JP3722362B2 - 新規な含フッ素ケトン化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な含フッ素ケトン化合物及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、含フッ素ポリマー製造用モノマー、界面活性剤、農薬、医薬品などのフッ素含有製品の原料や合成中間体、更に、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に代替し得る伝熱媒体、洗浄剤、消火剤、反応溶媒などとして使用できる新規な含フッ素ケトン化合物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、含フッ素ケトン化合物は、種々のフッ素含有製品の原料や合成中間体として有用であり、例えば、界面活性剤、農薬、医薬品などの製造に用いることができる。
一方、従来より、冷媒、伝熱媒体、発泡剤、洗浄剤、消火剤、反応溶媒などとして、クロロフルオロカーボン(CFC)類が広く利用されてきた。このCFC類は、毒性が少なく、不燃性で、化学的及び熱的に安定であることから、各種の産業分野に広く使用されていた。しかしながら、このように優れた特徴を有するCFC類は、大気中に放出されると、成層圏のオゾン層を破壊するため、人類を含む地球上の生態系に重大な悪影響を及ぼすことが指摘され、その製造が1995年末に国際的条約により禁止されるに至った。また、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類は、CFC類ほどその影響は大きくないものの、オゾン層を破壊するために、2020年までに、その使用及び製造が段階的に制限されていくことが決定している。
【0003】
このような地球環境問題に対処するために、大気中に放出された場合にもオゾン層を破壊しない冷媒、伝熱媒体、発泡剤、洗浄剤、消火剤、反応溶媒などとして使用できる、CFC類、HCFC類に代替し得る化合物が求められている。この目的に応えうる化合物として、例えば、ヘテロ原子に酸素原子を持つポリフルオロアルキルエーテル類(日本特許第2908033号、3099964号)や、更に、2重結合を付与することにより分解性を向上させたポリフルオロアルキル基を持つケトン類が提案されている(日本特許第2961924号、2869432号、2952414号、3141325号)。
一方、後者のケトン系の候補化合物として、分子内に含窒素ペルフルオロアルキル基を持つポリフルオロアルキルケトンについては、ペルフルオロアルキル基の中にヘテロ原子として窒素原子が挿入されていることから、更に、適度の分解性(すなわち、地球環境にやさしい性質)を持つ化合物として期待できる。そのため、該化合物は、有用な含フッ素製品の素材として考えられていたものの、この種の化合物は、これまでに知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記含フッ素製品の素材として使用することができる新規な含フッ素ケトン化合物を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、対応する含窒素カルボン酸メチルの電解フッ素化反応により一段階で容易に合成することができる含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリドをそのまま原料として用いて、これと相当する有機金属化合物を反応させることにより新規なペルフルオロアルキル・アルキルケトン化合物を製造することで所期の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、界面活性剤、農薬、医薬品などのフッ素含有製品の原料や合成中間体、更に、CFC、HCFCに代替し得る冷媒、伝熱媒体、発泡剤、洗浄剤、消火剤、反応溶媒などとして使用できる新規な含フッ素ケトン化合物を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の新規な含フッ素ケトン化合物を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、Rは炭素数が1〜4の低級脂肪族アルキル基を示す。また、RF 1,RF 2は、炭素数が1〜3の低級脂肪族ペルフルオロアルキル基を示し、これらは酸素原子を介して、あるいは介さないで5員環又は6員環の複素環を形成してもよい。n=1〜2の整数。)で表される新規な含フッ素ケトン化合物、である。
【0008】
また、本発明は、上記一般式(1)で表される新規な含フッ素ケトン化合物を製造する方法であって、下記一般式(2)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、RF 1,RF 2は、炭素数が1〜3の低級脂肪族ペルフルオロアルキル基を示し、これらは酸素原子を介して、あるいは介さないで5員環又は6員環の複素環を形成してもよい。n=1〜2の整数。)で表される含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリドと、低級脂肪族アルキル基をもつ有機金属化合物を、非プロトン性極性溶媒中で反応させることを特徴とする含フッ素ケトンの製造方法、である。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
ペルフルオロアルキル・アルキルケトンの一般的な合成方法としては、例えば、1)含フッ素カルボン酸に2当量のグリニヤール試薬又は有機リチウム化合物を作用させる方法[Organic Reactions Vol.18, Chapter 1, M.J. Jorgensen, "Preparation of Ketones from the Reaction of Organolithium Reagents withCarboxylic Acids", John Wiley & Sons (1970) ]、及び2)含フッ素カルボン酸塩化物に有機金属化合物を作用させる方法、挙げられる。また、上記の2つの方法以外にも、相当する含フッ素カルボン酸のエステルやケトエステル類の塩基触媒下での縮合反応、次いで、その縮合生成物の加水分解反応による方法、が広く知られている[A.M. Lovelace, D.A. Rausch and W. Postelnek, "AliphaticFluorine Compounds", ACS Monograph No. 138, Reinhold Publishing Co. (1957), p.182 ].
