JP3729454B2 - 銅合金およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コネクタ材等に使用する銅合金に関するものであり、特に、優れた曲げ性と強度とを同時に実現した銅合金の製造技術を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
チタンを含有する銅合金(以下、「チタン銅」と称する)は、コネクタ材等に使用され、近年その需要は益々増大の傾向にある。この傾向に対処すべく、チタン銅の析出硬化に関する研究開発が種々行われている。従来の銅合金には、チタン銅にNiおよびAlを添加するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、チタン銅にAlおよびMgを添加したものもある(例えば、特許文献2参照)。さらに、チタン銅にSn、NiおよびCoを添加したものもある(例えば、特許文献3参照)。近年においては、チタン銅にCr、Zr、NiおよびFeを添加する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、結晶粒の微細化に関する技術も開示されている(例えば、特許文献5参照)。さらに、チタン銅にZn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、PおよびSiを添加する技術も提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭48−102645号公報
【特許文献2】
特開昭49−16813号公報
【特許文献3】
特開昭60−62046号公報
【特許文献4】
特開平4−309748号公報
【特許文献5】
特開2000−126945号公報
【特許文献6】
特開2002−31219号公報
【0004】
チタン銅は、溶体化処理によって過飽和固溶体を形成させ、その状態から低温時効を施すと、準安定相である変調構造が発達し、その発達段階の或る時期において著しく硬化する。これが発達し過ぎるといわゆる過時効の状態となり、最終的には安定相であるTiCu 3 が析出し、この相が増えると逆に軟化してしまう。この一連の時効過程において、高い強度を示す変調構造は、不安定な過飽和固溶体から起こり得る変化であり、安定相であるTiCu 3 相から準安定相である変調構造へは変化し得ない。一方、溶体化処理が不十分だった場合、母相中に固溶仕切れなかったチタンは、TiCu 3 として析出したままの状態で残ることになる。よって時効での硬化を最大限に引き出すには、その前工程の溶体化処理でTiCu 3 相を完全に無くす、言い換えればチタンを完全に母相中に固溶させる必要があり、そのためには、チタンの固溶限がチタン含有量を超える温度まで加熱する必要がある。例えば、銅にチタンを3%含有させた場合には、チタンを完全に固溶させるには、800℃以上の温度まで加熱して溶体化処理をする必要がある。また、チタン銅は他の金属材料と同様に、焼鈍工程において結晶粒を微細化することで耐力を向上させることができる。チタン銅を製造する場合には、通常の最終製造工程である再結晶焼鈍工程が溶体化処理に相当するため、この溶体化処理中に結晶粒の微細化をいかに実現するかが耐力向上の要因となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のようなチタンが完全に固溶する高温領域では、結晶粒が粗大化し易いので、結晶粒の微細化により耐力向上を実現するには、それより低温側で溶体化処理をしなければならない。例えば、銅にチタンを3%含有させた合金においては、前記800℃では結晶粒が微細化しないので、750〜775℃溶体化処理をすることにより、結晶粒を微細化させているのである。このため、従来技術でチタン銅の結晶粒を微細化させたものは、チタンの固溶が十分でなく、安定相であるTiCu が析出してしまう。前述したように、この時点で粒界に析出したTiCu は、後工程の時効で硬化に寄与しないばかりか、曲げ性を悪化させるという欠点があった。またチタン銅に第3元素(Fe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BまたはP)を添加し、それらの成分を含んだ第2相の析出による析出硬化を狙った従来技術では、析出硬化が十分得られるだけの添加量を確保すると、変調構造の形成が阻害されるという欠点があった。またそれらの元素の析出硬化を最大限に引き出す溶体化条件及び時効条件が、チタン銅本来の変調構造による強化を最大限引き出す溶体化条件及び時効条件との間にずれが生じているため、第3元素の析出硬化とチタン銅の変調構造の発達とを十分に両立することができなかった。このように、従来技術ではチタン銅の優れた強度特性をそのまま生かした上で、プラスαの強度を得ることが難しかった。
【0006】
