JP3727182B2 - 改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シート、その製造方法およびその成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シート、それを加熱成形して得られる成形体、および該発泡シートの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる、耐熱性、断熱性、緩衝性、成形性に優れた発泡シート、それを加熱成形して得られる外観美麗な耐熱性に優れた成形体、および前記発泡シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂からなる発泡シートは、一般に軽量で、断熱性や外部応力への緩衝性が良好であり、また真空成形などの加熱二次成形により容易に成形体を得ることができるので、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂を中心に、緩衝材や食品容器、断熱材、自動車用部材などの用途で幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂は、溶融時の粘度および抗張力が低いため、発泡時に気泡壁の強度が充分に保持されず、外観美麗な成形性に優れた発泡シートをうることが困難であった。そのため、ポリプロピレン系樹脂の発泡シートを真空成形などの加熱成形で、良好な成形体をえることが困難であった。
【0004】
ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シートを製造する手法として、従来、PP系樹脂に架橋剤と架橋助剤および熱分解型発泡剤を添加して成形し、加熱により架橋および発泡を行う方法(特公昭45−40420)、PP系樹脂に架橋助剤と分解型発泡剤を添加して成形し、放射線架橋の後に加熱発泡を行う方法(特公昭42−26953)、また近年ではシリル基を有するPP系樹脂に熱分解型発泡剤を添加して成形し、水架橋の後に加熱発泡を行う方法(特開平9−132662)などの架橋発泡法が行われてきた。
【0005】
しかしながら、架橋によりポリプロピレンに発泡性を付与する方法は、架橋工程を必要とするため連続的な発泡シートの製造が困難であり、架橋度の制御が困難であるため均一美麗な発泡シートの製造が困難であり、さらに溶融時の流れ性が著しく低下するためにリサイクルが困難であるなどの問題点がある。
【0006】
一方、無架橋のポリプロピレンを用いて発泡シートを製造する手法として、例えば、特定の分子量並びに平衡コンプライアンスを有するポリプロピレン系樹脂を用いる方法(特公表平5−506875)が近年提案されている。これらはポリプロピレン系樹脂に放射線を照射することにより長鎖分岐を導入せしめた樹脂を使用している。しかしながら、この方法によりポリプロピレン系樹脂を改質する場合、放射線を利用するために、用いる装置が大規模で、そして、その装置の構造が複雑なものになることが避けられない。また、放射線照射の工程において、PP系樹脂の分解およびゲル化を防ぎ、安定して製品を製造するためには、放射線の照射量および雰囲気ガスの酸素濃度を厳密に制御する必要がある。また、このようにして製造条件を厳密に制御する必要性があるために、目的とする改質ポリプロピレン系樹脂組成物の物性にバリエーションをもたせることが容易でなかった。また、良好な成形性を持ち、ポリプロピレン系樹脂特性を保持した成形体が得られる発泡シートを得るのは容易ではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、2次成形性に優れ、耐熱性、断熱性に優れた成形体を得ることができる改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シート、その製造方法、および該発泡シートを成形して得られる成形体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練してえられる改質ポリプロピレン系樹脂を用いて発泡シートにおいて、発泡体物性(密度、独立気泡率、厚み、厚み方向のセル数)を特定することにより、成形性に優れた発泡シートを得ることができることを見いだした。発泡シートの製造における冷却筒のシートの冷却において、径の拡大部を設け、その径を特定することによって、外観美麗なシートができることを見いだした。また、2次加工後の成形体においても、成形体厚みを規定することにより、ポリプロピレン系樹脂本来の特徴を損なうことなく、外観美麗な耐熱性、断熱性に優れた成形体を得られることを見いだし、本発明を完成するにいたった。