【0012】
上記一般的な合成方法のうち、上記2)の酸塩化物の反応に用いる金属化合物としては、有機亜鉛、有機カドミウム又は銅のアート錯体が知られている。酸塩化物との反応に用いられるこれらの試薬には、選択性があり、この試薬は、生成したケトンと更に反応することはない。反応性の大きいグリニヤール試薬を用いる方法としては、酸塩化物の溶液に、限られた量のグリニヤール試薬を滴下する方法がある程度用いられていたが、グリニヤール試薬よりも更に反応性の高い有機リチウム化合物と酸塩化物との反応によりケトンが合成されたことは殆どなかった。また、基質の方からみると、酸塩化物の代わりに酸フッ化物を用いることもなかった。
【0013】
本発明によれば、対応する含窒素カルボン酸メチルの電解フッ素化反応により一段階で容易に合成することができる含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリドをそのまま原料として用いて、これと相当する有機金属化合物を反応させることにより、容易に含窒素ペルフルオロアルキル基を持つ新規なペルフルオロアルキル・アルキルケトン化合物を製造することができる。
【0014】
本発明で用いる含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリドは、対応する含窒素カルボン酸メチルの電解フッ素化反応により一段階で容易に合成することができる。例えば、ペルフルオロピロリジノアセチルフルオリド、ペルフルオロモルホリノアセチルフルオリド、及びペルフルオロ[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオニルフルオリド]は、それぞれピロリジノ酢酸メチル、モルホリノ酢酸メチル、及び3−(N,N−ジメチルアミノ) プロピオン酸メチルを、無水フッ化水素酸中で電解フッ素化することにより好収率で合成することができる[T. Abe, E. Hayashi, H. Baba, H. Fukaya, J. Fluorine Chem., 48 (1990) 257-278; 50 (1990) 173-196 ]。無水フッ化水素酸から分離したフッ素化生成物中には、目的の含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリドと共に、各種の開裂生成物が混在しているが、ペルフルオロカルボン酸フルオリドの精製工程を省いて、その混合物のままで、有機金属化合物との反応に用いることができる。
【0015】
本発明において、有機金属化合物としては、ブチルリチウムやメチルリチウムなどの有機リチウム化合物、グリニヤール試薬、有機亜鉛化合物、有機カドミウム化合物などが挙げられるが、好ましくはブチルリチウムやメチルリチウムなどの有機リチウム化合物やグリニヤール試薬が使用される。
本発明の方法では、溶媒が用いられるが、この場合は、エーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフランなどの非プロトン性極性溶媒を使用することが好ましい。また、この場合、目的とする含フッ素ケトンの収率を向上させるためには、完全に脱水した溶媒を用いることが好ましい。
【0016】
有機金属化合物の使用量は、試薬が有機亜鉛化合物又はカドミウム化合物のように選択性がある場合には、特に限定されず、含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリド1molに対して1〜5mol、好ましくは1〜2molである。一方、リチウム化合物又はグリニヤール試薬のように反応性が大きく選択性が低い場合には、得られるケトンの収率は、用いた試薬の当量に鋭敏に影響される。この場合には、含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリドに対して、ほぼ当量の試薬が好ましく使用される。
【0017】
反応は、溶媒に含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリドを溶解、又は分散させ、有機金属化合物を導入することにより行う。有機金属化合物の添加は、反応の制御のために反応中に連続的又は間欠的に導入することにより行われる。
反応温度は、用いる有機金属化合物の種類や反応条件(試薬の滴下速度、反応規模など)により大きく異なるが、−110℃から100℃の温度範囲が適用される。グリニヤール試薬や有機リチウム化合物を用いる場合には、比較的低温の温度範囲(−100℃から20℃)が用いられ、有機亜鉛化合物や有機カドミウム化合物の場合には、反応の速度が遅いために比較的高温の温度範囲(0℃から50℃)が好ましく用いられる。
反応時間は、使用する有機金属化合物の種類や反応条件などにより一概に決定できないが、数10分から数時間あれば、反応はほぼ完結する。
