JP3728462B2 - 表面処理方法及びそれに用いられる蒸着材料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、無機コート膜の表面処理方法及びそれに用いられる蒸着材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
レンズ等の光学部材の表面に、蒸着等により形成された無機コート膜上に有機系被膜を形成し、撥水性、撥油性、防塵性等の機能を付与する表面処理は広く行われている。
【0003】
その方法としては、有機系被膜形成物質を溶剤に希釈し、その溶液を浸漬法、スプレー法、刷毛塗り法等により無機コート膜上に塗布・乾燥する方法、又は、有機系被膜形成物質を低圧力でガス化し、真空槽内で無機コート膜に接触させ、有機系被膜を形成する方法等があるが、なかでも、特開平4−72055号公報あるいは特開平5−215905号公報に記載されているような有機系被膜形成物質を多孔性セラミックあるいは金属粉末の多孔性の焼結体に含浸し、真空槽内で加熱・蒸発させ、真空槽内にセットした物体の無機コート膜上に有機系被膜を形成する方法は、洗浄・乾燥等の付帯作業が不要で、かつ低蒸気圧を有する分子量の大きい高性能な有機系被膜形成物質でも処理できるため、極めて有用な方法として注目されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前途のような多孔性セラミックや金属粉末の多孔性の焼結体に有機系被膜形成物質を含浸し、加熱・蒸発させる方法では、次のような問題を有する。
【0005】
まず、有機系被膜形成物質を含浸させるための多孔性セラミックや金属粉末の焼結体は、その製造工程において高温での焼結加工が必要となるため、非常に高価なものとなってしまうという欠点を有している。また、有機系被膜形成物質を含浸・保持する量は、これらセラミックや金属焼結体の空孔率及び該空孔の大きさに大きく左右されるが、その製造工程において空孔率及び空孔の大きさを均一に制御することは極めて困難である。その結果、使用するセラミックあるいは金属焼結体毎に有機系被膜形成物質の含浸量がばらついてしまい、均一な有機系被膜を安定して形成できないという問題を有する。これを防止するするためには、有機系被膜形成物質を過剰に含浸させる必要があるが、これもまたコストアップの原因となってしまう。
【0006】
またさらに、真空槽内の加熱方法としては、不純物の混入等を防止する目的から、一般的に、電子銃加熱が用いるのが望ましいが、セラミック表層には、電子ビームをはじく性能を有する有機系被膜形成物質が高密度に存在するため、低出力のビームでは、全くセラミックが加熱されず、一方高出力のビームでは、セラミックの成分の一部が有機系被膜形成物質と同時に無機コート膜上に蒸着されてしまい、有機膜及び無機コート膜の特性に悪影響を及ぼすという問題がある。そのため、電子銃の出力条件の制御は極めて難くなってくる。この点に関しては、導電性の金属焼結体の方が有利であるが、前述のように有機系被膜形成物質を過剰に含浸させた場合には、表面が絶縁性の有機系被膜形成物質で被覆されてしまうため、セラミックと同様の問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題を解決し、簡便で、安価でかつ電子銃加熱においても処理条件が制御し易く、高品質を維持できる表面処理方法及びそれに用いられる蒸着材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の表面処理方法は、真空槽内で有機系被膜形成物質を加熱・蒸発せしめ、無機コート膜上に有機系被膜を形成する表面処理方法において、該有機系被膜形成物質を繊維上の導電性物質の塊に付着させ、少なくとも一方向が開放している保持枠内の繊維状の導電性の塊に付着させた該有機系被膜形成物質を加熱し、該無機コート膜上に該有機系被膜を形成することを特徴とする。
【0009】
また、該導電性物質が鉄、ステンレス、アルミニウム、銅またはカーボンであることを特徴とする。
【0010】
また、該有機系被膜形成物質を電子銃加熱することを特徴とする。
【0011】
