JP3728975B2

JP3728975B2 - 自己流動性水硬性組成物

Info

Publication number: JP3728975B2
Application number: JP11170599A
Authority: JP
Inventors: 信裕片岡; 義信平野; 浩司蒔田
Original assignee: Ube Industries Ltd
Current assignee: Ube Corp
Priority date: 1999-04-20
Filing date: 1999-04-20
Publication date: 2005-12-21
Anticipated expiration: 2019-04-20
Also published as: JP2000302519A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般建造物の床下地材調整に使用されるセルフレベリング材として優れた特性を有する自己流動性水硬性組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
セルフレベリング材として使用される水硬性組成物には、高い流動性はもとより、施工作業を容易にする面から適度の作業時間を確保できる程度に長い流動性保持時間、早期開放を可能とする十分な速硬性、表面仕上材の接合を容易にする表面平滑性と良好な表面性状、更には構造材料としての寸法安定性、高強度特性及び耐水性を具備することが必要であると考えられる。
上記セルフレベリング材として使用される自己流動性水硬性組成物には、含まれる水硬性成分により大きく分類すると、石膏系とセメント系の２種類が存在する。
石膏系は寸法安定性がよく短時間で硬化するという長所があるものの、耐水性が低く、又鉄筋を使用した場合に錆の発生が容易に生じる欠点がある。
一方、セメント系は、石膏糸とは逆に、収縮が大きく、硬化速度が遅い欠点を有している。特に低温下では、硬化速度が著しく遅い。速硬性セメント使用したものでは硬化速度面では改善されるものの、流動性が低いと云う欠点がある。
【０００３】
そこで近年、上記の問題を解決すべく多数の検討が行われ、ポルトランドセメント以外の特殊セメントを使用したものや、これらに各種混和材を組み合わせた組成物が開示されている。
例えば、特開昭６３−１２９０５１号公報には、アルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏、水酸化カルシウム又は炭酸からなる無機質結合材に、流動性低下防止剤としてオキシカルボン酸又はその塩と亜鉛塩類を併用し、さらに減水剤、粘度調整剤、消泡剤添加してなるセルフレベリング材が開示されている。
又、特開平７−６９７０４号公報には、アルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏からなる速硬性セメントに高炉スラグ粉末、珪砂、かんらん石粉末、さらに高性能減水剤、増粘剤、凝結調整剤としてオキシカルボン酸又はその塩、アルミン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ソーダからなる薬剤を添加した組成を有する組成物が開示されている。
特公平６−８１９７号公報においても、高炉スラグ、カルシウムアルミネート及び硫酸カルシウムからなる水硬性組成物に、凝結速度をコントロールする為にオキシカルボン酸（塩）、炭酸アルカリ又は重炭酸アルカリ、リン酸塩等を凝結遅延剤として添加したものに、更に高分子エマルジョンを添加した組成物が開示されている。
更に、特開平８−２１７５０８号公報においては、セメントにカルシウムアルミネートとアルカリ又はアルカリ土類金属硫酸塩よりなる急硬剤と、オキシカルボン酸（塩）系の有機物及び／又は水酸化カルシウム、アルミン酸塩、炭酸アルカリ等の無機化合物を凝結遅延剤として添加して凝結速度を調整したものに公知の各種流動化剤、消泡剤を加えたものが開示されている。
【０００４】
しかしながら、これ等のセルフレベリング材は使用温度によってはその性能を十分に発揮することができず、低温から高温までの広範囲での温度条件における使用が困難であった。例えば、低温における硬化遅延により開放時間が大きく遅れ、また、高温においては流動保持性の低下により平滑な表面が得られなかったり、収縮の増大によるクラックの発生といった問題が発生する。
従って、季節間、時刻差、地域差等による温度差に対応すべく、低温から高温の広範囲の温度条件おいて優れた流動性、硬化特性を示す材料の開発が強く望まれていた。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低温から高温の広範囲の温度においても、流動性・作業性、平滑性、表面硬度、寸法安定性に優れ、且つ、翌日の開放が可能な自己流動性水硬性組成物の提供を目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明は、急硬性を本質的に有し、かつ硬化特性に優れた水硬性成分と減水剤、増粘剤からなる組成物が、上記課題の解決された組成物となることを知り、本発明を完成した。すなわち、本発明は、アルミナセメント１００重量部に対する組成比が、ポルトランドセメント２０〜６０重量部、石膏２０〜１００重量部、高炉スラグ５０〜５００重量部である水硬性成分と、骨材と、減水剤と、増粘剤と、消泡剤よりなる自己流動性水硬性組成物（但し、リチウム塩とホウ酸化合物よりなる凝結速度調整剤及び高分子エマルジョンのいずれか１つの成分を含む場合を除く）であり、
自己流動性水硬性組成物と水とを混練してフロー値（３０分）が２００ｍｍ以上のモルタルが得られ、モルタルを養生して長さ変化率（気中、２８日）が−２．０×１０ ^−４以上で、圧縮強度（２８日）が２５Ｎ／ｍｍ ^２以上の成型体が得られることを特徴とする自己流動性水硬性組成物に関する。以下に、本発明を詳しく説明する。
【０００７】
【発明の実施の形態】
セルフレベリング材として使用される自己流動性水硬性組成物は、水硬性成分により石膏系とセメント系の二種に大別され、夫々問題点を抱えたものであることについては前述した。本発明の自己流動性水硬性組成物では、アルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏及び高炉スラグを特定の組成比で含む組成物を水硬性成分とすることを特徴の一つとしている。