【0018】
上記方法により合成される新規含フッ素ケトン化合物は、1)各種のフッ素含有製品の出発原料、2)その合成中間体、3)CFC、HCFCに代替し得る材料、として有用である。まず、上記1)の出発原料としての一例について具体的に説明すると、本発明化合物である新規含フッ素ケトン化合物を還元剤(例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウムなど)を用い、還元反応を行うと、含フッ素ポリマーやノニオン系含フッ素界面活性材の原料として有用な対応する第2級アルコールへ導くことができる。また、この化合物は、不斉炭素を有する含フッ素アルコールであるために、これを光学分割することにより、光学活性を利用する各種製品の原料となる。
【0019】
【化5】
【0020】
また、上記2)の合成中間体としての一例について具体的に説明すると、含フッ素アルコールとアクリル酸クロリドとの反応により、対応する含フッ素アクリル酸エステルが容易に得られる。これは、含フッ素アクリル樹脂のモノマー原料となる。
【0021】
【化6】
【0022】
また、上記3)の代替材料としての一例について具体的に説明すると、メチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンは、沸点が123.97℃、密度が1.6169(23℃)を有する無色透明の液体であり、このものを単独で、あるいは他の溶媒(例えば、炭化水素系、HCHC系、含フッ素エーテル系など)と混合することにより、これらは、従来、CFC系フッ素系溶剤として使われてきたような、金属製あるいはプラスチック製の精密部品の水切剤や洗浄剤に使用することができる。
【0023】
【実施例】
次に、本発明の新規含フッ素ケトン及びその製造例について実施例を挙げて具体的に説明する。
実施例1
ペルフルオロモルホリノアセチルフルオリドと有機リチウム化合物(n−C4H9 Li)との反応によるn−ブチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの合成
粗製のペルフルオロ(モルホリノアセチルフルオリド)75.7gを500mL四つ口フラスコにとり、200mLの乾燥エーテルを加えた。次いで、滴下ロートにn−ブチルリチウムの溶液90mL(約0.133モル)を入れてから攪拌を開始し、液体窒素をフラスコ用ステンレス製広口デュア−瓶に注ぎフラスコの温度を下げた。内部の温度が−100℃まで下がったところで、ブチルリチウム溶液の滴下を開始して、冷却浴の高さと滴下の速度を加減して、内部温度が約−100℃に保たれるようにした。滴下には25分を要した。その後、約2時間を要して、13℃まで内部温度が上昇した後、反応混合物を数日放置してから加水分解した。糊状の不溶物がエーテル層と水槽の分離を妨げたので、この不溶物を吸引濾過によって除いた。エーテル層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に、エーテル層を留去後に減圧分別蒸留することにより、n−ブチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトン、bp68℃/29mmHg、27.5g(0.0753mol)を得た。粗原料中の当該酸フッ化物の割合が60%であったので、原料中の当該フッ化物の量は0.139molであり、これを基にすると、n−ブチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの収率は54%であった。
【0024】
目的生成物のIR、1 H−NMR、19F−NMR及びMSデータを以下に示す。
IR (capillary film)(cm-1):2968ν(CH)(w),2943ν(CH)(w),2878ν(CH)(w),1769ν[C(O)](ms),1467(w),1408(w),1333(ms),1300(vs),1217(vs),1164(vs),1145(vs),1083(m),1016(w),970(w),927(s),817(w),754(w),657(w).
【0025】
1 H−NMR(CDCl3 ):δ2.75[2H,t,J=7,−C(O)CH2 ],δ1,68[2H,t−t,J=7,J=6,−C(O)CH2 CH2 CH2 CH3 ],δ1.38[2H,q−t,J=7,J=7,−C(O)CH2CH2 CH2 CH3 ],δ0.97[3H,t,J=7,CH3 ].
19F−NMR(CFCl3 ),δ−85.6[4F,s,c−O(CF2 CF2)2 ],δ−90.9[4F,t,J=14,c−N(CF2 CF2 )2 ],δ−88.8[2F,quin,J=14,NCF2 ].