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂組成物を、環状ダイスを通して低圧下に押し出して筒状に発泡させ、この筒状発泡体をダイス側に径の拡大部分を設けた冷却筒にて延伸・冷却した後切り開き、シート状に引き取ることにより得られる、密度0.5〜0.05g/cm3、独立気泡率60%以上、厚み0.8〜10.0mm、厚み方向のセル数5個以上である発泡シート(請求項1)、(2)冷却筒のダイス側拡大部の径Aとその後の冷却筒本体の径aの比が0.90≦a/A≦0.99であることを特徴とする、請求項1記載の発泡シート(請求項2)、(3)ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練した樹脂組成物を高温高圧下で発泡剤と混練して得られる樹脂組成物を環状ダイスを通して低圧下に押し出して筒状に発泡させ、この筒状発泡体をダイス側に径の拡大部分を設けた冷却筒にて延伸・冷却した後切り開き、シート状に引き取り、発泡シートを得ることを特徴とする改質ポリプロピレン系樹脂発泡シートの製造方法(請求項3)、(4)冷却筒のダイス側拡大部の径Aとその後の冷却筒本体の径aの比が0.90≦a/A≦0.99であることを特徴とする、請求項3記載の発泡シートの製造方法(請求項4)、(5)ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなり、密度0.5〜0.05g/cm 3 、独立気泡率60%以上、厚み0.8〜10.0mm、厚み方向のセル数5個以上である発泡シートを、2次成形して得られる成形体であって、発泡シートを2次発泡させ成形して得られた2次発泡成形体の厚さTが、2次発泡時の発泡シートのフリー厚さtに対して0.8t≧Tである成形体(請求項5)に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の改質ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練してえられる樹脂からなり、発泡性が著しく改良されているものである。
【0011】
本発明で用いられる改質ポリプロピレン系樹脂の製造例としては、ポリプロピレン系樹脂(以下、このポリプロピレン系樹脂のことを「原料ポリプロピレン系樹脂」ということもある)とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを樹脂が溶融する温度のもとで混練することにより得られる。
【0012】
前記原料ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体、またはプロピレンとほかの単量体とのランダム共重合体などの結晶性の重合体があげられ、剛性が高く、安価であるという点からは前記ポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からは前記プロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。前記原料ポリプロピレン系樹脂がプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体またはプロピレンとほかの単量体とのランダム共重合体である場合、ポリプロピレン系樹脂の特徴である高結晶性、高い剛性および良好な耐薬品性を保持する点から、含有されるプロピレン単量体成分が全体の75重量%以上であることが好ましく、全体の90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0013】
前記原料ポリプロピレン系樹脂において、プロピレンと共重合しうるほかの単量体としては、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体およびビニル単量体よりなる単量体の群から選ばれた1種または2種以上の単量体があげられる。
【0014】
これらの単量体のうち、エチレンまたはブテン−1が安価である点等から好ましい。
【0015】
前記原料ポリプロピレン系樹脂の分子量(重量平均分子量)は工業的に入手しやすいという点から、5万〜200万の範囲内にあることが好ましく、安価であるという点から、10万〜100万の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0016】
前記原料ポリプロピレン系樹脂には、必要に応じて、他の樹脂またはゴムを本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。前記ほかの樹脂またはゴムとしては、たとえばポリエチレン;ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレ∽e4e44893ン/ビニル単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体; スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などがあげられる。
【0017】
原料ポリプロピレン系樹脂に対する、これらの他の樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものであるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の改質ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とこのイソプレン単量体に共重合可能な他のビニル単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練することにより製造されてもよい。
