶されている基準圧力0.20MPaの定モル容積曲線の係数組A(1) をレジスタ群[Ad ]にセットするとともに、基準圧力0.80MPaの定モル容積曲線の係数組A(7) をレジスタ群[Au ]にセットし、温度補償圧力の演算に用いる2本の定モル容積曲線として低圧側管理限界の近傍と高圧側管理限界の近傍の曲線を選択する。さらに、これにより選択した2本の定モル容積曲線が初期状態として設定されたものであることを示す初期曲線フラグをセットし、元のルーチンに復帰する。
【0082】
一方、温度補償圧力P20が低圧側管理限界の近傍と高圧側管理限界の近傍の範囲内であれば、ステップS45に進み、次にステップS46に進み、さらにステップS401に進む。ステップS45とステップS46との処理は上述したように行われる。そして、ステップS401では、係数テーブルの係数組A(i) をレジスタ群[Ad ]にセットするとともに、係数組A(i+1) をレジスタ群[Au ]にセットし、元のルーチンに復帰する。これにより、検出結果の温度補償圧力P20を挟む隣接する2本の定モル容積曲線が選択される。
【0083】
なお、ステップS45で、P20,i ≦P20≦P20,i+1 となるiを求めるとき、P20と各定モル容積曲線の各基準圧力とを比較することにより求めることができるが、例えば、図11のような処理にすると、初回以外は各基準圧力との比較を行わなくてもよい。なお、図11で図6と同じステップには同符号を付記してある。この図11の処理では、2回目以降の処理でステップS47′以降に進み、ステップS47′で、温度補償圧力P20が現在選択されている2本の定モル容積曲線の基準圧力の範囲よりも低圧側に外れているかを判定し、外れていればステップS47″でiをデクリメントする。また、低圧側に外れていなければ、ステップS48′で、温度補償圧力P20が現在選択されている2本の定モル容積曲線の基準圧力の範囲よりも高圧側に外れているかを判定し、外れていればステップS48″でiをインクリメントする。これにより、ステップS401で2本の定モル容積曲線を選択することができる。ここで、ステップS47′の判定で低圧側に外れているか、または、ステップS48′の判定で高圧側に外れている場合、ステップS48に進む。ステップS48で、「0.20MPa≦P20≦0.80MPa」であるか否か、すなわち計算結果の温度補償圧力P20が低圧側管理限界の近傍と高圧側管理限界の近傍の範囲内であるか否かを判定する。範囲内であれば、元のルーチンに復帰する。範囲外であれば温度補償圧力P20を挟むような2本の定モル容積曲線が存在しないので、起動時の1回目の温度補償圧力P20の計算を再び行う。すなわち、ステップS49でメインルーチンのステップS4と同じ処理をし、元のルーチンに復帰する。なお、通常の場合、温度補償圧力P20が範囲を外れるときはせいぜい1本の定モル容積曲線を越える程度であるので、このような処理で選択した2本の定モル容積曲線も、温度補償圧力P20を挟むものとなる。
図6、図11のステップS41の処理は、図7のステップS12によりレジスタRB5に最新の検出圧力データが格納されているので、省略してもよい。その方がA/D変換処理に要する時間が不要となり、処理時間が短縮する。
また、図6、図11のステップS48ならびにステップS49の処理は、温度補償圧力P20の演算エラー、温度センサーの異常、圧力センサーの異常に対する処理であり、図5のステップS6、ステップS7、図7のステップS15、ステップS16の処理を補助的に補う処理である。
【0084】
図12は折れ線近似した定モル容積曲線を用いた実施形態を説明する図であり、検出温度の検出下限温度tdと検出上限温度tuの範囲内を複数の区間j(j=1,2,…)に分ける。そして、前記実施形態と同様に番号i(i=1,2,…,7)で区別される複数の定モル容積曲線の各々について各区間を直線で近似した折れ線近似の曲線を使う。なお、任意の定モル容積曲線iにおける任意の区間jの直線をFLi,jで表す。そして、図13に示したように、この温度−圧力座標系における各直線FLi,jの傾きαi,j と切片βi,j のデータを、各区間番号jに対応させてROMに記憶しておく。また、図13に示したように、各区間の温度の下限値(td =t1 )と上限値(tu =tj+1 )のデータも区間番号j(j=1、2、…、m、…、j+1)に対応してROMに記憶しておく。
【0085】
以上の構成により、次のように、温度補償圧力P20を求める。前記の実施形態と同様に選択した2本の定モル容積曲線のおのおのから、検出温度tが含まれる区間に相当する2本の定モル容積曲線を折れ線近似した各々2本の直線を検出する。検出温度tの直線と2本の定モル容積曲線を折れ線近似した各々2本の直線の各々の交点の圧力を求め、この圧力を2本の定モル容積曲線における検出温度tに対応する圧力Fu(t),Fd(t)とみなす。また、同様に、2本の定モル容積曲線のおのおのから、20℃が含まれる区間に相当する2本の定モル容積曲線を折れ線近似した各々2本の直線を検出し、その2本の定モル容積曲線を折れ線近似した各々2本の直線と20℃の直線との交点の圧力を求め、この圧力を2本の定モル容積曲線における基準圧力Fu(20) ,Fd(20) とみなす。そして、検出圧力Ptと上記のFu(t)、Fd(t)、Fu(20) およびFd(20) から、前掲の式(2)を用いて比例配分により温度補償圧力P20を求める。