【0026】
MS:m/e280c−O(CF2 CF2 )2 NCF2 + (2.8),164C3 F6 N+ (1.6),119C2 F5 + (8.),114C2 F4 N+ (8.9),100C2 F4 + (4.2),85C(O)C4 H9 + (28.1),69CF3 + (5.6),57C4 H9 + (100),41C3 H5 + (78.9).
【0027】
実施例2
ペルフルオロ(モルホリノアセチルフルオリド)とグリニヤール試薬(C2 H5 MgBr)との反応によるエチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの合成
実施例1とほぼ同様に、容量500mLの四つ口フラスコ中に、粗製のペルフルオロ(モルホリノアセチルフルオリド)65.7g[63%含有率として41.4g(0.126mol)を含有]を採り、エーテル200mLを加えた後、アルゴン雰囲気下で機械攪拌して、この中にグリニヤール試薬(C2 H5 MgBr:1.00当量)を滴下した。この実験では、滴下中の内部温度は−50℃に保たれた。冷却を次第にゆるめて、内部温度が18℃になった時に、激しく攪拌しながら水を20mL加えて反応を停止させた。エーテル溶液をデカンテ−ションによって不純物から分離し、硫酸マグネシウムで乾燥後エーテルを留去し、残液を減圧分別蒸留したところ、エチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトン、bp48℃/44mmHg、25.8g(0.08mol)を得た。原料中に含まれる当該酸フッ化物の量を基にすると、エチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの収率は63%であった。
【0028】
目的生成物のIR、1 H−NMR、19F−NMR及びMSデータを以下に示す。
IR (capillary film)(cm-1):2995ν(CH)(w),2943ν(CH)(w),2878ν(CH)(w),1771ν[C(O)](ms),1506(w),1412(w),1300(vs),1215(vs),1170〜1142(vs),1083(m),1018(w),957(w),926(s),787(w),714(w),656(w).
【0029】
1 H−NMR(CDCl3 ):δ2.79[2H,t,J=7,−C(O)CH2 ],δ1.20[3H,t,J=7,CH3 ].
19F−NMR(CFCl3 ),δ−85.7[4F,s,c−O(CF2 CF2)2 ],δ−91.0[4F,t,J=14,c−N(CF2 CF2 )2 ],δ−88.7[2F,quin,J=14,NCF2 ].
【0030】
MS:m/e280c−O(CF2 CF2 )2 NCF2 + (9.3),119C2 F5 (6.3),114C2 F4 + (10.0),100C2 F4 + (5.8),69CF3 + (6.3),57C(O)C2 H5 + (8.4),41C3 H5 + (100).
【0031】
実施例3
ペルフルオロ(モルホリノアセチルフルオリド)とジエチルカドミウムとの反応によるエチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの合成
実験方法は、グリニヤール試薬の替わりに、塩化カドミウムとグリニヤール試薬との反応により調製したジエチルカドミウムを使用した以外は、実施例2とほぼ同様に行った。粗製のジエチルカドミウムは、200mLの四つ口フラスコ中に、アルゴンガスの気流下に塩化カドミウムの粉末をエーテル中で攪拌して、グリニヤール試薬のエーテル溶液を加えた後に、一時間加熱還流して調製した。この混合物を氷冷し、この中に粗製のペルフルオロ(モルホリノアセチルフルオリド)20g[63%含有率として12.6g(0.039mol)を含有]を50mLの乾燥エーテルに溶解した溶液を加えた後に、5時間熱還流した。反応後に、5mLの水を加えて反応を停止させた。実施例2と同様に、エーテル層を分離し、乾燥後に分別蒸留をしたところ、エチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンが6.9g(0.021mol)得られた。原料中に含まれる当該酸フッ化物の量を基にすると、エチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの収率は53%であった。
【0032】
実施例4
ペルフルオロ(モルホリノアセチルフルオリド)とグリニヤール試薬(CH3MgI)との反応によるメチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの合成
実験方法は、グリニヤール試薬として、臭化エチルマグネシウムの替わりに、ヨウ化メチルマグネシウム(CH3 MgI)を使用した以外は、実施例2とほぼ同様に行った。すなわち、粗製のペルフルオロ(モルホリノアセチルフルオリド)104.8g[63%含有率として該酸フルオリドを66.0g(0.201mol)を含有]を反応フラスコに入れ、更に、エーテル250mLを加えて機械攪拌し、−100℃の内部温度を保ちながら、ヨウ化メチルマグネシウムのエーテル溶液157mL(0.23mol)を約1時間を要して加えた。冷却を次第にゆるめて、0℃付近になったところで、激しく攪拌しながら水25mLを加えて反応を停止させ、デカンテーシヨンによって分離したエーテルを分離し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エーテルを留去した。残液の減圧分別蒸留によって、メチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトン、bp35℃/49mmHg、35g(0.108mol)を得た。原料中に含まれる当該酸フッ化物の量を基にすると、メチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの収率は54%であった。
【0033】
新規化合物として得られたメチル・ペルフルオロ(モルホリノメチル)ケトンの物理化学データ、並びにIR、1 H−NMR、19F−NMR及びMSデータを以下に示す。
沸点:123.97℃(760mmHgで測定)、密度:1.6169(23℃で測定)、蒸気圧:12.4mmHg(23℃で測定).