さらにまた、該有機系被膜形成物質を付着させた繊維状の導線性物質の塊を少なくとも一方が開放している保持枠に入れることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の蒸着材料は、真空槽内で有機系被膜形成物質を加熱・蒸着せしめ、無機コート膜上に有機系被膜を形成する表面処理用の蒸着材料において、少なくとも一方向が開放している保持枠内の繊維状の導電性物質の塊に該有機系被膜形成物質が付着していることを特徴とする。
【0013】
また、該導電性物質が鉄、ステンレス、アルミニウム、銅またはカーボンであることを特徴とする。
【0014】
また、該導電性物質が、線径が0.01〜1mmの繊維状物質からなることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、該蒸着材料を少なくとも一方向が開放している保持枠に入れることを特徴とする。
【0016】
本発明で用いられる繊維状の導電性物質の塊は、導電性を有し、かつ有機系被膜形成物質を付着保持できる物であれば、特にその材質は限定されないが、比較的安価で加工がしやすく、かつ耐熱性、熱伝導性の高い鉄、ステンレス、アルミニウム、銅またはカーボンを用いるのが望ましい。特に市販のスチールウールが安価で取扱いも容易であり好適である。また、繊維状であれば、その形状、線径も特に限定されるものではなく、加工条件、使用目的に応じて適宜選択できるものであるが、加工性、熱伝導性、有機系被膜形成物質の付着保持性から、線径が0.01〜1mmのものが望ましく、さらに好ましくは、0.025〜0.05mmのものが適当である。
【0017】
さらに、該繊維状の導電性物質の塊を、少なくとも一方向が開放している保持枠に入れることにより、該繊維状の導電性の塊に付着させる有機系被膜形成物質の量を、均一な被膜の形成に必要な最低限の量に精度よくコントロールすることができ、製造コストを低減させることができる。さらに精密にコントロールするためには、有機系被膜形成物質をm−キシレンヘキサフルオライド等のフッ素系の溶媒で溶解・希釈して繊維状の導電性物質の塊に付着させた後、該溶媒を揮発させればよい。
【0018】
ここで付着させる有機系被膜形成物質の量は、加工条件、目的とする被膜の膜厚などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは0.01〜0.1g、さらに好ましくは0.02〜0.05gが適当である。
【0019】
また、加熱により溶解した有機系被膜形成物質が、真空層内の底面を汚染し、これがしばしば装置の故障の原因となっていたが、該保持枠を用いることによりそれを防止することができる。またさらに、保持枠の開放部分の方向・形状を調整することにより、蒸発した有機系被膜形成物質の真空層内壁への付着を極力抑えることができ、真空層内の汚染によるトラブルや歩留まりの低下を防止することができる。
【0020】
本発明で用いられる保持枠は、繊維状の導電性物質の塊と同等の耐熱性、熱伝導性を有するものであれば、特に材質は限定されないが、電子銃で加熱する場合には、導電性を有する必要があるため、繊維状の導電性物質の塊と同様の材質が望ましい。しかし一部が導電性を有する材質から構成されているものであれば、セラミック等の絶縁体でも使用可能である。
【0021】
また、本発明で用いられる有機系被膜形成物質についても、撥水性、撥油性、防塵性等の機能を付与し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとしては、特開昭63−169102号公報に記載されている、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチル−3,3,3−トリフロロプロピルジクロロシラン、1,7−ジクロロオクチルメチルテトラシロキサン、ジビニルジクロロシラン、ジフェニルビニルジクロロシランなどのハロゲン化シラン化合物、特開昭62−178903号公報に記載されている、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、特開昭62−247302号公報に記載されている、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクチルメチルシクロテトラシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシランなどのアミノシラン化合物などが挙げられる。なかでも特に好ましいのは、特開昭62−296002号公報に記載されている、以下に例示するようなフッ素含有アミノシラン化合物である。