【0086】
この実施形態によれば、各圧力を求めるときに直線の交点を求めるだけでよいので計算が簡単になり、処理が速やかに行われる。
【0087】
以上の実施形態では、GIL(ガス絶縁送電線)の管内ガスの圧力状態を監視する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ガス絶縁開閉装置(GIS)、ガス絶縁変圧器のガスの圧力状態を監視する場合にも適用できることはいうまでもない。また、電気絶縁用気体として六フッ化イオウガス(SF6 ガス)の場合について説明したが、「複数の電気絶縁用気体を混合したガス」、「SF6 代替ガス」、その他の気体に適用できることはいうまでもない。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、2回目以降の温度補償圧力の算出時には前回の温度補償圧力の算出の結果得られた温度補償圧力の値を挟む隣接2本の定モル容積曲線が選択されるので、温度補償圧力に変化が少ないときは殆どの場合、前回と同じ2本の定モル容積曲線を用いることになるので、定モル容積曲線の選択に時間がかからず、処理時間が短縮する。また、定モル容積曲線を選択し直す場合でも、前回の2本の近傍の定モル容積曲線を選択すればよい場合が殆どであり、処理時間が短縮する。
【0089】
また、本発明の請求項2記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1の作用効果に加えて、最初の温度補償圧力の算出は、2本の定モル容積曲線の間の内挿により算出するので、初回の演算結果としてほぼ平均的な精度が得られる。
【0090】
また、本発明の請求項3記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1または請求項2の作用効果に加えて、定モル容積曲線を折れ線近似しているので温度補償圧力の演算に直線の式を用いればよく処理時間がさらに短縮する。
【0091】
また、本発明の請求項4記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1または請求項2の作用効果に加えて、定モル容積曲線を選択するときその係数を記憶手段から読み出すだけでよい。
【0092】
また、本発明の請求項5記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項3の作用効果に加えて、定モル容積曲線の折れ線近似の直線を選択するときその係数を記憶手段から読み出すだけでよい。
【0093】
また、本発明の請求項6記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の作用効果に加えて、一般の電気絶縁用ガスに、あるいは複数の電気絶縁用ガスを混合した場合に適用できる。
【0094】
また、本発明の請求項7記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の作用効果に加えて、電気的絶縁性に優れたSF6 ガスの場合に適用できる。
【0095】
また、本発明の請求項8記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、第1の定モル容積曲線と第2の定モル容積曲線の前記検出温度におけるそれぞれの圧力と検出圧力から内挿または外挿により温度補償圧力を算出するとき、比例配分で算出するので、演算が簡単になる。
【0096】
また、本発明の請求項9記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置によれば、請求項8の作用効果に加えて、外挿により温度補償圧力を算出する場合でも、第1の定モル容積曲線または第2の定モル容積曲線の近傍になるので、精度の高い演算結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るSF6 ガスの圧力状態監視システムの概要構成図である。
【図2】本発明の実施形態における圧力状態監視装置の概要構成ブロック図である。
【図3】本発明の定モル容積曲線の係数を記憶した実施形態の係数テーブルを概念的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態における2本の定モル容積曲線に基づいて検出温度および検出圧力から温度補償圧力を求める方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態におけるメインルーチンのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態における温度補償圧力演算処理のフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態における割込み処理のフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態における圧力上昇率検出処理(I) のフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態における圧力上昇率検出処理(II)のフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態における圧力上昇率の処理のタイミングの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態における温度補償圧力演算処理の別の例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の折れ線近似した定モル容積曲線を用いた実施形態を説明する図である。
