JP3723164B2 - 結紮治療具 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内視鏡の先端部に連結して静脈瘤の結紮治療を行なう結紮治療具に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、内視鏡による食道静脈瘤等の結紮治療を行なうとき、内視鏡を患者の体腔内から出し入れすることなく、複数箇所への結紮治療を行なうために、例えば、特開平１１−１６９３３５号公報に見られるような結紮治療具が知られている。
【０００３】
該結紮治療具は、図４に示すように、内視鏡Ａに連結された筒状の内筒部３０に弾発的に拡径された複数の結紮リングＢが装着されている。該内筒部３０の外側には外筒部３１が設けられ、内筒部３０と外筒部３１との間の空間にシリンダ部３２が形成されている。該シリンダ部３２には、内筒部３０の外壁に沿って進退自在の環状のピストン部材３３が設けられている。該シリンダ部３２には、チューブ３４が接続され、該チューブ３４を介してシリンダ部３３内に流体が導入される。該チューブ３４の基端部には流体圧送手段として例えばシリンジが接続される。ピストン部材３３の先端は最後部に位置する結紮リングＢに当接する。
【０００４】
そして、結紮治療を行なうときには、先ず、内筒部３０の内側に静脈瘤を吸引し、次いで、シリンダ部３２内へ流体を導入してピストン部材３３を前進させる。これに伴ってピストン部材３３が各結紮リングＢを押し送りし、最前部の結紮リングＢが内筒部３０の先端から脱離して静脈瘤を結紮する。続いて他の静脈瘤の結紮治療を行なうときには、他の静脈瘤を内筒部３０の内側に吸引して上記の手順を繰り返す。
【０００５】
これにより、複数の静脈瘤を結紮するときに、内視鏡を患者の体腔内から出し入れすることなく、また短時間に行なうことができるので、患者の苦痛を軽減することができる。
【０００６】
しかし、上記した従来の結紮治療具によると、シリンジ操作における流体の圧送加減によっては、一つの静脈瘤に対して複数の結紮リングＢが一度に内筒部３０の先端から脱離するおそれがあり、各結紮リングＢを一つずつ内筒部３０の先端から脱離させるためには施術者の熟練を要する不都合があった。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
かかる不都合を解消して本発明は、複数の結紮リングを保持して複数箇所の静脈瘤に対して迅速に結紮治療が行なえ、しかも、結紮リングを確実に一つずつ内筒部の先端から脱離させることができる結紮治療具を提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の結紮治療具は、内視鏡の先端部に設けられ、静脈瘤の結紮治療を行なうものであり、内視鏡の先端に連結される円筒状の内筒部と、該内筒部の外周に配列保持された複数の結紮リングと、該結紮リングを介して前記内筒部を包囲し、該内筒部との間の空間によりシリンダ部を形成する外筒部とを備えている。各結紮リングは弾発的に拡径されて内筒部に保持され、該内筒部に案内されて該内筒部の先端に向って移動自在とされている。前記シリンダ部内には、環状のピストン部材が設けられ、該ピストン部材は、最後部の結紮リングに当接して各結紮リングを前記内筒部の先端に向って押し出し自在とされている。また、該ピストン部材の後部側の前記シリンダ部内にエアを導入する第１エア流路が設けられており、該第１エア流路には前記シリンダ部内にエアを圧送するエア圧送手段が接続される。該エア圧送手段により第１エア流路を介してシリンダ部内にエアが圧送されることにより、前記ピストン部材が前進駆動され、各結紮リングを前記内筒部の先端に向って押し出すようになっている。
【０００９】