【0022】
n−CF3CH2CH2Si(NH2)3
3,3,3−トリフルオロプロピルトリアミノシラン
n−C3F7CH2CH2Si(NH2)3
2−(パーフルオロプロピル)エチルトリアミノシラン
n−C4F9CH2CH2Si(NH2)3
2−(パーフルオロブチル)エチルトリアミノシラン
n−C6F13CH2CH2Si(NH2)3
2−(パーフルオロヘキシル)エチルトリアミノシラン
n−C8F17CH2CH2Si(NH2)3
2−(パーフルオロオクチル)エチルトリアミノシラン
上記の化合物は、単独ではもちろんのこと、2種以上を混合して用いることもできる。
【0023】
真空層内で、上記シラン化合物を加熱・蒸発させる時の真空度は、目的、加工条件により適宜設定すればよいが、加工品質の安定性を向上させるためには、好ましくは10-6〜10Pa、より好ましくは10-4〜4Paの真空度が望ましい。
【0024】
また、加熱の熱源は、所定の温度に昇温できるものであれば特に限定されないが、好ましくはハロゲンランプ、シーズヒーターもしくは電子銃であり、より好ましくは不純物の混入の恐れのない電子銃が望ましい。さらに加熱温度は、有機系被膜形成物質の蒸発特性及び繊維状の導電性物質の塊の熱特性に応じて適宜設定すればよいが、上記シラン化合物の場合には、好ましくは230〜400℃、より好ましくは300〜350℃が望ましい。
【0025】
本発明において無機コート膜とは、眼鏡レンズのみならず、カメラレンズ、パソコンのディスプレー等に付設する光学フィルター、自動車の窓ガラス等に用いられる光学部材の表面に、直接もしくはハードコート層などの中間層を介して、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などにより形成された単層または多層の反射防止膜や着色膜、保護膜などを意味し、特にレンズ等の光学部材の反射を減少させるために形成された、最上層が二酸化ケイ素からなる反射防止膜が好適である。
【0026】
また、上記光学部材としては、メチルメタクリレートあるいはジエチレングリコールビスアリルカーボネートの重合体もしくはこれらの1種と他の1種以上のモノマーとの共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどのプラスチック製光学部材あるいは無機ガラス製光学部材などが挙げられる。
【0027】
有機系被膜形成時の無機コート膜の温度は、基本的には特に品質に影響を与えるものではないが、プラスチック製光学部材に形成された無機コート膜に適用する場合には、品質の安定性を向上させるために、好ましくは40〜70℃、より好ましくは50〜60℃とするのが望ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の詳細を実施例に基づき説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
図1は、本発明の表面処理用の蒸着材料の一例を示す断面図であり、図2は同蒸着材料を電子銃加熱して表面処理する装置の一例を示す構成図である。スチールウール(日本スチールウール(株)製、#1;線径約0.035mm)1を、外径18mm高さ7mm内厚2mmの上方が開放になっている円筒形のアルミニウム枠2に入れ、有機系被膜形成物質付着用ペレットとした。
【0030】
次に、この有機系被膜形成物質付着用ペレットに、有機系被膜形成物質としてm−キシレンヘキサフルオライドにより3%に希釈された2−(パーフルオロオクチル)エチルトリアミノシラン1.0gをスチールウール1に付着させ、常温で16時間乾燥し、表面処理用の蒸着材料を得た。
【0031】
次に、図2に示す装置の真空槽内に、蒸着材料3を蒸着用ハース10にセットし、その上方のレンズ固定治具12に無機コートレンズ11をセットした。
【0032】