本発明は、上記要請に鑑みてなされたものであり、TiCu の析出を抑制して優れた曲げ性を実現するとともに、チタン銅の強化機構の本質を尊重し、その優れた特性を十分に確保することでさらなる強度向上図ることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の銅合金は、Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてFe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種以上を0.01〜0.50質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなり、第3元素群の合計含有量の50%以上が第2相粒子として存在することを特徴としている。
【0008】
本発明では、Tiの含有量を2.0〜4.0質量%としている。Tiの含有量が2.0%未満の場合には、チタン銅本来の変調構造の形成による強化機構を十分に得ることがでないため、チタン銅の優れた強度を得ることができない。また4.0質量%を超える場合には、TiCu が析出しやすくなり強度が劣るとともに、曲げ性を悪化させる。本発明ではTiの含有量を上記のように適正化することで、優れた強度および曲げ性を共に実現することができる。なお、上記強度および曲げ性をさらに高いレベルで両立させるべく、Tiの含有量は2.5〜3.5質量%とするのが望ましい。
【0009】
また本発明では、溶体化処理において十分な溶体化をなし、TiCu の析出の促進と粒成長とを抑制する目的で、第2相粒子を構成する元素(第3元素群)の組成を規定している。ここで、第2相粒子とは、CuとTiとを主成分とし、第3元素群の構成要素X(具体的にはFe、Co、Ni、Cr、V、Zr、B、P)を含有した場合に生成されるCu−Ti−X系粒子をいう。このCu−Ti−X系粒子は、溶体化処理中または溶体化処理前に焼鈍を施した場合でも形成することができ、再結晶後の粒成長の抑制に寄与する。なお、このCu−Ti−X系粒子は熱的に安定なため、溶体化処理後は、製品までの残りの工程で冷延・時効が施されても、その形態はほとんど変化しない。Fe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの合計含有量が0.01質量%未満の場合には、十分な量の第2相粒子を析出しないため、溶体化処理時に結晶粒の成長を抑制する効果が小さい。また、Fe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの合計含有量が0.50質量%を超えた場合には、第2相粒子が粗大化しやすくなるため曲げ性が悪化する。本発明では上記第3元素群の添加量の適正化を図ることにより、特に優れた曲げ性を得ることができる。
【0010】
ただし、上記第3元素群の含有量が適正であっても、第3元素群が第2相粒子として析出していなければ、粒成長を抑制する効果が小さいので、溶体化処理時に結晶粒が粗大化し、強度の向上が見込めない。また第3元素群が母相に固溶したままでは、時効したときに変調構造の形成に乱が生じて硬化量が低下する。したがって、Fe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの含有量の少なくとも半分が第2相粒子として存在していることが必要である。本発明では、第3元素群の含有量の50%以上が第2相粒子として存在することとすることで、第3元素群の第2相粒子への含有量の適正化を図っているため、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成とを同時に高いレベルで実現することができる。
【0011】
また本発明の他の銅合金は、Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてFe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種以上を0.01〜0.50質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなり、さらに断面検鏡によって観察される面積0.01μm 以上の第2相粒子において、前記第2相粒子中の第3元素群の含有率が合金中の第3元素群の含有率の10倍以上である第2相粒子の個数の割合が、前記第2相粒子全体の70%以上であることを特徴としている。
【0012】
本発明の銅合金は、上記した銅合金と同様に、Tiの含有量の適正化、第3元素群の含有量の適正化を図ることにより、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成とを同時に実現することができる。ただし、本発明においても、上記したように、第3元素群の第2相粒子への含有量の適正化を図る必要がある。本発明では、断面検鏡によって観察される面積0.01μm 2 以上の第2相粒子において、第2相粒子中の第3元素群の含有率が合金中の第3元素群の含有率の10倍以上である第2相粒子の個数の割合を、第2相粒子全体の70%以上とすることで、第3元素群の第2相粒子への含有量の適正化を図っている。このため、本発明の銅合金においても、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成とを同時に高いレベルで実現することができる。