【0034】
IR(capillary film)(cm-1):2928ν(CH)(w),1774ν[C(O)](ms),1425(w),1412(w),1337(ms),1300(vs),1217〜1142(vs),1082(m),1016(w),956(w),926(s),818(w),797(w),657(w).
【0035】
1 H−NMR(CDCl3 ):δ2.45[t,J=1.3,−C(O)CH3].
19F−NMR(CFCl3 ),δ−85.7[4F,s,O(CF2 )2 ],δ−89.0[2F,quintet,J=14,NCF2 ],δ−91.7[4F,t,J=14,N(CF2 )2 ].
【0036】
MS:m/e280c−O(CF2 CF2 )2 NCF2 + (1.3),262(3.3),164C3 F6 N+ (2.6),119C2 F5 + (7.9),114C2 F4 N+ (12.0),100C2 F4 + (7.9),69CF3 + (8.2),50CF2 + (3.1),43C(O)CH3 + (100).
【0037】
実施例5
ペルフルオロ(ピロリジノアセチルフルオリド)とグリニヤール試薬(CH3 MgBr)との反応によるメチル・ペルフルオロ(ピロリジノメチル)ケトンの合成
容量が500mLの四つ口フラスコ中に101gの粗製のペルフルオロ(ピロリジノアセチルフルオリド)を採り、250mLの乾燥エーテルを加えた。フラスコの中央口には、機械式攪拌機を付け、側管には低温温度計(−150〜+30℃)、滴下ロート、及び上部よりアルゴンガスを導入したジムロート冷却器をそれぞれ装着した。ステンレス製デュアー瓶に入れた液体窒素で冷却して反応温度を−100℃に調節した。内部温度が−100℃まで低下した時点で、30分を要して臭化メチルマグネシウムのエーテル溶液(89mL,0.217mol)を滴下した。その間、試薬の滴下速度と液体窒素を入れたデュアー瓶の高さを加減して内部の温度を−110℃と−100℃の間に保った。滴下後、攪拌を続けて内部温度を徐々に上昇させ、0℃に上昇してから(約1時間半後)25mLの水を加えたところ、弱い発熱が起こり、ゼリー状の不溶物とともに殆ど透明なエーテル溶液が生成した。
【0038】
デカンテーションによりエーテルを分離し、不溶物を少量のエーテルで2回洗浄して洗浄液をエーテル溶液に合体し、合体溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。エーテル留去後に残液を減圧下に分別蒸留し、メチル・ペルフルオロ(ピロリジノメチル)ケトン、bp37℃/39mmHg、31.8g(0.102mol)を得た。粗原料中の当該酸フッ化物の割合が56%であったので、原料中の当該フッ化物の量は0.182molであり、これを基にすると、メチル・ペルフルオロ(ピロリジノメチル)ケトンの収率は56%であった。
新規化合物として得られたメチル・ペルフルオロ(ピロリジノメチル)ケトンの物理化学データ、並びにIR、1 H−NMR、19F−NMR及びMSデータを以下に示す。
沸点:115.1℃(760mmHgで測定)、密度:1.6103(23℃で測定)、蒸気圧:18.0mmHg(23℃で測定).