真空槽内が規定の真空度に達した後、電子銃20の出力を4Kv×7mAの条件で電子ビーム21を蒸着材料3に照射・加熱し、有機系被膜物質を蒸発させ有機系被膜付の無機コートレンズを得た。この時無機コートレンズ11の温度は、55℃に設定した。
なお、無機コートレンズ11は、次のようにして作成した。
【0033】
まず、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートの重合体からなるプラスチック製眼鏡レンズをアセトンで洗浄後、スピンコーティング法によりコーティング液を塗布した後125℃で30分焼成し、ハードコートレンズを得た。
【0034】
コーティング液は、次のようにして作成した。
【0035】
攪拌装置を備えた反応容器中に、2−エトキシエタノール300g2−メトキシエタロール分散コロイダルシリカ(触媒化成工業(株)製、商品名”オスカル1832”)470g、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン185g、フローコントロール剤0.03g及び0.05N塩酸水溶液50gを加え、室温で2時間攪拌し、コーティング液とした。
【0036】
得られたハードコートレンズを真空蒸着法にて、反射防止加工し、無機コートレンズ11を得た。この時、ハ−ドコートレンズの温度は、50℃に設定した。
【0037】
反射防止処理の膜構成は、レンズ側からSiO2層がλ/4、ZrO2層とSiO2層の合計膜厚がλ/4、ZrO2層がλ/4、最上層のSiO2層λ/4とし た(λ=520nm)。
【0038】
以上、一連の処理で得られた有機系被膜付の無機コートレンズの干渉色、外観は、有機系被膜形成前の無機コートレンズと変化がなかった。
【0039】
また、得られた有機系被膜付の無機コートレンズについて、次の方法で撥水性、膜密着性及び耐摩耗性を評価した。
【0040】
(1)撥水性 :接触角計(協和化学(株)製CA−D型)を用いて蒸留水による液適法で測定した接触角をもって評価した。
【0041】
(2)耐摩耗性:コート膜表面を布(木綿)で1kgの荷重をかけ1000回摩耗し、傷のついた度合いを以下の3段階にわけて評価した。
【0042】
A:全く傷がつかない。
【0043】
B:1〜10本、細かい傷がつく。
【0044】
C:細かく無数に傷がつく。
【0045】
(3)密着性 :37℃の純水に1週間浸漬した後、JIS・D−0202に準じたクロスカットテープ試験によって、コート膜の密着性を調べた。
【0046】
即ちナイフを用い、基板表面に1mm間隔に切れ目を入れ、1mm2 の升目を形成した。次に、その上にセロファン粘着(日東化学(株)製”セロテープ”)を強く押し付けた後、表面から90°方向へ急に引っ張り剥離した後、コート被膜の残っている升目の数をもって指標とした。
【0047】
評価結果は、表1に示すとおり良好であった。
【0048】
(実施例2)
繊維状の銅(線径約0.05mm)を圧縮・平板状にし、実施例1と同様の寸法の銅製の枠に入れ有機系被膜形成物質付着用ペレットとした。
【0049】
これに、実施例1と同様の方法でm−キシレンヘキサフルオライドにより3%に希釈された2−(パーフルオロオクチル)エチルトリアミノシランを付着・乾燥させ、表面処理用の蒸着材料を得た。
【0050】
次に、図3に示す装置の真空槽内に、該蒸着材料4をホットプレート22にセットし、その上方に、実施例1と同様の方法で作成した無機コートレンズ11をセットした。図3は、本発明の蒸着材料を抵抗加熱して表面処理する装置の一例を示す構成図である。
【0051】
その後、ホットプレート22を100℃に昇温し、蒸着材料4を加熱し、有機系被膜形成物質を蒸発させ、有機系皮膜付の無機コートレンズを得た。
【0052】
得られた有機系被膜付の無機コートレンズは、実施例1と同様の方法で評価したが、評価結果は、表1に示すとおり良好であった。
【0053】
(実施例3)
実施例1と同様の蒸着材料を、3槽式のレンズ反射防止加工用蒸着機の第2槽、即ち蒸着処理室内のZrO2 ペレット収納マガジンにセットした。
【0054】
ここで該蒸着材料は、既存のZrO2 ペレットと同寸法であるため、ZrO2 ペレットと全く同様に取り扱うことができる。
【0055】