【0013】
さらに、本発明の銅合金の製造方法は、上記した2つの本発明の銅合金を好適に製造するための方法であって、Cuに、Fe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種以上を0.01〜0.50質量%添加した後にTiを2.0〜4.0質量%添加してインゴットを製造する工程と、インゴットを熱間圧延し、引き続き冷間圧延する工程と、得られた圧延材をTiの固溶限が添加量より大きくなる温度T℃まで加熱する溶体化処理において、600℃を超える温度まで昇温速度20℃/秒以上で加熱しその後T−100℃〜T℃の温度領域で10秒以上加熱して過飽和固溶体とする溶体化処理工程と、過飽和固溶の状態から5〜50%の加工度で冷間圧延を施す冷間圧延工程と、圧延材に350〜450℃で熱処理を施す時効処理工程とを備えることを特徴としている。
【0014】
本発明の銅合金の製造方法によれば、Tiの添加量の適正化、第3元素群の添加量の適正化を図ることにより、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成とを同時に実現することができる。
ただし、上記したとおり、Tiの添加量の適正化および第3元素群の添加量の適正化を図ったとしても、第3元素群の第2相粒子への含有量の適正化が達成されなければ所望の曲げ性および強度は得られない。第2相粒子と再結晶粒の成長との関係を明らかにしたZenerの理論によれば、第2相粒子が均一に微細分散しているほど、粒成長を抑制する効果が大きいとされており、例えば、特開昭58−220139号公報においては、このZenerの理論に基づき、再結晶焼鈍工程前に第2相粒子を微細分散させた状態とする技術が開示されている。これに対し、本発明者らは、再結晶焼鈍前ではなく、まさに再結晶焼鈍工程に相当する溶体化処理の初期段階において、第2相粒子を微細分散させることにより、チタンを完全に固溶させた上で結晶粒を十分に微細化させ、曲げ性と強度とを高いレベルで両立することができるとの知見を得た。具体的には、溶体化処理での昇温速度の適正化を図ることで、上記効果を得ることができるとの知見を得て本発明を完成するに至った。すなわち、本発明では、昇温速度20℃/秒以上で600℃を超える温度まで加熱することで実現している。この昇温速度が20℃/秒未満の場合には、TiCu 3 相の析出を抑制することができず、このため曲げ性が悪化する。本発明の銅合金では、上記昇温速度の適正化を図ることにより、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成とを同時に高いレベルで実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、その製造工程を順次説明する。
インゴット製造工程
適当量のCuに第3元素群としてFe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種以上を0.01〜0.50質量%添加し、十分保持した後にTiを2.0〜4.0質量%添加する。第3元素群を第2相粒子として有効に作用させるためには、このインゴット製造工程で第3元素群の溶け残りをなくすため、第3元素群を添加後に十分保持する必要があり、また、TiはCu中に第3元素群よりも溶け易いため、第3元素群の溶解後に添加すればよい。
【0016】
インゴット製造以降の工程
このインゴット製造工程後には、950℃以上で1時間以上の均質化焼鈍を行うことが望ましい。偏析をなくし、後述する溶体化処理において、第2相粒子の析出を、微細かつ均一に分散させるためであり、混粒の防止にも効果がある。その後、熱間圧延を行い、冷延と焼鈍を繰り返して、溶体化処理を行なう。途中の焼鈍でも温度が低いと第2相粒子が形成されるので、この第2相粒子が完全に固溶する温度で行う。第3元素群を添加していない通常のチタン銅であれば、その温度は800℃でよいが、第3元素群を添加したチタン銅はその温度を900℃以上とすることが望ましい。さらに、溶体化処理直前の冷間圧延においては、その加工度が高いほど、溶体化処理における第2相粒子の析出が均一かつ微細なものになる。なお、溶体化処理前に微細な第2相粒子を析出させるために、前述の冷延後、低温で焼鈍を行なってもよいが、効果が小さいので工程増によるコストアップを考慮すると得策とは言えない。もし上記の目的で、溶体化処理前に低温焼鈍を行う場合には、第2相粒子がオストワルド成長しにくい450℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0017】
溶体化工程