【0019】
前記イソプレン単量体に、共重合可能な他のビニル単量体としては、たとえば塩化ビニル;塩化ビニリデン;スチレン;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;アクリルアミド;メタクリルアミド;酢酸ビニル;アクリル酸;メタクリル酸;マレイン酸;無水マレイン酸;アクリル酸金属塩;メタクリル酸金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステルなどがあげられる。
【0020】
イソプレン単量体とこのイソプレン単量体に共重合可能な他のビニル単量体とを併用する場合、イソプレン単量体に共重合可能な他のビニル単量体の添加量が、イソプレン単量体100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましく、平均して75重量部以下であることがさらに好ましい。イソプレン単量体に共重合可能なほかのビニル単量体の添加量が前記の範囲を超えると、得られる改質ポリプロピレン系樹脂の粘度が著しく低下し、発泡性が低下する場合がある。
【0021】
前記溶融混練されるイソプレン単量体の添加量は、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.3〜10重量部であることがさらに好ましい。前記イソプレン単量体の量が前記の範囲より少ない場合、改質ポリプロピレン系樹脂の発泡性が低下する場合があり、一方前記の範囲を超える場合は、ポリプロピレン系樹脂の特徴である耐熱性や剛性などを損なう場合がある。
【0022】
前記ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。前記ラジカル重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0023】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、改質ポリプロピレン系樹脂の発泡性が良好で、かつ経済的な観点から、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.2〜5重量部の範囲内にあることが更に好ましい。
【0024】
さらに、前記原料ポリプロピレン系樹脂には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、造核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0025】
これらの原料ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤およびそのほか添加される材料の混合や溶融混練の順序および方法はとくに制限されるものではなく、たとえば原料ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤および必要に応じて添加されるそのほかの添加材料を混合したのち溶融混練してもよいし、原料ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤および必要に応じて添加されるそのほかの添加材料を溶融混練した後にイソプレン単量体を溶融混練してもよいし、前記手法により改質ポリプロピレン系樹脂を得た後に、必要に応じて添加される添加剤や他の樹脂と溶融混練しても良いし、さらに原料ポリプロピレンの一部を改質してマスターバッチとした後に残余の原料ポリプロピレン系樹脂と溶融混練しても良い。
【0026】
溶融混練時の加熱温度は、樹脂の種類などにより異なるが、通常、130〜400℃であることが、原料ポリプロピレン系樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解せず、充分な発泡性をうることができるという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤およびイソプレン単量体を混合してからの時間)は、一般に30秒間〜60分間である。
【0027】
また、前記の溶融混練の装置としては、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型攪拌機またはダブルヘリカルリボン攪拌機などの縦型攪拌機など高分子材料を適宜の温度に加熱しえ、適宜の剪断応力を与えながら混練しうる装置があげられる。これらのうち、とくに単軸または2軸押出機が生産性の点から好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0028】
前述のようにして、本発明における改質ポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0029】
また、本発明における改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シートは、例えば、押出機内で改質ポリプロピレン系樹脂組成物と発泡剤を溶融混練後、押出機内において発泡最適温度に調節し、環状のリップを有するサーキュラーダイスを用い、そのダイスのリップから大気圧中に押し出して円筒状の発泡体を得、次いでその円筒状発泡体を引き取りながら、冷却筒(マンドレル)による成形加工によって、延伸・冷却後、切り開いて、シート状にする方法によって容易に製造される。また、改質ポリプロピレン系樹脂組成物の製造と連続して押出発泡を行っても良い。