【０００８】
アルミナセメントは潜在的に急硬性を有している。またさらに、石膏等の硫酸塩との共存によってカルシウムスルホアルミネート水和物を生成することで初期の硬化を速め早期開放を可能にするだけでなく、硬化体の水分を早期に多量消費し表面の仕上材施工可能時間を早めるともに、収縮の少ない硬化体を形成する。また、潜在水硬性を有する高炉スラグの存在によりアルミナセメント欠点である硬化体強度の経時的な低下も抑制される。
アルミナセメントは鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネート（ＣＡ）であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
【０００９】
ポルトランドセメントは速硬性において重要な組成の一つであり、アルミナセメント及び石膏と共にカルシウムスルホアルミネート水和物の生成を促進することにより、速硬性に大きく寄与し、早期の開放に大きく寄与するとともに寸法安定性に優れた硬化体を形成する。アルミナセメントと石膏のみでもカルシウムスルホアルミネート水和物は生成されるが、更にポルトランドセメントを加えることによりカルシウムスルホアルミネートを早期に生成することができ、アルミナセメントから効率よくカルシウムスルホアルミネートを生成させることができる。又、スラグの潜在水硬性も引き出すことで長期的な強度発現にも寄与する。添加量としてはアルミナセメント１００重量部に対して２０〜６０重量部好ましくは３０〜５０重量部である。２０重量部より少ないと低温において翌日の硬化が遅れ、６０重量部より多いと急激なカルシウムスルホアルミネートの生成により急結し、流動保持性が大きく低下する。
ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、及び高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の各種混合セメントを１種又は２種以上を組み合わせて使用することができる。
【００１０】
石膏は速硬性、速乾性及び硬化後の寸法安定性を保持するために必要な成分であるが、その添加量はアルミナセメント１００重量部あたり２０〜１００重量部、好ましくは３０〜８０重量部が良い。２０重量部より少ないと寸法安定性が低下し、１００重量部より多いと外部からの水分により異常膨張を起こす危険があり好ましく無い。
また、石膏は無水、２水、半水等の各石膏がその種類を問わず、１種又は２種以上の混合物として使用できる。
【００１１】
高炉スラグは、乾燥収縮が小さいことから、硬化体の耐クラック性を高めるだけでなくその潜在水硬性により硬化体強度を向上させる効果も有している。また、アルミナセメント水和物の転移に起因する強度低下を抑制する効果も有している。
高炉スラグ量は、アルミナセメント１００重量部に対し、５０〜５００重量部、好ましくは８０〜４００重量部とする。５０重量部より少ないと収縮が大きくなり、また５００重量部より多いと強度発現が不十分となる。
【００１２】
セルフレベリング材が具備すべき最も基本的な要因は高い流動性である。材料分離を抑制し、かつ高強度の硬化体を得るには水／水硬性成分比を下げる必要があり、水／水硬性成分比を低くしても高い流動性を確保するために、減水剤の添加が必須である。
減水剤は、ナフタレン系、ポリカルボン酸、ポリエーテル系、メラミン系等の市販のものがその種類を問わず使用できる。その使用添加量は水硬性成分１００重量部に対し０．１〜５重量部が好ましい。添加量がこれより少ないと十分な効果が発現せず、これより多いと添加量にあった効果が得られず不経済であるばかりではなく、場合によっては流動性の低下や硬化不良を招く。
【００１３】
高い流動性を確保したまま、材料分離を十分なレベルまで押さえる為、増粘剤の添加が必要である。その使用添加量は水硬性成分１００重量部に対し０．０５〜２重量部が好ましい。添加量がこれより少ないと十分な効果が発現せず、これより多いと不経済であるばかりでなく、粘性が非常に大きくなることで所定の流動性を得るのに必要な水量が大きくなり、硬化不良、強度発現の低下、収縮の増加をもたらす。
増粘剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系、ゼラチン、ペクチン等の蛋白系、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー等が使用可能である。
【００１４】
上記の水硬性成分、減水剤、増粘剤を必須成分とすることで、流動性、速硬性に優れ、かつ硬化特性に優れたセルフレベリング材を得ることができるが、以上の必須成分に加えて、必要に応じて、消泡剤等を添加することができる。消泡剤は気泡の発生を抑制し硬化体表層の外観の改善に好ましい効果を与える。消泡剤としては、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系等合成物質又は植物由来の天然物質等公知のものが使用可能である。消泡剤の添加量は水硬性組成物１００重量部に対して、２重量部以下とするのが良い。それより多く加えても消泡効果の更なる増加は認められない。
【００１５】
本発明の自己流動性組成物には更に、フライアッシュ、石灰石粉、シリカ質粉等の公知の増量材を添加することが出来る。
増量材の添加により、流動性が改善される効果が得られるが、添加量が多すぎると強度発現性の低下を招くので、その添加量は水硬性成分１００重量部あたり１５０重量部以下とするのが望ましい。またそのサイズは４５ｍｍ以下とするのが効果の点から好ましい。
【００１６】
本発明による自己流動性水硬性組成物は、水と混練したセメントペーストとして使用することも出来るが、各種骨材／増量材を添加して使用するのがその特性を活かした使い方である。
骨材としては珪砂、川砂、海砂、高炉スラグ、石灰石砂、各種砕石が使用できるが、その径は２ｍｍ以下とするのが望ましい。また、骨材添加量は水硬性成分１００重量部あたり、２５０重量部以下とするのが望ましい。２５０重量部より多くなると、材料分離や流動性低下を招くだけでなく、強度発現性が大きく低下する。
【００１７】
【実施例】
以下に具体例を示して、本発明の内容を詳しく説明する。