次に、実施例1と同様の方法でコーティング液を塗布硬化して得られたハードコートレンズを蒸着用ドームにセットし、第1槽で予備排気した後、第2槽で実施例1と同様の膜構成で無機コート膜を被覆し、反射防止加工した。
2
【0056】
その後、蒸着材料をZrO2 ペレット収納マガジンより遠隔操作でZrO2 ペレット用のハースにセットし、実施例1と同様の条件で電子銃加熱し、有機系被膜形成物質を蒸発させ、無機コート膜上に有機系被膜を形成した。
【0057】
処理後、レンズを第3槽リーク取り出し室に移動し、取り出した。得られたレンズの干渉色、外観は、通常の反射防止膜加工のみを行った場合と変わらなかった。
【0058】
得られたレンズは、実施例1と同様の方法で評価したが、評価結果は、表1に示すとおり良好であった。
【0059】
(実施例4)
図4は、本発明の表面処理用の蒸着材料の他の一例を示す断面図である。
【0060】
スチールウール(日本スチールウール(株)製、#0;線径約0.025mm)1を外形18mm高さ7mm肉厚2mmで、上方が開放になっており、かつ低部に直径5mmの穴があいている円筒形のアルミナ焼結体枠5に入れ、有機系被膜形成物質付着用ペレットとした。
【0061】
スチールウール1は、該アルミナ焼結体枠5の底部の穴からはみ出しており、真空蒸着機内の電子銃加熱位置にセットした際に蒸着用ハースに十分に接触するようになっている。
【0062】
このような、有機系被膜形成物質用ペレットに、実施例4と同様の方法で有機系被膜形成物質を付着させ、表面処理用の蒸着材料を得た。
【0063】
このようにして得られた蒸着材料を用いて実施例1と同様の方法で得た無機コートレンズに有機系被膜を形成した。
【0064】
得られた、有機系被膜付の無機コートレンズの干渉色外観は、有機系被膜形成前の無機コートレンズと変化がなかった。
【0065】
また得られた、有機系被膜付の無機コートレンズは、実施例1と同様の方法で評価したが、評価結果は、表1に示すとおり良好であった。
【0066】
(実施例5)
図5は、本発明の表面処理用の蒸着材料のさらに他の一例を示す断面図である。
【0067】
スチールウール(日本スチールウール(株)製、#0;線径約0.025mm)1を、外形18mm高さ7mm肉厚2mmで、上方が開放になっており、かつ低部に直径5mmの穴があいていて、そこに図に示すようなアルミニウム板6をはめ込んだアルミナ焼結体枠5に入れ、有機系被膜形成物質付着用ペレットとした。アルミニウム板6は、真空蒸着機内の電子銃加熱位置にセットした際に蒸着用ハースに十分に接触するようになっている。
【0068】
このような、有機系被膜形成物質用ペレットに、実施例4と同様の方法で有機系被膜形成物質を付着させ、表面処理用の蒸着材料を得た。
【0069】
このようにして得られた蒸着材料を用いて実施例1と同様の方法で得た無機コートレンズに有機系被膜を形成した。
【0070】
得られた、有機系被膜付の無機コートレンズの干渉色外観は、有機系被膜形成前の無機コートレンズと変化がなかった。
【0071】
また得られた、有機系被膜付の無機コートレンズは、実施例1と同様の方法で評価したが、評価結果は、表1に示すとおり良好であった。
【0072】
(比較例1)
外径18mm、高さ7mmの円筒状のZrO2 焼結体を実施例1と同様の有機系被膜形成物質に1時間浸漬し、その後24時間常温乾燥し、蒸着材料を得た。
【0073】
この蒸着材料及び実施例1と同様の無機コートレンズを真空槽内にセットし、実施例1と同様の方法で4kv×7mA電子銃加熱した。
【0074】
その結果電子ビームは、蒸着材料表面で反射され、蒸着材料は全く加熱されず、有機系被膜を形成することができなかった。
【0075】
(比較例2)
比較例1と同様の方法で作成した蒸着材料を比較例1と同様の方法で電子銃加熱した。但し、電子銃の出力は蒸着材料が加熱され、赤熱するまで上昇させた。その結果、電子銃出力が4kv×120mAで蒸着材料の上部が白熱し、激しく蒸発した。
【0076】
得られたレンズの干渉色は、処理前に比べ黄色味が強くなっていた。
【0077】
得られたレンズは、実施例1同様の方法で評価した。評価結果は、表1に示すとおり撥水性能は低く、耐摩耗性も悪かった。これは、ZrO2 焼結体自身も一部蒸発して有機系被膜中に混入したためであると考えられる。
【0078】
【表1】