【図13】本発明の折れ線近似した定モル容積曲線を用いた実施形態における各直線の傾きと切片と区間分けした温度のデータを記憶したテーブルを概念的に示す図である。
【符号の説明】
1 SF6 ガスの圧力状態監視システム
2C 圧力容器
3 圧力導入管
6 圧力状態監視装置
21 圧力検出部
22 温度検出部
24 コントロール部
40 コントロールユニット
41 演算ユニット
42 比較ユニット
43 判断ユニット
44 A/D変換器
45 記憶ユニット
Claims (9)
- 圧力容器内に密封された電気絶縁用気体の検出圧力と検出温度に基づいて所定の基準温度における圧力である温度補償圧力を算出し、該温度補償圧力に基づいて前記電気絶縁用気体の圧力を監視する電気絶縁用気体の圧力状態監視装置において、
前記電気絶縁用気体の高圧側管理限界の近傍から低圧側管理限界の近傍に亘る複数の圧力に対応する複数のモル容積についての複数の定モル容積曲線を用い、前記検出温度に相当する温度データ、前記検出圧力に相当する圧力データ、前記複数の定モル容積曲線のうちの2本の定モル容積曲線から前記温度補償圧力を算出する工程を備え、
当該圧力状態監視装置の起動時の1回目の温度補償圧力の算出に用いる2本の定モル容積曲線として、予め設定された定モル容積曲線を用い、2回目以降の温度補償圧力の算出に用いる2本の定モル容積曲線として、前回の温度補償圧力の算出の結果得られた温度補償圧力の値を挟む隣接2本の定モル容積曲線を選択していくようにしたことを特徴とする電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。 - 前記1回目の温度補償圧力の算出に用いる2本の予め設定された定モル容積曲線が、前記高圧側管理限界の近傍の曲線と前記低圧側管理限界の近傍の曲線であることを特徴とする請求項1記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。
- 前記定モル容積曲線は、前記検出温度の検出下限温度と検出上限温度の範囲内で複数区間に分けて各区間の中の定モル容積曲線を直線とみなして折れ線近似されたものであり、該折れ線近似の直線に基づく比例配分演算を行って前記温度補償圧力を算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。
- 前記温度補償圧力の算出をマイクロコンピュータで行い、該マイクロコンピュータの記憶手段に前記定モル容積曲線の係数が記憶されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。
- 前記温度補償圧力の算出をマイクロコンピュータで行い、該マイクロコンピュータの記憶手段に前記定モル容積曲線の折れ線近似の直線の係数が記憶されていることを特徴とする請求項3記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。
- 前記定モル容積曲線は予めビリアル型状態方程式を用いて解法して求めたものであることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。
- 前記定モル容積曲線は予めBeattie−Bridgemanの式を用いて解法して求めたものであることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。
- 圧力容器内に密封された電気絶縁用気体の検出圧力と検出温度に基づいて所定の基準温度における圧力である温度補償圧力を算出し、該温度補償圧力に基づいて前記電気絶縁用気体の圧力を監視する電気絶縁用気体の圧力状態監視装置において、
前記電気絶縁用気体の第1の圧力と第2の圧力に対応する異なるモル容積についての第1の定モル容積曲線と第2の定モル容積曲線の2本を用い、
前記検出温度に相当する温度データ、前記検出圧力に相当する圧力データ、前記第1の定モル容積曲線、および前記第2の定モル容積曲線から、比例配分により前記温度補償圧力を算出することを特徴とする電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。 - 前記温度補償圧力を算出する前記検出圧力の範囲は、前記検出温度の直線と交差する前記第1の定モル容積曲線上の第1の圧力の近傍の圧力値から、前記検出温度の直線と交差する前記第2の定モル容積曲線上の第2の圧力の近傍の圧力値の範囲内にあることを特徴とする請求項8記載の電気絶縁用気体の圧力状態監視装置。
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