【0030】
本発明においては、図1に示したように、上記冷却筒に拡大部を設けることを特徴とする。ポリプロピレン系樹脂においては冷却による収縮が大きいため、冷却筒での冷却において筒状発泡体と冷却筒の摩擦力が大きくなり、引き取りが行えない場合がある。本発明者らは、上記に鑑み、鋭意研究を行った結果、冷却筒に径の拡大部を設け、その大きさを特定することによって引き取りが可能になり
、外観美麗な発泡シートが得られることを見いだした。\
【0031】
本発明においては、拡大径Aとその後の冷却筒径aの比が0.90≦a/A≦0.99であること、さらに0.92≦a/A≦0.98であることが好ましい。0.9より小さい場合には、冷却筒での冷却が不足し、冷却筒通過後の放冷により発泡シート表面にしわが発生する傾向にある。また0.99より大きい場合には、引き取りの際の抵抗が大きく、引き取りが困難になる傾向にある。
【0032】
本発明の発泡シートを得るに際し、発泡剤を含む溶融樹脂の温度を樹脂の結晶化が起きる温度以上、樹脂の溶融温度+20℃以下に保つことが好ましい。また、ダイス内部における圧力を1.5MPa以上15MPa以下にすることが好ましい。
【0033】
前記発泡剤としてはたとえばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス;水などの1種または2種以上があげられる。
【0034】
前記の発泡剤の添加量(混練量)は発泡剤の種類および目標発泡倍率により異なるが、改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲内にあることが好ましい。
【0035】
また、発泡シートの気泡径を適宜の大きさにコントロールするために、必要に応じて、重炭酸ソーダ−クエン酸またはタルクなどの発泡核剤を併用してもよい。必要に応じて用いられる該発泡核剤の添加量は、通常、改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜3重量部であることが好ましい。
【0036】
また、本発明における改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シートは、所望の気泡構造を得る目的で、例えば、押出発泡した後に空気の吹き付けなどにより冷却を促進したり、マンドレルへの引き取り時に延伸してもよい。
【0037】
本発明における改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シートの密度は0.5〜0.05g/cm3好ましくは0.3〜0.06g/cm3さらに0.2〜0.08g/cm3であることが好ましい。0.05より小さい場合には、剛性に劣り、0.5より大きい場合には断熱性に劣る。
【0038】
本発明の改質PP系樹脂発泡シートにおいては、加熱し成形する際、2次発泡厚みを確保しなければ、金型での型決まりが悪く良好な成形体が得られない。この2次発泡は、発泡シートの独立気泡の膨張によって生ずる。従って、独立気泡率は60%以上、好ましくは70%以上さらに80%以上が好ましい。60%以下の場合には、加熱成型時の2次発泡倍率が小さくなり、金型の型決まりが悪く、良好な成形性が得られない。
【0039】
本発明における改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シートの厚さは、0.8〜10mmであり、より好ましくは1〜5mmである。0.8より小さくなると断熱性、剛性、緩衝性におとり、5mmより大きくなると、成形性におとる。セル数は5個が好ましく、さらに7個以上が好ましい。5個より小さくなると、断熱性、表面性に劣る。
【0040】
本発明の改質PP系樹脂発泡シートは2次成形において、加熱した発泡シートが、成形において充分に冷却固化されていない場合においては、金型からの離型後の放冷時に、結晶収縮により、成形体表面にしわが生じ、良好な成形体を得られない。以上の点より、2次発泡させ成形して得られた2次発泡成形体の厚さTを、2次発泡時の発泡シートのフリー厚さtに対して0.8t≧Tとすることにより、金型への密着性が高まり、冷却が十分に行われ、良好な成形体を得ることができる。0.8t<Tにおいては、外観、剛性に劣る。
また、本発明における改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シートは、プラグ成形や真空成形、圧空成形など加熱成形性に優れることから、厚みムラの少ない、外観美麗な成形体を得ることができる。
【0041】
加熱成形の例としては、プラグ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシス・トリバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形などの方法があげられる。
【0042】