更に、前記内筒部の先端外周には、最前部の結紮リングが脱離自在に嵌合保持される環状溝が形成されている。該環状溝の底部には、エア排出口が開口形成されている。該エア排出口は、前記第１エア流路から分岐して前記内筒部に沿って延設された第２エア流路に連通して形成されている。
【００１０】
本発明によって静脈瘤等の結紮治療を行なうとき、先ず、前記内筒部の先端内部に静脈瘤を吸引する。次いで、最前部の結紮リングが環状溝に嵌合されエア排出口が閉塞された状態で、前記エア圧送手段から第１エア流路を介してシリンダ部内に所定量のエアを圧送する。そしてこのときのエア圧によってピストン部材が前進する。ピストン部材はその前進により最後部の結紮リングを押し送りし、それに追従させて各結紮リングを前進させる。これにより、最前部の結紮リングに隣接する後続の結紮リングが、環状溝に嵌合する方向に移動しながら最前部の結紮リングを環状溝から押し出す。環状溝は内筒部の先端に設けられているので、最前部の結紮リングは環状溝から脱離したところで内筒部の先端から外れ、弾発的に縮径する。これにより前記内筒部の先端内部に吸引された静脈瘤の根元が結紮される。次いで、内筒部の先端から外れた結紮リングに後続する結紮リングは、先行の結紮リングが環状溝から脱離したことにより弾発的に縮径して環状溝に嵌合する。
【００１１】
ここで、最前部の結紮リングが環状溝から脱離するとき、最前部の結紮リングに後続する結紮リングが環状溝に嵌合するまでの間、エア排出口が開放される。該エア排出口の開放により、エア圧送手段から第１エア流路を介してシリンダ部内に圧送されていたエアは第２エア流路を介してエア排出口から排出される。これにより、エア圧送手段からの所定量のエアが抜けきり、ピストン部材の前進が停止する。一方、後続の結紮リングは弾発的に環状溝に嵌合してエア排出口を閉塞し、次回にエア圧送手段からの所定量のエアが圧送されてピストン部材が前進するまで、嵌合状態が維持される。このように、本発明によれば、エア圧送手段から所定量のエアを圧送するだけで、結紮リングを確実に一つずつ内筒部の先端から脱離させることができる。更に続けて他の静脈瘤の結紮治療を行なうときには、上記の操作を繰り返して、内視鏡を患者の体腔内から出し入れすることなく結紮治療を続けることができる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図１は本実施形態の結紮治療具を示す説明的断面図、図２は本実施形態の結紮治療具の作動を示す説明図、図３は他の実施形態の結紮治療具の要部を示す説明的断面図である。
【００１３】
本実施形態の結紮治療具１は、図１に示すように、内視鏡Ａの先端部に連結され、食道や胃等の体腔内において静脈瘤の結紮治療を行なうものである。先ず、該結紮治療具１の構成を説明する。
【００１４】
該結紮治療具１は、内筒部２と、該内筒部２の外側に設けられた外筒部３とを備えている。内筒部２の後端部には、内視鏡Ａの先端を挿着する挿着部４が形成されており、該挿着部４に挿着された内視鏡Ａを強固に連結する筒状の連結部材５が設けられている。該内筒部２の周壁には、複数の結紮リングＢが装着されている。これらの結紮リングＢは弾発的に拡径され、縮径する復元力を有した状態で内筒部２の長手方向に沿って配列保持されている。また、該内筒部２の先端部の外周には、環状溝６が形成されている。該環状溝６は、最前部に位置する結紮リングＢ_１が脱離自在に嵌合される深さに形成されている。更に、該環状溝６の後側縁には、最前部の結紮リングＢ_１に隣接する後続の結紮リングＢ_２を該環状溝６内に案内する案内傾斜７が形成されている。該内筒部２の先端縁には、次第に縮径するテーパ部８が形成されており、結紮リングＢ_１が環状溝６から脱離したとき、該結紮リングＢ_１は弾発的な自己縮径によりテーパ部８に沿って移動して内筒部２から脱離するようになっている。
【００１５】