上記冷延板製造工程後に溶体化処理を行う。ここで注意すべき点は、Tiの固溶限が添加量よりも大きくなる温度(Tiの添加量が2〜4質量%の範囲では730〜840℃であり、例えば、Tiの添加量が3質量%では800℃)まで加熱する必要があり、その昇温過程においてTiCu 3 が最も析出しやすい温度領域を素早く通過するために、少なくとも600℃までは昇温速度を 20℃/秒以上とすることである。この昇温速度の適正化により、安定相であるTiCu の析出を抑制して曲げ性を向上させることができるとともに、再結晶粒の成長に対して抑制効果が高い第2相粒子、すなわち第3元素を主成分とした微細かつ均一な第2相粒子を形成させることができる。
【0018】
冷間圧延工程・時効処理工程
上記溶体化工程後、冷間圧延および時効処理を順次行う。これらの加工は銅合金の用途に応じて通常の方法、条件で行うことができる。例えば、銅合金をコネクタ材等として使用する場合には、冷間圧延については、固溶体に5〜50%の冷間圧延を施すことが望ましい。また時効処理については、例えば400℃のArガスなどの不活性雰囲気中で200分程度の時効処理を施すことが望ましい。
【0019】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
本発明の銅合金を製造するに際しては、活性金属であるTiを第2成分として添加することに鑑み、溶製には真空溶解炉を用いた。また、本発明で規定した元素以外の不純物の混入による予想外の副作用の発生を未然に防止するため、原料は純度の高いものを厳選して使用した。
【0020】
まず、実施例1〜10および比較例11〜20について、Cuに、Fe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPを表1に示す組成でそれぞれ添加した後、同表に示す組成のTiをそれぞれ添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、それぞれ約2kgのインゴットを製造した。
【0021】
【表1】
Figure 0003729454
【0022】
上記インゴットに酸化防止剤を塗布して24時間の常温乾燥後、950℃×2時間の加熱により熱間圧延を施し、板厚10mmの熱延板を得た。次に偏析を抑制するためこの熱延板に再び酸化防止剤を塗布し、950℃×2時間の加熱を施しその後水冷した。また酸化防止材を塗布したのは、粒界酸化および表面から進入してきた酸素が添加元素成分と反応して介在物化する内部酸化を可能な限り防止するためである。各熱延板は、それぞれ機械研磨および酸洗による脱スケール後、板厚0.2mmまで冷間圧延した。その後、この冷間圧延を施した圧延材を急速加熱が可能な焼鈍炉に挿入して、600℃を超える温度まで表1に示す昇温速度で加熱し、最終的にはTiの固溶限が添加量より大きくなる温度(Tiの添加量が3質量%では800℃)まで加熱し、2分間保持後水冷した。この際、平均結晶粒径(GS)を切断法により測定した。その後、酸洗により脱スケール後冷間圧延して板厚0.14mmの圧延材を得た。これを不活性ガス雰囲気中で400℃×3時間の加熱をして各実施例および各比較例の試験片とした。
【0023】
次に、各実施例および各比較例について、圧延方向と直角方向(曲げ軸が圧延方向と同一方向)にW曲げ試験を行って割れの発生しない最小曲げ半径(MBR)の板厚(t)に対する比であるMBR/t値を測定するとともに、0.2%耐力を測定して実施例の有効性を検証した。
また、第2相粒子の組成の確認は、次の2つの方法で行った。まず一つ目の評価方法としては、一定重量の試験片をりん酸中で溶解したものについて、メンブランフィルタ(0.1μmメッシュ)によって第2相粒子を分離し、残存溶液中の成分を定量分析することにより、第3元素群が第2相粒子として存在していた割合を計算する方法を採用した。この方法によって、計算された値を便宜上A値(%)とする。A値が高いほど、本発明で添加した第3元素群が第2相粒子として存在する割合が高いことを示し、仮にA値が100%であれば、すべての第3元素群が第2相粒子として存在していたことを示す。実際には、フィルタのメッシュサイズは有限であることから、すべての第2相粒子を抽出分離することは不可能である。しかしながら、分離できなかった第2相粒子を含んだ状態で残存溶液を分析する方法を採用することから、この値が50%以下であれば、真のA値は必ず50%を超えていることになり、請求項1の発明の範囲内である。もう一つの評価方法としては、電界放射型オージェ電子分光法(FE−AES)によって、単位面積当たりに存在する長さ0.1μm以上の第2相粒子の組成を全て測定し、面積0.01μm 2 以上の第2相粒子において、第2相粒子中の第3元素群の含有率が合金中の第3元素群の含有率の10倍以上である粒子の個数をカウントして測定した全粒子数に対する割合を求めた。この値を便宜上B値とする。さらに、第2相粒子の円相当径を求めて、1個1個の粒子面積とその組成の関係から、第3元素群が第2相粒子として存在する割合を推定し、測定視野面積を十分にとれば、A値を満足するものはB値をもほぼ満足することを確認した。ここで、円相当径とは、断面検鏡によって観察される第2粒子と同じ面積を有する円の直径をいう。表2に各実施例および各比較例のA値、B値、結晶粒径(GS)、0.2%耐力(MPa)、MBR/t値をそれぞれ示す。