前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シートの加熱成形性は、例えば、クランプした発泡シートを350℃に設定したオーブン中に入れて25秒間予備加熱した後、38℃に調節した金型を用いてプラグ成形により開口部外径100mm、底部外径60mm、高さ40mmのカップ状の成形体を作製することにより評価することができる。すなわち、二次成形性に優れる発泡シートから得られる成形体は外観が良好だが、二次成形性の悪い発泡シートから得られる成形体は表面に凹凸やスジが多く、場合により偏肉が激しく使用に耐えないものとなる。
【0043】
また、前記加熱成形は、発泡シートを予備加熱した後に成形するものであるが、予備加熱の際に発泡シートの二次発泡などにより、密度や厚み、独立気泡率が変化する場合がある。
【0044】
また、本発明の改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡シートは、表面性や剛性、加熱成形性などを改良する目的で、前記発泡シート表面に、熱可塑性樹脂からなる非発泡層を、片面または両面に形成してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられるが、特に発泡シートとの接着性の点より、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0045】
前記非発泡層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、発泡シートを作製した後に、別途作製した非発泡フィルムを加熱または接着剤を用いてラミネートして形成してもよいし、発泡シート上に直接Tダイから非発泡フィルムを押し出してラミネートして形成してもよい。
【0046】
【実施例】
つぎに本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
1)発泡シートの密度の測定
JIS−K6767に準じ測定した。
2)発泡シートの独立気泡率の測定
ASTM D-2856に記載の方法に準じエアピクノメータにより測定した。
3)発泡シートの厚み測定
発泡シートの幅方向に30mm間隔で測定点を設け、各測定点の厚みを厚みゲージ(teclock社製厚みゲージ)を用いて測定した後、各点の測定値の平均を発泡シートの厚みとした。
4)発泡シートの厚み方向のセル数測定
発泡シートの幅方向に等間隔に10点の測定点を設け、測定点における厚み方向のセル数をルーペ(peacock社製pocket・micro×10)を用いて測定した。その後、各点の測定値の平均を厚み方向のセル数とした。
5)発泡シートの外観評価
目視により以下の基準で評価した。
○:押出方向に平行のしわ(コルゲート)やケバが見られない。
【0047】
×:押出方向に平行のしわ(コルゲート)やケバが見られる。
6)成形性評価
目視により以下の基準で評価した
○:金型の形状に成形されており、しわが認められない。
△:金型の形状に成形されているが、しわが認められる。または、金型の形状に成形されておらず、しわが認められない。
×:金型の形状に成形されておらず、しわが認められる。
実施例1
プロピレン単独重合体(グランドポリマー社製 B101W)100重量部、ラジカル重合開始剤(日本油脂社製、商品名:パーブチルI)を0.3重量部をリボンブレンダーで攪拌混合した配合物を計量フィーダで(株)日本製鋼所製、二軸押出機(TEX44XCT−38)に供給し、液添ポンプを用いて押出機途中からイソプレンを2.5重量部供給し、前記二軸押出機中で溶融混練し、溶融押出することにより、改質ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
前記二軸押出機は、同方向二軸タイプであり、スクリュー径が44mmφであり、最大スクリュー有効長(L/D)が38であった。この二軸押出機のシリンダー部の設定温度を、イソプレン単量体圧入までは180℃、イソプレン圧入以降は200℃とし、スクリュー回転速度を150rpmに設定した。
【0048】
前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部、ブレンドオイル0.05重量部、気泡核形成剤(永和工業社製セルボンSC/K)0.5重量部を、リボンブレンダーで撹拌混合した配合物を40−50mmφタンデム型押出機に供給し、200℃に設定した第1段押出機(40mmφ)中にて溶融させたのち、発泡剤としてイソブタンを前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対し2.5重量部圧入混合し、165℃に設定した第2段押出機(50mmφ)中で冷却し、サーキュラーダイ(54mmφ)より大気圧下に吐出し、拡大部径(A)150mm、冷却筒本体直径(a)147mm、本体長さ80mmの冷却筒にて成形しながら1.2m/minで引き取りつつ内部に0.15m3/分で空気を吹き付けて延伸・冷却し円筒型発泡体を得、これをカッターで切り開くことにより470mm幅の発泡シートを得た。
【0049】
この発泡シートを評価したところ、密度0.175g/cm3、独立気泡率90%、セル数7個、厚み1.6mm、外観評価は○であった。