前記外筒部３は、内筒部２から所定の間隙（各結紮リングＢが移動自在となる寸法に設定されている）を存して該内筒部２を包囲しており、内筒部２との間にシリンダ部９を形成している。該シリンダ部９の内部には環状のピストン部材１０が設けられ、該ピストン部材１０は最後部の結紮リングＢ_３に当接している。即ち、各結紮リングＢは、ピストン部材１０と共にシリンダ部９の内部に収容されている。
【００１６】
該シリンダ部９の後端部には、ピストン部材１０を駆動させるエアを導入するエア導入口１１が設けられている。該エア導入口１１は外筒部３の内壁に形成されている。
【００１７】
該外筒部３は、内視鏡Ａに沿って延設されたチューブ１２の先端が接続されるチューブ接続部１３を備え、該チューブ接続部１３は前記エア導入口１１に連通している。該チューブ１２の基端部にはコネクタ１４が設けられており、該コネクタ１４にはエア圧送手段であるシリンジＣが接続される。該シリンジＣの操作によってチューブ１２を介して圧送された所定量のエアが、エア導入口１１を介してシリンダ部９に導入され、このときのエア圧によりピストン部材１０が前進するようになっている。前記チューブ１２及び前記エア導入口１１は本発明における第１エア流路を構成するものである。
【００１８】
また、該シリンダ部９の後端部には、該シリンダ部９からエアを導出するエア導出口１５が設けられている。該エア導出口１５は内筒部２の内壁に形成されている。更に、該エア導出口１５に連通して該内筒部２の長手方向に沿って延びる導通孔１６が形成されている。該導通孔１６の先端は、前記環状溝６の底部に開口形成されたエア排出口１７に連通している。前記エア導出口１５及び前記導通孔１６は本発明における第２エア流路を構成するものである。
【００１９】
次に、本実施形態による結紮治療具１の作動を説明する。内視鏡Ａは患者の体腔内に導入され、先ず、図２（ａ）に示すように、最前部の結紮リングＢ_１が前記環状溝６に嵌合した状態で、図示しない静脈瘤が内筒部２内に吸引される。結紮リングＢ_１が前記環状溝６に嵌合していることにより、前記エア排出口１７は閉塞されている。
【００２０】
次いで、図１を参照すれば、前記シリンジＣによって所定量のエアをシリンダ部９に圧送する。これにより、前記ピストン部材１０が前進し、その押圧力によって各結紮リングＢが押し送りされる。これにより、図２（ｂ）に示すように、最前部の結紮リングＢ_１に隣接する後続の結紮リングＢ_２が最前部の結紮リングＢ_１を後押しし、最前部の結紮リングＢ_１が環状溝６から脱離する。結紮リングＢ_１が環状溝６から離脱することによって、該環状溝６の底部に形成されているエア排出口１７が開放される。エア排出口１７が開放されたとき、シリンダ部９内のエアが前記エア導出口１５及び導通孔１６を経てエア排出口１７から放出される。これによって、シリンジＣのエアが抜けきってエア圧が急激に低下し、ピストン部材１０の前進が停止する。
【００２１】
一方、図２（ｃ）に示すように、環状溝６から脱離した最前部の結紮リングＢ_１は、弾発的に自己縮径しつつ前記テーパ部８を経て内筒部２の先端から脱離し、図示しない静脈瘤を結紮する。他方、後続の結紮リングＢ_２は、最前部の結紮リングＢ_１が環状溝６から脱離したことによって前方からの規制が無くなり、ピストン部材１０の押圧力によることなく、前記案内傾斜７の案内によって弾発的に自己縮径して環状溝６に嵌合する。このように、施術者の熟練によることなく、一回のシリンジＣ操作で、最前部の結紮リングＢ_１のみを確実に内筒部２から脱離させることができる。
【００２２】
そして、続けて他の静脈瘤の結紮治療を行なう場合には、内視鏡Ａを患者の体腔内に導入したまま、他の静脈瘤を内筒部２内に吸引し、前記シリンジＣによる所定量のエアの圧送操作を行なう。
【００２３】