【0039】
IR(capillary film)(cm-1):2928ν(CH)(w),1772ν[C(O)](ms),1430(w),1402(w),1337(vs),1307(ms),1274(w),1216(vs),1171(s),1133(s),1083(m),1031(m),1007(w),872(m),804(m),639(w),602(w).
【0040】
1 H−NMR(CDCl3 ):δ2.46[t,J=1.4,−C(O)CH3].
19F−NMR(CFCl3 ),δ−90.7[4F,t,J=9,c−(CF2CF2 )2 N],δ−91.1[2F,quintet,J=9,NCF2 ],δ−132.9[4F,s,J=14,c−(CF2 CF2 )2 N].
【0041】
MS:m/e264c−(CF2 CF2 )2 NCF2 + (4.7),246(4.4),214(2.1),145(3.3),114C2 F4 N+ (6.6),100C2 F4 + (4.3),69CF3 + (12.8),50CF2 + (2.3),43C(O)CH3 + (100).
【0042】
実施例6
ペルフルオロ(3−N,N−ジメチルアミノプロピオニルフルオリド)とグリニヤール試薬(CH3 MgBr)との反応によるメチル・ペルフルオロ(2−N,N−ジメチルアミノエチル)ケトンの合成
実験方法は、原料の含窒素ペルフルオロカルボン酸フルオリドとして、ペルフルオロ(モルホリノアセチルフルオリド)の替わりに、ペルフルオロ(3−N,N−ジメチルアミノプロピオニルフルオリド)を使用した以外は、実施例4とほぼ同様に行った。すなわち、粗製のペルフルオロ(3−N,N−ジメチルアミノプロピオニルフルオリド)のサンプル100g(含有率が70%として0.234moL) をフラスコに採り、エーテル250mLを加えて攪拌し、−100℃の内部温度を保って、臭化メチルマグネシウム(0.234mol)の溶液100mLを約1時間を要して加えた。冷却をゆるめて、1時間で内部温度を0℃まで上昇させ、激しく攪拌しながら水25mLを加えたところ、不純物はフラスコ内壁に付着し、ほとんど透明なエーテル溶液をデカンテーシヨンにより分離することが出来た。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エーテルを留去し、残液を分別蒸留をしたところ、メチル・ペルフルオロ(2−N,N−ジメチルアミノエチル)ケトン、bp101〜102℃、31.1g(0.105mol)を得た。原料中に含まれる当該酸フッ化物の量を基にすると、メチル・ペルフルオロ(2−N,N−ジメチルアミノエチル)ケトンの収率は45%であった。
【0043】
新規化合物として得られたメチル・ペルフルオロ(2−N,N−ジメチルアミノエチル)ケトンの物理化学的データ、並びにそれらのIR、1 H−NMR、19F−NMR及びMSデータを以下に示す。
沸点:100.1℃(760mmHgで測定) 、密度:1.5645(25℃で測定) 、蒸気圧:34.1mmHg(25℃で測定) 。
【0044】
IR(capillary film)(cm-1):2935ν(CH)(w),1763ν[C(O)](ms),1425(w),1320〜1352(vs),1208(vs),1120(m),1044(w),883(m),834(m),763(m),728(ms).
【0045】
1 H−NMR(CDCl3 ):δ2.46[−C(O)CH3 ].
19F−NMR(CFCl3 ),δ−52.8[6F,t−t,J=7.5,J=15.0,(CF3 )2 N],δ−91.4[2F,heptet,J=15.0,NCF2 CF2 ],δ−120.2[2F,heptet,J=7.3,NCF2 CF2 ].
【0046】
MS:m/e143CF2 CF2 NC(O)CH3 + (15.5),119C2F5 + (2.4),114C2 F4 N+ (8.2),100C2 F4 + (5.5),69CF3 + (30.7),50CF2 + (2.0),43C(O)CH3 + (100).
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、新規な含フッ素ケトン化合物及びその製造方法に係るものであり、本発明によれば、新規な含フッ素ケトン化合物及びそれを効率よく製造する方法が提供される。この新規な含フッ素ケトン化合物は、界面活性剤、農薬、医薬品、含フッ素ポリマーなどの各種のフッ素含有製品の原料や合成中間体として、更に、CFC、HCFCに代替し得る冷媒、伝熱媒体、発泡剤、洗浄剤、消火剤、反応溶媒などとして有用である。
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