また、この発泡シートをクランプし、発泡シートを350℃に設定したオーブン中に入れて25秒間予備加熱した後、38℃に調節したクリアランス(T)1.5mmの金型を用いてプラグ成形により開口部外径100mm、底部外径60mm、高さ40mmのカップ状の成形体を作製し、得られる成形体の外観から以下の基準に従って加熱成形性を評価した。また、発泡シートの成形加熱時のフリーの厚み(t)は2.0mmであった。その結果を表2に示す。
実施例2
実施例1におけるプロピレン単独重合体の代わりに、エチレン−プロピレンランダム共重合体(グランドポリマー社製KM−B230:エチレン成分3重量%)を用い、発泡シート製造時の第1段押出機の設定温度を200℃、第2段押出機の設定温度を140℃とし、加熱成形性評価の際の予備加熱時間を15秒としたほかは実施例1と同様にして改質ポリプロピレン系樹脂発泡シートを得た。その結果を表2に示す。
比較例1
実施例1の改質ポリプロピレン系樹脂の代わりに、プロピレン単独重合体(グランドポリマー社製B101W)を用いたほかは、実施例1と同様にして発泡シートを得、評価した。その結果を表2に示す。
比較例2
実施例1の改質ポリプロピレン系樹脂の代わりに、エチレンプロピレンランダム共重合体(グランドポリマー社製KM−B230)を用い、発泡シート製造時の第1段押出機の設定温度を200℃、第2段押出機の設定温度を140℃とし、加熱成形性評価の際の予備加熱時間を15秒としたほかは、実施例1と同様にして発泡シートを得、評価した。その結果を表2に示す。
表1に実施例と比較例に用いた原料ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル開始剤を記載した。
比較例3
発泡シートの製造時の2段目押出機の設定温度を190℃とする以外は同様の方法にて発泡シートを得、評価を行った。
比較例4
成型時の金型クリアランスを2.0mmとする以外は実施例1と同様の方法にて、成形体を得た。評価結果を表3に示す。
比較例5
発泡シート製造時の冷却筒拡大部径を147mmとする以外は、実施例1と同様の方法にて発泡シートの製造を行った。その結果、引き取りが行えず、発泡シートが得られなかった。
【0050】
実施例における改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、独立気泡率が高く、外観美麗で、加熱成形性に優れるのに対し、比較例1に示した未変性のポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、独立気泡率が低く、外観が悪く、加熱成形性に劣ることが判る。また、比較例3より、独立気泡率が低く、セル数が少ないシートにおいては、外観が不良で、成形性に劣ることが判る。
【0051】
また、表3より、成型時のクリアランスを調整することによって、しわのない外観美麗で、充分使用にできる成形体が得られることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、外観美麗で成形性に優れ、また2次成形後の成形体に関しても良好な成形体を得ることができる。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ダイス側に径の拡大部分を設けた本発明の冷却筒(マンドレル)の例である。
Claims (5)
- ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂組成物を、高温高圧下で発泡剤と混練して得られる樹脂組成物を環状ダイスを通して低圧下に押し出して筒状に発泡させ、この筒状発泡体をダイス側に径の拡大部分を設けた冷却筒にて延伸・冷却した後切り開き、シート状に引き取ることにより得られる、密度0.5〜0.05g/cm3、独立気泡率60%以上、厚み0.8〜10.0mm、厚み方向のセル数5個以上である発泡シート。
- 冷却筒のダイス側拡大部の径Aとその後の冷却筒本体の径aの比が0.90≦a/A≦0.99であることを特徴とする、請求項1記載の発泡シート。
- ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練した樹脂組成物を高温高圧下で発泡剤と混練して得られる樹脂組成物を環状ダイスを通して低圧下に押し出して筒状に発泡させ、この筒状発泡体をダイス側に径の拡大部分を設けた冷却筒にて延伸・冷却した後切り開き、シート状に引き取り、発泡シートを得ることを特徴とする改質ポリプロピレン系樹脂発泡シートの製造方法。
- 冷却筒のダイス側拡大部の径Aとその後の冷却筒本体の径aの比が0.90≦a/A≦0.99であることを特徴とする、請求項3記載の発泡シートの製造方法。
- ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなり、密度0.5〜0.05g/cm 3 、独立気泡率60%以上、厚み0.8〜10.0mm、厚み方向のセル数5個以上である発泡シートを、2次成形して得られる成形体であって、発泡シートを2次発泡させ成形して得られた2次発泡成形体の厚さTが、2次発泡時の発泡シートのフリー厚さtに対して0.8t≧Tである成形体。
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