なお、本実施形態においては、前記チューブ１２及び前記エア導入口１１により本発明の第１エア流路を構成し、前記エア導出口１５及び前記導通孔１６により本発明の第２エア流路を構成したものを示したが、それ以外に、第２エア流路を図３（ａ）及び（ｂ）に示す構成を採用してもよい。なお、前述した実施形態において説明したもと同様の部分については、図中同じ符号を付してその説明を省略する。即ち、該結紮治療具２０は、図３に示すように、エア導入口１１に連通するチューブ接続部１３に接続された第１のチューブ２１から分岐する第２のチューブ２２を備えている。該第２のチューブ２２は、その先端が内筒部２に挿通されて導通孔１６に接続されている。また、第２のチューブ２２の分岐位置には切換え弁２３が設けられている。該切換え弁２３は、所謂三方活栓等が採用され、第１のチューブ２１と第２のチューブ２２とを導通状態とし、切換え操作によって第２のチューブ２２へのエアの流動を停止することができるものである。
【００２４】
このように構成することで、例えば、該結紮治療具２０の使い始め等に最前部の結紮リングＢ_１が環状溝６に嵌合されていないときには、切換え弁２３を操作して第１のチューブ２１からのみエアを流動させる。これによって、シリンダ部９へエアを圧送してピストン部材１０を前進させることができ、最前部の結紮リングＢ_１を環状溝６に嵌合させることができる。そして、結紮治療の際には、前記切換え弁２３により、第１のチューブ２１と第２のチューブ２２とを導通状態（図示する状態）としておくことにより、前述した結紮治療具１と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態の結紮治療具を示す説明的断面図。
【図２】本実施形態の結紮治療具の作動を示す説明図。
【図３】他の実施形態の結紮治療具の要部を示す説明的断面図。
【図４】従来の結紮治療具を示す説明的断面図。
【符号の説明】
Ａ…内視鏡、Ｂ，Ｂ_１，Ｂ_２，Ｂ_３…結紮リング、Ｃ…シリンジ（エア圧送手段）、１，２０…結紮治療具、２…内筒部、３…外筒部、６…環状溝、９…シリンダ部、１０…ピストン部材、１１…エア導入口（第１エア流路）、１２…チューブ（第１エア流路）、１５…エア導出口（第２エア流路）、１６…導通孔（第２エア流路）、１７…エア排出口、２１…第１のチューブ（第１エア流路）、２２…第２のチューブ（第２エア流路）。

Claims (1)

1. 内視鏡の先端部に設けられ、静脈瘤の結紮治療を行なう結紮治療具において、
   内視鏡の先端に連結される円筒状の内筒部と、
   該内筒部の外周に弾発的に拡径されて配列保持され、該内筒部に案内されて該内筒部の先端に向って移動自在の複数の結紮リングと、
   該結紮リングを介して前記内筒部を包囲し、該内筒部との間の空間によりシリンダ部を形成する外筒部と、
   該シリンダ部内に設けられ、最後部の結紮リングに当接して各結紮リングを前記内筒部の先端に向って押し出し自在の環状のピストン部材と、
   該ピストン部材の後部側の前記シリンダ部内に、該ピストン部材を前進駆動するエアを導入する第１エア流路と、
   該第１エア流路を介して前記シリンダ部内に所定量のエアを圧送するエア圧送手段と、
   前記内筒部の先端外周に形成され、最前部の結紮リングが脱離自在に嵌合保持される環状溝と、
   前記第１エア流路から分岐して前記内筒部に沿って延設された第２エア流路と、
   該第２エア流路に連通して前記環状溝の底部に開口形成されたエア排出口とを備えて成り、
   該エア排出口は、前記環状溝に嵌合された結紮リングによって閉塞され、該結紮リングが前記ピストン部材の押圧力により該環状溝から脱離したとき開放され、該エア排出口の開放により前記エア圧送手段から前記シリンダ部へ圧送されるエアを排出してピストン部材を停止させることを特徴とする結紮治療具。

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