【００１８】
（２）水硬性組成物、モルタル試験体の調製
水硬性組成物成分として、構成成分量を種々変えた水硬性成分１００重量部に所定量の減水剤、増粘剤、必要に応じて消泡剤を加えたものにさらに、骨材１００重量部および水５２重量部を加えて３分間混連したものをモルタル試験体とした。
各例における各成分の配合割合を表１に示す。
【００１９】
（３）モルタル特性の測定
生成モルタル試験体について以下の測定を行い、自己流動性水硬性組成物の特性を評価した。各測定項目には、セルフレベリング材としての実用性の観点から表２に示した合否の判定基準を設けた。
・フロー値：ＪＡＳＳ１５Ｍ−１０３に準拠して測定した。
・凝結時間：ＪＩＳＲ５２０１に記載された方法に従って行った。
・圧縮強度：ＪＩＳＲ５２０１に示される４×４×１６の型枠にモルタルを型詰めし所定の条件にて１日間気中養生した後脱型し、更に気中にて所定期間追加養生したものについてＪＩＳＲ５２０１に記載された方法に従って行った。
・長さ変化率：ＪＩＳＲ５２０１に示される４×４×１６の型枠にモルタルを型詰めし所定の条件にて１日間気中養生した後脱型して得られた成型体について、ＪＩＳＳＡ１１２５に示されるコンパレーター法により測定した。
なお、水中長さ変化率は１日間気中養生して脱型し、基長を測定した後、水中養生を開始した。
・乾燥日数：混練したモルタルを３００×３００ｍｍコンクリート板上へ厚さ１０ｍｍで流し込み、硬化後、ケット水分計にて硬化体表面水分を測定。表面水分が８％以下になるまでに要した日数を乾燥日数とした。
・クラック発生・表面状態の観察：混練したモルタルを３００×３００ｍｍの型枠に厚さ１０ｍｍで流し込み、７日間養生して目視により観察した。
モルタル特性の測定結果を表２に示す。
【００２０】
表２の結果は、本発明の範囲内に含まれる組成を有する組成物は、全ての項目について判定基準をクリアーしておりセルフレベリング材としての優れた特性を有しているのに対し、本発明の範囲を外れる組成を有する組成物では、ある項目では判定基準をクリアーしても他の判定基準をクリアーできず、複数の機能を要求されるセルフレベリング材としては適当でないことを示している。
【００２１】
【表１】

【００２２】
【表２】

【００２３】
【発明の効果】
本発明の自己流動性水硬性組成物は、低温から高温に亙る広範囲の温度領域において、セルフレベリング材として十分な流動性と流動保持時間を保持して打設作業性に優れているのみならず、施工翌日の開放が可能な早期開放性を有する。また、平滑性、寸法安定性に優れた硬化体を与えることから、セルフレベリング材としてのその利用価値は大である。

Claims

アルミナセメント１００重量部に対する組成比が、ポルトランドセメント２０〜６０重量部、石膏２０〜１００重量部、高炉スラグ５０〜５００重量部である水硬性成分と、骨材と、減水剤と、増粘剤と、消泡剤よりなる自己流動性水硬性組成物（但し、リチウム塩とホウ酸化合物よりなる凝結速度調整剤及び高分子エマルジョンのいずれか１つの成分を含む場合を除く）であり、
自己流動性水硬性組成物と水とを混練してフロー値（３０分）が２００ｍｍ以上のモルタルが得られ、モルタルを養生して長さ変化率（気中、２８日）が−２．０×１０^−４以上で、圧縮強度（２８日）が２５Ｎ／ｍｍ^２以上の成型体が得られることを特徴とする自己流動性水硬性組成物。
水硬性成分１００重量部に対して減水剤、増粘剤の量がそれぞれ０．１〜５重量部、０．０５〜２重量部である請求項１に記載の自己流動性水硬性組成物。