【0024】
【表2】
Figure 0003729454
【0025】
表2から明らかなように、各実施例においては、いずれもMBR/t値が1.0以下で0.2%耐力が850MPa以上となっており、優れた曲げ性と強度を同時に実現していることが判る。実施例No.4〜10では、Tiの添加量を特に好ましい範囲(2.5〜3.5質量%)としたことにより、0.2%耐力が著しく向上し、その値は870MPa以上となっている。また実施例No.4〜6はそれぞれFe、Co、Niに加えPを、そして実施例No.9、10はそれぞれV、Zrに加えてBを添加したことにより、結晶粒がさらに微細化して0.2%耐力が極めて向上し、その値は875MPa以上となっている。
【0026】
一方、各比較例においては、MBR/t値が1.0を超えるものとなっているかまたは0.2%耐力が850MPa未満となっており、優れた曲げ性と強度を同時に実現していなことが判る。比較例No.11は、Tiの添加量が2.0質量%未満であるため、十分な0.2%耐力が得られていない。逆に、比較例No.12は、Tiの添加量が4.0質量%を超えているため、TiCu が析出し、曲げ性が悪化している。比較例No.13は、結晶粒微細化元素である第3元素群が添加されていないので、結晶粒が微細化せず、十分な0.2%耐力が得られていない。また比較例No.13は、第2相粒子が形成されないため、結晶粒が粗大化し優れた曲げ性を得ることもできない。比較例No.14〜17は、第3元素群の添加量の合計値が0.5質量%を超えているために第2相粒子が必要以上に析出してしまい、曲げ性が悪化している。また過剰な第2相粒子の析出によって母相中のTiが失われ、時効硬化能が低減して十分な0.2%耐力が得られていない。比較例No.18〜20は、第3元素の添加量は適正範囲にあるが、溶体化処理でTiが完全に固溶する温度までの昇温速度が遅かったために、第3元素を主成分とする第2相粒子よりTiCu 単独の析出の割合が多くなり、その結果、時効硬化能が低下し、十分な0.2%耐力が得られず、曲げ性も好ましい範囲にはない。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、Tiの含有量の適正化、第3元素群の含有量の適正化、および第3元素群の第2相粒子への含有量の適正化をそれぞれ図ることで、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成とを同時に高いレベルで実現することができる。よって本発明は、コネクタ材等に好適な銅合金を製造することができる点で有望である。

Claims (3)

  1. Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてFe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種以上を0.01〜0.50質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなり、第3元素群の合計含有量の50%以上が第2相粒子として存在することを特徴とする銅合金。
  2. Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてFe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種以上を0.01〜0.50質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなり、さらに断面検鏡によって観察される面積0.01μm 以上の第2相粒子において、前記第2相粒子中の第3元素群の含有率が合金中の第3元素群の含有率の10倍以上である第2相粒子の個数の割合が、前記第2相粒子全体の70%以上であることを特徴とする銅合金。
  3. Cuに、Fe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種以上を0.01〜0.50質量%添加した後にTiを2.0〜4.0質量%添加してインゴットを製造する工程と、
    前記インゴットを熱間圧延し、引き続き冷間圧延する工程と、
    得られた圧延材をTiの固溶限が添加量より大きくなる温度T℃まで加熱する溶体化処理において、600℃を超える温度まで昇温速度20℃/秒以上で加熱しその後T−100℃〜T℃の温度領域で10秒以上加熱して過飽和固溶体とする溶体化処理工程と、
    前記過飽和固溶の状態から5〜50%の加工度で冷間圧延を施す冷間圧延工程と、
    前記圧延材に350〜450℃で熱処理を施す時効処理工程と
    を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の銅合金の製造方法。
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