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、繊維状の導電性物質の塊に、有機系被膜形成物質を含浸させたものを、該有機系被膜形成物質の蒸発源とすることにより、その加熱方法によらず、安価でかつ容易に所望の形状に加工できる蒸着材料を提供することができ、さらに低出力でかつ安定的に蒸発させることができるため、高品質の有機系被膜を効率的に無機コート膜上に形成することができる。特に真空蒸着装置で最も一般的に用いられている電子銃を加熱源とした場合に、従来のセラミックや金属粉末の焼結体では困難であった、極めて低出力でかつ安定的に有効成分のみを高純度に蒸発させることが容易に実現できるため、極めて安価なランニングコストで高品質の有機系被膜を形成できるという顕著な効果が得られる。
【0080】
また、加熱方法として電子銃加熱を用いることにより、既存の真空蒸着装置をそのまま使用することができる、さらに従来から行われている反射防止加工などの基材に対する無機コート膜の形成工程の後、該基材を移動させることなく引続き有機系被膜の形成を行なうことができるため、加工工数、時間を大幅に低減することが可能となると共に、基材の移動に伴う表面の汚染を完全に防止できることから、極めて高品質の有機系被膜を形成することができる。
【0081】
さらに、繊維状の導電性物質の塊を少なくとも一方向が開放している保持枠に入れることにより、有機系被膜形成物質の付着量を極めて正確にコントロールすることができるため、均一な有機系被膜を安定的に形成することが極めて容易になり、かつ付着量を被膜形成に必要な最低限の量に精度よくコントロールすることが可能となり、製造コストを低減させることができる。また、加熱により溶解した有機系被膜形成物質が漏出して真空層内を汚染するのを防止することができるため、品質の安定化、汚染を原因とする装置の故障を防止できるといった顕著な効果が得られる。さらに、保持枠の開放部分の形状・方向を調整することにより、蒸発した有機系被膜形成物質の真空層内壁への付着を防止することが可能となり、真空層内の汚染によるトラブルや品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面処理用の蒸着材料の一例を示す断面図。
【図2】本発明の蒸着材料を電子銃加熱して表面処理する装置の一例を示す構成図。
【図3】本発明の蒸着材料を抵抗加熱して表面処理する装置の一例を示す構成図。
【図4】本発明の表面処理用の蒸着材料の他の一例を示す断面図。
【図5】本発明の表面処理用の蒸着材料のさらに他の一例を示す断面図。
【符号の説明】
1 スチールウール
2 アルミニウム枠
3 蒸着材料
4 蒸着材料
5 アルミナ焼結体枠
6 アルミニウム板
10 蒸着用ハース
11 無機コートレンズ
12 レンズ固定治具
20 電子銃
21 電子ビーム
22 ホットプレート
Claims (6)
- 真空槽内で有機系被膜形成物質を加熱・蒸発せしめ、無機コート膜上に有機系被膜を形成する表面処理方法において、該有機系被膜形成物質を繊維状の導電性物質の塊に付着させ、少なくとも一方向が開放している保持枠内の繊維状の導電性の塊に付着させた該有機系被膜形成物質を加熱し、該無機コート膜上に該有機系被膜を形成することを特徴とする表面処理方法。
- 該導電性物質が鉄、ステンレス、アルミニウム又は、銅又はカーボンであることを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。
- 該有機系被膜形成物質を電子銃加熱することを特徴とする請求項1または2記載の表面処理方法。
- 真空槽内で、有機系被膜形成物質を加熱・蒸発せしめ、無機コート膜上に有機系被膜を形成する表面処理用の蒸着材料において、少なくとも一方向が開放している保持枠内の繊維状の導電性物質の塊に該有機系被膜形成物質が付着していることを特徴とする蒸着材料。
- 該導電性物質が鉄、ステンレス、アルミニウム、銅またはカーボンであることを特徴とする請求項4記載の蒸着材料。
- 該導電性物質が、線径が0.01〜1mmの繊維状物質からなることを特徴とする請求項4または5記載の蒸着材料。
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